JP4655805B2 - 評価方法及び評価装置 - Google Patents
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Description
本発明は、外装材による影響を考慮して、建物等の構造体の損傷状態の評価を行うことを目的とする。
前記外装材を取り付けていない状態における、前記フレームの変形量と、変形後の前記フレームの剛性と、の関係を示す第1関係を求め、
前記外装材を取り付けている状態における、前記フレームの変形量と、前記フレームに取り付けられた前記外装材の剛性と、の関係を示す第2関係を求め、
前記第1関係と前記第2関係とに基づいて、前記構造体の振動特性と変形量との関係を示す第3関係を算出し、
被災後に前記構造体の振動特性を計測し、
計測された前記構造体の前記振動特性と前記第3関係とに基づいて、前記構造体の被災時の変形量を評価する
ことを特徴とする評価方法である。
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
前記外装材を取り付けていない状態における、前記フレームの変形量と、変形後の前記フレームの剛性と、の関係を示す第1関係を求め、
前記外装材を取り付けている状態における、前記フレームの変形量と、前記フレームに取り付けられた前記外装材の剛性と、の関係を示す第2関係を求め、
前記第1関係と前記第2関係とに基づいて、前記構造体の振動特性と変形量との関係を示す第3関係を算出し、
被災後に前記構造体の振動特性を計測し、
計測された前記構造体の前記振動特性と前記第3関係とに基づいて、前記構造体の被災時の変形量を評価する
ことを特徴とする評価方法。
このような評価方法によれば、建物の損傷状態の評価を正確に行うことができる。
これにより、被災時にセンサ等を起動する必要がないので、センサの保守等も必要ない。
前記外装材を取り付けていない状態の前記フレームに対して所定方向に荷重をかけて変形させ、変形後に除荷して前記フレームの剛性を計測し、この計測結果に基づいて前記第1関係を求め、
前記外装材を取り付けた前記フレームに対して所定方向に荷重をかけて変形させ、変形後に除荷して前記外装材を取り付けた前記フレームの剛性を計測し、この計測結果と前記フレームの剛性の計測結果とに基づいて前記第2関係を求める
ことが望ましい。
これにより、前記第2関係の汎用性を広げることができる。
構造体の常時微振動にはその構造体の特性が含まれるため、構造体の常時微振動を計測すれば、その計測結果に基づいてその構造体の振動特性を計測することができる。
前記外装材を取り付けていない状態における、前記フレームの変形量と、変形後の前記フレームの剛性と、の関係を示す第1関係を求め、
前記外装材を取り付けている状態における、前記フレームの変形量と、前記フレームに取り付けられた前記外装材の剛性と、の関係を示す第2関係を求め、
前記第1関係と前記第2関係とに基づいて、前記構造体の振動特性と変形量との関係を示す第3関係を算出し、
被災後に前記構造体の振動特性の計測結果を取得し、
計測された前記構造体の前記振動特性の前記計測結果と前記第3関係とに基づいて、前記構造体の被災時の変形量を評価する
ことを特徴とする評価装置。
このような評価装置によれば、建物の損傷状態の評価を正確に行うことができる。
まず、本実施形態の評価方法を説明する前に、鉄骨フレームに及ぼす外装材の影響について説明する。そして、以下の説明により、建物の損傷状態を評価する際に、外装材を考慮する必要性があることが理解できるであろう。
(2−1−1)試験体について
図1は、鉄骨フレームのみからなる試験体Fの実験状況の説明図である。図中には、試験体Fの形状・寸法が示されている。
試験体Fは、2つの柱101と、上部梁102と、下部梁103とを備えている。試験体Fを構成する柱及び梁には、それぞれH形鋼が使用されている。柱は弱軸使い、柱梁接合部は内ダイアフラム形式の剛接としてある。素材の引張試験結果により算定したフレームの降伏荷重は352kNであり、柱降伏先行型である。
