以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
従来、偏光板保護フィルムとしては、一般的にセルロースエステルフィルムが用いられているが、セルロースエステルフィルムはアクリルフィルムに比べて吸湿性が高いという欠点を有していた。しかしながらセルロースエステル樹脂にアクリル樹脂を混合させて吸湿性を改善しようとすると、互いに相溶せずにヘーズが上昇し、偏光板用保護フィルムとしての使用は困難であった。特に、分子量の大きなアクリル樹脂は、セルロースエステル樹脂に対しては相溶しないと考えられており、樹脂の混合による吸湿性の改善は困難であると考えられていた。可塑剤として比較的分子量の低いアクリル樹脂をセルロースエステル樹脂に添加することが試みられているものの、添加量が少ないため吸湿性が改善できず、また、分子量の小さいアクリル樹脂を添加することで、耐熱性が低下し、大型の液晶表示装置や屋外用途の液晶表示装置に用いられる偏光板用保護フィルムとして適した特性を得ることはできていなかった。
一方、アクリル樹脂フィルムは、耐熱性に乏しく高温下での使用、長期的な使用などにおいて、形状が変わり易く、脆性に劣るという性質を有している。更に、アクリル樹脂の特性の改善に取り組んでいるものの、十分な偏光板用保護フィルムとしての特性は得られていなかった。アクリル樹脂に対して、セルロースエステル樹脂を混合させることで耐熱性を改善する技術も考案されていたが、分子量の高いセルロースエステル樹脂はアクリル樹脂と相溶しないと考えられていたため、分子量の低いセルロースエステル樹脂が添加され、結果として脆性が十分に改善できていなかった。
ところが、本発明者らの検討の結果、特定の分子量のアクリル樹脂に対して、特定の置換度を有するセルロースエステル樹脂が高い相溶性を示すことが見出され、更に驚くべきことに分子量の比較的高いセルロースエステル樹脂もヘーズを上昇させることなく、相溶させることができることが判明した。
結果として、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とを特定の混合比の範囲でブレンドにより相溶化することで、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂それぞれの欠点が改善され、低吸湿性であり、透明で、高耐候性であり、脆性を著しく改善した偏光板用保護フィルムが得られることを見出し、本発明を成すに至った次第である。
〈アクリル樹脂(A)〉
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
本発明の偏光板用保護フィルムに用いられるアクリル樹脂(A)は、特に偏光板用保護フィルムとしての脆性の改善及びセルロースエステル樹脂(B)と相溶した際の透明性の改善の観点で、重量平均分子量(Mw)が80000以上である。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が80000を下回ると、十分な脆性の改善が得られず、セルロースエステル樹脂(B)との相溶性が劣化する。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、80000〜1000000の範囲内であることが更に好ましく、100000〜600000の範囲内であることが特に好ましく、150000〜400000の範囲であることが最も好ましい。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の上限値は特に限定されるものではないが、製造上の観点から1000000以下とされることが好ましい形態である。
本発明のアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明におけるアクリル樹脂(A)の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
本発明に係るアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
〈セルロースエステル樹脂(B)〉
本発明のセルロースエステル樹脂(B)は、特に脆性の改善やアクリル樹脂(A)と相溶させたときに透明性の観点から、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度は、2.0〜3.0であることが好ましい。即ち、本発明のセルロースエステル樹脂は炭素数が3〜7のアシル基により置換されたセルロースエステル樹脂であり、具体的には、プロピオニル、ブチリル等が好ましく用いられるが、特にプロピオニル基が好ましく用いられる。
セルロースエステル樹脂(B)の、アシル基の総置換度が2.0を下回る場合、即ち、セルロースエステル分子の2,3,6位の水酸基の残度が1.0を上回る場合には、アクリル樹脂(A)とアクリル樹脂(B)が十分に相溶せず偏光板用保護フィルムとして用いる場合にヘーズが問題となる。また、アシル基の総置換度が2.0以上であっても、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2を下回る場合は、やはり十分な相溶性が得られないか、脆性が低下することとなる。例えば、アシル基の総置換度が2.0以上の場合であっても、炭素数2のアシル基、即ちアセチル基の置換度が高く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2を下回る場合は、相溶性が低下しヘーズが上昇する。また、アシル基の総置換度が2.0以上の場合であっても、炭素数8以上のアシル基の置換度が高く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2を下回る場合は、脆性が劣化し、所望の特性が得られない。
本発明のセルロースエステル樹脂(B)のアシル置換度は、総置換度(T)が2.0〜3.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であれば問題ないが、炭素数が3〜7以外のアシル基、即ち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。
また、セルロースエステル樹脂(B)のアシル基の総置換度(T)は、2.5〜3.0の範囲であることが更に好ましい。
本発明において前記アシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよい。脂肪族アシル基の場合は、直鎖であっても分岐していても良く、さらに置換基を有してもよい。本発明におけるアシル基の炭素数は、アシル基の置換基を包含するものである。
上記セルロースエステル樹脂(B)が、芳香族アシル基を置換基として有する場合、芳香族環に置換する置換基Xの数は0〜5個であることが好ましい。この場合も、置換基を含めた炭素数が3〜7であるアシル基の置換度が1.2〜3.0となるように留意が必要である。例えば、ベンゾイル基は炭素数が7になる為、炭素を含む置換基を有する場合は、ベンゾイル基としての炭素数は8以上となり、炭素数が3〜7のアシル基には含まれないこととなる。
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
