JP5045067B2 - ベアリングレスモータに適用した順突極モータ - Google Patents

ベアリングレスモータに適用した順突極モータ Download PDF

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この発明は、ベアリングレスモータに適用した順突極モータに関するものである。
電動機の高速化に伴い、磁気軸受を採用したベアリングレスモータの研究が盛んに行われており、1つの固定子に電動機巻線と位置制御巻線の2種類の巻線を備えることで、回転子を回転駆動する電動機機能と回転子の半径方向の位置を制御する磁気軸受機能とを磁気的に一体化したベアリングレスモータが提案されている。そして、非突極性や逆突極性を持つ一般的な永久磁石モータ(PMモータ)を採用したベアリングレスモータは、軸支持力を発生させる軸支持磁束が磁気抵抗の大きな永久磁石を貫く構造であるため、軸支持力を有効に発生できないという課題がある。この課題に対して、非特許文献1,2及び特許文献1に示されているような、正の突極性を持つ順突極モータや、非特許文献3及び特許文献2に示されているような、永久磁石の着磁方向を全て同一とし、永久磁石間の鉄心極を結果的に反対極とするコンシクエントポール形モータが提案されている。
電気学会研究会資料SPC−05−101「順突極永久磁石型ベアリングレスモータの不平衡吸引力補償」 電気学会研究会資料SPC−02−81「トルク磁束と位置制御磁束の磁路を分離した永久磁石型ベアリングレスモータ」 電気学会研究会資料SPC−01−102「コンシクエントポ−ル形ベアリングレスモータの提案」 特開2004−336968号公報 特開2004−357489号公報
図5は従来の非突極性の(突極性を持たない)SPMモータの回転子の縦断側面図を示し、積層鋼板からなる鉄心1の外周の磁極部分に外周側がS極の永久磁石2と外周側がN極の永久磁石3を交互に取り付けている。鉄心1の中心には回転軸4が貫通している。d軸方向は永久磁石2,3の中心と回転子の中心とを結ぶ方向を示し、q軸方向はd軸方向に対して電気角で90度回転した方向、即ち磁極と磁極の中間方向を示す。図6は従来の逆突極モータ(インセット型SPM)の回転子の縦断側面図であり、積層鋼板からなる鉄心5の外周の磁極部分に外周側がS極の永久磁石6と外周側がN極の永久磁石7が交互に埋設され、永久磁石6,7間には鉄心5の突極部5aが突出して形成される。鉄心5の中心には回転軸4が貫通する。これらは、非特許文献1に示されている。
図7は従来の非特許文献2に示された順突極モータの回転子の縦断側面図であり、積層鋼板からなる鉄心8の外周の磁極部分に外周側がS極の永久磁石2と外周側がN極の永久磁石3とを交互に埋設するとともに、各永久磁石2,3の中心に同極性の鉄心極8aを鉄心8から突出貫通して形成している。図8は非特許文献3に示されたコンシクエントポール形モータの回転子の縦断側面図であり、積層鋼板からなる鉄心9の外周に着磁方向が同一の、例えば外周側がN極の一対の永久磁石3を埋設し、永久磁石3間には結果として反対極、即ちS極となる鉄心極9aを形成する。
図5及び図6に示された非突極性や逆突極性を持つ一般的な永久磁石モータをベアリングレスモータに適用した場合、回転子を支持するために必要な軸支持力を発生させる軸支持磁束が磁気抵抗の大きな永久磁石を貫く構造となり、軸支持力を有効に発生できないという課題が生じた。又、図7に示された順突極モータは、永久磁石2,3の中心に鉄心極8aを配置し、鉄心極8aの両側に永久磁石2,3を配置したことを特徴としたものであり、正の突極性を有するため、有効に軸支持力を発生させることができる点においては優れている。しかしながら、磁極の中心を鉄心により形成したために、磁極の中心で磁束密度が低下し、発生トルクの低下とトルクリップルの増大を招くという課題を生じた。さらに、図8に示されたコンシクエントポール形モータは、一方の磁極のみを永久磁石3で形成し、他方の磁極は鉄心極9aにより形成しており、この鉄心極9aは永久磁石3により形成される磁路により結果的に反対極となる。この構造の場合、位置制御巻線を施すスロット数を増加させることで半径方向の力の脈動を低減できるが、対となる磁極の磁束分布が必ずしも対称となる訳ではないので、前記磁束分布が非対称の場合にはスロット数を増加させた場合であっても半径方向の力に脈動が生じてしまう。以上のように、磁気軸受機能と電動機機能を一体化したPM型のベアリングレスモータにおいては、有効な軸支持力が得られて安定した位置制御がし易く、かつ大きなトルクが得られ、トルクリップルや振動、騒音が大きくならないものが要求されていた。
