JP5027694B2 - 全反射蛍光x線分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、円板状の試料の任意の測定部位を測定する全反射蛍光X線分析装置に関する。
全反射蛍光X線分析装置は半導体製造プロセスの品質管理分析において、ウェーハ、ガラス基板、GaAs基板などの分析に用いられている。ウェーハなどの縁近傍の周辺部は半導体製造プロセスにおいて汚染し易いために、チップの製造には使用されていなかったが、ウェーハが大径化する一方で、超小型のマイクロチップが製造されており、ウェーハの縁近傍の周辺部が利用できれば、その領域だけで数千個のマイクロチップを製造することができる。そのため、ウェーハの縁近傍の周辺部をできるだけ有効に利用するために、ウェーハの縁の近傍までの領域を測定してウェーハの縁近傍の周辺部の汚染を調べることができる全反射蛍光X線分析装置がある(参照、特許文献1)。
例えば図19に示すように、試料Sの表面に対し微小な入射角度でX線管11から試料Sの縁方向から中心方向に1次X線12を照射して、発生する蛍光X線15の強度を、試料Sにおける1次X線12の照射位置の直上にあるSSD等の検出器16で測定する全反射蛍光X線分析装置がある。この全反射蛍光X線分析装置でウェーハの縁近傍の周辺部を測定すると、図20の拡大図に示すように、1次X線12の一部が板状の試料Sの鉛直な端面に照射され、四方に向けて強い散乱X線9が発生する。この散乱X線9およびこの散乱X線9によって試料Sの周辺にある全反射蛍光X線分析装置の筐体内壁や試料Sのステージの構成材料が励起されて発生する蛍光X線の一部は、図19の検出器16に入射し、測定すべき蛍光X線15に対して大きなバックグラウンドや不純線となり、実質的に測定が不可能になる。例えば試料Sの縁から6mm未満の部位は、実質的に測定ができず、これでは、ウェーハ1枚あたりの取得チップ数を増やすため、できるだけウェーハの縁近傍まで測定したいという要求に応ずることができない。
そのため、特許文献1に記載の全反射蛍光X線分析装置は、図21に示すようにX線管11から試料Sの中心方向から縁方向に1次X線12を照射している。この装置では、1次X線12の一部が板状の試料Sの鉛直な端面に照射されることによって四方に向けて発生する散乱X線9を防止することができる。
特開2002−5858号公報
しかし、ステージで試料の縁を検出器の視野内に移動させると、図22に示すように、1次X線12の一部分が試料Sに照射されず、全反射蛍光X線分析装置の筐体内壁20に照射され、そこから発生した散乱X線がステージ21に照射され、筐体内壁20やステージ21を構成している材料、例えばステンレスやアルミニウムから散乱X線や不純線9が発生して検出器に入射し、測定すべき蛍光X線15に対して大きなバックグラウンドとなり、実質的に測定が不可能になる。つまり、試料Sの縁からはみ出した1次X線12によって散乱X線や不純線が発生して検出器に入射し、ウェーハなどの円板状の試料Sの縁近傍の周辺部における任意の測定部位について正確な分析ができない。
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、1次X線の一部分によって全反射蛍光X線分析装置の筐体内壁やステージから散乱X線や不純線が発生してもそれらが検出器に入射するのを防止して、ウェーハなどの円板状の試料の縁近傍の周辺部における任意の測定部位について正確な分析ができる全反射蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の全反射蛍光X線分析装置は、円板状の試料の表面に微小な入射角度で1次X線を入射させ、発生する蛍光X線の強度を検出器で測定する全反射蛍光X線分析装置であって、試料を移動させることにより、試料の表面における任意の測定部位を前記検出器の視野内に移動させるステージと、試料の背面側に配置されており、前記ステージに支持され、前記ステージの移動にしたがって移動し、前記検出器の視野の一部分だけを試料が占める場合に、前記検出器の視野の残部を占めるX線遮蔽カバーとを備える。
