先ず、本発明でも、無電解メッキ処理を行う際、生成する金属原子は、核となる金属表面に対して、選択的に析出する性質を利用している。従来の手法では、フォトレジスト膜からなるメッキ・マスク層の表面では、金属原子の析出を回避しつつ、開口部に露呈しているメッキ下地用金属膜の表面では、金属原子の析出が進行する結果、選択的なメッキ金属層の形成を行っている。
本発明は、このメッキ下地用金属膜の表面を詳細に観察すると、メッキ金属層は、離散的な金属粒が緻密に連結され、最終的にほぼ均質な集合体層を構成している点に注目して着想されたものである。すなわち、メッキ下地用金属膜の表面全体に亘って、一様に金属原子が層状に析出するのではなく、初期段階では、離散的な核となる微細な金属塊が発生し、その後、この生成した金属塊の清浄な表面を覆うように金属原子の析出が進行する。ある段階に達すると、隣接する金属塊相互の表面が接触すると、接触した金属塊複数を取り囲むように、金属原子の析出がなされ、二次元的に金属粒が緻密に連結され、均質な集合体層となる。
換言すると、金属原子の析出に対して、その核となるような、微小な金属表面を離散的ではあるが、十分に高い面密度で配置すると、この離散的な核を起点として、微細な金属塊が緻密に生成し、最終的には、二次元的に金属粒が緻密に連結された、均質な集合体層を構成できる。また、十分に高い面密度で、離散的に配置される、微小な金属表面部を除き、その間に存在する領域は、金属原子の析出には直接関与しないので、有機物で構成される表面であってもよいという着想に、本発明は基づいている。
すなわち、本発明の手法では、均一な金属膜に代えて、有機物で構成される表面上に、十分に高い面密度で、離散的に、微小な金属表面部を配置することで、均一な金属膜表面と実質的に同等の機能を発揮させている。このような状況を達成する手法として、例えば、接着剤層の表面に、金属微粒子を緻密に高い面密度で配置し、その際、表面に配置される金属微粒子の表面に清浄な金属面が露呈している状態を作り出している。具体的には、本発明の第一の形態、ならびに第三の形態においては、接着剤層の表面に、表面に被覆分子層を有する金属微粒子を緻密に高い面密度で配置し、その後、表面からエネルギー線を照射することで、被覆分子層の離脱と、金属微粒子の最表面に金属酸化被膜を一旦生成させる。その後、無電解メッキ液中において、かかる金属酸化被膜が還元され、表面に清浄な金属面を有する核とする手法を利用している。
また、本発明の第二の形態、ならびに第四の形態においては、接着剤層の表面に、微粉末状の有機金属化合物を緻密に高い面密度で配置し、かかる有機金属化合物に含まれる金属イオン種を、一旦、金属酸化物の微小な粒子に変換し、無電解メッキ液中において、かかる金属酸化物の微小粒子が還元され、表面に清浄な金属面を有する核とする手法を利用している。この有機金属化合物に含まれる金属イオン種を、一旦、金属酸化物の微小な粒子に変換する過程は、表面からエネルギー線を照射することで、有機金属化合物を構成する、有機物成分を離脱させ、残余する金属イオン種を金属酸化物に変換し、微小な金属酸化物の粒子として凝集させる。この微小な金属酸化物は、一旦、接着剤層の表面に固着された状態となるが、無電解メッキ液中において、かかる金属酸化物の微小粒子が還元され、表面に清浄な金属面を有する核となる。
加えて、本発明において、前述のエネルギー線照射により誘起され、金属酸化物へと変換される二種の過程は、エネルギー線照射に伴う、励起電子状態への遷移を利用しており、利用されるエネルギー線のエネルギーは、光励起を利用する場合、波長400nm以下、180nm以上の紫外線領域のエネルギー、あるいは、波長400nm〜600nmの可視光領域のエネルギーであり、また、粒子線衝撃による励起を利用する場合、40keV以上の電子線を利用する。
すなわち、接着剤層の表面に、金属微粒子を緻密に高い面密度で配置する、あるいは、接着剤層の表面に、微粉末状の有機金属化合物を緻密に高い面密度で配置する状態に対して、所定のエネルギー線照射がなされた場合、そのエネルギー線照射領域のみに選択的な、表面に清浄な金属面を有する核の生成がなされ、対応して、かかる領域のみに、無電解メッキ金属層の析出が実際に進行する。本発明では、目的とするパターン形状の無電解メッキ層の形成を、前記のエネルギー線照射領域の形状パターンを予め決定することで、簡便に制御することを可能としている。
以下に、本発明をより詳しく説明する。
本発明の第一の形態にかかる導電性回路の形成方法と、本発明の第三の形態にかかる導電性回路の形成方法とは、不導体基材の表面に、所望のパターン形状の無電解メッキ層を選択的に形成する手段として、平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物の塗布層を形成し、この樹脂混合物塗布層の表面に対して、前記パターン形状に対応する領域にエネルギー線を照射することで、その後、無電解メッキ液に浸し、無電解メッキを施した際、エネルギー線照射を受けた表面部分に、無電解メッキ層を選択的に形成させる手法を利用する点で、構成上の共通性を有している。
本発明の第一の形態にかかる導電性回路の形成方法では、不導体基材表面に樹脂混合物塗布層を形成した後、不導体基材をその表面の樹脂混合物塗布層とともに、三次元成形する操作を設けている。すなわち、表面の樹脂混合物塗布層は、この時点では硬化処理が施されてなく、不導体基材を三次元成形すると、それに付随して、相似的に三次元成形を行うことが可能である。具合的には、不導体基材の表面に形成されている樹脂混合物塗布層においては、塗布に利用する樹脂混合物を塗布後、含有される溶剤成分を蒸散する目的で、乾燥処理が施されているが、その主成分は重合硬化処理を施す前の樹脂原料化合物であり、不導体基材を構成する材質と比較すると、格段に塑性変形性に富む状態である。そのため、不導体基材に三次元成形する操作を施し、塑性変形させた際、表面の樹脂混合物塗布層も追従して塑性変形し、結果的に相似的な三次元成形がなされる。例えば、不導体基材を一軸延伸して、長さ方向に「引き伸ばし加工」を施すと、その一軸延伸比率に反比例して、厚さが減少する。その際、表面の樹脂混合物塗布層も、同じ一軸延伸比率で、長さ方向に「引き伸ばし加工」を受け、一方、塗布層の厚さは、その一軸延伸比率に反比例して、薄くなる。乾燥処理を施された、表面の樹脂混合物塗布層中では、分散質の平均粒子径1〜200nmの金属微粒子は、乾燥された硬化型バインダー樹脂組成物中においても、均一に分散された状態を保っている。一方、不導体基材に施される三次元成形操作に付随する、樹脂混合物塗布層の一軸延伸比率は、原寸に対して、100%〜600%の範囲に選択することが可能である。なお、この一軸延伸加工後における、樹脂混合物塗布層の膜厚は、0.1μm〜20μmの範囲となるように、加工前の樹脂混合物塗布層を調整することが望ましい。
一方、本発明の第一の形態にかかる導電性回路の形成方法では、不導体基材を三次元成形するため、不導体基材には、所望の塑性変形が可能な材質を利用する。具体的には、三次元成形を施す不導体基材として、ポリカーボネート、PET、PENなどを利用することが可能である。
また、本発明の第三の形態にかかる導電性回路の形成方法では、不導体基材に三次元成形を施さないため、前記塑性変形が可能な材質に加えて、塑性変形性に乏しい材質を利用することができる。具体的には、塑性変形性に乏しい材質である、ポリイミド、ガラスエポキシなどで作製された不導体基材を利用することも可能である。
不導体基材上に設ける、乾燥処理を施された、樹脂混合物塗布層中に分散されている平均粒子径1〜200nmの金属微粒子の分散密度を、1.0×1012個/mm3〜3.5×1014個/mm3の範囲、すなわち、1.0×103個/μm3〜3.5×105個/μm3の範囲、より好ましくは、5.0×1012個/mm3〜1.0×1014個/mm3の範囲、すなわち、5.0×103個/μm3〜1.0×105個/μm3の範囲に選択することが望ましい。それに伴い、塗布層表面に露呈する金属微粒子の面密度を、1.0×101個/μm2〜4×102個/μm2の範囲、より好ましくは、0.4×102個/μm2〜2×102個/μm2の範囲とすることが好ましい。すなわち、塗布層表面に露呈する金属微粒子が正方格子状に配置されると仮定した際、隣接する金属微粒子相互の平均的距離は、0.20μm〜0.07μmの範囲とすることが好ましい。その状態では、塗布層表面に露呈する金属微粒子の清浄な金属表面を核として、無電解メッキ工程において、平均粒子径0.5μm〜4μmの範囲の微細な金属塊が生成する結果、樹脂混合物塗布層表面のほぼ全面を覆うように、無電解メッキによる微細な金属塊の被覆層が形成される。その後、一面に緻密に分布する微細な金属塊の被覆層を、さらに覆うように、無電解メッキ金属層の形成が進行する結果、無電解メッキ金属層の膜厚が1μmに達した時点では、均一な面状に形成された金属膜を下地層として形成される無電解メッキ金属層と比較しても、全く遜色のない、緻密で均一なメッキ金属層が形成される。
なお、樹脂混合物塗布層自体は、表面に露呈する金属微粒子を除き、平坦でかつ均一な膜厚を有することが望ましい。緻密で均一なメッキ金属層の形成を行った後、樹脂混合物塗布層に加熱処理を施すことにより、流動性を付与し、形成されるメッキ金属層の裏面に対して、かかる樹脂混合物塗布層からなるバインダー樹脂を均一に濡れ接触させる。最終的に、平坦でかつ均一な膜厚を有する樹脂混合物塗布層から形成されるバインダー樹脂層は、不導体基材表面にメッキ金属層を高い接着性で固着する機能を発揮する。
従って、樹脂混合物中に、分散媒として配合される硬化型バインダー樹脂組成物は、不導体基材表面ならびにメッキ金属層の双方に対する接着特性に優れる硬化型バインダー樹脂を利用する。具体的には、硬化型バインダー樹脂として、熱硬化性樹脂、あるいは、光硬化性樹脂を利用することが望ましい。
硬化型バインダー樹脂として、熱硬化性樹脂を利用する場合には、無電解メッキ金属層を形成した後、不導体基材を含め、所定の温度で加熱処理することで、不導体基材表面とメッキ金属層裏面とが均一な濡れを達成した状態で、熱硬化を行う。この熱硬化処理を行う際、加熱温度は、不導体基材の材質が示す耐熱性を考慮した上で適宜選択される。一般に、160℃以下の加熱により、所望の熱硬化が完了することが望ましい。通常、導電性回路は、無電解メッキ層からなる配線と、他の電子部品の端子との間の電気的接合に、ハンダ接合の適用を可能とするため、少なくとも、不導体基材の材質は、ハンダ材料の溶融する温度において、十分な耐熱特性を示す。バインダー樹脂層を形成する熱硬化性樹脂も、少なくとも、ハンダ材料の溶融する温度において、十分な耐熱特性を示すものが好適に使用される。
従って、硬化型バインダー樹脂として、熱硬化性樹脂を利用する場合、例えば、形成されるメッキ層がハンダ接合に利用される場合、得られる硬化物は、少なくとも、80℃に加熱する際に、十分な耐熱性を示すことが望ましい。かかる用途には、一般に、100℃程度の耐熱性を有するエポキシ樹脂またはアルキッド樹脂を主要な樹脂成分とする熱硬化性樹脂組成物を利用することがより好ましい。利用可能なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAエポキシ樹脂など挙げることができる。また、利用可能なアルキッド樹脂としては、ハリフタール(ハリマ化成製)など挙げることができる。
