以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
また、保護層26は、放電セルにおける放電開始電圧を下げるために、パネルの材料として使用実績があり、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性に優れたMgOを主成分とする材料から形成されている。
背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。なお、本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
図2は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。なお、図1、図2に示したように、走査電極SCiと維持電極SUiとは互いに平行に対をなして形成されているために、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に大きな電極間容量Cpが存在する。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について説明する。本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行う。それぞれのサブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
各サブフィールドにおいて、初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。加えて、放電遅れを小さくし書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(放電のための起爆剤=励起粒子)を発生させるという働きを持つ。このときの初期化動作には、全ての放電セルで初期化放電を発生させる全セル初期化動作と、直前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルだけで選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作とがある。
書込み期間では、後に続く維持期間において発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、輝度重みに比例した数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。このときの比例定数を「輝度倍率」と呼ぶ。
なお、本実施の形態では、維持期間の最後に傾斜波形電圧を発生させており、これにより、続くサブフィールドの書込み期間における書込み動作を安定させている。以下、まず駆動電圧波形の概要について説明し、続いて駆動回路の構成について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化動作を行うサブフィールド(以下、「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)と、選択初期化動作を行うサブフィールド(以下、「選択初期化サブフィールド」と呼称する)とを示しているが、他のサブフィールドにおける駆動電圧波形もほぼ同様である。また、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中から画像データにもとづき選択された電極を表す。
まず、全セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。
第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜Dm、維持電極SU1〜SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する第1の傾斜波形電圧(以下、「上りランプ波形電圧」と呼称する)を印加する。
なお、本実施の形態では、この上りランプ波形電圧を約1.3V/μsecの勾配にして発生させている。
この上りランプ波形電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜Dm上部および維持電極SU1〜SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜SUnには正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜Dmには0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧(以下、「下りランプ波形電圧」と呼称する)を印加する(以下、走査電極SC1〜SCnに印加する下りランプ波形電圧の最小値を「初期化電圧Vi4」として引用する)。この間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
なお、図3の第2SFの初期化期間に示したように、初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加してもよい。すなわち、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3’から初期化電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下りランプ波形電圧を印加する。これにより前のサブフィールドの維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められる。また直前の維持放電によってデータ電極Dk(k=1〜m)上部に十分な正の壁電圧が蓄積されている放電セルでは、この壁電圧の過剰な部分が放電され書込み動作に適した壁電圧に調整される。一方、前のサブフィールドで維持放電を起こさなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷がそのまま保たれる。このように前半部を省略した初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して初期化放電を行う選択初期化動作となる。
ここで、本実施の形態においては、この初期化電圧Vi4の電圧値を3つの異なる電圧値で切換えてパネル10を駆動する構成としている。以下、最も高い初期化電圧Vi4を「Vi4H」と記し、最も低い初期化電圧Vi4を「Vi4L」と記し、その間の電位となる初期化電圧Vi4を「Vi4M」と記す。
続く書込み期間では、まず維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。
そして、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(Ve2−Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Ve2を、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態とすることができる。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、まず走査電極SC1〜SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
続いて、走査電極SC1〜SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対24の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
そして、維持期間の最後には、走査電極SC1〜SCnに、ベース電位となる0(V)から電圧Versに向かって緩やかに上昇する第2の傾斜波形電圧(以下、「消去ランプ波形電圧」と呼称する)を印加する。これにより、微弱な放電を持続して発生させ、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧の一部または全部を消去している。
具体的には、維持電極SU1〜SUnを0(V)に戻した後、ベース電位となる0(V)から放電開始電圧を超える電圧Versに向かって上昇する第2の傾斜波形電圧である消去ランプ波形電圧を、第1の傾斜波形電圧である上りランプ波形電圧よりも急峻な勾配、例えば約10V/μsecの勾配で発生させ、走査電極SC1〜SCnに印加する。すると、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間で微弱な放電が発生する。そして、この微弱な放電は、維持電極SU1〜SUnへの印加電圧が上昇する期間、持続して発生する。そして、上昇する電圧があらかじめ定めた所定電位である電圧Versに到達したら直ちに走査電極SC1〜SCnに印加する電圧をベース電位となる0(V)まで降下させる。
