以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する前に、本発明を理解する上で参考になる参考形態に係るプリンタについて説明する。まず、参考形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、参考形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図のプリンタは、トナー像生成プロセスを実施するプロセスユニットとして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)用の4つのプロセスユニット1Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。Yトナー像を生成するためのプロセスユニット1Yを例にすると、これは図2に示すように、感光体ユニット2Yと現像ユニット7Yとを有している。これら感光体ユニット2Y及び現像ユニット7Yは、プロセスユニット1Yとして一体的にプリンタ本体に対して着脱される。但し、プリンタ本体から取り外した状態では、現像ユニット7Yを感光体ユニット2Yに対して着脱することができる。
感光体ユニット2Yは、潜像担持体たるドラム状の感光体3Y、ドラムクリーニング装置4Y、図示しない除電装置、帯電装置5Yなどを有している。
帯電装置5Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる感光体3Yの表面を一様帯電せしめる。同図においては、図示しない電源によって帯電バイアスが印加されながら、図中反時計回りに回転駆動される帯電ローラ6Yを感光体3Yに近接させることで、感光体3Yを一様帯電せしめる方式の帯電装置5Yを示した。帯電ローラ6Yの代わりに、帯電ブラシを当接させるものを用いてもよい。また、スコロトロンチャージャーのように、チャージャー方式によって感光体3Yを一様帯電せしめるものを用いてもよい。帯電装置5Yによって一様帯電せしめられた感光体3Yの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザ光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
現像手段たる現像ユニット7Yは、第1搬送スクリュウ8Yが配設された第1剤収容部9Yを有している。また、透磁率センサからなるトナー濃度センサ(以下、トナー濃度センサという)10Y、第2搬送スクリュウ11Y、現像ロール12Y、ドクターブレード13Yなどが配設された第2剤収容部14Yも有している。これら2つの剤収容部内には、磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとからなる図示しないY現像剤が内包されている。第1搬送スクリュウ8Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、第1剤収容部9Y内のY現像剤を図紙面に直交する方向における手前側から奥側へと搬送する。そして、第1剤収容部9Yと第2剤収容部14Yとの間の仕切壁に設けられた図示しない連通口を経て、第2剤収容部14Y内に進入する。
第2剤収容部14Y内の第2搬送スクリュウ11Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、Y現像剤を図中奥側から手前側へと搬送する。搬送途中のY現像剤は、第1剤収容部14Yの底部に固定されたトナー濃度センサ10Yによってそのトナー濃度が検知される。このようにしてY現像剤を搬送する第2搬送スクリュウ11Yの図中上方には、現像ロール11Yが第2搬送スクリュウ11Yと平行な姿勢で配設されている。この現像ロール11Yは、図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる非磁性パイプからなる現像スリーブ15Y内にマグネットローラ16Yを内包している。第2搬送スクリュウ11Yによって搬送されるY現像剤の一部は、マグネットローラ16Yの発する磁力によって現像スリーブ15Y表面に汲み上げられる。そして、現像部材たる現像スリーブ15Yと所定の間隙を保持するように配設されたドクターブレード13Yによってその層厚が規制された後、感光体3Yと対向する現像領域まで搬送され、感光体3Y上のY用の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体3Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール12Yの現像スリーブ15Yの回転に伴って第2搬送スクリュウ11Y上に戻される。そして、図中手前端まで搬送されると、図示しない連通口を経て第1剤収容部9Y内に戻る。