エポキシ樹脂を主要な樹脂成分とする熱硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂成分と、そのエポキシ樹脂に対する、硬化剤、または、硬化触媒、更には、必要に応じて、硬化促進剤を含有してなる組成物が利用できる。熱硬化性樹脂組成物中で利用可能な、エポキシ樹脂に対する硬化剤として、酸無水物系硬化剤、例えば、無水フタル酸などが利用でき、更には、アミン系硬化剤、例えば、アミンアダクト化合物などを利用することもできる。硬化剤を利用する際には、必要に応じて、硬化促進剤として、イミダゾールなどを添加することもできる。また、エポキシ樹脂に対する硬化触媒として、トリフェニルホスフィンなどを利用することができる。
例えば、エポキシ樹脂成分に対して、そのエポキシ樹脂に対する酸無水物系硬化剤の配合比率は、エポキシ樹脂成分中に含まれるエポキシ基二つに対して、二塩基酸由来の酸無水物が、通常、0.8〜1.2分子の範囲、好ましくは、0.9〜1.1分子の範囲となる比率を選択することが望ましい。また、酸無水物系硬化剤に加えて、硬化促進剤を添加する際には、エポキシ樹脂成分中に含まれるエポキシ基二つに対して、前記アミン系硬化促進剤を、0.010〜0.050分子の範囲、好ましくは、0.015〜0.040分子の範囲で配合することが望ましい。
必要に応じて、エポキシ樹脂を主要な樹脂成分とする熱硬化性樹脂組成物中に、粘度調整のため、希釈溶媒用の有機溶剤を適量添加することもできる。また、エポキシ樹脂を主要な樹脂成分とする熱硬化性樹脂組成物は、含まれる有機溶剤を蒸散除去し、乾燥処理を施した後、好ましくは、50〜160℃の範囲で、5〜30分間加熱処理を施すと、分散質として含有される平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を均一な分散状態で保持しつつ、熱硬化物を構成する組成とすることが好適である。
一方、アルキッド樹脂を主要な樹脂成分とする熱硬化性樹脂組成物には、アルキッド樹脂成分と、そのアルキッド樹脂に対する硬化促進剤を含有してなる組成物を利用できる。熱硬化性樹脂組成物用にアルキッド樹脂に対する硬化促進剤としては、塗料用ドライヤーとして汎用される、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸ジルコニウムなどを好適に利用できる。例えば、アルキッド樹脂成分に対して、そのアルキッド樹脂に対する硬化促進剤の配合比率は、アルキッド樹脂100質量部に対して、前記の硬化促進剤用化合物を、例えば、ナフテン酸コバルトを0.1質量部、ナフテン酸ジルコニウムを0.05質量部、この程度の比率で添加することが好ましい。熱硬化性樹脂組成物中において、アルキッド樹脂成分と、そのアルキッド樹脂に対する硬化促進剤とが均一に配合される状態とするため、通常、アルキッド樹脂成分を溶解可能な有機溶剤を適量含む溶液に所定量の硬化促進剤を添加した状態とする。その際、アルキッド樹脂を主要な樹脂成分とする熱硬化性樹脂組成物は、含まれる有機溶剤を蒸散除去し、乾燥処理を施した後、好ましくは、60〜100℃の範囲で、5〜30分間加熱処理を施すと、分散質として含有される平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を均一な分散状態で保持しつつ、熱硬化物を構成する組成とすることが好適である。
一方、硬化型バインダー樹脂として、光硬化性樹脂を利用する際には、無電解メッキ金属層の形成に先立ち、少なくとも、形成される無電解メッキ金属層により被覆される領域に相当する部分に対して、所定のエネルギーを有する光の照射を施し、予め光硬化を促進させる手順を採用する。樹脂混合物塗布層に対して、配合されている光硬化性樹脂組成物に予め光硬化を促進した後、その塗布層表面に無電解メッキ処理を施す。なお、無電解メッキ金属層を形成した後、不導体基材を含め、所定の温度で加熱処理することで、不導体基材表面とメッキ金属層裏面とに対して、光硬化性樹脂による均一な濡れを達成した状態とする。
また、硬化型バインダー樹脂として、光硬化性樹脂を利用する場合にも、例えば、形成されるメッキ層がハンダ接合に利用される場合、得られる硬化物は、少なくとも、80℃に加熱する際に、十分な耐熱性を示すことが望ましい。かかる用途には、一般に、100℃程度の耐熱性を有する、エポキシアクリレート樹脂を主要な樹脂成分とする光硬化性樹脂組成物を利用することがより好ましい。前記耐熱性の要件を満足する、光硬化性樹脂として、光照射に伴い、自らラジカル種を生成し、光誘起ラジカル重合の可能なラジカル重合性樹脂、あるいは、光ラジカル重合開始剤や、光酸発生剤により誘起される、ラジカル重合や、光カチオン重合が可能な重合硬化型樹脂などを利用することがより好ましい。例えば、反応性(ラジカル重合性)オリゴマー;アルキッドアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン変性アクリレート等と、それに対する光ラジカル重合開始剤とを組み合わせて、光硬化性樹脂組成物として利用することができる。
また、光硬化性樹脂組成物は、その粘度を調整する必要がある場合、適宜、希釈溶媒用の有機溶剤を添加することができる。その際には、光硬化性樹脂組成物を含む樹脂混合物塗布層に対して、添加される希釈溶媒を蒸散・除去するため、乾燥処理を施した後、そのの「光硬化反応」を誘起するため、乾燥処理済みの塗布層表面から「光照射処理」を行う。この「光照射処理」では、光励起により、例えば、利用される光ラジカル重合開始剤からのラジカル種の生成や、光酸発生剤に起因するプロトンの発生を行うため、必要とするエネルギーを供給可能な紫外線照射などが利用される。また、「紫外線照射」に代えて、利用される光ラジカル重合開始剤や光酸発生剤の励起が可能な電子線照射を利用することも可能である。
乾燥処理済みの塗布層表面から入射される、紫外線や電子線の侵入深さは、光ラジカル重合開始剤や光酸発生剤による光吸収に加えて、分散されている金属微粒子に由来する光散乱・反射による減衰の影響をも受ける。乾燥処理済みの塗布層の膜厚方向全体において、光硬化の促進を図る上では、乾燥処理済みの塗布層の膜厚を、0.5μm〜60μmの範囲、より好ましくは、1μm〜30μmの範囲に選択した上で、利用される光ラジカル重合開始剤や光酸発生剤の励起を目的として、表面へ照射される紫外線光量を、0.1J/cm2〜2J/cm2(波長365nm)の範囲、より好ましくは、0.2J/cm2〜1.2J/cm2(波長365nm)の範囲に設定することが望ましい。
さらに、光硬化性樹脂組成物に対して、光ラジカル重合開始剤や光酸発生剤に加えて、熱分解によりラジカル発生が可能なラジカル発生剤を添加し、最終的に、無電解メッキ金属層を形成した後、不導体基材を含め、所定の温度で加熱処理することで、ラジカル重合型の熱硬化を進行させることが可能である。すなわち、加熱処理に伴い、不導体基材表面とメッキ金属層裏面とに対して、かかる光硬化性樹脂による均一な濡れを達成した状態とした上で、より強固なバンダー特性が達成される。この熱分解によりラジカル発生が可能なラジカル発生剤としては、例えば、過酸化物系のラジカル発生剤;パーブチルZ(t−ブチルパーオキシベンゾエート:日本油脂製)などが利用できる。その際、エポキシアクリレート樹脂などの光硬化性樹脂主成分100質量部あたり、過酸化物系のラジカル発生剤;パーブチルZ(t−ブチルパーオキシベンゾエート:日本油脂製)などを、0.1〜2質量部の範囲、好ましくは、0.3〜1質量部の範囲で添加することが望ましい。かかる熱分解により発生するラジカルによる熱硬化は、120℃〜160℃の範囲、好ましくは、130℃〜150℃の範囲に加熱することで達成できる。
加えて、本発明の第一の形態にかかる導電性回路の形成方法と、本発明の第三の形態にかかる導電性回路の形成方法では、乾燥処理を施された樹脂混合物塗布層中に、平均粒子径1〜200nmの金属微粒子が均一に分散されている状態を達成するため、金属微粒子の表面に被覆分子層を設け、分散性を向上させている。具体的には、金属微粒子を、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する有機化合物1種以上により被覆した状態とし、この表面の被覆分子層を構成している。この分散性を維持する被覆分子層用の化合物としては、末端にアミノ基(−NH2)、ヒドロキシ基(−OH)、スルファニル基(−SH)を、あるいは、分子内にエーテル(−O−)、スルフィド(−S−)を有する有機化合物であり、分散媒として利用される、硬化型バインダー樹脂組成物中に含まれるバインダー樹脂成分との親和性に優れたものを用いることが好ましい。
特に、用いる金属微粒子の平均粒子径を、好ましくは、1〜70nmの範囲、より好ましくは、1〜20nmの範囲に選択することは、樹脂混合物中に分散される金属微粒子の分散密度を高くした際、均一な分散性を保持する上で有効である。
なお、これら分散剤は、金属微粒子表面を被覆する分子層を形成して、分散性を向上させる機能を有し、例えば、樹脂混合物塗布層に乾燥処理を施す際、有機溶剤の蒸散・除去を促進するため、100℃前後に加熱する際、金属微粒子表面から容易に離脱することのないものが好適である。一方、樹脂混合物塗布層に乾燥処理を施した後、エネルギー線照射を施すことで、選択的に離脱させることが可能であることが必要である。
利用可能なアミノ基を有する化合物の代表として、アルキルアミンを挙げることができる。なお、かかるアルキルアミンは、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、好ましくは100℃以上となるものが好ましい。例えば、アルキルアミンとして、そのアルキル基は、C4〜C20が用いられ、さらに好ましくはC8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルキルアミンは、熱的な安定性もあり、また、その蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。一般に、かかる配位的な結合を形成する上では、第一級アミン型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級アミン型、ならびに、第三級アミン型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジアミン型、1,3−ジアミン型など、近接する二以上のアミノ基が結合に関与する化合物も利用可能である。また、ポリオキシアルキレンアミンを用いることもできる。その他、末端のアミノ基以外に、親水性の末端基、例えば、水酸基を有するヒドロキシアミン、例えば、エタノールアミンなどを利用することもできる。
また、利用可能なスルファニル基(−SH)を有する化合物の代表として、アルカンチオールを挙げることができる。なお、かかるアルカンチオールも、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、好ましくは100℃以上となるものが好ましい。例えば、アルカンチオールとして、そのアルキル基は、C4〜C20が用いられ、さらに好ましくはC8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にスルファニル基(−SH)を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルカンチオールは、熱的な安定性もあり、また、その蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。一般に、第一級チオール型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級チオール型、ならびに、第三級チオール型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジチオール型などの、二以上のスルファニル基(−SH)が結合に関与するものも、利用可能である。
