JP5039003B2 - 高速磁場解析方法、高速磁場解析プログラム、および記録媒体 - Google Patents

高速磁場解析方法、高速磁場解析プログラム、および記録媒体 Download PDF

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本発明は、磁場解析方法、磁場解析プログラム、および磁場解析プログラムを記録した記録媒体に関するものである。
従来の代表的な非線形磁場解析法として、有限要素法による解析法があり、ICCG法(不完全コレスキー分解前処理付き共役勾配法)による反復解法や透磁率を逐次修正するニュートン・ラフソン法を併用している方法もある。この方法は、例えば非特許文献1に示されている。
「電気工学の有限要素法」中田高義・高橋則雄著、森北出版、1986年
有限要素法で磁場解析する場合の一般的な方法として、磁気ベクトルポテンシャルAを用いたA法で記述すると、変位電流の影響が無視できる準静的な場の基礎方程式は、
Figure 0005039003
となる。ここで、νは磁気抵抗率(透磁率の逆数)、σは導電率、Jはコイルの電流密度ベクトル、Mは磁石の残留磁束密度ベクトルである。なお、磁石に関しては、便宜上、H=ν(B−M)とした。Bは磁束密度ベクトル、Hは磁場ベクトルである。
磁気抵抗率νは場に依存するため、式(1)は非線形になり、通常ニュートン・ラフソン法を用いて解を求めている。すなわち、式(1)を離散化し、境界条件を考慮して、最終的に得られる行列方程式の解を反復解法で求めるが、ニュートン・ラフソン法では、解の補正項を順次求めて、それまでに求めた解に補正項を加える形で計算を進める。
しかし、この補正項を加えても行列方程式に関する残差(近似解を代入したときの誤差)はなかなか小さくならず解の収束性が悪いため、反復回数が増大して解析の高速化を阻んでいる。このため、非線形磁場解析、特に回転機における過渡的な非線形の磁場解析が困難である。
上記課題を解決するために、本発明に係る高速磁場解析方法は次のような特徴を有する。
演算装置により、有限要素法を用いて且つ複数のタイムステップにおける演算処理を行って非線形磁場の過渡解析を行う高速磁場解析方法であって、第1タイムステップで用いる磁場解析のための行列方程式の反復解法における第1の収束判定値、第1タイムステップで用いる非線形磁場解析に関する第2の収束判定値、および第2タイムステップ以降の少なくとも1つのタイムステップで用いる非線形磁場解析における単純反復計算に関する第3の収束判定値を記載した入力データファイルと、解析対象を含む解析空間のメッシュデータファイルとから、それぞれの入力情報を読み取るプロセスと、第1タイムステップにおいて、前記行列方程式の反復解法、前記第1の収束判定値、および前記第2の収束判定値を使用して磁場そのものを解くプロセスと、第2タイムステップ以降の少なくとも1つのタイムステップにおいて、前記非線形磁場解析における単純反復計算、および前記第3の収束判定値を使用して、前タイムステップからの磁場の変動量を求めるプロセスとを有し、前記第2タイムステップ以降の少なくとも1つのタイムステップにおける非線形磁場解析における前記単純反復計算に、3×3のテンソルで表される磁気抵抗率を使用することを特徴とする。
また、前記磁場そのものは、磁気ベクトルポテンシャルから求め、前記前タイムステップからの磁場の変動量は、前タイムステップからの前記磁気ベクトルポテンシャルの変動量から求める。
さらに、上記課題を解決する本発明に係る高速磁場解析プログラムは、上記の高速磁場解析方法における一連のプロセスをコーディングしていることを特徴とする。
また、上記課題を解決する本発明に係る記録媒体は、上記の高速磁場解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であることを特徴とする。
本発明による高速磁場解析方法によれば、磁性材料を含む体系の非線形磁場の過渡解析において、従来のニュートン・ラフソン法による解析よりも数倍高速に解析できる。
