JP5042486B2 - 深絞り用高強度鋼板及び溶融めっき冷延鋼板 - Google Patents
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Cは、鋼の強度を制御する最も基本的な元素であり、本発明において極めて重要な元素である。具体的には、Cは、Nb及びTiと結合して炭化物を形成し、高強度化を達成するために極めて有効な元素である。しかしながら、Cが0.015%を超えて添加されると、加工性の低下を招くと共に、溶接継手効率の低下を招くため、C含有量は0.015%以下とする。また、極めて高い加工性を要求される場合には、C含有量を0.0060%以下とすることが好ましい。一方、本発明の冷延鋼板においては、C含有量が低くても、ある程度は他の強化方法で補うことができる。しかしながら、C含有量が0.0005%未満では強度確保が困難になると共に、C含有量を0.0005%未満に低下させるには製鋼時の脱炭コストの上昇を招く。よって、C含有量は0.0005%以上とする。
Siは、固溶強化元素として一般に知られている元素である。しかしながら、Si含有量が多くなると、具体的には、Si含有量が0.50%を超えると、溶融めっき性が損なわれる。よって、本発明においては、Siは0.50%以下の範囲で添加する。一方、Siの含有量が少なくなると、具体的には、Si含有量が0.05%未満になると、鋼板の強度が低下するため、Si含有量は0.05%以上とする。
Mnは、Siと同様に固溶強化により素材強度を上昇させる元素であり、耐二次加工性脆性の向上を目的とした本発明の冷延鋼板を高強度化するために重要な元素の1つである。Mnには、組織を微細化して高強度化する機構と、固溶強化による高強度化機構とがあるが、Mn含有量が1.2%未満の場合、その添加効果が得られない。一方、Mnの含有量が3.0%を超えると、深絞り性の指標であるr値の面内異方性が大きくなり、プレス成形性が損なわれる。よって、Mn含有量は1.2〜3.0%とする。なお、Mn含有量の好ましい範囲は1.4〜2.0%であり、これにより、鋼板の強度及び成形性をより高めることができる。
Pは、添加しても加工性の劣化が少なく、固溶強化で高強度化に有効な元素である。しかしながら、Pは、粒界に偏析して耐二次加工脆性を劣化させると共に、溶接部に凝固偏析を生じ、溶接継手効率を低下させる元素でもある。そこで、本発明においては、粒界への偏析を防止するため、P含有量は0.05%以下とする。なお、P含有量の下限は特に規定する必要はないが、P含有量を0.005%未満にするためには、精錬コストが高くなるため、P含有量は0.005%以上とすることが好ましい。更に、P含有量のより好ましい範囲は、0.01〜0.04%である。
Alは脱酸に必要な元素であり、鋼中の介在物量を減少させ、加工性を良好にする効果がある。しかしながら、Al含有量が0.005質量%では、その効果が得られない。一方、Al含有量が0.090質量%を超えると、クラスター状のアルミナ介在物が多くなり、加工性が低下したり、表面性状が劣化したりする。よって、Al含有量は0.005〜0.090%とする。
Tiは、N及びCとの親和力が強く、凝固時に炭窒化物を形成し、鋼中に固溶しているN及びCを低減して、加工性を高める効果がある。しかしながら、Ti含有量が0.01%未満では、この効果が得られない。一方、Tiの含有量が多くなると、具体的には、Ti含有量が0.060%を超えると、溶接継手の溶接部の強度及び靭性、即ち、溶接継手効率が劣化する。よって、Ti含有量は0.01〜0.060%とする。
Nbは、Tiと同様に炭窒化物を形成し、鋼中に固溶しているN及びCを低減して、加工性を高める効果がある。しかしながら、Nb含有量が0.01%未満では、この効果が得られない。一方、Nb含有量が多くなると、具体的には、Nb含有量が0.150%を超えると、再結晶温度が高くなり、高温焼鈍が必要になるため、r値の面内異方性が大きくなり、プレス成形性が損なわれる。よって、Nb含有量は0.01〜0.150%とする。
Nは鋼の精錬時に不可避的に混入する元素である。また、Nは、Ti、Al及びNbの窒化物を形成し、加工性には悪影響を及ぼさないが、溶接性を劣化させる元素である。このため、N含有量は0.0070%以下に規制する必要がある。一方、N含有量を0.0010%未満に低減するには、製造コストが高くなる。よって、N含有量は0.0010〜0.0070%とする。
Bは、粒界に偏析することにより、粒界強度を高め、耐二次加工脆性を良好にする元素である。しかしながら、B含有量が0.0005%未満の場合、その効果が得られない。一方、B含有量が多くなると、具体的には、B含有量が0.0050%を超えると、その添加効果が飽和するだけでなく、再結晶温度が高くなり、高温焼鈍が必要となるため、製造コストの上昇を招くと共に、加工性が劣化する。よって、B含有量は、0.0005〜0.0050%とする。なお、B含有量の好ましい範囲は、0.0010〜0.0035%である。
前述したように、Pは添加による加工性の劣化が少なく、固溶強化による高強度化に有効な元素である。このため、従来は高強度を得るために、Pを多量に添加する傾向があったが、本発明者等は、強度に対して特定量以上にPを添加すると、具体的には、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が、P含有量(%)の絶対値|P|の104倍以下になると、耐二次加工脆性及び溶接継手効率が急激に劣化することを知見した。よって、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が、P含有量(%)の絶対値|P|の104倍を超えるようにする。一般に、鋼材の引張り強度は、主に鋼成分に依存し、製造条件は副次的に影響する。そこで、鋼成分設計に際しては、P添加量を極力少なくすると共に、溶接性、加工性、耐二次加工脆性、めっき性に悪影響を及ぼさない範囲でSi及びMnの含有量を多くする必要がある。また、製造する際は、強度の低下を防止するため、熱間圧延時の巻取り温度を高温にしないようにすると共に、850℃を超える高温での焼鈍を行わないようにすることが好ましい。
本発明者等は、上記数式(3)により規定されるT*の値が大きくなると、溶接継手効率が劣化することを見出した。なお、上記数式(3)における[Ti]はTi含有量(%)、[N]はN含有量(%)、[P]はP含有量(%)である。T*の値が0.04%以上の場合、特に、低温における継手効率の劣化が顕著となり、脆性破壊破面が生じる温度が高温になって、溶接部の靭性が劣化する。以上の理由から、T*の値を0.04%未満とする。
