JP5033739B2 - 応力測定方法およびその装置 - Google Patents
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Description
このため、従来より、特に超音波を用いてこれら各部材の内部応力を厳密に測定しようとする試みが、例えば下記特許文献1に示すように、比較的多くなされている。
更に、この特許文献1にかかる発明は、縦波と横波の音速比Rと応力σとの関係に関して技術的な関連性が未開示であり、産業上の利用性に欠けるという不都合があった。
そして、この場合、課題解決のための手法として、本発明では、被測定物の素材が備えている固有の常数(応力依存係数α)をまず算定し、これに基づいて被測定物内の内部応力をリアルタイムで具体的に測定するようにした点に特徴を有する。
即ち、装備されたままの状態の被測定物について、その現実の音の伝搬時間tを測定する。この場合の測定のタイミングは、前述した第1乃至第2の各工程の前でも或いはその後であってもよい。
更に、測定した音の伝搬時間を直接利用するようにしたので、測定した音の伝搬時間から音速を算出する等の手間(演算)が不要となり内部応力σの算定時間の短縮化を図ることができる。
この場合、前記第4の工程で設定した未知の内部応力σの算定式は、σ=f(Δt,α)として、σ={E/(1−α)}・(Δt/t0 )が採用されている。
ここで、Δtは、Δt=t−t0 であり、記号tは未知の荷重が付された状態の被測定物の測定箇所における音伝搬時間を示す。
このようにすると、被測定物内に生じている未知の内部応力σの大きさを、音の伝搬時間情報を使用して具体的に算定することができる。
ここで、応力依存係数αを算定する算定式としては、α={1−(Δtn /t0 )(E/σn )}に代えて、
このようにすると、被測定物の素材固有の応力依存係数αが具体的に算定され、これに基づいて被測定物内に生じている未知の内部応力σの大きさが、音の伝搬時間情報を測定することでリアルタイムで具体的に且つ迅速に算定される。
この場合、第4の工程で設定した内部応力σの算定式σ=f(Δt,α)として、
σ=−{E/(ν+α)}・(Δt/t0 )、(ここで、νは被測定物の素材のポアソン比、以下同じ)が採用されている。ここで、Δtは、Δt=t−t0 であり、記号tは未知の荷重が付された状態の被測定物の測定箇所における音伝搬時間を示す。
更に、荷重σn の印加方向に対して直交する方向に超音波を伝搬させるようにしたので、例えば音の伝搬時間の測定に際しては超音波センサ等の装着領域を広範囲から選択することができ、かかる点において作業性能率の向上を期待することができる。
α={−ν−(Δtn /t0 )(E/σn )}、を採用し、これに基づいて前述した被測定物の素材の応力依存係数αを算定するようにした。
このため、一定条件のもとに応力依存係数αが具体的に数値として特定されることから、前述した請求項1記載の応力測定方法の場合と同様に、これに基づいて被測定物内に生じている未知の内部応力σを、リアルタイムで且つ円滑に算定することが可能となる。
ここで、応力依存係数αを算定する算定式としては、α={−ν−(Δtn /t0 )(E/σn )}に代えて、
この場合、この請求項5乃至10に記載の各応力測定装置は、それぞれ音伝搬時間測定手段と、応力依存係数αを算定する応力依存係数算定手段と、音伝搬時間にかかるデータおよび応力依存係数α等に基づいて被測定物の内部応力σを演算し算定する主演算部とを、共通の基本構成として備えている。
又、上記各部材の音の伝搬時間測定に際しては、必要に応じて、荷重σn が、予め別に準備された荷重印加手段によって被測定物に対して印加されるようにしてもよい。
σ=f(Δt,α)により演算しその結果を出力する応力算定機能を備えたものとなっている。
σ=f(Δt,α)={E/(1−α)}・(Δt/t0 )、に基づいて前述した被測定物の内部応力σを具体的に演算する構成とした(請求項5乃至7)。
このようにすると、荷重印加方向と同方向に超音波を伝搬させた場合に得られる音の伝搬時間情報に基づいて、被測定物の未知の内部応力σを、測定条件に合わせて具体的に且つ迅速に演算し算出することが可能となる。
α={1−(Δtn /t0 )(E/σn )}
を採用すると共に、これに基づいて前記被測定物にかかる素材固有の応力依存係数αを演算し算定する応力依存係数算定機能とを備えて構成した(請求項6)。
このため、荷重の印加方向と同方向に超音波を伝搬させた場合に得られる音の伝搬時間情報に基づいて、当該被測定物の応力依存係数αを有効に且つ具体的に算定することができる。
このようにすると、荷重の印加方向と同方向に超音波を伝搬させた場合に得られる音の伝搬時間情報に基づいて当該被測定物の応力依存係数αを高精度に且つ有効に算定することができ、ひいては、被測定物の内部応力σの算定精度を向上させることができる点で都合がよい。
前述した主演算部が、次式
σ=f(Δt,α)=−{E/(ν+α)}・(Δt/t0 )
に基づいて当該被測定物の未知の内部応力σを具体的に演算するように構成してもよい(請求項8乃至10)。
この音伝搬時間にかかる情報および前記印加荷重σn にかかる情報等に基づいて応力依存係数αを算定する算定式として、α={−ν−(Δtn /t0 )(E/σn )}、を採用すると共に、これに基づいて被測定物の素材固有の応力依存係数αを演算し算定する応力依存係数算定機能を備えた構成としてもよい。