以下、本発明の実施例を詳述する。なお、本実施例では、過渡的な非線形磁場を解く磁場解析法として有限要素法を利用している。また、式(1)で用いた記号を使用する。
実施例1では、本発明による高速磁場解析方法について説明する。本高速磁場解析方法は、タイムステップごとに磁場を求める。
まず第1タイムステップでは、磁気ベクトルポテンシャルAを未知数として、式(1)を離散化し、一般的な有限要素法で磁場を求める。
第2タイムステップ以降の少なくとも1つの任意のタイムステップにおいては、前タイムステップからの磁気ベクトルポテンシャルAの変動量であるΔAのみを単純反復法で解く。本実施例では、第2タイムステップ以降の全てのタイムステップにおいてΔAのみを単純反復法で解くものとする。本発明は、これに限るものではなく、第2タイムステップ以降であれば、1つまたは複数の任意のタイムステップにおいてΔAのみを単純反復法で解くようにすることができる。第2タイムステップ以降においてΔAを解く方程式は、
Figure 0005039003
である。ここで、Hは前タイムステップにおける磁場ベクトル、Δtはタイムステップ幅である。また、νは差分磁気抵抗率テンソルであり、式(3)、(4)で定義された3×3のテンソルで表される量である。
Figure 0005039003
Figure 0005039003
ν’は差分磁気抵抗率であり、磁化曲線において前タイムステップでの(Bm,Hm)と現在のタイムステップでの(Bm,Hm)の2点の勾配によって定義される値である。すなわち、
ν’=(Hm―Hm)/(Bm―Bm
と表される。ここで、Bmは磁束密度の大きさ、Hmは磁界強度の大きさを意味する。
本高速磁場解析方法では、この3×3のテンソルで表される差分磁気抵抗率テンソルνを用いる。
磁場解析において、計算値が収束したかどうかを判定するのに、収束判定値を用いる。本実施例では、第1タイムステップで用いる行列方程式の反復解法における第1の収束判定値、第1タイムステップで用いる非線形磁場解析に関する第2の収束判定値、および第2タイムステップ以降で用いる非線形磁場解析における単純反復計算に関する第3の収束判定値を用いる。これらの収束判定値は、入力データファイルに記載されており、入力データとして入力される。
ここで、図7を用いて、第1タイムステップにおける磁場解析のプロセス10を説明する。第1タイムステップの磁場解析では、磁気ベクトルポテンシャルAそのものを解くが、従来の磁場解析法と同様の方法を用いることができる。
まず、第1タイムステップの磁場解析の前処理として、ステップ101において、前述した3つの収束判定値、解析空間のメッシュデータ、境界条件や物性値などの解析条件データなど、解析に必要な入力データを入力する。入力方法は、例えば、これらの入力データを記載したファイルを読み込むものとする。
ステップ102から第1タイムステップの磁場解析が始まる。ステップ102において、入力データを基に、磁気ベクトルポテンシャルAを計算するための行列方程式を作成する。
ステップ103で、ステップ102で作成した行列方程式を反復解法で解き、Aを算出する。このときの収束判定に、第1の収束判定値を用いる。例えば、Aに関する行列方程式の相対残差が収束判定値以下になったときを収束とする。
ステップ104で、Aの補正量δAを計算するための行列方程式を作成する。
ステップ105で、ステップ104で作成した行列方程式を反復解法で解き、δAを算出する。このときの収束判定にも、第1の収束判定値を用いる。例えば、δAに関する行列方程式の相対残差が収束判定値以下になったときを収束とする。
ステップ106で、ステップ103で求めたAにステップ105で求めたδAを加え、Aを更新する。
ステップ107では、第2の収束判定値を用い、以上の反復解法による非線形磁場解析で求めたAが収束したかどうかを判定する。例えば、Aに関する行列方程式の相対残差が収束判定値以下になったときを収束とする。
収束していない場合は、ステップ104に戻り、上記の反復解法による非線形磁場解析を収束するまで繰り返す。
