(1)楽音装置の響板8
図1は楽音装置の左方から見た縦断面、図2は楽音装置の右方から見た縦断面、図3は楽音装置の背面を示し、図4は楽音装置の正面を示す。この楽音装置はアコースティックのアップライトピアノの例である。角材状の骨組み(支柱)1は方形枠状に組まれ、さらにこの骨組み(支柱)1の方形枠の内側には、縦に延びる複数例えば三本の内支柱2がほぼ等間隔に固定されている。
この骨組み1及び内支柱2の前面の上側にはピン板3が固定され、同じくこの骨組み1及び内支柱2の前面の下側には底板4が固定され、この骨組み1及び内支柱2の上面には屋根板5が固定され、この骨組み1及び内支柱2の左右両側面側には左親板6、右親板7が固定されている。
このピン板3と底板4と左親板6と右親板7とで囲まれた内側には、方形で平板状の響板8が木ねじ、ボルトまたは接着剤などによって取り付けられている。この響板8は、複数の木材の板が接合されて、大きな一枚の板になっている。これらの繋ぎ合わされている複数の木材板の各部の柾目または木目は、木材板の長手方向に沿ってほぼ同一方向に揃っている。
これにより、響板8の音が響板8の一部に偏ることなく、全体に均一に広がり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。この響板8は材木から切り出した単体の板材、または薄い膜板材のほか、ベニヤ板、合板などでもよく、この場合でも、柾目または木目は存在する。
この響板8の柾目または木目の方向は、水平方向に対して20度乃至70度、望ましくは30度乃至60度、より望ましくは40度ないし50度、例えばほぼ斜め45度の方向となっている。この響板8の板面は垂直方向に沿っている。この響板8は、振動されて音を放射するものである。
この響板8の後面(裏面)の外側の表面には、複数の響棒9…が木ねじ、ボルトまたは接着剤などによって取り付け固定されている。この響棒9…の長手方向は、上記響板8の柾目または木目の方向とは異なる方向であって、ほぼ直交する方向にほぼ揃っている。この響棒9…は、2本乃至30本、望ましくは5本乃至20本、たとえば10本が、ほぼ等間隔で取り付けられている。
上記響棒9…は、水平方向に対して20度乃至70度、望ましくは30度乃至60度、より望ましくは40度ないし50度傾斜していてもよい。これにより、響板8の音が水平方向または/及び垂直方向に偏ることなく、全体に均一に広がり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。なお、響板8は長方形状なので、響板8の音は水平方向または/及び垂直方向にもともと偏る性質がある。
上記各響棒9…は、上記響板8の柾目または木目と、40度乃至140度、望ましくは60度乃至120度、より望ましくは80度ないし100度、例えばほぼ直交する方向に配置されている。これにより、響板8の音は柾目または木目に沿って伝播し易いが、各響棒9…によって、柾目または木目を跨いで音が伝播され、響板8の音が偏ることなく、全体に均一に広がり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
この響棒9…の両端縁は、上記響板8の端縁まで達している。これにより、上述の響板8の音が水平方向または/及び垂直方向に偏ることが無いことが、響板8の端縁まで達成されることができ、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
響棒9…の両端は厚さが薄くなっている。これにより、響棒9…自身の共振が防止され、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
上記響棒9…の各間隔は、10cm乃至30cmであり、等間隔ではなく、不等間隔となっていてもよい。これにより、響棒9…が振動の節となって、各響棒9…の間で同じ周波数の音が共振してしまうことがなくなり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。このような響棒9…は響板8の後面側以外に前面側に取り付けられてもよい。
上記響板8の前面においてピン板3前面から底板4にかけて金属製のフレーム10が木ねじ、ボルトまたは接着剤などによって取り付け固定されている。このフレーム10には多数の弦(ピアノ線)11…が架け渡されている。この弦11…と上記響板8との間には駒12が挟持されて、弦11…の振動が響板8に伝達されて、響板8が振動して音が出るようになっている。
楽音装置の底板4の前には左右に一対の妻土台12、12が木ねじ、ボルトまたは接着剤などによって取り付け固定されている。この妻土台12、12の上には垂直に伸びる一対の棚受け柱13、13が木ねじ、ボルトまたは接着剤などによって取り付け固定され、この棚受け柱13、13の上には水平方向に延びる板状の棚板14が木ねじ、ボルトまたは接着剤などによって取り付け固定されている。
この棚板14の手前上には鍵盤15が取り付けられており、この棚板14の奥上には腕木16が木ねじ、ボルトまたは接着剤などによって取り付け固定されている。この腕木16の前面上縁から棚板14の上面手前縁にかけて鍵盤蓋17が開閉可能に木ねじ、ボルトまたは接着剤などによって取り付け固定されている。
上記底板4上面前縁、左親板6内側前縁、右親板7内側前縁、棚板14下面で囲まれた内側には、方形で平板状の下前板18が開閉かつ取り外し可能に取り付けられている。上記屋根板5下面前縁、左親板6内側前縁、右親板7内側前縁、鍵盤蓋17の奥上縁で囲まれた内側には、方形で平板状の上前板19が開閉かつ取り外し可能に取り付けられている。
(2)電磁駆動ユニット(電磁駆動体/加振体)31、37の取り付け構造
図5は電磁駆動ユニット(電磁駆動体/加振体)31の取り付け構造を示す。上記棚板14の下面の左側には、金属板からなるL字金具32がねじ留めされている。このL字金具32は、細長い金属板の中央が直角に折り曲げられて「L」字形になっており、高さは10乃至30cmほどである。
このL字金具32の上半分は水平向きになり、棚板14の下面にねじ留めされる。L字金具32の下半分は垂直向きになり、中央に穴があけられている。この穴に頭が六角のボルト33が挿通され、このボルト33にナット34と調節つまみ35とが螺合され、このナット34と調節つまみ35とによって、L字金具32を挟持可能となっている。
