JP5047875B2 - 放電管の製造方法 - Google Patents

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この発明は放電管の製造方法に係り、特に、サージ電圧を吸収するためのサージアブソーバ(サージ吸収素子)として好適に使用できる放電管の製造方法に関する。
図2は、この種の放電管の一例を示すものであり、該放電管50は、丸棒状の電極基体52の表面にエミッタ層54を被着させて成る一対の放電電極56,56の下端にリード端子58,58を接続し、これを所定の放電間隙60を隔てて互いに平行するよう配置し、ガラス管を加工して形成した気密容器62内に、希ガスを主体とした放電ガスと共に封入し、上記リード端子58,58を気密容器62の下端封着部62aを貫通させて外部に導出して成る。
上記エミッタ層54は、特開平9−7543号等に開示されているように、例えば酸化バリウム(BaO)を主成分として構成されている。
この放電管50がサージ吸収素子として使用される場合には、例えば図3に示すように、被保護回路64に接続された一対の電源ラインL1とグランドG間、及びL2とグランドG間に、リード端子58,58を介してそれぞれ挿入接続される。各放電管50には、続流防止用の保護素子としての抵抗66が直列接続されている。
而して、上記電源ラインL1−グランドG間あるいはL2−グランドG間に伝導性のコモンモード・サージが印加されると、上記放電間隙60にグロー放電を経てアーク放電が生成され、該アーク放電の大電流を通じてサージはグランドG側に逃がされることとなる。
特開平9−7543号
上記エミッタ層54は、放電特性や耐スパッタ性能の向上等を企図して形成されるものであるが、酸化バリウムを主成分としてエミッタ層54を構成して成る上記放電管50をサージ吸収素子として用いた場合、サージ応答性及び繰り返し放電特性に難点があり、サージ応答性及び繰り返し放電特性により一層優れた放電管の実現が望まれていた。
また、酸化バリウム(BaO)を主成分とする上記エミッタ層54は、硝化綿(ニトロセルロース)を酢酸ブチルに溶解させて成るバインダーに、単元炭酸塩である炭酸バリウム(BaC )の粉末を添加したものを電極基体52の表面に塗布した後、加熱し、炭酸バリウム(BaC )を熱分解させて酸化バリウム(BaO)と成すことにより形成できるものである。
しかしながら、硝化綿を酢酸ブチルに溶解させて成る上記バインダーを用いた場合、エミッタ層54の形成過程で、電極基体52,52の表面に塗布したバインダーが剥離し易いため、製造された放電管50相互間において、エミッタ層54の形成状態(厚さ、塗布面積等)が不均一となり易く、放電特性にバラツキを生じる原因となっていた。
この発明は、従来の上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、放電管相互間における放電特性のバラツキを抑制できる放電管の製造方法を実現することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る放電管の製造方法は、
電極基体の表面にエミッタ層を形成して成る複数の放電電極を、放電間隙を隔てて配置すると共に、これを放電ガスと共に気密容器内に封入して成る放電管において、上記エミッタ層を酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムを含有させて構成した放電管の製造方法であって、
先ず、酢酸ブチルに硝化綿及び蓚酸ジエチルを溶解させて成るバインダーと、三元炭酸塩である(Ba,Sr,Ca)C の粉末と、単元炭酸塩であるMgC の粉末を準備し、
次に、上記バインダー中に、(Ba,Sr,Ca)C の粉末とMgC の粉末を分散させ、
次に、(Ba,Sr,Ca)C の粉末とMgC の粉末が分散した上記バインダーを、電極基体の表面に塗布後、加熱し、(Ba,Sr,Ca)C とMgC を酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムと成すことにより、上記エミッタ層を形成することを特徴とする。
上記バインダーと、(Ba,Sr,Ca)C と、MgC の混合比率は、バインダーが65.61〜75.93重量%、(Ba,Sr,Ca)C が23.03〜32.89重量%、MgC が1.05〜1.50重量%と成すのが好ましい。
本発明に係る放電管の製造方法にあっては、バインダー中に、粉体の分散性と固着力を促進させる蓚酸ジエチルを添加したことにより、三元炭酸塩である(Ba,Sr,Ca)C の粉末と、単元炭酸塩であるMgC の粉末とをバインダー中において十分に混合できると共に、電極基体の表面に塗布したバインダーの剥離が抑制されるため、製造された放電管相互間において、エミッタ層の形成状態(厚さ、塗布面積等)が略均一化され、放電特性のバラツキを抑制することができる。
以下、添付図面に基づき、本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の一実施例に係る放電管10を示す縦断面図である。
この放電管10は、一対の丸棒状の電極基体12,12の表面にエミッタ層14,14を被着形成して放電電極16,16と成し、各電極基体12,12の下端部にデュメット線(銅被覆鉄ニッケル合金線)や42−6合金線等より成るリード端子18,18を接続し、両放電電極16,16を所定の距離を隔てて平行に配置して放電間隙20を形成すると共に、これをガラス管の両端開口を気密封止して形成した気密容器22内に放電ガスと共に封入し、各放電電極16,16のリード端子18,18を気密容器22の下端封着部22aを貫通させて外部に導出して成る。
上記電極基体12は、導電性に優れたニッケル(Ni)やNi−Mn合金等の金属を細長い丸棒状に加工して成る。
また、上記放電ガスは、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム、キセノン等の希ガスあるいは窒素ガス等の不活性ガスの単体又は混合ガス、又は、上記希ガスあるいは不活性ガスの単体又は混合ガスに水素、六フッ化硫黄ガス、二酸化炭素を混合して成るガスで構成することができる。