この発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、有効な軸支持力が得られ、回転子の安定した位置制御を行うことができるとともに、大きなトルクが得られ、トルクリップルや騒音を小さくすることができるベアリングレスモータに適用した順突極モータを得ることを目的とする。
この発明の請求項1に係るベアリングレスモータに適用した順突極モータは、電動機機能と磁気軸受機能とを一体化したベアリングレスモータに適用した順突極モータにおいて、鉄心の外周の磁極部分に、永久磁石を突出して設けた磁石極と、磁石極の永久磁石と同じ方向に突出した突極部を設けた鉄心極とを、軸方向に交互に配設して回転子を構成したものである。
請求項2に係るベアリングレスモータに適用した順突極モータは、電動機機能と磁気軸受機能とを一体化したベアリングレスモータに適用した順突極モータにおいて、鉄心の外周の磁極部分に、傘状に突出して設けた突出部の凹部に永久磁石を周方向から挿入して形成した磁石極と、磁石極の突出部と同じ方向に突出した突極部を設けた鉄心極とを、軸方向に交互に配設して回転子を構成したものである。
請求項3に係るベアリングレスモータに適用した順突極モータは、電動機機能と磁気軸受機能とを一体化したベアリングレスモータに適用した順突極モータにおいて、鉄心の外周の磁極部分に、永久磁石を突出して設けた磁石極と、磁石極の永久磁石と同じ方向に突出した傘状の突極部の凹部に補助磁石を周方向から挿入して形成した鉄心極とを、軸方向に交互に配設して回転子を構成したものである。
以上のようにこの発明の請求項1によれば、鉄心極の突極部を磁石極の永久磁石と同じ方向に突出させており、正の突極性を有しており、回転子を支持する軸支持力を発生させる軸支持磁束は、磁気抵抗の小さい鉄心極を通るので、大きな軸支持力を発生させることができ、回転子を安定して支持することができる。又、磁石極と鉄心極とを分離して配置したので、回転子と固定子の間の磁束密度分布は、磁石極断面上で回転方向になだらかな分布となり、従来の順突極モータやコンシクエントポール形モータに比べ、トルクリップルや振動を低く抑えることができ、また永久磁石を磁極の中心に配置できるので、従来の順突極モータで生じていた磁束密度の低下による発生トルクの低下を防止することができる。
請求項2によれば、請求項1と同じく正の突極性を有しており、軸支持磁束は磁気抵抗の小さい鉄心極を通るので、大きな軸支持力を発生させることができ、回転子を安定して支持することができる。また、永久磁石は凹部に周方向から挿入した埋め込み磁石構造で、磁極の中心近くまで深く挿入されているので、磁極中心で極端に磁束密度が低下することは無く、トルクリップルの増加や発生トルクの低下は防止された構造となっている。さらに、埋め込み磁石構造であるため、磁石を保護する補強材が不要な構造である。
請求項3によれば、請求項1,2と同じく、正の突極性を有しており、軸支持磁束は磁気抵抗の小さい鉄心極を通るので、大きな軸支持力を発生させることができ、回転子を安定して支持することができる。又、磁石極断面上の磁束密度分布は回転方向になだらかな分布となり、トルクリップルや振動を低く抑えることができる。さらに、鉄心極において補助磁石を傘状の突極部の凹部に周方向から挿入したので、磁石極の磁石磁束の漏れを補償し、磁石磁束の低下を抑えることができる。また、永久磁石を磁極の中心に配置できるので、従来の順突極モータで生じていた磁束密度の低下による発生トルクの低下を防止することができる。
実施最良形態1
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面とともに説明する。図1(a)〜(c)はこの発明の実施最良形態1によるベアリングレスモータに適用した順突極モータの回転子の縦断正面図、そのA−A線縦断側面図及びB−B線縦断側面図であり、積層鋼板からなる鉄心10の外周の磁極部分に、外周側がS極の永久磁石11と外周側がN極の永久磁石12を突出して設けて磁石極13を形成する。又、鉄心10の外周の磁極部分に、永久磁石11,12とそれぞれ同じ方向に突出した突極部10aを設けて鉄心極14を形成する。そして、磁石極13と鉄心極14とを軸方向に交互に配設して回転子を構成する。