試験体Fの上部には、加力装置120が設けられている。加力装置120の加力梁121は、倒れ止め122によって、試験体Fの面外方向への移動を拘束している。そして、加力梁121には、不図示のジャッキにより水平方向の力Qが加えられる。加力梁121には2つの上部支持機構123が取り付けられており、柱101は、加力装置120から上部支持機構123を介して水平加力を受ける。なお、試験体Fの柱101の下部は、床141に固定された下部支持機構142に載置されている。
試験体Sでは、外装材として鋼板201が鉄骨フレームに取り付けられている。各鋼板は板厚1.0mm、幅300mmであり、複数の鋼板201が鉄骨フレームに水平方向に連装されている。柱101には、600mm間隔で4個の胴縁211が配置されている。各胴縁211は、チャンネル材から構成され、柱101のフランジ表面に取り付けたブラケットにボルト止めされている。鋼板201と取付金物はビスで固定され、取付金物の二股に分かれた部分が胴縁フランジに嵌め込まれている。
試験体Pでは、外装材としてPC版301が鉄骨フレームに取り付けられている。試験体PのPC版301は、幅2000mmであり、4箇所のファスナー(2個の上部ファスナー311及び2個の下部ファスナー312)で鉄骨フレームに取り付けられている。上部ファスナー311は、胴縁321を介して、柱101に取り付けられている。下部ファスナー312は、スラブに緊結されている状態を模擬するために、ブラケット322を介して、下部梁103に取り付けられている。
試験体Rでは、外装材としてRC壁401が鉄骨フレームに取り付けられている。RC壁401は、柱101に溶接されたひげ筋411により、柱101に定着されている。また、RC壁401の下部では、頭付スタッド412を介し、下部梁103から柱−梁接合部パネルへと接続されている。これは、RC壁がスラブと一体化している状態を模擬したものである。
図7は、鉄骨フレームの変位とひずみの計測の説明図である。層間変形角を計測するため、柱101と上部梁102との接合部に、水平変位を計測する変位計が設けられている。また、柱及び梁のそれぞれには、モーメント分布を計測するために、材軸方向の4箇所にひずみゲージが貼付されている。なお、外装材を取り付けた試験体に対しても、同様に鉄骨フレームにひずみゲージが貼付されている
そして、各試験体に対して、加力実験を行った。加力装置120は、層間変形角rを制御しながら、試験体に対して水平力Qを加える。本実験では、層間変形角rが1→2→4→5→6→8→10→15→20→30→40→50(×1/1000rad)の順になるように、各サイクルについて2回ずつ変形させるように、水平力Qが繰り返し加えられる。
鉄骨フレームとRC壁401との面内方向のずれは、r=4/1000のサイクルで急激に増大した。これは、柱101とRC壁401との付着が切れたためである。面外方向のずれについては、r=8/1000の時に、柱101のフランジとRC壁401上部との間に隙間が観察され、さらに変形を繰り返す毎にこの隙間は大きくなった。また、r=15/1000の2サイクル目では、RC壁が柱101から完全に分離したことが目視された。
(2−2−1)解析モデルについて
次に、有限要素法による解析に基づいて、外装材の影響を検討する。
図12は、解析モデルの説明図である。
試験体Fでは、鉄骨フレームをBEAM要素としてモデル化した。なお、鉄骨フレームをこのようにモデル化するのは、試験体S、試験体P及び試験体Rでも同様である。
試験体Sでは、胴縁211をBEAM要素でモデル化している。また、この胴縁211と柱101との間にもBEAM要素を配置している。また、鋼板201は、シェル要素によりモデル化されている。鋼板201を胴縁211に取り付ける取付金物は、非線形ばね要素にてモデル化している。
