JP5046276B2 - コンクリートもしくはモルタル構造物およびコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリートもしくはモルタルの補強用として最適な補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を用いたコンクリートもしくはモルタル構造物とその製造方法に関する。
コンクリートは、その優れた圧縮強度、耐火性、耐久性、施工性などの特長を生かして、鉄鋼と並び、建築、土木分野の主要材料、主要構造部材として、広く使われている。
しかし、コンクリートは、圧縮強度に比べて、引張強度や曲げ強度が約1/4〜1/10と小さく、また破壊ひずみも約0.02%と極端に小さい脆い材料であり、靭性が低くひび割れしやすいなどの欠点を持つ材料である。
この欠点を改善するため、従来技術として、建築・土木構造物で、大きな曲げ強度、せん断強度、変形特性が求められる部位のコンクリートに、鋼繊維や、ビニロン繊維もしくはポリプロピレン繊維などの有機繊維、または、アラミド繊維やガラス繊維などを用いた繊維強化プラスチック線材(以下、FRP線材という)を混入して使用する技術が提案されてきており(特許文献1〜4)、トンネルライニング、法面保護、道路舗装などで使われている。
一般に、鋼繊維を使用する場合は、コンクリート中の鋼繊維は、コンクリートがアルカリ性のため錆びないとされている。
しかし、コンクリート中の水酸化カルシウムが空気中の炭酸ガスと反応し、アルカリ性を失ってコンクリートが中性化するとコンクリートの防錆能力が失われ、さらに鋼繊維が酸素と反応すると鋼繊維が錆びる。また、予期しない荷重や乾燥収縮などによるひび割れが発生すると、ひび割れを中心に、鋼繊維に沿って錆びが進展し、コンクリートの劣化が進む。また、海水の作用を受ける沿岸部のコンクリート部材では、コンクリート内部に浸透した海水中の硫酸マグネシウムがセメント成分と反応し、膨張を生じるとともに、コンクリートの微細組織を弛緩させコンクリートを劣化させる。また、塩素イオンは、コンクリート内部に浸透することにより鋼繊維の発錆を促進し、コンクリートの腐食膨張ひび割れとともに、鋼繊維の強度を低下させ補強効果が低減するという問題もあり、実用面では解決すべき問題が多かった。
一方、これまで知られてきている有機繊維は、錆びの発生は防げるが、有機繊維自体の強度・弾性率が低く伸びが大きいという特性のため、コンクリートに荷重が作用したとき、十分に荷重を負担できず、靭性補強効果はあるものの十分な強度を達成する補強効果が得られないという問題があった。
また、アラミド繊維やガラス繊維からなるFRP線材は、長期間にわたりコンクリート中に存在すると、コンクリート中のアルカリ成分が、FRP線材の切断端面あるいは樹脂層を通過して強化繊維に浸透することにより、強化繊維が劣化し、強度補強効果が低下することとなり、長期間の耐久性が求められるコンクリート構造物には使用できないという問題があった。
また、主にコンクリート補強で用いられる鉄筋の代替として、FRP製のケーブル状物や棒状物を用いてコンクリートを補強することも提案されている(特許文献5〜8)。
しかし、それらの補強手法は、構造物の骨格として筋を入れるという技術思想が主なものであり、コンクリート材料自体の脆性や靭性の改善、向上を図るというものではない。
一方、近年の技術進展に伴い、例えば、放射性廃棄物処分施設や海洋構造物の分野などでは、従来技術では対応できないような極めて高い耐久性が要求されるようになり、そのような高耐久性を材料的に実現できるコンクリートまたはモルタルが要求されるようになってきた。
これらの施設や構造物では、耐久性の低さに基づくような破壊や変形は寸分違わず許されるべきものではなく、半永久的にそれら施設、構造物を完璧に維持・保全できることが要求されるのである。
例えば、放射性廃棄物処分施設では、地下100m〜1000mに坑道を掘削し、その中心に放射性廃棄物を埋設することなどが計画されている。この場合、放射性廃棄物から漏洩する核種が人間の生活圏内に到達するまでに十分な時間がかかるように、人工バリア材で遮蔽が施されるものである。特に、廃棄物の周辺では、地下水の流れを遮断し、かつ物質が拡散のみで移動する環境、いわゆる「拡散場」を造り出すことにより、核種の移行を遅延することが検討されている。そのための材料としては、天然材料で耐久性があり、透水係数が極めて小さく、さらに水と接触することで膨潤して、多少の変形にも追従して低い透水性を発現するベントナイトの使用が最も有力視されている。
廃棄物処分施設においては、このようなベントナイト等による遮蔽構造の内部に廃棄物格納用の構造物を構築することを要するが、その際、強度を受け持つ構造材料および空間を埋める充填材料としてセメント系材料が使用されることになるのが通常であると考えられる。
そして、このセメント系材料にも、力学性能、長期耐久性能および核種や地下水等に対する物質遮断性などが要求され、また、その要求期間が極めて長いので(施設の耐久性に関する耐用年数が数万年に及ぶ可能性もあるのである)、鉄筋を補強材料とした場合には、鉄筋が腐食によって消失する可能性もあることから、鉄筋コンクリートまたはモルタルの使用は困難と考えられている。
同様に海洋構造物を構成するためのコンクリートまたはモルタルにおいても、鉄筋の腐食による耐久性劣化の問題があり、鉄筋コンクリートまたはモルタルを適用するのが困難なことが多い。
