JP5027628B2 - 金属管内面の被覆欠陥検査方法及び被覆欠陥検査装置 - Google Patents
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Description
腐食反応は配管のどこかに存在するカソード部(防食箇所で導電性液側から電流が流入する場所)とアノード部(被覆損傷箇所で電流の流出部、すなわち金属が溶解する腐食反応を起こす場所)間で生じ、被覆損傷部の腐食速度はカソードの大きさや両者間の距離の影響を受け、カソードの存在が大きな加速要因になっている。このため、配管の保全上、被覆損傷の有無とその位置を早期に発見すること及びカソードの存在(位置や大きさ)を評価することが重要である。
この開先部にステンレス鋼を用いた鋼管(管端ステンレス鋼付塗覆装鋼管、以下「SUS開先鋼管」という)は鋼管内面の塗膜が健全なときは特に問題はないが、塗膜の損傷や劣化が生じた時、ステンレス鋼をカソードとし鋼をアノードとした異種金属接触腐食が生じこれが早期漏水の原因となる。しかも、塗膜の損傷面積が小さい程、SUS開先部との面積比が大きくなるので腐食速度も大きくなる。
このような腐食現象を早期に発見し、漏水に至る前に補修を行うために、絶縁性被覆の劣化状況や鋼管の腐食状況(アノード位置とその大きさ、カソード位置とその大きさ)の評価が望まれている。
ここで、強制的に流した電流は導電性液体に浸かった電極から導電性液体を通して塗膜の欠陥部に流入し、配管外面から電流が流出し、土壌を介してアース電極に流入する。この際、水道水中に電位差が生まれ、この電位差の変化から欠陥部を推定するものである。
(1) 内面に被覆物質による被覆が施されていて内部に導電性液体が満たされた金属管の腐食箇所(アノード部)から流出する腐食電流及び防食箇所(カソード部)に流入する防食電流によって形成される前記金属管内における電位差を、外部電源から前記金属管内の導電性液体に通電することなく少なくとも一対の電位センサを用いて計測し、該電位差が変化する位置を検知することにより前記金属管の腐食箇所及び防食箇所を検出することを特徴とする金属管内面の被覆欠陥検査方法。
(2) 前記少なくとも一対の電位センサを、前記金属管内の該金属管の軸方向及び/又は該金属管の軸方向と交差する断面上で走査して前記電位差を計測することを特徴とする前記(1) に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
(5)前記少なくとも一対の電位センサを前記金属管内部の管軸方向に走査して、前記一対の電位センサ間の電位差(ΔE)を計測し、前記金属管の断面積(S)、前記一対の電位センサ間の間隔(L)、及び前記導電性液の抵抗率(ρ)および前記金属管内における導電性液の充填率(α)から下記式〔1〕を演算して前記金属管内面における腐食箇所(アノード部)から流出する腐食電流及び防食箇所(カソード部)に流入する防食電流(I)を推定することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
I=(ΔE・S・α)/(L・ρ)・・〔1〕
(7)前記水中カメラにより得られた前記金属管の内壁面の映像をもとに、該内壁面の腐食面積(A)を求め、該腐食面積(A)と前記腐食電流(I)から下記式〔2〕を演算して前記金属管内面の腐食箇所(アノード部)の腐食速度(υ)を推定することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
υ=κ・I/A・・〔2〕
(但し、前記式中、κはファラディーの法則から求まる前記金属管の種類で決まる係数である)
(9)導電性液体が満たされた金属管内部の電位差を測定するための少なくとも一対の電位センサと、前記金属管内部において前記少なくとも一対の電位センサを走査するための駆動手段と、前記少なくとも一対の電位センサにより前記金属管内部を走査したときの該電位センサの移動距離検知手段と、前記少なくとも一対の電位センサ、及び前記移動距離を検知する手段からの出力信号を入力して記憶、演算し、前記金属管内での電位差、及び該電位差が変化する位置を検出する記憶、演算手段とを少なくとも具備することを特徴とする前記(1)〜(8)のいづれかに記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法のための金属管内面の被覆欠陥検査装置。
また、金属管の中心方向への腐食電流による電位差も検知できるので、一層正確に被覆の欠陥部の位置を特定することができ、探査、検出を精度よく簡便に行うことが可能となる。