本発明の全反射蛍光X線分析装置によれば、検出器の視野の一部分だけを試料が占める場合に、検出器の視野の残部を占めるX線遮蔽カバーによって、1次X線の一部分によって全反射蛍光X線分析装置の筐体内壁やステージから散乱X線や不純線が発生してもそれらが検出器に入射するのを防止するので、ウェーハなどの円板状の試料の縁近傍の周辺部における任意の測定部位について正確な分析ができる。
本発明の全反射蛍光X線分析装置においては、前記ステージが、それぞれ回転駆動される第1太陽軸、第2太陽軸および第3太陽軸を備えた3重軸である3重太陽軸と、前記第3太陽軸に固定された太陽アームと、前記太陽アームの回転端部に回転自在に支持された第1遊星軸、およびその第1遊星軸に対して回転自在に設けられた第2遊星軸を備えた2重軸である2重遊星軸と、前記第2太陽軸に固定された第1太陽歯車、および前記第1遊星軸に固定され前記第1太陽歯車と連動して回転される第1遊星歯車と、前記第1太陽軸に固定された第2太陽歯車、前記第2遊星軸に固定され前記第2太陽歯車と連動して回転される第2遊星歯車、前記第2遊星軸に固定された遊星アーム、およびその遊星アームの回転端部に回転自在に支持された試料軸と、前記第1遊星軸に固定された第3遊星歯車、前記試料軸に固定され前記第3遊星歯車と連動して回転される試料歯車、および前記試料軸に固定された試料台とを備え、前記X線遮蔽カバーが前記遊星アームに固定されていることが好ましい。
本発明の全反射蛍光X線分析装置においては、試料が半導体製造用基板であり、前記X線遮蔽カバーが試料の主成分で構成された材料により形成されていることが好ましい。
この好ましい構成によれば、X線遮蔽カバーが測定する試料の主成分で構成された材料により形成されているので、1次X線の散乱X線によってX線遮蔽カバーから蛍光X線が発生して検出器に入射しても、その蛍光X線は、試料の主成分元素から発生する蛍光X線と同じであり、測定データに影響を与えることはない。このように、X線遮蔽カバーによって測定上の障害となる新たな散乱X線や不純線を発生することがないので、ウェーハなどの円板状の試料の縁近傍の周辺部における任意の測定部位についてよりいっそう正確な分析ができる。
以下、本発明の第1実施形態である全反射蛍光X線分析装置について説明する。図1に示すように、この全反射蛍光X線分析装置1は、シリコンウェーハなどの円板状の試料Sに、X線管11からのX線12を分光素子13で単色化して1次X線14として微小な入射角度、例えば0.05°で照射するX線源6と、載置された試料Sを回転、移動させるXYθステージ22および試料Sの傾きを調整するスイベルステージ23を備えるステージ21と、XYθステージ22に固定されたX線遮蔽カバー61と、試料Sから発生する蛍光X線15の強度を測定する半導体検出器であるSSDなどの検出器16とを備える。
図2のXYθステージ22の側面断面図に示すように、XYθステージ22は、図示しない駆動モータによりそれぞれ独立して回転駆動される第1太陽軸101、第2太陽軸102および第3太陽軸103を備えた3重軸である3重太陽軸104と、第3太陽軸103に固定された箱状の太陽アーム105と、太陽アーム105の回転端部に回転自在に支持された第1遊星軸106と、その第1遊星軸106に対して回転自在に設けられた第2遊星軸107を備えた2重軸である2重遊星軸108とを備えている。また、第2太陽軸102に固定された第1太陽歯車109、第1遊星軸106に固定され第1太陽歯車109と第1アイドラ歯車120を介して連動して回転される第1遊星歯車110、第1太陽軸101に固定された第2太陽歯車111、第2遊星軸107に固定され第2太陽歯車111と第2アイドラ歯車122を介して連動して回転される第2遊星歯車112、第2遊星軸107に固定された遊星アーム113、およびその遊星アーム113の回転端部に回転自在に支持された試料軸114を備えている。
