JP5046110B2 - 金属酸化物繊維材形成体の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]金属酸化物繊維材形成体の製造方法は、金属酸化物繊維材の構成金属を含有する基材原料を、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱する工程(1)を含む。
[2]金属酸化物繊維材形成体の製造方法は、工程(1)の後に実施され、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱した基材原料を、第1酸素濃度と異なる第2酸素濃度である第2の雰囲気下において加熱する工程(2)を含む。
(1)金属酸化物繊維材の構成金属を含有する基材原料を、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱する工程
(2)酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱した基材原料を、第1酸素濃度と異なる第2酸素濃度である第2の雰囲気下において加熱する工程
上述の如く、本発明の金属酸化物繊維材形成体の製造方法は、基材と、この基材の表面に形成された金属酸化物繊維材とを備える金属酸化物繊維材形成体の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含む方法である。
(1)金属酸化物繊維材の構成金属を含有する基材原料を、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱する工程
(2)工程(1)の後に実施され、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱した基材原料を、第1酸素濃度と異なる第2酸素濃度である第2の雰囲気下において加熱する工程
ここで、金属酸化物繊維材とは、金属酸化物ウィスカー又は金属酸化物ファイバーを意味する。
金属酸化物ウィスカーとは、長さが1〜1000μmであり、径が0.01〜10μmであり、アスペクト比が1000程度までである金属酸化物をいう。
一方、金属酸化物ファイバーとは、長さが1μm〜10cmであり、径が0.01〜1μmであり、アスペクト比が1000を超えるものである金属酸化物をいう。
まず、(1)工程について説明する。
(1)工程においては、金属酸化物繊維材の構成金属を含有する基材原料を、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱して、金属酸化物繊維材の前駆体を生成することができれば、その他の条件については特に限定されるものではない。
ここで、金属酸化物繊維材の前駆体とは、後の加熱処理において金属酸化物繊維材を形成するものをいう。
このような前駆体は、例えば基材原料の表面の全面又は一部に被膜として形成される。この被膜の量は、後に形成される金属酸化物繊維材の長さや径、更には密生度合いに影響する。
厚みが20μm未満であると、所望の長さの金属酸化物繊維材を形成することができないことがある。
このような基材原料としては、例えば構成金属の単体や構成金属を含有する合金、更には構成金属を含有する窒化物や炭化物、ホウ化物などを挙げることができる。
また、その形状についても、特に限定されるものではなく、このような基材原料として、例えば金属基材表面に基材原料を含む被膜を例えばメッキなどにより形成したもの、基材原料の形状を多孔質体など使用する際の形状に成形したものなどを用いることができる。
更には、このような基材原料として、使用する際の形状に成形した多孔質体に基材原料の粉末をまぶしたものを用いることもできる。
このような金属酸化物繊維材は、金属酸化物が金属酸化物の構成金属より蒸発し易く、上述した金属酸化物繊維材の前駆体を容易に形成することができる。
第1酸素濃度が1体積ppm(1atm、25℃)未満の場合には、金属酸化物繊維材の前駆体を生成することができないことがある。
また、第1酸素濃度が5体積%(1atm、25℃)を超える場合には、緻密な酸化膜が基材原料の表面に形成され、後に加熱処理をしても金属酸化物繊維材が形成され難くなる場合がある。
ここで、酸素量を1atm、25℃の条件下における濃度によって規定したが、同じ酸素圧力(分圧)を示せば、他の条件であってもよいことは言うまでもない(以下同様である。)。
上記不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン又はラドン、及びこれらの任意の組合せに係る混合ガスを用いることができる。
上記第1ガス流れは、例えば容積1Lの電気炉を用いた場合には、1〜1000cm3/分(1atm、25℃)とすることが好ましく、1〜100cm3/分(1atm、25℃)とすることがより好ましい。
第1ガス流れが1cm3/分(1atm、25℃)未満の場合には、十分に酸素が供給されずに前駆体が形成されなかったり、緻密な酸化膜が基材原料の表面に形成され、後に加熱処理をしても金属酸化物繊維材が形成され難くなる場合がある。
また、第1ガス流れが1000cm3/分(1atm、25℃)を超える場合には、金属酸化物繊維材の前駆体が基材原料の表面に生成されず、後に加熱処理をしても金属酸化物繊維材が形成され難くなることがある。
