JP5053531B2 - フレネルレンズ - Google Patents

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Description

本発明はフレネルレンズに関する。
フレネルレンズは、凸レンズまたは凹レンズの傾斜面を、同心円状または平行に並べた複数のプリズムによる不連続な傾斜面に置き換えることにより、レンズの厚みを傾斜を実現するに必要最小限の厚みとして軽量でコンパクトな平板状のレンズとしたものである。
フレネルレンズは、例えば液晶表示装置のバックライトに用いるレンズ(例えば下記特許文献2参照)のように、点光源からの光を平行光線とするため、およびこれとは逆に、太陽光発電装置における集光レンズ(例えば下記特許文献3)のように、平行光線を集光するため等に広く用いられている。
F値(焦点距離/レンズ径)の小さいフレネルレンズでは、光軸から離れたレンズの周辺部で光を曲げる角度(偏角:Deviation Angle)が大きくなる。そのような区域ではプリズムの斜面の傾斜が大きくなり屈折界面への入射角が大きくなるため屈折界面での反射の割合が大きくなって透過率(Transmittance)が低下する。そこで、大きい偏角が必要とされる区域ではプリズムの斜面で全反射させた後垂直面で屈折させるようにプリズムの頂角(Vertex Angle)を設計することで透過率を向上させることが知られており、例えば下記特許文献1,2,4にもそのようなフレネルレンズが記載されている。
米国特許4,755,921 特開2002−221605号公報 特開2004−172255号公報 米国特許4,337,759
本発明は、従来よりも透過率を改善したプリズムを用いたフレネルレンズを提供する。
本発明によれば、複数のプリズムからなるフレネルレンズであって、該複数のプリズムの少なくとも一部は、焦点からの入射光またはその反対側からの光軸に平行な入射光をその内部で少なくとも2回全反射させる頂角を有するフレネルレンズが提供される。
このフレネルレンズは例えば、前記入射光を全反射させない頂角を有するプリズムからなる第1の区域、及びそれに隣接して該入射光をその内部で2回全反射させる頂角を有するプリズムからなる第2の区域を具備する。
このフレネルレンズはさらに、前記第2の区域に隣接し、前記入射光をその内部で1回全反射させる頂角を有するプリズムからなる第3の区域をさらに具備する場合ある。
内部で2回以上全反射させるプリズムを一部に導入することにより、屈折面での反射が少なくなり、透過率を一層改善することができる。
〔発明の実施の形態〕
太陽光発電装置などに用いられる集光用のフレネルレンズと液晶表示装置のバックライトなどに用いられる平行光線を得るためのフレネルレンズとでは光の向きが異なるのみである。したがって、以下には集光用フレネルレンズについて説明するが、この説明は平行光線を得るためのフレネルレンズに対しても同様に適用できる。また、プリズムが同心円に配置された円形フレネルレンズについて説明するが、プリズムが平行に並べられたリニアフレネルレンズについても同様に適用できる。
集光用フレネルレンズは、図1に示すように多数のプリズムを形成するための溝(groove)10が多数形成されたGroove面12から光が入射するタイプと、図2に示すように平面14側から入射するタイプがある。Groove面12から入射するタイプでは図1に示すようにプリズムの垂直面17に近い部位に入射した光16は垂直面17で全反射して最終的に目的とする焦点位置に集光されず、集光率に寄与しない。このため、太陽光を高効率で集光するためには図2のような平面から入射するタイプが集光率に関しては有効である。然るに、光軸から離れるにつれてプリズムの斜面18の傾斜が急になり、それにつれて界面で起す反射の割合が多くなり集光率の低下を招く。そこで、光軸から離れた部分については図3のごとくに斜面18で全反射した後垂直面17で屈折させるタイプのプリズムを用いた設計がなされてきた。これにより、高い集光率が得ることが可能である。特に焦点距離とレンズの直径の比で表されるF値(焦点距離/レンズ径)が小さくなる領域で特に有効で屈折型フレネルレンズより優れた集光率を得ることができる。
ところで、これまで利用されてきた全反射型のプリズムでは図4に示すように、平面aに垂直に入射した光は、斜面cで1回全反射を起し、垂直面bで屈折を起して焦点に向かう。
これに対して、図5に示すようなプリズムでは、平面aに垂直に入射した光は斜面cで全反射を起し、さらに垂直面bで2回目の全反射を生じて、斜面cで屈折を起して焦点に向かう。このようなプリズムでは、同じ偏角を得るのに、屈折の際の入射角が小さくなり、フレネル反射によるロスが少なくなる。これにより、従来の内部1回の全反射を起すプリズムを備えた反射屈折型フレネルレンズに比べて、内部で2回以上の全反射を起すプリズムを備えた反射屈折型フレネルレンズは高い集光効率が得られることが期待される。
図6に示す屈折型の場合、偏角βは、プリズムの頂角をα、プリズムの材料の屈折率をnとするとき
β=sin-1(nsinα)−α
となる。
図4に示す1回全反射の場合の偏角β(deg)は、
β=90−sin-1(nsin(2α−90))
となり、
図5に示す2回全反射の場合の偏角βは、
β=α−sin-1(3α−180)
となる。
また、一般にmを整数として、mが偶数でm回の全反射が内部で起こる場合の偏角βは、
β=α−sin-1(nsin((m+1)α−90m))
となり、
mが奇数の場合は、
β=90−sin-1(nsin(m+1)α−90m))
となる。
表1〜表5に屈折率1.49のアクリル樹脂の場合の、それぞれ屈折型、1回全反射型、2回全反射型、3回全反射型、および4回全反射型のプリズムについて、頂角に対する偏角βおよび透過率Iの計算結果を示す。表中「※」を記した範囲は、隣接するプリズムとの干渉のため透過率が低下する範囲を示す。また、これらをグラフにしたものを図7に示す。
