JP2004301792A - 構造物の健全度診断システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】診断しようとする構造物に振動を与える加振装置(12)と、加振装置に送られる電気信号を増幅する電圧増幅アクチュエータ駆動部(14)と、電気信号を発生させる電気信号発生部(16)とを備えた健全度診断システムにおいて、加振装置が、複数の装置が規則的に配列されたアレー式のものである。また、このシステムにおいて、構造物の振動に対する応答を計測するため、構造物にアレー式計測装置が配置される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一般的に、構造物の健全度診断システムに関する。より詳細には、本発明は、構造物の微小な変状による影響を検出することができ、及び/又は、微小欠陥による振動モードの変化をリアルタイムで検出することができる、構造物の健全度診断システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、構造物の健全度の診断は、基本的に、目視による診断に委ねられており、目視で異常が発見された場合には、詳細点検を行うことになっているが、一般的には、装置を用いた診断・補修は行われていなかった。
一方、昨今、コンクリート片等の落下事故が多発しており、構造物の変状を調査するために、最近になってハンマーによる打音検査が導入されるようになってきたが、この方法は、ハンマーの重量、叩き方、人間の耳で聴いた音で判断する等、変状を定量的に判断することができず、再現性もなかった。
また、構造物に圧電素子(PZT)を貼付し一定の周波数域で加振して構造物のモード解析を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された発明は、低周波数域での振動モードの変化を観察して構造物の全体的な損傷を検知することを付加し、かつ、PZTの高周波数域での電気インピーダンスの変化を検知するようになっている。しかし、本来、構造物の損傷の個所を特定するには、損傷によって生ずる反射波をPZTによって検出し、反射波の時間軸上の位置と弾性波の伝播速度から損傷位置を同定する必要がある等、損傷個所の特定に時間を要する等の問題点があった。
【0003】
このような状況に鑑みて、本出願人は、構造物の損傷個所を容易に特定することができる健全度診断装置を提案している(特許文献2参照)。
また、構造物に複数のセンサを配置し、構造物に打撃等の衝撃的な外力を加えて、振動する状況を時刻歴応答波形として固有振動数(主として、鉛直曲げ1次振動数)を計測する方法も提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−99760号公報
【特許文献2】
特願2001−305864号
【特許文献3】
特開2002−22596号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献2に記載された方法は、構造物の損傷個所の特定を可能にした点で有意義なものであるが、加振個所が1個所のみであるため、多数の高次振動モードを特定することが困難であり、従って、構造物の微小な変状による影響を検出しにくいという問題があった。
また、構造物の欠陥は本来、局所的に発生するものが大半であるにもかかわらず、特許文献3に記載された方法では、局所的な変状を同定することができないという課題があった。
さらに、従来の方法では、計測値を周波数解析する必要があったため、リアルタイムで振動モードの変化を検出することができなかった。
【0006】
したがって、本発明は、構造物の微小な変状による影響を検出することができる健全度診断システムを提供することを目的としている。また、本発明は、微小欠陥による振動モードの変化をリアルタイムで検出することができる健全度診断システムを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1に記載の健全度診断システムは、構造物に局部振動を与える加振装置と、加振装置に送られる電気信号を増幅する電圧増幅アクチュエータ駆動部と、電気信号を発生させる電気信号発生部と、低次から高次までの振動モードにおける構造物の振動パラメータを、構造物の健全時の振動パラメータと比較して評価することにより構造物の変状個所を推定する変状推定部とを備え、該変状推定部が、各振動モードにおける構造物の振動パラメータの理論値を算出する理論値算出部と、構造物の振動パラメータの実測値を前記理論値と比較して評価する評価部とを有し、前記理論値算出部が、構造物の材質や形状等から構造物に関