ステップ107でAが収束した場合、第2タイムステップ以降における磁場解析のプロセス20に移行する。
次に、図1を用いて、第2タイムステップ以降における磁場解析のプロセス20を説明する。第2タイムステップ以降では、前タイムステップからの磁気ベクトルポテンシャルAの変動量であるΔAのみを単純反復法で解く。
第1タイムステップでの磁場解析のプロセス10の終了後、ステップ11において、差分磁気抵抗率ν’を前タイムステップと同じ値に設定する。
ステップ12で、式(3)により、差分磁気抵抗率テンソルνを計算する。
ステップ13で、有限要素法により、磁気ベクトルポテンシャルの変動量ΔAを求める。ここでは、第1タイムステップでの磁場解析のプロセス10と同じ方法で、ΔAを求めることができる。
ステップ14では、求めたΔAから磁束密度の変動量ΔBが、ΔB=rotΔAとして求まる。
ステップ15で、第3の収束判定値を用い、ステップ14で求めたΔBが収束したかどうかを判定する。すなわち、求めたΔBと1つ前の計算で求めたΔBとの差が第3の収束判定値以内であれば、ΔBが収束したと判定する。
収束していない場合は、ステップ16に戻り、差分磁気抵抗率ν’を更新し、収束するまで上記の処理を繰り返す。すなわち、ステップ12で差分磁気抵抗率テンソルν、ステップ13でΔA、ステップ14でΔBを、それぞれ計算しなおし、ステップ15で収束を判定する。
ステップ15でΔBが収束した場合、次のタイムステップに移行し、ステップ11に戻ってΔBを求める。このとき、ΔAを解く際の単純反復法における解の収束を速めるために、第3タイムステップ以降においては、差分磁気抵抗率ν’など、前タイムステップでの磁場の変動量に関する解を初期解に設定する。
以上のようにして、各タイムステップでのΔBを求めることにより、非線形磁場の過渡解析を行うことができる。
本実施例では、式(2)を用いることにより、磁場が回転しているような状況でも、磁束密度ベクトルBと磁場ベクトルHとを常に平行状態に維持しながら、式(1)と等価な解析が可能になる。
本実施例において、3つの収束判定値を入力データとして入力したが、第2タイムステップ以降における行列方程式の反復計算(ステップ13)に関する収束判定値は、第1タイムステップにおけるそれとは別に第4の収束判定値として設定してもよく、この場合は入力する収束判定値の総数は4個になる。
磁性体の透磁率を時間的に一定にした線形磁場解析において、本実施例による高速磁場解析方法を用いて、コイル電流の変化率を一定にした過渡解析を実施した場合、本高速磁場解析方法では第2ステップ目以降は場の変動量を求めているため、第3ステップ目以降のコイル電流の変動量は、第2ステップ目のものと同一になる。従って、場の変動量であるΔAは、第2ステップ目以降は同じ解となるため、第3ステップ目以降の行列の反復解法における反復数は1回ですむ。この場合、コイル電流の変動量が不変であるので、現在のタイムステップについては、計算自体を実施せずに、前タイムステップと同じ解というように処理しても良い。このように、磁性体の透磁率を時間的に一定にした線形磁場解析において、コイル電流の変化率を一定にした過渡解析を実施した場合、第2ステップ目以降の解が同一になるというのは、場の変動量を解いていることに他ならない。
本実施例によれば、従来の磁場そのものを解く非線形解析法に比べて、高速に収束解が得られるという効果がある。
図2を用いて、実施例2について述べる。実施例2は、実施例1の高速磁場解析方法を、回転機の磁場解析に適用した例である。解析対象は、回転子と固定子とからなり、図2はそれらを含む空間のメッシュ図の一部である。回転子は、タイムステップ毎に回転させる。
解析空間を、回転子21を含む回転子空間31と固定子22を含む固定子空間32とに分割し、回転子空間31と固定子空間32との境界23において、回転方向に角度幅Δθで等間隔にメッシュ分割する。角度幅Δθは、予め定めておき、入力データとして入力しておくことができる。図2の例では、境界23以外の部分も等間隔にメッシュ分割しているが、回転方向に等間隔にメッシュ分割するのは、境界23の部分だけでも良い。