Niは、Mnと同様に高強度化に有効な元素である。しかしながら、Ni含有量が0.01%未満の場合、その効果が得られない。一方、Niは、1.0%を超えて添加すると、製造コストの上昇を招く。よって、Niを選択元素として添加する場合は、0.01〜1.0%の範囲とする。
Crは、加工性を劣化させることなく、高強度化を実現するために有効な元素である。しかしながら、Cr含有量が0.01%未満では、その効果が得られない。一方、Crの含有量が1.0%を超えると、製造コストの上昇を招くと共に、めっき性が阻害される。よって、選択元素としてCrを添加する場合は、0.01〜1.0%の範囲とする。
Moは、固溶体強化で鋼板の強度を高める元素である。また、本発明者等は、Moを添加することにより、加工性が良好となることを見出した。しかしながら、Mo含有量が0.01%未満の場合、これらの効果が得られない。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、効果が飽和し、製造コストの上昇を招く。よって、本発明においては、Moは、特に加工性が必要となる場合に、0.01〜1.0%の範囲で添加する。
2 溶接部
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.0005〜0.015%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:1.2〜3.0%、
P:0.05%以下、
Al:0.005〜0.090%、
Ti:0.010〜0.060%、
Nb:0.015〜0.025%、
N:0.0010〜0.0070%、
B:0.0010〜0.0050%を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
P含有量(%)を[P]、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満であり、
且つP含有量(%)の絶対値を|P|としたとき、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が下記数式(B)を満たし、溶接継手効率が65%以上であり、
引張り強度が380MPa以上、540MPa未満であり、耐二次加工脆性及び溶接継ぎ手効率に優れた深絞り用高強度冷延鋼板。
- 質量%で、
C:0.0005〜0.015%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:1.2〜3.0%、
P:0.05%以下、
Al:0.005〜0.090%、
Ti:0.010〜0.060%、
Nb:0.015〜0.025%、
N:0.0010〜0.0070%、
B:0.0010〜0.0050%を含有すると共に、
Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%及びMo:0.01〜1.0%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
P含有量(%)を[P]、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満であり、
且つP含有量(%)の絶対値を|P|としたとき、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が下記数式(B)を満たし、溶接継手効率が65%以上であり、
引張り強度が380MPa以上、540MPa未満であり、耐二次加工脆性及び溶接継ぎ手効率に優れた深絞り用高強度冷延鋼板。
- 質量%で、C:0.0005〜0.015%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.05%以下、Al:0.005〜0.090%、Ti:0.010〜0.060%、Nb:0.015〜0.025%、N:0.0010〜0.0070%、B:0.0010〜0.0050%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、P含有量(%)を[P]、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成の溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、
前記スラブを熱間圧延して熱延コイルを得る工程と、
前記熱延コイルを50%以上の圧延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延板とする工程と、
前記冷延板を再結晶温度以上の温度で焼鈍する工程と、を有し、
P含有量(%)の絶対値を|P|としたとき、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が下記数式(B)を満たし、溶接継手効率が65%以上であり、
引張り強度が380MPa以上、540MPa未満であり、耐二次加工脆性及び溶接継ぎ手効率に優れた深絞り用高強度冷延鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.0005〜0.015%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.05%以下、Al:0.005〜0.090%、Ti:0.010〜0.060%、Nb:0.015〜0.025%、N:0.0010〜0.0070%、B:0.0010〜0.0050%を含有すると共に、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%及びMo:0.01〜1.0%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、P含有量(%)を[P]、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成の溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、
前記スラブを熱間圧延して熱延コイルを得る工程と、
前記熱延コイルを50%以上の圧延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延板とする工程と、
前記冷延板を再結晶温度以上の温度で焼鈍する工程と、を有し、
P含有量(%)の絶対値を|P|としたとき、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が下記数式(B)を満たし、溶接継手効率が65%以上であり、