また、利用可能なヒドロキシ基を有する化合物の代表として、アルカンジオールを挙げることができる。なお、かかるアルカンジオールも、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、通常、100℃以下の範囲となるものが好ましい。例えば、1,2−ジオール型などの、二以上のヒドロキシ基が結合に関与するものなどが、より好適に利用可能である。
すなわち、樹脂混合物中に分散される金属微粒子は、その表面は、かかる金属微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物1種以上により被覆された状態とするが、例えば、末端アミノ基を1以上有するアミン化合物一種以上により被覆された状態とすることが好ましい。例えば、樹脂混合物に調製した際、前記金属微粒子100質量部に対して、前記アミン化合物一種以上を総和として、5〜60質量部を含有している状態とする。好ましくは、前記金属微粒子100質量部に対して、前記アミン化合物一種以上を総和として、7〜40質量部、より好ましくは、10〜30質量部を含有している状態とする。
樹脂混合物中に分散される金属微粒子の表面の被覆分子層を形成する、前記アミン化合物の第一の機能は、樹脂混合物の調製に際し、攪拌、混合する工程において、金属微粒子がその清廉な表面を直接接触させ、相互に付着して塊を形成することを防止することである。従って、金属微粒子の表面に被覆分子層を形成する限り、特にその種類に限定はないものの、室温において、容易に蒸散することのないものが望ましい。従って、先に述べたように、末端にアミノ基を有するアミン化合物、例えば、アルキルアミンなどを用いることが好ましい。より具体的には、アルキルアミンとして、そのアルキル基は、C4〜C20が用いられ、さらに好ましくはC8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルキルアミンは、熱的な安定性もあり、また、その蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。金属微粒子の表面に被覆分子層を形成するという第一の機能を達成すべく、末端にアミノ基を有するアミン化合物、例えば、アルキルアミンなどの含有量は、金属微粒子の全表面に応じて、また、金属の種類、アミン化合物、例えば、アルキルアミンなどの種類をも考慮して、適宜選択すべきものである。一般に、C8〜C18のアルキルアミンを用い、金属自体の比重が、例えば、銀、金、銅程度であり、金属微粒子の平均粒子径が10nmより極端に小さくない場合では、被覆分子層に利用されるアルキルアミンの使用量は金属の種類や粒子径にもよるが、金属微粒子100質量部に対し、アルキルアミンの含有量を5〜60質量部、好ましくは、7〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部の範囲に選択することが好ましい。アルキルアミン以外のアミン化合物をも用いる際にも、金属微粒子100質量部に対し、アミン化合物の総含有量を5〜60質量部、好ましくは、7〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部の範囲に選択することが好ましい。
なお、金属微粒子を被覆する前記分子層の層厚は、金属微粒子の平均粒子径に依存せず、同程度とする必要がある。従って、金属微粒子の平均粒子径が小さくなると、金属微粒子の単位質量当たり、その金属微粒子の表面積の総和は増加するので、金属微粒子を被覆する前記分子層の形成に用いる、該金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子のいずれかを含む基を有する化合物の総和を増加させる。すなわち、使用する金属微粒子の平均粒子径に反比例させて、該金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子のいずれかを含む基を有する化合物の総和を増減させることが望ましい。
この被覆分子層により表面を保護されている状態を保つ金属微粒子自体は、無電解メッキ液に浸された際にも、金属表面を露呈することはなく、無電解メッキによる金属塊の析出の核としての機能を発揮しない。一方、本発明の第一の形態、ならびに、第三の形態では、微細な回路のパターン形状に対応させて、前記樹脂混合物塗布層の平坦な表面上、所望の微細な領域にエネルギー線照射を施し、そのエネルギー線照射を受けた表面部分のみに、被覆分子層が除去された金属微粒子を生成させ、無電解メッキによる金属塊の析出の核として利用している。この金属微粒子の表面を保護する、被覆分子層の離脱を促進するエネルギー線照射に利用される、エネルギー線としては、電子線または紫外線を使用することが望ましい。すなわち、所望のパターン形状の開口部を有するフォトマスクを利用した、紫外線照射、あるいは、指向性の高い電子線を利用して、所望のパターン形状に合わせて、局所的に電子線の掃引照射を利用することが好ましい。このエネルギー線照射には、波長180nm以上、400nm以下の紫外線、あるいは、波長400nm〜600nmの可視光、また、粒子線衝撃による励起を利用する場合、40keV以上の電子線を利用することが可能である。
具体的には、樹脂混合物塗布層の平坦な表面上に露呈している金属微粒子について、その表面を保護している被覆分子層を、局所的に照射されるエネルギー線により供給されるエネルギーを利用して、選択的に離脱させる。当初、金属微粒子の表面を保護している被覆分子層では、表面の金属原子に対して被覆分子は配位的な結合をしている。しかし、この配位的な結合に関与する金属の電子を励起すると、その配位的な結合力は低減し、被覆分子の離脱が進む。一方、金属微粒子の表面に存在する金属原子は、酸化を受け易い状態となり、最表面に一分子層程度の酸化被膜が形成される。この酸化被膜が形成されると、一旦、離脱した被覆分子による再被覆は、生じない状態となる。但し、無電解メッキ液中に浸されると、金属微粒子の表面に形成された酸化被膜は、速やかに還元を受け、清浄な金属面を有する金属微粒子へ変換される。この清浄な金属面を有する金属微粒子は、無電解メッキにより生成される金属原子の析出の核として機能する。結果的に、樹脂混合物塗布層の平坦な表面上、所望の微細な領域にエネルギー線照射を施すと、このエネルギー線照射を受けた微細な領域のみに、無電解メッキ金属層の形成がなされる。
この樹脂混合物塗布層の平坦な表面上に露呈している金属微粒子に対するエネルギー線照射では、波長180nm以上、400nm以下の紫外線を利用する場合には、表面へ照射される紫外線光量を、0.1J/cm2〜70J/cm2の範囲、好ましくは0.5J/cm2〜50J/cm2の範囲に設定することが望ましい。また、金属微粒子に対するエネルギー線照射に、40keV以上の電子線を利用する場合には、表面へ照射される電子線の照射量を、500kGy〜6000kGyの範囲に設定することが望ましい。
この金属微粒子の表面に対して、配位的な結合を形成している被覆分子の離脱後、最表面に一分子層程度形成される酸化被膜が、無電解メッキ液中に浸した際、速やかに還元を受ける上では、金属微粒子を構成する金属は、Pd、Ag、Cu、Au、Pt、Zn、Cr、Fe、Niからなる群から選択される金属種、またはこれら金属種の二種以上からなる合金であることが望ましい。すなわち、無電解メッキ液中に配合されている、還元性化合物を、速やかに酸化し、自らは金属へ還元可能な酸化状態を有する、Pd、Ag、Au、Ptなどの貴金属、あるいは、Cu2O,Zn2O,CrO,FeO,NiOなど、小さな酸化数を有する金属酸化物が生成される金属種からなる金属微粒子を用いることが好ましい。
一方、無電解メッキ金属層を形成する金属種も、Pd、Ag、Cu、Au、Pt、Zn、Cr、Fe、Niからなる群から選択される金属種を選択することが好ましい。
なお、無電解メッキの際、メッキ核として、機能する微細な金属微粒子を構成する金属種が、メッキされる金属種よりも、卑な金属である場合には、無電解メッキ液に浸漬した際、一部は、置換メッキ過程により、メッキされる金属種と置換される場合がある。その後は、同じ種の金属種が表面を形成する金属微粒子をメッキ核として、無電解メッキによる金属塊の形成が進行する。
本発明の第一の形態にかかる導電性回路の形成方法と、本発明の第三の形態にかかる導電性回路の形成方法においては、不導体基材の表面に、一様に樹脂混合物塗布層を作製した後、微細な回路のパターン形状に対応させて、前記樹脂混合物塗布層の平坦な表面上、所望の微細な領域にエネルギー線照射を施し、そのエネルギー線照射を受けた表面部分のみに、無電解メッキによる金属塊を選択的に析出して、目的とするパターン形状メッキ金属層を形成する形態が、一般に望ましい。
一方、不導体基材の三次元成形を行わない、本発明の第三の形態にかかる導電性回路の形成方法では、不導体基材の表面に、予め目的とするパターン形状を有する樹脂混合物塗布層を作製し、その表面全体にエネルギー線照射を施す形態を利用することも可能である。樹脂混合物の塗布層を形成する際、予め目的とするパターンに塗布層の形状を描画形成する手法として、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、転写印刷法を利用することが可能である。
利用する印刷手段に応じて、金属微粒子を含む樹脂混合物の液粘度を適宜調節することが必要となる。例えば、微細な塗布パターンの描画にスクリーン印刷を利用する際には、樹脂混合物は、その液粘度を、30〜300 Pa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。また、転写印刷法を利用する際には、樹脂混合物の液粘度を、10〜500 Pa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。一方、インクジェット印刷法を利用する際には、樹脂混合物の液粘度を、1〜100 mPa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。
金属微粒子を、分散媒の硬化性樹脂組成物中に分散してなる樹脂混合物の液粘度は、用いる金属微粒子の平均粒子径、乾燥処理後の樹脂混合物塗布層中における分散濃度、分散媒である硬化性樹脂組成物自体の種類、液粘度に依存して決まる。用いる金属微粒子の平均粒子径、乾燥処理後の樹脂混合物塗布層中における分散濃度を選択した上で、分散媒である硬化性樹脂組成物自体の種類、液粘度を適宜選択して、目的とする液粘度に調節することができる。すなわち、分散媒である硬化性樹脂組成物自体の種類に応じて、その希釈用有機溶剤の種類、配合量を適宜調整して、目的とする樹脂混合物の液粘度に調整することが可能である。
一方、本発明の第二の形態にかかる導電性回路の形成方法と、本発明の第四の形態にかかる導電性回路の形成方法とは、不導体基材の表面に、所望のパターン形状の無電解メッキ層を選択的に形成する手段として、微粉末状の有機金属化合物を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物の塗布層を形成し、この樹脂混合物塗布層の表面に対して、前記パターン形状に対応する領域にエネルギー線を照射することで、その後、無電解メッキ液に浸し、無電解メッキを施した際、エネルギー線照射を受けた表面部分に無電解メッキ層を選択的に形成させる手法を利用する点で、構成上の共通性を有している。