他方、無筋のセメント系材料を、さまざまな荷重を受けることが避けられない構造材料や充填材料として使用した場合には、何らかの原因で生じたひび割れが発生すると、その進行を抑制する補強材がないため、結果として施設全体の遮蔽性能に影響を与えかねないものである。すなわち、引張り力に対してほとんど抵抗できない無筋のセメント系材料を充填材とした場合には、各種荷重により低拡散層に過大なひび割れが発生する可能性があり、これが核種の選択的移行経路となった場合には、性能評価上は大きなダメージになると考えられる。
このような背景下、既に、廃棄物処分施設材料として、金属繊維または有機質繊維を含むセメント系材料を使用することが提案されている(特許文献9)。
また、放射性廃棄物の格納フレーム、各種バリア構造体または外殻構造体として、炭素繊維補強セメント系材料で構成することが提案されている(特許文献10)。
しかしながら、鉄筋に代えて繊維を補強材とした補強セメント系材料を、上記廃棄処分施設等の部材に用いる場合には、有機繊維では溶解した場合に核種の分散係数に影響を与えることが予想される。
したがって、そのような影響のない無機系の補強材の使用が検討されるべきこととなるが、高耐久性(例えば、4万年にも及ぶ長期耐久性である)に加えて、施工性に優れることも必要となる。
無機繊維としては、特許文献9および特許文献10に提案されている炭素繊維が適するものと考えられるが、これらの提案においては、炭素繊維が樹脂を含浸、硬化した複合材料でなく炭素繊維そのものであるため、コンクリートに練り混ぜ時に骨材に削られ折損し、十分な長さを維持できなくなるため、また表面凹凸がなく、コンクリートとの定着力が低いため、曲げ靭性の改善に寄与するところが少なく、ひび割れ発生に対する抑制効果が十分ではないという問題があり、所望するレベルの強度向上効果が思うように発現できないという問題があった。
上述したような問題を解決しようとして、本発明者らは、先行する特許出願として、まず、「マトリックス樹脂が含浸、硬化された撚糸状の炭素繊維束からなり、その炭素繊維束長さが5mm〜50mmの線材であるコンクリート等補強用炭素繊維複合樹脂線材」を提案し(特願2006−212035号)、また、さらに、「無機系材料をマトリックスとして有する撚糸状の炭素繊維束からなり、その炭素繊維束長さが5〜50mmの線材であるコンクリート等補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材」を提案した(特願2006−212035号)。
しかし、これら先行出願の発明においては、炭素繊維束を使用したことに基づく補強効果が効果的に得られているものの、その効果は、炭素繊維が本来的に持つ性能のままに裏付けられて得られてはいないのではないかという見方があり、得られる補強効果をさらにより大きくできるのではないかという新たな期待が生まれた。
特開2003−183062号公報 特開2003−2707号公報 特開2001322845号公報 特開平8−243602号公報 特開2003−328284号公報 特開平11−116303号公報 特開平10−119139号公報 特開平5−321178号公報 特開2002−243895号公報 特開2001−201596号公報
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、コンクリートもしくはモルタルからなる構造物の補強において、コンクリート、モルタルのひび割れを防ぎ、靭性に優れ、長期間にわたり、コンクリート、モルタルに対する強度の著しい向上効果・補強効果を維持することのできるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を用いたコンクリートもしくはモルタル構造物とその製造方法を提供することにある。
上述した点に鑑み、本発明のコンクリートもしくはモルタル構造物は、以下の(1)の構成からなるものである。
(1)無機系材料をマトリックスとする無撚状の炭素繊維束からなる線材を含有するコンクリートもしくはモルタル構造物であって、前記マトリックスの原料が軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末であり、該混合粉末と前記炭素繊維束とからなる中間体を加熱処理により炭素/炭素コンポジットとした板状の複合材料を、該板状の複合材料から該炭素繊維束の長さが5mm〜60mmになるように切り出されてなるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル混練物中に体積割合で0.2%〜5%の混入率で使用してなることを特徴とするコンクリートもしくはモルタル構造物。
また、かかる本発明のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材において、好ましい具体的態様として、以下の(2)〜(8)のいずれかの構成からなるものである。
(2)前記無機マトリックス・炭素繊維複合線材が、その最大幅が0.5mm〜6.0mm、最大厚さが0.5mm〜3.0mmであることを特徴とする上記(1)記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
(3)前記無機マトリックス・炭素繊維複合線材が、その表面に凹凸構造を有することを特徴とする上記(1)または(2)記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
(4)前記凹凸構造の凹部が、凸凹型による成型加工により付与されたものであることを特徴とする上記(3)記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
(5)前記凹凸構造の凹部が、ディンプル状の多数のくぼみとして形成されていることを特徴とする上記(4)記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