する定数を同定するとともに、構造物の変状を想定して構造物に関する定数を変化させることにより、各振動モードにおける変状時の振動パラメータを算出して蓄積する健全度診断システムであって、前記加振装置が、複数の振動付与装置が規則的に配列されたアレー式であることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項2に記載の健全度診断システムは、前記請求項1のシステムにおいて、構造物に所望の高次の振動モードを励起することができるように、前記アレー式加振装置に送信する波形を作成する手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項3に記載の健全度診断システムは、前記請求項2のシステムにおいて、前記波形を作成する手段が、標準波形を作成する機能と、任意波形を作成する機能とを有していることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項4に記載の健全度診断システムは、前記請求項3のシステムにおいて、前記任意波形を作成する機能に、所定の波形関数式を用いて任意波形を作成する機能と、直線補間によって任意波形を作成する機能と、スプライン補間によって任意波形を作成する機能とが含まれることを特徴とするものである。
【0011】
本願請求項5に記載の健全度診断システムは、前記請求項1から4までのいずれか1項のシステムにおいて、前記加振装置が、積層圧電アクチュエータを含むことを特徴とするものである。
【0012】
本願請求項6に記載の健全度診断システムは、前記請求項1から5までのいずれか1項のシステムにおいて、前記加振装置が、複数の携帯端末機からの指令によりリレー式に制御され、遠隔個所から構造物に振動を与えることができるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本願請求項7に記載の健全度診断システムは、前記請求項1から6までのいずれか1項のシステムにおいて、構造物の振動に対する応答を計測するため、構造物にアレー式計測装置が配置されることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る健全度診断システムについて詳細に説明する。図1において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係る健全度診断システムは、診断しようとする構造物に振動を与えるアレー式加振装置12と、アレー式加振装置12に送られる電気信号を増幅する電圧増幅アクチュエータ駆動部14と、電気信号を発生させる電気信号発生部16とを備えている。
【0015】
なお、本明細書において「アレー式」とは、複数の装置が規則的に配置されることを意味している。ここで、「規則的」とは、隣接する装置間の間隔が互いに等しい場合のみならず、当該間隔が互いに等しくはないが所定の規則で定められているような場合をも含むことを意味している。
【0016】
電気信号発生部16としては、例えば、複数のチャンネルを有するマルチファンクションシンセサイザが使用される。電気信号発生部16において電気信号を発生させる場合には、電気信号発生部16自体において個々の波形を作成する場合と、波形作成ソフトウェアを用いて波形を作成する場合とがある。
【0017】
波形作成ソフトウェアでは、複数の加振装置12が相互に連動して、構造物に所望の高次の振動モードを励起することができるように、複数の加振装置12に送信する波形(例えば、波形の振幅、位相遅れ、継続時間、周波数成分など)が計算される。
【0018】
波形作成ソフトウェアを用いる場合には、該ソフトウェアをインストールしたパーソナルコンピュータ18をインタフェースを介して電気信号発生部16に接続し、パーソナルコンピュータ18において所望の波形を作成した後、該波形が電気信号発生部16に送られる。波形作成ソフトウェアは、標準波形(例えば、正弦波、余弦波)を作成する機能の他、任意波形を作成する機能(例えば、所定の波形関数式を用いて任意波形を作成する機能、点と点を直線的に結ぶ直線補間によって任意波形を作成する機能、スプライン関数に従って複数の点を曲線で結ぶスプライン補間によって任意波形を作成する機能)を有しており、複数の連続する任意波形を作成することができる。また、波形作成ソフトウェアでは、波形作成機能によって作成された波形を編集(例えば、コピー、カット、ペースト)することができ、波形を縦方向及び/又は横方向に圧縮・伸長することもできるとともに、四則演算を用いて複数の波形を合成し任意の波形を作成することもできる。波形作成ソフトウェアを用いて作成された波形は、上述のように、電気信号発生部16に送られるが、パーソナルコンピュータ18の記憶手段(例えば、ハードディスク)に保存することもできる。