上記のようなセルロースエステル樹脂(B)においては、炭素数3〜7の脂肪族アシル基の少なくとも1種を有する構造を有することが、本発明のセルロース樹脂に用いる構造として用いられる。
本発明に係るセルロースエステル樹脂(B)の置換度は、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0である。
また、炭素数が3〜7のアシル基以外、即ちアセチル基と炭素数が8以上のアシル基の置換度の総和が1.3以下であることが好ましい構造である。
本発明に係るセルロースエステル樹脂(B)としては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、即ち、炭素原子数3または4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
本発明に係るセルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル樹脂(A)との相溶性、脆性の改善の観点から75000以上であり、75000〜300000の範囲であることが好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースエステル樹脂の重要平均分子量(Mw)が75000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が十分ではなく、本発明の効果が得られない。セルロースエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の上限値は特に限定されるものではないが、製造上の観点から240000以下とされることが好ましい形態である。本発明では2種以上のセルロース樹脂を混合して用いることもできる。
本発明の偏光板用保護フィルムにおいて、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)は、95:5〜30:70の質量比で、かつ相溶状態で含有されるが、好ましくは95:5〜50:50であり、更に好ましくは90:10〜60:40である。
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)の質量比が、95:5よりもアクリル樹脂(A)が多くなると、セルロースエステル樹脂(B)による効果が十分に得られず、同質量比が30:70よりもアクリル樹脂が少なくなると、耐湿性が不十分となる。
本発明の偏光板用保護フィルムにおいては、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)が相溶状態で含有される必要がある。偏光板用保護フィルムとして必要とされる物性や品質を、異なる樹脂を相溶させることで相互に補うことにより達成している。
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)が相溶状態となっているかどうかは、例えばガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。
例えば、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、両者の樹脂を混合したときは、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は2つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)とする。
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)は、それぞれ非結晶性樹脂であることが好ましく、いずれか一方が結晶性高分子、あるいは部分的に結晶性を有する高分子であってもよいが、本発明においてアクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)が相溶することで、非結晶性樹脂となることが好ましい。
本発明の偏光板用保護フィルムにおけるアクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)やセルロースエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)や置換度は、両者の樹脂の溶媒に対して溶解性の差を用いて、分別した後に、それぞれ測定することにより得られる。樹脂を分別する際には、いずれか一方にのみ溶解する溶媒中に相溶された樹脂を添加することで、溶解する樹脂を抽出して分別することができ、このとき加熱操作や環流を行ってもよい。これらの溶媒の組み合わせを2工程以上組み合わせて、樹脂を分別してもよい。溶解した樹脂と、不溶物として残った樹脂を濾別し、抽出物を含む溶液については、溶媒を蒸発させて乾燥させる操作によって樹脂を分別することができる。これらの分別した樹脂は、高分子の一般の構造解析によって特定することができる。本発明の偏光板用保護フィルムが、アクリル樹脂(A)やセルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂を含有する場合も同様の方法で分別することができる。
また、相溶された樹脂の重量平均分子量(Mw)がそれぞれ異なる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、高分子量物は早期に溶離され、低分子量物であるほど長い時間を経て溶離されるために、容易に分別可能であるとともに分子量を測定することも可能である。
また、相溶した樹脂をGPCによって分子量測定を行うと同時に、時間毎に溶離された樹脂溶液を分取して溶媒を留去し乾燥した樹脂を、構造解析を定量的に行うことで、異なる分子量の分画毎の樹脂組成を検出することで、相溶されている樹脂をそれぞれ特定することができる。事前に溶媒への溶解性の差で分取した樹脂を、各々GPCによって分子量分布を測定することで、相溶されていた樹脂をそれぞれ検出することもできる。
また、本発明において、「アクリル樹脂(A)やセルロースエステル樹脂(B)を相溶状態で含有する」とは、各々の樹脂(ポリマー)を混合することで、結果として相溶された状態となることを意味しており、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステル樹脂(B)に混合させた後に重合させることにより混合樹脂とされた状態は含まれないものとする。
例えば、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステル樹脂(B)に混合させた後に重合されることにより混合樹脂を得る工程は、重合反応が複雑であり、この方法で作製した樹脂は、反応の制御が困難であり、分子量の調整も困難となる。また、このような方法で樹脂を合成した場合は、グラフト重合、架橋反応や環化反応が生じることが多く、溶媒に溶解しいケースや、加熱により溶融できなくなることが多く、混合樹脂中におけるアクリル樹脂を溶離して重量平均分子量(Mw)を測定することも困難である為、物性をコントロールすることが難しく偏光板用保護フィルムを安定に製造する樹脂として用いることはできない。
