JP5058735B2 - マスクブランクの製造方法及びマスクの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体デバイスや表示デバイス(表示パネル)等の製造において使用されるマスクブランクの製造方法及びマスクの製造方法に関する。
例えば、半導体デバイスの微細加工技術に用いられるフォトマスク(レチクル)は、透明基板上に形成された、マスクパターンとしての転写機能(遮光性、位相制御、透過率制御、反射率制御など)を発現させることを主目的として形成される薄膜(以下、マスクパターンを形成するための薄膜という)、例えば遮光性膜をパターニングすることにより製造される。遮光性膜のパターニングは、例えば、レジストパターンをマスクとしたドライエッチングにより行われる。レジストパターンは、例えば、電子線リソグラフィー法等により形成される。
近年、マスク製造分野において、電子線リソグラフィー法で用いる電子線の加速電圧を50keV以上にすることが検討されている。これは、電子線レジスト中を通過する電子線の前方散乱を少なくするとともに、電子ビームの集束性を上げることによって、より微細なレジストパターンが解像されるようにする必要があるからである。電子線の加速電圧が低いとレジスト表面やレジスト中で前方散乱が生じ、前方散乱があるとレジストの解像性が悪化する。しかし、電子線の加速電圧を50keV以上とした場合、加速電圧に反比例して前方散乱が減少し前方散乱によってレジストに付与されるエネルギーが減少するため、例えば、10〜20keV等の加速電圧の時に使用していた電子線レジストではレジストの感度が不足し、スループットが落ちてしまう。そこで、マスク製造分野においても、半導体ウエハの微細加工技術に用いられているような化学増幅型レジスト膜を使用する必要がでてきた。化学増幅型レジスト膜は、高加速電圧に対して感度が高くしかも高い解像性を有する(例えば、特許文献1参照。)。
化学増幅型レジストでは、例えば、電子線露光により化学増幅型レジスト膜中に酸を発生させ、この酸を触媒として感酸物質が反応しポリマーの溶解性が変化して、ポジ型あるいはネガ型のレジストが得られる。
特開2003−107675号公報
ところで、マスク製造分野において化学増幅型レジスト膜を使用した場合、化学増幅型レジストが塗布などにより直接形成されることになる膜(レジストに対しその下地に相当する膜)、例えばクロム系の遮光性膜などのマスクパターンを形成するための薄膜、の表面近傍の膜密度が比較的疎な状態や荒れた状態(即ち平滑でない状態)であると、電子線露光により化学増幅型レジスト膜中に生成される触媒物質の酸が、レジストに対しその下地に相当するマスクパターンを形成するための薄膜中(特にその表層中)に移動し易くなるとともに、マスクパターンを形成するための薄膜中(特にその表層中)に酸が補足されることで移動が促進され、このためレジスト膜の底部における酸の濃度が著しく低下し(一般に失活と呼ばれる)、この結果、レジストパターンの裾部分において、ポジ型の化学増幅型レジスト膜においては「裾引き」、ネガ型では「食われ」といった形状不良が生じる。従来、この失活によるレジストパターンの著しい形状不良の問題を解決するために、マスクパターンを形成するための薄膜と化学増幅型レジスト膜との間に、化学増幅型レジスト膜中の酸がマスクパターンを形成するための薄膜中(特にその表層中)に移動することを防止しうる密度を有する失活抑制膜を設けた構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の失活抑制膜は、表面が比較的疎な状態や荒れた状態の前記マスクパターンを形成するための薄膜に比べ、失活抑制膜の表面は平滑であり、「裾引き」や「食われ」を生じさせない表面状態を結果的に有していると考えられる。特許文献1
には、Siを含む材料や金属シリサイドを含む材料等のシリサイド系材料、Moを含む材料、Taを含む材料等の無機膜や、有機バーク等の有機膜を、失活抑制膜として導入する構成が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1記載の失活抑制膜を、半導体デザインルールにおけるDRAMハーフピッチ(hp)65nm以下のフォトリソグラフィーに使用されるマスクブランクに適用した場合、以下のような課題があることが判明した。