試験体Pでは、PC版301は、鉄筋を考慮した非線形積層シェル要素でモデル化されている。また、胴縁321をBEAM要素でモデル化している。そして、胴縁321と柱101との間にもBEAM要素を配置している。また、胴縁321とPC版301との間では、上部ファスナー311として2個のBEAM要素が配置されている。また、下部梁103とPC版301との間でも、下部ファスナー及びブラケット322として2個のBEAM要素が配置されている。
試験体Rでは、RC壁401は非線形積層シェル要素でモデル化されている。そして、RC壁401とフレームとはBEAM要素で接続している。なお、柱101とRC壁401との間では、ひげ筋411の耐力を設定したインターフェイス要素を配置している。
次に、既存の建物を対象として、外装材の影響を検討する。
図15は、対象建物の平面図である。図16は、対象建物の軸組を示す説明図である。この対象建物は、地上1階建てのブレース付の鉄骨造であり、南側にはボックス状のRC造遮風壁があり、外周にRC造の腰壁が配置されている。なお、建物規模は、EW方向に24.5m、NS方向に22.0mであり、最高高さ9.75mである。
本解析では、柱及び梁は軸力・曲げモーメント・せん断力を考慮する部材とし、ブレースは軸力のみを考慮する部材とする。柱は、N−M関係を考慮したバイリニア型の部材(降伏点で係数が変化する部材)とする。梁もバイリニア型の部材とする。ブレースは、引張方向と圧縮方向とで係数の異なる非対称バイリニア型の部材とした。また、屋根剛性を考慮し、腰壁(高さ2.0m)、遮風壁と柱・梁との間の接触部分にばね要素を設けた。
図21は、本実施形態の評価方法のフロー図である。以下、順に説明する。なお、以下の説明では、外装材としてPC版を取り付けた場合(試験体P)について説明しているが、外装材が鋼板やRC壁でも本評価方法を適用可能である。
図22は、打撃計測の様子の説明図である。試験体を床141に緊結し、柱101上に錘501をのせ、ハンマーで上部接合部付近を面内方向に沿って打撃し、加速度センサにより振動を計測し、試験体Fの固有周期を測定する。なお、錘501の重さは、5.4tonである。
加力前では、外装材の影響のため、試験体Pは試験体Fと比べて剛性が54%高い。但し、層間変形角が大きくなると、試験体Pの剛性は試験体Fの剛性に近づく。そして、r=50/1000の層間変形角経験後では、試験体Pの剛性は、試験体Fの剛性とほぼ同じであり、フレームのみの剛性に依存していると考えられる。
グラフの横軸は、塑性率であり、層間変位を降伏変位で割った値である。フレームの降伏荷重は352kNであるので、フレームの降伏変位(フレームの降伏時の層間変位)は、降伏荷重352kN/分担剛性223kN/cm≒1.6cmとしている。一方、PC版の降伏変位(実際にはPC版自身の降伏時の層間変位ではなく、ファスナー部分破損時の層間変位)は、降伏荷重100kN/分担剛性120kN/cm=0.8cmとしている(なお、ファスナー部分のはしぬけ破断時の荷重は1箇所当たり約50kNなので、降伏荷重は、50kN×2箇所=100kNとしている)。
グラフの縦軸は、剛性低下率であり、層間変形角経験後の分担剛性を初期の分担剛性で割った値である。なお、フレームの初期の分担剛性は223kN/cmであり、PC版の初期の分担剛性は120kN/cmである。
そして、本実施形態では、図24のフレームの剛性に基づいて、フレームの剛性低下率曲線はy=−0.10ln(x)+1.04と算定される。また、図25のPC版の剛性に基づいて、PC版の剛性低下率曲線はy=−0.34ln(x)+0.92と算定される(なお、剛性低下率がy>1の場合、剛性低下率は1とする。)。
層間変形角が決まれば、層高さ(180cm)に基づいて層間変位が決まり、フレーム及びPC版のそれぞれの塑性率が決まるので、剛性低下率曲線に基づいて、その層間変形角に対応するフレーム及びPC版の分担剛性が算出される。そして、試験体Pの剛性は、フレームの剛性とPC版の剛性との和となり、試験体Pの固有周期は、2π√(6.63ton/(試験体Pの剛性))として算出される。