本発明の偏光板用保護フィルムは、偏光板用保護フィルムとしての機能を損なわない限りは、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂や添加剤を含有して構成されていても良い。
アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂を含有する場合、添加される樹脂が相溶状態であっても、溶解せずに混合されていてもよい。
本発明の偏光板用保護フィルムにおけるアクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)の総質量は、偏光板用保護フィルムの55質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂や添加剤を用いる際には、本発明の偏光板用保護フィルムの機能を損なわない範囲で添加量を調整することが好ましい。
〈アクリル粒子〉
本発明の偏光板用保護フィルムは、アクリル粒子も好ましく含有する事ができる。
本発明に係るアクリル粒子とは、前記アクリル樹脂(A)及びセルロースエステル樹脂(B)を相溶状態で含有する偏光板用保護フィルム中に粒子の状態(非相溶状態ともいう)で存在するアクリル成分を表す。
上記アクリル粒子は、例えば、作製した偏光板用保護フィルムを所定量採取し、溶媒に溶解させて攪拌し、充分に溶解・分散させたところで、アクリル粒子の平均粒子径未満の孔径を有するPTFE製のメンブレンフィルターを用いて濾過し、濾過捕集された不溶物の重さが、偏光板用保護フィルムに添加したアクリル粒子の90質量%以上あることが好ましい。
本発明に用いられるアクリル粒子は特に限定されるものではないが、2層以上の層構造を有するアクリル粒子であることが好ましく、特に下記多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層重合体、ゴム弾性を示す架橋軟質層重合体、および最外硬質層重合体が、層状に重ね合わされてなる構造を有する粒子状のアクリル系重合体を言う。
すなわち、多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層、架橋軟質層、および最外硬質層からなる多層構造アクリル系粒状複合体である。この3層コアシェル構造の多層構造アクリル系粒状複合体が好ましく用いられる。
本発明に係るアクリル系樹脂組成物に用いられる多層構造アクリル系粒状複合体の好ましい態様としては、以下の様なものが挙げられる。(a)メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%、および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体の混合物を重合して得られる最内硬質層重合体、(b)上記最内硬質層重合体の存在下に、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体の混合物を重合して得られる架橋軟質層重合体、(c)上記最内硬質層および架橋軟質層からなる重合体の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%とアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%とからなる単量体の混合物を重合して得られる最外硬層重合体、よりなる3層構造を有し、かつ得られた3層構造重合体が最内硬質層重合体(a)5〜40質量%、軟質層重合体(b)30〜60質量%、および最外硬質層重合体(c)20〜50質量%からなり、アセトンで分別したときに不溶部があり、その不溶部のメチルエチルケトン膨潤度が1.5〜4.0であるアクリル系粒状複合体、が挙げられる。
なお、特公昭60−17406号あるいは特公平3−39095号において開示されている様に、多層構造アクリル系粒状複合体の各層の組成や粒子径を規定しただけでなく、多層構造アクリル系粒状複合体の引張り弾性率やアセトン不溶部のメチルエチルケトン膨潤度を特定範囲内に設定することにより、さらに充分な耐衝撃性と耐応力白化性のバランスを実現することが可能となる。
ここで、多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最内硬質層重合体(a)は、メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体の混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが好ましく用いられる。
最内硬質層重合体(a)におけるアルキルアクリレート単位の割合は1〜20質量%であり、該単位が1質量%未満では、重合体の熱分解性が大きくなり、一方、該単位が20質量%を越えると、最内硬質層重合体(c)のガラス転移温度が低くなり、3層構造アクリル系粒状複合体の耐衝撃性付与効果が低下するので、いずれも好ましくない。
多官能性グラフト剤としては、異なる重合可能な官能基を有する多官能性単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸のアリルエステル等が挙げられ、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。多官能性グラフト剤は、最内硬質層重合体と軟質層重合体を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は0.01〜0.3質量%である。
アクリル系粒状複合体を構成する架橋軟質層重合体(b)は、上記最内硬質層重合体(a)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体の混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
また、これらの重合性単量体と共に、25質量%以下の共重合可能な他の単官能性単量体を共重合させることも可能である。
共重合可能な他の単官能性単量体としては、スチレンおよび置換スチレン誘導体が挙げられる。アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとスチレンとの比率は、前者が多いほど重合体(b)のガラス転移温度が低下し、即ち軟質化できるのである。
一方、樹脂組生物の透明性の観点からは、軟質層重合体(b)の常温での屈折率を最内硬質層重合体(a)、最外硬質層重合体(c)、および硬質熱可塑性アクリル樹脂に近づけるほうが有利であり、これらを勘案して両者の比率を選定する。
多官能性グラフト剤としては、前記の最内層硬質重合体(a)の項で挙げたものを用いることができる。ここで用いる多官能性グラフト剤は、軟質層重合体(b)と最外硬質層重合体(c)を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.5〜5質量%が好ましい。
多官能性架橋剤としては、ジビニル化合物、ジアリル化合物、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物などの一般に知られている架橋剤が使用できるが、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200〜600)が好ましく用いられる。