【0019】
パーソナルコンピュータ18から電気信号発生部16に送られた波形、及び、電気信号発生部16自体で作成された波形は、電気信号発生部16の記憶手段に保存される。電気信号発生部16から電圧増幅アクチュエータ駆動部14に波形の電気信号を送る際には、電気信号を異なるチャンネルから同時に送信することができる他、各チャンネル毎にトリガリレーを設定することにより、各チャンネル間で時間差を設けて送信することができる。また、各チャンネル毎に別波形の電気信号を送信することができる。さらに、一方のチャンネルから送信される波形に対して、同一の周波数で位相の異なる波形、周波数比が一定の波形、周波数差が一定の波形などの波形を、他方のチャンネルから送信することができる。
【0020】
所望の波形の電気信号が、電気信号発生部16の指定したチャンネルから電圧増幅アクチュエータ駆動部14に送られて増幅された後、指定したチャンネルに対応するアレー式加振装置12に送られて、構造物に振動を与える。
【0021】
アレー式加振装置12は、典型的には、構造物の表面に貼付される積層圧電アクチュエータ12a、12b、12cと、積層圧電アクチュエータ12a、12b、12cを構造物に一定負荷で押付ける付勢手段(図示せず)とを含む。付勢手段としては、バネを利用して構造物に押付ける型式のもの等があるが、本発明の要旨を構成しないので、詳細な説明は省略する。
【0022】
健全度診断システム10は又、構造物に与えられた振動による応答を計測するアレー式計測装置20と、計測した結果から振動モードを求める実験モード解析部22と、構造物が健全時から変化した状態を推定する変状推定部24とを備えている。
【0023】
アレー式計測装置20は、典型的には、小型の半導体型加速度計であり、予測される振動モードの形状に応じて、必要な個数(図1では、20a、20b、20cの3個が図示されている)がアレー状に配置される。なお、アレー式計測装置20として、レーザ式変位測定器、圧電素子(機械的な歪みを電圧に変換するピエゾ圧電効果を利用して位相の変化を観測するもの)等を用いてもよい。アレー式計測装置20による計測は、健全時と変状時の両方において行う。
【0024】
実験モード解析部22においては、アレー式計測装置20で計測した構造物の変位等から、各振動モードの固有振動数が求められる。すなわち、実験モード解析部22では、構造物の振動に対して計測された変位を周波数毎の波に分解し、各周波数における振幅を取り出して、振幅が卓越する個所を固有振動数の近傍とする。或いは、計測された変位をフーリエ変換してパワースペクトルを求め、パワースペクトルが卓越する個所を固有振動数としてもよい。なお、実験モード解析部22においては、構造物に与えられた振動の周波数域に応じて、低次から高次の振動モードが現出する。
【0025】
変状推定部24は、診断しようとする構造物の固有振動数の理論値を算出する理論値算出部26と、固有振動数の実測値と固有振動数の理論値とを対比して評価する評価部28とを有している。
【0026】
理論値算出部26では、構造物(健全な状態、即ち正常な状態の構造物、及び、亀裂や損傷等の変状を含んだ状態の構造物)をモデル化し、有限要素法(FEM)等を用いて、健全時及び種々の変状時に対応する構造物の低次から高次の振動モードにおける固有振動数の理論値を求め、予め蓄積しておく。変状の例としては、ボルトの弛緩、構造物の亀裂や損傷、構造物の腐食、及びこれらの組合せがあげられる。なお、固有振動数の理論値を求める際に、多数の離散値を有する最適化問題に有効であると考えられている遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm 、以下「GA」という)を用いるのが好ましい。GAでは、構造物をモデル化したものを幾つか個体として与え、探索空間の中で遺伝的操作を行って、遺伝子を交叉させた個体や遺伝子が突然変異した個体を発生させることより、構造物の種々の変状を想定して評価する。
【0027】
GAを用いた定数の同定についてより詳細に説明する。構造物の固有振動数の理論値の算出の際に用いられる定数は、理論値として求めることができるが、実測値に即したものとするために、GAを用いて定数の同定を行うのが望ましい。まず、GAにおける個体の遺伝子情報にバネ定数や変状位置を対応させる。この個体のもつ遺伝子情報とその固有振動数の理論値とを対応づけたデータである人工集団を作成し、評価部28に入力する。次いで、実験モード解析部22で求めた実測値を入力する。そして、各個体に対してFEMを用いて各振動モードの固有振動数の理論値を計算し、適応条件に基づいて評価する。その際、FEMで求めた固有振動数の理論値と実験モード解析部22で解析した固有振動数の実測値との差分が小さい程、適応度が高いと判断する。