さらに、第1実施形態のXYθステージ22は、第1遊星軸106に固定された第3遊星歯車115、試料軸114に固定され第3遊星歯車115と第3アイドラ歯車124連動して回転される試料歯車116、および試料軸114に固定された試料台117を備えている。第1、第2アイドラ歯車120,122は、それぞれ太陽アーム105に回転自在に支持された第1、第2アイドラ軸119,121に固定され、第3アイドラ歯車124は、遊星アーム113に回転自在に支持された第3アイドラ軸123に固定されている。
ここで、第1、第2太陽歯車109,111、第1、第2遊星歯車110,112および第1、第2アイドラ歯車120,122は、箱状の太陽アーム105の内部にあり、各軸106,107,119,121は軸受け126,127,130,131によって、箱状の太陽アーム105の密閉性を保持しつつ回転自在に支持されている。同様に、第3遊星歯車115、試料歯車116および第3アイドラ歯車124は、箱状の遊星アーム113の内部にあり、各軸123,128は軸受け132,128,129によって、箱状の遊星アーム113の密閉性を保持しつつ回転自在に支持されている。
また、太陽アーム105、2重遊星軸108、遊星アーム113、試料軸114および試料台117は、円板状の試料の中心と試料台117の中心Bとが合致するように試料台117に載せられる試料とともに、試料室内に設置されている。それら試料室内の全機構は、3重太陽軸104のみに支持され、第3太陽軸103は、軸受け125によって、回転自在に支持されている。さらに、3重軸たる3重太陽軸104および2重軸たる2重遊星軸108において、各同心軸間も、図示しない軸受けによって密閉性を保持しつつ回転自在に支持されている。
そして、第1実施形態のXYθステージ22においては、前記3重太陽軸104から前記2重遊星軸108までの距離と前記2重遊星軸108から前記試料軸114までの距離が等しく設定され、前記第1太陽歯車109と前記第1遊星歯車110とのギア比を1対1に、前記第2太陽歯車111と前記第2遊星歯車112とのギア比を2対1に、前記第3遊星歯車115と前記試料歯車116とのギア比を1対1に設定されている。
図3に示すように、例えば、直径200mmのシリコンウェーハの試料Sの縁を測定する場合について説明する。例えば、X線遮蔽カバー61はシリコンウェーハの円板の円弧の弦に沿って切り取った半円形状板で、その半径は100mmである。この円の中心Cを通り弦に垂直であり、試料台117の中心Bを通る中心線62が、遊星アーム113の回転軸心Aと試料台の中心Bとを結ぶ遊星アーム113の中心線151と45°の角度qをなしている。X線遮蔽カバー61の円の中心Cが試料台の中心Bから100mmの位置に、つまり、図4のXYθステージ22の側面図に示すように、検出器16の視野F(斜線部)の残部を占める位置に、X線遮蔽カバー61は箱状の遊星アーム113の上面に固定されている。
試料Sとして半導体製造用基板が測定されるので、X線遮蔽カバー61が試料Sの主成分で構成された材料により形成される。例えば、試料Sがシリコンウェーハ、ガラス基板の場合、X線遮蔽カバー61の材料としてシリコンウェーハまたはガラス板が用いられ、試料Sがガリウムひ素基板の場合、X線遮蔽カバー61の材料としてガリウムひ素基板が用いられる。
X線遮蔽カバー61が測定する試料Sの主成分で構成された材料により形成されているので、1次X線14の散乱X線がX線遮蔽カバー61に照射されて発生する蛍光X線15は試料Sの主成分元素から発生する蛍光X線15と同じエネルギ(同じ波長)で強度が低い蛍光X線15であり、その一部が検出器16に入射しても測定データに影響を与えることはない。例えば、試料SがシリコンウェーハでシリコンウェーハのX線遮蔽カバー61を用いた場合、試料Sの主成分元素であるケイ素から発生する蛍光X線15はSi−Kα線であり、X線遮蔽カバー61から発生する蛍光X線15もSi−Kα線である。試料SのSi−Kα線は大きな信号強度を有しており、この信号強度にX線遮蔽カバー61の低い強度のSi−Kα線の信号が加わっても測定データに何ら影響を与えることはない。つまり、X線遮蔽カバー61によって測定上の障害となる新たな散乱X線や不純線9を発生することがない。