(6)前記無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に存在する凹凸構造が、高低差0.1mm〜0.5mmの凹凸であることを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
(7)放射性廃棄物の処分施設を構成する材料として用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
(8)海洋構造物を構成する材料として用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
また、上述した目的を達成する本発明のコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法は、以下の(9)の構成からなるものである。
(9)無撚状の炭素繊維束と、軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末を無機系のマトリックス原料とする炭素繊維シートを加熱処理することにより炭素/炭素コンポジットとした板状の複合材料を、しかる後、該板状の複合材料から該炭素繊維束の長さが5mm〜60mmである無機マトリックス・炭素繊維複合線材を切り出したコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル混練物中に体積割合で0.2%〜5%の混入率で使用することを特徴とするコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法。
また、かかる本発明のコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法において、好ましい具体的態様として、以下の(10)〜(11)のいずれかの構成からなるものである。
(10)前記板状の複合材料が、その厚みが0.5mm〜3.0mmであって、該板状の複合材料から、最大幅が0.5mm〜6.0mmの前記線材を切り出すことを特徴とする上記(9)記載のコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法。
(11)前記炭素繊維シートとして、表面に高さ0.1mm〜0.5mmの凸部のある成型板で加温加圧されて凹凸構造が形成せしめられたものを用いることを特徴とする上記(9)または(10)記載のコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法。
請求項1〜8にかかる本発明によれば、コンクリートもしくはモルタルからなる構造物の補強において、コンクリートもしくはモルタルのひび割れを防ぎ、靭性に優れ、長期間にわたり、コンクリート等に対する強度の著しい向上効果・補強効果を維持することのできるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を使用して補強された、優れた補強効果を有するコンクリートもしくはモルタル構造物が提供される。
請求項9〜11にかかる本発明によれば、コンクリートもしくはモルタルからなる構造物の補強において、コンクリートもしくはモルタルのひび割れを防ぎ、靭性に優れ、長期間にわたり、コンクリートもしくはモルタルに対する強度の著しい向上効果・補強効果を維持することのできるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を使用して補強された、優れた補強効果を有するコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法が提供される。
以下、更に詳しく本発明のコンクリートもしくはモルタルの構造物とコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法について説明する。
本発明にかかるコンクリートもしくはモルタル構造物は、無機系材料をマトリックスとする無撚状の炭素繊維束からなる線材を含有するコンクリートもしくはモルタル構造物であって、前記マトリックスの原料が軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末であり、該混合粉末と前記炭素繊維束とからなる中間体を加熱処理により炭素/炭素コンポジットとした板状の複合材料を、該板状の複合材料から該炭素繊維束の長さが5mm〜60mmになるように切り出されてなるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル混練物中に体積割合で0.2%〜5%の混入率で使用してなることを特徴とするものである。
また、本発明にかかるコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法は、無撚状の炭素繊維束と、軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末を無機系のマトリックス原料とする炭素繊維シートを加熱処理することにより炭素/炭素コンポジットとした板状の複合材料を、しかる後、該板状の複合材料から該炭素繊維束の長さが5mm〜60mmである無機マトリックス・炭素繊維複合線材を切り出したコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル混練物中に体積割合で0.2%〜5%の混入率で使用することを特徴とするものである。