トナー濃度センサ10YによるY現像剤の透磁率の検知結果は、電圧信号として図示しない制御部に送られる。Y現像剤の透磁率は、Y現像剤のYトナー濃度と相関を示すため、トナー濃度センサ10YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。上記制御部はRAMを備えており、この中にトナー濃度センサ10Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefや、他の現像ユニットに搭載されたC,M,K用のトナー濃度センサからの出力電圧の目標値であるC用Vtref、M用Vtref、K用Vtrefのデータを格納している。Y用の現像ユニット7Yについては、トナー濃度センサ10Yからの出力電圧の値とY用Vtrefを比較し、図示しないY用のトナー供給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。この駆動により、現像に伴うYトナーの消費によってYトナー濃度を低下させたY現像剤に対し、第1剤収容部9Yで適量のYトナーが供給される。このため、第2剤収容部14Y内のY現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他色用のプロセスユニット(1C,M,K)内における現像剤についても、同様のトナー供給制御が実施される。
感光体3Y上に形成されたYトナー像は、後述する中間転写ベルトに中間転写される。感光体ユニット2Yのドラムクリーニング装置4Yは、中間転写工程を経た後の感光体3Y表面に残留したトナーを除去する。これによってクリーニング処理が施された感光体3Y表面は、図示しない除電装置によって除電される。この除電により、感光体3Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。先に示した図1において、他色用のプロセスユニット1C,M,Kにおいても、同様にして感光体3C,M,K上にC,M,Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト上に中間転写される。
プロセスユニット1Y,C,M,Kの図中下方には、光書込ユニット20が配設されている。潜像形成手段たる光書込ユニット20は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lを、各プロセスユニット1Y,C,M,Kの感光体3Y,C,M,Kに照射する。これにより、感光体3Y,C,M,K上にY,C,M,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット20は、光源から発したレーザ光Lを、モータによって回転駆動される図示しないポリゴンミラーによって偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y,C,M,Kに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LDEアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
光書込ユニット20の下方には、給紙カセット31が配設されている。この給紙カセット31内には、それぞれ、記録部材たる記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、一番上の記録紙Pには、給紙ローラ31aが当接している。給紙ローラ31aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめられると、給紙カセット31内の一番上の記録紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路33に向けて排出される。
プリンタの筺体の側面には、手差しトレイ32が筺体に対して開閉可能に設けられており、筺体に対して開いた状態では、その裏面を鉛直方向上方に向ける。この状態で裏面に記録紙Pが載置される。そして、給紙ローラ32aの回転駆動によって記録紙Pを給紙路33に向けて送り出す。なお、記録紙Pとして、はがきのような厚紙が用いられる場合には、給紙カセット31ではなく、手差しトレイ32から給紙される。ここで言う厚紙とは、坪量150[g/m2]以上(連量135kg以上)の記録紙のことである。