このとき、この微弱な放電で発生した荷電粒子は、維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差を緩和するように、常に維持電極SUi上および走査電極SCi上に壁電荷となって蓄積されていく。これにより、データ電極Dk上の正の壁電荷を残したまま、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧は、走査電極SCiに印加した電圧と放電開始電圧の差、すなわち(電圧Vers−放電開始電圧)の程度まで弱められる。以下、この消去ランプ波形電圧によって発生させる維持期間の最後の放電を「消去放電」と呼称する。
なお、本実施の形態では、走査電極SC1〜SCnに印加する電圧があらかじめ定めた電圧Versに到達したら、直ちにベース電位となる0(V)まで降下させる構成としている。これは、上昇する電圧があらかじめ定めた電圧Versに到達した後、その電圧を維持したままにすると、次の条件、すなわち、
自身が非発光の放電セル(そのサブフィールドで書込みがなされていない放電セル)である。
隣接セルが発光させる放電セル(そのサブフィールドで書込みがなされた放電セル)である。
自身が直前のサブフィールドで維持放電を発生した。
といった条件にあてはまる放電セルで異常放電が発生しやすいことを実験的に確認したためである。
この異常放電は、続く書込み期間での誤放電を誘発するため、できるだけ発生させないようにすることが望ましく、本実施の形態では、消去ランプ波形電圧を発生させる際に、走査電極SC1〜SCnに印加する電圧が電圧Versに到達した後、直ちにベース電位となる0(V)まで降下させる構成としているので、この異常放電の発生を防止しつつ、放電セル内の壁電圧を続く書込み動作が安定に行えるように最適に調整することが可能である。
続くサブフィールドの動作は、維持期間の維持パルスの数を除いて上述の動作とほぼ同様であるため説明を省略する。以上が、本実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
なお、本実施の形態では、電圧Versの電圧値を維持パルス電圧Vs+3(V)、例えば、約213(V)に設定しているが、ここでは電圧Versの電圧値を、維持パルス電圧Vs−10(V)以上かつ維持パルス電圧Vs+10(V)以下の電圧範囲に設定することが望ましい。電圧Versの電圧値をこの上限値よりも大きくすると壁電圧の調整が過剰となり、また、下限値よりも小さくすると壁電圧の調整が不足して、それぞれ続く書込み動作を安定に行えない恐れがあるためである。
また、本実施の形態では、消去ランプ波形電圧の勾配を約10V/μsecにする構成を説明したが、この勾配は、2V/μsec以上20V/μsec以下に設定することが望ましい。勾配をこの上限値よりも急峻にすると壁電圧を調整するための放電が微弱な放電とならず、また、勾配をこの下限値よりも緩やかにすると放電そのものが微弱になりすぎてしまい、それぞれ壁電圧の調整がうまく行えない恐れがあるためである。
また、上述したように、本実施の形態では、初期化期間において、下りランプ波形電圧の最低電圧である初期化電圧Vi4の電圧値を、3つの異なる電圧値、すなわち第1の電圧であるVi4Lと、それよりも電圧値の高い第2の電圧であるVi4Mと、さらに電圧値の高い第3の電圧であるVi4Hとで切換えて下りランプ波形電圧を発生する構成としている。そして、維持期間における維持パルスの総数および後述するパネル温度検出回路によって検出されたパネル10の温度に応じて、初期化電圧Vi4の電圧値をVi4LとVi4MとMi4Hとで切換えて下りランプ波形電圧を発させるように構成している。これにより、安定した書込み放電を実現している。
次に、サブフィールド構成について説明する。図4、図5は、本発明の実施の形態1におけるサブフィールド構成の一例を示す図である。なお、図4、図5はサブフィールド法における1フィールド期間の駆動波形を略式に記したもので、それぞれのサブフィールドの駆動電圧波形は図3の駆動電圧波形と同等なものである。
図4に示すように、本実施の形態では、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)で構成し、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。各サブフィールドの維持パルスの総数は、例えば、それぞれ(5、10、15、29、54、88、146、215、293、395)であるものとする。そして、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第10SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける全セル初期化動作の放電にともなう発光のみとなり、維持放電を発生させない黒表示領域の輝度である黒輝度は全セル初期化動作における微弱発光だけとなって、コントラストの高い画像表示が可能となる。
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
そして、上述したように、維持期間における維持パルスの総数および後述するパネル温度検出回路によって検出されたパネル10の温度に応じて、下りランプ波形電圧の初期化電圧Vi4の電圧値を3つの異なる電圧値、すなわちVi4LとVi4MとVi4Hとで切換えて下りランプ波形電圧を発生させる構成としている。
具体的には、後述するパネル温度検出回路がパネル10の温度を高温(ここでは、55℃以上)と判定した場合には、図5(a)に示すように、直前のサブフィールドの維持パルスの総数が20未満サブフィールド(ここでは、第2SF〜第4SF)および全セル初期化サブフィールド(ここでは、第1SF)の初期化期間においては初期化電圧Vi4をVi4Mにし、直前のサブフィールドの維持パルスの総数が20以上のサブフィールド(ここでは、第5SF〜第10SF)の初期化期間においては初期化電圧Vi4をVi4Hにして下りランプ波形電圧を発生させ、初期化動作を行う。
また、パネル温度検出回路がパネル10の温度を中温(ここでは、20℃以上55℃未満)と判定した場合には、図5(b)に示すように、全てのサブフィールドの初期化期間において、初期化電圧Vi4をVi4Mにして下りランプ波形電圧を発生させ、初期化動作を行う。
また、パネル温度検出回路がパネル10の温度を低温(ここでは、20℃未満)と判定した場合には、図5(c)に示すように、全セル初期化動作を行う第1SFの初期化期間においては初期化電圧Vi4をVi4Mにし、第2SF〜第10SFの初期化期間においては初期化電圧Vi4をVi4Lにして下りランプ波形電圧を発生させ、初期化動作を行う。
本実施の形態では、このような構成とすることにより、安定した書込み放電を実現している。これは、次のような理由による。
書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する初期化期間では、下りランプ波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加することによって初期化放電を発生させる。したがって、下りランプ波形電圧の最も低い初期化電圧Vi4の電圧値に応じて各電極上に形成される壁電荷の状態も変化し、続く書込み放電に必要な印加電圧も変化する。
図6は、本発明の実施の形態1における初期化電圧Vi4と書込みパルス電圧との関係を示す図である。図6において、縦軸は安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdを表し、横軸は初期化電圧Vi4を表す。
この図6に示すように、初期化電圧Vi4が低いほど、安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdは低減される。例えば、初期化電圧Vi4が約−90(V)のときの書込みパルス電圧Vdが約66(V)であるのに対し、初期化電圧Vi4が約−95(V)のときの書込みパルス電圧Vdは約50(V)であり、初期化電圧Vi4を約−90(V)から約−95(V)にすると、安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdは約16(V)低減される。
一方、初期化電圧Vi4と安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaとには次のような関係がある。図7は、本発明の実施の形態1における初期化電圧Vi4と走査パルス電圧との関係を示す図である。図7において、縦軸は安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を表し、横軸は初期化電圧Vi4を表す。
そして、この図7に示すように、初期化電圧Vi4が低いほど、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaは大きくなる。例えば、初期化電圧Vi4が約−90(V)のときの走査パルス電圧の振幅が約110(V)であるのに対し、初期化電圧Vi4が約−95(V)のときの走査パルス電圧の振幅は約120(V)であり、初期化電圧Vi4を約−90(V)から約−95(V)にすることで、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaは約10(V)も大きくなってしまう。