本発明にかかる無機系材料をマトリックスとする無撚状の炭素繊維束からなる線材とは、マトリックスの原料が軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末であり、該混合粉末と炭素繊維束とからなる中間体を加熱処理により炭素/炭素コンポジットとした板状の複合材料を、該板状の複合材料から該炭素繊維束の長さが5mm〜60mmになるように切り出されてなるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材をいい、図1に概略モデル図を示したように、線材1の長さ方向に、無撚状の炭素繊維フィラメントの束2が配置されて、該束の繊維間空隙、および表面に無機マトリックス3が含浸されているものである。
かかる本発明の線材は、炭素繊維の束が無撚状であるため、炭素繊維フィラメントが、線材中において真直ぐに配置されていることから、撚り構造に基づいて3次元螺旋状にあるいは蛇行して配置されている場合などと比較して、該炭素繊維による補強効果を十二分に発揮することができる。
線材の横断面形状は、図1に示したような、長方形状やあるいは正方形状などが、所望の厚さを有する平板状のものをいったん作成した後に、所望の幅に分断し作成するという手法を採る場合には実際的で好ましいものである。
ただし、該横断面形状を、その横断面の表面長さをより長くして補強効果をより高いものとして得たいという意味で、平行四辺形状や台形状などにしてもよいものであり、そのような横断面形状にすると、コンクリートもしくはモルタルに対して、いわゆるくさび効果を発揮することもでき、好ましい。
本発明にかかる無機マトリックス・炭素繊維複合線材は、基本的にコンクリートもしくはモルタルに一定の繊維体積量となるように混合されるが、好ましくはその最大幅が0.5mm〜6.0mm、最大厚さが0.5mm〜3.0mmであることであり、かかる範囲よりも小さい場合には、線材の分散性は良くなるが、個々の線材とコンクリートもしくはモルタルとの接触面積が小さくなってしまうため、補強効果を発揮することができず、一方、大きい場合には、線材との接触面積は大きくなるが、線材の補強効果は繊維方向への力に対するもののため、繊維厚み方向よりも繊維方向の接触面積が重要となり、このため、線材の幅や厚みが大き過ぎると繊維量に合った充分な曲げ耐力が得られなくなるため好ましくない。
また、本発明にかかる無機マトリックス・炭素繊維複合線材は、該無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に凹凸構造を有することが好ましい。該凹凸構造を有することにより、線材の表面積が増大し、補強効果をより高く得ることができるからである。
該凹凸構造を形成させる手法は、各種のものが考えられ、特に限定されるものではないが、例えば、該凹凸構造の凸部を、該無機マトリックス・炭素繊維複合線材に無機系粒子が包埋されていることに基づいて、形成させる手法などを使用できる。その場合、該無機系粒子は、平均粒径0.1mm〜2.0mmのものであることが好ましい。該無機系粒子としては、例えば、セラミックスや、天然の岩石を細かく砕いたものなどを使用することができる。例えば、該無機系粒子が、天然の岩石を細かく砕いたものとして、代表的には硅砂であることなど好ましい。硅砂である場合、工業的に粒子径を市販したものが市販されており、好ましくは、いわゆる4〜8号の硅砂を使用するのがよい。
また、凹凸構造を形成させる他の手法として、例えば、該凹凸構造の凹部を、凸凹型による成型加工により付与することができる。このような型を使用して型付与を行えば、型設計どおりの凹凸構造を得ることができる点で、上述の無機系粒子を使用して凹凸を形成させる場合よりも優れていると言える。凸凹型を使用する場合、線材側に付与される凹凸構造の凹部が、ディンプル状(えくぼ状)の多数のくぼみとして形成されることが好ましい。
さらに、本発明の無機マトリックス・炭素繊維複合線材は、板状(プレート状)の複合材料からカットして得られるが、該カット前のプレートの状態において、プレート表面をショットブラスト処理などで凹凸を作ることによってコンクリートもしくはモルタルとの付着強度を向上させることもできる。さらに、他の手法として、カットした繊維端部をつぶし,ドックボーン形状にして、コンクリートもしくはモルタルからの引抜け耐力を向上させるなどの方法も採用できる。
本発明においては、上述した無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に存在する凹凸構造は、それがいずれの製造手法によるものであったとしても、その凹凸の高低差が、高低差0.1mm〜0.5mmの範囲内にある凹凸構造であることが好ましい。ここで、凹凸の高低差とは、詳細を後述するが、凸部、凹部ともにマイクロメータで高さを測定し、その高さの差を高低差とする。
このように、補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に凹凸構造が存在すると、特にコンクリートもしくはモルタルと混ぜた場合に、該線材とコンクリートもしくはモルタルとの締結が可能になるという点で好ましく、補強効果として利用できる強い締結力を得ることができ、より好ましいのである。すなわち、本発明にかかる補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に凸凹構造を設けておけば、本発明の複合線材をコンクリートもしくはモルタルに混入した場合、該複合線材表面の凹凸にコンクリートもしくはモルタルが入り込み、線材とコンクリートもしくはモルタルとの強固な締結がなされることになり、それにより、コンクリートもしくはモルタルに引張力がかかった場合に、線材が引張力を負担し、コンクリートもしくはモルタルの強度を向上させるとともに、線材によりコンクリートもしくはモルタルのひび割れの進展が阻止されることになり、コンクリートもしくはモルタルの靭性および強度が大幅に向上する。