このようにしても、荷重印加方向に直交する方向に超音波を伝搬させた場合に得られる音の伝搬時間情報に基づいて当該被測定物の応力依存係数αを、具体的に且つ有効に算定することができる。
図1乃至図2において、音伝搬時間測定手段11は、本実施形態では、製品や素材或いは装置若しくは建造物等に装備され未知の荷重が印加された状態の被測定物1について所定箇所の対向面相互間Lを伝搬する音の伝搬時間tを超音波を用いて測定する第1の音伝搬時間測定機能を備えている。又、この音伝搬時間測定手段11は、被測定物1の素材について前記所定箇所の対向面相互間L0 を伝搬する音の伝搬時間を無負荷時若しくはこれに近い状態の伝搬時間t0 と所定の荷重を変化させながら印加して当該印加荷重σn の大きさに対応した音の伝搬時間tn とについてそれぞれ超音波を用いて測定する第2の音伝搬時間測定機能を備えている(図3参照)。
この図2に示す被測定物1については、本実施形態では2枚の鋼板2A,2Bを連結するボルトの場合を想定したもので、当該ボルトである被測定物1が締結された状態では当該被測定物1には未知の荷重は引張荷重となって存在し、その締め付けの度合いによってボルト内に所定の内部応力が生じることとなる。符号3a,3bはそれぞれ異なったボルト(被測定物1,1)に螺合され前述した2枚の鋼板2A,2Bを固定するためのナットを示す。
そして、この音伝搬時間測定手段11の第1の音伝搬時間測定機能が作動して得られる音の伝搬時間にかかる情報t,t0 に基づいて、後述するように、未知の荷重が印加された状態(実装状態)における被測定物1について、その内部応力σが演算され算定されるようになっている。
即ち、この場合は、例えば図3に示すように、前述した被測定部材1(ボルト)と同一の素材からなる他の部材(テストピース)1Aについて、所定箇所の対向面相互間の距離LTPを伝搬する音の伝搬時間を、無負荷時の伝搬時間t0 と当該他の部材1Aに対して所定の荷重を変化しつつ印加された状態の当該印加荷重σn の大きさに対応した音の伝搬時間tn とについて、それぞれ超音波を用いて測定するという形態をもって実現される。
この図3において、他の部材(テストピース)1Aは、長さがLTP、両端部の直径がD、中央部が一辺の幅WTPの正四角形状に形成されたものが使用されている。この場合、長さLTPの内、両端部の断面円形部分がそれぞれ全体の1/5程度を占め、中央部の正四角形状部分が全体の2/5程度を占めている。
ここで、テストピース1Aの中央部の断面形状を、本実施形態(図3)では正四角形状としたが矩形であってもよい。
そして、後述する応力依存係数算定回路部12では、この音伝搬時間測定手段11の第2の音伝搬時間測定機能が作動して得られる音の伝搬時間にかかる情報tn ,t0 に基づいて、被測定物1を形成する素材の応力依存係数αを演算され算定されるようになっている。
又、前述した音伝搬時間算定回路部11Bは、更に、後述する荷重負荷設定手段12から出力され前述した他の部材1Aに対して印加される荷重情報σn を入力すると共に当該荷重の大きさ(ゼロ荷重σ0 を含む)に対応した音伝搬時間t0,t1,t2,t3,〜tK として集計し整理する伝搬時間整理機能を備えている。
この場合、当該被測定部材1の長さLがテストピース1Aの長さLTPと同一であれば、前述したテストピース1Aについて測定した無負荷時の伝搬時間t0 をそのまま流用される。
これに対して、L≠LTPの場合は、前述したテストピース1Aについて距離LTPで測定した無負荷時の伝搬時間t0 が、比例計算で当該被測定部材1自体の無負荷時の伝搬時間t0 (対向面相互間LTPに対応した無負荷時の伝搬時間t0 )に換算して使用されるようになっている。これらの演算処理は、音伝搬時間測定手段11の音伝搬時間算定回路部11Bが備えている伝搬時間換算機能によって実行されるようになっている。そして、かかる一連の動作は後述する入力部15からの指令に基づいて実行される。
そして、この種の情報(即ち、被測定部材11にかかる対向面相互間の距離Lおよび被測定部材と同一の素材からなる他の部材1Aにかかる対向面相互間の距離LTPの情報)等は、予め後述する情報記憶部14に入力され記憶されるようになっている。
又、新たに所定の建造物等に装備する被測定物1については、装備前に当該被測定物1を前述した図3に示す荷重印加装置21に直接装着して当該被測定物1で直接測定し、これによって、予め当該素材の応力依存係数αを後述する式(5)又は(10)に基づいて算定して置いてもよい。
本実施形態では、前述した音伝搬時間測定手段11には、荷重負荷設定手段としての荷重印加装置21が併設されている(図3参照)。この荷重印加装置21は、前述した被測定物と同一の素材からなる他の部材1Aに対して(或いは被測定物そのものに対して)所定の引っ張り荷重を印加するためのもので、当該他の部材1Aにかかる音の伝搬時間の測定に際して印加荷重を変化させることが可能な構造となっている。
ここで、この外部からの荷重負荷σn に対応して、試料(他の部材1A)内には所定の内部応力が生じる。この場合、試料(他の部材1A)の内部に生じる応力σの大きさは、一般に、印加される荷重負荷σn の大きさにほぼ等しいとして扱われる。
