JP5043378B2 - Nmrプローブ - Google Patents

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本発明は、同調周波数を可変できるNMRプローブに関し、特に、共振回路を構成するインダクタンス、キャパシタンス等の同調素子を両面に配置した円盤型同調素子ブロックを組み込んだNMRプローブに関する。
図1は、従来のNMR装置の主要部分を示したものである。多重共鳴用NMR装置200の測定においては、磁場補正装置6で制御された室温シム3で磁場ひずみを補正したマグネット2の静磁場内に、試料30を収容した試料管1をセットし、この試料30に静磁場強度に応じた周波数のRFパルスを照射してNMR現象を起こさせる。
その場合、RFパルスは、その試料30中の観測したい核種に応じて、発振器14からのパルス信号を複数の周波数バンド(図示例では3バンド;以下、3バンドで説明する)の中から選択し、それぞれ周波数f1に対応する電力増幅器13、周波数f2に対応する電力増幅器15、周波数f3に対応する電力増幅器16で増幅し、入出力を切り替えるデュプレクサ9を介して多重共鳴用NMRプローブ4に入力することにより、多重共鳴用NMRプローブ4からそれぞれ試料管1中の試料30に照射する。
すると、試料30は、NMR現象により、その核種に固有の共鳴周波数のNMR信号を出力するので、そのNMR信号を多重共鳴用NMRプローブ4で捉える。
そのとき、試料30をある所定の温度で測定する必要がある場合は、多重共鳴用NMRプローブ4内の試料管1周辺の温度を、コンピュータ7で制御される温度可変装置5で可変制御するようになっている。
そして、多重共鳴用NMRプローブ4で捉えられたNMR信号をデュプレクサ9を介して増幅器10に送って増幅した後、復調検波器11でオーディオ周波数に変換し、更に、A/D変換器(ADC)12でデジタル信号に変換する。
こうして、このデジタル信号をコンピュータ7に取り込み、コンピュータ7が信号を分析することにより、試料30が分析され、その分析結果が表示器8に表示されて、多重共鳴用NMR装置により物質の構造が調べられる。
図2は、NMRプローブに組み込まれたRF共振回路を示したものである。左側の従来例1は不平衡型共振回路の例で、C1がチューニングのための同調容量素子、バリコン1がチューニングのための補助同調可変容量素子、バリコン2がマッチングのための整合用可変容量素子である。これらの同調整合部とサンプルコイル部との干渉を避けるため、サンプルコイル部は接地電位の導体製サポートによって同調整合部から電磁気的にシールドされている。そして、サポートに設けられた2つの小孔を介して、サンプルコイル部から2本の引き出し線が引き出され、うち1本は同調整合回路と接続され、もう1本はNMRプローブを取り囲む接地電位の導体製フレームに接続されている。この共振回路は不平衡回路のため、RF磁界の振幅はサンプルコイルの上端で最大となり、サンプルコイルの下端でゼロとなる。
一方、右側の従来例2は平衡型共振回路の例で、C1、C2がチューニングのための同調容量素子、バリコン1がチューニングのための補助同調可変容量素子、バリコン2がマッチングのための整合用可変容量素子である。これらの同調整合部とサンプルコイル部との干渉を避けるため、サンプルコイル部は接地電位の導体製サポートによって同調整合部から電磁気的にシールドされている。そして、サポートに設けられた2つの小孔を介して、サンプルコイル部から2本の引き出し線が引き出され、うち1本は同調整合回路と接続され、もう1本は同調容量素子C2を介してNMRプローブを取り囲む接地電位の導体製フレームに接続されている。この共振回路は平衡回路のため、RF磁界の振幅はサンプルコイルの上下端で最大となり、サンプルコイルの中心でゼロとなる。
このようなRF共振回路において、同調範囲を広げるときは、C1ないしC2を取り外し、別のエレメント(例えば、容量の異なる容量素子やコイルのような誘導素子など)と交換する。この交換は、半田付けではなく、スティックと呼ばれる先端にエレメントを固定したシャフトを抜き差しして行なう(特許文献1、2)。
図3〜4は、それを自動化できるように、マルチエレメント化したものである。このうち、図3に示したタイプの装置は、図2左側の従来例1のような不平衡型共振回路に適用されるもので、同調容量素子C1を別のエレメントと置き換えるのに用いられる。回転シャフト上に設けられた円盤状ディスクに置き換え用のエレメントが配置される。ディスクが回転することにより、エレメントがC1から別のエレメントへと置き換えられる。これにより、従来例1のような不平衡型共振回路の共振周波数をシフトさせ、同調範囲を広げる(特許文献3)。