このボルト33の先端は、上記電磁駆動ユニット31の後面中央のねじ穴に螺着固定されている。上記ナット34と調節つまみ35とを回してL字金具32を挟持した状態で、電磁駆動ユニット31を響板8に押し当てて、L字金具32を棚板14下面に固定する。
この後、ナット34と調節つまみ35とを回して、電磁駆動ユニット31を響板8に所定の力で押し付ける 。この押し付けによって、電磁駆動ユニット31が加振/振動したとき、電磁駆動ユニット31と響板8との間に瞬間的に隙間ができず、電磁駆動ユニット31と響板8とがぶつかり合って異常振動/異常音が発生してしまうことがなくなり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
図6は電磁駆動ユニット(電磁駆動体/加振体)37の取り付け構造を示す。上記底板4の上面の右側には、金属板からなる三角金具36がねじ留めされている。この三角金具36は、細長い金属板の中央付近が直角に「L字状」に折り曲げられ、この「L字状」の両先端を架渡すように斜めの金属板がねじ留めされて「三角形」になっており、高さは10乃至120cmほどである。
この三角金具36の短辺にあたる下面は水平向きになり、上記妻土台12の奥面(後面)に当接されて、底板4の上面にねじ留めされる。三角金具36の上先端は垂直向きになり、中央に穴があけられている。この穴に頭が六角のボルト33が挿通され、このボルト33にナット34と調節つまみ35とが螺合され、このナット34と調節つまみ35とによって、三角金具36を挟持可能となっている。
このボルト33の先端は、上記電磁駆動ユニット37の後面中央のねじ穴に螺着固定されている。上記ナット34と調節つまみ35とを回して三角金具36を挟持した状態で、電磁駆動ユニット37を響板8に押し当てて、三角金具36を底板4上面に固定する。
この後、ナット34と調節つまみ35とを回して、電磁駆動ユニット37を響板8に所定の力で押し付ける。この押し付けによって、電磁駆動ユニット37が加振/振動したとき、電磁駆動ユニット37と響板8との間に瞬間的に隙間ができず、電磁駆動ユニット37と響板8とがぶつかり合って異常振動/異常音が発生してしまうことがなくなり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
このような電磁駆動ユニット31、37は、響板8、底板4、屋根板5、左親板6、右親板7、下前板18、上前板19などに、木ねじやボルトなどで留められないので、これらに穴を開けなくて済み、響板8をはじめとする楽音装置の音響特性を変質させてしまうことがなくなる。
また、このように響板8、底板4、屋根板5、左親板6、右親板7、下前板18、上前板19などに、木ねじやボルトを取り付けたり、これらに穴を開けたりしなくてよく、電磁駆動ユニット31、37は、楽音装置の外からは全く見えないので、電磁駆動ユニット31、37を取り付けても楽音装置の外観・美観を損ねることがない。
電磁駆動ユニット31、37の外形は円柱状の本体ケースとこの本体ケースの側面に設けられている円形の平坦な振動板とからなっている。電磁駆動ユニット31、37の中にはコイルと磁石とが内蔵され、上記本体ケース及び振動板の一方にコイルが連結され他方に磁石が連結される。
上記コイルに複数種類の楽音からなる楽音信号が流れると、コイルに生じる磁界と磁石の磁界との相互作用によって、コイルまたは磁石が振動/駆動/変位し、本体ケースに対して振動板が振動/駆動/変位する。振動板を上記響板8に直接または連結部材を介して接合(取付け/連結/接着を含む)させる。したがって、電磁駆動ユニット31、37は、複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、楽器の響板8を駆動させて音を放射させる。
これにより、振動板及び響板8を電磁駆動させて振動させることができる。電磁駆動ユニット31、37は、スピーカーとは異なり、それ自体は発音/放音せず、接合された他の物体を電磁駆動させて振動させ発音/放音させるものである。このような電磁駆動ユニット11は、特開平8−146949号公報、特開平8−111896号公報などに開示されている。
三角金具36の短辺にあたる下面は妻土台12の奥面(後面)に当接されているので、電磁駆動ユニット37の響板8への加振力/加圧力の反作用が大きくても、三角金具36が前方(図6の右方)へずれてしまうことがない。
なお、上記調節つまみ35はナット、スクリューねじ、蝶ねじなど挟持力または挟持量を調整できるものならば何でもよい。また、三角金具36の下面手前は上記妻土台12の奥面(後面)に当接されなくてもよい。
(3)L字金具32及び三角金具36(支持体)と柔軟板21(柔軟体)
上記三角金具36(支持体)の先端に取り付けられている電磁駆動ユニット(電磁駆動体/加振体)37の先端面/加振面には柔軟板21(柔軟体)が接着剤または接着テープなどによって取り付けられており、L字金具32の先端の電磁駆動ユニット31には取り付けられていない。
この柔軟板21はクッション性、弾性、可撓性があり、電磁駆動ユニット37(31)と響板8との間に介在される。したがって、この柔軟板21は、L字金具32及び三角金具36(支持体)の長さが長いほど介在され、短いほど介在されないことになる。
これにより、L字金具32及び三角金具36の一端から他端までの長さが長いほど、電磁駆動ユニット37(31)の加振に対して響板8の振動が追従しにくく遅れ易くなるが、介在される柔軟板21によってこの遅れが吸収され、響板8と電磁駆動ユニット37(31)とが互いにぶつかり合って生じる異常な共振音が生じなくなる。
また、L字金具32及び三角金具36(支持体)の長さが長い/短いほど、柔軟板21の厚さは厚く/薄くしてもよい。これにより、介在される柔軟板21による上記遅れの吸収が、連続的/段階的/無段階に実現される。
このようなL字金具32及び三角金具36の一端では、上記電磁駆動ユニット37(31)が支えられ、他端では楽器本体に固定され、L字金具32及び三角金具36は上記電磁駆動ユニット37(31)を響板8に当接させることになる。このL字金具32及び三角金具36の一端から他端までの長さは、複数の上記電磁駆動ユニット37、31ごとに異なっている。