また、線材は錆びることがないので、鋼繊維のように線材自体の強度低下がなく、耐久性が飛躍的に向上する。特に、無撚状の炭素繊維の束として存在することから、上述した線材が引張力を負担することがより高度にできるのである。
なお、ここでいう無撚とは、炭素繊維の単糸が一方向に並行に配列している状態をさしており、前述のように螺旋や蛇行した配列になっていなければ、配列する炭素繊維自身に残存しているうねりなどの癖は含んでもよい。
また、本発明にかかる線材は、炭素繊維束の長さが5〜60mmであるようにカットされているものである。該炭素繊維束の長さは、線材の長さとほとんど同一のものであるが、該炭素繊維束の長さが5mm未満では、線材とコンクリートもしくはモルタルとの締結力が小さく、引張力が付加された場合、線材が母材のコンクリートもしくはモルタルから抜け、線材の強度が十分に発現できないので好ましくなく、また、細骨材、粗骨材のサイズに比べて同等もしくは小さいため、発生したひび割れをまたぐ可能性が小さくなり好ましい。
また、該炭素繊維束の長さが60mmよりも大きいものでは、ワーカビリティへの影響が過大となり、線材をコンクリートもしくはモルタルに均一に混ぜるのが難しくなるという不都合がある。また、コンクリートもしくはモルタルへの締結力は線材の長さが長いほど大きいが、必要以上に長いと、練り混ぜ中に線材が折損し、結局、線材長が不均一となり強度のばらつきが大きくなるので一般に望ましくない。
本発明によるコンクリートもしくはモルタルの補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材に使用する強化繊維は、コンクリートもしくはモルタルの外力による変形を抑えるため、高強度、高弾性率であることが重要であり、さらに、耐食性、特に耐アルカリ性に優れていることが重要であり、炭素繊維が最も好ましいものである。本発明の如くに炭素繊維を使用することにより長期間の使用に耐え得るコンクリートもしくはモルタル構造物が得られるのである。
本発明の無機マトリックス・炭素繊維複合線材に使用される無機マトリックスの例としては、微粒子としたセメント、ナノシリカ等の無機系接着剤、水ガラス、軽焼マグネシア、石膏あるいはこれらのプリカーサーからなる化合物などを、単独あるいは混合して溶液状とするか、困難な場合、固体のまま微粒化して水、アルコール系などの溶媒に分散させ、これらを炭素繊維束に含浸し溶媒を飛ばすあるいはガラス化などの処置を行うことによって、製造される。また、セラミック系プリカーサーや、炭素プリカーサー、あるいは、加熱溶融させた石油系バインダーピッチを含浸させて、後セラミックスや、炭素に変換することも好適である。処理剤が固体の場合で固体形状が維持される場合、良好な含浸性を確保するため、分散させる粒子の径は炭素繊維の単繊維径より同等以下、すなわち、一般には、10μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下が適当である。
無機マトリックスの一例として、好ましいセメントマトリックスの例としては、超微粒子セメントの2次凝集を篩い分け、解砕等を行い原料として使用し、適当なセメント分散剤と併用して含浸剤として用いるものなどがある。
また、無機マトリックスの一例として、好ましい無機系接着剤の例としては、水酸化アルミニウムからなる耐火パテ、有機溶媒にナノシリカを分散させ、その後に溶媒を飛散させることにより得られるシリカ化合物が挙げられる。
また、無機マトリックスの一例として、好ましい水ガラスの使用例としては、まず水ガラスで含浸、硬化させ、セメントの混練に耐えられるように外側に耐水、耐アルカリコーティングを施す方法によるものが挙げられる。
また、無機マトリックスの一例として、好ましい軽焼マグネシアの例としては、微粒子化した軽焼マグネシアをナフタレンスルフォン酸系やポリカルボン酸系分散剤を使用した水分散系を含浸剤として用いるものがある。
また、無機マトリックスの一例として、好ましい石膏の例としては、微粉化した石膏を水に分散させたものを含浸させ、後水を加熱固化させる方法によるものが挙げられる。
また、無機マトリックスの一例として、好ましいセラミック系プリカーサーの例としては、加熱してシリカ構造を与えるポリオルガノシロキサン、Si−Ti−CO系セラミックプリカーサー等が挙げられる。
これらは対応するプリカーサーを炭素繊維無撚線材に十分に含浸させ、加熱によって無機系マトリックスを生成させて無機マトリックス・炭素繊維複合線材を得る。
さらに、中でも、本発明で使用できる無機マトリックスの原料の他の一例として、粉末状のピッチやコークスを用いる場合、軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末を使用でき、前記無機マトリックス原料が炭素繊維の周囲に炭素繊維を芯材として存在する。ここで好ましくは、上記混合粉末が含有された炭素繊維の周囲に熱可塑性樹脂からなる柔軟なスリーブを設けたものを複数本配列し、これを1200℃以上の嫌気性雰囲気で加熱処理して炭素/炭素コンポジットからなる炭素繊維複合線材を得ることができる。
本発明の無機マトリックス・炭素繊維複合線材における炭素繊維の体積含有率、つまり炭素繊維束とマトリックスとの体積割合は、マトリックス比率が大きすぎると、コンクリートもしくはモルタル中で線材に応力が作用した際に、炭素繊維束の表面に付着したマトリックスから破壊が始まるので好ましくなく、また、マトリックス量が少なすぎると線材強度が低くなり、ミキサーで練りまぜたときに線材が折れたりするので好ましくない。本発明者らの各種知見によれば、炭素繊維束の比率は、全体に対して20〜90体積%程度とするのが好ましく、より好ましくは35〜80体積%程度とすることである。すなわち、マトリックスの量は、80〜10体積%程度とするのが好ましく、より好ましくは、65〜20体積%程度である。