図3において、この荷重印加装置21は、基台21Aと、この基台21A上に所定間隔を隔てて装備された二本のガイド支持体21E,21Fと、この各ガイド支持体21E,21Fが備えているガイド支柱21e,21fに沿って上下動可能に装備された移動体21G,21Hと、この各移動体21G,21Hをその図3における上端部で一体的に連結する横架支持体21Kと、この横架支持体21Kの中央部に下方に向けて垂下装備された一方の試料保持機構22と、この一方の試料保持機構22の下方で当該試料保持機構22の対向して配設された他方の試料保持機構23とを備えている。この他方の試料保持機構23はその下端部が前述した基台21Aに固定装備された状態となっている。
ここで、符号11P1 は超音波送受波器11a用の中継端子を示し、符号11P2 は超音波送受波器11b用の中継端子を示す。
この上下動付勢装置は、本実施形態では油圧を利用した油圧式駆動機構を備え、これによって連続して又は段階的に所定の引っ張り荷重σn を各試料保持機構22,23を介して前述した他の部材1A等に印加し得るようになっている。
更に、前述した基台21Aには、上下動付勢装置(図示せず)の動作を外部操作によって制御する操作制御部24が装備され、又、この上下動付勢装置によって設定される前述した他の部材1Aに対する引っ張り荷重の大きさを表示する荷重表示部25が併設されている。符号26は荷重情報σn を出力するための出力端子を示す。
即ち、音伝搬時間測定手段11による他の部材(テストピース)1A等に対する音伝搬時間測定は、例えば、負荷荷重がゼロσ0 の場合の音伝搬時間t0 、負荷荷重σn (ここで、n=1,2,3,…,k、以下同じ)を段階的に変化させることによって音伝搬時間の変化を測定値tn として測定することにより実行される。
ここで、上記荷重印加装置21はテストピース1Aに対して引張り荷重を印加する場合について例示したが、圧縮荷重を印加するように構成されたものを使用してもよい。
又、上記荷重印加装置21にあっては、負荷荷重の発生源として油圧機器を利用した場合を例示したが、同等に機能するものであれば他の荷重発生手段を使用したものであってもよい。
図1において、符号12は応力依存係数算定手段としての応力依存係数算定回路部を示す。この応力依存係数算定回路部12は、前述した音伝搬時間測定手段11で測定される複数の各音伝搬時間情報t,t0 ,tn および当該音伝搬時間情報tn (n=1,2,3,〜,k、以下同じ)に対応した印加荷重情報σn を入力すると共にこの内の複数の音伝搬時間情報t0 ,tn を抽出する時間情報抽出機能と、この抽出された複数の音伝搬時間情報t0 ,tn に基づいて当該音の伝搬時間の変化分Δtn (=tn −t0 )を算定する時間変化分演算機能と、これら音の伝搬時間にかかる諸情報および前述した印加荷重情報等に基づいて被測定物1にかかる素材固有の応力依存係数αを、予め特定された次式α=f(Δtn ,σn )で演算し算定する応力依存係数算定機能とを備えている。
この場合の超音波(縦波)の伝搬時間tn にかかる関数は、WTPを図3に示す音の伝搬距離(荷重付加=0の場合)とすると、次式で表される。
tn =WTP(1−σnν/E)/V0(1+αT2σn/E)………(1)
この式(1)は、図3では、超音波送受波器11bを作動させて音の伝搬時間を測定した場合に相当する。この式(1)で、分子の部分は横方向の長さを表す。このため、この式(1)の分子の部分は引っ張り応力(負荷)の増加と共に減少する。記号V0 は、荷重ゼロのときに当該素材内を伝搬する音の速度を示す。又、σn /Eは縦方向のひずみを示す(一般式σ=E・εより)。更に、νは当該素材のポアソン比を示し、Eはヤング率を示す。縦方向のひずみεにポアソン比νを掛けたものが横方向のひずみとなる。又、αT2は被測定物を形成する素材の応力依存係数を示す。
tn ≒t0{1−(σn /E)(ν+αT2)}…………………… (2)
これより、
(tn /t0 )−1=Δtn /t0
=−(σn /E)(ν+αT2)…………………… (3)
α=αT2=−ν−(Δtn /t0 )(E/σn)………………… (4)
ここで、nは音伝搬時間の測定回数を示す。音伝搬時間の測定は、実際には図3において、荷重σn をσ1 ,σ2 ,σ3 ,……σk の如く徐々に変化させ、その都度、超音波を伝搬させて音伝搬時間の変化t1 ,t2 ,t3 ,……tk を測定する。
そして、仮に、精度の高い測定値が得られれば、荷重ゼロ(σn =0)の場合の音伝搬時間t0 を基準として、音伝搬時間tn の何れか一つの音伝搬時間データに基づいて式(4)を演算することにより、どの測定値からでも同一の応力依存係数αT2が算定される。
この場合の超音波(縦波)の伝搬時間tn にかかる関数は、音の伝搬距離をLTPとすると、次式(負荷荷重=0の場合)で表される。
tn =LTP(1+σn/E)/{V0(1+αT1σn/E)}……(6)
この式(6)は、図3では、超音波送受波器11aを作動させて音の伝搬時間を測定した場合に相当する。この式(6)の分子の部分は縦方向の長さを表す。このため、応力(負荷)の増加と共に増加する。
tn ≒t0{(1+σn /E)(1−αT1)}…………………… (7)
これより、
(tn /t0 )−1=Δtn /t0
=(σn /E)(1−αT1)…………………… (8)
この式(8)より、応力依存係数αを算定する演算式α=f(Δtn ,σn )として、次式を得ることができる。
α=αT1=1−(Δtn /t0 )(E/σn)…………………… (9)
この応力依存係数αT1の具体的な数値計算等については後述する。
尚、上述したように、測定方法が異なると同一素材についても応力依存係数αの算定式は異なった形態となる。
