JP5045527B2 - 保護基で保護されたイオン交換基を有する化合物の分析方法 - Google Patents
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Description
一般的に高分子の分析方法はGPCやNMR、IR装置を使用した分析法が多く知られている。
但し、上記のポリアリーレンの製造のような高分子化合物から別の高分子化合物を製造するにあたっては、GPCは反応前後の変化が小さく、定量性が不十分であること、NMRは定量性があるものの、装置が高価であり、さらに前処理として金属の完全除去が必要であること、IRも定量性が乏しいなどの問題がある(例えば特許文献2参照)。
本発明は脱離基を有する高分子化合物あるいはその原料となる低分子化合物を安価な汎用分析機器を使用して簡便に製造管理できる分析方法を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は保護基で保護された官能基を数多く有する高分子化合物をGC分析し、注入口にて熱分解して発生した保護基、脱離基などを定量分析し、製造時においては該基の量・率が変化する反応の工程管理を行うものである。
熱分解はGC装置に付随する注入口で簡便に実施でき、更に試料調製を行う時点で脱保護剤を添加しておくことで、熱分解にて生じる特定物質をより容易に分析することが可能である。
以下により好ましい高分子化合物を挙げて詳しく説明する。
式(1)
(式中、Aは炭化水素基の炭素数の合計が1〜20のアルキル基等を表わす。R1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基等を表わす。mは1又は2を表し、kは4−mを表す。)
で示される繰り返し単位を含むポリアリーレンがあり、スルホン酸アルキルエステル基で保護された高分子化合物の定量分析方法として有用である。さらには固体高分子型燃料電池用の高分子電解質等として有用な下記式(2)に示されるスルホン酸基を有するポリアリーレン製造時の反応の工程管理分析に有効である。
式(1)で示される化合物から式(2)で示される化合物を製造する方法は特許文献1に記載されており、式(1)を有機溶媒中、酸もしくはアルカリ存在下、加水分解して目的化合物(2)を得る方法と、アルカリ金属ハロゲン化物もしくはハロゲン化第四級アンモニウムの脱保護剤を反応させ、スルホン酸塩とした後、酸処理して得る方法がある。
また、式(1)で示される化合物の脱離基・保護基の含量及びそれに関する組成・構成の分析を行うことができる。
(式中、A、R1、k及びmは前記と同じ意味を表わす。)
p−フェニレンスルホン酸メチル単位、m−フェニレンスルホン酸メチル単位
p−フェニレンスルホン酸エチル単位、m−フェニレンスルホン酸エチル単位
p−フェニレンスルホン酸n−プロピル単位、m−フェニレンスルホン酸n−プロピル単位
p−フェニレンスルホン酸イソプロピル単位、m−フェニレンスルホン酸イソプロピル単位
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p−フェニレンスルホン酸2,2−ジメチルプロピル単位、m−フェニレンスルホン酸2,2−ジメチルプロピル単位
p−フェニレンスルホン酸n−ヘキシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−ヘキシル単位
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p−フェニレンスルホン酸n−ノニル単位、m−フェニレンスルホン酸n−ノニル単位
p−フェニレンスルホン酸n−デシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−デシル単位
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p−フェニレンスルホン酸n−トリデシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−トリデシル単位
p−フェニレンスルホン酸n−テトラデシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−テトラデシル単位
p−フェニレンスルホン酸n−ペンタデシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−ペンタデシル単位
p−フェニレンスルホン酸n−ヘキサデシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−ヘキサデシル単位