しかも、上記ナット34と調節つまみ35の調整量は、電磁駆動ユニット37、31の両方において同じであり、電磁駆動ユニット37、31が上記響板8に当接される力は同じとなっている。しかし、異なっていてもよい。電磁駆動ユニット37の当接力の方が大きくてもよいし、電磁駆動ユニット31の当接力の方が大きくてもよい。これにより、このL字金具32及び三角金具36の一端から他端までの長さに応じて、電磁駆動ユニット31の当接力が変化される。
上記柔軟板21は例えば以下のような材質が用いられる。材質はクロロプレンゴム(デュポン社のネオプレンゴム、Neo−180)、硬さA60、引っ張り強さ7.4MPa、伸び290%、圧縮永久ひずみ率35%(70℃×22h)。大きさは電磁駆動ユニット37、31の響板8への当接面より若干小さく、厚さは十分の数mm乃至数mm、例えば0.5mm乃至2mmであり、上記のようにクッション性、弾性、可撓性がある。
電磁駆動ユニット37、31が上記響板8に当接される力は、電磁駆動ユニット37、31の自重と同じ、または自重の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、十数倍または数十倍より大きい。電磁駆動ユニット37、31の自重は、数百グラム、例えば400グラム乃至500グラムである。
このように、電磁駆動ユニット37、31が上記響板8に当接される力が電磁駆動ユニット37、31の自重より大きいと、電磁駆動ユニット37、31の加振力が確実に響板8に伝えられ、響板8と電磁駆動ユニット37(31)とが互いにぶつかり合って生じる異常な共振音が生じなくなる。
電磁駆動ユニット37、31が上記響板8に当接される力は、楽器本体内の駒20の上記響板8への加圧力より小さい。この駒20の上記響板8への加圧力は約数百キログラム、例えば200kg乃至400kgである。
このように、電磁駆動ユニット37、31が上記響板8に当接される力が楽器本体内の駒20の上記響板8への加圧力より小さいと、弦11の振動/音が駒20を通じて響板8に伝わるのを妨害して支障を与えることがなくなり、電磁駆動ユニット37、31による振動/音以外に弦11による振動/音も変質されずに確実に響板8から発音/放射される。
上記一端から他端までの長さが長い三角金具36(支持体)は、本鍵盤楽器の底板4の上面に取り付けられ、上記一端から他端までの長さが短いL字金具32(支持体)は、本鍵盤楽器の棚板14の下面に取り付けられる。
また、上記一端から他端までの長さが長い三角金具36(支持体)は、本鍵盤楽器の底板4の下方から持ち上げられ、上記一端から他端までの長さが短いL字金具32(支持体)は、本鍵盤楽器の棚板14の下面の上方から吊り下げられている。
これにより、電磁駆動ユニット31、37からの音の放射位置を鍵盤15や棚板14に近い位置にすることができ、鍵盤15の演奏/操作をしているときに、鍵盤15を演奏/操作している指/手が、音の放射/振動を感じることができ、実際の演奏に近い感触を得ることができる。
また、三角金具36の先端の電磁駆動ユニット37と、L字金具32の先端の電磁駆動ユニット31とは、これらの三角金具36とL字金具32との間に、底板4、棚板14、左親板6、右親板7などが介在して、一方の電磁駆動ユニット31(37)の振動/音が他方の電磁駆動ユニット37(31)に伝わりにくくなり、異常な共振音が生じなくなり、電磁駆動ユニット31、37の音質を高く保つことができる。
(4)電磁駆動ユニット31、37の取り付け位置
上記電磁駆動ユニット31は響板8の左端であって、棚板14のすぐ下の位置に取り付けられている。電磁駆動ユニット37は響板8の右端であって、棚板14と底板4のほぼ中間位置に取り付けられている。
これにより、電磁駆動ユニット31、37は、上記響板8の柾目または木目に沿った同一線上からずれた位置、及び上記各響棒の各長手方向に沿った同一線上からもずれた位置の響板の表面に取り付けられる。
ここで、電磁駆動ユニット37は、響板8の右端であって、棚板14のすぐ下の位置に取り付けられてもよい。この場合でも、電磁駆動ユニット31、37は、上記響板8の柾目または木目に沿った同一線上からずれた位置、及び上記各響棒の各長手方向に沿った同一線上からもずれた位置の響板の表面に取り付けられる。
これにより、電磁駆動ユニット31及び37からの振動/音が、響板8の柾目または木目に沿ったある線上に偏らず、響棒9…の一部に沿って偏らなくなり、したがって、響板8の振動/音が響板の一部に偏ることがなく、響板8全体に均一に伝達され、また響板8への振動/音の伝達が響板8の隅々までほぼ同じ速度で伝わり、響板8全体が均一に振動/発音し、響板8からの楽音の変質/歪みがなくなる。
また、上記電磁駆動ユニット31及び37は、上記響板8のほぼ中心を挟んで、できるだけ互いに離間される位置に取り付けられることにもなる。できるだけ互いに離間される位置は、響板8の隅部/頂点の四隅になる。しかし、響板8の隅部/頂点の四隅を駆動させても、響板8の音量は大きくならない。
響板8の音量を大きくするには、響板8の中心に電磁駆動ユニット31及び37を取り付けなくてはならない。しかし、響板8の中心に複数の電磁駆動ユニット31及び37を接近して取り付けると、互いに干渉しあって響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまう。
そこで、両者の調和をはかるため、電磁駆動ユニット31及び37は、上記響板8のほぼ中心を挟んで、できるだけ互いに離間される位置に取り付けられることが良いことになる。
上記響板8は、例えば長方形、ひし形のように、互いに直交する方向において、長い部分つまり長手方向と短い部分つまり幅方向とがあるものであり、電磁駆動ユニット31及び37は、この長手方向に沿って離間され、響板8の左右の端縁付近に取り付けられている。これにより、互いに干渉しあって響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