図1に開示した主演算部13では、実際に装置若しくは建造物等に装備され未知の荷重が印加された状態の被測定物1の内部応力σを、予め特定された算定式σ=f(Δt,α)によって演算し算定する内部応力算定機能を備えている。
ここで、Δtは、Δt=t−t0 を示す。記号tは未知の荷重が印加された状態で測定された被測定物1の所定距離間の音の伝搬時間を示す。
この場合、図2に例示したように、未知の内部応力σに関する情報を収集するために、被測定物1の現実の音の伝搬時間tが超音波を用いて測定される。
ここで、音の伝搬方向の設定を、内部応力σが生じている方向と同方向にするか直交する方向とするかによって、内部応力σを算定する演算式σ=f(Δt,α)が異なったものとなる。かかる演算式の相違は、音の伝搬時間を特定する音の通路長さが、引っ張り方向に沿って伸びる場合、或いはそれと直交して縮む場合との違いによって生じる。
この場合の超音波(縦波)の伝搬時間tにかかる関数は、前述した応力依存係数αT2を算出する場合(式(1))と同様に、次式で表される。
t=W(1−σν/E)/V0(1+αT2σ/E)………………… (11)
この式(11)は、図3で考えると、超音波送受波器11bを作動させて未知の荷重が印加された部材(図示せず)について音の伝搬時間tを測定する場合に相当する。
この式(11)で、分子の部分は横方向の長さを表す。記号W(図示せず)は被測定物1における負荷応力がゼロの場合の横方向の音伝搬距離を示す(図6における記号Wに相当する)。又、αT2は当該被測定物1の応力依存係数を、σは被測定物1内に発生している未知の内部応力を示す。その他の構成記号は前述した式(1)の場合と同様である。
t≒t0{1−(σ/E)(ν+αT2)}…………………………… (12)
これより、
(t/t0 )−1=Δt/t0
=−(σ/E)(ν+αT2)………………………… (13)
この式(13)より、未知の内部応力σを算定する演算式σ=f(Δt,α)として、次式を得る。
σ=−{E/(ν+αT2)}・(Δt/t0)……………………… (14)
この場合の超音波(縦波)の伝搬時間tにかかる関数は、前述した応力依存係数αを算出する場合(式(6))と同様に、次式で表される。ここで、L(図示せず)は被測定物1の縦方向の音の伝搬距離を示す。又、αT1は当該被測定物1の応力依存係数を、σは被測定物1内に発生している未知の内部応力を示す。その他の構成記号は前述した式(1)の場合と同様である。
この式(15)は、図3では、超音波送受波器11aを作動させて音の伝搬時間を測定した場合に相当する。この式(15)の分子の部分は縦方向の長さを表す。このため、応力(負荷)の増加と共に増加する。
tn ≒t0{(1+σ/E)(1−αT1)}……………………… (16)
これより、
(t/t0 )−1=Δt/t0
=(σ/E)(1−αT1)………………………… (17)
この式(17)より、未知の内部応力σT1を算定する演算式σ=f(Δt,α)として、次式を得る。
σ={E/(1−αT1)}・(Δt/t0 )……………………… (18)
次に、上記実施形態における全体的な機能,動作等を説明する。
本実施形態では、未知の荷重が負荷された状態の被測定物1について、まず、当該被測定物1の素材固有の応力依存係数αを算定し、これに基づいて当該被測定物1の内部応力σを、所定の式σ=f(Δt,α)を演算して特定するようにした。この場合、応力依存係数αの算定に際しては、被測定物1そのものを使用しても、或いは当該被測定物1と同一の素材からなる他の部材1Aを使用してもよい。本実施形態では後者に依る。
ここで、応力依存係数αおよび内部応力σの算定式は、音の伝搬時間の測定条件によって異なることは前述した通りである。このため、最初に図1乃至図4に従って装置の全体的な動作を説明し、その後に、測定条件の相違により生じる細部の動作について説明するものとする。
この場合、図3に示すように、被測定物1と同一の素材からなる他の部材1Aに関し、その素材について、まず、所定箇所の対向面相互間を伝搬する音の伝搬時間が測定される。この音の伝搬時間の測定は、超音波送受波器11b(又は11a)、これを駆動する超音波用電気信号送受信回路11A、および音伝搬時間算定回路部11Bの連係動作によって実行される。スイッチ11Dは、端子bを介して超音波送受波器11bを選択し、又は端子aを介して超音波送受波器11aを選択する。この場合、スイッチ11Dの動作は、入力部15形の指令によって作動するようになっている。
即ち、上記音伝搬時間算定測定手段11では、他の部材1Aに対して外部からの印加荷重σn を印加しながら、当該印加荷重がゼロの場合(無負荷時σ0 )もしくはこれに近い状態における音の伝搬時間t0 と、荷重をn回変化させながら印加して当該印加荷重σn の大きさに対応した音の伝搬時間tn とについて、それぞれ超音波を用いて測定する(第1の工程)。この印加荷重σn はk回変化させ、これに対応して音の伝搬時間tn をk回測定する(n=1,2,3,……,k)。
この音の伝搬時間t0 ,tn の測定に際しては、本実施形態では、所定箇所の対向面相互間として、図3における他の部材1Aの中央部(断面が四角形状)の距離WTP部分が予め設定され、この箇所での多重反射等の測定手法を用いて、音の伝搬時間の測定が実行される。
α=αT2=−ν−(Δtn /t0 )(E/σn )……………… (4)
又は、
が使用される。