給紙路33の末端には、送出手段としてのレジストローラ対35が配設されている。レジストローラ対35は、給紙路33内の搬送ローラ対34から送られてくる記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
各プロセスユニット1Y,C,M,Kの図中上方には、可視像担持体たる中間転写ベルト41を張架しながら図中反時計回りに無端移動せしめる転写ユニット40が配設されている。転写手段たる転写ユニット40は、中間転写ベルト41の他、ベルトクリーニングユニット42、第1ブラケット43、第2ブラケット44などを備えている。また、4つの1次転写ローラ45Y,C,M,K、2次転写バックアップローラ46、駆動ローラ47、補助ローラ48、テンションローラ49なども備えている。中間転写ベルト41は、これら8つのローラに張架されながら、駆動ローラ47の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。4つの1次転写ローラ45Y,C,M,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト41を感光体3Y,C,M,Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト41の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト41は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体3Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト41上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
2次転写バックアップローラ46は、中間転写ベルト41のループ外側に配設された2次転写ローラ50との間に中間転写ベルト41を挟み込んでいる。これにより、可視像担持体たる中間転写ベルト41のおもて面と、当接体たる2次転写ローラ50との当接による2次転写ニップが形成されている。
先に説明したレジストローラ対35は、ローラ間に挟み込んだ記録紙Pを、中間転写ベルト41上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、2次転写ニップに向けて送り出す。一方、2次転写ニップの入口付近には、案内手段100が配設されている。送出手段たるレジストローラ対35から送り出された記録紙Pは、その画像記録対象面(中間転写ベルトとの対向面)の先端部が案内手段100に突き当たることで、2次転写ニップ入口近傍に向けて案内される。そして、2次転写ニップ内に進入する。
中間転写ベルト41上の4色トナー像は、2次転写バイアスが印加される2次転写ローラ50と2次転写バックアップローラ46との間に形成される2次転写電界や、ニップ圧の影響により、2次転写ニップ内で記録紙Pに一括2次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト41には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニングユニット42によってクリーニングされる。このベルトクリーニングユニット42は、クリーニングブレード42aを中間転写ベルト41のおもて面に当接させており、これによってベルト上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
2次転写ニップの図中上方には、定着ユニット60が配設されている。この定着ユニット60は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ61と、これに所定の圧力で当接している加圧ローラ62とによって定着ニップを形成している。
定着ユニット60のケーシング内には、図示しない温度センサが加熱ローラ61の表面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、加熱ローラ61の表面温度を検知する。この検知結果は、図示しない定着電源回路に送られる。定着電源回路は、温度センサによる検知結果に基づいて、加熱ローラ61に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。これにより、加熱ローラ61の表面温度が約140[°]に維持される。