ここで用いる多官能性架橋剤は、軟質層(b)の重合時に架橋構造を生成し、耐衝撃性付与の効果を発現させるために用いられる。ただし、先の多官能性グラフト剤を軟質層の重合時に用いれば、ある程度は軟質層(b)の架橋構造を生成するので、多官能性架橋剤は必須成分ではないが、多官能性架橋剤を軟質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.01〜5質量%が好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最外硬質層重合体(c)は、上記最内硬質層重合体(a)および軟質層重合体(b)の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%およびアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%からなる単量体の混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アクリルアルキレートとしては、前述したものが用いられるが、メチルアクリレートやエチルアクリレートが好ましく用いられる。最外硬質層(c)におけるアルキルアクリレート単位の割合は、1〜20質量%が好ましい。
また、最外硬質層(c)の重合時に、アクリル樹脂(A)との相溶性向上を目的として、分子量を調節するためアルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用い、実施することも可能である。
とりわけ、最外硬質層に、分子量が内側から外側へ向かって次第に小さくなるような勾配を設けることは、伸びと耐衝撃性のバランスを改良するうえで好ましい。具体的な方法としては、最外硬質層を形成するための単量体の混合物を2つ以上に分割し、各回ごとに添加する連鎖移動剤量を順次増加するような手法によって、最外硬質層を形成する重合体の分子量を多層構造アクリル系粒状複合体の内側から外側へ向かって小さくすることが可能である。
この際に形成される分子量は、各回に用いられる単量体の混合物をそれ単独で同条件にて重合し、得られた重合体の分子量を測定することによって調べることもできる。
本発明に好ましく用いられるアクリル粒子の粒子径については、特に限定されるものではないが、10nm以上、1000nm以下であることが好ましく、さらに、20nm以上、500nm以下であることがより好ましく、特に50nm以上、400nm以下であることが最も好ましい。
本発明に好ましく用いられる多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体において、コアとシェルの質量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体を100質量部としたときに、コア層が50質量部以上、90質量部以下であることが好ましく、さらに、60質量部以上、80質量部以下であることがより好ましい。なお、ここでいうコア層とは、最内硬質層のことである。
このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”およびクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
また、本発明に好ましく用いられるアクリル粒子として好適に使用されるグラフト共重合体であるアクリル粒子(c−1)の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体の混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体であるアクリル粒子(c−1)に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル−メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
また、本発明の偏光板用保護フィルムにアクリル粒子を添加する場合は、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)との混合物の屈折率とアクリル粒子の屈折率が近いことが、透明性が高いフィルムを得る点では好ましい。具体的には、アクリル粒子とアクリル樹脂(A)の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
このような屈折率条件を満たすためには、アクリル樹脂(A)の各単量体単位組成比を調整する方法、および/またはアクリル粒子に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調整する方法などにより、屈折率差を小さくすることができ、透明性に優れた偏光板用保護フィルムを得ることができる。
尚、ここで言う屈折率差とは、アクリル樹脂(A)が可溶な溶媒に、本発明の偏光板用保護フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル樹脂(A))と不溶部分(アクリル粒子)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
本発明に用いることのできるアクリル粒子としては、市販のものも使用することができる。例えば、メタブレンW−341(C2)(三菱レイヨン(株)製)を、ケミスノーMR−2G(C3)、MS−300X(C4)(綜研化学(株)製)等を挙げることができる。
〈その他の添加剤〉
本発明の偏光板用保護フィルムにおいては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸およびグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が、可塑化効果が大きい。
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000MPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
可塑剤は本発明の偏光板用保護フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
本発明の偏光板用保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系またはサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
さらに、本発明の偏光板用保護フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、偏光板用保護フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
本発明の偏光板用保護フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
本発明の偏光板用保護フィルムによれば、従来の樹脂フィルムでは成し得なかった低吸湿性、透明性、高耐熱性及び脆性の改善を同時に達成することができる。