【0028】
適応度の判断の一例として、
【数1】
が用いられる。数1は、固有振動数の理論値と固有振動数の実測値との差分の2乗の総和であるが、数1で示される値が小さい程、適応度が高いと判断する。この他、固有振動数の理論値と固有振動数の実測値との差分の絶対値で適応度を判断してもよい。
【0029】
GAでは、全ての個体に対して適応度を見て、適応度の高い個体を増やしていくようにする。以上のように、何世代も演算を行い、適応度が収束した時点で最適解の個体(モデル)を得る。
【0030】
このようにして、評価部28では、理論値算出部26で求めた固有振動数の理論値と実験モード解析部22で求めた実測値とを対比して評価し、蓄積されている理論値から実測値に最も近いものを検索することによって、変状個所を同定する。
【0031】
以上のように構成された健全度診断システム10の作動について説明する。いま、図2(a)及び図2(b)に示されるように、H形鋼の供試体の左右両側に支柱を配置し、支柱にL形支持板を溶接で固定し、L形支持板に供試体を載せて、片側4本のボルトによって供試体とL形支持板を連結した装置において、構造物の健全度の診断の一例として、ボルトが弛緩しているか否かを診断する場合(ボルトが堅結されている状態を健全時、ボルトが弛緩している状態を変状時とする)を想定する。
【0032】
ボルトが弛緩している状態を図3に示す。すなわち、図3において、CASE1が健全な状態(ボルトが弛緩していない状態)であり、CASE2,CASE3,CASE4,CASE5,CASE6,CASE7,・・・が変状状態(ハッチングを施したボルトが弛緩しているボルトを表す)である。
【0033】
まず、供試体の所望の個所に、アレー式加振装置12とアレー式計測装置20を取付ける。次いで、波形作成ソフトウェアを用いて供試体に加える波形を作成し、該波形の電気信号を電気信号発生部16を介して電圧増幅アクチュエータ駆動部14に送って増幅する。そして、増幅された該波形の電気信号をアレー式加振装置12に送って、供試体に振動を与える。
【0034】
一方、変状推定部24の理論値算出部26において、GAを用いて、構造物の種々の状態を表すデータである人工集団を作成する。人工集団は、遺伝子情報と固有振動数の理論値に大別される。遺伝子情報では、ボルトが弛緩していない正常な状態を「0」と定義し、ボルトが弛緩している状態を「1」と定義する。すると、CASE1,CASE2,CASE3,CASE4,・・・・の遺伝子情報は、図4に示すように表される。次いで、各ケースにおける構造物の固有振動数の理論値F1 ,F2 ,F3 ,F4 ,・・・・を求める。そして、各ケースにおける遺伝子情報と構造物の固有振動数の理論値とを対応づけたものが人工集団となる。
【0035】
次いで、アレー式加振装置12により与えられた振動によって発生した供試体の加速度応答波形をアレー式計測装置20によって計測し、実験モード解析部22において計測値から固有振動数を求める。そして、例えば、求めた固有振動数がF´3 (≒F3 )であったとすると、供試体がCASE3の状態(即ち、ボルト▲1▼、▲2▼、▲5▼、▲6▼が弛緩している状態)にあると同定する。以上のようにして、健全度診断システム10によって構造物の健全度を診断することができる。
【0036】
次に、本発明の健全度診断システム10の効果を実証するために行った試験について説明する。本試験では、供試体(広幅H形鋼:350mm×350mm×12mm×19mm、長さL=2200mm)の左右両側に支柱を配置し、支柱にL形支持板を溶接で固定し、L形支持板に供試体を載せて、片側4本のボルトによって供試体とL形支持板を連結した。なお、図2(a)に示されるように、供試体と支柱は、接触していない。本試験においては、供試体の接合部におけるボルトの弛緩を変状状態と考え、ボルトの弛緩状態を評価する実験・解析を行った。
【0037】
加振装置となる積層圧電アクチュエータ(2基)、及び、計測装置となる加速度計(2基)は、図5に示されるように、5通り(配置1〜配置5)に配置した。また、供試体のボルト接合部をバネ要素としてモデル化し、FEMによる固有振動解析を行った。
【0038】