また、電磁駆動ユニット31及び37は、響板8の中心を挟んで互いにほぼ対称な位置に取り付けられる。これにより、電磁駆動ユニット31及び37からの各振動/各音の響板への伝達に、音量・音質のアンバランスが生じず、電磁駆動ユニット31及び37からの各振動/各音を均等に響板8に伝えることができる。
さらに、上記響板8は長方形、正方形、六角形などの、線対称の形状をしており、この線対称のほぼ軸線上の位置に、上記電磁駆動ユニット31及び37は、取りつけられている。これにより、電磁駆動ユニット31及び37からの各振動/各音が響板8の重心・中心に対して効率よく伝わり、響板8の音量が低下してしまうことがなくなる。
また、電磁駆動ユニット31及び37は、楽音装置の底面、つまり底板4からほぼ同じ高さに取り付けられる。これにより、電磁駆動ユニット31及び37からの各振動/各音が床面、底板4に反射してかもし出す音場・音の雰囲気にアンバランスが生じず、電磁駆動ユニット31及び37からの各振動/各音が左右均等に発せられる。
電磁駆動ユニット31及び37は、実際には、響板8の中心、中心線または対称のほぼ軸線からやや下にずれた位置に取り付けられている。これにより、電磁駆動ユニット31及び37からの音が上方より下方に向かって強く放射され、演奏者は下から音を感じることができる。
むろん、電磁駆動ユニット31及び37は、響板8の中心、中心線または対称のほぼ軸線からやや上にずれた位置に取り付けられてもよい。これにより、電磁駆動ユニット31及び37からの音が下方より上方に向かって強く放射され、演奏者は上から音を感じることができる。
さらに、電磁駆動ユニット31及び37は、上記響板8において楽音装置の内側に取り付けられ、上記響棒9…は当該響板において楽音装置の外側に取り付けられている。したがって、電磁駆動ユニット31及び37は、響棒9…に当たることを防ぐことができる。しかも、楽音装置の外から電磁駆動ユニット31及び37を隠すことができ外観を損なうことがない。
しかも、電磁駆動ユニット31及び37は、響棒9…に当接しないで、響棒9…に対応した位置に取り付けることも可能となる。これは、上述の、響板8のほぼ中心を挟んで、できるだけ互いに離間される位置、響板8のほぼ中心を挟んで、できるだけ互いに離間される位置に電磁駆動ユニット31及び37が取り付けられる場合などに、電磁駆動ユニット31及び37の取り付け位置が響棒9…の位置と重なっても大丈夫となり、上記音質を維持してアンバランスを生じない効果を保つことができる。さらに、電磁駆動ユニット31及び37の大きさは、響棒9…の間隔より大きくでき、大きさに制限がなくなる。
図8は上記電磁駆動ユニット31及び37のうち、一方、例えば、電磁駆動ユニット31のみを響板8に取り付けた実施例を示す。この実施例では、上記響板8の線対称のほぼ軸線E上の響板8の辺縁の近辺の位置に取り付けられることになる。なお、電磁駆動ユニット37のみを響板8に取り付けてもよい。
そして、上記響板8の柾目または木目に沿った方向Pは、この軸線Eと上記響板8の辺縁の方向ABとからほぼ等角になる。また各響棒9の各長手方向に沿った方向Sは、この軸線Eと響板8の辺縁の方向ABとからもほぼ等角になる。このような位置の響板8の表面に電磁駆動ユニット31は取り付けられる。
このような等角位置により、電磁駆動ユニット31からの振動/音が、響板8の柾目または木目に沿ったある線上に偏らず、響棒9…の一部に沿って偏らなくなり、したがって、響板8の振動/音が響板の一部に偏ることがなく、響板8全体に均一に伝達され、また響板8への振動/音の伝達が響板8の隅々までほぼ同じ速度で伝わり、響板8全体が均一に振動/発音し、響板8からの楽音の変質/歪みがなくなる。
なお、図8では、軸線方向E、響板の辺縁方向AB、響板8の柾目または木目に沿った方向P、各響棒9の各長手方向に沿った方向Sの交点は、電磁駆動ユニット31の中心からずれているが、これは図面を見易くするためであり、電磁駆動ユニット31の中心に移動しても同じである。
電磁駆動ユニット31は、響板8の中心に位置してもよいが、上記位置のように中心からずれた位置のほうが、響板8の音質はよくなる。これは、太鼓の幕を叩くのは中心から辺縁にずれた位置を叩くほうが、音質が良くなるのと同様の理由である。しかし、中心からずれると、響板8周縁まで全体に均一に振動/音が伝わらなくなる。そこで上記のような位置に取り付ければ、響板8全体に均一に振動/音が伝わる。
図8では、電磁駆動ユニット31は、響板8の線対称の軸線Eよりやや下に位置している。これにより、楽音装置の下方から床に渡って音が伝わっていくような演奏感触を得ることができる。
上記電磁駆動ユニット31は、楽音装置の複数の弦11…が架けられる上記駒20の各部分からほぼ等距離の位置に取り付けられる。これにより、電磁駆動ユニット31からの振動/音が駒20を通じて各弦11…に均一に伝わり、一部の弦11…に偏ることがなく、電磁駆動ユニット31による振動/音と弦11…の共鳴との調和を取ることができる。
この場合の電磁駆動ユニット31から等距離の位置にある駒20は、全ての駒20ではなく、図4、図8に示すように、低音の弦11…と中音の弦11…だけに限られる。これは、高音の波長は短いために、電磁駆動ユニット31からの長さの差が表れにくいからである。
しかし、電磁駆動ユニット31のほか、電磁駆動ユニット37も取り付ければ、高音の弦11…については、弦11…が架けられる上記駒20の各部分から、電磁駆動ユニット37まで、ほぼ等距離の位置に取り付けられる。
したがって、電磁駆動ユニット31からは主に低音または中音を出力し、電磁駆動ユニット37からは主に高音を出力すれば、低音から高音にかけて全ての音域/周波数帯域で、電磁駆動ユニット31、37から、弦11…が架けられる駒20の各部分まで、ほぼ等距離となり、電磁駆動ユニット31、37からの振動/音が駒20を通じて各弦11…に均一に伝わり、一部の弦11…に偏ることがなく、電磁駆動ユニット31、37による振動/音と弦11…の共鳴との調和を取ることができる。以上のことは他方の電磁駆動ユニット37だけを楽音装置に単独で取り付けた場合についても同様に成立する。
(5)駆動回路
図7は、電磁駆動ユニット31、37の駆動回路(楽音制御回路)を示す。パンポット回路41からは、デジタルから変換されたアナログの、音像を形成するための複数の左右のチャンネル楽音信号が出力される。