通常、半導体基板を微細加工する際のフォトリソグラフィーは縮小投影露光で行われるため、転写用マスクに形成されるパターンサイズは、半導体基板上に形成されるパターンサイズの4倍程度の大きさとされている。しかし、上記の半導体デザインルール(DRAM hp65nm以下)でのフォトリソグラフィーにおいては、半導体基板上に転写される回路パターンのサイズは露光光の波長よりもかなり小さくなってきているため、回路パターンをそのまま4倍程度に拡大した転写パターンが形成された転写用マスクを使用して縮小投影露光すると、露光光の干渉などの影響で、転写パターン通りの形状を半導体基板上のレジスト膜に転写することができなくなる。
そこで、超解像マスクとして光近接効果補正(Optical Proximity Effect Correction:OPC)を行うことで、転写特性を劣化させる光近接効果の補正技術を適用したOPCマスクや、ライン状などの遮光パターンの中心部に位相シフターを設ける構造(マスクエンハンサー)によって、マスクパターンの遮光性を強調してラインパターンの解像度を向上させる位相シフトマスク(エンハンサーマスク)等が用いられている。例えば、OPCマスクには回路パターンの1/2以下サイズのOPCパターン(例えば、100nm未満の線幅のアシストバーやハンマーヘッド等)を形成する必要がある。また、エンハンサーマスクにおける遮光パターンや位相シフターの線幅も非常に細い線幅のパターンが必要となる。
尚、エンハンサーマスクは、遮光パターン周辺から遮光パターンの裏側に回り込む光の強度と、位相シフターを透過する光の強度とがちょうど釣り合うように、パターン幅と位相シフター幅とを調整すると、マスクエンハンサーを透過した光の振幅強度は、マスクエンハンサーの中心と対応する位置で0になるような分布を持ち、マスクエンハンサーを透過した光の強度(振幅強度の2乗)も、マスクエンハンサーの中心と対応する位置で0になるような分布を持つマスクである。
しかしながら、上記特許文献1記載の失活抑制膜を用いて、上記半導体デザインルール(DRAM hp65nm以下)の転写用マスク作製のマスクブランクに適用した場合、パターニング用の薄膜上の化学増幅型レジストパターンとして100nmのラインアンドスペースパターンは解像しているものの、設計寸法と実際に基板上に形成された転写パターンの寸法との差(実寸法差)が大きくなり、上記半導体デザインルール(DRAM hp65nm以下)で要求されるLinearity(リニアリティ)が10nm以下の要求に応えられないという問題が発生した。
そこで本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、転写用マスクの転写パターン線幅の設計寸法と、基板上に形成された転写パターン線幅寸法との差(実寸法差)を抑え、Linearityを10nm以下に抑えることが可能なマスクブランクの製造方法及びマスクの製造方法を提供することを目的とする。
本願発明者は、基板上に形成される転写パターンの実寸法差が大きくなる原因について鋭意検討した。
その結果、マスクパターンを形成するための薄膜(失活抑制膜等は含まれない)上に、特許文献1記載の失活抑制膜を形成した基板について、イオンクロマト分析をしたところ
、汚染物質の存在が明らかとなった。そして、この汚染物質は、石英基板単独や石英基板/失活抑制膜単独の基板のイオンクロマト分析結果ではほとんど検出されず(従って前記汚染物質は失活抑制膜や基板が原因で生ずるのではないことが判る)、基板/マスクパターンを形成するための薄膜単独の基板のイオンクロマト分析結果で比較的多く検出されることから、マスクパターンを形成するための薄膜から失活抑制膜を通過して現れる汚染物質(汚染イオン等)であることが明らかとなった。
そして、これらの汚染物質(汚染イオン等)は、マスクパターンを形成するための薄膜から失活抑制膜を通って化学増幅型レジスト膜中に入り込み、化学増幅型レジストの機能(主反応)を低下させ、Linearityの向上や化学増幅型レジストの更なる解像性向上の阻害要因となることを突き止めた。この場合、化学増幅型レジストの機能(主反応)の低下としては、例えば、酸としての機能の低下(例えば、酸の触媒作用(反応性)の低下や、酸の中和による触媒作用の消滅)や、その他の反応性の低下などであると考えられる。このとき、化学増幅型レジスト中の酸濃度自体の低下はなく、従って酸濃度の低下による失活とは概念が異なる。
そして、マスクパターンを形成するための薄膜から化学増幅型レジスト膜中に入り込み、化学増幅型レジストの機能(主反応)を低下させる汚染物質が、マスクパターンを形成するための薄膜から化学増幅型レジスト膜中に入り込むことを遮断(絶縁)しうる膜(汚染物質の侵入を防止しうる膜)を化学増幅型レジスト膜の底部(底面)に設けることが、マスクブランク上に形成される化学増幅型レジスト及び、レジストパターンをマスクとして形成される転写パターンの解像性の更なる向上と、パターン精度の向上に必要であることを見い出し、本願発明に至った。