本発明においては、脆性の指標としては、「延性破壊が起こらない偏光板用保護フィルム」であるかどうかという基準により判断する。延性破壊が起こらない、脆性が改善された偏光板用保護フィルムを得ることで、大型の液晶表示装置用の偏光板を作製する際にも、製造時の破断や割れが発生せず、取り扱い性に優れた偏光板用保護フィルムとすることができる。ここで、延性破壊とは、ある材料が有する強度よりも、大きな応力が作用することで生じる破断のことであり、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊と定義される。その破面には、ディンプルと呼ばれる窪みが無数に形成される特徴がある。
本発明では、「延性破壊が起こらない偏光板用保護フィルム」であるか否かは、フィルムを2つに折り曲げるような大きな応力を作用させても破断等の破壊がみられないことにより評価するものとする。このような大きな応力が加えられても延性破壊が起こらない偏光板用保護フィルムであれば、大型化された液晶表示装置用の偏光板保護フィルムとして用いられた場合であっても製造時の破断等の問題を十分に低減することが可能となり、さらに、一度貼り合わされた後に再度引き剥がして偏光板用保護フィルムを使用する場合においても、破断が発生せず、偏光板用保護フィルムの薄型化へも十分に対応可能である。
本発明においては、耐熱性の指標として、張力軟化点を用いる。液晶表示装置が大型化され、バックライト光源の輝度が益々高くなっていることに加え、デジタルサイネージ等の屋外用途への利用により、より高い輝度が求められていることから、偏光板用保護フィルムはより高温の環境下での使用に耐えられることが求められているが、張力軟化点が、105℃〜145℃であれば、十分な耐熱性を示すものと判断できる。特に110℃〜130℃に制御することがより好ましい。
偏光板用保護フィルムの張力軟化点を示す温度の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、偏光板用保護フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
また、耐熱性の観点では、偏光板用保護フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
本発明における偏光板用保護フィルムの透明性を判断する指標としては、ヘーズ値(濁度)を用いる。特に屋外で用いられる液晶表示装置においては、明るい場所でも十分な輝度や高いコントラストが得られることが求められる為、ヘーズ値は1.0%以下であることが必要とされ、0.5%以下であることが更に好ましい。
アクリル系樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)を含有する本発明の偏光板用保護フィルムによれば、高い透明性を得ることができるが、別の物性を改善する目的でアクリル粒子を使用する場合は、樹脂(アクリル系樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B))とアクリル粒子との屈折率差を小さくすることで、ヘーズ値の上昇を防ぐことができる。
また、表面の粗さも表面ヘーズとしてヘーズ値に影響するため、アクリル粒子の粒子径や添加量を前記範囲内に抑えること、製膜時のフィルム接触部の表面粗さを小さくすることも、有効である。
また、本発明における偏光板用保護フィルムの吸湿性については、湿度変化に対する寸法変化により評価するものとする。
湿度変化に対する寸法変化の評価方法としては、以下の方法が用いられる。
作製した偏光板用保護フィルムの流延方向に、目印(十字)を2箇所つけて60℃、90%RHで1000時間処理し、処理前と処理後の目印(十字)の距離を光学顕微鏡で測定し、寸法変化率(%)を求める。寸法変化率(%)は下記式で表される。
寸法変化率(%)=〔(a1−a2)/a1〕×100
a1:熱処理前の距離
a2:熱処理後の距離
液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとして偏光板用保護フィルムが用いられる場合は、吸湿による寸法変化により偏光板用保護フィルムにムラや位相差値の変化が発生してしまい、コントラストの低下や色むらといった問題を発生させる。特に屋外で使用される液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムであれば、上記の問題は顕著となる。しかし、上記の条件における寸法変化率(%)が0.5%未満であれば、十分な低吸湿性を示す偏光板用保護フィルムであると評価できる。更に、0.3%未満であることが好ましい。
また、本発明の偏光板用保護フィルムは、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。
かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
また、目視で確認できない場合でも、該フィルム上にハードコート層などを形成したときに、塗剤が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。
また、本発明の偏光板用保護フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
本発明の偏光板用保護フィルムの厚みは、20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上である。
厚みの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚みは用途により適宜選定することができる。
本発明の偏光板用保護フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
本発明の偏光板用保護フィルムは、上記のような物性を満たしていれば、大型の液晶表示装置や屋外用途の液晶表示装置用の偏光板保護フィルムとして特に好ましく用いることができる。
このような物性は、偏光板用保護フィルムを、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)を95:5〜30:70の質量比で含有し、前記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mwが80000以上であり、該セルロースエステル樹脂(B)のアシル基の総置換度(T)が2.00〜3.00、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であり、重量平均分子量(Mw)が75000以上であることを特徴とする偏光板用保護フィルムとすることにより得ることができる。
〈偏光板用保護フィルムの製膜〉
偏光板用保護フィルムの製膜方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の偏光板用保護フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から流延法による溶液製膜が好ましい。
(有機溶媒)
本発明の偏光板用保護フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の溶解を促進する役割もある。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂(A)と、セルロースエステル樹脂(B)と、アクリル粒子の3種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