パンポット回路41からの左の楽音信号Lは、左DSPフィルタ42Lでフィルタ制御され、左4バンドイコライザー43Lで周波数特性が平坦にされ、左位相制御回路44Lで楽音信号Lの位相が変更され、左アンプ45Lで増幅されて、左側の上記電磁駆動ユニット31に送られ、上記響板8から放音出力される。
パンポット回路41からの右の楽音信号Rは、左DSPフィルタ42Rでフィルタ制御され、右4バンドイコライザー43Rで周波数特性が平坦にされ、右位相制御回路44Rで楽音信号Rの位相が変更され、右アンプ45Rで増幅されて、右側の上記電磁駆動ユニット37に送られ、上記響板8から放音出力される。
左位相制御回路44L及び右位相制御回路44Rには、楽音信号R、Lの位相の変更量を決定する位相制御データが送り込まれる。このような位相制御データは、上記楽音信号L、Rの音楽的ファクタデータ、外部からMIDI回路を通じて送られてくる音楽的ファクタデータ、上記楽音装置の操作パネルから入力された音楽的ファクタデータ空変換される。
この位相制御データの値は、左右の楽音信号L、Rに対して、異なっている。これにより、電磁駆動ユニット31、37に送り込まれる楽音信号のそれぞれの位相は異なり、響板8の左部と右部とで位相の異なる楽音を放音させ、ステレオ音響を形成できる。このステレオ音響の状態を上記音楽的ファクタに応じて変更できる。
上述のように上記響板8のほぼ中心を挟んで、電磁駆動ユニット31、37は、できるだけ互いに離間される位置に取り付けられるので、両電磁駆動ユニット31、37の楽音信号の位相がずれていても、お互いに打ち消しあったり音質が歪んだりしてしまうことがない。
なお、この位相制御データの値は、左右の楽音信号L、Rに対して、同じでもよい。これにより、電磁駆動ユニット31、37に送り込まれる楽音信号のそれぞれの位相は同じとなり、両電磁駆動ユニット31、37からの楽音信号を互いに強めあって、楽音信号のレベルを大きくしなくても響板8の音量を大きくできる。この場合、両電磁駆動ユニット31、37を互いに接近させたり、互いに響板8の中心に近づけたりすることも可能となる。
したがって、両楽音信号L、Rのそれぞれの位相制御データの値の差は、両電磁駆動ユニット31、37の離間距離が大きくなるほど、大きくされてもよい。これにより、両電磁駆動ユニット31、37に送り込まれる上記楽音信号L、Rのそれぞれの位相差は、この複数の電磁駆動ユニット31、37の離間距離が大きくなるほど大きくなり、音量を相乗的に大きくする状態からステレオ音響を形成する状態まで段階的に変えていくことができる。
上記左DSPフィルタ42L、右DSPフィルタ42Rでは、周波数特性の制御がなされ、例えば、左DSPフィルタ42Lをローパス、右DSPフィルタ42Rをハイパスとしたり、左DSPフィルタ42Lと右DSPフィルタ42Rとのカットオフ周波数を異ならせて、右DSPフィルタ42Rからより低音が通過するようにしたりされる。これにより、響板8の右がであって鍵盤の低音域側より、より低音が出力される。こうして、実際のアコースティック鍵盤楽器により近い音の出方を実現できる。
すなわち、実際のピアノなどのアコースティック楽器では、操作している鍵盤自体に、発音している楽音の振動が直に伝わってくる。この伝達振動は、鍵盤の低音域を操作していると、この低音域の鍵に低音の振動が伝わってくるし、鍵盤の高音域を操作していると、この高音域の鍵に高音の振動が伝わってくるし、鍵盤の中音域を操作していると、この中音域の鍵に中音の振動が伝わってくる。これは、弦楽器、管楽器、打楽器でも同様である。このようなアコースティック楽器の生の演奏感覚を本楽音装置では得ることができる。
(6)他の実施の形態
本件発明は上記実施例に限定されず、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、三角金具36(支持体)、L字金具32(支持体)は、底板4、棚板14だけでなく、ピン板3、左親板6、右親板7、下前板18、上前板19などの内側にまたは外側に取り付けられてもよい。
金具36、32(支持体)の数及び電磁駆動ユニット31、37(加振体)の数は、3つ以上であってもよく、金具36、32(支持体)のそれぞれの長さは短いものから長いものまで種々の異なる長さであってもよい。この場合、金具36、32(支持体)が長くなるにしたがって、柔軟板21の厚さは厚くなり、金具36、32(支持体)が短くなるにしたがって、柔軟板21の厚さは薄くなりまたは無くなる。
電磁駆動ユニット(電磁駆動体/加振体)31、37は、響板8の右方中央と左方中央のほか、上方中央と下方中央、右上隅と左下隅、右下隅と左上隅、中心付近などに取り付けられてもよい。
電磁駆動ユニット31、37は響板8に対して3つ以上、4つ以上取り付けられてもよく、響板8の数も複数としてもよい。この場合、右方中央と左方中央と上方中央と下方中央に取り付けられたり、右上隅と左下隅と右下隅と左上隅に取り付けられたりする。
電磁駆動ユニット31、37及び響板8は、本楽音装置の上面、前面、左側面または右側面などに設けられてもよいし、ツィーターまたはスピーカーで代用可能である。電磁駆動ユニット31、37には同じ楽音信号であってモノラル信号が送り込まれてもよいし、電磁駆動ユニット31、37は単数とされてもよく、送り込まれる楽音信号はモノラル信号でもよい。
電磁駆動ユニット31、37は、長方形の響板8の各長辺の辺縁の中央付近または長辺の辺縁の中央付近からずれた近傍のほか、長方形の響板8の各短辺の辺縁の中央付近または短辺の辺縁の中央付近からずれた近傍に設けられてもよい。この場合でも、響板8の線対称のほぼ軸線上の響板8の辺縁の近辺の位置に設けられることになる。
電磁駆動ユニット31、37は、響板8の各辺の中央付近のほか、角/隅付近に取り付けられても良い。この場合、音量は低下する可能性はあるが、各電磁駆動ユニット31、37相互の干渉の可能性が小さくなる。電磁駆動ユニット31、37は、上記響板8の幅方向に沿って離間され、当該響板8端縁付近に取り付けられてもよい。この場合、各電磁駆動ユニット31、37相互の干渉の可能性は高まるが、音量は増加する。