(4−1)以上説明した本実施形態の評価方法によれば、まず、外装材を取り付けていないフレーム単体における、層間変位(フレームの変形量の一例)と、変形後のフレームの剛性との関係を示す剛性低下率曲線(第1関係の一例)を求めている(図27参照)。また、外装材を取り付けている状態における、層間変位と、フレームに取り付けられた外装材の剛性との関係を示す剛性低下率曲線(第2関係の一例)を求めている(図27参照)。そして、この評価法では、フレーム及び外装材の剛性低下率曲線に基づいて、構造体(例えば建物)の固有周期変動曲線(第3関係の一例)を算出する。ここで、固有周期曲線とは、最大層間変形角(変形量の一例)と固有周期(振動特性の一例)との関係を示す曲線である。
そして、地震等による被災後に、建物の固有周期を計測する。例えば、常時微振動計測により建物の固有周期を計測しても良いし、ハンマーによる打撃計測により固有周期を計測しても良い。計測後、本評価方法では、計測された固有周期と固有周期変動曲線とに基づいて、構造体の被災時の最大層間変形角を評価している。
120 加力装置、121 加力梁、123 上部支持機構、
141 床、142 下部支持機構、
201 鋼板、211 胴縁、
301 PC版、311 上部ファスナー、312 下部ファスナー、
321 胴縁、322 ブラケット、
401 RC壁、411 ひげ筋、412 頭付スタッド、
501 錘
Claims (5)
- フレームと、前記フレームに取り付けられた外装材とを有する構造体の被災時の変形量の評価方法であって、
前記外装材を取り付けていない状態における、前記フレームの変形量と、変形後の前記フレームの剛性と、の関係を示す第1関係を求め、
前記外装材を取り付けている状態における、前記フレームの変形量と、前記フレームに取り付けられた前記外装材の剛性と、の関係を示す第2関係を求め、
前記第1関係と前記第2関係とに基づいて、前記構造体の振動特性と変形量との関係を示す第3関係を算出し、
被災後に前記構造体の振動特性を計測し、
計測された前記構造体の前記振動特性と前記第3関係とに基づいて、前記構造体の被災時の変形量を評価する
ことを特徴とする評価方法。 - 請求項1に記載の評価方法であって、
被災後の前記構造体に前記振動特性を計測するためのセンサを取り付け、
前記センサの出力に基づいて前記構造体の前記振動特性を計測した後、前記センサを取り外す
ことを特徴とする評価方法。 - 請求項1又は2に記載の評価方法であって、
前記外装材を取り付けていない状態の前記フレームに対して所定方向に荷重をかけて変形させ、変形後に除荷して前記フレームの剛性を計測し、この計測結果に基づいて前記第1関係を求め、
前記外装材を取り付けた前記フレームに対して所定方向に荷重をかけて変形させ、変形後に除荷して前記外装材を取り付けた前記フレームの剛性を計測し、この計測結果と前記フレームの剛性の計測結果とに基づいて前記第2関係を求める
ことを特徴とする評価方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の評価方法であって、
常時微振動を利用して、前記構造体の前記振動特性を計測する
ことを特徴とする評価方法。 - フレームと、前記フレームに取り付けられた外装材とを有する構造体の被災時の変形量を評価する評価装置であって、
前記外装材を取り付けていない状態における、前記フレームの変形量と、変形後の前記フレームの剛性と、の関係を示す第1関係を求め、
前記外装材を取り付けている状態における、前記フレームの変形量と、前記フレームに取り付けられた前記外装材の剛性と、の関係を示す第2関係を求め、
前記第1関係と前記第2関係とに基づいて、前記構造体の振動特性と変形量との関係を示す第3関係を算出し、
被災後に前記構造体の振動特性の計測結果を取得し、
計測された前記構造体の前記振動特性の前記計測結果と前記第3関係とに基づいて、前記構造体の被災時の変形量を評価する
ことを特徴とする評価装置。
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