ここで、ガス流れを1atm、25℃の条件下における流量によって規定したが、他の条件であっても換算して規定することができることは言うまでもない(以下、同様である。)。
なお、第1ガス流れ条件は、経時的に変化してもよい。
上記第1温度は、例えばタングステンの場合、700℃以下とすることが好ましく、500℃以下とすることがより好ましい。また、熱処理を行う前段階での酸素濃度を第1酸素濃度とすることも可能で、その場合には第1温度は室温でも構わない。
また、第1温度が700℃を超える場合には、急激にタングステンの酸化が進むことにより、後に加熱処理をしても金属酸化物繊維材が形成され難くなる場合がある。
なお、第1温度は、経時的に変化してもよい。また、例えば昇温速度1〜50℃/分で加熱処理をしてもよい。この場合、第1温度は昇温目標温度である最高温度で規定する。
更に、(1)工程の加熱時間は、上述した酸素濃度やガス流れ、温度の条件によって若干のズレは生じるが、1〜5時間程度とすればよい。
(2)工程においては、(1)工程の後に実施され、(1)工程で加熱した基材原料を、第1酸素濃度と異なる第2酸素濃度である第2の雰囲気下において加熱して、基材の表面に所望の金属酸化物繊維材を形成することができれば、特に限定されるものではない。
ここで、所望の金属酸化物繊維材は、上述した金属酸化物ウィスカーや金属酸化物ファイバーである。
また、基材の表面には、上述した金属酸化物繊維材の前駆体を含む被膜が形成されている場合もある。
第2酸素濃度が1体積%を超える場合には、緻密な酸化膜が基材原料に形成され、金属酸化物繊維材が形成され難くなる。
ここで、第2酸素濃度を0体積ppmとする場合も、本発明の範囲に含まれる。
上記不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン又はラドン、及びこれらの任意の組合せに係る混合ガスを用いることができる。
上記第2ガス流れは、1〜1000cm3/分(1atm、25℃)とすることが好ましく、1〜100cm3/分(1atm、25℃)とすることがより好ましい。
第2ガス流れが1cm3/分(1atm、25℃)未満の場合には、金属酸化物繊維材の前駆体からの金属酸化物繊維材形成が促進されず、金属酸化物繊維材を得られない場合がある。
また、第2ガス流れが1000cm3/分(1atm、25℃)を超える場合には、金属酸化物繊維材の前駆体が蒸発・拡散して金属酸化物繊維材を形成できないことがある。
また、第2ガス流れは、第1ガス流れと同じでもよく、異なってもよい。更に、第2ガス流れは、経時的に変化してもよい。
上記第2温度は、例えばタングステンの場合、1600℃以下とすることが好ましく、600〜1200℃とすることがより好ましい。
第2温度が600℃未満の場合には、金属酸化物繊維材の前駆体がそのまま残ってしまうことがある。
また、第2温度が一定温度(例えばタングステンの場合には1600℃)を超える場合には、金属酸化物繊維材の前駆体が蒸発してしまい、金属酸化物繊維材が形成されないことがある。
一方、金属酸化物繊維材の長さを2μm未満にする場合には、第2温度は700〜900℃であることが好ましい。
第2温度が700℃未満であると、金属酸化物繊維材を形成することができないことがある。第2温度が900℃を超える場合にも、第2ガス流量を増加させることで所望のウィスカーを得ることが可能であるが、製造コストの面で好ましくない。
また、第2温度は、第1温度と同じでもよく、異なってもよい。
また、第2温度は、経時的に変化してもよい。更に、(2)工程の加熱時間は、特に限定されるものではないが、1〜100時間とすればよい。
なお、第2温度を調整することにより、密生度合いを制御することもできる。例えば第2温度を高い温度域(900℃以上)に設定すると、密生度合いを高くすることができる。
そして、金属酸化物繊維材は、その長さが長いほど電極表面積が増えて、電気化学セルの電気的な容量を増加させることができる。また、金属酸化物繊維材は、その長さが短いほど電気抵抗が小さくなるので、電気化学セルの応答性を速くすることができる。
更に言えば、加熱処理といった単一の処理手段により、上述した所望の性能を有する電気化学セルの電極を作製することができる。
また、このような製造方法は、低コストで信頼性が高く、簡便で高いスループットを実現でき、工業生産に適している。
基材原料としてタングステン金属平板(高純度化学研究所製)を用いた。
次いで、密閉可能な炉内に、このタングステン金属平板を配置し、0.33体積%の酸素を含むアルゴンを炉内に導入し、酸素含有アルゴンの流量が30cm3/分(1atm、25℃)の条件下、10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。
更に、引き続き、酸素濃度0体積%であるアルゴンを炉内に導入し、アルゴンの流量が30cm3/分(1atm、25℃)の条件下、10℃/分の昇温速度で1100℃まで昇温した。
しかる後、1100℃で2時間保持し、1時間で室温まで温度を降下させて、本例の金属酸化物繊維材形成体を得た。
基材原料としてタングステン金属平板(高純度化学研究所製)を用いた。