次に、XYθステージ22の動作について説明する。まず、動作の第1原理について説明する。動作の第1原理は、試料台117の座標系X−Yの原点Oに対する公転半径の変更に関するものである。座標系X−Yの原点Oは3重太陽軸104の回転中心であり、また検出器16の視野Fの中心となる。今、図5の平面図に示すように、座標系X−Yに対し、太陽アーム105および遊星アーム113が、それらの中心線150,151がX軸に重なるように、一直線状に延びた位置にあるとする。ここで、太陽アーム105の中心線150とは、第2太陽歯車111の中心(座標系X−Yの原点Oに一致)Oと第2遊星歯車112の中心Aとを結ぶ直線であり、遊星アーム113の中心線151とは、第2遊星歯車112の中心Aと試料台117の中心Bとを結ぶ直線である。
ここで、図6に示すように、第1太陽軸101を回転駆動する駆動モータ(図示なし)の回転を固定することにより、第2太陽歯車111の座標系X−Yに対する回転を固定して、第3太陽軸103を回転駆動する駆動モータの回転により、太陽アーム105を座標系X−Yに対して例えば反時計方向に角度αだけ回転させる。すると、第2太陽歯車111と第2遊星歯車112とのギア比が2対1であることから、第2遊星歯車112は、第2アイドラ歯車122を介して、中心Aまわりに時計方向に角度2αだけ回転する。その結果、線分OAと線分ABの長さdは等しく設定されていることから、試料台117の中心BはX軸上を原点Oに向けて移動し、2d−2dcos αだけ原点Oに近づく。さらに、太陽アーム105を回転させれば、試料台117の中心BはX軸上をX座標2dから−2dまで移動させられる。これが、試料台117の座標系X−Yの原点Oに対する公転半径OBの変更である。
次に、動作の第2原理について説明する。動作の第2原理は、試料台117の座標系X−Yの原点Oに対する公転運動に関するものである。図6の状態から、第1太陽軸101と第3太陽軸103を同じ方向に同じ角度だけ回転駆動させると、すなわち、第2太陽歯車111と太陽アーム105を一体化して回転させると、太陽アーム105と遊星アーム113とのなす角2αは維持されたまま、すなわち試料台117の公転半径OBは2dcos αのまま、試料台117は原点Oのまわりを公転する。これが、試料台117の座標系X−Yの原点Oに対する公転運動である。以上の第1および第2の原理から、試料台117の中心Bは、原点Oを中心とする半径2dの円内の任意の位置をとることできる。
次に、動作の第3原理について説明する。動作の第3原理は、座標系X−Yにおける試料台117の中心Bまわりの回転運動に関するものである。今、動作の第1原理における図5の状態と同様に、図7に示すように、太陽アーム105および遊星アーム113が、それらの中心線150,151がX軸に重なるように、一直線状に延びた位置にあるとし、かつ、試料台117が例えばX軸から反時計方向に角度βをなす方向を向いているとする。
この状態から、図8に示すように、第2太陽軸102を回転駆動する駆動モータの回転を固定することにより、第1太陽歯車109の座標系X−Yに対する回転を固定して、前記第2の原理に基づいて太陽アーム105と遊星アーム113を一体化した状態で例えば反時計方向に角度γだけ回転させる。すると、第1太陽歯車109と第1遊星歯車110のギア比が1対1であることから、ともに第1遊星軸106(図2)に固定された第1および第3遊星歯車110,115は、第1アイドラ歯車120を介して中心Aまわりに時計方向に角度γだけ回転するので、第1および第3遊星歯車110,115の座標系X−Yにおける方向は維持される。同様に、第3アイドラ歯車124を介して第3遊星歯車115と連動する試料歯車116および試料台117の座標系X−Yにおける方向も維持されており、試料台117のX軸から反時計方向に角度βをなす方向も維持される。これは、第2太陽軸102を固定しておけば、前記第2の原理に基づいて試料台117を原点Oまわりに公転させても、座標系X−Yにおける試料台117の方向を維持できることを意味する。