この解析モデルに対し、回転子空間31と固定子空間32のメッシュを変形せずに、メッシュの整合性を保ったままで、回転子空間31を角度幅Δθあるいはその整数倍ずつ回転させながら、回転機を解析する。図2の例では、角度幅Δθずつ回転させた例を示している。
このような計算体系に対し、実施例1に述べた高速磁場解析方法で磁場計算を行う。すなわち、第1タイムステップにおいては、磁気ベクトルポテンシャルAを未知数として、式(1)を離散化して有限要素法で計算する。第2タイムステップ以降においては、磁気ベクトルポテンシャルAの前タイムステップからの変動量であるΔAのみを、式(2)を離散化して有限要素法で計算する。
回転子の回転速度が変化する場合は、タイムステップ幅を一定にすると、回転子空間31のタイムステップ毎の回転角がΔθの整数倍からずれてしまい、メッシュ形状が歪んでしまう。これを防止するため、本実施例では、回転子の回転速度の変化に合わせてタイムステップ幅Δtを変更し、次のタイムステップに移るときは、常に回転子のメッシュが固定子のメッシュと整合するようにして、回転子空間を角度幅Δθまたはその整数倍回転させるようにする。このようにすれば、回転速度が変化する体系であっても、回転子のメッシュと固定子のメッシュとの不整合を防ぐことができる。従って、メッシュ形状を歪ませることなく、また、回転による急激なメッシュ形状の変更を伴うこともなく解析できるので、高精度な解析が可能になる。
実施例3は、実施例1の高速磁場解析方法を、電磁鋼板を積み重ねた積層構造における磁場解析に適用した例である。
このような積層構造の体系に対しては、式(3)に示した差分磁気抵抗率テンソルνを式(5)で表されるνに置き換えると、磁場解析が可能になる。このνは、積層構造による磁気抵抗の異方性を考慮した差分磁気抵抗率テンソルであり、3×3のテンソルで表される量である。ただし、この場合は渦電流の発生がないことを前提にしている。
Figure 0005039003
式(5)に示した差分磁気抵抗率テンソルνの式に出てくる各種量は、式(6)〜式(10)に示されている。
Figure 0005039003
Figure 0005039003
Figure 0005039003
Figure 0005039003
Figure 0005039003
ここで、αは電磁鋼板の占積率であり、典型的には0.95〜0.98程度の値をもつ。N//は積層方向磁気抵抗率を、Nは積層方向に垂直な方向の磁気抵抗率を表す。また、ν0は空気(真空)の磁気抵抗率である。
本実施例によれば、積層構造による磁気抵抗の異方性を考慮した磁場解析が、第2ステップ目以降は高速で計算できるようになる。
実施例4は、磁場を解くのに辺要素有限要素法を用いる場合の例である。この場合、磁気ベクトルポテンシャルAのタイムステップごとの変動量ΔAは、要素(メッシュ)の辺jに設定された未知変数Δaと、辺jに関する辺要素基底関数Nを用いて式(11)のように表せる。
Figure 0005039003
式(2)の両辺に重みNをかけて解析空間にて積分すると、式(12)で表される離散化式が得られる。
Figure 0005039003
本実施例は、例えば、厚みgの薄い絶縁層が2個の磁性体に挟まれている解析空間を解く場合に極めて有効である。この場合、薄い絶縁層を無限に薄いギャップ要素としてモデル化すると、式(12)の離散化式における左辺第1項の空間積分項は、式(13)のように薄い絶縁層の面に関する表面積分項として表現できる。
Figure 0005039003
このように空間積分(体積積分)をせずに面積分を行うことで、薄い絶縁層がある場合でも、扁平要素が発生しないために、解の収束性の悪化を防ぐことができる。
実施例5について、図3を用いて説明する。本実施例は、解析空間50に磁性体41とコイル42とが存在し、コイル電流により発生する磁場を解析する例である。図3は、解析空間50のメッシュ図である。