本試験では、ボルト接合部を表すバネ要素の剛性を解析的に評価するため、GAを用いてバネ剛性の同定を行い、損傷同定の可能性を検討した。モデル化に際しては、ボルトによるH形鋼と支持板との接触状況を3方向(X,Y,Z)のバネ要素で表現し、バネ要素節点の回転方向の拘束条件(θX ,θY ,θZ )を固定とした。これらのバネ要素を支持板との接触面上の節点に所定数ずつ配置し、弛緩部分においてこれらのバネ要素剛性値を求めた。なお、GA解析においては、固有振動解析を繰り返し行うので、固有振動解析に要する時間が問題となるため、GA解析のモデルは、できるだけ簡略化したものとなるように注意した。
【0039】
本試験では、積層圧電アクチュエータ自身の振動が供試体に確実に伝達されるようにするため、アクチュエータに負荷がかかるような反力板を設置して加振を行った(図2(c)参照)。このとき、アクチュエータに作用する反力は、100N程度とした。また、本試験における仮想的な健全状態は、図3のCASE1に示されるように、接合ボルトを全て締め付けた状態として、変状状態は、図3のCASE2,CASE3,・・・・に示されるように、接合ボルトの一部を緩めた状態とした。
【0040】
図6、図8、図10、図12及び図14は、配置1〜5において測定した加速度応答波形をそれぞれ示した図であり、図7、図9、図11、図13及び図15は、これらの加速度応答波形に対応するパワースペクトルをそれぞれ示した図である。これらの図を検討すると、全体として、測点1(1/2点)よりも測点2(1/4点)の方が、より多くのモード次数を拾うことができることが分かる。また、第11次モード(この振動モードは、供試体の上フランジの捩りの3次モードに対応する)の結果を見ると、CASE1では338.5Hz、CASE3では335.3Hz、CASE6では336Hzである。この値の妥当性を確認するため、アクチュエータが1基の場合の周波数を求めると、CASE1では338Hz、CASE3では335.6Hz、CASE6では338Hzであった。さらに、第13次モード(この振動モードは、供試体の下フランジの捩りの3次モード)の結果を見ると、CASE1では373.2Hz、CASE3では367.9Hz、CASE6では369.6Hzであり、これらに対応するアクチュエータが1基の場合の周波数は、CASE1では373Hz、CASE3では369Hz、CASE6では373Hzであった。以上より、ボルトが弛緩した状態(CASE3、CASE6)では、アクチュエータが2基の場合は、アクチュエータが1基の場合と比較して、周波数が明確に減少していることが分かり、変状状態の把握に有効であることが確認された。
【0041】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0042】
たとえば、前記実施の形態では、ボルトの弛緩状態を構造物の変状状態とみなして説明しているが、構造物の亀裂や腐食のような他の変状状態についても、本システムを適用することができる。
【0043】
また、前記実施の形態では、構造物の固有振動数に関連して健全度診断システムについて説明しているが、固有振動数以外の他の振動パラメータ、例えばモード減衰比、振動モード形などを用いてもよい。
【0044】
また、前記実施の形態では、固有振動数の理論値を求めるのにGAを用いているが、GA以外の他の手法、例えばニューロネットワーク回帰分析、多変量解析、パターン認識解析などを用いてもよい。
【0045】
また、前記実施の形態では、本発明の健全度診断システムがアレー式加振装置とアレー式加振装置の両方を備えたものとして説明されているが、アレー式加振装置とアレー式加振装置のいずれか一方のみを使用して構造物の健全度を診断してもよい。
【0046】
さらに、図16に示されるように、アレー式加振装置の個々のアクチュエータ12a、12b、12cにIPアドレスを搭載し、複数の携帯端末機A、B、Cからの送信により、これらのアクチュエータ12a、12b、12cをリレー式に制御して、遠隔個所から構造物に振動を与えることができるように構成してもよい。
【0047】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、診断しようとする構造物を加振するのにアレー式加振装置を用いるので、高次の曲げ振動モードや捩れ振動モードのような複雑な振動モードを励起することができ、これにより、構造物の微小な変状を検出することが可能になる。また、複数の加振装置が用いられるので、構造物に入力される加振エネルギーが大きくなり、これによっても、構造物の微小な変状の検出が容易になる。
【0048】