可視像担持体たる中間転写ベルト41と、当接体たる2次転写ローラ50との当接による2次転写ニップを通過した記録紙Pは、中間転写ベルト41から分離された後、定着ユニット60内に送られる。そして、定着ユニット60内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト64によって加熱されたり、押圧されたりして、フルカラートナー像が定着せしめられる。
このようにして定着処理が施された記録紙Pは、排紙ローラ対67のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ本体の筺体の上面には、スタック部68が形成されており、排紙ローラ対67によって機外に排出された記録紙Pは、このスタック部68に順次スタックされる。
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、プロセスユニット1Y,C,M,Kと、光書込ユニット20と、転写ユニット40との組み合わせにより、可視像担持体たる中間転写ベルト41の表面に可視像たるトナー像を形成する可視像形成手段が構成されている。
なお、本プリンタは、一般ユーザーでは殆ど需要のない大型サイズの記録紙Pにも対応しているいわゆる広幅対応機となっている。具体的には、最大でA2サイズ紙に対応しており、それを縦方向(長手方向に沿って)に搬送しながらそれに画像を形成することができる。このため、中間転写ベルト41として、A2サイズ紙の短手方向長さ(420mm)よりも広幅のものを用いている。また、各感光体(3Y〜K)として、その軸線方向の寸法がA2サイズ紙の短手方向長さよりも長いものを用いている。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図3は本プリンタにおける2次転写ニップとその周囲構成とを拡大して示す拡大構成図である。同図において、送出手段たるレジストローラ対35から送り出された記録紙Pは、2枚の搬送路形成板37,38の間に形成されるニップ上流搬送路39に沿って搬送される。一方の搬送路形成板37の末端付近には、案内手段100が配設されており、記録紙Pの画像記録対象面(2次転写ニップで中間転写ベルト41に対向する面)に突き当たりながら、記録紙Pを2次転写ニップ近傍に向けて案内する。この案内手段100は、中間転写ベルト41及び2次転写ローラ50に対して非接触に配設されている。
図4は、案内手段100を拡大して示す拡大斜視図である。案内手段100はL字綱状のホルダー(保持体)101、案内部102、止め板103等を有している。ホルダー101における板状保持部101aの一方の面は、プリンタ本体に固定された際にニップ上流搬送路(図3の39)に対向する。そして、この一方の面に案内部102を片持ち支持している。また、他方の面には、止め板103を片持ち支持している。このような支持により、止め板103は、案内部102における記録紙との接触面とは反対側の面に対して、板状保持部101aの厚み分の間隙を介して対向している。
同図における矢印Aは、図示しない記録紙の搬送方向を示している。案内部102における図中手前側の面は、記録紙に接触しながら記録紙を2次転写ニップ近傍に向けて案内するガイド面となっており、その面方向は搬送中の記録紙の面方向となる。また、案内部102は、良好な可撓性を発揮する板材の切り抜き加工によって形成されたものであり、その自由端側には記録紙搬送方向に延在する複数の細長い切り欠き(スリット)が記録紙搬送方向と直交する搬送直交方向(図中矢印B方向)に並ぶように設けられている。これにより、案内部102の自由端側では、記録紙に接触する可撓性部材からなる複数の可撓性案内部102a,b,c,d,eが搬送直交方向に並んでいる。即ち、案内手段100は、搬送直交方向に並ぶ複数の可撓性案内部(102a〜e)を片持ち支持している。案内部102の板材としては、ポリエステルシートのような樹脂シート材や、金属薄板を例示することができる。
止め板103は矩形の板材からなり、この板材は案内部102の板材よりも高剛性の材料である。即ち、本プリンタでは、複数の可撓性案内部102a〜eよりも剛性の高い材料からなる高剛性部材としての止め板103を、それら可撓性案内部102a〜eにおける記録紙との接触面とは反対側の面に所定の間隙を介して対向させている。
先に図3に示したように、案内手段100は、案内部102の支持端側を記録紙搬送方向上流側に向けながら、案内部102の自由端側を記録紙搬送方向下流側に向ける姿勢でプリンタ本体に固定される。そして、案内部102(可撓性案内部102a〜e)は、自由端側を2次転写ローラ50の周面における2次転写ニップ入口近傍箇所に向けて真っ直ぐに延ばしている。