樹脂混合物塗布層の表面に、微粉末状の有機金属化合物を緻密に高い面密度で配置し、かかる有機金属化合物に含まれる金属イオン種を、一旦、金属酸化物の微小な粒子に変換し、無電解メッキ液中において、かかる金属酸化物の微小粒子が還元され、表面に清浄な金属面を有する核とする手法を利用している。この有機金属化合物に含まれる金属イオン種を、一旦、金属酸化物の微小な粒子に変換する過程は、表面からエネルギー線を照射することで、有機金属化合物を構成する、有機物成分を離脱させ、残余する金属イオン種を金属酸化物に変換し、微小な金属酸化物の粒子として凝集させる。この微小な金属酸化物は、一旦、接着剤層の表面に固着された状態となるが、無電解メッキ液中において、かかる金属酸化物の微小粒子が還元され、表面に清浄な金属面を有する核となる。
本発明の第二の形態にかかる導電性回路の形成方法でも、上記本発明の第一の形態と同様に、不導体基材表面に樹脂混合物塗布層を形成した後、不導体基材をその表面の樹脂混合物塗布層とともに、三次元成形する操作を設けている。すなわち、表面の樹脂混合物塗布層は、この時点では硬化処理が施されてなく、不導体基材を三次元成形すると、それに付随して、相似的に三次元成形を行うことが可能である。具体的には、不導体基材の表面に形成されている樹脂混合物塗布層においては、塗布に利用する樹脂混合物を塗布後、含有される溶剤成分を蒸散する目的で、乾燥処理が施されているが、その主成分は重合硬化処理を施す前の樹脂原料化合物であり、不導体基材を構成する材質と比較すると、格段に塑性変形性に富む状態である。そのため、不導体基材に三次元成形する操作を施し、塑性変形させた際、表面の樹脂混合物塗布層も追従して塑性変形し、結果的に相似的な三次元成形がなされる。例えば、不導体基材を一軸延伸して、長さ方向に「引き伸ばし加工」を施すと、その一軸延伸比率に反比例して、厚さが減少する。その際、表面の樹脂混合物塗布層も、同じ一軸延伸比率で、長さ方向に「引き伸ばし加工」を受け、一方、塗布層の厚さは、その一軸延伸比率に反比例して、薄くなる。乾燥処理を施された、表面の樹脂混合物塗布層中では、分散質の微粉末状有機金属化合物は、乾燥された硬化型バインダー樹脂組成物中においても、均一に分散された状態を保っている。一方、不導体基材に施される三次元成形操作に付随する、樹脂混合物塗布層の一軸延伸比率は、原寸に対して、100%〜600%の範囲に選択することが可能である。なお、この一軸延伸加工後における、樹脂混合物塗布層の膜厚は、0.1μm〜20μmの範囲、好ましくは0.2μm〜10μmの範囲となるように、加工前の樹脂混合物塗布層を調整することが望ましい。
上記樹脂混合物中に分散される微粉末状有機金属化合物は、微粉末サイズは、0.01μm〜5μmの範囲、より好ましくは、0.02μm〜0.5μmの範囲に選択することが好ましい。本発明の第二の形態ならびに第四の形態で利用される有機金属化合物としては、有機酸金属塩、または有機金属錯体が好ましい。その際、有機金属化合物中に含まれる金属種としては、Pd、Ag、Cu、Au、Pt、Zn、Cr、Fe、Niからなる群から選択される金属種を選択することが好ましい。例えば、有機酸金属塩としては、有機酸アニオン種として、種々のカルボン酸アニオン種を含むもの、また、有機金属錯体としては、錯体を構成する配位子として、アセチルアセトネート([CH3−CO−CH−CO−CH3]-)などを含むものが好適に利用される。なお、有機金属化合物中における、Pd、Pt、Au、Agの貴金属カチオン種としては、次の酸化数を有するカチオン、Pd(II)2+、Ag(I)+などが好適であり、Cu、Zn、Cr、Fe、Niの遷移金属カチオン種としては、次の酸化数を有するカチオン、Cu(II)2+などが好適である。
また、不導体基材上に設ける、乾燥処理を施された、樹脂混合物塗布層中に分散されている有機金属化合物微粉末の分散密度を、1.0×1012個/mm3〜3.5×1014個/mm3の範囲、すなわち、1.0×103個/μm3〜3.5×105個/μm3の範囲、より好ましくは、5.0×1012個/mm3〜1.0×1014個/mm3の範囲、すなわち、5.0×103個/μm3〜1.0×105個/μm3の範囲に選択することが望ましい。それに伴い、塗布層表面に露呈する有機金属化合物微粉末の面密度を1.0×101個/μm2〜4×102個/μm2の範囲、より好ましくは、4×101個/μm2〜2×102個/μm2の範囲とすることが好ましい。すなわち、塗布層表面に露呈する有機金属化合物微粉末が正方格子状に配置されると仮定した際、隣接する有機金属化合物微粉末相互の平均的距離は、0.20μm〜0.07μmの範囲とすることが好ましい。
その状態で、塗布層表面に露呈する有機金属化合物微粉末にエネルギー線照射を施し、有機物成分の脱離を図ることで、残余する金属カチオン種を金属酸化物に変換し、微小な金属酸化物の粒子として凝集させる。生成される微小な金属酸化物の粒子は、塗布層表面に露呈された状態となり、その後、無電解メッキ液中に浸すと、速やかに還元を受け、清浄な金属表面を有する粒子となる。塗布層表面に上記の面密度で配置されている、該粒子の清浄な金属表面を核として、無電解メッキ工程において、平均粒子径0.5μm〜4μmの範囲の微細な金属塊が生成する結果、樹脂混合物塗布層表面のほぼ全面を覆うように、無電解メッキによる微細な金属塊の被覆層が形成される。その後、一面に緻密に分布する微細な金属塊の被覆層を、さらに覆うように、無電解メッキ金属層の形成が進行する結果、無電解メッキ金属層の膜厚が1μmに達した時点では、均一な面状に形成された金属膜を下地層として形成される無電解メッキ金属層と比較しても、全く遜色のない、緻密で均一なメッキ金属層が形成される。
有機金属化合物微粉末自体は、無電解メッキ液に浸された際にも、直接、還元を受け、金属微粒子を生成することはなく、無電解メッキによる金属塊の析出の核としての機能を発揮しない。一方、本発明の第二の形態、ならびに、第四の形態では、微細な回路のパターン形状に対応させて、前記樹脂混合物塗布層の平坦な表面上、所望の微細な領域にエネルギー線照射を施し、そのエネルギー線照射を受けた表面部分のみに、有機金属化合物微粉末から、清浄な金属面を有する微細な粒子を生成させ、無電解メッキによる金属塊の析出の核として利用している。この有機金属化合物を構成する有機物成分の離脱を促進するエネルギー線照射に利用される、エネルギー線としては、電子線または紫外線を使用することが望ましい。すなわち、所望のパターン形状の開口部を有するフォトマスクを利用した、紫外線照射、あるいは、指向性の高い電子線を利用して、所望のパターン形状に合わせて、局所的に電子線の掃引照射を利用することが好ましい。このエネルギー線照射には、波長180nm以上、400nm以下の紫外線、あるいは、波長400nm〜600nmの可視光、また、粒子線衝撃による励起を利用する場合、40keV以上の電子線を利用することが可能である。
具体的には、樹脂混合物塗布層の平坦な表面上に露呈している有機金属化合物微粉末について、該有機金属化合物を構成する有機物成分を、局所的に照射されるエネルギー線により供給されるエネルギーを利用して、選択的に離脱させる。当初、有機金属化合物では、金属カチオン種に対して、有機物成分がイオン結合、あるいは、配位子結合を形成している。しかし、この有機金属化合物に含まれる金属カチオン種の電子を励起すると、そのイオン結合または配位子結合による結合力は低減し、有機物成分の離脱が進む。一方、励起された金属カチオン種は、酸化状態の不均一化を起こし、金属原子とより酸化数の大きな金属カチオン種となる。生成した酸化数の大きな金属カチオン種は、周囲に存在する有機物を酸化し、自らは、部分的に還元され、当初の酸化数を有する状態となる。結果的に、金属原子が凝集し、その表面に金属酸化物の被膜を有する微細な粒子に変換される。この微細な粒子では、最表面に一分子層程度の酸化被膜が形成されている状態となる。この酸化被膜が形成されると、一旦、離脱した有機物成分は、再びイオン結合、あるいは、配位子結合を形成して、有機金属化合物を構成することは困難となる。但し、無電解メッキ液中に浸されると、この微細な粒子の表面に形成された酸化被膜は、速やかに還元を受け、清浄な金属面を有する粒子へ変換される。この清浄な金属面を有する粒子は、無電解メッキにより生成される金属原子の析出の核として機能する。結果的に、樹脂混合物塗布層の平坦な表面上、所望の微細な領域にエネルギー線照射を施すと、このエネルギー線照射を受けた微細な領域のみに、無電解メッキ金属層の形成がなされる。
この樹脂混合物塗布層の平坦な表面上に露呈している有機金属化合物微粉末に対するエネルギー線照射では、波長180nm以上、400nm以下の紫外線を利用する場合には、表面へ照射される紫外線光量を、0.1J/cm2〜70J/cm2の範囲、より好ましくは、0.5J/cm2〜50J/cm2の範囲に設定することが望ましい。また、有機金属化合物微粉末に対するエネルギー線照射に、40keV以上の電子線を利用する場合には、表面へ照射される電子線の照射量を、500kGy〜6000kGyの範囲に設定することが望ましい。
この有機金属化合物微粉末から生成される、粒子の最表面に一分子層程度形成される酸化被膜が、無電解メッキ液中に浸した際、速やかに還元を受ける上では、有機金属化合物を構成する金属種は、Pd、Ag、Cu、Au、Pt、Zn、Cr、Fe、Niからなる群から選択される金属種であることが望ましい。すなわち、無電解メッキ液中に配合されている、還元性化合物を、速やかに酸化し、自らは金属へ還元可能な酸化状態を有する、Pd、Ag、Au、Ptなどの貴金属、あるいは、Cu2O,Zn2O,CrO,FeO,NiOなど、小さな酸化数を有する金属酸化物が生成される金属種を用いることが好ましい。
一方、本発明の第二の形態、第四の形態でも、無電解メッキ金属層を形成する金属種は、Pd、Ag、Cu、Au、Pt、Zn、Cr、Fe、Niからなる群から選択される金属種を選択することが好ましい。
本発明の第二の形態にかかる導電性回路の形成方法と、本発明の第四の形態にかかる導電性回路の形成方法においては、不導体基材の表面に、一様に樹脂混合物塗布層を作製した後、微細な回路のパターン形状に対応させて、前記樹脂混合物塗布層の平坦な表面上、所望の微細な領域にエネルギー線照射を施し、そのエネルギー線照射を受けた表面部分のみに、無電解メッキによる金属塊を選択的に析出して、目的とするパターン形状メッキ金属層を形成する形態が、一般に望ましい。
一方、不導体基材の三次元成形を行わない、本発明の第四の形態にかかる導電性回路の形成方法では、不導体基材の表面に、予め目的とするパターン形状を有する樹脂混合物塗布層を作製し、その表面全体にエネルギー線照射を施す形態を利用することも可能である。樹脂混合物の塗布層を形成する際、予め目的とするパターンに塗布層の形状を描画形成する手法として、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、転写印刷法を利用することが可能である。
利用する印刷手段に応じて、金属微粒子を含む樹脂混合物の液粘度を適宜調節することが必要となる。例えば、微細な塗布パターンの描画にスクリーン印刷を利用する際には、樹脂混合物は、その液粘度を、30〜300 Pa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。また、転写印刷法を利用する際には、樹脂混合物の液粘度を、10〜500 Pa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。一方、インクジェット印刷法を利用する際には、樹脂混合物の液粘度を、1〜100 mPa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。