本発明によれば、パターン描画して化学増幅型のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして基板上に形成される転写用パターンのLinearityを10nm以下に抑えることが可能なマスクブランク、及びマスクを提供することができる。
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)基板上にマスクパターンを形成するための薄膜を成膜し、この薄膜の上方に化学増幅型のレジスト膜を成膜するマスクブランクの製造方法であって、
前記レジスト膜が成膜される薄膜上の面に存在する有機酸の総量を1μg/cm2以下
とし、この面の上に前記レジスト膜を成膜することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成2)基板上にマスクパターンを形成するための薄膜を成膜し、この薄膜の上方に化学増幅型のレジスト膜を成膜するマスクブランクの製造方法であって、
前記薄膜の上方に、化学増幅機能を阻害する物質がレジストパターンの形成を阻害しないよう清浄面を形成し、この面の上に前記レジスト膜を成膜することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成3)前記薄膜は金属膜であることを特徴とする構成1又は2記載のマスクブランクの製造方法。
(構成4)前記薄膜は反応性スパッタリング法により成膜された膜であることを特徴とする構成1乃至3の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
(構成5)前記薄膜を、所定の膜密度の樹脂膜で被覆することを特徴とする構成1乃至4の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
(構成6)前記マスクブランクは、前記化学増幅型のレジスト膜を形成する前のマスクブランクであることを特徴とする構成1乃至5の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
(構成7)構成1乃至6の何れか一に記載の製造方法により製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして転写パターンを基板上に形成することを特徴とするマ
スクの製造方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のマスクブランクの製造方法は、基板上にマスクパターンを形成するための薄膜を成膜し、この薄膜の上方に化学増幅型のレジスト膜を成膜するマスクブランクの製造方法であって、
前記レジスト膜が成膜される薄膜上の面に存在する有機酸の総量を1μg/cm2以下
とし、この面の上に前記レジスト膜を成膜することを特徴とする(構成1)。
構成1に係る発明では、化学増幅型レジスト膜が成膜される薄膜上の面に存在する有機酸の総量を1μg/cm2以下とし、この面の上に化学増幅型レジスト膜を成膜するので
、化学増幅型レジストの機能を阻害する物質(有機酸)がレジスト膜の底部からレジスト膜内へ侵入することを抑えることができ、化学増幅型レジスト及び、レジストパターンをマスクとして形成される転写パターンの解像性の更なる向上に寄与すると共に、パターン精度の向上に寄与できる。
尚、上記有機酸としては、酢酸、ギ酸、安息香酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸などが挙げられる。好ましくは、有機酸の総量を0.5μg/cm2以下とすることが望ましい
。上記有機酸は、イオンクロマトグラフィによる分析によって求めた量で、化学増幅型レジスト膜が成膜される面にテフロン(登録商標)製リング(120mmφ)を置き、内部に超純水15mLを入れ、5分間静置して抽出した有機酸成分量(試料1cm2あたりか
らの抽出量(μg/cm2)の半定量値)とした。
また、本発明のマスクブランクの製造方法は、基板上にマスクパターンを形成するための薄膜を成膜し、この薄膜の上方に化学増幅型のレジスト膜を成膜するマスクブランクの製造方法であって、
前記薄膜の上方に、化学増幅機能を阻害する物質がレジストパターンの形成を阻害しないよう清浄面を形成し、この面の上に前記レジスト膜を成膜することを特徴とする(構成2)。
構成2に係る発明では、化学増幅機能を阻害する物質がレジストパターンの形成を阻害しないよう清浄面を形成し、この面の上に化学増幅型レジスト膜を成膜するので、化学増幅型レジストの機能を阻害する物質(有機酸等)がレジスト膜の底部からレジスト膜内へ侵入することを抑えることができ、化学増幅型レジスト及び、レジストパターンをマスクとして形成される転写パターンの解像性の更なる向上に寄与すると共に、パターン精度の向上に寄与できる。