上記した実施最良形態1においては、鉄心極14の突極部10aを磁石極13の永久鉄心11,12と同じ方向に突出させており、正の突極性を有しており、回転子を支持する軸支持力を発生させる軸支持磁束が磁気抵抗が小さい鉄心極14を通るので、大きな軸支持力を発生させることができ、回転子の安定した位置制御が行い易い。ここで、SPM構造の磁石極、従来の順突極モータ及びコンシクエントポール形モータの、それぞれの回転子と固定子の間のギャップの磁束密度分布模式図は、図2(a)〜(c)に示すようになる。実施最良形態1における磁石極13の上部の磁束密度分布も図2(a)に示すように周方向になだらかな分布を持つ。周方向になだらかとは、高次成分の振幅が小さいという意味である。又、基本波とは、ギャップの磁束密度分布を調波分析した結果の基本波である。これに対して、従来の順突極モータは、磁極中央部に鉄心極を設けているため、磁束密度の低下と図2(b)に示すような磁束密度分布によりトルクリップルの増加を引き起こす。また、コンシクエントポール形モータは、一方の極が磁石極でもう一方の極が鉄心極となるため、図2(c)に示すように非対称な磁束分布となり、トルクリップルや振動の原因となる。実施最良形態1では、磁石極13と鉄心極14とを軸方向に分離して配置したので、回転子と固定子の間の磁束密度分布が回転方向になだらかになり、トルクリップルを減少させることができ、また永久磁石11,12を磁極の中心に配置できるので、磁束密度の低下による発生トルクの低下を防止することができる。
また、上記したように、従来の順突極モータは、磁束密度の低下とトルクリップルの増加を招き、コンシクエントポール形モータのように同じ二次元断面に磁石極と鉄心極が混在するような場合は、トルクリップルの増大と振動の発生を招くが、そのような恐れはなく、特に極数が少ない場合に有効である。また、順突極構造であるので、強め界磁運転時は大トルクを出すことができ、弱め界磁運転時は弱め磁束は鉄心極14を通るため、永久磁石11,12に反磁界が掛かりにくく、減磁は生じ難い。
実施最良形態2
図3(a)〜(c)はこの発明の実施最良形態2によるベアリングレスモータに適用した順突極モータの回転子の縦断正面図、そのC−C線縦断側面図及びD−D線縦断側面図であり、積層鋼板からなる鉄心10の外周の磁極部分に、傘状に突出して設けた突出部10bの凹部10cに外周側がS極の永久磁石15と外周側がN極の永久磁石16を周方向に挿入して磁石極17を形成する。又、鉄心10の外周の磁極部分に、永久磁石15,16とそれぞれ同じ方向に突出した突極部10aを設けて鉄心極14を形成する。そして、磁石極17と鉄心極14とを軸方向に交互に配設して回転子を構成する。
上記した実施最良形態2においては、鉄心極14の突極部10aを磁石極17の突出部10bと同じ方向に突出させ、また永久磁石15,16を突出部10bの凹部10cの中心にブリッジ部10dを設け、磁気飽和により漏れ磁束を低減するように細く設定し、凹部10cに周方向から磁極の中心近くまで深く挿入している。本実施最良形態も正の突極性を有するので、回転子を支持する軸支持力を発生させる軸支持磁束は磁気抵抗が小さい鉄心極14を通り、大きな軸支持力を発生させることができ、回転子の安定した位置制御を行うことができる。又、磁石極17と鉄心極14とを軸方向に分離して配置したので、回転子と固定子の間のギャップの磁束密度分布がやはり図2(a)に示すように回転方向になだらかになり、トルクリップルを減少させることができ、また永久磁石15,16を磁極の中心近くに配置できるので、磁束密度の低下による発生トルクの低下を防止することができる。
また、従来の順突極モータは、磁極中央部に鉄心極を設けているため、磁束密度の低下と図2(b)に示すような磁束密度分布によりトルクリップルの増加を引き起こし、コンシクエントポール形モータのように同じ二次元断面に磁石極と鉄心極が混在するような場合は、図2(c)に示すように非対称な磁束分布となり、トルクリップルの増大と振動の発生も招くが、そのような恐れはなく、特に極数が少ない場合に有効である。また、順突極構造であるので、強め界磁運転によって大トルクを出すことができ、弱め界磁運転時は弱め磁束は鉄心極17を通るため、永久磁石15,16に反磁界が掛かりにくく、減磁は生じ難い。
さらに、永久磁石15,16を凹部10cに周方向から挿入したので、いわゆるIPM構造となっており、永久磁石15,16の飛散防止のためのバインドが不必要になり、スロット高調波による永久磁石15,16の表面の渦電流損を低減することができる。なお、傘状の突出部10bの傘の柄に相当するブリッジ部10dの幅は、あまり広いと漏れ磁束が多くなり、また狭いと機械的強度が弱くなるので、両方のバランスを取って定める。
実施最良形態3