さらに水中カメラによる被検査管内の映像情報を併用することにより、電位センサにより電位差の変化を検知した箇所のみを水中カメラで精査すればよいので、被覆欠陥部の特定に要する時間を格段に短くすることができる。
また、本願発明によれば検出された個々の被覆の欠陥部について、腐食電流または腐食速度を推定することができるので、これらを比較することにより、被覆の補修計画に役立てることができる。
図11に示すように、例えば内部に導電性液が満たされ、その内面に被覆が施された鋼管部51内の一部分に被覆が欠落した被覆欠陥部54があると、鋼管部51の内部では図11の矢印で示すような方向にアノード部となった欠陥部54からカソード部となったSUS開先部52に向かって腐食電流が流れる。
本発明の金属管内面の被覆欠陥検査方法(以下、単に本発明の欠陥検査方法ともいう)
は、例えば鋼管部51内に電位センサ57a、57bからなる一対の電位センサを鋼管部51内に配置して、鋼管部51内の任意の場所に移動させ、各電位センサからの出力をケーブル58により鋼管部51外に取り出し得るようにしておくことにより鋼管部51内の各場所での電位差を測定しこの電位差が変化する位置を検知することによって鋼管部51の被覆欠陥部54の場所を特定する。
なお、本発明の被覆欠陥検査方法において、被検査金属管内に満たされる導電性液体は必ずしも該管内全体に満たしておく(充填率が100%である)必要はなく、導電性液体が満たされた被検査金属管内には一部空隙があってもよい。
電位センサ7-1〜7-5はこのような構成により、水中ロボット5を動作させず保管中であっても電位感知部7Aは溶液7Cに浸漬される。また、ケース7Dが水中ロボット5と着脱容易に構成されているので、電位センサ7-1〜7-5を容易に交換できる。
なお、本実施例では電位センサ7-1〜7-5の5対の電位センサを特定の場所に搭載した例について示したが、水中ロボット5に搭載する電位センサの数は図1に例示した数及び場所である必要はなく、水中ロボット5による走査領域の調整で任意の場所に少なくとも1対以上搭載しておけばよいことはいうまでもない。
そして、被覆欠陥部4の大きさによらず電位差が“零”である通過点(電位差の極性が変わる点)はいずれも開先部2からの距離がほぼ等しく、その位置は被覆欠損部4を設けた場所とほぼ同じであって、電位センサ7-1、及び7-2とともに搭載した水中カメラ6による映像により確認した被覆欠陥部4の場所ともほぼ一致した。なお、本例では電位差分布曲線において電位差が零である点(電位差の極性が変わる点)は電位差が連続して変化する領域のほぼ中間点でもあった。
なお、鋼管部3の鉛直方向の電位差の変化(図6の曲線b)をみると、管底部の被覆欠陥部4から管断面中心に上向きに流れている腐食電流が計測されたことにより、被覆欠陥部4の位置の少し手前をピークとする電位差に変化が現れた。これにより、被覆欠陥からの電流は鋼管部3の下部から上部へ流れていることが分かり、被覆欠陥は下部に存在すると推理することができる。一方、水平方向の電位差(図6の曲線c)には鋼管部3の中心部管軸方向における場所による電位差の変化は認められなかった。
その反転する位置は鋼管部3の中心軸からみて下部、中央部(管軸の近傍)、上部によらずほぼ同じ位置であり、この電位差が“零”の点を通過後、±の符号(電位差の極性)が反転する位置は、図7からわかるように電位差が局部的に連続して大きく変化する領域の中間点でもあるところの、SUS開先部2からおよそ160cm離れたところにあって、電位センサとともに搭載した水中カメラ6による映像により特定した被覆欠陥部4の場所ともほぼ一致することが確認された。
なお、この場合、曲線a、b及びcの比較からわかるように、電位センサの位置が被覆欠陥部4に近いほど電位差が大きい傾向にあると共に、電位差が連続的に大きく変化しはじめ、変化し終わる領域の前後での電位差のピークの有無(図7では曲線cとa、cとbとの曲線形状の違い)で検査装置の走査位置が被覆欠陥に近いか遠いかの判断も行うことができる。
鋼管部3の管軸の近傍で電位センサを走査した図8のケースでは被覆欠陥部の大きさによって欠陥部の特定が多少困難になるが、この電位差に変化が現れる領域のほぼ真ん中の位置が被覆欠陥部4の存在する場所に相当する。
一方、電位センサが欠陥部に近い鋼管部3の下部を走査した図9の例では電位差分布曲線に電位差が“零”となり引き続きその極性が反転する点を通過する位置が認められ、その位置は被覆欠損部4の大きさによらずほぼ一定であり、この電位差の極性が変化する位置を検知することによって被覆欠損部4の場所が特定できることがわかる。この電位差の極性が変化する位置は図8のケースと同様、電位差が一定値から連続して変化しはじめる位置と、連続して変化した電位差が再び一定値となる位置とのほぼ真ん中の位置に相当する。