上記エミッタ層14は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)の四元酸化物を含有させて構成している。酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウムは耐熱性に優れた物質であり、また、酸化マグネシウムは耐イオン衝撃に優れた物質である。エミッタ層14に上記酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムの四元酸化物を含有させることにより、サージ応答性及び繰り返し放電特性に優れた放電管が実現される。
尚、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)の混合割合は、酸化バリウムが76.63〜84.70重量%、酸化ストロンチウムが12.9〜14.3重量%、酸化カルシウムが1.32〜1.46重量%、酸化マグネシウムが4.14〜4.57重量%と成すのが、サージ応答性及び繰り返し放電特性の向上の観点から好ましい。
本発明の上記放電管10がサージ吸収素子として使用される場合には、例えば図3に示すように、被保護回路64に接続された一対の電源ラインL1とグランドG間、及びL2とグランドG間に、リード端子58,58を介してそれぞれ挿入接続される。各放電管10には、続流防止用の保護素子としての抵抗66が直列接続されている。
而して、上記電源ラインL1−グランドG間あるいはL2−グランドG間に伝導性のコモンモード・サージが印加されると、上記放電間隙20にグロー放電を経てアーク放電が生成され、該アーク放電の大電流を通じてサージはグランドG側に逃がされることとなる。
而して、本発明の放電管10にあっては、電極基体12の表面に、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムの四元酸化物を含有させて構成したエミッタ層14を形成したことにより、サージ応答性及び繰り返し放電特性に優れた放電管を実現できる。
上記の通り、エミッタ層14を構成する酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウムは耐熱性に優れた物質であり、また、酸化マグネシウムは耐イオン衝撃に優れた物質であることから、これら酸化物をエミッタ層14に含有させることにより、エミッタ層14のスパッタや熱劣化が防止され、サージ応答性及び繰り返し放電特性の向上に寄与するものである。
以下において、上記エミッタ層14の形成方法について説明する。
先ず、酢酸ブチルに硝化綿(ニトロセルロース)及び蓚酸ジエチルを溶解させて成るバインダーと、三元炭酸塩である(Ba,Sr,Ca)C の粉末と、単元炭酸塩であるMgC の粉末を準備する。
上記バインダー中の酢酸ブチル、硝化綿、蓚酸ジエチルの混合比率は、酢酸ブチルが91.32〜91.49重量%、硝化綿が0.28〜0.46重量%、蓚酸ジエチルが8.22〜8.23重量%と成される。
次に、上記バインダー中に、(Ba,Sr,Ca)C の粉末とMgC の粉末を添加後、撹拌して、バインダー中に(Ba,Sr,Ca)C の粉末とMgC の粉末を分散させる。
尚、バインダーと、(Ba,Sr,Ca)C と、MgC の混合比率は、バインダーが65.61〜75.93重量%、(Ba,Sr,Ca)C が23.03〜32.89重量%、MgC が1.05〜1.50重量%と成される。
次に、(Ba,Sr,Ca)C の粉末とMgC の粉末が分散した上記バインダーを、電極基体12の表面に塗布した後、800〜1200℃で加熱することにより、(Ba,Sr,Ca)C とMgC を熱分解させて、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムと成す。
以上の結果、電極基体12表面に、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムが含有された上記エミッタ層14が形成される。
本発明方法にあっては、バインダー中に、粉体の分散性と固着力を促進させる蓚酸ジエチルを添加したことにより、三元炭酸塩である(Ba,Sr,Ca)C の粉末と、単元炭酸塩であるMgC の粉末とをバインダー中において十分に混合できると共に、電極基体12の表面に塗布したバインダーの剥離が抑制されるため、製造された放電管10相互間において、エミッタ層14の形成状態(厚さ、塗布面積等)が略均一化され、放電特性のバラツキを抑制することができる。
本発明に係る放電管を示す縦断面図である。 従来の放電管を示す正面図である。 本発明に係る放電管及び従来の放電管をサージ吸収素子として用いた例を示す回路図である。
10 放電管
12 電極基体
14 エミッタ層
16 放電電極
18 リード端子
20 放電間隙
22 気密容器

Claims (2)

  1. 電極基体の表面にエミッタ層を形成して成る複数の放電電極を、放電間隙を隔てて配置すると共に、これを放電ガスと共に気密容器内に封入して成る放電管において、上記エミッタ層を酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムを含有させて構成した放電管の製造方法であって、
    先ず、酢酸ブチルに硝化綿及び蓚酸ジエチルを溶解させて成るバインダーと、三元炭酸塩である(Ba,Sr,Ca)C の粉末と、単元炭酸塩であるMgC の粉末を準備し、
    次に、上記バインダー中に、(Ba,Sr,Ca)C の粉末とMgC の粉末を分散させ、
    次に、(Ba,Sr,Ca)C の粉末とMgC の粉末が分散した上記バインダーを、電極基体の表面に塗布後、加熱し、(Ba,Sr,Ca)C とMgC を酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムと成すことにより、上記エミッタ層を形成することを特徴とする放電管の製造方法。
  2. 上記バインダーと、(Ba,Sr,Ca)C と、MgC の混合比率は、バインダーが65.61〜75.93重量%、(Ba,Sr,Ca)C が23.03〜32.89重量%、MgC が1.05〜1.50重量%であること特徴とする請求項1に記載の放電管の製造方法。
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