以下、本発明の偏光板用保護フィルムの好ましい製膜方法について説明する。
1)溶解工程
アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)に対する良溶媒を主とする有機溶に、溶解釜中で該アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)、場合によってアクリル粒子、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、或いは該アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)溶液に、場合によってアクリル粒子溶液、その他の添加剤溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来るが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のアクリル樹脂(A)と、セルロースエステル樹脂(B)は、計15〜45質量%の範囲であることが好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去出来る。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
図1は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
必要な場合は、アクリル粒子仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へアクリル粒子添加液を添加する。
その後主ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材にはアクリル粒子が含まれることがある、その場合には返材の添加量に合わせてアクリル粒子添加液の添加量をコントロールすることが好ましい。
アクリル粒子を含有する添加液には、アクリル粒子を0.5〜10質量%含有していることが好ましく、1〜10質量%含有していることが更に好ましく、1〜5質量%含有していることが最も好ましい。
上記範囲内であれば、添加液は低粘度で取り扱い易く、主ドープへの添加が容易であるため好ましい。
返材とは、偏光板用保護フィルムを細かく粉砕した物で、偏光板用保護フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトした偏光板用保護フィルム原反が使用される。
また、予めアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、場合によってアクリル粒子を混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、或いは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。
尚、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御出来る装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
尚、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲でとることができる。
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃が更に好ましく、70〜140℃が最も好ましい。
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってから偏光板用保護フィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
本発明の偏光板用保護フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
本発明の偏光板用保護フィルムの膜厚に特に制限はないが、後述する偏光板保護フィルムに使用する場合は20〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
〔易接着層〕
本発明における易接着層としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル、親水性セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセルロース等)、ポリビニルアルコール誘導体(例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルービニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルベンザール等)、天然高分子化合物(例えば、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム等)、親水性ポリエステル誘導体(例えば、部分的にスルホン化されたポリエチレンテレフタレート等)、親水性ポリビニル誘導体(例えば、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルインダゾール、ポリビニルピラゾール等)が挙げられ、中でも、セルロースジアセテートが好ましく用いられる。
本発明において、易接着層の塗設に用いる溶媒としては、溶解させる溶媒もしくは膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒もしくは膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、偏光板用保護フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール或いは炭化水素類(トルエン、キシレン、シクロヘキサノール)などがある。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等を用いて偏光板用保護フィルムの表面にドライ膜厚0.1〜2μmで塗布するのが好ましいが、特に0.1〜1.0μmであることが好ましい。
また、上記塗布液を乾燥させる温度としては、80〜120℃が好ましく、100〜110℃であることがより好ましい。
〔偏光板〕
本発明の偏光板用保護フィルムは、片面には本発明の偏光板用保護フィルムを用い、もう一方の面には本発明の偏光板用保護フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
〔液晶表示装置〕
本発明の偏光板用保護フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することが出来るが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
また、色ムラ、ギラツキや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
〔アクリル樹脂の調製〕
以下のアクリル樹脂A1−A7、及びMS1、2を公知の方法によって調製した。