上記化学増幅型レジストの機能を阻害する物質としては、例えば、有機酸やアミン類などが挙げられる。有機酸としては、酢酸、ギ酸、安息香酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸などが挙げられ、アミン類としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。尚、これらの化学増幅型レジストの機能を阻害する物質の総量は、1μg/cm2以下、更に好ましくは、0.5μg/cm2以下とすることが望ましい。上記化学増幅型レジストの機能を阻害する物質は、上記と同様のイオンクロマトグラフィによる分析によって求めることができる。
本発明において、マスクブランクには、フォトマスクブランク、位相シフトマスクブランク、反射型マスクブランク、インプリント用転写プレート基板も含まれる。また、マスクブランクには、レジスト膜付きマスクブランク、レジスト膜形成前のマスクブランク(構成6)が含まれる。レジスト膜形成前のマスクブランクには、前記マスクパターンを形成するための薄膜を、所定の膜密度の樹脂膜で被覆したマスクブランクも含まれる。位相シフトマスクブランクには、ハーフトーン膜上にクロム系材料等の遮光性膜が形成される場合を含む。尚、この場合、マスクパターンを形成するための薄膜は、ハーフトーン膜や遮光性膜を指す。また、反射型マスクブランクの場合は、多層反射膜上、又は多層反射膜上に設けられたバッファ層上に、転写パターンとなるタンタル系材料やクロム系材料の吸
収体膜が形成される構成、インプリント用転写プレートの場合には、転写プレートとなる基材上にクロム系材料等の転写パターン形成用薄膜が形成される構成を含む。マスクには、フォトマスク、位相シフトマスク、反射型マスク、インプリント用転写プレートが含まれる。マスクにはレチクルが含まれる。
本発明において、マスクパターンを形成するための薄膜としては、露光光等を遮断する遮光膜、露光光等の透過量を調整・制御する半透光性膜、露光光等の反射率を調整・制御する反射率制御膜(反射防止膜を含む)、露光光等に対する位相を変化させる位相シフト膜、遮光機能と位相シフト機能を有するハーフトーン膜等が含まれる。
本発明のマスクブランクの製造方法は、前記マスクパターン形成用の薄膜が、金属膜である場合に特に効果的である(構成3)。金属膜としては、クロム、タンタル、モリブデン、チタン、ハフニウム、タングステンや、これらの元素を含む合金、又は上記元素や上記合金を含む材料からなる膜が挙げられる。
また、本発明のマスクブランクの製造方法は、前記マスクパターン形成用の薄膜が、反応性スパッタリング法により成膜された膜であることを特徴とする(構成4)。スパッタリング時に使用する反応性ガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、炭酸ガス、炭化水素ガス、又はこれらの混合ガスが挙げられる。反応性スパッタリング法により成膜されたパターニング用の薄膜の表面は、一般に、化学増幅型レジストの機能を阻害する物質を補足されやすい状態(例えば、表面が粗くなる)となりやすいので、上記課題が特に問題化しやすいので、反応性スパッタリング法により成膜されたパターニング用の薄膜と、本発明を組み合わせると特に効果がある。
構成4に係るマスクパターンを形成するための薄膜としては、ドライエッチング速度を高めた薄膜とすることが、転写用パターンの微細化、パターン精度向上の点で好ましい。具体的には、金属がクロムの場合、ドライエッチング速度を高める添加元素を添加する。ドライエッチング速度を高める添加元素としては、酸素及び/又は窒素が挙げられる。
クロムを含む薄膜に酸素を含む場合の酸素の含有量は、5〜80原子%の範囲が好適である。酸素の含有量が5原子%未満であると、ドライエッチング速度を高める効果が得られにくい。一方、酸素の含有量が80原子%を超えると、半導体デザインルールにおけるDRAMハーフピッチ65nm以下で適用される露光光の波長(200nm以下)の例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度を得るために膜厚を厚くする必要が生じてしまい、パターン精度の向上が図れなくなるので好ましくない。
また、クロムを含む薄膜に窒素を含む場合の窒素の含有量は、20〜80原子%の範囲が好適である。窒素の含有量が20原子%未満であると、ドライエッチング速度を高める効果が得られにくい。一方、窒素の含有量が80原子%を超えると、半導体デザインルールにおけるDRAMハーフピッチ65nm以下で適用される露光光の波長(200nm以下)の例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度を得るために膜厚を厚くする必要が生じてしまい、パターン精度の向上が図れなくなるので好ましくない。