有機金属化合物の微粉末を、分散媒の硬化性バインダー樹脂組成物中に分散してなる樹脂混合物の液粘度は、用いる有機金属化合物微粉末のサイズ、乾燥処理後の樹脂混合物塗布層中における分散濃度、分散媒である硬化性樹脂組成物自体の種類、液粘度に依存して決まる。用いる有機金属化合物微粉末のサイズ、乾燥処理後の樹脂混合物塗布層中における分散濃度を選択した上で、分散媒である硬化性樹脂組成物自体の種類、液粘度を適宜選択して、目的とする液粘度に調節することができる。すなわち、分散媒である硬化性樹脂組成物自体の種類に応じて、その希釈用有機溶剤の種類、配合量を適宜調整して、目的とする樹脂混合物の液粘度に調整することが可能である。
分散媒の硬化性バインダー樹脂組成物は、上述する本発明の第一の形態や第三の形態において、好適に利用されるものが、本発明の第二の形態、第四の形態においても、好ましい。その他、硬化性バインダー樹脂組成物の硬化条件なども、上述する本発明の第一の形態や第三の形態において、好適に利用されるものが、本発明の第二の形態、第四の形態においても、好ましい。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。下記の実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例であるが、本発明は、これらの実施例に示す態様に限定されるものではない。
後述する実施例ならびに比較例においては、「引き伸ばし加工」、「紫外線照射処理」として、下記の操作を利用している。また、作製される無電解メッキ層の評価は、各評価項目について、下記する評価条件、基準を利用している。
1.「引き伸ばし加工」
ポリカーボネートシートに対する「引き伸ばし加工」では、引っ張り試験器を利用し、毎分10mmの延伸速度で一軸延伸し、シート長を原寸の170%まで引き伸ばす。
2.「紫外線照射処理」
紫外線源として、2kWの超高圧水銀灯を用いる紫外線露光機により、照射面に対して、垂直方向より露光する。その際、紫外線露光量(照射光量)は、波長365nmにおいて測定される光量に基づき、調整する。
3.無電解メッキ層の評価
「体積抵抗率」:JIS−H−8646に記載の体積抵抗率試験法に準拠し、作製される無電解メッキ層について、矩形形状メッキ層の幅(W)、長さ(L)、ならびに、断面よりメッキ層の平均厚み(T)を実測した上、4端子法にて抵抗値を測定し、平均厚み(T)を有する均質な導電体と仮定し、体積抵抗率を算出する。
銅の無電解メッキ層に関しては、評価される体積抵抗率が、10μΩ・cm以下であるものを良品とする。
「接着強度」:JIS−H−8504に記載のテープ試験法に準拠し、作製される無電解メッキ層の表面に対して、界面に気泡が入らないように粘着テープを押し付け、10秒間密着させた後、瞬間に、該粘着テープを剥離する。前記粘着テープの接着力は、120gf/cmに相当する。
剥離される粘着面において、無電解メッキ層の剥離欠落が観測されない場合、良品とする。
(実施例1)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
分散媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。該熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルである、エピクロンHP−4032(エポキシ当量142)7質量部、ビスフェノールAエポキシ樹脂:エピコート828EL(エポキシ当量187)3質量部、その硬化剤成分として、酸無水物:YH−307(分子量:235)13.8質量部、硬化促進剤として、アミン系硬化触媒:アミキュアーPN−23、0.3質量部、更に、カップリング剤成分として、KBM−403、0.1質量部を含有している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物70質量部に対して、分散質の金属微粒子として、平均粒子径が5nmのAg超微粒子(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトシルバー、真空冶金(株))30質量部を、分散溶媒成分のトルエン、55.7質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が5nmのAg超微粒子は、Ag超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Ag超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているトルエンを、減圧下で留去して、目的のペースト状樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、40Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚19μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、10μmとなる。
「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。一方、ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対しては、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
無電解銅メッキ処理には、下記の組成を有する、市販のメッキ液MK−421(ムロマチテクノス製);
MK−421A(銅成分+HCHO) 0.035 L
MK−421B(水酸化ナトリウム) 0.035 L
MK−421M(水酸化カリウム) 0.100 L
水 0.830 L
の3液MK−421A、MK−421B、MK−421Mを、前記比率で、水中に希釈したものを使用する。
次いで、「紫外線照射処理」の後、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(MK−421;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、7μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、3.8μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
別途、ポリカーボネートフィルム上に、平均塗布膜厚さ19μmで前記ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を一面に形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。このポリカーボネートフィルム上に一面に形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さ方向に、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、10μmとなる。
この「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、ライン幅60μm、スペース60μmの並行な、長さ5mmの配線パターンを、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件でコンタクト露光する。
次いで、配線パターンをコンタクト露光後、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(MK−421;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム表面に形成されている、樹脂混合物塗布層表面の「紫外線露光」された配線パターン領域の部分にのみ、選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、基材表面自体が露呈する表面ならびに、樹脂混合物塗布層表面の「紫外線露光」がなされていない領域には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「接着強度」を評価した。
配線パターンと同形状に作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、6μmであり、平均ライン幅は、52μm、平均スペース5μmであった。この並行な、長さ5mmの配線パターン状の無電解銅メッキ層に対して、上述のテープ剥離試験を行ったところ、無電解銅メッキ層の剥離は見出されなかった。また、隣接する二本の配線パターン状無電解銅メッキ層の間で、その絶縁抵抗値の測定を試みたところ、作製した無電解銅メッキ層の長さ5mm、平均スペース58μmの分離領域に対して、105MΩ以上の測定不能範囲であることが確認された。
加えて、FR−4のプリント基板用基材上に、ライン幅165μm、スペース165μmの櫛形配線パターン形状、平均塗布膜厚さ20μmで前記ペースト状の樹脂混合物の塗布膜をスクリーン印刷法で形成する。次いで、この塗布膜を110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚19μmの被膜層(塗布層)を形成させる。このFR−4のプリント基板用基材上に印刷形成された櫛形配線パターン形状の樹脂混合物塗布層を、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で全面露光する。
次いで、櫛形配線パターン形状の樹脂混合物塗布層を全面露光後、FR−4のプリント基板用基材は、無電解メッキ液(MK−421;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、基材表面に形成されている、「紫外線露光」された樹脂混合物塗布層表面の配線パターン領域にのみ、選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、基材の表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「接着強度」を評価した。
櫛形配線パターンと同形状に作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、6μmであり、平均ライン幅は、167μm、平均スペース163μmであった。この櫛形配線パターン状の無電解銅メッキ層に対して、上述のテープ剥離試験を行ったところ、無電解銅メッキ層の剥離は見出されなかった。
(実施例2)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