一方、図4に示したタイプの装置は、図2右側の従来例2のような平衡型共振回路に適用されるもので、同調容量素子C1、C2を対の形で別のエレメントと置き換えるのに用いられる。レール上に設けられた矩形状スライダーに置き換え用のエレメントが対の形で配置される。スライダーが摺動することにより、エレメントがC1、C2のペアから別のエレメントのペアへと置き換えられる。これにより、従来例2のような平衡型共振回路の共振周波数をシフトさせ、同調範囲を広げる。
尚、これらのエレメントは、エレメント間で放電などが起きないように、十分な間隔を置いて配置されている。
実開平2-45477号公報 実開平3-10282号公報 特開平3-223686号公報
このようなマルチエレメント切り替え方式のNMRプローブの問題点は、サンプルコイルのホット端子(接地から浮いている端子)1つにつき、1つのリアクタンス・エレメントを接続することしかできなかったことである。そのため、仮に10pF、20pF、30pFという3つのエレメントがあった場合に、従来のマルチエレメント切換装置では、10pF、20pF、30pFという3通りの選択しかできなかった。
しかしながら、10pF、20pF、30pFという3種類のエレメントがあれば、それらから40pF、50pF、60pFという合成容量を作り出し、それらを選択することも理論上は可能なはずである。もし、その選択が実現されれば、これまでの周波数下限の1/√2倍の周波数まで、サンプルコイルの周波数帯域を下げることが可能になる。
本発明の目的は、上述した点に鑑み、設置されているエレメントの種類を大幅に超える種類のエレメントを提供できるマルチエレメント方式の切り替え機構を備えたNMRプローブを提供することにある。
この目的を達成するため、本発明にかかるNMRプローブは、
NMRプローブ本体内に支持され、非磁性体でできた支持体表面に複数の同調素子を配置して構成した盤状ディスクと、
前記同調素子をNMRプローブ本体内に組み込まれたサンプルコイル、または、該サンプルコイルから引き出された引き出し線と選択的に接触させる接触手段と、
前記盤状ディスクまたは接触手段を回転させる回転駆動手段と
を備え、
前記接触手段は、中心角の異なる複数の導体の扇状片または中心から放射状に延びた導体の線状片を、該中心または該扇状片のかなめを回転中心にして回転させ、該導体片により複数の同調素子間を接続することにより、該複数の同調素子の中から複数種類の異なる組み合わせで単数または複数の同調素子を同時に選択できるようにしたことを特徴としている。
また、前記盤状ディスクまたは接触手段を回転させる回転駆動手段に、ロータリーエンコーダを接続することにより、接触位置の再現性を得るようにしたことを特徴としている。
また、前記盤状ディスクは、シールドされた導体ケースの中に収納されていることを特徴としている。
また、前記シールドされた導体ケースは、接地電位に保たれていることを特徴としている。
また、前記盤状ディスクまたは接触手段は、金めっきしたリン青銅や非磁性真鍮などの非磁性金属で作られていることを特徴としている。
また、前記盤状ディスクまたは接触手段の金めっきの下地には、ニッケルめっきなどの磁性体金属めっきを施さないことを特徴としている。
本発明にかかるNMRプローブによれば、
NMRプローブ本体内に支持され、非磁性体でできた支持体表面に複数の同調素子を配置して構成した盤状ディスクと、
前記同調素子をNMRプローブ本体内に組み込まれたサンプルコイル、または、該サンプルコイルから引き出された引き出し線と選択的に接触させる接触手段と、
前記盤状ディスクまたは接触手段を回転させる回転駆動手段と
を備え、
前記接触手段は、中心角の異なる複数の導体の扇状片または中心から放射状に延びた導体の線状片を、該中心または該扇状片のかなめを回転中心にして回転させ、該導体片により複数の同調素子間を接続することにより、該複数の同調素子の中から複数種類の異なる組み合わせで単数または複数の同調素子を同時に選択できるようにしたので、
設置されているエレメントの種類を大幅に超える種類のエレメントを提供できるマルチエレメント方式の切り替え機構を備えたNMRプローブを提供することが可能になった。
以下、図面に基づいて、本発明の実施例について説明する。図5は、本発明にかかるNMRプローブを説明した図である。