このように、初期化電圧Vi4を低くすると、安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdは低減されるが、それとは逆に、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaは大きくなってしまう。
一方、維持放電の発生回数が多いサブフィールドに続くサブフィールドでは、そうでないサブフィールドと比較して、安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdが低減されることが確認された。これは、維持パルスの総数が多く十分な回数の維持放電が発生する維持期間では、プライミング粒子が十分に形成されるためと考えられる。すなわち、多くの維持放電が発生して十分なプライミング粒子が形成されたサブフィールドに続くサブフィールドでは初期化電圧Vi4を比較的高く設定することが可能となる。それにより、安定した放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaを低減できるので、書込み放電を安定に発生させることができる。
逆に、維持放電の発生回数が少ないサブフィールドに続くサブフィールドでは、安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdが低減されにくいため、初期化電圧Vi4を高くしすぎない方がよい。また、全セル初期化動作を行った直後は、下りランプ波形電圧での放電により壁電圧を十分に調整しなければならないため、下りランプ波形電圧による放電の持続時間をある程度確保する必要がある。
また、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaがパネル10の温度に依存して変化することも確認された。
図8は、本発明の実施の形態1におけるパネルの温度と走査パルス電圧との関係を示す図である。図8において、縦軸は安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を表し、横軸はパネル10の温度を表す。また、図8の実線は全てのサブフィールドで初期化電圧Vi4をVi4Mにしたときの結果を表し、図8の破線は第1SF〜第4SFでは初期化電圧Vi4をVi4Mにし第5SF〜第10SFでは初期化電圧Vi4をVi4Hにしたときの結果を表す。
そして、この図8に示すように、パネル10の温度が低くなるほど、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaは低減されることが確認された。例えば、図8の実線では、パネル10の温度が約70(℃)のときの走査パルス電圧の振幅が約144(V)であるのに対し、パネル10の温度が約35(℃)のときの走査パルス電圧の振幅は約88(V)であり、パネル10の温度が約35(℃)のときにはパネル10の温度が約70(℃)のときよりも、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaは約56(V)も低くなる。
すなわち、パネル10の温度が低温のときには、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaが低減されるため、初期化電圧Vi4を低く設定して、安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdを低減させることが望ましく、また、パネル10の温度が高温のときには、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaが高くなるため、必要な走査パルス電圧が低減されるように初期化電圧Vi4を高く設定することが望ましい。
これらのことから、本実施の形態では、後述するパネル温度検出回路がパネル10の温度を高温(ここでは、55℃以上)と判定したときに、図5(a)に示すように、直前のサブフィールドの維持期間における維持パルスの総数が多い(ここでは20以上)サブフィールド(ここでは、第5SF〜第10SF)において初期化電圧Vi4をVi4Hにして下りランプ波形電圧を発生させる構成とする。ただし、上述した理由により、直前のサブフィールドの維持パルスの総数が20未満のサブフィールドおよび全セル初期化サブフィールド(ここでは、第1SF〜第4SF)の初期化期間においては初期化電圧Vi4をVi4Mにする。
さらに、本実施の形態では、パネル温度検出回路がパネル10の温度を中温(ここでは、20℃以上55℃未満)と判定したときには、図5(b)に示すように、全てのサブフィールドにおいて初期化電圧Vi4をVi4Mにして下りランプ波形電圧を発生させる。パネル温度検出回路がパネル10の温度を低温(ここでは、20℃未満)と判定したときには、図5(c)に示すように、全セル初期化サブフィールド(ここでは、第1SF)において初期化電圧Vi4をVi4Mにし、全セル初期化サブフィールドを除くサブフィールド(ここでは、第2SF〜第10SF)において初期化電圧Vi4をVi4Lにして下りランプ波形電圧を発生させる構成とする。
このようなサブフィールド構成とすることにより、高精細化されたパネルにおいても、書込み放電を発生させるために必要な電圧を高くすることなく、書込み放電を安定に発生させることが可能となる。
なお、第1SF〜第4SFで初期化電圧Vi4をVi4Mにし、第5SF〜第10SFで初期化電圧Vi4をVi4Hにしたときには、図8の破線に示すように、図8の実線に示す全てのサブフィールドで初期化電圧Vi4をVi4Mにしたときと比べて、例えばパネル10の温度が約70(℃)のときには、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧(振幅)を約10(V)低減でき、パネル10の温度が約60(℃)のときには同走査パルス電圧を約5(V)低減できることが確認された。
なお、本実施の形態では、パネル温度検出回路がパネル10の温度を低温(ここでは、20℃未満)と判定したときに、全セル初期化動作を行う第1SFの初期化期間では初期化電圧Vi4をVi4Mにしているが、これは、パネルの温度が低温のときには放電遅れが大きくなりやすく、そのため第1SFで行う全セル初期化動作での上りランプ波形電圧印加時に形成される壁電圧が高温時等と比べて少なくなりやすいため、壁電圧を調整する作用を有する下りランプ波形電圧での放電持続時間を長くしすぎないようにするためである。
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図9は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45、パネル温度検出回路46および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路41は、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路42はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。
パネル温度検出回路46は、温度を検出するために用いられる熱電対等の一般に知られた素子からなる温度センサ47を有する。そして、温度センサ47で検出したパネル10の温度とあらかじめ定めた温度しきい値とを比較して、パネル温度が低温か中温か高温かを判断し、その結果をタイミング発生回路45に出力する。具体的には、温度しきい値として20℃および55℃を設定し、パネル温度が低温(20℃未満)か、中温(20℃以上55℃未満)か、高温(55℃以上)かを判断し、その結果を示す信号をタイミング発生回路45に出力する。なお、これらの数値は単なる一例に過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様に応じて最適な値に設定すればよい。
タイミング発生回路45は水平同期信号H、垂直同期信号Vおよびパネル温度検出回路46からの出力をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。そして、上述したように、本実施の形態においては、初期化期間において走査電極SC1〜SCnに印加する下りランプ波形電圧の初期化電圧Vi4をパネル温度にもとづいて制御する構成としており、それに応じたタイミング信号を走査電極駆動回路43に出力する。これにより、書込み動作を安定化させる。
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜SCnに印加する初期化波形電圧を発生するための初期化波形発生回路(図示せず)、維持期間において走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路(図示せず)、書込み期間において走査電極SC1〜SCnに印加する走査パルス電圧を発生するための走査パルス発生回路(図示せず)を有し、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜SCnをそれぞれ駆動する。維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路(図示せず)および電圧Ve1、電圧Ve2を発生するための回路を備え、タイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnを駆動する。