また、クロムを含む薄膜中に酸素と窒素の両方を含んでもよい。その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が10〜80原子%の範囲とするのが好適である。また、クロムを含む薄膜中に酸素と窒素の両方を含む場合の酸素と窒素の含有比は、特に制約はされず、吸収係数等の兼ね合いで適宜決定される。
尚、酸素及び/又は窒素を含むクロム薄膜は、他に炭素、水素、ヘリウムなどの元素を含んでもよい。
尚、ドライエッチングガス中の酸素の量を低減するという観点からは、酸素を含まないドライエッチングガスを用いることも可能である。
クロム系薄膜は、ドライエッチングによってエッチング(パターニング)することが、クロム系薄膜のパターン精度の向上の観点から好ましい。
クロム系薄膜のドライエッチングには、塩素系ガス、又は、塩素系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスからなるドライエッチングガスを用いることが好ましい。この理由は、クロムと酸素、窒素等の元素とを含む材料からなるクロム系薄膜に対しては、上記のドライエッチングガスを用いてドライエッチングを行うことにより、ドライエッチング速度を高めることができ、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができ、断面形状の良好な遮光膜パターンを形成することができるからである。ドライエッチングガスに用いる塩素系ガスとしては、例えば、Cl2、SiCl4、HCl、CCl4、CHCl3等が挙げられる。
本発明のマスクブランクは、前記化学増幅型レジスト膜が、50keV以上の加速電圧で加速された電子線によってパターン露光(描画)され、レジストパターンが形成されるものである場合に特に有用である。
本願発明は、50keV対応EBリソグラフィーを適用した場合において、マスクブランク上に形成される化学増幅型レジストパターンの解像性の更なる向上を意図しているためである。
尚、本発明における化学増幅型レジスト膜には、例えば、露光によりレジスト膜中に生成される触媒物質の酸が、引き続き行われる熱処理工程においてポリマーの溶解性を制御する官能基或いは官能物質と反応することによりレジスト機能を発現するレジスト膜が含まれる。ここで、レジスト機能の発現は、例えば、官能基等を外すことによってアルカリに溶解するようになることをいう。
また、本発明のマスクブランクの製造方法は、前記マスクパターンを形成するための薄膜を、所定の膜密度の樹脂膜で被覆することを特徴とする(構成5)。上記樹脂膜の膜密度としては、1.4g/cm3以上、更に好ましくは、1.6g/cm3以上が望ましい。尚、膜密度は、X線反射率法(Grazing Incidence X−ray Reflectively technique(GXIR))によって求めた膜密度とする。上記膜密度とすることにより、例えば、上記薄膜の面に化学増幅機能を阻害する物質が存在している場合であっても、化学増幅機能を阻害する物質がレジストパターンの形成を阻害しないよう化学増幅型レジストが成膜される面を清浄面とすることができ、しかも、上記薄膜の面に化学増幅機能を阻害する物質が存在している場合であっても、化学増幅型レジストの機能を阻害する物質が、該レジスト膜の底部から化学増幅型レジスト内に侵入することを効果的に阻止できるので、化学増幅型レジスト及び、レジストパターンをマスクとして形成される転写パターンの解像性の更なる向上に寄与すると共に、パターン精度の向上に寄与できる。
上記樹脂膜の膜厚は、膜厚が2nm以上20nm以下、更に好ましくは、膜厚が5nm以上20nm以下が望ましい。これにより、マスクブランク上に形成される化学増幅型レジスト及び、レジストパターンをマスクとして形成される転写パターンの解像性の更なる向上を確実に実現できる。具体的には、半導体デザインルールでDRAMハーフピッチが65nm以下の微細パターン形成用マスクに要求されるパターン精度を満足することができるマスクブランクを確実に実現できる。
本発明のマスクブランクは、マスクブランク上に100nm未満の線幅のレジストパターンを形成するために用いられるものである場合に特に有効である。このようなマスクブランクとしては、OPCマスクやマスクエンハンサー構造を有するマスク(エンハンサーマスク)が挙げられる。これらのマスク(OPCマスクやエンハンサーマスク)では、本パターンの解像性を向上させる目的で本パターンの周囲に設けられる補助パターンの幅が最も狭いため、これらのパターンを有するマスクの製造に、特に有用である。