同様に、図7の状態から、第2太陽軸102を回転駆動する駆動モータの回転を固定することにより第1太陽歯車109の座標系X−Yに対する回転を固定して、前記第1の原理に基づいて、試料台117の座標系X−Yの原点Oに対する公転半径OBを変更する場合にも、試料台117のX軸から反時計方向に角度βをなす方向が維持される。すなわち、第2太陽軸102を固定しておけば、前記第2の原理に基づいて試料台117の座標系X−Yの原点Oに対する公転半径OBを変更しても、座標系X−Yにおける試料台117の方向を維持できる。
以上から、第2太陽軸102を固定しておけば、試料台117を座標系X−Yのどこに移動させても、座標系X−Yにおける試料台117の方向を維持できることが分かる。また、逆に、試料台117が座標系X−Yのどこにあっても、第2太陽軸102のみを回転駆動すれば、その回転は、ギア比1対1で第1太陽歯車109から試料歯車116まで伝わるので、同じ方向かつ同じ角度で試料台117を回転させられる。すなわち、試料台117が座標系X−Yのどこにあっても、その位置を維持したまま、試料台117の方向を任意に決めることができる。これが、座標系X−Yにおける試料台117の中心Bまわりの回転運動に関する動作の第3原理である。
次に、試料台117上の試料Sの所望の測定部位(測定位置)に設定する手順の1例を示す。図9に示すように、ステージ21の初期状態において、検出器16の視野Fの中心Oと試料台117の中心Bとは合致している。ここで、座標系X−Yにおいて、所望の測定部位がD点であり、所望の方向がX軸の方向から反時計方向に角度δだけ回転した方向であるとする。次に、図10に示すように、前記第2の原理に基づいて、試料Sを時計方向に角度δだけ回転させて所望の測定部位DをX軸上に配置する。そして、図11に示すように、前記第1の原理に基づいて、試料台117をX軸に沿って移動させ、所望の測定部位Dを検出器の視野Fの中心である座標系X−Yの原点Oに一致させる。以上の手順により、試料台117上の試料Sの所望の測定部位に設定することができる。
試料Sの測定部位とX線遮蔽カバー61との位置関係について以下に説明する。図9に示すようにステージ21の初期状態において、検出器16の視野Fの中心Oと試料台117の中心Bとは合致している。前記したように、試料台117は、検出器16の視野Fの中心Oを原点(0、0)として空間に固定された座標系X−Yにおいて、試料Sの方位を変化させずにXY方向に移動でき、自身の中心(回転軸)まわりに回転できる。試料Sは、初期状態の試料台117の中心Bに試料Sの中心が合致するように、かつ、初期状態の試料台117の所定方向、例えばY方向に試料SのノッチN方向(試料Sの中心BからノッチNへの方向)が合致するように、ロボットハンド(図示なし)により試料台117に載置される。
検出器の視野Fの中心Oと遊星アーム113の回転軸心Aとを結ぶ線分OAと、遊星アーム113の回転軸心Aと試料台117の中心(試料の中心)Bとを結ぶ線分ABの長さdは等しく設定されているので、回転軸心Aは試料Sが移動させられるとその動きに応じて線分OBの垂直2等分線31上を移動する。例えば、図12に示す測定部位S4を測定する場合、ステージ21によって測定部位S4は検出器の視野Fの中心Oにくるように移動される。このとき、遊星アーム113の回転軸心Aは検出器の視野の中心Oと試料の中心Bとを結ぶ線分OBの垂直2等分線31上を移動し、X線遮蔽カバー61の中心線62が線分ABと45°の角度をなす位置に、半円形状のX線遮蔽カバー61が移動する。