A1:モノマー質量比(MMA:MA=98:2)、Mw70000
A2:モノマー質量比(MMA:MA=97:3)、Mw160000
A3:モノマー質量比(MMA:MA=97:3)、Mw350000
A4:モノマー質量比(MMA:MA=97:3)、Mw550000
A5:モノマー質量比(MMA:MA=97:3)、Mw800000
A6:モノマー質量比(MMA:MA=97:3)、Mw930000
A7:モノマー質量比(MMA:MA=94:6)、Mw1100000
MS1:モノマー質量比(MMA:ST=60:40)、Mw100000
MS2:モノマー質量比(MMA:ST=40:60)、Mw100000
MMA:メチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
ST:スチレン
(アクリル樹脂A8の合成)
先ず、メチルメタクリレート/アクリルアミド共重合体系懸濁剤を、次の様にして調製した。
メチルメタクリレート 20質量部
アクリルアミド 80質量部
過硫酸カリウム 0.3質量部
イオン交換水 1500質量部
上記を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら、単量体が完全に重合体に転化するまで、70℃に保ち反応を進行させた。得られた水溶液を懸濁剤とした。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、上記懸濁剤0.05質量部をイオン交換水165質量部に溶解した溶液を供給し、系内を窒素ガスで置換しながら400rpmで撹拌した。
次に、下記仕込み組成の混合物質を、反応系を撹拌しながら添加した。
メタクリル酸 27質量部
メチルメタクリレート 73質量部
t−ドデシルメルカプタン 1.2質量部
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル 0.4質量部
添加後、70℃まで昇温し、内温が70℃に達した時点を重合開始時点として、180分間保ち、重合を進行させた。
その後、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体を得た。この共重合体の重合率は97%であり、重量平均分子量は13万であった。
この共重合体に添加剤(NaOCH3)を0.2質量%配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5))を用いて、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/時、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、ペレットを作製し、80℃で8時間真空乾燥してアクリル樹脂A8を得た。アクリル樹脂A8の重量平均分子量(Mw)は130000、Tgは140℃であった。
特開2005−146084号公報の実施例1に記載のアクリル樹脂を、同公報の段落番号(0068)〜(0070)に記載の方法と同様の方法で調製し、同公報の1Aとして用いた。同公報のAのアクリル樹脂の重量平均分子量は244000であった。
特開2003−12859号公報の実施例に記載のポリマー1を、同公報の段落番号(0087)に記載の方法と同様の方法で調製し、同公報のポリマー1として用いた。同公報のポリマー1の重量平均分子量は5000であった。
その他、以下の市販のアクリル樹脂を用いた。
ダイヤナールBR80(三菱レイヨン(株)製) Mw95000
ダイヤナールBR83(三菱レイヨン(株)製) Mw40000
ダイヤナールBR85(三菱レイヨン(株)製) Mw280000
ダイヤナールBR88(三菱レイヨン(株)製) Mw480000
80N(旭化成ケミカルズ(株)製) Mw100000
上記市販のアクリル樹脂における分子中のMMA単位の割合は、いずれも90質量%以上99質量%以下であった。
〔偏光板用保護フィルムの作製〕
〈偏光板用保護フィルム1の作製〉
(ドープ液組成1)
ダイヤナールBR85(三菱レイヨン(株)製) 70質量部
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、Mw=200000)
30質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープ液を作製した。
(アクリル樹脂フィルムの製膜)
上記作製したドープ液を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
剥離したアクリル樹脂のウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。
テンターで延伸後、130℃で5分間緩和を行った後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径15.24cmコアに巻き取り、アクリル樹脂フィルムである偏光板用保護フィルム1を得た。
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。
表1に記載の偏光板用保護フィルム1の残留溶剤量は0.1%であり、膜厚は60μm、巻長は4000mであった。
〈偏光板用保護フィルム2〜50の作製〉
上記偏光板用保護フィルム1の作製において、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の種類と組成比を、表1、表2に記載のように代えた以外は同様にして、偏光板用保護フィルム2〜50を作製した。
また、表1、表2に記載のセルロースエステル樹脂のアシル基は、acはアセチル基、prはプロピオニル基、buはブチリル基、penはペンタノイル基、bzはベンゾイル基、hepはヘプタノイル基、octはオクタノイル基、phはフタリル基を表す。
〈偏光板用保護フィルム51の作製〉
上記偏光板用保護フィルム1の作製において、ドープ組成を下記に変更した以外は同様にして、アクリル樹脂フィルムである偏光板用保護フィルム51を作製した。
(ドープ組成液51)
ダイヤナールBR85(三菱レイヨン(株)製) 70質量部
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、Mw=200000)
30質量部
メチレンクロライド 140質量部
トルエン 200質量部
また、作製した偏光板用保護フィルム51のガラス転移温度を、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて測定したところ、Tg1:105℃と、Tg2:145℃の2箇所にピークが見られ、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)が非相溶な状態で存在していることが分かった。
次に、偏光板用保護フィルム1〜50に関して上記偏光板用保護フィルム51と同様にガラス転移温度を測定したところ、いずれもシングルピークであり、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)が相溶している事がわかった。
得られた偏光板用保護フィルム1〜51について、以下の評価を実施した。
《評価方法》