本発明のマスクは、上記本発明に係るマスクブランクにおける前記薄膜をパターニング
して形成された転写パターンを基板上に形成されていることを特徴とする(構成7)。
上記本発明のマスクは、半導体デザインルールにおけるDRAMハーフピッチ65nm以下で対応するマスクで要求されるパターン精度を満足しうる。
本発明において、基板としては、合成石英基板、ソーダライムガラス基板、無アルカリガラス基板、低熱膨張ガラス基板などが挙げられる。
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマスクブランク10の一例を示す模式図である。本例において、マスクブランク10は、バイナリマスク用のマスクブランクであり、透明基板12、遮光性膜13(遮光層14と、反射防止膜16との積層膜)、樹脂膜18、及び化学増幅型レジスト膜20を備える。
透明基板12は、例えば、合成石英基板、ソーダライムガラス等の材料からなる。遮光性膜13は、遮光層14と反射防止層16との積層膜である。
遮光層14は、透明基板12上に、例えば、窒化クロム膜22及び炭化窒化クロム膜24をこの順で有する。窒化クロム膜22は、窒化クロム(CrN)を主成分とする層であり、例えば10〜20nmの膜厚を有する。炭化窒化クロム膜24は、炭化窒化クロム(CrCN)を主成分とする層であり、例えば25〜60nmの膜厚を有する。
反射防止層16は、例えば、クロムに酸素及び窒素が含有されている膜(CrON膜)であり、炭化窒化クロム膜24上に形成される。反射防止層16の膜厚は、例えば15〜30nmである。
これら遮光層14、反射防止層16は、クロムをスパッタリングターゲットとし、反応性ガス(例えば、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、炭酸ガス、炭化水素系ガス、又はこれらの混合ガス)雰囲気中での反応性スパッタリング法により成膜することができる。
尚、遮光性膜13は、上記のように、透明基板12側から窒化クロム膜22、炭化窒化クロム膜24、酸化窒化クロム膜の材料で構成され、遮光性膜13の膜厚方向の略全域にクロム及び、酸素及び窒素の少なくとも一方の元素が含まれることによって、あるいは更に各層について主に窒素を多く含めることによって、塩素系ガスを用いたドライエッチング時のドライエッチング速度を高めることができる。
また、遮光性膜13の材料としては、クロム単体や、クロムに酸素、窒素、炭素、水素からなる元素を少なくとも1種を含むもの(Crを含む材料)、などが挙げられる。遮光性膜13の膜構造としては、上記膜材料からなる単層、複数層構造とすることができる。また、異なる組成においては、段階的に形成した複数層構造や、連続的に組成が変化した膜構造とすることができる。
樹脂膜18は、化学増幅機能を阻害する物質がレジストパターンの形成を阻害しないよう化学増幅型レジストが成膜される面を清浄面とするための層であり、また、上記遮光性膜の面に化学増幅機能を阻害する物質が存在している場合であっても、化学増幅型レジストの機能を阻害する物質が、該レジスト膜の底部から化学増幅型レジスト内に侵入することを効果的に阻止する層であり、反射防止層16を挟んで遮光性膜13上に形成される。
尚、樹脂膜18は、化学増幅型レジスト膜20に対してレジストパターンを形成する際に使用する現像液に対して耐性を有し、樹脂膜をエッチングする際に使用するエッチャントに対してエッチングレートが高く、更にはレジストパターンをマスクにして遮光性膜13をエッチングする際に使用するエッチャントでエッチング可能であってそのエッチングレートが高い、ことが好ましい。
上記樹脂膜18は、アクリル系樹脂、ノボラック系樹脂などとすることができる。この
樹脂膜18は、上記機能を最大限に発揮するために、分子量、粘度、ベーク条件を適宜調整して、所定の膜密度(具体的には1.4g/cm3以上)とすることが好ましい。
尚、本実施形態の変形例において、マスクブランク10は、位相シフトマスク用のマスクブランクであってもよい。この場合、マスクブランク10は、例えば、透明基板12と遮光性膜13との間に、位相シフト膜を更に備える。位相シフト膜としては、例えば、クロム系(CrO、CrF等)、モリブデン系(MoSiON、MoSiN、MoSiO等)、タングステン系(WSiON、WSiN、WSiO等)、シリコン系(SiN、SiON等)の各種公知のハーフトーン膜を用いることができる。位相シフトマスク用のマスクブランク10は、位相シフト膜を、遮光性膜13上に備えてもよい。