Figure 0005053531
Figure 0005053531
Figure 0005053531
Figure 0005053531
Figure 0005053531
表1と表2を比較すると、従来から明らかなように、偏角βがより大きい範囲では、屈折型のプリズムよりも1回全反射型のプリズムの方がより高い透過率が得られることがわかる。例えば、屈折型プリズムで頂角αを38.5°とすると偏角βは30.0°となり、このときの透過率Iが0.813となるのに対して、同じ偏角を与える頂角αが62.7°の1回全反射型では透過率Iがそれよりも高い0.875となる。
さらに表3を参照すると、2回全反射型でも頂角αを68°とすると偏角β=30°が得られ、このときの透過率Iは0.914とさらに高いことが注目される。
図8は横軸に偏角βを、たて軸に透過率Iをとり、それぞれのタイプのプリズムの透過率Iを偏角βに対してプロットしたものである。図8から明らかなように、屈折率1.49のアクリル樹脂の場合、β<19.5°の区域20では屈折型のプリズムが最も透過率Iが高く19.5°<β<31.0°の区域22では2回全反射型のプリズムが最も透過率Iが高く、31.0°<βの区域24では1回全反射型のプリズムが最も透過率Iが高いことがわかる。
表6には、種々のF値のレンズについて、屈折型のプリズムのみを用いた場合(従来技術1と表記)、20°≦βで1回全反射プリズムを用いたもの(従来技術2と表記)、および本発明により、20°≦β≦29°で2回全反射プリズム、29°≦βで1回全反射プリズムを使用したもの(本発明と表記)の集光率を示す。また、図9には、それをグラフ化したものを示す。
Figure 0005053531
表6および図9から明らかなように、F値1.00以下のレンズでは一部に2回全反射型のプリズムを用いた本発明のフレネルレンズが高い集光率を示すことがわかる。
屈折率1.49のアクリル樹脂を用いて、200mm角、焦点距離200mmの正方形の円形フレネルレンズ(同心円のフレネルレンズを正方形にカットしたもの)を作る場合について説明する。200mm角のレンズは対角が282mmとなり、F値は正方形の対角線において0.709となり、1以下である。したがって、屈折だけのプリズムではレンズ全体の集光効率はかなり下がってしまう。そこで、光軸より離れた部分に全反射プリズムを導入する。屈折プリズムと反射プリズムの光透過率が逆転する位置を境に内部で2回の全反射を起す全反射プリズム、及び1回の全反射プリズムを図10のように配置する。図10で、偏角βが0度から19.5度までは屈折率のプリズムを用い、19.5度から31度までは2回の全反射を起すプリズムを配置し、31度から35.26度までは1回の全反射プリズムを配置する。このようにしてできたフレネルレンズは屈折プリズムと1回全反射プリズムだけのものより集光効率が優れている。
表7〜9には、屈折率n=1.40のシリコンゴムの場合の屈折型、1回全反射型、および2回全反射型の偏角βと透過率Iの計算結果を示す。図11には、各タイプのプリズムについて、透過率Iを偏角βに対してプロットしたものを示す。
Figure 0005053531
Figure 0005053531
Figure 0005053531
図11から、n=1.40のシリコンゴムの場合、図12に示すように、β<18.2°の区域30では屈折型のプリズムを用い、18.2°<β<31.8°の区域32では2回全反射型のプリズムを用い、31.8°<βの区域34では1回全反射型のプリズムを用いれば高い集光率のフレネルレンズが得られる。
groove面側から入射する場合の集光用フレネルレンズを示す図である。 平面側から入射する場合の集光用フレネルレンズを示す図である。 1回全反射型プリズムを一部に用いる集光用フレネルレンズを示す図である。 1回全反射型プリズムの光路を説明する図である。 2回全反射型プリズムの光路を説明する図である。 屈折型プリズムの光路を説明する図である。 偏角βと透過率Iを頂角αに対してプロットしたグラフである。 各タイプのプリズムの透過率Iを偏角βに対してプロットしたグラフである。 本発明のフレネルレンズと従来技術のフレネルレンズの集光率を比較したグラフである。 屈折率1.49のアクリル樹脂を用いた場合の本発明のフレネルレンズの一例を示す図である。 屈折率1.40のシリコンゴムを用いた場合の各タイプのプリズムの透過率Iを偏角βに対してプロットしたグラフである。 屈折率1.40のシリコンゴムを用いた場合の本発明のフレネルレンズの一例を示す図である。

Claims (4)

  1. 複数のプリズムからなるフレネルレンズであって、レンズの中央に位置して焦点からの入射光またはその反対側からの光軸に平行な入射光を全反射させない頂角を有するプリズムからなる第1の区域、及びその外側に位置して該入射光をプリズムの内部で2回全反射させる頂角を有するプリズムからなる第2の区域を具備する、フレネルレンズ。
  2. 前記第2の区域のさらに外側に位置し、前記入射光をプリズムの内部で1回全反射させる頂角を有するプリズムからなる第3の区域をさらに具備する請求項記載のフレネルレンズ。
  3. 屈折率1.485以上1.495未満の材料からなり、前記第1の区域に属するプリズムの偏角は20度以下であり、前記第2の区域に属するプリズムの偏角は19度以上32度以下であり、前記第3の区域に属するプリズムの偏角は30度以上である請求項記載のフレネルレンズ。
  4. 屈折率1.395以上1.405未満の材料からなり、前記第1の区域に属するプリズムの偏角は19度以下であり、前記第2の区域に属するプリズムの偏角は18度以上32度以下であり、前記第3の区域に属するプリズムの偏角は31度以上である請求項記載のフレネルレンズ。
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