分散媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。該熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、エピクロンEXA−835LV(エポキシ当量165)10質量部、その硬化剤成分として、酸無水物:ドデセニル無水コハク酸(分子量226)12.3質量部、硬化促進剤として、アミン系硬化触媒:アミキュアーPN−23、0.3質量部、更に、カップリング剤成分として、KBM−403、0.1質量部を含有している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物70質量部に対して、分散質の金属微粒子として、平均粒子径が5nmのAg超微粒子(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトシルバー、真空冶金(株))30質量部を、分散溶媒成分のトルエン、55.7質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が5nmのAg超微粒子は、Ag超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Ag超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているトルエンを、減圧下で留去して、目的のペースト状樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、24Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ19μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、10μmとなる。
「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。一方、ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対しては、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
次いで、「紫外線照射処理」の後、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(MK−421;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、9μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、2.7μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
(実施例3)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
分散媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。該熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、エピクロンEXA−7015(エポキシ当量100)10質量部、その硬化剤成分として、酸無水物:ドデセニル無水コハク酸(分子量226)97質量部、硬化促進剤として、アミン系硬化触媒:アミキュアーPN−23、0.3質量部、更に、カップリング剤成分として、KBM−403、0.1質量部を含有している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物70質量部に対して、分散質の金属微粒子として、平均粒子径が5nmのAg超微粒子(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトシルバー、真空冶金(株))30質量部を、分散溶媒成分のトルエン、55.7質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が5nmのAg超微粒子は、Ag超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Ag超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているトルエンを、減圧下で留去して、目的のペースト状樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、70Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ19μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、10μmとなる。
「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。一方、ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対しては、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
次いで、「紫外線照射処理」の後、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(MK−421;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、7μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、3.8μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
(実施例4)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
分散媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する熱硬化型アルキッド樹脂組成物とする。該熱硬化型アルキッド樹脂組成物は、アルキッド樹脂成分として、アルキッド樹脂8710−55X、14.3質量部(固形分70%:溶剤キシレン)、硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト0.05質量部を含有している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物70質量部に対して、分散質の金属微粒子として、平均粒子径が5nmのAg超微粒子(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトシルバー、真空冶金(株))30質量部を、分散溶媒成分のトルエン、55.7質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が5nmのAg超微粒子は、Ag超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Ag超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているトルエンを減圧下で留去し、一方、該減圧留去に伴い、減少する溶剤キシレンの関しては、アルキッド樹脂に対する溶剤キシレンの当初配合比率に再調整し、目的のペースト状樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、120Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ19μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、溶剤キシレンを蒸散させるため、室温で5時間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚15μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、10μmとなる。
「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。一方、ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対しては、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
次いで、「紫外線照射処理」の後、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(MK−421;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、10μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、2.5μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
(実施例5)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
分散媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。該熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルである、エピクロンHP−4032(エポキシ当量142)7質量部、ビスフェノールAエポキシ樹脂:エピコート828EL(エポキシ当量187)3質量部、その硬化剤成分として、酸無水物:YH−307(分子量:235)13.8質量部、硬化促進剤として、アミン系硬化触媒:アミキュアーPN−23、0.3質量部、更に、カップリング剤成分として、KBM−403、0.1質量部を含有している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物99質量部に対して、分散質の金属微粒子として、平均粒子径が8nmのPd超微粒子(真空冶金(株))1質量部を、分散溶媒成分のターピネオール、49質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が8nmのPd超微粒子は、Pd超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Pd超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているターピネオールを、減圧下で留去して、目的のペースト状樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、21Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ19μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚16μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、9μmとなる。
「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。一方、ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対しては、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
次いで、「紫外線照射処理」の後、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(MK−421;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、13μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、2μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