(ヘーズ:コントラストに影響の大きい透明性評価)
上記作製した各々のフィルム試料について、フィルム試料1枚をJIS K−7136に従って、ヘーズメーター(NDH2000型、日本電色工業(株)製)を使用して測定した。
(張力軟化点:耐熱性評価)
テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、以下のような評価を行った。
偏光板用保護フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均を出した。
(延性破壊:脆性評価)
偏光板用保護フィルムを100mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、縦方向の中央部で山折り、谷折りと2つにそれぞれ1回ずつ折りまげ、この評価を3回測定して、下記基準で評価した。尚、ここでの評価の折れるとは、割れて2つ以上のピースに分離したことを表す。
○:3回とも折れない
×:3回のうち少なくとも1回は折れる。
(フィルム変形:長期間使用における耐熱性評価)
各偏光板用保護フィルムを90℃、DRY(相対湿度5%RH以下)の雰囲気下に1000時間放置後、フィルム変形の度合いを目視で観察し、下記基準で評価した。
○:フィルムの変形が全くない
△:フィルムの変形が認められる
×:著しいフィルムの変形が認められる。
(湿度変化に対する寸法変化:耐湿性評価)
作製した偏光板用保護フィルムの流延方向に、目印(十字)を2箇所つけて60℃、90%RHで1000時間処理し、処理前と処理後の目印(十字)の距離を光学顕微鏡で測定し、下記基準で評価した。
寸法変化率(%)=〔(a1−a2)/a1〕×100
式中、a1は熱処理前の距離、a2は熱処理後の距離を表す。
○:0.3%未満
△:0.3%以上、0.5%未満
×:0.5%以上。
(カッティング性:製造適性評価)
軽荷重引き裂き試験機(東洋精機社製)を用いて各偏光板用保護フィルムを引き裂き、以下のように評価した。
○:引き裂き面が非常に滑らかで、かつ、真っ直ぐに裂けている
△:引き裂き面にややバリがあるが、真っ直ぐに裂けている。
×:引き裂き面にバリがかなりあり、真っ直ぐに裂けていない。
(フィルム外観:製造適正評価)
作製した偏光板用保護フィルムに関して、フィルム外観を目視で評価し、以下の基準に従って評価した。
○:非常に平滑な平面性である
△:ややツレや皺、段が確認できる
×:はっきりとツレや皺、段が確認できる
以上の評価結果は表3に示す。
実施例2
(易接着層の作製)
(易接着層を塗設した偏光板用保護フィルム1−Lの作製)
上記作製した偏光板用保護フィルム1の一方の面に、下記組成の塗布液(1a)をウェット膜厚(wd)が20μmとなるように塗り、さらに100℃で5分間乾燥させて、易接着層を塗設した偏光板用保護フィルム1−Lを作製した。
<塗布液1aの調製>
セルロースジアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−50)
0.8質量部
アセトン 7質量部
メチルエチルケトン 7質量部
メタノール 6質量部
(易接着層を塗設した偏光板用保護フィルム2−Lの作製)
上記偏光板用保護フィルム1−Lの作製において、塗布液(1a)の代わりに下記組成の(1b)を用いた以外は同様にして偏光板用保護フィルム2−Lを作製した。
<塗布液1bの調製>
セルロースジアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−50)
0.8質量部
酢酸エチル 10質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
(易接着層を塗設した偏光板用保護フィルム3−L〜52−Lの作製)
上記作製した偏光板用保護フィルム2〜51において、偏光板用保護フィルム1−Lの作製と同様に塗布液(1a)を用いて易接着層を塗設し、偏光板用保護フィルム3−L〜52−Lを作製した。
(53−Lの作製)
特開2001−201631号公報の実施例1の偏光板用保護フィルム試料5の作製に基づき、53−Lを作製した。
易接着層つき偏光板用保護フィルムのヘーズ測定は上述した方法で行い、結果は表5に示す。
〈偏光板の作製〉
各偏光板用保護フィルムを偏光板保護フィルムとした偏光板を、以下のようにして作製した。
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)を、沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光膜を作製した。
次に、上記易接着層を設けた偏光板用保護フィルムに対してアルカリケン化処理を行い、該偏光板用保護フィルムの易接着層側と上記作製した偏光膜とを、ポリビニルアルコール5質量%水溶液を用いて貼合した。
更に偏光膜のもう一方の面にアルカリケン化処理した位相差フィルムであるコニカミノルタオプト社製KC8UCR−5を貼り合わせ、乾燥して偏光板P1を作製した。同様にして偏光板用保護フィルム2〜51を用いて偏光板P2〜P51を作製した。
本発明の偏光板用保護フィルムを用いた偏光板は、フィルムカッティング性に優れ、加工がし易かった。
(偏光板の接着性評価)
作製した偏光板の偏光子と偏光板用保護フィルムとを手で剥離し、接着性を下記3段階で評価した。
○:材料破壊が起こる
△:一部材料破壊が起こるが、試料フィルムとPVAフィルム間で剥がれる面積が大きい
×:試料フィルムとPVAフィルムとの間で剥がれる。結果は表4、表5に示す。
〈液晶表示装置の作製〉
上記作製した各偏光板を使用して、偏光板用保護フィルムの表示特性評価を行った。
シャープ(株)製32型テレビAQ−32AD5の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれKC8UCR−5が液晶セルのガラス面側になるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように貼合し、液晶表示装置を各々作製した。
(視野角変動:偏光板保護フィルムとしての耐熱・耐湿性評価)
以上のようにして作製した液晶表示装置1〜51を用いて下記の評価を行った。
23℃、55%RHの環境で、ELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。続いて上記偏光板を60℃、90%RHで1000時間処理したものを同様に測定し、下記基準で3段階評価した。
○:視野角変動が全くない
△:視野角変動が僅かに認められる
×:視野角変動が大きい
(カラーシフト:偏光板保護フィルムとしての耐熱・耐湿性評価)
上記作製した液晶表示装置1〜51に関して、23℃、55%RHの環境でディスプレイを黒表示にし、斜め45°の角度から観察した。続いて上記偏光板を60℃、90%RHで1000時間処理したものを同様に観察し、色変化を下記基準で評価した。
○:色変化が全くない
△:色変化が僅かに認められる
×:色変化が大きい
以上の評価の結果を表4、表5に示す。
表4、表5に記載のように、本発明の易接着層を設けた偏光板用保護フィルムは、平面性が良好で、偏光板の接着性も優れていることが判る。更に、本発明の偏光板用保護フィルムを用いて作製した偏光板、液晶表示装置は、視認性やカラーシフトに優れた特性を示した。