図3において、ニップ上流搬送路39は、レジストローラ対35から、案内手段100の案内部102における自由端側(図4の可撓性案内部102a〜e)に向けて真っ直ぐに延びている。このため、レジストローラ対35から送り出された記録紙Pは、図示のように、その画像記録対象面(図中左側の面)の先端部を案内部102の自由端側(可撓性案内部102a〜e)に突き当てる。
同図においては、記録紙Pとして腰の弱い薄紙が用いられた例を示している。画像記録対象面の先端部を案内部102の自由端側に突き当てた記録紙P(薄紙)は、案内部102の自由端側の延在方向に沿って、図示のように先端部を2次転写ニップ側から2次転写ローラ側に向けて湾曲させる。これにより、2次転写ニップに向けて真っ直ぐに案内されるのではなく、2次転写ローラ50の周面における2次転写ニップ近傍領域に向けて屈曲しながら案内される。このように、記録紙Pとしての薄紙を2次転写ローラ50に向けて案内することで、薄紙のニップ進入タイミングの遅れを低減することができる。
先に図4に示した案内部102における複数の可撓性案内部102a〜eは、自らに突き当たる記録紙の腰の強さによっては、真っ直ぐな姿勢を維持することができずに止め板103に向けて撓む。但し、可撓性案内部102a〜eの全てが常に記録紙に突き当たるのではなく、突き当たる可撓性案内部の数が記録紙の幅(搬送直交方向の寸法)に応じて異なってくる。記録紙の幅が大きくなるほど、その記録紙に突き当たる可撓性案内部の数が多くなるのである。かかる構成では、記録紙に突き当たった個々の可撓性案内部における自由端側の撓み量が、記録紙の幅とは無関係に、記録紙の厚みや材質だけに応じた値になる。
図5は、ニップ上流搬送路内で搬送されるA2サイズの薄紙P1と、これに突き当てられた案内手段100とを示す拡大斜視図である。A2サイズの薄紙P1が用いられた場合には、図示のように、5つの可撓性案内部102a〜eの全てが薄紙P1に突き当たる。そして、これら5つの可撓性案内部102a〜eにおける合計の曲げ強度が、A2サイズの薄紙P1の曲げ強度に勝るため、5つの可撓性案内部102a〜eは撓まずに真っ直ぐな姿勢を維持する。その代わりに、A2サイズの薄紙P1が突き当たり部で撓んで大きく湾曲する。これにより、A2サイズの薄紙P1が可撓性案内部102a〜eの延在方向に沿って搬送されて、図示しない2次転写ローラ(50)の周面における2次転写ニップ近傍領域に案内される。
図6は、ニップ上流搬送路内で搬送されるA4サイズの薄紙P2と、これに突き当てられた案内手段100とを示す拡大斜視図である。A4サイズの薄紙P2が用いられた場合には、図示のように、5つの可撓性案内部102a〜eのうち、可撓性案内部102b,c,dの3つが薄紙P2に突き当たる。これら3つの可撓性案内部102b,c,dにおける合計の曲げ強度も、A4サイズの薄紙P2の曲げ強度に勝るため、3つの可撓性案内部102b,c,dは撓まずに真っ直ぐな姿勢を維持する。その代わりに、A4サイズの薄紙P2が突き当たり部で撓んで大きく湾曲する。これにより、A4サイズの薄紙P2も、A2サイズの薄紙と同様に、図示しない2次転写ローラ(50)の周面における2次転写ニップ近傍領域に向けて屈曲しながら案内される。このように、本プリンタにおいては、記録紙として薄紙が用いられた場合には、その幅にかかわらず、その先端側を案内部102との突き当たりに伴って湾曲せしめて、2次転写ローラ(50)の周面における2次転写ニップ近郷領域に向けて案内する。これにより、どのような幅の薄紙であっても、そのニップ進入タイミングの遅れを低減することができる。
上述したように、先に示した図3においては、記録紙Pとして腰の弱い薄紙が用いられた例を示している。薄紙の場合には、これまで説明してきたように、薄紙の先端側が内部102との突き当たりに伴って湾曲する。腰の弱い薄紙であれば、このように湾曲しても、2次転写ニップにおいて中間転写ベルト41や2次転写ローラ50の線速に影響を与えることはない。一方、記録紙Pとして腰の強い厚紙が用いられた場合に、その先端側が図示のように湾曲したとする。すると、腰の強い厚紙による湾曲部を復元しようとする力が、2次転写ニップで厚紙に圧接している中間転写ベルト41や2次転写ローラ50の表面移動方向に働いて、それらの表面速度を速めてしまうことがある。厚紙が湾曲部を復元しようとする力は、2次転写ニップ上流側の湾曲量や、厚紙の挙動によって微妙に変化するため、中間転写ベルト41や2次転写ローラの表面線速が不規則に変動してしまう。