図4(a)〜(c)はこの発明の実施最良形態3によるベアリングレスモータに適用した順突極モータの回転子の縦断正面図、そのE−E線縦断側面図及びF−F線縦断側面図であり、積層鋼板からなる鉄心10の外周の磁極部分に、外周側がS極の永久磁石11と外周側がN極の永久磁石12を交互に突出して設けて磁石極13を形成する。又、鉄心10の外周の磁極部分に、磁石極13の永久磁石11,12と同じ方向に突出した傘状の突極部10eの凹部10fに外周側がS極の補助磁石18と外周側がN極の補助磁石19とを周方向に挿入して鉄心極20を形成する。そして、磁石極13と鉄心極20とを軸方向に交互に配設して回転子を構成する。
上記した実施最良形態3においては、鉄心極20の傘状の突極部10eを磁石極13の永久磁石11、12と同じ方向に突出させており、正の突極性を有し、回転子を支持する軸支持力を発生させる軸支持磁束が磁気抵抗が小さい鉄心極を通るので、大きな軸支持力を発生させることができ、回転子の安定した位置制御を行うことができる。又、磁石極13と鉄心極20とを軸方向に分離して配置したので、回転子と固定子の間の磁束密度分布が図2(a)に示すように回転方向になだらかになり、トルクリップルを減少させることができ、また永久磁石11,12を磁極の中心に配置できるので、磁束密度の低下による発生トルクの低下を防止することができる。
また、従来の順突極モータは、磁極中央部に鉄心極を設けているため、磁束密度の低下と図2(b)に示すような磁束密度分布によるトルクリップルの増加を引き起こし、コンシクエントポール形モータのように同じ二次元断面に磁石極13と鉄心極20が混在するような場合は、トルクリップルが増大し、振動も発生したが、そのような恐れはなく、特に極数が少ない場合に有効である。また、順突極構造であるので、強め界磁運転によって大トルクを出すことができ、弱め界磁運転時は弱め磁束は鉄心極13を通るため、永久磁石11,12に反磁界が掛かりにくく、減磁は生じ難い。
又、鉄心極20において補助磁石18,19を凹部10fに周方向から挿入しており、永久磁石11,12による磁束漏れを補償するとともに、正の突極性を補強することができる。
この発明の実施最良形態1によるベアリングレスモータに適用した順突極モータの回転子の縦断正面図、そのA−A線縦断側面図及びB−B線縦断側面図である。 SPMモータ及び実施最良形態1による順突極モータの回転子と固定子の間の磁束密度分布図、従来の順突極モータの回転子と固定子の間の磁束密度分布図、及び従来のコンシクエントポール形モータの回転子と固定子の間の磁束密度分布図である。 実施最良形態2によるベアリングレスモータに適用した順突極モータの回転子の縦断正面図、そのC−C線縦断側面図及びD−D線縦断側面図である。 実施最良形態3によるベアリングレスモータに適用した順突極モータの回転子の縦断正面図、そのE−E線縦断側面図及びF−F線縦断側面図である。 従来の非突極性SPMモータの回転子の縦断側面図である。 従来の逆突極モータの回転子の縦断側面図である。 従来の順突極モータの回転子の縦断側面図である。 従来のコンシクエントポール形モータの回転子の縦断側面図である。
符号の説明
4…回転軸
10…鉄心
10a,10e…突極部
10b…突出部
10c,10f…凹部
10d…ブリッジ部
11,12,15,16…永久磁石
13,17…磁石極
14,20…鉄心極
18,19…補助磁石

Claims (3)

  1. 電動機機能と磁気軸受機能とを一体化したベアリングレスモータに適用した順突極モータにおいて、鉄心の外周の磁極部分に、永久磁石を突出して設けた磁石極と、磁石極の永久磁石と同じ方向に突出した突極部を設けた鉄心極とを、軸方向に交互に配設して回転子を構成したことを特徴とするベアリングレスモータに適用した順突極モータ。
  2. 電動機機能と磁気軸受機能とを一体化したベアリングレスモータに適用した順突極モータにおいて、鉄心の外周の磁極部分に、傘状に突出して設けた突出部の凹部に永久磁石を周方向から挿入して形成した磁石極と、磁石極の突出部と同じ方向に突出した突極部を設けた鉄心極とを、軸方向に交互に配設して回転子を構成したことを特徴とするベアリングレスモータに適用した順突極モータ。
  3. 電動機機能と磁気軸受機能とを一体化したベアリングレスモータに適用した順突極モータにおいて、鉄心の外周の磁極部分に、永久磁石を突出して設けた磁石極と、磁石極の永久磁石と同じ方向に突出した傘状の突極部の凹部に補助磁石を周方向から挿入して形成した鉄心極とを、軸方向に交互に配設して回転子を構成したことを特徴とするベアリングレスモータに適用した順突極モータ。
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