したがって、試料Sのどのような部位が測定される場合であっても、上記の位置関係によってX線遮蔽カバー61が移動する。以下に、具体的な試料Sの測定部位とX線遮蔽カバー61との位置関係について説明する。
図13に示すように、試料Sの縁のノッチNから90°の測定部位S1を測定する場合、前記したステージ21の動作によって測定部位S1を検出器の視野の中心Oに配置させる。このとき、遊星アーム113の回転軸心A、試料の中心B、検出器の視野の中心Oは図13に示す位置関係になっている。線分ABと線分OBは45°の角度をなしているので、X線遮蔽カバー61の中心線62はX軸上にあり、X線遮蔽カバー61は試料Sの縁から充分に張り出している。これにより、図14に示すようにX線遮蔽カバー61は、検出器の視野Fの一部分だけを試料Sが占める場合に検出器の視野Fの残部を占め、紙面上の右方から検出器の視野の中心O(図13)に向かってX軸(図13)に沿って測定部位S1に進行してきた1次X線14によって発生する散乱X線や不純線9を遮蔽して、検出器16に入射するのを防止することができる。
次に、ノッチNから45°の縁の測定部位S2を測定する場合、ステージ21の動作によって測定部位S2を検出器の視野の中心Oに配置させる。図15に示すように、X線遮蔽カバー61の中心線62は座標系X−Yの第4象限でX軸と45°の角度をなす位置になり、X線遮蔽カバー61は試料Sの縁から充分に張り出す。前記と同様に、X線遮蔽カバー61は、検出器の視野Fの一部分だけを試料Sが占める場合に検出器の視野Fの残部を占め、紙面上の右方から検出器の視野の中心O(図13)に向かってX軸(図13)に沿って測定部位S1に進行してきた1次X線14によって発生する散乱X線や不純線9を遮蔽して、検出器16に入射するのを防止することができる。
次に、ノッチNから45°の縁から少し試料中心に寄った測定部位S3を測定する場合、ステージ21の動作によって測定部位S3を検出器の視野の中心Oに配置させる。図16に示すように、X線遮蔽カバー61は1次X線14が照射されるX軸上では、試料Sの縁から少ししか張り出していない。しかし、この場合、検出器の視野Fの全部を試料Sが占めているので、散乱X線や不純線9が発生しても検出器16に入射することはない。
次に、試料Sの中心である測定部位S0を測定する場合、ステージ21の動作によって測定部位S0を検出器の視野の中心Oに配置させる。図17に示すように、X線遮蔽カバー61の中心線62は座標系X−Yの第3象限でX軸と45°の角度をなした位置になり、X線遮蔽カバー61は第3象限の領域において試料Sの縁より張り出し、1次X線14の照射方向であるX軸線上には張り出していない。しかし、この場合、検出器の視野Fの全部を試料Sが占めているので、散乱X線や不純線9が発生しても検出器16に入射することはない。
このように、ステージ21の遊星アーム113に固定されたX線遮蔽カバー61は、試料Sの背面側に配置されており、ステージ21に支持され、ステージ21の移動にしたがって移動し、検出器16の視野Fの一部分だけを試料Sが占める場合に、検出器16の視野Fの残部を占めるように移動する。これにより、X線遮蔽カバー61は全反射蛍光X線分析装置1の筐体内壁20やステージ21から散乱X線や不純線9が発生してもそれらが検出器16に入射するのを防止するので(図14参照)、ウェーハなどの円板状の試料Sの縁近傍の周辺部における任意の測定部位について正確な分析ができる。特に、この実施形態では、X線遮蔽カバー61が測定する試料Sの主成分で構成されたシリコンウェーハで形成されているので、図14に示すように、1次X線14の散乱X線によってX線遮蔽カバー61から蛍光X線17が発生して検出器16に入射しても、その蛍光X線17は、試料Sの主成分元素から発生する蛍光X線15と同じであり、その一部が検出器16に入射しても測定データに影響を与えることはない。