以下、本発明の実施例及び比較例を示す。
(実施例1)
(基板試料の作製)
透明基板12としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英基板を用い、透明基板12上に、遮光性膜13として、窒化クロム膜22、炭化窒化クロム膜24、酸化窒化クロム膜(反射防止層16)、をそれぞれスパッタリング法で連続的に形成した(図1)。遮光性膜13は、膜厚方向の略全域に窒素を含むとともに、各層について主に窒素を多く含めることによって、塩素系ガスに対するドライエッチング速度を高めたものとした。遮光性膜13の膜厚は68nmとした。
次に、遮光性膜13上に、回転塗布法によりノボラック系樹脂からなる樹脂膜18を形成した後、150℃で10分間熱処理して、厚さ15nmで形成した(図1)。
以上のようにして、実施例1に係る基板試料を得た。
(比較例)
(基板試料の作製)
透明基板12としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英基板を用い、透明基板12上に、遮光性膜13として、窒化クロム膜22、炭化窒化クロム膜24、酸化窒化クロム膜(反射防止層16)、をそれぞれスパッタリング法で連続的に形成した(図1)。遮光性膜13は、膜厚方向の略全域に窒素を含むとともに、各層について主に窒素を多く含めることによって、塩素系ガスに対するドライエッチング速度を高めたものとした。遮光性膜13の膜厚は68nmとした。
以上のようにして、比較例に係る基板試料を得た。
(イオンクロマト分析)
実施例1及び比較例における基板試料についてイオンクロマト分析を行った。
具体的には、イオンクロマトグラフ分析装置(Dionex社製:DX−500)を用い、以下の測定条件により有機酸成分、アミン類成分を算出した。
化学増幅型レジスト膜20形成前の基板試料の表面に、テフロン(登録商標)製リング(120mmφ)を置き、内部に超純水15mLを入れ、5分間静置して抽出した成分量(試料1cm2あたりからの抽出量(μg/cm2)の半定量値)とした。有機酸成分の測定では、溶離液として、6mM炭酸水素ナトリウムを使用し、分離カラムとして、2mmφ×250mm、Ion Pac AS14を使用し、カラム温度を35℃で測定した。
その結果、比較例に係る基板試料について、有機酸(ギ酸、安息香酸)の存在が明らかとなり、その有機酸の総量は3μg/cm2であった。
これに対し、実施例1に係る基板試料では、有機酸(酢酸、ギ酸、安息香酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸)の存在は、検出下限未満であり、有機酸の存在を確認できなかった。
(レジスト膜付きマスクブランクの作製)
次に、上記実施例1、比較例の基板試料に対して、化学増幅型レジスト膜20として、電子線描画用化学増幅型ポジレジスト(FEP171:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を回転塗布法で厚さ300nm塗布し、その後、ホットプレートで130℃で10分熱処理して、化学増幅型レジスト膜20を乾燥させ、ArFエキシマレーザー露光用のレジスト膜付きフォトマスクブランクであるマスクブランク10を得た。
(レジストパターンの形成)
実施例1及び比較例に係るマスクブランクについて、化学増幅型レジストパターンの解像性の違いを比較するために、化学増幅型レジストパターンを形成した。具体的には、各マスクブランクを電子線露光装置を用い50keV以上の加速電圧で加速された電子線によってパターン露光(描画)し、その後、露光後のベーク処理及び現像処理をして、化学増幅型レジストパターンを形成した。
その結果、実施例1及び比較例においては、化学増幅型レジストパターンの裾部分に裾引き状の突起部が形成されていないことが確認された。また、実施例1においては80nmのラインアンドスペースの化学増幅型レジストパターンが解像されていることが確認されたが、比較例においては、200nmのラインアンドスペースの化学増幅型レジストパターンが解像しているにとどまっていた。
(マスクの作製)
続いて、実施例1のレジスト膜付きマスクブランクにおける化学増幅型レジストのレジストパターンをマスクとし、塩素ガスと酸素ガスとを含むエッチングガスを用いたドライエッチングにより、樹脂膜18及び遮光性膜13をパターニングし、その後、化学増幅型レジスト膜20及び樹脂膜18を、アルカリ性水溶液に浸すことにより除去して転写用マスクを作製した。
