JP5050070B2 - セラミックス銅回路基板および半導体装置 - Google Patents

セラミックス銅回路基板および半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、主に高出力トランジスタおよびパワーモジュール等の実装に使用されるセラミックス銅回路基板およびこれを用いた半導体装置に関するものである。
セラミックス基板に金属回路板を接合したセラミックス回路基板は、電子部品や機械部品等に広く適用されている。
セラミックスと金属は、原子構造が異なるためセラミックス基板と金属回路板とを接合する場合には、反応性等の化学的性質、熱膨張率などの物理的性質が大きく異なる。このため種々の接合方法が開発されているが、主として直接接合法および活性金属法の二種類の方法がある。
金属回路板を銅とした銅直接接合(DBC:Direct BondingCopper)法は、セラミックス基板と銅回路板とを銅(Cu)および酸素(O)の共晶反応を利用して接合する方法である。例えば、セラミックス基板として酸化アルミニウム(アルミナ:Al)を適用した場合には、銅回路板(Cu)中の酸素(O)と、セラミックス基板(Al)中の酸素(O)との反応を利用して接合される。
一方、活性金属法は、セラミックス基板と銅板との接合にAg、CuおよびTi等の活性な金属の粉末に有機化合物等のバインダおよび溶媒を混合してなるAg−Cu−Ti系ろう材を用い、このろう材により接合する方法である。例えば、窒化アルミニウム(AlN)焼結体をセラミックス基板としたセラミックス回路基板は、以下のように製造される。
まず、Ag−Cu−Ti系ろう材を窒化アルミニウム(AlN)基板上にスクリーン印刷し、この印刷面上に銅(Cu)回路板を配置する。その後、約850℃の温度で加熱処理し、窒化アルミニウム基板と銅回路板とを接合し、セラミックス銅回路基板とする。
ところで、近年、高出力トランジスタ、パワーモジュール等の実装に使用されるセラミックス銅回路基板は、最終的には産業機械等に搭載されるため、高い実装信頼性が要求される。また、実装後であっても、銅回路板とこの銅回路板に接合されるボンディングワイヤとは、熱膨張係数の違いにより繰り返し応力に晒されるため高い接合強度が要求される。従って、高実装性信頼性を得るためにセラミックス銅回路基板表面のハンダ濡れ性が良好であることが要求される。
例えば、特開平3−114280号公報には、銅の酸素含有量を50ppm以下(特に、30ppm以下)とした銅回路板を有する窒化アルミニウムが掲載されている。また、特開平5−213677号公報には、酸素含有量を15ppm以下とした銅板とアルミナあるいはAlN基板の接合方法が掲載されている。
これらの公知例に記載された活性金属法により製造されたセラミックス銅回路基板は、ろう材として用いた活性金属のTiとセラミックス基板(AlN)中のNとが共有結合してTiNとなり、このTiNにより接合層を形成しているため、極めて高い接合強度が得られる。また、活性金属法では、当初より酸素含有量の少ない銅回路基板を用いているため、最終的に得られるセラミックス銅回路基板の銅回路板の酸素量をも低減でき、酸化物の残存によるハンダ濡れ低下を防止できる。
特開平3−114280号公報
しかしながら、活性金属法では高い接合強度を得られるものの、ろう材としてTi、Cu、Agなどの高価な金属粉末を用いているため、DBC法に比較してコストがかかるといった問題を有していた。
そこで、DBC法を用いて低コストを実現するとともに、ハンダ濡れ性の改善が要求されることとなった。
DBC法で作製したセラミックス銅回路基板に高出力トランジスタ、パワーモジュール等の半導体素子を実装する場合には、銅回路板表面を還元性雰囲気中で清浄もしくはエッチング等の化学的処理を施すことにより、銅回路板表面を清浄にするとともに銅回路板表面の酸化を防止している。しかし、DBC法ではもともと酸素を介在させて接合する方法であるため、例えば、酸素を200ppm以上含む銅回路板を用いる。このため、DBC接合を行った場合に、銅回路板中の酸素が銅回路表面に析出するなどにより、銅回路表面部分のハンダ濡れ性が十分ではないという問題を有していた。従って、DBC法により作製されたセラミックス銅回路基板は、銅回路板のセラミックス基板との非接合面である表面部分のハンダ濡れ性が悪いため各種半導体素子を実装する場合に信頼性のある接合状態を保てていないのが現状であった。従来、このような問題点を解決するために半導体素子を実装する際に、還元性雰囲気中にて実装する方法も用いられていたが、還元性雰囲気とは一般的に水素成分を含む雰囲気であり安全上の問題から必ずしも好まれるものではなかった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ハンダ濡れ性を改善して半導体実装性および半導体実装後の接合信頼性を向上させたセラミックス銅回路基板を得ることを目的とする。