本プリンタでは、複数の記録紙Pに対して画像を連続的に出力する連続プリントモードにおいて、次のような動作を行う。即ち、中間転写ベルト41に予め1次転写しておいたトナー像を2次転写ニップで記録紙P上に2次転写する。同時に、中間転写ベルト41の周面における2次転写ニップ通過領域に対して、後続の記録紙Pのためのトナー像を各感光体上から重ね合わせて1次転写する。この1次転写の際に、2次転写ニップに進入している記録紙Pとしての厚紙の湾曲に起因して中間転写ベルト41の線速が不規則に変化すると、1次転写中の4色トナー像に色ズレが発生してしまう。
図7は、ニップ上流搬送路内で搬送されるA2サイズの厚紙P3と、これに突き当てられた案内手段100とを示す拡大斜視図である。本プリンタにおいて、A2サイズの厚紙P3が用いられた場合には、図示のように、5つの可撓性案内部102a〜eの全てが厚紙P3に突き当たる。そして、これら5つの可撓性案内部102a〜eにおける合計の曲げ強度が、A2サイズの厚紙P2の曲げ強度よりも劣るため、5つの可撓性案内部102a〜eは大きく撓む。すると、A2サイズの厚紙P3が突き当たり部で湾曲することなく、図示しない2次転写ニップ入口に向けて真っ直ぐに進む。これにより、A2サイズの厚紙P3の先端側が2次転写ニップ入口の近傍で湾曲することによる中間転写ベルト41や2次転写ローラ50の線速変動を解消することができる。
案内手段100には、上述したように、高剛性部材たる止め板103を可撓性案内部102a〜eの記録紙との接触面とは反対側の面に所定の間隙を介して対向させている。この止め板103が無い場合には、A2サイズの厚紙P3の先端側が何らかの理由によって止め板103側(ベルト側に相当)にカールしていると、厚紙P3の先端部が2次転写ニップに向けて真っ直ぐに進まずに、図示しない中間転写ベルト(図3の41)に向けて進む。そして、2次転写ニップ入口に到達する前に中間転写ベルトに突き当たる。カール量によっては、突き当たり後にベルト表面に沿って逆戻りするように裏まわりしてしまうおそれがある。そこで、本プリンタでは、止め板103を設けている。この止め板103は、カールしている厚紙P3が裏まわりしそうになるのに伴って更なる撓み力を可撓性案内部102a〜eに付与して可撓性案内部102a〜eを過剰に撓ませようとすると、可撓性案内部102a〜eに突き当たって過剰な撓みを阻止する。これにより、厚紙P3の裏まわりが阻止される。
図8は、ニップ上流搬送路内で搬送されるA4サイズの厚紙P4と、これに突き当てられた案内手段100とを示す拡大斜視図である。A4サイズの厚紙P4が用いられた場合には、図示のように、5つの可撓性案内部102a〜eのうち、可撓性案内部102b,c,dの3つが厚紙P4に突き当たる。これら3つの可撓性案内部102b,c,dにおける合計の曲げ強度も、A4サイズの厚紙P4よりも劣るため、3つの可撓性案内部102b,c,dが厚紙P4との突き当たりに伴って図示のように大きく撓む。すると、A4サイズの厚紙P4が突き当たり部で湾曲することなく、図示しない2次転写ニップ入口に向けて真っ直ぐに進む。これにより、A4サイズの厚紙P3の先端側が2次転写ニップ入口の近傍で湾曲することによる中間転写ベルト41や2次転写ローラ50の線速変動を解消することができる。このように、本プリンタにおいては、記録紙として厚紙が用いられた場合には、その幅にかかわらず、可撓性案内部の自由端側を厚紙との突き当たりに伴って大きく撓ませて、厚紙の先端部を2次転写ニップに向けて真っ直ぐに搬送される。これにより、どのような幅の厚紙であっても、中間転写ベルト41の線速変動による画像乱れ(本プリンタでは色ズレ)の発生を抑えることができる。
図9は、本発明を完成させる前に本発明者らが行った実験で使用した試作機に搭載された案内手段100Aを、A4サイズの厚紙P4とともに示す拡大斜視図である。試作機では、図示のように、案内手段100Aの案内部102Aとして、その自由端側に複数の可撓性案内部を設けていない矩形状のものを用いていた。この案内部102Aの曲げ強度については、A2サイズの厚紙に合わせて設定していた。かかる構成では、A2サイズの厚紙を用いた場合には、案内部102Aの自由端側を厚紙との突き当たりに伴って十分に撓ませて、厚紙を図示しない2次転写ニップに向けて案内することが可能である。しかしながら、A4サイズの厚紙が用いられた場合には、その腰の強さが案内部102Aの自由端側の腰の強さに十分に勝らなくなる。そして、図示のように、案内部102Aの幅方向における全領域のうち、自らが接触している領域を僅かに撓ませるだけで、自らの先端部も湾曲させる。これにより、湾曲に起因する中間転写ベルト(41)の線速変動を十分に抑えることができなかった。
次に、実施形態に係るプリンタついて説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施形態に係るプリンタの構成は、参考形態と同様である。