ビオ・サバール場による磁気ベクトルポテンシャルの、各タイムステップのコイル電流による変動量をΔAとおくと、磁気ベクトルポテンシャルの各タイムステップの変動量ΔAは、ΔA=ΔA+ΔAと書ける。ここで、ビオ・サバール場とは、コイル電流のみが存在する空気領域において、コイル電流により誘起される場のことを指す。また、磁気ベクトルポテンシャルΔAをトータルポテンシャルとする。ΔAは、変形ポテンシャルの各タイムステップの変動量であり、変形ポテンシャルとは、解析空間50において、トータルポテンシャルからビオ・サバール場による磁気ベクトルポテンシャルを引いたポテンシャルである。
図3に示すように、解析空間50の場の変動量を、ΔAで表現する領域であるトータルポテンシャル領域51、ΔAで表現する変形ポテンシャル領域52、およびΔAとΔAの両方を使う2ポテンシャル境界層53に領域分けする。トータルポテンシャル領域51と変形ポテンシャル領域52は、2ポテンシャル境界層53で重なっており、2ポテンシャル境界層53は、メッシュ1層分の幅をもつ領域である。トータルポテンシャル領域51には、磁性体41が存在し、変形ポテンシャル領域52にはコイル42が存在する。
トータルポテンシャル領域51の空気領域では、ΔAは数14を満たし、変形ポテンシャル領域52の空気領域では、ΔArは式(15)を満たす。
Figure 0005039003
Figure 0005039003
式(14)と式(15)を離散化すると、それぞれ式(16)と式(17)が得られる。
Figure 0005039003
Figure 0005039003
以下、
Figure 0005039003
と記す。
図4は、図3に示した解析空間50のうち、2ポテンシャル境界層53がポテンシャル領域51と変形ポテンシャル領域52とに接する箇所を、説明のためにそれぞれ部分的に取り出して表示したものである。図4に示すように、2ポテンシャル境界層53において、各メッシュの辺に辺j1と辺j2とを設定する。辺j1は、2ポテンシャル境界層53のトータルポテンシャル領域51に接する辺であり、辺j2は、2ポテンシャル境界層53の辺j1以外の辺、すなわち、トータルポテンシャル領域51と接していない辺である。
式(16)と式(17)は、j1とj2を用いて、式(19)と式(20)に変形できる。
Figure 0005039003
Figure 0005039003
さらに、Δaj1とΔaj2をまとめて未知変数Δxと表記すると、式(19)と式(20)は、式(21)と式(22)となる。
Figure 0005039003
Figure 0005039003
右辺のΔa j1、Δa j2は、コイル電流が自由空間(解析空間で物体をすべて取り除いた空間)で誘起する磁気ベクトルポテンシャルの変動量の辺j1、j2上への射影成分を、その辺上で線積分した量であり、容易に計算できる。未知変数Δxに関する連立方程式である式(21)と式(22)を解くことにより、磁気ベクトルポテンシャルの変動量ΔAを求めることができる。
本実施例によると、コイルメッシュは、解析空間に形成する必要がなく、解析空間とは別に設けることができるため、コイル形状が複雑な場合やコイルが移動する場合でも、メッシュ作成や解析が便利になるという利点がある。また、本実施例でも、磁気ベクトルポテンシャルの各タイムステップの変動量を解いているため、高速で磁場解析を実行できる。
実施例6について、図5を用いて説明する。図5は、導電体61と導電体62との間に薄い絶縁層63が挟まれている体系のメッシュ図である。
このような体系の磁場解析において、薄い絶縁層63には、図5に示すように、メッシュ分割による要素を割り当てず、節点70を導電体61と導電体62の境界面上に二重に設定することでモデル化する。それぞれの節点70上には電気スカラポテンシャルφを設定する。なお、導電体61と導電体62の節点70のうち、薄い絶縁層63が存在する境界面以外の節点70での電気スカラポテンシャルφは、0に設定することもできる。
この電気スカラポテンシャルφを用いた磁場解析の基本式は、