一方、比較例のレジスト膜付きマスクブランクにおける化学増幅型レジストのレジストパターンをマスクとし、塩素ガスと酸素ガスとを含むエッチングガスを用いたドライエッチングにより、遮光性膜13をパターニングし、その後、化学増幅型レジスト膜20を、アルカリ性水溶液に浸すことにより除去して転写用マスクを作製した。
その結果、実施例1においては、遮光性膜13のパターンをSEM(走査型電子顕微鏡)で調べた結果、80nmのラインアンドスペースパターンが解像され、パターンエッジラフネスも小さく良好であった。一方、比較例においては、遮光性膜13のパターンは、200nmのラインアンドスペースパターンが解像しているにとどまった。
また、実施例1のマスクパターンの設計寸法に対する実寸法差を調べた結果、120nmから1000nmの設計寸法に対する実寸法差が10nm以下であった。これは、半導体デザインルール DRAMハーフピッチ65nmにおけるLinearity10nm以下を満足するものであった。
(実施例2)
実施例1における樹脂膜を、アクリル系樹脂に変えた以外は実施例1と同様にマスクブランク及びマスクを作製した。尚、該保護膜の膜厚は、25nmとした。上述の実施例1と同様に有機酸成分、アミン類成分をイオンクロマトグラフ分析装置を用いて測定したところ、有機酸(ギ酸)の存在が明らかとなり、その量は0.6μg/cm3で、有機酸の
総量は1μg/cm3以下であった。
尚、実施例2においても、80nmのラインアンドスペースの化学増幅型レジストパターンが解像されていることが確認された。
また、作製したマスクにおいても、遮光性膜パターンからなる80nmのラインアンドスペースパターンが解像され、120nmから1000nmの設計寸法に対する実寸法差が10nm以下であり、半導体デザインルール DRAMハーフピッチ65nmにおけるLinearity10nm以下を満足するものであった。
以上、本発明を実施形態及び実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記
実施形態及び実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施形態及び実施例に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは、当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
本発明は、半導体デバイスやフラットパネルディスプレイ(FPD)液晶表示デバイス等の製造において使用されるマスクブランク及びマスクに好適に利用できる。
本発明の第1の実施形態に係るマスクブランク10の一例を示す模式図である。
符号の説明
10・・マスクブランク、12・・透明基板、13・・遮光性膜、14・・遮光層、16・・反射防止層、18・・樹脂膜、20・・化学増幅型レジスト膜

Claims (6)

  1. 基板上にマスクパターンを形成するための薄膜を成膜し、この薄膜の上方に化学増幅型のレジスト膜を成膜するマスクブランクの製造方法であって、
    前記薄膜を所定の膜密度の樹脂膜で被覆し、該樹脂膜上の面に存在する有機酸の総量を1μg/cm2以下とし、この面の上に前記レジスト膜を成膜することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  2. 基板上にマスクパターンを形成するための薄膜を成膜し、この薄膜の上方に化学増幅型のレジスト膜を成膜するマスクブランクの製造方法であって、
    前記薄膜を所定の膜密度の樹脂膜で被覆することによって、前記薄膜の上方に、化学増幅機能を阻害する物質がレジストパターンの形成を阻害しないよう清浄面を形成し、この面の上に前記レジスト膜を成膜することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  3. 前記薄膜は金属膜であることを特徴とする請求項1又は2記載のマスクブランクの製造方法。
  4. 前記薄膜は反応性スパッタリング法により成膜された膜であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
  5. 前記マスクブランクは、前記化学増幅型のレジスト膜を形成する前のマスクブランクであることを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
  6. 請求項1乃至の何れか一に記載の製造方法により製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして転写パターンを基板上に形成することを特徴とするマスクの製造方法。
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