図10は、実施形態に係るプリンタにおける案内手段の案内部102を示す拡大平面図である。このプリンタの案内部102は、図示のように、102a〜iという9個の可撓性案内部を有している。
同図におけるR1,R2,R3,R4,R5,R6は、A2サイズ縦搬送、A4サイズ横搬送、A4サイズ縦搬送、官製はがき横搬送、A6サイズ縦搬送、官製はがき縦搬送、でのプリントを行った場合の記録紙の通過領域を示している。よって、R1,R2,R3,R4,R5,R6の図中左右方向の長さは、420mm,297mm,210mm,148mm,105mm,100mmである。本プリンタでは、記録紙をその幅にかかわらず搬送路の中心に位置させて搬送し、且つトナー像を記録紙の幅にかかわらず各感光体の軸線方向の中心を基準にして形成するいわゆるセンター基準を採用している。このため、図示のように、R1〜R6の6つの領域は、それぞれ中心位置が一致している。
9個の可撓性案内部102a〜iは、それぞれ両端位置がR1〜R6の6つの領域における両端からずれた位置にある。即ち、本プリンタでは、案内手段として、板材からなる複数の可撓性案内部102a〜iの搬送直交方向における両端位置をそれぞれ、図示しないレジストローラ対35から送り出されてくる定型サイズの記録紙の搬送直交方向における両端位置からずらしたもの、を用いている。かかる構成では、定型サイズの記録紙が用いられた場合には、その記録紙の搬送方向両端を、可撓性案内部102a〜iの端に引っ掛けることがなくなる。これにより、定型サイズの厚紙を、複数の可撓性案内部102a〜iのうち、厚紙に接触しなかったことで撓まなかった厚紙の両側の可撓性案内部に引っ掛けてしまうことによる厚紙のスキューの発生を回避することができる。
なお、センター基準を採用したプリンタにおける例について説明したが、記録紙の幅にかかわらず、記録紙を搬送直交方向の一端側に寄せて搬送する片端基準を採用していもよい。
図11は、実施形態に係るプリンタに対し、より特徴的な構成を負荷した第1実施例に係るプリンタの案内手段100を示す拡大斜視図である。この案内手段100における案内部102は、自由端側の切り欠きとして、矩形状のものではなく、記録紙搬送方向下流側に向けて末広がりとなるV字状のものが設けられている。これにより、案内部102の自由端側における可撓性案内部102a〜eは、それぞれ搬送方向下流側に向けて先細になる台形状の形状になっている。即ち、本プリンタでは、案内手段100として、板材からなる複数の可撓性案内部102a〜eにおける記録紙との接触面が記録紙搬送方向上流側から下流側に向けて先細になっているもの、を用いている。
かかる構成では、殆どのサイズの厚紙について、そのスキューを防止することができる。具体的には、可撓性案内部102a〜eが先細になっていると、図14に示すように、最大サイズを除く殆どのサイズでは、それに接触しながら撓んでいる可撓性案内部(図示の例では102b〜d)のうち、両端側の2つの可撓性案内部(図示の例では102b、d)の端面が、その厚紙の両端にそれぞれ接触する。これにより、搬送方向から傾いて移動しようとする厚紙をその両端側から押さえて、スキューを防止することができる。
なお、案内部102の自由端側の切り欠きとして、末広がりのV字状のものに代えて、図12に示すような末広がりの台形状のものを設けてもよい。また、他の形状の切り欠きであっても、可撓性案内部を先細にできればよい。
図13は、参考形態に係るプリンタにの変形例におけるプリンタの案内手段100を示す拡大斜視図である。この案内手段100の案内部102は、ホルダー101の板状保持部101aに固定された支持体としての支持板102jと、これに植毛された複数の起毛102kとを有している。複数の起毛102kは、それぞれ支持板102jによって記録紙搬送方向上流端が片持ち支持されている。そして、支持板102j上で搬送直交方向に並びつつ、搬送方向に延在して自由端側を図示しない2次転写ローラ(50)に向けている。
かかる構成においては、複数の起毛102kをそれぞれ、可撓性案内部として機能させることができる。そして、板状の可撓性案内部を用いる場合に比べて、可撓性案内部をより多く設けることができる。
次に、実施形態に係るプリンタに対し、より特徴的な構成を付加した第2実施例に係るプリンタについて説明する。第2実施例に係るプリンタにおいては、先に図4に示した案内手段100の案内部102として、金属薄板や、導電性粉末が分散せしめられた導電性樹脂シートなどといった、導電性板材(導電性材料)からなるものを用いている。また、ホルダー101として、金属からなるものを用いている。そして、金属製のホルダー101を介して、案内部102を電気的に接地している。かかる構成では案内部102に接触した記録紙Pを除電することが可能である。そして、これにより、搬送中に摩擦帯電してしまった記録紙Pをそのまま2次転写ニップに送り込むことに起因する転写チリや白抜け画像の発生を回避することができる。なお、案内部102の電気抵抗については、108[Ωm]以下にすることが望ましい。