次いで、密閉可能な炉内に、このタングステン金属平板を配置し、0.33体積%の酸素を含むアルゴンを炉内に導入し、酸素含有アルゴンの流量が30cm3/分(1atm、25℃)の条件下、10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温した。
更に、引き続き、酸素濃度0体積%であるアルゴンを炉内に導入し、アルゴンの流量が20cm3/分(1atm、25℃)の条件下、10℃/分の昇温速度で1100℃まで昇温した。
しかる後、1100℃で5時間保持し、1時間で室温まで温度を降下させて、本例の金属酸化物繊維材形成体を得た。
基材原料としてタングステン金属平板(高純度化学研究所製)を用いた。
次いで、密閉可能な炉内に、このタングステン金属平板を配置し、1体積%の酸素を含むアルゴンを炉内に導入し、酸素含有アルゴンの流量が15cm3/分(1atm、25℃)の条件下、10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。
更に、引き続き、酸素濃度0体積%であるアルゴンを炉内に導入し、アルゴンの流量が15cm3/分(1atm、25℃)の条件下、10℃/分の昇温速度で1100℃まで昇温した。
しかる後、1100℃で5時間保持し、1時間で室温まで温度を降下させて、本例の金属酸化物繊維材形成体を得た。
基材原料としてタングステン金属平板(高純度化学研究所製)を用いた。
次いで、密閉可能な炉内に、このタングステン金属平板を配置し、500体積ppmの酸素を含むアルゴンを炉内に導入し、酸素含有アルゴンの流量が60cm3/分(1atm、25℃)の条件下、10℃/分の昇温速度で1100℃まで昇温した。
しかる後、1100℃で2時間保持し、1時間で室温まで温度を降下させて、本例の金属酸化物繊維材形成体を得た。
基材原料としてタングステン金属平板(高純度化学研究所製)を用いた。
次いで、密閉可能な炉内に、このタングステン金属平板を配置し、1000体積ppmの酸素を含むアルゴンを炉内に導入し、酸素含有アルゴンの流量が200cm3/分(1atm、25℃)の条件下、10℃/分の昇温速度で900℃まで昇温した。
しかる後、900℃で2時間保持し、1時間で室温まで温度を降下させて、本例の金属酸化物繊維材形成体を得た。
従って、本発明の金属酸化物繊維材形成体の製造方法は、金属酸化物繊維材の長さや径などの形態をより広い範囲で制御することができる金属酸化物繊維材形成体の製造方法であることが分かる。
なお、この場合は、圧力条件に応じて、酸素濃度を適宜調整すればよい。また、減圧条件下で加熱した場合には、上述した前駆体は、大気圧条件と比較して多い割合で雰囲気中にガスとして存在することとなる。
例えば、(2)工程の後に実施され、酸化や還元、表面改質などの工程を付加して行うことができる。
また、例えば、(1)工程と(2)工程との間において、酸素濃度やガス流れ、温度などの条件を段階的又は連続的に変化させる場合についても、本発明を適用することができる。
Claims (5)
- 基材と、この基材の表面に形成された金属酸化物繊維材と、を備える金属酸化物繊維材形成体の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)
(1)金属酸化物繊維材の構成金属を含有する基材原料を、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱する工程、
(2)酸素濃度が第1酸素濃度である第1の雰囲気下において加熱した基材原料を、第1酸素濃度と異なる第2酸素濃度である第2の雰囲気下において加熱する工程、
を含むことを特徴とする金属酸化物繊維材形成体の製造方法。 - 上記金属酸化物繊維材は、金属酸化物が金属酸化物の構成金属よりも高い蒸気圧を有することを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物繊維材形成体の製造方法。
- 上記(1)工程を、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の不活性ガス雰囲気下で行い、且つ上記(2)工程を、酸素濃度が第2酸素濃度である第2の不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属酸化物繊維材形成体の製造方法。
- 上記(1)工程を、酸素濃度が第1酸素濃度である第1の不活性ガス雰囲気の第1ガス流れ下で行い、且つ上記(2)工程を、酸素濃度が第2酸素濃度である第2の不活性ガス雰囲気の第2ガス流れ下で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の金属酸化物繊維材形成体の製造方法。
- 上記(1)工程を、酸素濃度が第1酸素濃度であり、温度が第1温度である第1の不活性ガス雰囲気の第1ガス流れ下で行い、且つ上記(2)工程を、酸素濃度が第2酸素濃度であり、温度が第2温度である第2の不活性ガス雰囲気の第2ガス流れ下で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の金属酸化物繊維材形成体の製造方法。
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