JP5049692B2 - 硫化鉄皮膜の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)被処理材を陽極または陰極に用いるため、各被処理材ごとに対極のレイアウトをする必要があり、冶具セッティングが煩雑で生産性を低下させる原因となっていた。
(2)被処理材と対極との配置・距離によって皮膜析出にムラが生じやすく、特に複雑な形状の部品においては顕著であった。また、各被処理材間で皮膜厚みに差が出やすく製品品質を維持することが難しかった。
(3)被処理材容量以外に対極容量をも加味した大きな処理浴や、電極、電源などの専用設備が必要であり、設備コスト及びエネルギーコストの観点から好ましくなかった。
(4)チオシアン酸から生じる遊離シアンを含む廃水処理など環境負荷が大きい。
(1)亜硫酸イオンとチオ硫酸イオンとを含み、pHが2.0〜6.5である処理液と鉄系材料とを接触させ、前記鉄系材料表面上に硫化鉄皮膜を無電解で製造する硫化鉄皮膜の製造方法。
(2)前記亜硫酸イオンの濃度が0.005〜1mol/Lである(1)に記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
(3)前記チオ硫酸イオンの濃度が0.005〜0.5mol/Lである(1)または(2)に記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
(4)前記処理液に金属イオン封鎖剤を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
(5)前記処理液に鉄イオンを含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の硫化鉄皮膜の製造方法において、10〜70℃の処理液に鉄系材料を1〜1800秒間接触させることを特徴とする硫化鉄皮膜の製造方法。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の硫化鉄皮膜の製造方法において、鉄系材料と処理液との接触後に洗浄工程を有する硫化鉄皮膜の製造方法。
(8)前記硫化鉄皮膜の膜厚が0.01〜10μmである(1)〜(7)のいずれかに記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
(9)(1)〜(8)のいずれかの硫化鉄皮膜の製造方法により得られる硫化鉄皮膜を有する鉄系材料。
(10)0.005〜1mol/Lの亜硫酸イオンと0.005〜0.5mol/Lのチオ硫酸イオンとを含み、pHが2.0〜6.5である処理液であり、鉄系材料と接触させ、前記鉄系材料表面上に硫化鉄皮膜を無電解で製造するための処理液。
(11)0.001〜0.5mol/Lの金属イオン封鎖剤を含むことを特徴とする(10)の処理液。
(12)0.005〜1mol/Lの鉄イオンを含むことを特徴とする(10)または(11)に記載の処理液。
また、本発明において、被処理材である鉄系材料の表面形状とその表面に形成される硫化鉄皮膜の表面形状との間の表面粗さの差の絶対値は、10点平均粗さパラメーターで1μm以下である。そのため、被処理材である鉄系材料の基板形状を保持したまま皮膜形成が可能であり、精密加工された寸法形状をもつ部品などの特性を変化させることなく、その表面を改質することが可能となる。
本発明では、硫化鉄皮膜の製造方法を以下の3つの工程で行う。
(1)鉄系材料の前処理工程。
(2)前記前処理工程で得られた鉄系材料と処理液とを接触させる接触工程。
(3)前記接触工程で得られた鉄系材料を洗浄する洗浄工程。
以下各工程について詳しく説明する。
第一工程は、鉄系材料の表面上に付着しているほこりや油脂類、指紋、酸化膜などを除去する工程である。本工程により、清浄な表面が提供され、皮膜のむらや密着不良などが抑えられる。
次に、第二工程について説明する。第二工程は、前記前処理工程で得られた鉄系材料と亜硫酸イオンとチオ硫酸イオンとを含み、pHが2.0〜6.5の処理液とを接触させ、無電解で鉄系材料表面上に硫化鉄皮膜を製造する工程である。無電解とは、電極や外部電源を用いずに、電気化学的な酸化還元作用に基づいて被処理材上に皮膜を形成する化成処理を意味する。本工程において、亜硫酸イオンが硫黄成分の供給源として作用すると推測される。また、鉄系材料から鉄イオンが水溶液中に供給される。よって、水溶液中に存在する亜硫酸イオンの還元反応により生じる2価の陰イオンの硫黄イオンと鉄イオンとが結合し、硫化鉄になると推測される。例えば、亜硫酸を使用した場合は、おもに以下の反応により硫化鉄が生じていると推測される(反応A)。
3Fe+H2SO3+H2O→FeS+2Fe(OH)2 (反応A)
亜硫酸イオンの還元及び鉄の酸化により、硫化鉄と水酸化鉄が生成する。酸性条件下では、水酸化鉄は溶解し、硫化鉄のみが不溶物として析出し鉄系材料表面上に皮膜を作る。なお、亜硫酸イオンの一部は0価の価数の硫黄となり、不溶性の硫黄の高分子体が硫化鉄皮膜中に取り込まれる。