これまで、電子写真方式のプリンタの例について説明したが、他の方式によって画像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。例えば、特許文献2に記載のような、直接記録方式の画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。直接記録方式とは、トナー飛翔装置からドット状に飛翔させたトナーの集合体を記録紙や中間記録ベルトに付着させることで、潜像担持体を介さずに画像を直接記録する方式である。特許文献2の画像形成装置は、可視像担持体たる無端状のベルト部材の上方に、ベルト移動方向に沿って所定のピッチで並ぶ4つのトナー飛翔装置を有している。記録手段としてのこれらトナー飛翔装置は、それぞれドット状のトナー集合体をベルト部材に向けて複数飛翔させてベルト部材上に複数のドットを得る。これにより、互いに異なる色のトナー像をベルト部材上に重ね合わせて記録して4色重ね合わせ像を形成した後、2次転写ニップで記録紙に2次転写する。かかる構成においても、厚紙の湾曲に起因するベルト部材の線速変動によって色ズレが起こってしまうので、本発明が有効である。
以上、実施形態や各実施例に係るプリンタにおいては、可視像担持体として、複数の張架部材(張架ローラ)によって張架されながら無端移動せしめられる無端状のベルト部材たる中間転写ベルト41を用いている。また、可視像形成手段として、複数の単色トナー像をそれぞれ中間転写ベルト41のおもて面に重ね合わせて多色画像を形成するもの、を用いている。かかる構成では、可視像担持体の線速変動による画像乱れとして特に目立ち易い色ズレの発生を抑えることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、案内手段100として、複数の可撓性案内部102a〜eがそれぞれ可撓性の板材からなるもの、を用いている。かかる構成では、板材を切り抜き加工によって複数の可撓性案内部102a〜eを容易に形成し得る案内部102を用いることで、鋳型堅めなどといった可撓性案内部の形成に手間のかかる案内部を用いる場合に比べて、製造コストを低減することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、案内手段100として、板材からなる複数の可撓性案内部102a〜iの搬送直交方向における両端位置をそれぞれ、レジストローラ対35から送り出された定型サイズの記録紙Pの搬送直交方向における両端位置からずらしたもの、を用いている。かかる構成では、上述したように、定型サイズの厚紙の端を、厚紙両端側の可撓性案内部に引っ掛けてしまうことによる厚紙のスキューの発生を回避することができる。
また、第1実施例に係るプリンタにおいては、案内手段100として、板材からなる複数の可撓性案内部102a〜eにおける記録紙Pとの接触面が記録紙搬送方向上流側から下流側に向けて先細になっているもの、を用いている。かかる構成では、上述したように、殆どのサイズの厚紙について、そのスキューを防止することができる。
また、参考形態の変形例に係るプリンタにおいては、案内手段100として、複数の可撓性案内部がそれぞれ支持体たる支持板102jに植毛された起毛102kからなるもの、を用いているので、板状の可撓性案内部を用いる場合に比べて、可撓性案内部をより多く設けることができる。
また、実施形態や各実施例に係るプリンタにおいては、複数の可撓性案内部よりも剛性の高い材料からなる高剛性部材としての止め板103を、それら複数の可撓性案内部における記録紙Pとの接触面とは反対側の面に所定の間隙を介して対向させている。かかる構成では、上述したように、カールしている厚紙が裏まわりしそうになるのに伴う可撓性案内部102a〜eの過剰な撓みを阻止することで、厚紙の裏まわりを阻止することができる。
また、第2実施例に係るプリンタにおいては、案内手段100として、複数の可撓性案内部102a〜eがそれぞれ導電性材料からなるもの、を用い、それら可撓性案内部102a〜eを接地している。かかる構成では、搬送中に摩擦帯電してしまった記録紙Pをそのまま2次転写ニップに送り込むことに起因する転写チリや白抜け画像の発生を回避することができる。