引張り強度が380MPa以上、540MPa未満であり、耐二次加工脆性及び溶接継ぎ手効率に優れた深絞り用高強度冷延鋼板の製造方法。
- 冷延鋼板と、
前記冷延鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を有し、
前記冷延鋼板は、C:0.0005〜0.015%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.05%以下、Al:0.005〜0.090%、Ti:0.010〜0.060%、Nb:0.015〜0.025%、N:0.0010〜0.0070%、B:0.0010〜0.0050%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、P含有量(%)を[P]、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成を有し、
且つ前記冷延鋼板のP含有量(%)の絶対値を|P|としたとき、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が下記数式(B)を満たし、溶接継手効率が65%以上であり、
引張り強度が380MPa以上、540MPa未満であり、耐二次加工脆性及び溶接継ぎ手効率に優れた溶融めっき冷延鋼板。
- 冷延鋼板と、
前記冷延鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を有し、
前記冷延鋼板は、質量%で、C:0.0005〜0.015%、Si:0.05〜0.50%%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.05%以下、Al:0.005〜0.090%、Ti:0.010〜0.060%、Nb:0.015〜0.025%、N:0.0010〜0.0070%、B:0.0010〜0.0050%を含有すると共に、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%及びMo:0.01〜1.0%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、P含有量(%)を[P]、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成を有し、
且つ前記冷延鋼板のP含有量(%)の絶対値を|P|としたとき、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が下記数式(B)を満たし、溶接継手効率が65%以上であり、
引張り強度が380MPa以上、540MPa未満であり、耐二次加工脆性及び溶接継ぎ手効率に優れた溶融めっき冷延鋼板。
- 質量%で、C:0.0005〜0.015%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.05%以下、Al:0.005〜0.090%、Ti:0.010〜0.060%、Nb:0.015〜0.025%、N:0.0010〜0.0070%、B:0.0010〜0.0050%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、P含有量(%)を[P]、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成の溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、
前記スラブを熱間圧延して熱延コイルを得る工程と、
前記熱延コイルを50%以上の圧延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延鋼板とする工程と、
前記冷延鋼板を再結晶温度以上の温度で焼鈍すると共に、その冷却過程において前記冷延鋼板の表面に溶融めっきを施す工程と、を有し、
前記冷延鋼板のP含有量(%)の絶対値を|P|としたとき、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が下記数式(B)を満たし、溶接継手効率が65%以上であり、
引張り強度が380MPa以上、540MPa未満であり、耐二次加工脆性及び溶接継ぎ手効率に優れた溶融めっき冷延鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.0005〜0.015%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.05%以下、Al:0.005〜0.090%、Ti:0.010〜0.060%、Nb:0.015〜0.025%、N:0.0010〜0.0070%、B:0.0010〜0.0050%を含有すると共に、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%及びMo:0.01〜1.0%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、P含有量(%)を[P]、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成の溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、
前記スラブを熱間圧延して熱延コイルを得る工程と、
前記熱延コイルを50%以上の圧延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延鋼板とする工程と、
前記冷延鋼板を再結晶温度以上の温度で焼鈍すると共に、その冷却過程において前記冷延鋼板の表面に溶融めっきを施す工程と、を有し、
前記冷延鋼板のP含有量(%)の絶対値を|P|としたとき、引張り強度TS(MPa)の絶対値|TS|が下記数式(B)を満たし、溶接継手効率が65%以上であり、
引張り強度が380MPa以上、540MPa未満であり、耐二次加工脆性及び溶接継ぎ手効率に優れた溶融めっき冷延鋼板の製造方法。
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- 2005-11-10 JP JP2005326652A patent/JP5042486B2/ja active Active
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