α=αT1=1−(Δtn /t0)(E/σn)……………………… (9)
又は、
が使用される。
又、被測定物の素材固有の応力依存係数αを、被測定物1と同一の素材からなる他の部材1Aで測定する場合には、装備箇所からの取り外し等が困難な被測定物に対しても、他の部材1Aによって応力依存係数αを迅速に算定することができ、これにより当該被測定物1の内部応力σの測定をなし得ることから、より一層の汎用化が可能となる。
これに対し、被測定物1のそのものを利用して応力依存係数αを算出する手法では、被測定物1の測定箇所を特定できないものもあって対象範囲が限定されるものの、被測定物と同一の素材からなる他の部材を全く準備する必要がないので、応力依存係数αの特定に際しての作業を迅速になし得るという利点がある。
この場合の音の伝搬時間tは、未知の荷重が印加された状態の伝搬時間情報であり、かかる情報によって当該被測定物1の内部応力σが演算されることから、再現性のある伝搬時間tが得られるまで、実際には数回繰り返し測定される。この音の伝搬時間tの測定は、前述した音伝搬時間算定測定手段11で実行される(図2参照)。
同時に、未知の荷重がゼロ又はゼロに近い状態における音の伝搬時間t0 も測定される。この場合、この音の伝搬時間t0(σn ≒0の場合)が測定不可能な場合は、前述したように、図3で測定した時間データt0を(比例計算で)距離換算して当該被測定物1における音の伝搬時間t0(σn≒0の場合)として使用される。かかる演算は、前述した入力部15からの指令に基づいて音伝搬時間算定回路部11Bで実行される(図4、ステップS4)。
そして、この第3の工程で得られる音の伝搬時間tおよびこれに対応する荷重ゼロ(若しくはゼロに近い荷重)の場合の音の伝搬時間にかかる情報t0については、前述した第2の工程の場合と同様にその変化分Δt(=t−t0)、および音伝搬時間変化比Δt/t0 等が音伝搬時間算定回路部11Bで算定され(図4、ステップS5)、その算定結果の情報Δt,Δt/t0 は、この第3の工程で得られる音の伝搬時間t,t0 と共に、情報記憶部13で記憶されると共に主演算部13へ直接送り込まれるようになっている。
ここで、被測定物1の内部応力にかかる算定式σ=f(Δt,α)は、例えば音の伝搬時間測定時に、図3で超音波送受波器11bを使用して超音波を荷重の印加方向に直交する方向に伝搬させた場合と同等に設定した場合には、前述したように、
σ=−{E/(ν+αT2)}・(Δt/t0)……………………… (14)
が使用される。
σ={E/(1−αT1)}・(Δt/t0)………………………… (18)
が使用される。
本実施形態では、図2に示すように超音波を荷重の印加方向に沿った方向に伝搬させて未知の荷重が印加された被測定物1の音の伝搬時間を測定するようにしたので、内部応力にかかわる算定式σ=f(Δt,α)としては式(18)が使用される。
ここでは、応力依存係数αを特定する場合の具体例を示す。
最初に、図3に開示した手法を用いて音の伝搬時間を測定し、これに基づいて当該部材の応力依存係数αを、式(4),(5)および式(9),(10)に基づいて算定してみた。以下、これを説明する。
(1).印加荷重σn の印加方向に直交する方向(横方向)に超音波を伝搬させて測定した場合
この場合の応力依存係数αは、前述したように、
α=αT2=−ν−(Δtn /t0 )(E/σn)………………… (4)
この式(4)をY=aX±bの形態に直してXーY座標と同等の座標上に表示し、応力依存係数αの性質(定数か否か)をまず確認する。
式(4)より、E(Δtn /t0 )=−(ν+α)σn …………………(4a)
具体的には、まず、XーY直交座標を想定して上式(4a)の左辺E(Δtn /t0 )をY座標上に、左辺のσn をX座標上にとると、図5(A)に示す線図となる。
この図5(A)から明らかのように、「−(ν+α)」は方向係数である。又、νはポアッソン比、αは2次および3次の弾性定数からなる定数(応力依存係数)である。従って、この方向係数−(ν+α)は材料固有の値をとる。このため、今後の課題としては多くの実用材料についてα値の実測が望まれる。
この場合の応力依存係数αは、前述したように、
α=αT1=1−(Δtn /t0 )(E/σn)…………………………(9)
この式(9)をY=aX±bの形態に直してXーY座標と同等の座標上に表示して、応力依存係数αの性質(定数か否か)をまず確認する。
式(9)より、E(Δtn /t0 )=(1−α)σn ……………………(9a)
具体的には、上述した式(4a)の場合と同様に、まずXーY直交座標を想定して上式(9a)の左辺E(Δtn /t0 )をY座標上に、左辺のσn をX座標上にとると、図5(B)に示す線図となる。
この図5(B)から明らかのように、「(1−α)」は方向係数である。又、αは2次および3次の弾性定数からなる定数(応力依存係数)である。従って、この方向係数(1−α)は材料固有の値をとる。このため、今後の課題としては多くの実用材料につき、この場合のα値の実測が望まれる。
(1).測定条件
被測定物と同一の素材からなる部材1Aの形状および寸法を図6(A)に示す。長さLは180〔mm〕、中央部の四角形状の断面は一辺が30〔mm〕×15〔mm〕角に精密加工されている。又、この部材の素材としてS20Cの鋼材を使用した。この鋼材(S20C)固有のヤング率E等の弾性定数を図6(B)の図表に示す。
「Δtn /t0 」と「σn」との対応関係を図表化する。図7にこれを示す。