Figure 0005039003
Figure 0005039003
である。さらに第2タイムステップ以降の場の変動量に関する方程式は、
Figure 0005039003
Figure 0005039003
である。導電体61と導電体62の境界面上に二重に設定された電気スカラポテンシャルφやその変動量Δφについては、自然境界条件(φやΔφの値を設定しない)で解く。
本実施例によれば、薄い絶縁層が存在する解析空間の場合でも、薄い絶縁層を扁平な要素でモデル化しないため、解の収束性が良いという利点がある。また、第2タイムステップ以降では、電気スカラポテンシャルφの変動量Δφについて解いているので、高速に磁場解析ができるという利点もある。
本発明の実施例1から6を実現する解析システムの一例を、図6に示す。本解析システムは、計算機1、表示装置2、記憶媒体3、および入力装置4から構成される。図6では、記憶媒体3は、明示するために計算機1の外に出しているが、計算機1の内部に設置しても良い。計算機1には、上記に示した実施例のうち、少なくともいずれか1つのアルゴリズムに基づくプログラムが格納されているものとする。入力装置4は、例えばキーボードやマウスであり、前述した少なくとも3つの収束判定値、解析空間のメッシュデータ、解析条件データなど解析に必要な入力データの計算機1への入力、入力データを保存したデータファイルの読み書きの指定、計算の実行などに使用する。入力データの入力後、格納されているプログラムに従い、計算機1が入力データの読み取りや磁場計算などの演算処理を実行する。計算結果は、表示装置2に表示するとともに、データファイルとして記憶媒体3に記憶する。得られた計算結果の一部を表示したり記憶したりしてもよい。タイムステップを刻みながらの解析になるため、記憶媒体3に記憶したデータを再利用しながら、計算を進めていくことになる。
第2タイムステップ以降における磁場解析のプロセスを示す図。 実施例2の回転子と固定子とを含む空間のメッシュ図。 実施例5の磁性体とコイルとを含む解析空間のメッシュ図。 実施例5において、2ポテンシャル境界層の辺を表す記号を説明する図。 実施例6の導電体間に薄い絶縁層が挟まれている体系のメッシュ図。 実施例1から6を実現する解析システムの一例を示す図。 第1タイムステップにおける磁場解析のプロセスを示す図。
符号の説明
1…計算機、2…表示装置、3…記憶媒体、4…入力装置、10…第1タイムステップでの磁場解析のプロセス、20…第2タイムステップ以降の磁場解析のプロセス、21…回転子、22 …固定子、23…回転子空間と固定子空間との境界、31…回転子空間、32…固定子空間、41…磁性体、42…コイル、50…解析空間、51…トータルポテンシャル領域、52…変形ポテンシャル領域、53…2ポテンシャル境界層、61、62…導電体、63…薄い絶縁層、70…節点。

Claims (11)

  1. 演算装置により、有限要素法を用いて且つ複数のタイムステップにおける演算処理を行って非線形磁場の過渡解析を行う高速磁場解析方法であって、
    前記演算装置が、第1タイムステップで用いる磁場解析のための行列方程式の反復解法における第1の収束判定値、第1タイムステップで用いる非線形磁場解析に関する第2の収束判定値、および第2タイムステップ以降の少なくとも1つのタイムステップで用いる非線形磁場解析における単純反復計算に関する第3の収束判定値を記載した入力データファイルと、解析対象を含む解析空間のメッシュデータファイルとから、それぞれの入力情報を読み取るプロセスと、
    前記演算装置が、第1タイムステップにおいて、前記行列方程式の反復解法、前記第1の収束判定値、および前記第2の収束判定値を使用して磁場そのものを解くプロセスと、
    前記演算装置が、第2タイムステップ以降の少なくとも1つのタイムステップにおいて、前記非線形磁場解析における単純反復計算、および前記第3の収束判定値を使用して、前タイムステップからの磁場の変動量を求めるプロセスと、を有し、