一方、測定部位が試料Sの中心近傍に近づくにしたがって、概ね試料Sの縁からの張り出しを少なくしている。これは、試料Sの中心近傍を測定する場合は、試料Sの縁が全反射蛍光X線分析装置1の筐体に最接近するので、X線遮蔽カバー61の1次X線14の照射方向への張り出しを少なくすることによって、筐体との干渉を防止している。このような構成にすることによって全反射蛍光X線分析装置1をコンパクトにすることができる。
直径100mmの半円形状のX線遮蔽カバー61について説明したが、X線遮蔽カバー61は100mmよりも大きい、または小さい直径であってもよく、円弧形状、楕円形状などであってもよい。また、X線遮蔽カバー61はステージ21の移動にしたがって移動し、検出器16の視野Fの一部分だけを試料Sが占める場合に、検出器16の視野Fの残部を占めるように、X線遮蔽カバー61の形状に応じて適切な位置に配置すればよい。
ほとんどのシリコンウェーハは100面を表面とする結晶で形成されており、円形のシリコンウェーハの中心を中心にして90°毎回転させて測定すれば、結晶方位を変えないで測定することができる。このように測定すれば、シリコンウェーハの結晶方位が変わることにより発生する回折線を回避することができる。このように、試料Sを90°毎回転させて測定しても、前記と同様にX線遮蔽カバー61が散乱X線や不純線の検出器16への入射を防止するので、円板状の試料Sの縁近傍の周辺部における任意の測定部位について正確な分析ができる。
本発明の第2実施形態である全反射蛍光X線分析装置について説明する。第2実施形態の全反射蛍光X線分析装置は、第1実施形態の全反射蛍光X線分析装置1とX線遮蔽カバーおよびその取り付け位置が異なるだけであるので、異なる構成について以下に説明する。図18に示すように、円板状の試料Sの直径よりも大きな直径の円形のシリコンウェーハ、または円板状の試料Sの直径よりも大きな外径を有する環状のシリコンウェーハで形成されたX線遮蔽カバー71が試料台117の下面に取り付けられている。円板状の試料Sの直径よりも大きな直径または外径が、例えば350mmであり、試料Sが直径300mmのウェーハの場合にはX線遮蔽カバー71は試料Sの全周にわたって25mm張り出している。
X線遮蔽カバー71はステージ21の試料台117の下面に取り付けられているので、ステージ21の移動にしたがって移動して、検出器16の視野Fの一部分だけを試料Sが占める場合に、検出器16の視野Fの残分を占めるように位置する。
このように、試料台117の下面に固定されたX線遮蔽カバー71は、試料Sの背面側に配置されており、ステージ21に支持され、ステージ21の移動にしたがって移動し、検出器16の視野Fの一部分だけを試料Sが占める場合に、検出器16の視野Fの残部を占めるように移動する。これにより、全反射蛍光X線分析装置の筐体内壁やステージ21から散乱X線や不純線9が発生してもそれらが検出器16に入射するのを防止するので、ウェーハなどの円板状の試料Sの縁近傍の周辺部における任意の測定部位について正確な分析ができる。
さらに、第1実施形態と同様に、X線遮蔽カバー71の材料としてシリコンウェーハ、ガラス板、ガリウムひ素基板などが用いられる。これにより、X線遮蔽カバー71によって測定上の障害となる新たな散乱X線や不純線9を発生することがないので、ウェーハなどの円板状の試料Sの縁近傍の周辺部における任意の測定部位についてよりいっそう正確な分析ができる。
本発明の第1実施形態の全反射蛍光X線分析装置の概略図である。 同装置のXYθステージの側面断面図である。 同XYθステージへのX線遮蔽カバーの取り付け位置を示す平面図である。 同XYθステージへのX線遮蔽カバーの取り付け位置を示す側面図である。 図6とともに同装置のXYθステージの第1原理を示す平面図である。 図5とともに同XYθステージの第1原理を示し、また第2原理を示す平面図である。 図8とともに同XYθステージの第3原理を示す平面図である。 図7とともに同XYθステージの第3原理を示す平面図である。 同XYθステージの所望の測定部位の位置決め手順の第1段階を示す平面図である。 