この図7で、表示「横方向」の欄は、印加荷重σn の印加方向に直交する方向に縦波超音波を伝搬させて得られる時間データに基づいて算定した「Δtn /t0 」の値を示す。又、表示「縦方向」の欄は、印加荷重σn の印加方向に沿って縦波超音波を伝搬させて得られる時間データに基づいて算定した「Δtn /t0 」の値を示す。この場合、印加荷重(負荷応力)σn については、これを5.44〔MPa〕ずつ変化させて縦波超音波の伝搬時間tn を測定し、Δtn =tn −t0 ,Δtn /t0 を算定した。
「Δtn /t0 」と「σn」との関係をグラフ化する。図8にこれを示す。
この内、図8(A)は、印加荷重σn の印加方向に直交する方向に縦波超音波を伝搬させて音の伝搬時間を測定した場合で、測定データとしては図7の「横方向」の欄に記載のデータがこれに対応する。この図8(A)では、一つ一つのドットがσnとΔtn /t0 との対のデータである。これらのドットを繋いだのがジグザグの線である。そして、このジグザグの線からなるσnとΔtn /t0 とのデータ群を最小二乗法で処理した結果の直線F2がジグザグの線からなるデータ群を図示の如く左上から右下に貫いている。そして、この図8(A)の実測値に基づいた線図F2が図5(A)の線図に対応したものとなっている。
この図8(A)(B)で得られる傾斜直線の直線F2 ,F1 が、当該測定値の平均値として得られる実験式(一次関数)を示す。
4−1) .応力依存係数αT2(図8(A)参照)の場合
図8(A)で明らかのように、測定値の全体的な傾向(最小二乗法で補正された直線)より実験式(一次関数)として次式(4b)を得る。
y=−2.7779x−285.9 …………………………………(4b)
この式(4b)と前述した式(4a)とを対応させる。
方向係数=dy/dx
=−2.7779
=(Δtn /t0 )/σn ……………………………(4c)
ここで、図6(B)の図表より、S20Cの鋼材のヤング率とポアッソン比はそれぞれ下記値をとる。
E=206783MPa、 ν=0.2885 ……………………(4d)
この式(4c)(4d)と式(4)より、次式αT2を得る。
α=αT2=−ν−E(Δtn /t0 )/σn
=−0.2885−206783×(−2.7779)×10−6
=0.286 …………………………………………………(4e)
ここで、前述した式(5)についても測定値に基づいて同様の演算を試みた。その結果、応力依存係数αの値として上式(4e)の場合とほぼ同等の値を得ることができた。
σ=σT2
=−{E/(ν+αT2)}・(Δt/t0 )
=−{206783/(0.2885+0.286)}・(Δt/t0)×10−6
=−359935.59(Δt/t0 )×10−6 ………………(4f)
となる。
図8(B)で明らかのように、測定値の全体的な傾向(最小二乗法で補正された直線)より実験式(一次関数)として次式(9b)を得る。
y=11.525x−241.45 ………………………………(9b)
この式(9b)と前述した式(9a)とを対応させる。
方向係数=dy/dx
=11.525
=(Δtn /t0 )/σn …………………………(9c)
ここで、図6(B)の図表より、S20Cの鋼材のヤング率として、
E=206783MPa ……………………………………………(9d)
式(9c)(9d)および式(9)より次式αT1を得る。
α=αT1=1−E(Δtn /t0 )/σn
=1−206783×11.525×10−6
=−1.3832……………………………………………(9e)
即ち、印加荷重σn の印加方向に沿った方向に超音波を伝搬させて音の伝搬時間を測定した場合、S20Cの鋼材の応力依存係数αは「−1.3832」となる。
ここで、前述した式(10)についても測定値に基づいて同様の演算を試みた。その結果、応力依存係数αの値として上式(9e)の場合とほぼ同等の値を得ることができた。
σ=σT1={E/(1−αT1)}・(Δt/t0 )
={206783/(1+1.3832)}・(Δt/t0)×10−6
=86766.951(Δt/t0 )×10−6………(9f)
となる。
この式(9f)で明らかのように、被測定物の応力依存係数αが事前に特定されていると内部応力σの演算式が極めて単純化される。これがため、未知の荷重が印加された被測定物についてその時の音伝搬時間tと、当該被測定物について負荷荷重ゼロの時の音伝搬時間t0 とを測定することにより、被測定物についてその内部応力を瞬時にしかも定量的に算出することが可能となる。
又、上記実施形態は、負荷荷重σn として引張荷重の場合について例示したが、圧縮荷重であってもよい。この圧縮荷重の場合、内部応力σはベクトル量であるためその符号が変わる。
この場合、応力依存係数αの算定式は、
α=E(ΔVn /V0 )/σn ……………………(イ)
となり、
内部応力σの算定式は、
σ=E(ΔV/V0 )/α ……………………………(ロ)
となる。これにより、固有常数αが判明すると、内部応力σが極く容易に算定することができる。
又、この式(イ)(ロ)については、被測定物に印加する(又は印加されている)荷重σn の向きに対して同方向又は直交する方向のいずれの方向に超音波を伝搬させても、適用あるものとする。
1A 被測定物と同一の素材からなる他の部材(テストピース)
11 音伝搬時間測定手段
11a,11b 超音波送受波器
11A 超音波用信号送受信回路部
11B 音伝搬時間算定回路部