サンプルコイル40からの2本の引き出し線41は、サンプルコイル40と同調整合部42との間を電磁気的にシールドする導体製のサポート43を貫通して、サンプルコイル20側から同調整合部42側に引き出される。引き出し線41は、サポート43と短絡しないように、ガラス製の図示しないブッシュなどで絶縁されている。
2本の引き出し線41は、本発明の核心部分であるエレメント切り替えボックス44に引き込まれ、NMRプローブの同調周波数に応じたエレメントを選択して接続できるような構成を取っている。また、エレメント切り替えボックス44のケースには、非磁性導体製のシールド容器が採用される。このケースは、NMRプローブの図示しない接地電位のフレームに接続され、常に接地電位を保つ。
引き出し線41の片方は、補助同調可変容量素子としてのバリコン1、整合用可変容量素子としてのバリコン2とも接続され、図示しない外部伝送路とサンプルコイル40との同調整合を調整している。バリコン1は、電極の一端が接地されている。それに対して、バリコン2は、電極が接地電位から浮いたホット状態を保っている。
図6は、エレメント切り替えボックス44の中に収められているエレメントの内容を示したものである。エレメント切り替えボックス44の中には、複数の容量素子が納められており、これらのエレメントを回転機構により切り替える。切り替えるに当たっては、単に1個1個のエレメントを選択できるようにするだけでなく、複数個のエレメントの中から任意の組み合わせで複数個のエレメントを選択できるように構成する。
エレメントを選択する接触子は、図7にしめすような扇状の金属片で構成され、その中心角には、0°、90°、180°、270°の4種類がある。中心角0°の金属片は、エレメント1個だけに接触する。中心角90°の金属片は、エレメント2個に接触する。中心角180°の金属片は、エレメント3個に接触する。中心角270°の金属片は、エレメント4個すべてに接触する。これらの接触は、エレメントの並列接続に相当する。
接触子は、好ましくは、リン青銅または非磁性真鍮によって作られる。表面には金めっきを施すが、静磁場への影響を避けるため、金めっきの下地には、ニッケルめっきなど、磁性体金属のめっきは施さない。
このような接触子が回転を伴いながら図8のようにしてエレメントを選択することにより、A、B、C、Dの4個のエレメントから、A、B、C、D、A+B、A+D、B+C、C+D、A+B+C、A+B+D、A+C+D、B+C+D、A+B+C+Dの13通りのエレメントを選択することが可能になる。
図8の例は、盤状ディスク上に4個の異なるエレメントが配置されている場合であるが、本発明はそれに限られない。例えば、図9に示すように、エレメントが2個の場合(配置角180°の場合)は3通り、3個の場合(配置角120°の場合)は7通り、5個の場合(配置角72°の場合)は21通り、6個の場合(配置角60°の場合)は31通りの選択が可能である。
エレメントを選択する接触子(回転子)45は、図10のように、プラスチック製のホルダ46に格納されている。そして、格納されているホルダ46から自動的に接触子45を選んで取り出し、図示しないロータリー・エンコーダを備えた位置再現性を有する回転機構の回転軸に、ラチェット機構によって取り付けるように構成されている。尚、ラチェット機構を含む部品は接地されており、高周波回路としての動作は保証されている。
取り付けられた接触子は、図11に示すように、セクションi(1、2、3、4の4通り)と角度φ(0°、90°、180°、270°の4通り)の2つのパラメータによって制御され、所望のエレメントを選択できるように、ロータリー・エンコーダを備えた位置再現性を有する回転機構の回転により駆動される。NMRの測定条件が変わる毎に、接触子は図示しない自動交換装置によって交換され、必要に応じて回転機構の回転軸に別の接触子と付け替えられる。
こうして、N個のエレメントを盤状ディスク上に等間隔(360°/N)に割り振って、複数のエレメントを選択できるようにしたので、これまでにない広い範囲の周波数設定が可能になった。
尚、上記実施例では、エレメントを角度の均等割りで盤状ディスク上に配置したが、これは必ずしも均等割りである必要はない。
また、接触子の形状は、必ずしも扇状である必要はない。例えば図12の(ア)に示すように、矩形の板を組み合わせた形状としたもの、(イ)に示すように、隣り合わない対向する位置のエレメントの組み合わせを選択できるようにしたもの、(ウ)に示すように、6個割りにして、隣り合わない位置のエレメントの組み合わせを選択できるようにしたもの、などの変形も可能である。