電磁駆動ユニット31、37は、響板8の中心を挟んで互いにほぼ対称な位置に取り付けられるが、非対称な位置に取り付けられてもよい。この場合、響板8の中心から各電磁駆動ユニット31、37までの距離は異なる。電磁駆動ユニット31、37は、楽音装置の底面から異なる高さに取り付けられてもよい。これにより、複数の電磁駆動ユニット31、37のうちの一方の振動/音を床の方から伝わるようにし、他方の振動/音を楽音装置の上付近または中央付近から伝わるようにできる。
電磁駆動ユニット31、37は、下前板18の内側に取り付けられたが、一方または両方とも上前板19の内側に取り付けられてもよい。下前板18及び上前板19の一方の内側とした方が、取り付けが容易となる。
電磁駆動ユニット31、37は、響板8のほか、底板4、屋根板5、左親板6、右親板7、下前板18、上前板19などに取り付けられてもよい。電磁駆動ユニット31、37は、響板8の内側/内面ではなく、響板8の外側/外面に取り付けられてもよい。
電磁駆動ユニット31、37に送り込まれる楽音信号L、Rは、同じレベルであるが、異なるレベルにしてもよい。これにより、電磁駆動ユニット31、37で形成されるステレオ音響がより強調される。
響板8の響棒9…の一部または全部が省略されても良い。響板8の響棒9…の断面形状は方形、三角形、多角形、円形、楕円、半円形、かまぼこ形、扇形など細長ければどのような形状でもよいし、線対称の形状以外の形状でもよい。響棒9…の両端は細くなっているが、響棒9…の太さは均一でもよいし、細い太いが交互に入れ換わったり、中央が細くなったり太くなったり、端が太くなったり細くなったり、真直ぐなもののほか湾曲していてもよい。
響棒9…は、等間隔に取り付けられてもよいし、不等間隔に取り付けられても良いし、垂直方向/縦向きに取り付けられてもよいし、水平方向/横向きに取り付けられてもよいし、これらが混在してもよい。響棒9…は響板8の外面/後面/背面ではなく、内面/前面/正面にも取り付けられてもよいし、両面に取り付けられても良い。この場合、響板8の柾目と垂直方向または斜めに交差するように取り付けられる。
響棒9…の各間隔は、電磁駆動ユニット31、37の直径より小さくてもよい。この場合、電磁駆動ユニット31、37は響棒9…の間に位置せず、響棒9…の一本または複数に重なって取り付けられることになる。電磁駆動ユニット31、37は響板8の中心に取り付けられてもよい。響棒9…の各間隔は、鍵盤22の中の低音域の楽音が出力指示される側に近づくにしたがって徐々に広くなっても、徐々に狭くってなってもよい。各響棒9…は互いに平行であったが、一部または全部が平行でなくてもよい。
楽音装置本体(底板4、屋根板5、左親板6、右親板7、響板8、下前板18、上前板19)は、箱型であったが、八面体、十二面体、円筒、円柱、テーパ状、ラッパ状、球形、湾曲立体など、どのような形状であってもよい。響板8の形状は方形以外に、円形、多角形、環状など、平坦であればどのような形状でもよい。
上記響板8は、平坦であるが、凹条に湾曲していても良いし、凸状に湾曲していてもよい。これにより、響板8から発生される楽音の波形は平面波ではなく、球面波になる。電磁駆動ユニット(電磁駆動体)31、37は、スピーカー、ツィーターなどに置き換えられても良い。
また、本件発明の装置を取り付ける楽器は、アップライトピアノのほか、グランドピアノ、電子ピアノ、電子オルガン、チェンバロ、電子チェンバロ、鍵盤ハーモニカ、電子鍵盤ハーモニカなど鍵盤があればどのような楽器でもよいし、弦楽器でもよいし、鍵盤楽器以外の楽器などでもよい。この場合、響板8はほぼ垂直方向/ほぼ縦向きではなくほぼ水平方向/ほぼ横向きに配置されるので、電磁駆動ユニット31、37もほぼ横向き/水平方向向きにされて取り付けられる。響棒9…の一部または全部は省略可能である。
さらに、上記複数種類の楽音からなる楽音信号は、複数種類の楽器、音色、音高または/及びタッチの楽音の信号からなっており、ポリフォニックに発音される楽音の信号であり、低音、中音、高音の各周波数帯域の楽音が含まれている。このような楽音信号には、楽器の弦自体、管自体、打自体の部分の楽音の信号ほか、響板8部分の楽音の信号も含まれるが、弦自体、管自体、打自体の部分の楽音の信号のみでもよいし、実際のアコースティック楽器の響板8部分の楽音の信号のみでもよいし、上記複数種類の楽音からなる楽音信号はPCMなどのデジタル信号でも良い。
電磁駆動ユニット31、37が響板8の中心からずれた位置に取り付けられているので、響板8の振動が共振したりしてしまうことがなくなり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなり、実際のアコースティックな楽器の楽音に近づけることができる。
この電磁駆動ユニット31、37は、響棒9…の間に取り付けられてもよい。これにより、響板8を電磁駆動ユニット31、37で振動させてから、この響板8の振動が響棒9…を通じて響板8全体に伝達され、響板8より響棒9の方が先に音が伝達されることがなくなり、響板8全体に音が均一に伝わることができる。
上記響棒9…の各間隔は、10cm乃至30cmであり、等間隔ではなく、不等間隔となっていてもよい。これにより、響棒9…が振動の節となって、各響棒9…の間で同じ周波数の音が共振してしまうことがなくなり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。このような響棒9…は響板8の後面側以外に前面側に取り付けられてもよい。
響棒9…の各間隔は不均一としてもよい。これにより、響棒9…の各間隔の響板8部分から発せられる楽音に高さに違いが生じ、響板8の振動が共振したりしてしまうことがなくなり、響板8から発せられる楽音が不用意に変異したり音量が減少したりしてしまうことがなくなり、実際のアコースティックな楽器の楽音に近づけることができる。
電磁駆動ユニット31、37に送り込まれる上記楽音信号のそれぞれの大きさ/レベル/音量または周波数帯域は同じであるが、一方が他方より大きくてもよいし、一方が高音域、他方が低音域でもよい。これにより、響板8の音量分布を部分的に変えることができるし、響板8の周波数帯域分布を部分的に変えることもできる。
(7)他の発明の効果