また、本発明の方法によれば、診断しようとする構造物の振動応答を計測するのにアレー式計測装置を用いて多点の計測が同時に行われるので、FFT処理を用いなくとも振動モードの変化を検出することができ、ランニングスペクトルによって振動数の比較がリアルタイムでできるとともに、多点の動きを画面に連動して表示し、時間的に変化する振動モードを計測して、欠陥の有無を比較することができ、従って、構造物の微小欠陥による振動モードの変化をリアルタイムで検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る健全度診断システムの全体概略図である。
【図2】図1のシステムの効果を実証するために行われた試験で使用した構造物を示した図であって、(a)は正面図、(b)は(a)の線2b−2bに沿って見た底面図、(c)はアクチュエータの取付け詳細を示した図である。
【図3】図2の構造物のボルト接合部におけるボルトの種々の弛緩状態を示した図である。
【図4】理論値算出部において作成される人工集団の一例を示した図である。
【図5】試験におけるアクチュエータ及び加速度計の配置状態を示した図である。
【図6】配置1における加速度応答波形を示した図である。
【図7】図6の加速度応答波形に対応するパワースペクトルを示した図である。
【図8】配置2における加速度応答波形を示した図である。
【図9】図8の加速度応答波形に対応するパワースペクトルを示した図である。
【図10】配置3における加速度応答波形を示した図である。
【図11】図10の加速度応答波形に対応するパワースペクトルを示した図である。
【図12】配置4における加速度応答波形を示した図である。
【図13】図12の加速度応答波形に対応するパワースペクトルを示した図である。
【図14】配置5における加速度応答波形を示した図である。
【図15】図14の加速度応答波形に対応するパワースペクトルを示した図である。
【図16】本発明の健全度診断システムにおいて、アレー式加振装置を遠隔操作する形態を示した全体概略図である。
【符号の説明】
10 健全度診断システム
12(12a,12b,12c) アレー式加振装置
14 電圧増幅アクチュエータ駆動部
16 電気信号発生部
18 パーソナルコンピュータ
20(20a,20b,20c) アレー式計測装置
22 実験モード解析部
24 変状推定部
26 理論値算出部
28 評価部
Claims (7)
- 構造物に局部振動を与える加振装置と、加振装置に送られる電気信号を増幅する電圧増幅アクチュエータ駆動部と、電気信号を発生させる電気信号発生部と、低次から高次までの振動モードにおける構造物の振動パラメータを、構造物の健全時の振動パラメータと比較して評価することにより構造物の変状個所を推定する変状推定部とを備え、該変状推定部が、各振動モードにおける構造物の振動パラメータの理論値を算出する理論値算出部と、構造物の振動パラメータの実測値を前記理論値と比較して評価する評価部とを有し、前記理論値算出部が、構造物の材質や形状等から構造物に関する定数を同定するとともに、構造物の変状を想定して構造物に関する定数を変化させることにより、各振動モードにおける変状時の振動パラメータを算出して蓄積する健全度診断システムであって、
前記加振装置が、複数の振動付与装置が規則的に配列されたアレー式であることを特徴とするシステム。 - 構造物に所望の高次の振動モードを励起することができるように、前記アレー式加振装置に送信する波形を作成する手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
- 前記波形を作成する手段が、標準波形を作成する機能と、任意波形を作成する機能とを有していることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
- 前記任意波形を作成する機能には、所定の波形関数式を用いて任意波形を作成する機能と、直線補間によって任意波形を作成する機能と、スプライン補間によって任意波形を作成する機能とが含まれることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
- 前記加振装置が、積層圧電アクチュエータを含むことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のシステム。
- 前記加振装置が、複数の携帯端末機からの指令によりリレー式に制御され、遠隔個所から構造物に振動を与えることができるように構成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のシステム。
- 構造物の振動に対する応答を計測するため、構造物にアレー式計測装置が配置されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のシステム。
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