また、図9に例示のケースでも図7の曲線cと同様に電位センサは被覆欠損部4に近い鋼管部3の管の下部を走査しているので、電位差が“零”となる位置の前後に被覆欠陥部4付近の腐食電流密度が大きいことによるピークが現れるので、被覆欠損部4の前後に現れるピークの位置によっても被覆欠陥部4の位置の特定が容易になる。
また、前記実施例において水中ロボット5には電位センサと共に水中カメラ6を搭載した例について例示したが、水中カメラ6等の撮像手段は併用せず、各電位センサ7−1〜7−5から計測される電位差の計測データのみをもとに、被覆欠陥部位の検出を行うことも十分に可能である。
さらに本願発明の欠陥検査方法は、前記実施例に例示の装置以外にもファイバースコープカメラに電位センサを付設したものや、配管類内部の清掃用に用いられるスプリング状ワイヤーに一定間隔で電位センサを付けたものなど、種々の装置を採用することもできる。
ジャンピング電流は必ず絶縁された接合部13を挟んで発生するので、鋳鉄管12、12中において水中ロボットを操作することなく本例のように管の接合部をまたいでその両端に最初から配管内に電位検知センサ14、14を配置しておいても良い。
本実施例は、本発明でいう電位差が変化する位置を示す第三の例であり、電流の出入りする位置(腐食箇所及び防食箇所)が近接していて、電位差分布曲線に急峻なピークが見られる場合であって、このように配管内の電位差分布を測定したときこの電位差分布曲線に急峻なピークが認められる領域(又はその近傍)においても被覆欠陥が存在する。したがって、本発明の欠陥検査方法により図10に類似の電位差分布曲線が得られた場合には、アノードとカソード(腐食箇所及び防食箇所)とが近接して存在するものと判断することができる。
本例の場合には、右側の配管の接合部で腐食が進行しやがて漏水に至る。しかし、測定した電位差の符号が逆であれば、左側の配管の接合部付近の欠陥で腐食が進行するが、構造から見ても分かるように、腐食が進んでも漏水に至る可能性は小さい。
なお、ジャンピング電流は、鋳鉄管12、12の接合部13付近に限定される場合が多いので、配管内において水中ロボットなどの移動手段を用いて電位センサを移動させることなく、図4に示すように予め配管の継ぎ目近傍に電位センサ14を設置しておくことで、鋳鉄管12、12間に流れるジャンピング電流の有無、向き及び大きさを評価することができる。
すなわち前記の図5の測定と同様にして、少なくとも一対の電位センサを搭載した水中ロボットを例えば金属管内部の管軸方向に走査して前記の方法により金属管内部の被覆欠陥部を検出するとともに、その際に計測される該被覆欠陥部近傍での一対の電位センサ間の電位差(ΔE)と、予め知られる被測定金属管の軸に直交する面の断面積(S)、このとき使用した一対の電位センサの間隔(L)、及び導電性液の抵抗率(ρ)から下記式〔1〕を演算することにより、該金属管内部の被覆欠陥部における腐食電流の実測値に近似した腐食電流(I)を推定するものである。
なお、前記導電性液の充填率αとは、被測定配管が水平に置かれた状態での導電性液の充填率をいい、導電性液が満たされ、水平に置かれた被測定配管の管軸に垂直な断面を見たとき、該断面全体に対して導電性液の部分が占める割合に相当する値である。
I=(ΔE×S×α)/(L×ρ)………〔1〕
ここで、被覆欠陥部から配管の左右に腐食電流が流れているときは、右側の電位差をΔE1、左側の電位差をΔE2とすると、右側方向へ流れる電流I1および左側方向へ流れる電流I2はそれぞれ次のようになる。
I1=(ΔE1×S×α)/(L×ρ)
I2=(ΔE2×S×α)/(L×ρ)
したがって、前記〔1〕式の腐食電流Iは次のようになる。
I=I1+I2={(ΔE1+ΔE2)×S×α)/(L×ρ)}
υ=κ×I/A………〔2〕
一方、上記のようにして得られたΔE値に基づいて{(ΔE×S×α)/(L×ρ)}の演算値(前記〔1〕式)から腐食電流(I)を演算するとともに、得られた腐食電流(I)から前記の{(κ×I)/A}の値(前記〔2〕式)を演算することによって、被覆欠陥部における腐食電流(I)及び腐食速度(υ)を算出した。
このようにして得られた腐食電流(I)及び腐食速度(υ)の計算値と実測値とを表1に示す。
なお、本発明の欠陥検査装置には水中ロボット等その駆動手段に水中カメラを搭載し、外部に設置されたディスプレイにより被検査金属管の内面の撮影映像を表示し得るようにすることによって、被検査金属管内の被覆欠陥箇所の特定をより正確に行うことができるのでより好ましい。
2、52 SUS開先部
3、51 塗覆装鋼管(鋼管部)
4、54 被覆欠陥部
5 探査用水中ロボット
6 水中カメラ