(実施例6)
有機金属化合物を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に配合してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
有機金属化合物に対する溶媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。該熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルである、エピクロンHP−4032(エポキシ当量142)7質量部、ビスフェノールAエポキシ樹脂:エピコート828EL(エポキシ当量187)3質量部、その硬化剤成分として、酸無水物:YH−307(分子量:235)13.8質量部、硬化促進剤として、アミン系硬化触媒:アミキュアーPN−23、0.3質量部、更に、カップリング剤成分として、KBM−403、0.1質量部を含有している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物93質量部に対して、有機金属化合物として、有機酸銀塩の安息香酸銀(分子量228.99)15質量部を添加し、3本ロールにて、均一に混合させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。混合の後、該ペースト状の樹脂混合物中に分散される安息香酸銀微粉末の平均粒子径は、0.5〜1μm程度となる。なお、作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、150Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ20μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、11μmとなる。
「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。一方、ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対しては、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
次いで、「紫外線照射処理」の後、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(MK−421;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、9μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、3.3μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
(実施例7)
有機金属化合物を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に配合してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
有機金属化合物に対する溶媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、前記実施例6に記載の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。一方、配合される有機酸金属塩として、実施例6の安息香酸銀に代えて、本実施例7では、オレイン酸銀を利用する。
実施例6に記載の樹脂組成物93質量部に対して、有機金属化合物として、オレイン酸銀(分子量388.64)25.3質量部を添加し、3本ロールにて、均一に混合させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。混合の後、該ペースト状の樹脂混合物中に分散されるオレイン酸銀微粉末の平均粒子径は、0.5〜1μm程度となる。なお、該ペースト状の樹脂混合物の液粘度は、143Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
調製された樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を利用して、シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ20μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
各不導体基材表面上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、「紫外線照射処理」時の露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件を選択した上で、実施例6に記載の手順・条件に従って、無電解銅メッキ層の形成を行った。
その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、8μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、4μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
(実施例8)
有機金属化合物を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に配合してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
有機金属化合物に対する溶媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、上記実施例6に記載の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。一方、配合される有機酸金属塩として、実施例6の安息香酸銀に代えて、本実施例8では、酢酸パラジウムを利用する。
実施例6に記載の樹脂組成物93質量部に対して、有機金属化合物として、酢酸パラジウム(分子量224.49)14.8質量部を添加し、3本ロールにて、均一に混合させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。混合の後、該ペースト状の樹脂混合物中に分散される酢酸パラジウム微粉末の平均粒子径は、0.5〜1μm程度となる。なお、該ペースト状の樹脂混合物の液粘度は、105Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
調製された樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を利用して、シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ20μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚19μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
各不導体基材表面上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」時の露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件を選択した上で、実施例6に記載の手順・条件に従って、無電解銅メッキ層の形成を行った。
その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、12μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、4.6μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
(実施例9)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
分散媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する光硬化型樹脂組成物とする。該光硬化型樹脂組成物は、主成分のウレタンアクリレート樹脂成分として、光重合開始剤が予め添加されている、ウレタンアクリレート3201(ロックタイト製)10質量部を含有している。さらに、主成分のウレタンアクリレート3201 100質量部当たり、熱分解によるラジカル発生剤、パーチブルZ(t−ブチルパーオキシベンゾエート:日本油脂製)1質量部を添加している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。従って、光重合開始剤を利用する光硬化に加えて、その後、加熱処理を施すと、前記のラジカル発生剤を利用するラジカル重合による熱硬化も可能である。
この樹脂組成物70質量部に対して、分散質の金属微粒子として、平均粒子径が5nmのAg超微粒子(商品名:パーフェクトシルバー、真空冶金(株))30質量部を、分散溶媒成分のトルエン、55.7質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が5nmのAg超微粒子は、Ag超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Ag超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているトルエンを、減圧下で留去して、目的のペースト状樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、49Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である光硬化型バインダー樹脂組成物は、波長180nm以上、400nm以下の紫外線照射により、光重合開始剤による重合が開始する。また、その後、120℃〜160℃で加熱処理することで、配合されている過酸化物系ラジカル発生剤によるラジカル重合が達成され、最終的に、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ20μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、室温で、光硬化用の波長180nm以上、400nm以下の紫外線を露光光量1J/cm2(波長365nm)で照射し、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、10μmとなる。
「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。一方、ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対しては、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
この「紫外線照射処理」に伴い、樹脂混合物塗布層中に含まれる光硬化型樹脂組成物は、紫外線照射領域の表面から、その塗布層の深さ方向に向かって入射される紫外線によって、光硬化が誘起される。