Na2S2O3+H2SO4→Na2SO4+SO2+S+H2O (反応B)
pHが6.5を超える場合、エッチングされた金属イオンが水酸化物として液中に沈殿析出しやすくなり処理液の寿命が短くなると共に、安定した性能を持つ皮膜の形成が困難になる。
次に、第三工程について説明する。第三工程は、前記接触工程で得られた鉄系材料から、可溶性成分や処理液を洗い流す工程である。前記接触工程で未反応である処理液は本工程で洗い流されてしまうが、化成皮膜である硫化鉄皮膜は本工程では溶解せず鉄系材料表面上にそのまま残る。洗浄剤は、特に限定されず、溶剤系洗浄剤、水系洗浄剤、エマルジョン洗浄剤など挙げられるが、水系洗浄剤が特に好ましい。洗浄方法は、特に限定されず、浸漬洗浄、電解、超音波、スプレーなどが挙げられる。洗浄液の温度は、適宜選択される。なお、得られた鉄系材料表面の腐食が問題となる場合には、本工程による洗浄前に鉄系材料を水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ溶液中に浸漬させる工程を有していてもよい。
材質SUJ2(Optimol社製)からなるDISK試験片(円板形状;φ24mm×7.9mm)を供試材とした。試験片に対する硫化物処理前の共通の前処理工程として、まずDISK試験片に付着した油分及びゴミを60℃のアルカリ性の脱脂剤(日本パーカライジング(株)製 ファインクリーナー4360)中で20分間揺動浸漬することによりその除去を行った。その後水洗し、次に最表面の酸化膜除去として1重量%の塩酸中で10秒間の酸洗を実施しその後水洗して得たDISK試験片に対し、各条件にて硫化物処理を行った。
上記1に記載の方法によって得た共通条件のDISK試験片に対し、下記の表1に示す各処理液、及び表2の処理条件にて硫化物処理を行った。その後、市水にて水洗し水溶性成分の除去を行い、100℃で5分間の乾燥を行った。
比較例4として、上記1処理後のDISK試験片に対し、硫酸第二鉄を用いて鉄(III)イオンを30g/L、キレート剤としてヘプトグルコン酸ナトリウムを80g/L、及び2−アミノ−6−ニトロフェノール−4−スルフォン酸ナトリウムを30g/L、そして硫化カリウムを6.7g/LとしたpH10の40℃の浴中において、5A/dm2で1分間の陽極電解し、1.2μmの硫化鉄皮膜を形成させた。
比較例5として、上記1処理後のDISK試験片に対し、りん酸マンガン処理(日本パーカライジング(株)製 、製品名パルフォス-M1A使用)を95℃にて10分間行った。その際、りん酸マンガン処理に対する前処理として、表面調整(日本パーカライジング(株)製、製品名プレパレン-VM使用)を行った。析出したりん酸マンガンの皮膜量は10g/m2であった。また、上記1による脱脂、洗浄及び酸洗いをした前処理のみの試験片を、比較例6の化成処理無し品とした。
上記1〜3によって得られたDISK試験片に対して、その摺動性能(動摩擦係数)をSRV試験機によって調査した。SRV試験とは、円柱材の側面とDISK試験片の平面部との往復接触運動による摺動試験である。その際の試験条件は、下記の通りである。
・ 負荷荷重 :100N
・ 振動数 :30Hz
・ 摺動距離 :2mm
・ 相手材 :S45C(円柱形状:φ15mm×22mm)(Optimol社製)
・ 使用油 :市販エンジン用オイル(10W−30)
上記2及び3により化成処理されたDISK試験片に対し、上記4の方法にて摺動性能を評価した結果を表3に示す。表中、上記3による比較材に対する評価結果も併せて示した。皮膜厚さは、処理後の試験片に対する断面観察によって計測した。
Claims (7)
- 亜硫酸イオンとチオ硫酸イオンとを含み、pHが2.0〜6.5である処理液と鉄系材料とを接触させ、前記鉄系材料表面上に硫化鉄皮膜を無電解で製造する硫化鉄皮膜の製造方法。
- 前記亜硫酸イオンの濃度が0.005〜1mol/Lである請求項1記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
- 前記チオ硫酸イオンの濃度が0.005〜0.5mol/Lである請求項1または2に記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
- 前記処理液に金属イオン封鎖剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
- 前記処理液に鉄イオンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
- 前記硫化鉄皮膜の膜厚が0.01〜10μmである請求項1〜5のいずれかに記載の硫化鉄皮膜の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかの硫化鉄皮膜の製造方法により得られる硫化鉄皮膜を有する鉄系材料。
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