また、DBC法の適用により、コスト低減を図ったセラミックス銅回路基板の製造方法を得ることを目的とする。
すなわち、請求項1記載の発明は、セラミックス基板表面に厚さが0.3mmの銅回路板を直接接合法により接合した構造を有するセラミックス銅回路基板において、前記銅回路板は含有酸素量が200ppm〜400ppmのタフピッチ電解銅であり、前記銅回路板のセラミックス基板との非接合面側の表面部分における含有酸素量を2次イオン質量分析法で測定したときこの含有酸素量が21ppm〜92ppmであることによりハンダ濡れ率を90%以上に向上させたことを特徴とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、銅回路板に含有される酸素量および適用するセラミックス基板の種類を種々変えて研究した結果、セラミックス銅回路板の接合工程において、窒素雰囲気下で1060℃以上の温度で20分以上、好ましくは30分以上の時間で接合することにより銅回路表面に還元効果が現れることを見出した。そして、この還元効果を用いて、銅回路板の表面部分における含有酸素量を100ppm以下(0ppmは含まず)とし、銅回路板のハンダ漏れ性を向上させることで、本願発明を完成させたものである。従来のDBC法は接合時間が20分未満であった。確かに、DBC法によれば20分未満、例えば1060℃以上の温度で10分程度加熱することによりセラミックス基板と銅板を接合することは可能であるが、このようなセラミックス銅回路基板では銅回路板表面の酸素量が100ppmを超えてしまいハンダ濡れ性が十分ではなかった。これに対し、本発明では接合時間を20分以上、さらには30分以上と長くすることによりセラミックス基板と銅回路板を強固に接合すると共に、非接合面である銅回路板表面に実質的な還元作用を施すものである。
すなわち、請求項1記載の発明は、セラミックス基板表面に銅回路板を接合した構造を有するセラミックス銅回路基板において、前記銅回路板は含有酸素量が200ppm〜400ppmのタフピッチ電解銅であり、前記銅回路板のセラミックス基板との非接合面側の表面部分における含有酸素量を2次イオン質量分析法で測定したときこの含有酸素量が8ppm〜92ppmであることを特徴とする。
削除
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のセラミックス銅回路基板において、前記銅回路板の銅純度が99.96%以上であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載のセラミックス銅回路基板において、前記セラミックス基板は、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア、またはアルミナとジルコニアとの化合物からなることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1記載のセラミックス銅回路基板において、前記銅回路板の表面の含有酸素量を低減することによりハンダ濡れ性を改善したことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記セラミックス銅回路基板の銅回路板上にハンダを介して半導体を実装したことを特徴とする半導体装置である。
本発明では、セラミックス基板と銅回路板とを直接接合するセラミックス銅回路基板の製造方法において、前記銅回路板として200〜400ppmの酸素を含む銅からなる銅回路板を用い、前記セラミックス基板と銅回路板とを、酸素含有量100ppm以下の窒素ガス雰囲気下、加熱温度1060℃以上で接合することにより、銅回路板表面の酸素量を8ppm〜92ppmとしたセラミックス銅回路基板を得ることが好ましい。
本発明において、接合時の温度は1060℃以上としているが、好ましくは1065〜1083℃である。1065℃未満では、接合に必要なCu−O系共晶体の生成が十分ではなく、1083℃を超えると銅板の融点を超えてしまうので好ましくない。
本発明では、セラミックス銅回路基板の製造方法において、前記接合は、前記セラミックス基板と銅回路板とを前記窒素ガスの気流中に30分以上保持することにより行われることが好ましい。