本発明による無機マトリックス・炭素繊維複合線材の最も好ましい製造方法について以下に説明する。
無機マトリックス・炭素繊維複合線材は、まず、軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末をマトリックスとして炭素繊維を芯材とする中間材を原料としてなるプリカーサーをマトリックスとして炭素繊維を芯材とする中間材を得る。
すなわち、該中間材とは、無撚状の炭素繊維束と、軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末を原料とする無機系のマトリックス材料からなる炭素繊維シートである。そして、さらに該中間体(炭素繊維シート)を加熱処理に供することにより形炭素/炭素コンポジットが形成される。
ここでいう軟化性を有する石油および/または石炭系ピッチとして、60〜320℃の軟化点を有し、キノリン不溶分0〜80重量%および揮発分10〜60重量%の石油および/または石炭から得られる等方性、潜在的異方性のバインダーピッチを用いることが望ましい。
このようなバインダーピッチとしては、石油の常圧残油、減圧残油、接触分触オイル等の石油系重質油あるいは石炭タール、オイルサンド油などの石炭系重質油を高温下(350〜500℃)で加熱処理した際に得られるピッチ類が挙げられる。また、このピッチ類から得られるメゾフェーズ小球体、あるいは、それが合体成長したバルクメソフェーズなども有用なものである。
本発明において、このバインダーピッチは、炭素繊維と骨材としてのコークス粉末とを結合させるために用いるものであって、その平均粒径は0.5μm〜60μm、好ましくは、3μm〜20μmとするのが適当である。平均粒径は0.5μm未満であると、粒子としての流動性が極端に低下し、均一に炭素繊維間に包含されにくくなり、また60μmを越えると強化用繊維のフィラメント径に対し、粉末径がかなり大きくなるので、粉末の分散性の点から好ましくない。
また、本発明において前記バインダーピッチと併用するコークスは、骨材的役割をもたせるために加えるものであって、軟化点を有しておらず、揮発分が10重量%以下、好ましくは2重量%以下のものが適用される。軟化点を有し、揮発分が10重量%を越えるものは焼成後の成形品にクラックを生じ易くなるので適当ではない。
本発明で用いるコークスは、石油系あるいは石炭系のいずれを用いることができ、その平均粒径は0.5μm〜30μm、好ましくは1μm〜20μmとしたものがよい。0.5μm未満であると粒子としての流動性が極端に低下するので、均一に炭素繊維間に粉末が包含されにくくなる。また、30μmを越えると炭素繊維を損傷させる他、成形体中に気孔やクラックを増大させるので好ましくない。
前記中間体は、一方向に多数本(例えば、12000本など)の炭素繊維束が配列され、これを500℃以上の温度で加圧プレスし一方向の複合材料とする。さらに、複合材料を1300℃以上の嫌気性雰囲気中で熱処理を行い、該板状(プレート状)の複合材料を得る
次に、前記板状(プレート状)の複合材料から、無機マトリックス・炭素繊維複合線材を得るために炭素繊維束の長さが5〜60mmとなるように切り出し、さらに、所望する最大幅の寸法に対応させて、好ましくは、最大幅が0.5mm〜6.0mmなどの線材として切り出すことにより、本発明にかかる複合線材を得ることができる。
該板状(プレート状)の複合材料の好ましい最大厚さは、好ましくは、0.5〜3.0mmの範囲内である。
なお、この最大厚さよりも厚い線材を製造したい場合には、該板状(プレート状)複合材料を、複数枚重ね合わせて接合させて所望の厚さとし、所望の最大幅のピッチで切り出すことにより製造することができる。
本発明のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に凹凸構造を形成させる方法の代表的な例は、上述の板状(プレート状)複合材料として、該シートの表面に粒径0.1mm〜2.0mmの無機系粒子を散布した後、該無機系粒子の上から加温加圧をして、該無機系粒子がマトリックス樹脂中に包埋させて凹凸構造を形成せしめて、上述の寸法の線材に切り出して製造する方法である。
あるいは、代表的な他の例としては、上述の板状(プレート状)複合材料として、表面に高さ0.1mm〜0.5mmの凸部のある成型板で加温加圧がされて、ディンプル状の凹部が形成されて、凹凸構造が形成せしめられたものを用いて、上述の寸法の線材に切り出して製造する方法である。
これらの方法によれば、プレートの上面および/または下面にだけ凹凸構造が形成されることとなり、切り出し面である両側面には、一般には凹凸構造が存在しないものとなるが、少なくとも1面上において凹凸構造があれば、補強効果を増大させることができる。
なお、切り出し面である両側面においても凹凸構造を形成させたい場合には、切り出しの刃物形態などを特殊なものにすると実現できる。また、線材中の凹凸の数や周期については、特に限定されないが、単一線材には凹部、凸部がそれぞれ1ケ所以上入るようにすることが好ましい。