[1]振動されて音を放射する平板状の楽器の響板であって、この響板の各部の柾目または木目はほぼ同一方向に揃っている響板と、 この響板表面に取り付けられる複数の響棒であって、この各響棒の各長手方向は上記響板の柾目または木目の方向とは異なる方向にほぼ揃っている複数の響棒と、を備えた楽音装置に対して、 複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、上記楽器の響板を駆動させて同響板より音を放射させる加振体につき、 この加振体を一端で支えるとともに、他端で上記楽器本体に固定され、この加振体が響板に当接される力はほぼ同じとされ、上記加振体を上記響板に当接させる支持体において、この支持体の一端から他端までの長さが長いほど、加振体と響板との間に柔軟体が介在され、短いほど同柔軟体が介在されないことを特徴とする楽音装置の生産方法または加工方法。
[2]振動されて音を放射する平板状の楽器の響板であって、この響板の各部の柾目または木目はほぼ同一方向に揃っている響板と、 この響板表面に取り付けられる複数の響棒であって、この各響棒の各長手方向は上記響板の柾目または木目の方向とは異なる方向にほぼ揃っている複数の響棒と、 複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、上記楽器の響板を駆動させて同響板より音を放射させる複数の加振体と、 この加振体を一端で支えるとともに、他端で上記楽器本体に固定され、この加振体が響板に当接される力はほぼ同じとされ、上記加振体を上記響板に当接させる支持体において、この支持体の一端から他端までの長さが長いほど、加振体と響板との間に柔軟体が介在され、短いほど同柔軟体が介在されないことを特徴とする楽音装置。
[3]上記支持体の一端から他端までの長さが長いほど、上記柔軟体の厚さは厚くなることを特徴とする請求項2記載の楽音装置。ここで、支持体の一端から他端までの長さが長いほど、加振体の加振に対して響板の振動が追従しにくく遅れ易くなるが、介在される柔軟板によってこの遅れが吸収され、響板と加振体とが互いにぶつかり合って生じる異常な共振音が生じなくなる。したがって、介在される柔軟板によるこの遅れの吸収が、連続的/段階的/無段階に実現される。
[4]上記加振体が響板に当接される力は、加振体の自重、自重の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、十数倍または数十倍より大きく、楽器本体内の駒の上記響板への加圧力より小さいことを特徴とする請求項2または3記載の楽音装置。これにより、加振体が響板に当接される力が加振体の自重より大きいと、加振体の加振力が確実に響板に伝えられ、響板と加振体とが互いにぶつかり合って生じる異常な共振音が生じなくなる。また、加振体が響板に当接される力が楽器本体内の駒の響板への加圧力より小さいと、弦の振動/音が駒を通じて響板に伝わるのを妨害して支障を与えることがなくなり、加振体による振動/音以外に弦による振動/音も変質されずに確実に響板から発音/放射される。
[5]上記一端から他端までの長さが長い支持体は、鍵盤楽器の底板の上面に取り付けられ、上記一端から他端までの長さが短い支持体は、鍵盤楽器の棚板の下面に取り付けられることを特徴とする請求項2、3または4記載の楽音装置。これにより、加振体からの音の放射位置を鍵盤や棚板に近い位置にすることができ、鍵盤を演奏/操作している指/手が、音の放射/振動を感じることができ、実際の演奏に近い感触を得ることができる。また、各支持体の加振体の間が、この支持体、底板、棚板、左親板、右親板などが介在して、一方の加振体の振動/音が他方の加振体に伝わりにくくなり、異常な共振音が生じなくなり、加振体の音質を高く保つことができる。
[6]上記複数の加振体の一部は上方から吊り下げられ、他の一部は下方から持ち上げられていることを特徴とする請求項2、3、4または5記載の楽音装置。これにより、加振体からの音の放射位置を鍵盤や棚板に近い位置にすることができ、鍵盤を演奏/操作している指/手が、音の放射/振動を感じることができ、実際の演奏に近い感触を得ることができる。また、各支持体の加振体の間が、この支持体、底板、棚板、左親板、右親板などが介在して、一方の加振体の振動/音が他方の加振体に伝わりにくくなり、異常な共振音が生じなくなり、加振体の音質を高く保つことができる。
[7]上記複数の加振体は、上記響板の長手方向に沿って離間され、当該響板の端縁付近に取り付けら得ることを特徴とする請求項2、3、4、5または6記載の楽音装置。これにより、複数の加振体が接近して複数の加振体からの振動/音が互いに干渉しあって響板から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
[8]上記複数の加振体は、楽音装置の底面からほぼ同じ高さに取り付けられることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の楽音装置。これにより、加振体からの各振動/各音が床面、楽音装置の底板に反射してかもし出す音場・音の雰囲気にアンバランスが生じず、加振体からの各振動/各音が左右均等に発せられる。
[9]上記響板は線対称の形状をしており、この線対称のほぼ軸線上の位置に、上記加振体は取りつけられていることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7または8記載の楽音装置。これにより、加振体からの各振動/各音が響板の重心・中心に対して効率よく伝わり、響板の音量が低下してしまうことがなくなる。
[11]振動されて音を放射する平板状の楽器の響板であって、この響板の各部の柾目または木目はほぼ同一方向に揃っている線対称の響板と、 この響板表面に取り付けられる複数の響棒であって、この各響棒の各長手方向は上記響板の柾目または木目の方向とは異なる方向にほぼ揃っている複数の響棒と、を備えた楽音装置に対して、 複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、上記楽器の響板を駆動させて同響板より音を放射させる加振体を、上記響板の線対称のほぼ軸線上の響板の辺縁の近辺の位置であって、上記響板の柾目または木目に沿った方向が、この軸線と上記響板の辺縁の方向とからほぼ等角になるとともに、各響棒の各長手方向に沿った方向が、この軸線と上記響板の辺縁の方向とからもほぼ等角になる位置の響板の表面に取り付けることを特徴とする楽音装置の生産方法または加工方法。