次に、走査電極駆動回路43について説明する。図10は、本発明の実施の形態1における走査電極駆動回路43の回路図である。走査電極駆動回路43は、維持パルスを発生させる維持パルス発生回路50、初期化波形を発生させる初期化波形発生回路53、走査パルスを発生させる走査パルス発生回路54を備えている。なお、図10には、スイッチング素子Q13を用いた分離回路を示している。また、以下の説明においてスイッチング素子を導通させる動作を「オン」、遮断させる動作を「オフ」と表記し、スイッチング素子をオンさせる信号を「Hi」、オフさせる信号を「Lo」と表記する。
維持パルス発生回路50は、後述する電力回収回路と後述するクランプ回路とを備え、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号にもとづき内部に備えた各スイッチング素子を切換えて維持パルス電圧Vsを発生させる。
初期化波形発生回路53は、スイッチング素子Q11とコンデンサC10と抵抗R10とを有し電圧Vi2までランプ状に緩やかに上昇する初期化動作時の上りランプ波形電圧を発生する第1の傾斜波形発生回路である第1のミラー積分回路55、スイッチング素子Q15とコンデンサC11と抵抗R12とを有し電圧Versまでランプ状に緩やかに上昇する消去ランプ波形電圧を発生する第2の傾斜波形発生回路である第2のミラー積分回路56、スイッチング素子Q14とコンデンサC12と抵抗R11とを有し所定の初期化電圧Vi4までランプ状に緩やかに下降する初期化動作時の下りランプ波形電圧を発生する第3の傾斜波形発生回路である第3のミラー積分回路57を備えている。なお、図10には、ミラー積分回路のそれぞれの入力端子を入力端子INa、入力端子INb、入力端子INcとして示している。
また、本実施の形態では、消去ランプ波形電圧発生時における電圧の上昇を電圧Versで精度良く停止させるために、消去ランプ波形電圧とあらかじめ定められた所定電圧とを比較し、消去ランプ波形電圧が所定電圧に到達したら直ちに消去ランプ波形電圧を発生させる第2のミラー積分回路の動作を停止させるスイッチング回路を有する。具体的には、逆流防止用のダイオードD13、電圧Versの電圧値を調整するための抵抗R13、初期化波形発生回路53から出力される電圧が電圧Versに到達したら第2のミラー積分回路56の入力端子INcを「Lo」にするためのスイッチング素子Q16、保護用のダイオードD12、抵抗R14を備えている。
スイッチング素子Q16は、一般に用いられているNPN型のトランジスタからなり、ベースを初期化波形発生回路53の出力に、コレクタを第2のミラー積分回路56の入力端子INcに、エミッタを、直列に接続された抵抗R13、ダイオードD13を介して電圧Vsに接続している。抵抗R13は、初期化波形発生回路53から出力される電圧が電圧Versに到達したらスイッチング素子Q16がオンするようにその抵抗値を設定しており、そのため、初期化波形発生回路53から出力される電圧が電圧Versに到達したらスイッチング素子Q16はオンする。すると、第2のミラー積分回路56を動作させるために入力端子INcに入力される電流はスイッチング素子Q16に引き抜かれるため第2のミラー積分回路56は動作を停止する。
一般的にミラー積分回路は、発生させるランプ波形の勾配に、自身の回路を構成する素子のばらつきの影響を受けやすく、そのため、単にミラー積分回路の動作期間だけで波形生成を行うと、ランプ波形の最大電圧値がばらつきやすい。一方、本実施の形態では、消去ランプ波形電圧の最大電圧値を目標電圧値に対して±3(V)に収めるのが望ましいことが確認されており、本実施の形態における構成を用いることで、目標電圧値に対して±1(V)程度の範囲に収めることができ、消去ランプ波形電圧を精度良く発生させることが可能となる。
なお、電圧Vers’は電圧Versよりも高い電圧値に設定することが望ましく、本実施の形態では、電圧Vers’を電圧Vs+30(V)に設定している。また、本実施の形態では、電圧Versが電圧Vs+3(V)になるように抵抗R13の抵抗値を設定しており、具体的には抵抗R13を100Ω、電圧Vsを210(V)、抵抗R14を1kΩに設定している。ただし、これらの値は表示電極対数1080の42インチのパネルにもとづき設定した値に過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様に応じて最適に設定すればよい。
そして、初期化波形発生回路53は、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号にもとづき上述した初期化波形電圧、または消去ランプ波形電圧を発生させる。
例えば、初期化波形における上りランプ波形電圧を発生させる場合には、入力端子INaに所定の電圧(例えば、15(V))の定電流を入力して、入力端子INaを「Hi」にする。これにより抵抗R10からコンデンサC10に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q11のソース電圧がランプ状に上昇し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に上昇し始める。
また、全セル初期化動作および選択初期化動作の初期化波形における下りランプ波形電圧を発生させる場合には、入力端子INbに所定の電圧(例えば、15(V))の定電流を入力して、入力端子INbを「Hi」にする。すると、抵抗R11からコンデンサC12に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q14のドレイン電圧がランプ状に下降し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に下降し始める。
また、維持期間の最後において消去ランプ波形電圧を発生させる場合には、入力端子INcに所定の電圧の定電流を入力して、入力端子INcを「Hi」にする。これにより抵抗R12からコンデンサC11に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q15のソース電圧がランプ状に上昇し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に上昇し始める。なお、本実施の形態では、抵抗R12の抵抗値を抵抗R10の抵抗値よりも小さくしており、これにより、第2の傾斜波形電圧である消去ランプ波形電圧を、第1の傾斜波形電圧である上りランプ波形電圧よりも勾配を急峻にして発生させている。
そして、初期化波形発生回路53から出力される駆動電圧波形が徐々に上昇して電圧Versよりも高くなると、スイッチング素子Q16がオンして入力端子INcに入力される定電流はスイッチング素子Q16に引き抜かれ、第2のミラー積分回路56は動作を停止する。これにより、初期化波形発生回路53から出力される駆動電圧波形は直ちにベース電位となる0(V)まで降下する。こうして、本実施の形態では、消去ランプ波形電圧発生時における電圧の上昇を所定電位である電圧Versで精度良く停止させ、その後、直ちにベース電位となる0(V)まで降下させている。
走査パルス発生回路54は、走査電極SC1〜SCnのそれぞれに走査パルス電圧を出力するスイッチ回路OUT1〜OUTnと、スイッチ回路OUT1〜OUTnの低電圧側を電圧Vaにクランプするためのスイッチング素子Q21と、スイッチ回路OUT1〜OUTnを制御するための制御回路IC1〜ICnと、電圧Vaに電圧Vscnを重畳した電圧Vcをスイッチ回路OUT1〜OUTnの高電圧側に印加するためのダイオードD21およびコンデンサC21とを備えている。そしてスイッチ回路OUT1〜OUTnのそれぞれは、電圧Vcを出力するためのスイッチング素子QH1〜QHnと電圧Vaを出力するためのスイッチング素子QL1〜QLnとを備えている。そして、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号にもとづき、書込み期間において走査電極SC1〜SCnに印加する走査パルス電圧Vaを順次発生させる。なお、走査パルス発生回路54は、初期化期間では初期化波形発生回路53の電圧波形を、維持期間では維持パルス発生回路50の電圧波形をそのまま出力する。
なお、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4、スイッチング素子Q13には非常に大きな電流が流れるため、これらのスイッチング素子にはFET、IGBT等を複数並列接続して用いインピーダンスを低下させている。