本発明にかかる複合線材は、その断面積は0.15〜3平方ミリメートルであることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.6平方ミリメートルである。あまりに該線材が細いと、線材の表面積が小さくなるので、コンクリートとの十分な締結効果が得られないことがあり、また、セメント、砂、砂利、水とのミキシングの際、線材が折れてしまうことも多くあり、締結効果の小さい短い線材が発生することになり、機械的性質の安定したコンクリートもしくはモルタル構造物を得ることが難しくなる。さらに、まだ固まらないコンクリートもしくはモルタルのワーカビリティに与える影響が大きく、打設しにくいコンクリートになるため好ましくない。
また、線材の断面積が3平方ミリメートルよりも大きなものになると、同一線材量で比較した場合に、コンクリートもしくはモルタル中に分散する線材の本数が少なくなる。その結果、コンクリートもしくはモルタルに負荷がかかった場合、1本の線材が負担する荷重は、線材とコンクリートもしくはモルタルとの締結力であるので、線材の本数が少ないほど強度補強効果は小さくなり、また、コンクリートもしくはモルタル中における線材と線材の間隔も大きくなるので、線材によるひび割れの抑止効果が小さくなり好ましくない。一方、線材量を多くすれば、強度補強効果も向上し、また、線材と線材の間隔も狭くなりひび割れ抑止に対する十分な効果は得られるが、材料費が上がり高価な構造物となるばかりか、コンクリートもしくはモルタル成型時のプロセス性が劣る問題がある。
本発明にかかるコンクリートもしくはモルタル構造物は、上述した本発明のコンクリー トもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材が補強材料として使用 されて形成されてなるものである。
該本発明のコンクリートもしくはモルタル構造物は、本発明の上述した無機マトリックス・炭素繊維複合線材を0.2〜5体積%程度と、セメント、砂、砂利、混和材に水を加えて数分間練り込んで得られる。該本発明の上述した複合線材の混入率が、0.2体積%未満では補強効果が小さく、5体積%よりも大きいと高価な構造物になるので、より効果的な補強効果が得られる範囲として、0.2〜5体積%とすることが重要である。
なお、本発明にかかるコンクリートもしくはモルタル構造物において、本発明の上述した条件を満足しない無機マトリックス・炭素繊維複合線材が、第三の補強線材として、一部含有されていてもよいものであるが、少なくとも、使用される補強線材の全体中、重量比で40重量%以上、好ましくは50重量%以上、最も好ましくは70重量%以上が本発明にかかる上述した無機マトリックス・炭素繊維複合線材であることが望ましいものである。
特に、好ましく製造された本発明にかかるコンクリートもしくはモルタル構造物は、その極めて高い耐久性に基づいて、放射性廃棄物の処分施設を構成する材料として、あるいは海洋構造物を構成する材料などとして好適に用いられるものである。
以下、実施例に基づいて本発明に用いられるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材と、本発明にかかるコンクリートもしくはモルタル構造物とコンクリート等構造物の製造方法について説明をする。
各物性値は、以下に記載する測定法によるものである。
(1)炭素繊維束の長さ:
複合線材の長さは、ノギスを用いて測定した。測定は、試料数5個の複合線材を使用し、各5回行いその平均値を使用した。
(2)複合線材の最大幅、最大厚さ:
複合線材の最大厚みは、測定面が平坦なマイクロメータを用いて測定し、幅はノギスを用いて測定した。測定は、試料数5個の複合線材を使用し、各5回行いその平均値を使用した。
(3)線材の表面の凹凸の高低差:
線材の表面の凹凸差は、マイクロメータで測定した凹部、凸部の高さの差とした。
測定には、試料数5個の複合線材を使用した。まず、凸部は、測定面が平坦なマイクロメータを使用して高さを測定した。同一の線材について5回測定し、その平均を凸部の高さとした。凹部は、先端が細いポイントマイクロメータを使用して高さを測定した。同一の線材について5回測定し、その平均を凹部の高さとした。上記測定で得られた、凹部と凸部の高さの差を高低差とした。
(4)曲げ強度、圧縮強度、曲げ靭性係数
JIS R5201(1997)に準じて評価した。
実施例1〜7、比較例1
使用した複合線材の詳細については、長さは実施例1〜6はいずれも30mmで、実施例7は50mmである。最大厚さ×最大幅×長さは、それぞれ次のとおりである。比較例1は複合線材を含んでいない。
実施例1:最大厚さ×最大幅×長さ=1.0mm×1.0mm×30mm
実施例2:最大厚さ×最大幅×長さ=1.0mm×0.7mm×30mm
実施例3:最大厚さ×最大幅×長さ=1.0mm×0.5mm×30mm
実施例4:最大厚さ×最大幅×長さ=1.0mm×1.2mm×30mm
実施例5:最大厚さ×最大幅×長さ=1.0mm×1.5mm×30mm
実施例6:最大厚さ×最大幅×長さ=1.5mm×1.0mm×30mm
実施例7:最大厚さ×最大幅×長さ=1.0mm×1.0mm×50mm
比較例1:繊維なし
炭素繊維複合線材の作成は、以下のようにして行った。すなわち、強化用繊維として1束12000本のフィラメントからなる炭素繊維束(引張強度:4900MPa、引張弾性率:230GPa)を用いた。
この炭素繊維を石油系バインダーピッチとコークス粉末の混合粉末の中を通過させ、前記混合粉末を付着させた。次に、この炭素繊維を芯材として混合粉末を内部に包含するように周囲にポリエチレンを肉厚8μmとなるように被覆した炭素繊維中間材を作成した。
次に、前記被覆した炭素繊維中間材を軽く張力をかけて一方向に配列したシート状にした後、該シートを成形温度600℃、成形圧力5×107 Pa、成形保持時間20分の条件下でホットプレスし一方向の複合材料を得た。