[12]振動されて音を放射する平板状の楽器の響板であって、この響板の各部の柾目または木目はほぼ同一方向に揃っている線対称の響板と、 この響板表面に取り付けられる複数の響棒であって、この各響棒の各長手方向は上記響板の柾目または木目の方向とは異なる方向にほぼ揃っている複数の響棒と、 複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、上記楽器の響板を駆動させて同響板より音を放射させる加振体であって、上記響板の線対称のほぼ軸線上の響板の辺縁の近辺の位置であって、上記響板の柾目または木目に沿った方向が、この軸線と上記響板の辺縁とからほぼ等角になるとともに、各響棒の各長手方向に沿った方向が、この軸線と上記響板の辺縁とからもほぼ等角になる位置の響板の表面に取り付けられる加振体とを備えたことを特徴とする楽音装置。
[13]上記加振体は、楽音装置の複数の弦が架けられる駒の各部分からほぼ等距離の位置に取り付けられることを特徴とする請求項12記載の楽音装置。これにより、加振体からの振動/音が駒を通じて各弦に均一に伝わり、一部の弦に偏ることがなく、加振体による振動/音と弦の共鳴との調和を取ることができる。
[14]振動されて音を放射する平板状の楽器の響板であって、この響板の各部の柾目または木目はほぼ同一方向に揃っている響板と、 この響板表面に取り付けられる複数の響棒であって、この各響棒の各長手方向は上記響板の柾目または木目の方向とは異なる方向にほぼ揃っている複数の響棒と、を備えた楽音装置に対して、 複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、上記楽器の響板を駆動させて同響板より音を放射させる複数の加振体を、上記響板の柾目または木目に沿った同一線上からずれた位置及び上記各響棒の各長手方向に沿った同一線上からもずれた位置の響板の表面に取り付けることを特徴とする楽音装置の生産方法または加工方法。
[15]振動されて音を放射する平板状の楽器の響板であって、この響板の各部の柾目または木目はほぼ同一方向に揃っている響板と、 この響板表面に取り付けられる複数の響棒であって、この各響棒の各長手方向は上記響板の柾目または木目の方向とは異なる方向にほぼ揃っている複数の響棒と、 複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、上記楽器の響板を駆動させて同響板より音を放射させる複数の加振体であって、上記響板の柾目または木目に沿った同一線上からずれた位置及び上記各響棒の各長手方向に沿った同一線上からもずれた位置の響板の表面に取り付けられる複数の加振体と、を備えたことを特徴とする楽音装置。
[16]上記複数の加振体は、上記響板の長手方向に沿って離間され、当該響板の端縁付近に取り付けられることを特徴とする請求項15記載の楽音装置。これにより、複数の加振体が接近して複数の加振体からの振動/音が互いに干渉しあって響板から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
[17]上記複数の加振体は、上記響板のほぼ中心を挟んで、できるだけ互いに離間される位置に取り付けられることを特徴とする請求項15または16記載の楽音装置。これにより、複数の加振体が接近して複数の加振体からの振動/音が互いに干渉しあって響板から発せられる楽音が不用意に変異したり変質したり歪んだり音量が減少したりしてしまうことがなくなる。
[18]上記加振体は、上記響板の中心を挟んで互いにほぼ対称な位置に取り付けられることを特徴とする請求項15、16または17載の楽音装置。これにより、加振体からの各振動/各音の響板への伝達に、音量・音質のアンバランスが生じず、加振体からの各振動/各音を均等に響板8に伝えることができる。
[19]上記複数の加振体は、楽音装置の底面からほぼ同じ高さに取り付けられることを特徴とする請求項5、6、7または8記載の楽音装置。これにより、加振体からの各振動/各音が床面、楽音装置の底板に反射してかもし出す音場・音の雰囲気にアンバランスが生じず、加振体からの各振動/各音が左右均等に発せられる。
[20]上記響板は線対称の形状をしており、この線対称のほぼ軸線上の位置に、上記加振体は取りつけられていることを特徴とする請求項15、16、17、18または19記載の楽音装置。これにより、加振体からの各振動/各音が響板の重心・中心に対して効率よく伝わり、響板の音量が低下してしまうことがなくなる。
[21]上記加振体は、上記響板において楽音装置の内側に取り付けられ、上記響棒は当該響板において楽音装置の外側に取り付けられていることを特徴とする請求項12、15、16、17、18、19または20記載の楽音装置。これにより、加振体が響棒に当たることを防ぐことができる。しかも、楽音装置の外から加振体を隠すことができ外観を損なうことがない。しかも、加振体は、響棒に当接しないで、響棒に対応した位置に取り付けることも可能となる。
[22]上記複数の加振体に送り込まれる上記楽音信号のそれぞれの位相は異なっていることを特徴とする請求項12、15、16、17、18、19、20または21記載の楽音装置。これにより、1つの響板で位相の異なる音を出して、ステレオ音響を形成できる。しかも、響板からの音は平面波なので、音像を形成できる範囲を一点ではなく広くできる。
[23]上記複数の加振体に送り込まれる上記楽音信号のそれぞれの位相は同じであることを特徴とする請求項12、15、16、17、18、19、20、21または22記載の楽音装置。これにより、響板からの音が強め合って大きくなる。
[24]上記複数の加振体に送り込まれる上記楽音信号のそれぞれの位相差は、この複数の加振体の離間距離が大きくなるほど大きくなることを特徴とする12、15、16、17、18、19、20、21、22または23記載の楽音装置。これにより、音量を相乗的に大きくする状態からステレオ音響を形成する状態まで段階的に変えていくことができる。