p−フェニレンスルホン酸n−ヘプタデシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−ヘプタデシル単位
p−フェニレンスルホン酸n−オクタデシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−オクタデシル単位
p−フェニレンスルホン酸n−ノナデシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−ノナデシル単位
p−フェニレンスルホン酸n−イコシル単位、m−フェニレンスルホン酸n−イコシル単位
等が挙げられる。
本発明は保護された官能基を数多く有する高分子化合物をGC分析し、注入口にて熱分解して発生した保護基、脱離基などを定量分析し、保護基の種、保護基の含量及びそれに関する組成、構成の分析を実施できる。また、脱保護反応の進行率を測定し、脱保護反応の終点管理分析を行うものである。
熱処理はGC装置に付随する注入口で簡便に実施され、更に試料調製を行う時点で脱保護剤を添加しておくことで、熱分解にて生じる特定物質をより容易に分析することが可能である。尚、当該検出ピークの構造解析のためにGC−MS装置などが適用できる。
この工程管理分析について以下に説明する。
(式中、A、R1、k及びmは、前記と同じ意味を表わし、Mは、Li、Na等の金属原子及び第四級アンモニウム塩を表し、XはCl、Br、I等のハロゲン原子を表す。)
絶対検量線法の検量線を作成するにあたり、例えば、対象化合物である式(1)〜式(6)において、Aで示される置換基が熱分解にて副生するアルキルハライドを予め測定しておき、重量及びクロマトグラムのピーク面積から得られた検量線を求め、ファクターを算出する。
特開2007−284653号公報の実施例18に記載の通り実施して、目的のポリアリーレンを合成した。
冷却装置を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下で、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)5.05g、2,2’−ビピリジン2.87g及びN−メチル−2−ピロリドン40mLを加え、70℃で30分撹拌し、ニッケル含有溶液を調製した。冷却装置を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下で、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)9.09g、亜鉛粉末2.4g及びN−メチル−2−ピロリドン40mLを加え、70℃に調整した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、70℃で重合反応を行った。重合反応開始から1.5時間を経過した時点で、下記式
で示されるスミカエクセルPES 5200P(住友化学株式会社製;Mw=94,000、Mn=40,000:上記分析条件で測定)3.06gをN−メチル−2−ピロリドン40mLに溶解させて得られた溶液(内温70℃)を、反応混合物に加え、さらに、70℃で6.5時間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物をメタノール300mL中に加え、次いで、6mol/L塩酸300mLを加え、1時間撹拌した。析出した固体を濾過により分離し、乾燥し、灰白色の下記
で示される繰り返し単位と下記
で示されるセグメントとを含むポリアリーレン8.75gを得た。収率:87%
Mw=192,000、Mn=49,000
1H−NMR(CDCl3,δ(ppm)):0.80−1.05(br),3.80−3.89(br),
7.25(d)、7.97(d)、7.00−8.50(c)
で示される繰り返し単位と下記
で示されるセグメントとを含むポリアリーレンを製造する際の工程管理分析法として以下の操作を実施した。
6Nの塩酸 55gに反応マスのN−メチル−2−ピロリドン溶液を5g注加、攪拌してポリマーを析出させ、上抜き操作にて溶液を除去する。残固形物にメタノールと35%塩酸水の混合液を50g加えた後、ゆっくり攪拌し、再度上抜き操作にて溶液を除去する。100gの水にて4回洗浄後、pHが2.5以上を確認する。さらにメタノールを約100g加えてゆっくり攪拌洗浄し、上抜き操作にて溶液の除去を2回実施する。得られた残固形分を減圧乾燥器にて80℃にて乾燥し、ポリアリレーン混合物を0.3g得た。
100mLメスフラスコにリチウムブロマイド(無水物)1000mg程度を正確にはかりとり、N−メチル−2−ピロリドンにて溶解定容して、本溶液をLiBr含有試料溶解液とした。