また、走査パルス発生回路54は、論理積演算を行うアンドゲートAGと、2つの入力端子に入力される入力信号の大小を比較する比較器CPと、一般に用いられるスイッチング動作を行うフォトカプラPCと、逆流防止用のダイオードD22およびダイオードD23と、保護用のダイオードD24とを備える。フォトカプラPCは切換え信号CEL3の「Hi」/「Lo」の切換えによりスイッチング動作を切換える。切換え信号CEL3としては、例えば、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号を用いることができる。電圧Vset3は電圧Vset2よりも高い電圧値であり、そのため、フォトカプラPCがオフのときには電圧Vaに電圧Vset2が重畳された電圧が比較器CPに入力されるが、フォトカプラPCがオンのときには逆流防止用のダイオードD22の働きにより電圧Vaに電圧Vset3が重畳された電圧(Va+Vset3)が比較器CPに入力される。そして比較器CPは、フォトカプラPCがオフのときには電圧(Va+Vset2)を、フォトカプラPCがオンのときには電圧(Va+Vset3)を、駆動電圧波形と比較し、駆動電圧波形の方が高い場合には「0」を、それ以外では「1」を出力する。アンドゲートAGには、2つの入力信号、すなわち比較器CPの出力信号CEL1と切換え信号CEL2とが入力される。切換え信号CEL2としては、例えば、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号を用いることができる。そして、アンドゲートAGは、いずれの入力信号も「1」の場合には「1」を出力し、それ以外の場合には「0」を出力する。アンドゲートAGの出力は制御回路IC1〜ICnに入力され、アンドゲートAGの出力が「0」であればスイッチング素子QL1〜QLnを介して駆動電圧波形を、アンドゲートAGの出力が「1」であればスイッチング素子QH1〜QHnを介して、所定の電圧である、電圧Vaに電圧Vscnが重畳された電圧Vcを出力する。すなわち、アンドゲートAGは、比較器CPからの出力を有効にするか無効にするかを切換えるスイッチング素子としての働きを有する。本実施の形態は、このようにして、初期化電圧Vi4をVi4L(切換え信号CEL2を「Lo」にしたとき)とVi4M(切換え信号CEL2を「Hi」にするとともに切換え信号CEL3を「Lo」にしたとき)とVi4H(切換え信号CEL2を「Hi」にするとともに切換え信号CEL3を「Hi」にしたとき)とで切換えている。なお、本実施の形態では、電圧Vset2を6(V)とし、電圧Vset3を10(V)としているが、この数値は単なる一例に過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に応じて最適な電圧値に設定すればよい。
なお、本実施の形態では、第1の傾斜波形発生回路、第2の傾斜波形発生回路、第3の傾斜波形発生回路に、実用的であり比較的構成が簡単なFETを用いたミラー積分回路を採用しているが、傾斜波形発生回路は何らこの構成に限定されるものではなく、上りランプ波形電圧および下りランプ波形電圧を発生することができる回路であればどのような回路であってもよい。
次に、走査電極駆動回路43の維持パルス発生回路50と維持電極駆動回路44の維持パルス発生回路60について説明する。
図11は、本発明の実施の形態1における維持パルス発生回路50、維持パルス発生回路60の回路図である。なお、図11にはパネル10の電極間容量をCpとして示し、初期化波形発生回路53および走査パルス発生回路54は省略している。
維持パルス発生回路50は、電力回収回路51とクランプ回路52とを備えている。電力回収回路51は、電力回収用のコンデンサC1、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、逆流防止用のダイオードD1、逆流防止用のダイオードD2、共振用のインダクタL1を有している。なお、電力回収用のコンデンサC1は電極間容量Cpに比べて十分に大きい容量を持ち、電力回収回路51の電源として働くように、電圧値Vsの半分の約Vs/2に充電されている。クランプ回路52は、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q3、走査電極SC1〜SCnを0(V)にクランプするためのスイッチング素子Q4を有している。そして、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号にもとづき内部に備えた各スイッチング素子を切換えて維持パルス電圧Vsを発生させる。
維持パルス発生回路50において、例えば、維持パルス波形を立ち上げる際には、スイッチング素子Q1をオンにして電極間容量Cpと電力回収回路51が備えたインダクタL1とを共振させ、電力回収用のコンデンサC1からスイッチング素子Q1、ダイオードD1、インダクタL1を通して走査電極SC1〜SCnに電力を供給する。そして、走査電極SC1〜SCnの電圧が電圧Vsに近づいた時点でスイッチング素子Q3をオンにして、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプする。
逆に、維持パルス波形を立ち下げる際には、スイッチング素子Q2をオンにして電極間容量Cpと電力回収回路が備えたインダクタL1とを共振させ、電極間容量CpからインダクタL1、ダイオードD2、スイッチング素子Q2を通して電力回収用のコンデンサC1に電力を回収する。そして、走査電極SC1〜SCnの電圧が0(V)に近づいた時点でスイッチング素子Q4をオンにして、走査電極SC1〜SCnを0(V)にクランプする。
維持電極駆動回路44の維持パルス発生回路60は、走査電極駆動回路43の維持パルス発生回路50とほぼ同様の構成であり、維持電極SU1〜SUnを駆動するときの電力を回収して再利用するための電力回収回路61と、維持電極SU1〜SUnを電圧Vsおよび0(V)にクランプするためのクランプ回路62とを備えており、パネル10の電極間容量Cpの一端である維持電極SU1〜SUnに接続されている。
電力回収回路61は、電力回収用のコンデンサC30、スイッチング素子Q31、スイッチング素子Q32、逆流防止用のダイオードD31、ダイオードD32、共振用のインダクタL30を有している。そして、電極間容量CpとインダクタL30とをLC共振させて維持パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを行う。クランプ回路62は、維持電極SU1〜SUnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q33、維持電極SU1〜SUnを0(V)にクランプするためのスイッチング素子Q34を有している。そして、スイッチング素子Q33を介して維持電極SU1〜SUnを電源VSに接続して電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q34を介して維持電極SU1〜SUnを接地して0(V)にクランプする。
また、維持電極駆動回路44は、電圧Ve1を発生する電源VE1、電圧Ve1を維持電極SU1〜SUnに印加するためのスイッチング素子Q36、スイッチング素子Q37、電圧ΔVeを発生する電源ΔVE、逆流防止用のダイオードD33、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げるためのポンプアップ用のコンデンサC31、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げて電圧Ve2とするためのスイッチング素子Q38、スイッチング素子Q39を備えている。
例えば、図3に示した電圧Ve1を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q36、スイッチング素子Q37を導通させて、維持電極SU1〜SUnにダイオードD33、スイッチング素子Q36、スイッチング素子Q37を介して正の電圧Ve1を印加する。なお、このときスイッチング素子Q38を導通させ、コンデンサC31の電圧が電圧Ve1になるように充電しておく。また、図3に示した電圧Ve2を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q36、スイッチング素子Q37は導通させたまま、スイッチング素子Q38を遮断させるとともにスイッチング素子Q39を導通させてコンデンサC31の電圧に電圧ΔVeを重畳し、維持電極SU1〜SUnに電圧(Ve1+ΔVe)、すなわち電圧Ve2を印加する。このとき、逆流防止用のダイオードD33の働きにより、コンデンサC31から電源VE1への電流は遮断される。
なお、これらのスイッチング素子は、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。
なお、電力回収回路51のインダクタL1とパネル10の電極間容量CpとのLC共振の周期、および電力回収回路61のインダクタL30と同電極間容量CpとのLC共振の周期(以下、「共振周期」と記す)は、インダクタL1、L30のインダクタンスをそれぞれLとすれば、計算式「2π√(LCp)」によって求めることができる。そして、本実施の形態では、電力回収回路51、61における共振周期が約1500nsecになるようにインダクタL1、L30を設定しているが、この数値は実施の形態における一例に過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適な値に設定すればよい。