12 応力依存係数算定回路部(応力依存係数算定手段)
13 主演算部
14 情報記憶部
15 入力部
16 出力部
21 荷重印加装置
Claims (10)
- 被測定物と同一の素材から成るテストピースについて、その所定箇所の対向面相互間に荷重を変化させながら印加して、当該印加荷重σn の大きさに応じて変化する音の伝搬時間tn ,及び荷重ゼロの時(無負荷時)の音の伝搬時間t 0 を、超音波を用いて且つ当該超音波を前記印加荷重σn の印加方向と同方向に伝搬させて測定する第1の工程と、
この第1の工程で得られる音の伝搬時間tn とt 0 とに基づいて、当該伝搬時間の変化分Δtn (=tn −t0 )を算定すると共に、これらの情報および前記音伝搬時間情報tn に対応した印加荷重情報σn 並びに前記被測定物を形成する素材のヤング率Eを含む固有の弾性定数等を含んで予め特定された応力依存係数αに関する下式、
α=f(Δtn ,σn )={1−E(Δtn /t0 )/σn }
により当該被測定物の素材固有の応力依存係数αを算定する第2の工程と、
この第1乃至第2の各工程に相前後して、装置若しくは建造物等に装備され未知の荷重が印加された状態の前記被測定物について前記所定箇所の対向面相互間を伝搬する音の伝搬時間tを測定する第3の工程と、
この第1乃至第3の各工程で得られる諸情報に基づいて、前記第3工程における被測定物の実際の内部応力σを、前記応力依存係数αを含んで予め特定された内部応力σに関する次式、
σ=f(Δt,α)=E(Δt/t0 )/(1−α)
(ここで、Δt=t−t0 )
、を演算し、実際に装備された状態下にある前記被測定物の現実の内部応力σを特定する第4の工程とを備え、
前記第1の工程では、前記テストピースにおける前記対向面相互間の距離L rp は前記第3の工程における前記被測定物の前記対向面相互間の距離Lと同一距離であることを前提として、当該対向面相互間の距離L rp が設定されており、
前記第2の工程では、更に、前記応力依存係数αの算定時に成される伝搬時間の変化分Δtn にかかる伝搬時間変化比「Δtn /t0 」とこれに対応する応力依存係数「α」との対応関係を順次演算処理しそのデータを記憶する応力依存係数特定工程を同時に実行する構成としたことを特徴とする応力測定方法。 - 被測定物と同一の素材から成るテストピースについて、その所定箇所の対向面相互間に荷重を変化させながら印加して、当該印加荷重σn の大きさに応じて変化する音の伝搬時間tn ,及び荷重ゼロの時(無負荷時)の音の伝搬時間t 0 を、超音波を用いて且つ当該超音波を前記印加荷重σn の印加方向に直交する方向に伝搬させて測定する第1の工程と、
この第1の工程で得られる音の伝搬時間tn とt 0 とに基づいて、当該伝搬時間の変化分Δtn (=tn −t0 )を算定すると共に、これらの情報および前記音伝搬時間情報tn に対応した印加荷重情報σn 並びに前記被測定物を形成する素材のヤング率Eとポアソン比νとを含む固有の弾性定数等を含んで予め特定された応力依存係数αに関する下式、
α=f(Δtn ,σn )={−ν−E(Δtn /t0 )/σn }
を用いて当該被測定物の素材固有の応力依存係数αを算定する第2の工程と、
この第1乃至第2の各工程に相前後して、装置若しくは建造物等に装備され未知の荷重が印加された状態の前記被測定物について前記所定箇所の対向面相互間を伝搬する音の伝搬時間tを測定する第3の工程と、
この第1乃至第3の各工程で得られる諸情報に基づいて、前記第3の工程における被測定物の実際の内部応力σを、前記応力依存係数αを含んで予め特定された内部応力σに関する次式、
σ=f(Δt,α)=−E(Δt/t0 )/(ν+α)、
(ここで、Δt=t−t0 )
を演算し、実際に装備された状態下にある前記被測定物の現実の内部応力σを特定する第4の工程とを備え、
前記第1の工程では、前記テストピースにおける前記対向面相互間の距離L rp は前記第3の工程における前記被測定物の前記対向面相互間の距離Lと同一距離であることを前提として、当該対向面相互間の距離L rp が設定されており、
前記第2の工程では、更に、前記応力依存係数αの算定時に成される伝搬時間の変化分Δtn にかかる伝搬時間変化比「Δtn /t0 」とこれに対応する応力依存係数「α」との対応関係を順次演算処理しそのデータを記憶する応力依存係数特定工程を同時に実行する構成としたことを特徴とする応力測定方法。 - 装置若しくは建造物等に装備され未知の荷重が印加された状態の被測定物について所定箇所の対向面相互間を伝搬する音の伝搬時間tを超音波を用いて測定すると共に、前記被測定物と同一の素材から成るテストピースについて前記被測定物の前記所定箇所の対向面相互間に対応した距離について,荷重を変化させながら印加して当該印加荷重σn の大きさに応じて変化する音の伝搬時間tn 及び荷重ゼロの時(無負荷時)の音の伝搬時間t 0 を、超音波を用いて且つ当該超音波を前記印加荷重σn の印加方向と同方向に伝搬させて測定する音伝搬時間測定手段を有し、
この音伝搬時間測定手段で得られる音の伝搬時間tn とt 0 とにより、当該伝搬時間の変化分Δtn (=tn −t0 )を算定すると共に、これらの情報および前記音伝搬時間情報tn に対応した印加荷重情報σn 並びに前記被測定物を形成する素材のヤング率Eを含む固有の弾性定数等を含んで予め特定された応力依存係数αに関する下式、
α=f(Δtn ,σn )={1−E(Δtn /t0 )/σn }