また、接触子側を固定して、盤状ディスク側を回転させても良い。その場合、盤状ディスクの回転軸方向は、回転時の渦電流の発生による静磁場の乱れを回避するために、NMRプローブに印加される静磁場軸とほぼ直交していることが望ましい。もし、回転軸方向がNMRプローブに印加される静磁場軸方向の方向成分を有している場合は、盤状ディスク表面に、周方向に対して交差する向きの溝部を設け、渦電流を遮断させる工夫が必要である。その場合、盤状ディスクの回転時にNMRロックをホールドし、その時間帯だけシム操作を中断し、古いシム情報を保持しても良い。
そうすることにより、従来からあった駆動時の磁場の揺らぎ、ロックの揺らぎが軽減され、測定上の安定度が増すとともに、この揺らぎ時間を無視できるので、待ち時間がいらず、スループットが向上する。
また、上記実施例では、エレメントとして容量素子のみを例に上げたが、容量素子以外に誘導素子(コイル)なども、その対象となるものである。
また、上記実施例では、盤状ディスクをホット側(接地から浮いている側)、接触子を接地側としたが、これは逆であっても良い。
NMRプローブに広く利用できる。
従来の多重共鳴NMR装置を示す図である。 従来の共振回路を示す図である。 従来のエレメントユニットを示す図である。 従来のエレメントユニットを示す図である。 本発明にかかる多重共鳴NMR装置の一実施例を示す図である。 本発明にかかるエレメント切り替えボックスの一実施例を示す図である。 本発明にかかるエレメント切り替えボックスの接触子の一実施例を示す図である。 本発明にかかるエレメント切り替えボックスの切り替え方の一実施例を示す図である。 本発明にかかるエレメント切り替えボックスの別の実施例を示す図である。 本発明にかかるエレメント切り替えボックスの接触子の収納方法を示す図である。 本発明にかかるエレメント切り替えボックスの接触子の制御方法を示す図である。 本発明にかかるエレメント切り替えボックスの接触子の別の制御方法を示す図である。
符号の説明
1:試料管、2:マグネット、3:室温シム、4:NMRプローブ、5:温度可変装置、6:磁場補正装置、7:コンピュータ、8:表示機、9:デュプレクサ、10:増幅器、11:復調検波器、12:ADC、13:電力増幅器、14:発振器、15:電力増幅器、16:電力増幅器、30:試料、40:サンプルコイル、41:引き出し線、42:同調整合部、43:サポート、44:エレメント切り替えボックス、45:接触子、46:ホルダ、200:多重共鳴NMR装置

Claims (6)

  1. NMRプローブ本体内に支持され、非磁性体でできた支持体表面に複数の同調素子を配置して構成した盤状ディスクと、
    前記同調素子をNMRプローブ本体内に組み込まれたサンプルコイル、または、該サンプルコイルから引き出された引き出し線と選択的に接触させる接触手段と、
    前記盤状ディスクまたは接触手段を回転させる回転駆動手段と
    を備え、
    前記接触手段は、中心角の異なる複数の導体の扇状片または中心から放射状に延びた導体の線状片を、該中心または該扇状片のかなめを回転中心にして回転させ、該導体片により複数の同調素子間を接続することにより、該複数の同調素子の中から複数種類の異なる組み合わせで単数または複数の同調素子を同時に選択できるようにしたことを特徴とするNMRプローブ。
  2. 前記盤状ディスクまたは接触手段を回転させる回転駆動手段に、ロータリーエンコーダを接続することにより、接触位置の再現性を得るようにしたことを特徴とする請求項1記載のNMRプローブ。
  3. 前記盤状ディスクは、シールドされた導体ケースの中に収納されていることを特徴とする請求項1または2記載のNMRプローブ。
  4. 前記シールドされた導体ケースは、接地電位に保たれていることを特徴とする請求項3記載のNMRプローブ。
  5. 前記盤状ディスクまたは接触手段は、金めっきしたリン青銅や非磁性真鍮などの非磁性金属で作られていることを特徴とする請求項9または10記載のNMRプローブ。
  6. 前記盤状ディスクまたは接触手段の金めっきの下地には、ニッケルめっきなどの磁性体金属めっきを施さないことを特徴とする請求項5記載のNMRプローブ。
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