    前記演算装置が、前記第2タイムステップ以降の少なくとも1つのタイムステップにおける非線形磁場解析における前記単純反復計算に、3×3のテンソルで表される磁気抵抗率を使用すること、
    を特徴とする高速磁場解析方法。
  2. 請求項1記載の高速磁場解析方法において、前記磁場そのものは、前記演算装置が磁気ベクトルポテンシャルから求め、前記前タイムステップからの磁場の変動量は、前記演算装置が前タイムステップからの前記磁気ベクトルポテンシャルの変動量から求める高速磁場解析方法。
  3. 請求項1記載の高速磁場解析方法において、前記第2タイムステップ以降の少なくとも1つのタイムステップは、前記演算装置が、前タイムステップからの磁気ベクトルポテンシャルの変動量と電気スカラポテンシャルの変動量とから、前記前タイムステップからの磁場の変動量を求める高速磁場解析方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項記載の高速磁場解析方法において、
    回転機を解析する場合には、前記解析空間は、前記演算装置によって、回転子を含む回転子空間と固定子を含む固定子空間とに分割され、
    この解析空間のメッシュデータは、前記演算装置によって、これら回転子空間と固定子空間との境界が回転方向に予め定めた角度幅Δθで等間隔にメッシュ分割されており、
    磁場解析の際には、前記演算装置が、この回転子空間のメッシュを角度幅Δθまたはその整数倍回転させて解析する高速磁場解析方法。
  5. 請求項4記載の高速磁場解析方法において、
    前記回転子の回転速度を変化させる解析をする場合は、前記演算装置が、前記回転子空間のメッシュと前記固定子空間のメッシュとが整合するように、タイムステップ幅を前記回転子の回転速度の変化に合わせて変化させる高速磁場解析方法。
  6. 請求項1記載の高速磁場解析方法において、
    前記磁気抵抗率は、前記解析空間の異方性を考慮した3×3のテンソルで表されることを特徴とする高速磁場解析方法。
  7. 請求項1記載の高速磁場解析方法において、
    前記解析空間に薄い絶縁層が含まれる場合には、この薄い絶縁層は無限に薄いギャップ要素でモデル化され、前記演算装置が、このモデル化により空間積分が面積分に置き換えられた方程式を解いて解析を行う高速磁場解析方法。
  8. 請求項3記載の高速磁場解析方法において、
    前記解析空間には2つの導電体とこれらの導電体に挟まれた薄い絶縁層とが含まれ、前記演算装置により、この薄い絶縁層にはメッシュ分割による要素が割り当てられず面上に節点が二重に設定され、前記演算装置が、これらの節点に電気スカラポテンシャルが設定されている解析空間を解析する高速磁場解析方法。
  9. 請求項1記載の高速磁場解析方法において、
    前記解析空間には磁性体とコイルとが含まれ、
    前記演算装置は、磁気ベクトルポテンシャルをトータルポテンシャルとし、コイル電流が前記解析空間の空気領域に誘起するビオ・サバール場による磁気ベクトルポテンシャルを前記トータルポテンシャルから引いたポテンシャルを変形ポテンシャルとし、
    前記演算装置が、前記磁性体が存在して前記トータルポテンシャルを未知変数とする領域と、前記コイルが存在して前記変形ポテンシャルを未知変数とする領域と、前記トータルポテンシャルと前記変形ポテンシャルの2つのポテンシャルを未知変数とする2ポテンシャル境界層とに区分されている解析空間を解析する高速磁場解析方法。
  10. 請求項1から9のいずれか1項記載の高速磁場解析方法における一連のプロセスを演算装置に実行させるための高速磁場解析プログラム。
  11. 請求項1から9のいずれか1項記載の高速磁場解析方法における一連のプロセスを演算装置に実行させるための高速磁場解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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