更に、上記複合材料を窒素雰囲気中1500℃で30分間焼成し、炭素/炭素コンポジットを得た。この炭素/炭素コンポジットを所望のサイズとなるようにカットして無機マトリックス・炭素繊維複合線材を得た。
表1の無機マトリックス・炭素繊維複合線材を用いて表2の配合の繊維補強コンクリートを練り混ぜた。コンクリートへの添加量は、線材の長さを考慮の上いずれも1.5体積%とした。
線材は練り始めから90秒後に投入し、線材投入後更に90秒練混ぜた。表2の配合においてSPは高性能AE減水剤(エヌ・エムビー株式会社製の商品名SP8HUのポリカルボン酸系高性能AE減水剤)である。
なお、養生は、20℃の標準水中養生を7日間実施した。測定した力学特性を表3に示した。
表3の結果からわかるように、本発明による無機マトリックス・炭素繊維複合線材配合のコンクリートは、大きなスランプフロー値を示してワーカビリティが良好であり、かつ炭素繊維複合樹脂線材配合のものに匹敵する強度特性を有していた。
図2は、この無機マトリックス・炭素繊維複合線材配合のコンクリートの、図3は、前記複合線材が配合されていないコンクリートのたわみ−荷重曲線(n数=3)をそれぞれ示したものである。
Figure 0005046276
Figure 0005046276
Figure 0005046276
図1は、本発明にかかるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の外観をモデル的に示した概略外観図である。 図2は、実施例1で得られた試験結果として荷重−たわみ曲線を示したものである。 図3は、比較例1で得られた試験結果として荷重−たわみ曲線を示したものである。
符号の説明
1:無機マトリックス・炭素繊維複合線材
2:炭素繊維フィラメントの束
3:マトリックス樹脂

Claims (11)

  1. 無機系材料をマトリックスとする無撚状の炭素繊維束からなる線材を含有するコンクリートもしくはモルタル構造物であって、前記マトリックスの原料が軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末であり、該混合粉末と前記炭素繊維束とからなる中間体を加熱処理により炭素/炭素コンポジットとした板状の複合材料を、該板状の複合材料から該炭素繊維束の長さが5mm〜60mmになるように切り出されてなるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル混練物中に体積割合で0.2%〜5%の混入率で使用してなることを特徴とするコンクリートもしくはモルタル構造物。
  2. 前記無機マトリックス・炭素繊維複合線材が、その最大幅が0.5mm〜6.0mm、最大厚さが0.5mm〜3.0mmであることを特徴とする請求項1記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
  3. 前記無機マトリックス・炭素繊維複合線材が、その表面に凹凸構造を有することを特徴とする請求項1または2記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
  4. 前記凹凸構造の凹部が、凸凹型による成型加工により付与されたものであることを特徴とする請求項3記載のコンクリート等構造物。
  5. 前記凹凸構造の凹部が、ディンプル状の多数のくぼみとして形成されていることを特徴とする請求項4記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
  6. 前記無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に存在する凹凸構造が、高低差0.1mm〜0.5mmの凹凸であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のコンクリート等構造物。
  7. 放射性廃棄物の処分施設を構成する材料として用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
  8. 海洋構造物を構成する材料として用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
  9. 無撚状の炭素繊維束と、軟化性を有する石油および/または石炭系バインダーピッチ粉末と軟化性を有していない石油および/または石炭系コークス粉末を少なくとも含有する混合粉末を無機系のマトリックス原料とする炭素繊維シートを加熱処理することにより炭素/炭素コンポジットとした板状の複合材料を、しかる後、該板状の複合材料から該炭素繊維束の長さが5mm〜60mmである無機マトリックス・炭素繊維複合線材を切り出したコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル混練物中に体積割合で0.2%〜5%の混入率で使用することを特徴とするコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法。
  10. 前記板状の複合材料が、その厚みが0.5mm〜3.0mmであって、該板状の複合材料から、最大幅が0.5mm〜6.0mmの前記線材を切り出すことを特徴とする請求項9記載のコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法。
  11. 前記炭素繊維シートとして、表面に高さ0.1mm〜0.5mmの凸部のある成型板で加温加圧されて凹凸構造が形成せしめられたものを用いることを特徴とする請求項9または10記載のコンクリートもしくはモルタル構造物の製造方法。
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