前記の[試料前処理]操作で得られたポリアリーレン混合物10mg程度を正確に3mLスクリュー管にはかりとり、LiBr含有試料溶解液を0.5mL加え、更にN−メチル−2−ピロリドンを0.5mL加えて溶解して得られた溶液を試料溶液とした。
100mLメスフラスコにネオペンチルブロマイド標準品(和光純薬 一級試薬)50mg程度を正確にはかりとり、N−メチル−2−ピロリドンにて定容した。(A−1液とする)
20mLスクリュー管にA−1液を5mLはかりとり、LiBr含有試料溶解液を5mL加えた。(A−2液とする)
20mLメスフラスコにA−1液10mLをホールピペットにてはかりとり、N−メチル−2−ピロリドンにて定容した。(B−1液とする)
20mLスクリュー管にB−1液を5mLはかりとりLiBr含有試料溶解液を5mL加えた。(B−2液とする)
20mLメスフラスコにB−1液10mLをホールピペットにてはかりとり、N−メチル−2−ピロリドンにて定容した。(C−1液とする)
20mLスクリュー管にC−1液を5mLはかりとり、LiBr含有試料溶解液を5mL加えた。
(C−2液とする)
20mLメスフラスコにC−1液10mLをホールピペットにてはかりとり、N−メチル−2−ピロリドンにて定容した。(D−1液とする)
20mLスクリュー管にD−1液を5mLはかりとり、LiBr含有試料溶解液を5mL加えた。
(D−2液とする)
20mLメスフラスコにD−1液10mLをホールピペットにてはかりとり、N−メチル−2−ピロリドンにて定容した。(E−1液とする)
20mLスクリュー管にE液を5mLはかりとり、LiBr含有試料溶解液を5mL加えた。
(E−2液とする)
20mLメスフラスコにE−1液10mLをホールピペットにてはかりとり、N−メチル−2−ピロリドンにて定容した。(F−1液とする)
20mLスクリュー管にF液を5mLはかりとり、LiBr含有試料溶解液を5mL加えた。
(F−2液とする)
20mLメスフラスコにF−1液10mLをホールピペットにてはかりとり、N−メチル−2−ピロリドンにて定容した。(G−1液とする)
20mLスクリュー管にG−1液を5mLはかりとり、LiBr含有試料溶解液を5mL加えた。
(G−2液とする)
前記で調製したネオペンチルブロマイド標準品試料の分析にて得られたクロマトグラムより、横軸にネオペンチルブロマイド濃度(mg/mL)、縦軸にネオペンチルブロマイドのAREAをプロットし、検量線を作成した。ここで、ネオペンチルブロマイドの保持時間は4.4分で検出された。保持時間 Rt4.4ピークがネオペンチルブロマイドである事はガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC/MS装置)にて確認した。
[試料溶液の調製]で得た試料調製液を表−2のガスクロマトグラフィー条件にて分析する。ここで、ネオペンチルブロマイドが保持時間4.4分に検出され、同時に異性体ピークと推定される(GC/MS分析により同じ質量を確認)が4.5分に検出される為、ネオペンチルブロマイドは4.4分と4.5分ピーク面積値の合算値とした。
図1に示すような代表的クロマトグラムが得られた。
得られたクロマトグラムとネオペンチルブロマイド標準品での検量線から求められたファクターを使用して、絶対検量線法により分析試料溶液中のネオペンチルブロマイドの重量を求め、さらに下記式に従ってエステル含有率を算出した。
ポリアリーレン化合物をハロゲン水分計(メトラー・トレド製 HG63)に130mg程度はかりとり、温度110℃にて乾燥し、Dry固形分の重量を把握する。
攪拌子を入れた200mL蓋付きポリビーカーにDry固形分を仕込んだ後、0.1N NaOH水(和光純薬 容量分析用試薬)をホールピペットにて5mL加える。さらに、純水150mLを加えた後、室温にて1時間攪拌する。
その後、0.1N HCl(和光純薬 容量分析用試薬)にて中和滴定を行う。同時にポリアリーレン化合物を入れない、ブランク測定する。これら0.1N HCl滴定量とDry固形分重量より、下記式によりイオン交換容量値を算出する。
実施例1の試料前処理操作にて得られたポリアリレーン混合物10mgを重DMSOを0.6mLに溶解し、1H−NMRを測定した。同時に得られた反応原料のポリアリレーンに関しても同濃度、同条件にて1H−NMRを測定した。
(ポリアリ−レン混合物のσ0.9〜0.74ppm(ネオペンチル基)の積分値)
ポリアレーン混合物の積分比=(ポリアリ−レン混合物のσ0.9〜0.74ppm(ネオペンチル基)の積分値)÷(ポリアリ−レン混合物のσ7.6〜6.8ppm(ベンゼン環)の積分値)
ここで、
各4HR、5HR、6HRでの各NMRスペクトルの積分値(自動積分)は以下の通り。