次いで、「紫外線照射処理」の後、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(MK−142;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を施す。その際、無電解銅メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銅メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銅メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銅メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銅メッキ層の平均層厚は、9μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、3.5μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。
(比較例1)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
分散媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。該熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルである、エピクロンHP−4032(エポキシ当量142)7質量部、ビスフェノールAエポキシ樹脂:エピコート828EL(エポキシ当量187)3質量部、その硬化剤成分として、酸無水物:YH−307(分子量:235)13.8質量部、硬化促進剤として、アミン系硬化触媒:アミキュアーPN−23、0.3質量部、更に、カップリング剤成分として、KBM−403、0.1質量部を含有している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物70質量部に対して、分散質の金属微粒子として、平均粒子径が5nmのAg超微粒子(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトシルバー、真空冶金(株))30質量部を、分散溶媒成分のトルエン、55.7質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が5nmのAg超微粒子は、Ag超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Ag超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているトルエンを、減圧下で留去して、目的のペースト状樹脂混合物とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、40Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚19μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で310分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、10μmとなる。
次いで、「紫外線照射処理」を施さず、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムを、無電解メッキ液(MK−142;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を試みた。その際、「紫外線照射処理」を施していない樹脂混合物塗布層表面、各不導体基材表面自体が露呈する表面の何れにも、銅メッキ被膜の析出は見出されない。
(比較例2)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を熱可塑型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物を調製した。
分散媒として利用する、熱可塑型バインダー樹脂組成物は、溶剤 γ−ブチロラクトンとトリグライム中に、熱可塑性共重合ポリイミド(固形分27%)を溶解してなる組成物である。熱可塑性共重合ポリイミド(固形分27%)259質量部に対して、平均粒子径が5nmのAg超微粒子(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトシルバー、真空冶金(株))30質量部、分散溶媒成分のトルエン、55.7質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が5nmのAg超微粒子は、Ag超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Ag超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているトルエンを、減圧下で留去して、目的のペースト状樹脂混合物とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、83Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、含有さえる熱可塑型バインダー樹脂に、100℃30分間、引き続き150℃30分間の加熱処理を施し、熱可塑型バインダー樹脂組成物中に配合される溶媒を除去することで、ステップ・キュアーを行う。その結果、このキュアー処理後、熱可塑型バインダー樹脂層は、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、接着剤層として機能する。
シート状不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚19μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で30分間乾燥させて、さらに、200℃、30分間の加熱処理を施すことにより、表面にタックのない、平均膜厚14μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
次いで、「紫外線照射処理」を施したポリイミド基材を、無電解メッキ液(MK−142;ムロマチテクノス製)中に40℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銅メッキ処理を試みた。その際、「紫外線照射処理」を施した樹脂混合物塗布層表面、不導体基材表面自体が露呈する表面の何れにも、銅メッキ被膜の析出は見出されない。
(実施例10)
平均粒子径1〜200nmの金属微粒子を硬化型バインダー樹脂組成物中に均一に分散してなる樹脂混合物として、下記する組成の樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)を調製した。
分散媒として利用する、硬化型バインダー樹脂組成物は、下記の組成を有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物とする。該熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、1,6−ジヒドキシナフタレンジグリシジルエーテルである、エピクロンHP−4032(エポキシ当量142)7質量部、ビスフェノールAエポキシ樹脂:エピコート828EL(エポキシ当量187)3質量部、その硬化剤成分として、酸無水物:YH−307(分子量235)13.8質量部、硬化促進剤として、アミン系硬化触媒:アミキュアーPN−23、0.3質量部、更に、カップリング剤成分として、KBM−403、0.1質量部を含有している。これら成分を良く攪拌混合して、樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物100質量部に対して、分散質の金属微粒子として、平均粒子径が5nmのAg超微粒子(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトシルバー、真空冶金(株))30質量部を、分散溶媒成分のトルエン、55.7質量部中に含む分散液を添加し、3本ロールにて、均一に分散させ、ペースト状の樹脂混合物に調製した。該平均粒子径が5nmのAg超微粒子は、Ag超微粒子の金属表面に、被覆剤分子ドデシルアミンの被覆層が形成されており、Ag超微粒子100質量部あたり、この被覆剤分子ドデシルアミンが15質量部含まれている。最終的に、混入しているトルエンを、減圧下で留去して、目的のペースト状樹脂混合物(メッキ形成用接着剤)とする。
なお、ここで作製されたペースト状の樹脂混合物の液粘度は、40Pa・s(25℃)である。該ペースト状の樹脂混合物の塗布層は、分散媒である硬化型バインダー樹脂組成物を100℃〜160℃で加熱硬化処理することで、導電性回路作製用の不導体基材、例えば、各種高分子フィルム(シート)表面に対して、高い接着強度を有する接着剤層として機能する。
シート状の不導体基材:ポリイミド(カプトン500H;デュポン製)ならびにポリカーボネート(レキサン8010;Piedomont Plastic,Inc製)の表面に、20μm厚のメタルマスクを用いて、幅5mm、長さ20mmの矩形形状、平均塗布膜厚さ19μmでマスク印刷し、ペースト状の樹脂混合物の塗布膜を形成する。次いで、110℃で10分間乾燥させて、表面にタックのない、平均膜厚18μmの被膜層(塗布層)を形成させる。
前記ポリカーボネートフィルム上へのマスク印刷法で形成した、ペースト状の樹脂混合物塗布層は、該ポリカーボネートフィルム全体に、上述の「引き伸ばし加工」を施すと、基材のポリカーボネートフィルムの長さが原寸の170%まで一軸延伸されるとともに、樹脂混合物塗布層の長さは、原寸の170%まで引き伸ばされる。一方、引き伸ばし加工後、樹脂混合物塗布層の平均膜厚は、原寸の10/17に相当する、10μmとなる。
「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルム上の樹脂混合物塗布層に対して、「紫外線照射処理」として、その表面から、上記の紫外線露光機にて、露光量:45J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。一方、ポリイミド基材上の樹脂混合物塗布層に対しては、上記の紫外線露光機にて、露光量:27J/cm2(波長365nm)の条件で紫外線照射を行う。
次いで、「紫外線照射処理」の後、ポリイミド基材、ならびに、「引き伸ばし加工」済ポリカーボネートフィルムは、無電解メッキ液(ムデンシルバー;奥野製薬工業製)中に35℃で3時間浸漬し、その表面に無電解銀メッキ処理を施す。その際、無電解銀メッキ層は、各不導体基材表面に形成されている、「紫外線照射処理」済の樹脂混合物塗布層表面に選択的に銀メッキ被膜の析出が進行し、各不導体基材表面自体が露呈する表面には、銀メッキ被膜の析出が見出されない。
無電解メッキ液より取り出し、残留するメッキ液を洗浄除去した後、各不導体基材は、恒温炉内において、不活性ガス雰囲気下、130℃にて3時間加熱処理し、樹脂混合物塗布層中に含まれる熱硬化型エポキシ樹脂組成物の熱硬化を行う。最終的に、熱硬化型エポキシ樹脂の硬化物層を接着剤層として、各不導体基材の表面に固着されている無電解銀メッキ層について、上記の評価法に従って、その「体積抵抗率」、「接着強度」を評価した。
作製された無電解銀メッキ層の平均層厚は、4μmであり、上述のテープ剥離試験において、剥離は見出されなかった。また、その体積抵抗率は、2.8μΩ・cmであり、体積抵抗率10μΩ・cm以下の「良品」基準を満たしている。