によって、当該被測定物の素材固有の応力依存係数αを算定する応力依存係数算定手段を設け、
この応力依存係数算定手段で算定される応力依存係数αおよび前記音伝搬時間測定手段で測定される複数の音伝搬時間情報等に基づいて、実際に装置若しくは建造物等に装備され未知の荷重が印加された状態の前記被測定物の未知の内部応力σを、前記応力依存係数αを含んで予め特定された次式、
σ=f(Δt,α)=E(Δt/t0 )/(1−α)、
(ここで、Δt=t−t0 )
を演算することにより算定する主演算部を備え、
前記音伝搬時間測定手段で測定の対象とする前記テストピースにおける前記対向面相互間の距離L rp は前記被測定物の前記対向面相互間の距離Lと同一距離であることを前提として、当該対向面相互間の距離L rp が設定されており、
前記応力依存係数算定手段が、前記応力依存係数αの算定時に成される伝搬時間の変化分Δtn にかかる伝搬時間変化比「Δtn /t0 」とこれに対応する応力依存係数「α」との対応関係を順次演算処理しそのデータを記憶する応力依存係数特定機能を備えていることを特徴とする応力測定装置。 - 前記請求項5に記載の応力測定装置において、
前記応力依存係数算定手段は、時間情報抽出機能と、伝搬時間変化分算定機能と、応力依存係数算定機能とを有すると共に、
前記時間情報抽出機能が、前記音伝搬時間測定手段で得られる印加荷重σn を含む前記複数の情報から音伝搬時間情報tn ,t0 を抽出するように機能し、
前記伝搬時間変化分算定機能が、前記時間情報抽出機能で抽出された音伝搬時間情報tn ,t0 に基づいて前記印加荷重σn に対応した音伝搬時間の変化分Δtn を算定するように機能し、
前記応力依存係数算定機能が、前記音伝搬時間にかかる情報および前記印加荷重σn にかかる情報等に基づいて応力依存係数αにかかる前記算定式
α=f(Δtn ,σn )={1−E(Δtn /t0 )/σn }
を演算し前記被測定物を形成する素材固有の応力依存係数αを算定するように機能する構成としたことを特徴とする応力測定装置。 - 装置若しくは建造物等に装備され未知の荷重が印加された状態の被測定物について所定箇所の対向面相互間を伝搬する音の伝搬時間tを超音波を用いて測定すると共に、前記被測定物と同一の素材から成るテストピースについて前記被測定物の前記所定箇所の対向面相互間に対応した距離について,荷重を変化させながら印加して当該印加荷重σn の大きさに応じて変化する音の伝搬時間tn 及び荷重ゼロの時(無負荷時)の音の伝搬時間t 0 を、超音波を用いて且つ当該超音波を前記印加荷重σn の印加方向と直交する方向に伝搬させて測定する音伝搬時間測定手段を有し、
この音伝搬時間測定手段で得られる音の伝搬時間tn とこれに対応した距離のテストピース(被測定物と同一の素材)を用いて測定され換算された無負荷時の音の伝搬時間t0 とにより当該伝搬時間の変化分Δtn (=tn −t0 )を算定すると共に、これらの情報および前記音伝搬時間情報tn に対応した印加荷重情報σn 並びに前記被測定物を形成する素材のヤング率Eとポアソン比νとを含む固有の弾性定数等を含んで予め特定された応力依存係数αに関する下式、
α=f(Δtn ,σn )={−ν−E(Δtn /t0 )/σn }
を演算することにより当該被測定物の素材固有の応力依存係数αを算定する応力依存係数算定手段を設け、
この応力依存係数算定手段で算定される応力依存係数αおよび前記音伝搬時間測定手段で測定される複数の音伝搬時間情報等に基づいて、実際に装置若しくは建造物等に装備され未知の荷重が印加された状態の前記被測定物の未知の内部応力σを、前記応力依存係数αを含んで予め特定された次式、
σ=f(Δt,α)=−E(Δt/t0 )/(ν+α)、(ここで、Δt=t−t0 )
を演算することにより算定する主演算部を備え、
前記音伝搬時間測定手段で測定の対象とする前記テストピースにおける前記対向面相互間の距離L rp は前記被測定物の前記対向面相互間の距離Lと同一距離であることを前提として、当該対向面相互間の距離L rp が設定されており、
前記応力依存係数算定手段が、前記応力依存係数αの算定時に成される伝搬時間の変化分Δtn にかかる伝搬時間変化比「Δtn /t0 」とこれに対応する応力依存係数「α」との対応関係を順次演算処理しそのデータを記憶する応力依存係数特定機能を備えていることを特徴とする応力測定装置。 - 前記請求項8に記載の応力測定装置において、
前記応力依存係数算定手段が、時間情報抽出機能と、伝搬時間変化分算定機能と、応力依存係数算定機能とを有すると共に、
前記時間情報抽出機能が、前記音伝搬時間測定手段で得られる印加荷重σn を含む複数の情報から音伝搬時間情報tn ,t0 を抽出するように機能し、
前記伝搬時間変化分算定機能が、前記時間情報抽出機能が稼働して抽出された音伝搬時間情報tn ,t0 に基づいて前記印加荷重σn に対応した音伝搬時間の変化分Δtn を算定するように機能し、
前記応力依存係数算定機能が、前記音伝搬時間にかかる情報および前記印加荷重σn にかかる情報に基づいて応力依存係数αにかかる前記算定式
α=f(Δtn ,σn )={−ν−E(Δtn /t0 )/σn }
を演算し前記被測定物を形成する素材固有の応力依存係数αを算定するように機能する構成としたことを特徴とする応力測定装置。
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