次に、初期化波形発生回路53の動作と初期化電圧Vi4を制御する方法について、図12から図14を用いて説明する。まず、図12を用いて初期化電圧Vi4をVi4Lにする場合の動作を説明し、次に、図13を用いて初期化電圧Vi4をVi4Mにする場合の動作を説明し、次に、図14を用いて初期化電圧Vi4をVi4Hにする場合の動作を説明する。なお、図12から図14では全セル初期化動作時の駆動波形を例にして初期化電圧Vi4を制御する方法を説明するが、選択初期化動作においても、同様の制御方法により初期化電圧Vi4を制御することができる。
また、図12から図14では、全セル初期化動作を行う駆動電圧波形を期間T1〜期間T5で示した5つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。また、電圧Vi1、電圧Vi3は電圧Vsに等しいものとし、電圧Vi2は電圧Vrに等しいものとし、電圧Vi4Lは負の電圧Vaに等しいものとし、電圧Vi4Mは負の電圧Vaに電圧Vset2を重畳させた電圧(Va+Vset2)に等しいものとし、電圧Vi4Hは負の電圧Vaに電圧Vset3を重畳させた電圧(Va+Vset3)に等しいものとして説明する。また、図面には、アンドゲートAGへの入力信号CEL1、CEL2、CEL3を、「1」を「Hi」、「0」を「Lo」と表記する。
図12は、本発明の実施の形態1における全セル初期化期間の走査電極駆動回路43の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、ここでは、初期化電圧Vi4をVi4Lにするために、期間T1〜期間T5において、切換え信号CEL2は「0」に維持している。
また、図12には、消去ランプ波形電圧の発生と上りランプ波形電圧の発生との違いを示すため、消去ランプ波形電圧を発生させる期間T8〜期間T9の動作もあわせて示す。
なお、ここでは、初期化電圧Vi4をVi4L(ここでは、負の電圧Vaに等しい)にするために、期間T1〜期間T5において、切換え信号CEL2は「0」に維持する。また、図示はしていないが、維持期間および初期化期間においては、維持パルス発生回路50および初期化波形発生回路53からの出力を走査電極駆動回路43の出力とするため、スイッチング素子Q21はオフに維持する。また、図示はしていないが、分離回路を構成するスイッチング素子Q13には、入力端子INbに入力する信号とは逆極性の信号を入力するように構成しており、入力端子INbが「Lo」の期間はスイッチング素子Q13はオンとなる。また、入力端子INbが「Hi」の期間はスイッチング素子Q13はオフとなるが、MOSFETには、スイッチング動作を行う部分に対してボディダイオードと呼ばれる寄生ダイオードが逆並列(スイッチング動作を行う部分に対して並列に、かつスイッチング動作により電流が流れる方向とは逆方向が順方向となるよう)に生成されるため、スイッチング素子Q13がオフであっても、第3のミラー積分回路57はこのボディダイオードを介して走査電極SC1〜SCnに下りランプ波形電圧を印加することができる。
まず、消去ランプ波形電圧を維持期間の最後に発生させる際の動作について説明する。
(期間T8)
期間T8では、入力端子INcを「Hi」にする。これにより、抵抗R12からコンデンサC11に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q15のソース電圧がランプ状に上昇し、走査電極駆動回路43の出力電圧は、上りランプ波形電圧よりも急峻な勾配でランプ状に上昇し始める。こうして、ベース電位となる0(V)から電圧Versに向かって上昇する第2の傾斜波形電圧である消去ランプ波形電圧を発生させる。そして、この消去ランプ波形電圧が上昇する間に走査電極SCiと維持電極SUiとの間の電圧差は放電開始電圧を超える。このとき、本実施の形態では、走査電極SCiと維持電極SUiとの間でのみ放電が発生するように各数値を設定しており、例えば、維持パルス電圧Vsを約210(V)とし、電圧Versを約213(V)とし、消去ランプ波形電圧の勾配を約10V/μsecとしている。これにより、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に微弱な放電を発生させることができ、この微弱な放電を消去ランプ波形電圧が上昇する期間、継続させることができる。
このとき、急激な電圧変化による瞬間的な強い放電を発生させてしまうと、強い放電で発生した大量の荷電粒子は、その急激な電圧変化を緩和するように大きな壁電荷を形成し、直前の維持放電で形成された壁電圧を過剰に消去してしまう。また、大画面化、高精細化され、駆動インピーダンスが増大したパネルでは、駆動回路から発生される駆動波形にリンギング等の波形歪が生じやすくなるため、上述した細幅消去放電を発生させる駆動波形では、波形歪による強い放電が発生する恐れがある。
しかし、本実施の形態では、印加電圧を徐々に上昇させる消去ランプ波形電圧により走査電極SCiと維持電極SUiとの間に微弱な消去放電を継続して発生させる構成としているので、たとえ大画面化、高精細化され、駆動インピーダンスが増大したパネルであっても、消去放電を安定に発生させることができ、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧を、続く書込みを安定に発生させるに最適な状態に調整することができる。
なお、図面には示していないが、このときデータ電極D1〜Dmは0(V)に保持されているので、データ電極D1〜Dm上には正の壁電圧が形成される。
(期間T9)
初期化波形発生回路53から出力される駆動電圧波形が電圧Versに到達すると、スイッチング素子Q16がオンし、第2のミラー積分回路56を動作させるために入力端子INcに入力される電流はスイッチング素子Q16に引き抜かれて第2のミラー積分回路56は動作を停止する。
こうして、ベース電位となる0(V)から電圧Versに向かって上昇する第2の傾斜波形電圧である消去ランプ波形電圧が発生する。
次に、続くサブフィールドの初期化期間(ここでは、全セル初期化期間)の動作について説明する。
(期間T1)
まず、維持パルス発生回路50のスイッチング素子Q1をオンにする。すると、電極間容量CpとインダクタL1とが共振し、電力回収用のコンデンサC1からスイッチング素子Q1、ダイオードD1、インダクタL1を通して走査電極SC1〜SCnの電圧が上がり始める。
(期間T2)
次に、維持パルス発生回路50のスイッチング素子Q3をオンにする。するとスイッチング素子Q3を介して走査電極SC1〜SCnに電圧Vsが印加され、走査電極SC1〜SCnの電位は電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi1と等しい)となる。
(期間T3)
次に、上りランプ波形電圧を発生するミラー積分回路の入力端子INaを「Hi」にする。具体的には入力端子INaに、例えば電圧15(V)を印加する。すると、抵抗R10からコンデンサC10に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q11のソース電圧がランプ状に上昇し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に上昇し始める。そしてこの電圧上昇は、入力端子INaが「Hi」の間継続する。
この出力電圧が電圧Vr(本実施の形態では、電圧Vi2と等しい)まで上昇したら、その後、入力端子INaを「Lo」にする。具体的には入力端子INaに、例えば電圧0(V)を印加する。
このようにして、放電開始電圧以下となる電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi1と等しい)から、放電開始電圧を超える電圧Vr(本実施の形態では、電圧Vi2と等しい)に向かって緩やかに上昇する上りランプ波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する。
(期間T4)
入力端子INaを「Lo」にすると走査電極SC1〜SCnの電圧が電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi3と等しい)まで低下する。そしてその後、スイッチング素子Q3をオフにする。
(期間T5)
次に、下りランプ波形電圧を発生するミラー積分回路の入力端子INbを「Hi」にする。具体的には入力端子INbに、例えば電圧15(V)を印加する。すると、抵抗R11からコンデンサC12に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q14のドレイン電圧がランプ状に下降し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に下降し始める。そして、初期化期間が終了する直前に、入力端子INbを「Lo」とする。具体的には入力端子INbに、例えば電圧0(V)を印加する。