ここで、反応原料でのNMRスペクトル積分値(自動積分)は以下の通り
反応原料のσ0.9〜0.74ppm(ネオペンチル基)の積分値:1.000
反応原料のσ7.6〜6.8ppm(ベンゼン環)の積分値 :0.300
よって、
反応原料の積分比:0.3333
実施例1で製造されたポリアリーレン化合物を3mLスクリュー管に10mg程度正確にはかりとり、テトラブチルアンモニウム含有試料溶解液(15mg/mL)を0.5mL加え、更にN−メチル−2−ピロリドンを0.5mL加えて溶解して得られた溶液を試料溶液とし、実施例1のガスクロマトグラフィー条件にて分析した。Rt4.3分にアルキルエステル分解物のネオペンチルブロマイドが検出された。構造をGC/EI−MSで確認した。
実施例1ので製造されたポリアリーレン化合物を3mLスクリュー管に10mg程度正確にはかりとり、DMSOにて調製したLiBr含有試料溶解液を0.5mL加え、更にDMSOを0.5mL加えて溶解して得られた溶液を試料溶液とし、実施例1のガスクロマトグラフィー条件にて分析した。Rt4.3分にアルキルエステル分解物のネオペンチルブロマイドが検出された。構造をGC/EI−MSで確認した。
実施例1で製造されたポリアリーレン化合物を3mLスクリュー管に10mg程度正確にはかりとり、LiBr含有試料溶解液を0.5mL加え、更にN−メチル−2−ピロリドンを0.5mL加えて溶解して得られた溶液を試料溶液とし、実施例1のガスクロマトグラフィー条件を基に注入口温度を下表の通り変更して分析した。240℃以上が好ましい事が検証された。
上記に記載するジハロベンゼン化合物を3mLスクリュー管に10mg程度正確にはかりとり、LiBr含有試料溶解液を0.5mL加え、更にN−メチル−2−ピロリドンを0.5mL加えて溶解して得られた溶液を試料溶液とし、実施例1のガスクロマトグラフィー条件にて分析した。Rt4.3分にアルキルエステル分解物のネオペンチルブロマイドが検出された。構造をGC/EI−MSにて確認した。
上記に記載するジハロベンゼン化合物を3mLスクリュー管に10mg程度正確にはかりとり、LiBr含有試料溶解液を0.5mL加え、更にN−メチル−2−ピロリドンを0.5mL加えて溶解して得られた溶液を試料溶液とし、実施例1のガスクロマトグラフィー条件にて分析した。Rt2.1分にアルキルエステル分解物のメチルブロマイドが検出された。構造をGC/EI−MSにて確認した。
図5に示すような代表的クロマトグラムが得られた。
上記に記載するジハロベンゼン化合物を3mLスクリュー管に10mg程度正確にはかりとり、LiBr含有試料溶解液を0.5mL加え、更にN−メチル−2−ピロリドンを0.5mL加えて溶解して得られた溶液を試料溶液とし、実施例1のガスクロマトグラフィー条件にて分析した。Rt3.3分にアルキルエステル分解物のブロモシクロヘキサンが検出された。構造をGC/EI−MSにて確認した。
図7に示すような代表的クロマトグラムが得られた。
上記に記載するジハロベンゼン化合物を3mLスクリュー管に10mg程度正確にはかりとり、LiBr含有試料溶解液を0.5mL加え、更にN−メチル−2−ピロリドンを0.5mL加えて溶解して得られた溶液を試料溶液とし、実施例1のガスクロマトグラフィー条件にて分析した。Rt4.3分にアルキルエステル分解物のネオペンチルブロマイドが検出された。構造をGC/EI−MSにて確認した。
Claims (8)
- 保護基で保護されたイオン交換基を有する化合物(被験物質と称する。)を、有機溶媒に溶解、もしくは希釈し、ガスクロマトグラフィー装置に注入し、注入口で加熱分解されて発生する分解成分を定量することで被験物質の構成や組成を分析・定量することを特徴とする分析方法であって、被験物質に脱保護剤を添加する分析方法。
- 被験物質を含有する反応溶液を請求項1に記載の分析方法にて反応追跡管理することを特徴とする管理分析方法。
- 被験物質の保護されたイオン交換基が、酸基である請求項1または2に記載の分析方法。
- 被験物質の保護されたイオン交換基がスルホン酸基又はカルボン酸基である請求項1〜3のいずれかに記載の分析方法。
- 被験物質の保護基が炭素数1〜20のアルキル基である請求項1〜4のいずれかに記載の分析方法。
- 被験物質が高分子化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の分析方法。
- 被験物質が高分子化合物の原料となる低分子化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の分析方法。
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