7-1、7-2、7-3、7-4、7-5、57a、57b 電位センサ
7A 電位感知部
7B 接続部
7C 溶液
7D ケース
7E 台座(水中ロボット容器壁)
7F 液絡部
7G キャップ
8、8A、58 ケーブル
9 分岐管
10 データロガー
11 ディスプレイ装置
12 鋳鉄管
13 接合部
14 電位センサ
15 絶縁体
16 継手部の被覆欠陥部
17 ゼロ抵抗電流計
Claims (10)
- 内面に被覆物質による被覆が施されていて内部に導電性液体が満たされた金属管の腐食箇所(アノード部)から流出する腐食電流及び防食箇所(カソード部)に流入する防食電流によって形成される前記金属管内における電位差を、外部電源から前記金属管内の導電性液体に通電することなく少なくとも一対の電位センサを用いて計測し、該電位差が変化する位置を検知することにより前記金属管の腐食箇所及び防食箇所を検出することを特徴とする金属管内面の被覆欠陥検査方法。
- 前記少なくとも一対の電位センサを、前記金属管内の該金属管の軸方向及び/又は該金属管の軸方向と交差する断面上で走査して前記電位差を計測することを特徴とする請求項1に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
- 前記検出される電位差の変化する位置が、前記金属管内における電位差が連続的に増加または減少している領域の中点又はその近傍であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
- 前記検出される電位差の変化する位置が、前記金属管内における電位差の極性が変わる点であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
- 前記少なくとも一対の電位センサを前記金属管内部の管軸方向に走査して、前記一対の電位センサ間の電位差(ΔE)を計測し、前記金属管の断面積(S)、前記一対の電位センサ間の間隔(L)、及び前記導電性液の抵抗率(ρ)および前記金属管内における導電性液の充填率(α)から下記式〔1〕を演算して、前記金属管内面における腐食箇所(アノード部)から流出する腐食電流及び防食箇所(カソード部)に流入する防食電流(I)を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
I=(ΔE・S・α)/(L・ρ)・・〔1〕 - 水中カメラを前記金属管内に3次元的に走査させて該金属管の内壁面の映像を撮影し、得られた該壁面の映像及び前記電位差の変化から該金属管の前記腐食箇所(アノード部)、及び前記防食箇所(カソード部)の位置を検知することを特徴とする請求項1〜4のいづれか一項に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
- 前記水中カメラにより得られた前記金属管の内壁面の映像をもとに、該内壁面の腐食面積(A)を求め、該腐食面積(A)と前記腐食電流(I)から下記式〔2〕を演算して前記金属管内面の腐食箇所(アノード部)の腐食速度(υ)を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
υ=κ・I/A・・〔2〕
(但し、前記式中、κはファラディーの法則から求まる前記金属管の種類で決まる係数である) - 前記少なくとも一対の電位センサの間隔(L)が、前記金属管の内径の1/6〜1/2であることを特徴とする請求項1〜7のいづれか一項に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法。
- 導電性液体が満たされた金属管内部の電位差を測定するための少なくとも一対の電位センサと、前記金属管内部において前記少なくとも一対の電位センサを走査するための駆動手段と、前記少なくとも一対の電位センサにより前記金属管内部を走査したときの該電位センサの移動距離検知手段と、前記少なくとも一対の電位センサ、及び前記移動距離を検知する手段からの出力信号を入力して記憶、演算し、前記金属管内での電位差、及び該電位差が変化する位置を検出する記憶、演算手段とを少なくとも具備することを特徴とする請求項1〜8のいづれか1項に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法のための金属管内面の被覆欠陥検査装置。
- 前記駆動手段により前記金属管内部を移動させて該金属管内壁の映像を撮影するための水中カメラを具備したことを特徴とする請求項9に記載の金属管内面の被覆欠陥検査方法のための金属管内面の被覆欠陥検査装置。
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