参考例1(試料No.1)、実施例1(試料No.2、試料No.3)
AlNの原料粉末に、焼結助剤を添加して原料混合体を得た。焼結助剤として、AlおよびYをAlN原料粉末に対して、Alを1wt%、Yを3wt%添加した。
以上説明したように、本発明によれば、窒素ガスにより雰囲気制御を行い、銅板を直接接合させた回路基板を作製する際、窒素ガス量に応じて、銅回路板表面の酸素量を100ppm以下に制御することで、ハンダ濡れ性を改善し、半導体実装性および半導体実装後の接合信頼性を向上できる。
以下、本発明の実施形態について、実施例1ないし実施例5、比較例1ないし比較例5を用いて説明する。
実施例1(試料No.1〜試料No.3)
AlNの原料粉末に、焼結助剤を添加して原料混合体を得た。焼結助剤として、AlおよびYをAlN原料粉末に対して、Alを1wt%、Yを3wt%添加した。
次に、この原料混合体にバインダおよび溶剤を添加した後、ドクターブレード法により厚さ0.8mmのシート形状に形成した。その後、脱脂工程を経た後、1750℃から1800℃の温度範囲で2時間焼結を行った。
焼結後、シートを縦50mm、横25mmの大きさの区画に切断した。
このようにして得られた厚さ0.8mmのAlN基板を空気雰囲気中の加熱炉に導入して、1300℃の温度にて12時間加熱し、AlN基板全表面に酸化物層(Al皮膜)を形成した。
次に、AlN基板に接合する銅回路板を準備した。
Figure 0005050070
このようにして得られた銅回路板を酸化処理したAlN基板の表面側に接触配置する一方、AlN基板の背面側に縦45mm×横20mm×厚さ0.13mmの銅板を裏当て材として接触配置した。
参考例2(試料No.6)、実施例3(試料No.7)
本参考例および本実施例においては、セラミックス基板として、厚さ0.8mmのアルミナ(Al)基板を用いた。製造手順は実施例1とほぼ同様であるが、アルミナ基板であることから、基板表面に酸化膜を形成しなかった。各試料の回路表面酸素量を表1に示す。
Figure 0005050070
実施例2(試料No.4、試料No.5)
本実施例においては、セラミックス基板として、厚さ0.8mmの窒化ケイ素(Si)基板を用い、試料No.4およびNo.5のセラミックス銅回路基板を作製した。なお、製造手順は実施例1と同様である。各試料の回路表面酸素量を表1に示す。
実施例3(試料No.6、試料No.7)
本実施例においては、セラミックス基板として、厚さ0.8mmのアルミナ(Al)基板を用いた。製造手順は実施例1とほぼ同様であるが、アルミナ基板であることから、基板表面に酸化膜を形成しなかった。各試料の回路表面酸素量を表1に示す。
実施例4(試料No.8、試料No.9)
本実施例においては、セラミックス基板として、厚さ0.8mmのジルコニア(ZrO)基板を用いた。製造手順は実施例1とほぼ同様であるが、ジルコニア基板であることから、基板表面に酸化膜を形成しなかった。各試料の回路表面酸素量を表1に示す。
実施例5(試料No.10、試料No.11)
本実施例においては、セラミックス基板として、厚さ0.8mmのアルミナとジルコニアの化合物(Alを60wt%とZrOを40wt%添加した混合物)基板を用いた。製造手順は実施例1とほぼ同様であり、アルミナとジルコニアの化合物基板であることから、基板表面に酸化膜を形成しなかった。各試料の回路表面酸素量を表1に示す。
比較例1(試料No.12〜試料No.15)
本比較例においては、セラミックス基板として、厚さ0.8mmの窒化アルミニウム(AlN)基板を用いた。製造手順は、実施例1とほぼ同様である。実施例1と異なるのは、セラミックス基板と銅回路板とを接合する際の接合条件である窒素ガスの雰囲気、接合時間および接合温度を本発明の範囲外としたものであり、試料No.12およびNo.13は窒素雰囲気条件を、試料No.14は接合温度を、試料No.15接合時間をそれぞれ変えたものである。このような接合条件下で作製されたセラミックス銅回路基板の表面をEPMAもしくはSIMS分析したところ、試料No.12ないし試料No.15は銅回路板の表面の酸素量がいずれも100ppmを超えるものであった。なお、試料No.14は接合温度が1000℃と低いため十分な接合体を得られなかったため、銅回路板の表面の酸素量の測定は行わなかった。
比較例2(試料No.16、試料No.17)
本比較例においては、セラミックス基板として、厚さ0.8mmの窒化ケイ素(Si)基板を用いた。製造手順は実施例2とほぼ同様である。実施例2と異なるのは、表1に示す窒素ガス雰囲気を変えて、試料No.16は回路表面酸素量を141ppmとし、試料No.17は回路表面酸素量を125ppmとしたことである。