なお、期間T5ではスイッチング素子Q13はオフとなるが、下りランプ波形電圧を発生するミラー積分回路は、スイッチング素子Q13のボディダイオードを介して走査電極駆動回路43の出力電圧を下降させることができる。
このとき、比較器CPでは、この下りランプ波形電圧と、電圧Vaに電圧Vset2が加えられた電圧(Va+Vset2)とが比較されており、比較器CPからの出力信号は、下りランプ波形電圧が電圧(Va+Vset2)以下となった時刻t5において「0」から「1」に切換わる。しかし、期間T1〜期間T5において切換え信号CEL2は「0」に維持されているため、アンドゲートAGからは「0」が出力される。したがって、走査パルス発生回路54からは、初期化電圧Vi4を負の電圧Va、すなわちVi4Lにした下りランプ波形電圧がそのまま出力される。
なお、ここではVi4Lを負の電圧Vaと等しいとしたため、図12では、下りランプ波形電圧がVi4Lに到達した後その電圧を一定期間保持するような波形図となっているが、これは、図10に示した回路の構成上、このような波形になったに過ぎない。本実施の形態においては何らこの波形や図10に示した回路構成に限定されるものではなく、Vi4Lに到達した後すぐに電圧Vcに切換わるような構成であってもかまわない。
以上のようにして、走査電極駆動回路43は、走査電極SC1〜SCnに対して、放電開始電圧以下となる電圧Vi1から放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する第1の傾斜波形電圧である上りランプ波形電圧を発生させ、その後、電圧Vi3から初期化電圧Vi4(Vi4L)に向かって緩やかに下降する下りランプ波形電圧を発生させて走査電極SC1〜SCnに印加することができる。
なお、図示はしていないが、初期化期間終了後、続く書込み期間では、スイッチング素子Q21をオンに維持する。これにより、比較器CPの一方の端子に入力される電圧は負の電圧Vaとなり、比較器CPからの出力信号CEL1は「1」に維持される。これにより、アンドゲートAGからの出力は「1」に維持され、走査パルス発生回路54からは、負の電圧Vaに電圧Vscnが重畳された電圧Vcが出力される。そして、負の走査パルス電圧を発生させるタイミングで切換え信号CEL2を「0」にすることで、アンドゲートAGの出力信号は「0」となり、走査パルス発生回路54からは負の電圧Vaが出力される。このようにして、書込み期間における負の走査パルス電圧を発生させることができる。
次に、図13を用いて初期化電圧Vi4をVi4Mにする場合の動作を説明する。図13は、本発明の実施の形態1における全セル初期化期間の走査電極駆動回路43の動作の他の例を説明するためのタイミングチャートである。なお、ここでは、初期化電圧Vi4をVi4Mにするために、期間T1〜T51において切換え信号CEL2を「1」にし、切換え信号CEL3を「0」にしている。また、図13において、期間T1〜T4の動作および期間T8、T9の動作は図12に示した動作と同様であるので、ここでは、図12に示した期間T5と動作の異なる期間T51について説明する。
(期間T51)
期間T51では、下りランプ波形電圧を発生するミラー積分回路の入力端子INbを「Hi」にする。具体的には入力端子INbに、例えば電圧15(V)を印加する。すると、抵抗R11からコンデンサC12に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q14のドレイン電圧がランプ状に下降し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に下降し始める。
このとき、切換え信号CEL3は「0」なので、比較器CPでは、この下りランプ波形電圧と、電圧Vaに電圧Vset2が加えられた電圧(Va+Vset2)とが比較されており、比較器CPからの出力信号は、下りランプ波形電圧が電圧(Va+Vset2)以下となった時刻t51において「0」から「1」に切換わる。そして、このとき切換え信号CEL2は「1」であるため、アンドゲートAGの入力はともに「1」となって、アンドゲートAGからは「1」が出力される。これにより、走査パルス発生回路54からは、負の電圧Vaに電圧Vscnが重畳された電圧Vcが出力される。したがって、この下りランプ波形電圧における最低電圧を電圧(Va+Vset2)、すなわちVi4Mとすることができる。なお、入力端子INbは、走査パルス発生回路54からの出力が電圧Vcとなってから初期化期間が終了するまでの間に「Lo」とする。
以上のようにして、走査電極駆動回路43は、走査電極SC1〜SCnに対して、放電開始電圧以下となる電圧Vi1から放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する第1の傾斜波形電圧である上りランプ波形電圧を発生させ、その後、電圧Vi3から初期化電圧Vi4(Vi4M)に向かって緩やかに下降する下りランプ波形電圧を発生させて走査電極SC1〜SCnに印加することができる。
次に、図14を用いて初期化電圧Vi4をVi4Hにする場合の動作を説明する。図14は、本発明の実施の形態1における全セル初期化期間の走査電極駆動回路43の動作の他の例を説明するためのタイミングチャートである。なお、ここでは、初期化電圧Vi4をVi4Hにするために、期間T1〜T52において切換え信号CEL2を「1」にし、切換え信号CEL3を「1」にしている。また、図14においても、期間T1〜T4の動作および期間T8、T9の動作は図12に示した動作と同様であるので、ここでは、図12に示した期間T5と動作の異なる期間T52について説明する。
(期間T52)
期間T52では、下りランプ波形電圧を発生するミラー積分回路の入力端子INbを「Hi」にする。具体的には入力端子INbに、例えば電圧15(V)を印加する。すると、抵抗R11からコンデンサC12に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q14のドレイン電圧がランプ状に下降し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に下降し始める。
このとき、切換え信号CEL3は「1」なので、比較器CPでは、この下りランプ波形電圧と、電圧Vaに電圧Vset3が加えられた電圧(Va+Vset3)とが比較されており、比較器CPからの出力信号は、下りランプ波形電圧が電圧(Va+Vset3)以下となった時刻t52において「0」から「1」に切換わる。そして、このとき切換え信号CEL2は「1」であるため、アンドゲートAGの入力はともに「1」となって、アンドゲートAGからは「1」が出力される。これにより、走査パルス発生回路54からは、負の電圧Vaに電圧Vscnが重畳された電圧Vcが出力される。したがって、この下りランプ波形電圧における最低電圧を電圧(Va+Vset3)、すなわちVi4Hとすることができる。なお、入力端子INbは、走査パルス発生回路54からの出力が電圧Vcとなってから初期化期間が終了するまでの間に「Lo」とする。
以上のようにして、走査電極駆動回路43は、走査電極SC1〜SCnに対して、放電開始電圧以下となる電圧Vi1から放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する第1の傾斜波形電圧である上りランプ波形電圧を発生させ、その後、電圧Vi3から初期化電圧Vi4(Vi4H)に向かって緩やかに下降する下りランプ波形電圧を発生させて走査電極SC1〜SCnに印加することができる。
なお、ここでは、比較器CPにおける比較結果でスイッチ回路OUT1〜OUTnを切換える構成としたため、図13、図14において、下りランプ波形電圧がVi4MまたはVi4Hに到達した後すぐに電圧Vcに切換わるような波形となっているが、本実施の形態においては何らこの波形に限定されるものではなく、Vi4MまたはVi4Hに到達した後その電圧を一定期間保持するような構成であってもかまわない。
このように、本実施の形態では、走査電極駆動回路43を図10に示したような回路構成とすることで、緩やかに下降する下りランプ波形電圧の最低電圧、すなわち初期化電圧Vi4の電圧値をVi4LとVi4MとVi4Hとで簡単に切換えることが可能になる。
なお、本実施の形態では全セル初期化動作における初期化電圧Vi4の制御について説明したが、選択初期化動作においては上りランプ波形電圧を発生させない点が異なるだけで下りランプ波形電圧の発生については上述と同様の動作であり、初期化電圧Vi4の制御も同様に行うことができる。