同XYθステージの所望の測定部位の位置決め手順の第2段階を示す平面図である。 同XYθステージの所望の測定部位の位置決め手順の第3段階を示す平面図である。 検出器の視野の中心位置O、遊星アームの回転軸心Aおよび試料台の中心(試料の中心)Bとの位置関係を示す平面図である。 試料の縁のノッチから90°の測定部位を測定する場合のX線遮蔽カバーの位置を示す平面図である。 X線遮蔽カバーが装置の筐体内壁やステージから発生する散乱X線や不純線を遮蔽している概略図である。 ノッチから45°の縁の測定部位を測定する場合のX線遮蔽カバーの位置を示す平面図である。 ノッチから45°の縁から少し試料中心に寄った測定部位を測定する場合のX線遮蔽カバーの位置を示す平面図である。 試料の中心位置を測定する場合のX線遮蔽カバーの位置を示す平面図である。 本発明の第2実施形態のXYθステージの側面断面図である。 試料の縁方向から中心方向に1次X線を照射する従来の全反射蛍光X線分析装置の概略図である。 同装置の試料の縁から四方に向けて発生する散乱X線や不純線を示す拡大図である。 試料の中心方向から縁方向に1次X線を照射する従来の全反射蛍光X線分析装置の概略図である。 同装置の筐体内壁やステージから発生する散乱X線や不純線を示す概略図である。
符号の説明
1 全反射蛍光X線分析装置
14 1次X線
15 蛍光X線
16 検出器
21 ステージ
61 71 X線遮蔽カバー
101 第1太陽軸
102 第2太陽軸
103 第3太陽軸
104 3重太陽軸
105 太陽アーム
106 第1遊星軸
107 第2遊星軸
108 2重遊星軸
109 第1太陽歯車
110 第1遊星歯車
111 第2太陽歯車
112 第2遊星歯車
113 遊星アーム
114 試料軸
115 第3遊星歯車
116 試料歯車
117 試料台
F 検出器の視野
S 試料

Claims (3)

  1. 円板状の試料の表面に微小な入射角度で1次X線を入射させ、発生する蛍光X線の強度を検出器で測定する全反射蛍光X線分析装置であって、
    試料を移動させることにより、試料の表面における任意の測定部位を前記検出器の視野内に移動させるステージと、
    試料の背面側に配置されており、前記ステージに支持され、前記ステージの移動にしたがって移動し、前記検出器の視野の一部分だけを試料が占める場合に、前記検出器の視野の残部を占めるX線遮蔽カバーと、
    を備えた全反射蛍光X線分析装置。
  2. 請求項1において、
    前記ステージが、それぞれ回転駆動される第1太陽軸、第2太陽軸および第3太陽軸を備えた3重軸である3重太陽軸と、
    前記第3太陽軸に固定された太陽アームと、
    前記太陽アームの回転端部に回転自在に支持された第1遊星軸、およびその第1遊星軸に対して回転自在に設けられた第2遊星軸を備えた2重軸である2重遊星軸と、
    前記第2太陽軸に固定された第1太陽歯車、および前記第1遊星軸に固定され前記第1太陽歯車と連動して回転される第1遊星歯車と、
    前記第1太陽軸に固定された第2太陽歯車、前記第2遊星軸に固定され前記第2太陽歯車と連動して回転される第2遊星歯車、前記第2遊星軸に固定された遊星アーム、およびその遊星アームの回転端部に回転自在に支持された試料軸と、
    前記第1遊星軸に固定された第3遊星歯車、前記試料軸に固定され前記第3遊星歯車と連動して回転される試料歯車、および前記試料軸に固定された試料台とを備え、
    前記X線遮蔽カバーが前記遊星アームに固定されている全反射蛍光X線分析装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記試料が半導体製造用基板であり、
    前記X線遮蔽カバーが前記試料の主成分で構成された材料により形成されている全反射蛍光X線分析装置。
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