比較例3(試料No.18、試料No.19)
本比較例においては、厚さ0.8mmのアルミナ(Al)基板を用いた。製造手順は、実施例3とほぼ同様である。実施例3と異なるのは、表1に示す窒素ガス雰囲気を変えて、試料No.18は回路表面酸素量を153ppmとし、試料No.19は回路表面酸素量を144ppmとしたことである。
比較例4(試料No.20、試料No.21)
本比較例においては、厚さ0.8mmのジルコニア(ZrO)基板を用いた。製造手順は、実施例4とほぼ同様である。実施例4と異なるのは、表1に示す窒素ガス雰囲気を変えて、試料No.20は回路表面酸素量を137ppmとし、試料No.21は回路表面酸素量を137ppmとしたことである。
比較例5(試料No.22、試料No.23)
本比較例においては、厚さ0.8mmのアルミナとジルコニアの化合物(Alを60wt%とZrOを40wt%添加した混合物)基板を用いた。製造手順は実施例5とほぼ同様である。実施例5と異なるのは、表1に示す窒素ガス雰囲気を変えて、試料No.20は回路表面酸素量を125ppmとし、試料No.23は回路表面酸素量を143ppmとしたことである。
このようにして得られた実施例1ないし実施例5および比較例1ないし比較例5の各試料について、フラックスを使用し、Sn:Pb=6:4の割合としたハンダにおける濡れ性を評価した。濡れ性の評価は、濡れ率(%)の測定により行い、この濡れ率はハンダ付けを行なった面積に対する濡れた面積の割合を算出したものである。この結果を表1に示す。
表1に示すように、銅回路板表面部分の含有酸素量が100ppmを超える比較例の各試料と比較して、本実施例のように、銅回路板表面部分の含有酸素量を100ppm以下とすることにより、試料No.1ないし試料No.11はいずれもハンダ濡れ率が90%以上、さらには94%以上であり、セラミックス基板の種類によらずハンダ濡れ性を向上できる。
従って、本実施形態によれば、銅回路板中の酸素含有量を100ppm以下とすることにより、濡れ性を大幅に改善できるため、高い半導体実装性を得られる。そのためセラミックス銅回路基板の製造後に銅回路板の表面に存在する酸素成分等を除去する必要がないため半導体実装工程を簡素化できる。特に、エッチング等の化学処理は廃液等の問題もあることから環境問題にも対応可能である。
また、DBC法では、セラミックス基板と銅回路板との接触面を微視的に見た場合、酸素(O)の部分が空洞となった凹凸接触面となるため、活性金属法と比較して、半導体実装後の使用時の温度変化による残留応力はある程度小さい値となる。このため、使用時の温度変化による接合面の損傷を防止できることから、半導体実装性のみならず、半導体実装後のセラミックス回路基板の接合信頼性を得ることができる。
さらに、本実施形態によれば、セラミックス基板と銅回路板とを直接接合するDBC法を適用しているため、高価な金属を用いる活性金属法を用いる場合と比較してコスト低減を図ることができる。

Claims (5)

  1. セラミックス基板表面に厚さが0.3mmの銅回路板を直接接合法により接合した構造を有するセラミックス銅回路基板において、
    前記銅回路板は含有酸素量が200ppm〜400ppmのタフピッチ電解銅であり、前記銅回路板のセラミックス基板との非接合面側の表面部分における含有酸素量を2次イオン質量分析法で測定したときこの含有酸素量が21ppm〜92ppmであることによりハンダ濡れ率を90%以上に向上させたことを特徴とするセラミックス銅回路基板。
  2. 請求項1に記載のセラミックス銅回路基板において、前記銅回路板の銅純度が99.96%以上であることを特徴とするセラミックス銅回路基板。
  3. 請求項1記載のセラミックス銅回路基板において、前記セラミックス基板は、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア、またはアルミナとジルコニアとの化合物からなることを特徴とするセラミックス銅回路基板。
  4. 請求項1記載のセラミックス銅回路基板において、前記銅回路板の表面の含有酸素量を低減することによりハンダ濡れ性を改善したことを特徴とするセラミックス銅回路基板。
  5. 請求項1記載のセラミックス銅回路基板の銅回路板上にハンダを介して半導体を実装したことを特徴とする半導体装置。
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