以上、説明したように、本実施の形態においては、初期化電圧Vi4を、Vi4Lと、Vi4Lよりも電圧値の高いVi4Mと、Vi4Mよりも電圧値の高いVi4Hとで切換える構成とし、パネル10の温度に応じて初期化電圧Vi4を変更する構成とする。すなわち、パネル温度検出回路46により、検出されたパネル10の温度が低温(本実施の形態では、20℃未満)と判定されたときには第1SFの初期化電圧Vi4をVi4Mにし第2SF〜第10SFの初期化電圧Vi4をVi4Lにして下りランプ波形電圧を発生させ、パネル10の温度が中温(本実施の形態では、20℃以上55℃未満)と判定されたときには全サブフィールドの初期化電圧Vi4をVi4Mにして下りランプ波形電圧を発生させ、パネル10の温度が高温(本実施の形態では、55℃以上)と判定されたときには第1SF〜第4SFの初期化電圧Vi4をVi4Mにし第5SF〜第10SFの初期化電圧Vi4をVi4Hにして下りランプ波形電圧を発生させる構成とする。これにより、高精細化されたパネルにおいても、書込み放電を発生させるために必要な電圧を高くすることなく安定に書込み放電を発生させることができ、画像表示品質を向上させることが可能となる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、維持期間の維持パルスの総数およびパネル10の温度に応じて、サブフィールド毎に初期化電圧Vi4をVi4LとVi4MとVi4Hとで切換える構成を説明したが、各サブフィールドの維持期間の維持パルスの総数のみに応じて、初期化電圧Vi4をVi4LとVi4MとVi4Hとで切換える構成とすることもできる。
図15は、本発明の実施の形態2におけるサブフィールド構成の一例を示す図である。例えば、図15に示すように、パネルの温度にかかわらず、直前のサブフィールドの維持パルスの総数が20未満サブフィールド(ここでは、第2SF〜第4SF)および全セル初期化サブフィールド(ここでは、第1SF)の初期化期間においては初期化電圧Vi4をVi4Mとし、直前のサブフィールドの維持パルスの総数が20以上(ここでは、第5SF〜第10SF)の初期化期間においては初期化電圧Vi4をVi4Hとして下りランプ波形電圧を発生させる構成としてもよい。このような構成では、直前のサブフィールドで十分に維持放電が発生し十分なプライミング粒子が形成されたサブフィールドにおいて初期化電圧Vi4を高く(Vi4H)するので、必要な走査パルス電圧Vaを低減でき、書込み放電を安定に発生させる効果を得ることが可能となる。なお、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、図9に示した実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロックから、パネル温度検出回路46を省いた構成とすることができる。
(実施の形態3)
実施の形態1では、維持期間の維持パルスの総数およびパネル10の温度に応じて、サブフィールド毎に初期化電圧Vi4をVi4LとVi4MとVi4Hとで切換える構成を説明したが、パネル10の温度のみに応じて、初期化電圧Vi4をVi4LとVi4MとVi4Hとで切換える構成とすることもできる。
図16は、本発明の実施の形態3におけるサブフィールド構成の一例を示す図である。例えば、パネル温度検出回路がパネル10の温度を高温(55℃以上)と判定した場合には、図16(a)に示すように、全てのサブフィールドの初期化期間において初期化電圧Vi4をVi4Hとして下りランプ波形電圧を発生させ、パネル温度検出回路がパネル10の温度を中温(20℃以上55℃未満)と判定した場合には、図16(b)に示すように、全てのサブフィールドの初期化期間において初期化電圧Vi4をVi4Mとして下りランプ波形電圧を発生させ、パネル温度検出回路がパネル10の温度を低温(20℃未満)と判定した場合には、図16(c)に示すように、全てのサブフィールドの初期化期間において初期化電圧Vi4をVi4Lとして下りランプ波形電圧を発生させて、初期化動作を行う構成としてもよい。上述したように、パネル10の温度が低温のときには安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaが低減され、また、パネル10の温度が高温のときには、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaが高くなるが、このような構成とすることで、パネル10の温度が低温のときには初期化電圧Vi4を低く設定して安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdを低減させることができ、また、パネル10の温度が高温のときには必要な走査パルス電圧が低減されるように初期化電圧Vi4を高く設定することが可能となるので、書込み放電を安定に発生させる効果を得ることができる。
なお、この構成においては、例えば、全セル初期化サブフィールドにおいてのみ、パネル10の温度にかかわらず初期化電圧Vi4をVi4Mとして下りランプ波形電圧を発生させる構成としてもよい。
なお、本発明の実施の形態では、消去ランプ波形電圧において、上昇する電圧が電圧Versに到達したら、直ちにベース電位となる0(V)まで降下させる構成を説明したが、上述した異常放電を防止するためには、降下到達電位を電圧Versの70%以下に設定することが望ましい。図17は、本発明の実施の形態における駆動電圧波形の他の例を示した波形図である。例えばこの図面に示すように、消去ランプ波形電圧が電圧Versに到達した後、直ちに電圧Vb(電圧Vbは、電圧Vers×0.7以下の電圧)まで降下させるように構成すれば、たとえ、その後その電圧Vbを一定期間維持したとしても、上述した異常放電を防止しつつ、上述した効果を得ることが可能である。また、本発明の実施の形態では、降下到達電位の下限電圧値をベース電位となる0(V)に設定しているが、この下限電圧値は、続く下りランプ波形電圧による選択初期化動作を円滑に行えるようにするために設定した値に過ぎない。本実施の形態は、この下限電圧値が何ら上述した値に限定されるものではなく、消去動作に続く動作が円滑に行える範囲で最適に設定すればよい。
なお、本発明の実施の形態において、図10に示した走査電極駆動回路43は単なる一構成例を示したものに過ぎず、同様の動作を実現できるものであれば、どのような回路構成であってもかまわない。また、消去ランプ波形電圧を発生させるための回路も単なる一構成例を示したものに過ぎず、同様の動作を実現できる他の回路に置き換えることができる。
なお、本発明の実施の形態は、走査電極SC1〜SCnを第1の走査電極群と第2の走査電極群とに分割し、書込み期間を、第1の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを順次印加する第1の書込み期間と、第2の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを順次印加する第2の書込み期間とで構成し、第1の書込み期間および第2の書込み期間の少なくとも一方において、走査パルスを印加する走査電極群に属する走査電極には、走査パルス電圧よりも高い第2の電圧から走査パルス電圧に遷移し再び第2の電圧に遷移する走査パルスを順次印加し、走査パルスを印加しない走査電極群に属する走査電極には、走査パルス電圧より高い第3の電圧と、第2の電圧および第3の電圧より高い第4の電圧とのいずれかの電圧を印加し、少なくとも隣接する走査電極に走査パルス電圧が印加されている間は第3の電圧を印加する、いわゆる2相駆動によるパネルの駆動方法にも適用させることができ、上述と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明の実施の形態では、消去ランプ波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する構成を説明したが、最後の維持パルスを印加する電極が走査電極SC1〜SCnの場合には、消去ランプ波形電圧を維持電極SU1〜SUnに印加する構成とすることもできる。しかし、本発明の実施の形態においては、最後の維持パルスを印加する電極を維持電極SU1〜SUnにし、消去ランプ波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する構成にする方が望ましい。
なお、本発明の実施の形態では、電力回収回路51、61において、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとで1つのインダクタを共通に用いる構成を説明したが、複数のインダクタを用い、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとで異なるインダクタを使用する構成としてもかまわない。また、その場合には、上述した電力回収回路51、電力回収回路61において共振周期が約1500nsecとなるようにインダクタを設定する構成は、立ち下がりに用いるインダクタに適用するものとする。また、立ち上がりに用いるインダクタに関しては、立ち下がりとは異なる共振周期、例えば約1200nsecとなるように設定してもよい。
なお、本発明の実施の形態において示した具体的な各数値、例えば電圧Versの電圧値や消去パルス波形電圧の勾配等は、実験に用いた表示電極対数1080の42インチのパネルの特性にもとづき設定したものであって、単に実施の形態の一例を示したものに過ぎない。本発明の実施の形態はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に応じて最適な値に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。