JP5025628B2 - 洗濯機 - Google Patents

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Description

本発明は、水槽内に回転可能に設けられた回転槽を備えた洗濯機に関する。
従来、洗濯機形式として一般にドラム式洗濯機という横軸周りの回転槽たるドラムを備えた洗濯機と、脱水兼用洗濯機という縦軸周りの回転槽たる脱水兼洗濯槽を備えた洗濯機が主に市場に提供されている。いずれの洗濯機においても、駆動機構部からの動力を伝達し回転槽を回転駆動するための回転軸を備え、該回転軸はその周りに設けられた軸受ハウジングに水密構成のもと回転可能に軸支されている。
この軸受ハウジングは、通常回転槽の周りに配置された貯水可能な水槽の外底部に設けられており、該水槽からの水漏れ防止の機能を必要としている。そこで、このような水密部分には弾性的なゴム系材料によるシール部材が軸受ハウジング側に装着され、回転軸の周表面と水密に摺動する構成としている。そのため、シール部材が摺動する回転軸は、長期使用する上で耐摩耗性、耐食性(防錆力)、硬度、及び安定したシール性能等が要求され、このため従来では表面が不動態皮膜に覆われて優れた耐食性を有するステンレス鋼材が多く採用されている。
また、一般に鋼材の表面を硬くする表面硬化熱処理として知られている窒化処理は、鋼の内部に窒素が浸透し硬い窒化層を形成して表面を硬くするもので、例えば冷蔵庫等の圧縮機において応用され、鉄系材料からなるシャフトと、このシャフトと摺動可能に接する多孔質のセラミック層を備えた軸受とにあって、前記シャフトの表面に、酸窒化層を形成して、その表面に四三酸化鉄(Fe)を主成分とする多孔質の酸化膜を形成することで、腐食摩耗を起こしにくく、潤滑油の油膜保持性、浸透性、及び非焼付き性などが改善できるとしている(例えば、特許文献1参照)。
特許第2821225号公報
しかしながら、ステンレス鋼材は高価であることが難点で、低コスト化を図る上で不利である。また、洗濯機の回転軸としては単に表面を硬質化するだけでなく、その回転接触部分においては水に対する長期安定したシール性(水密性)、優れた防錆力(耐食性)を要し、更にはシール材と摺動する部位の耐磨耗性などが求められ、機能及びコストの両面から更なる改善が求められている。
本発明は上記課題を解消するために、材料コストの低減を図りながら耐食性や耐磨耗性に優れ、しかも表面が滑らかで低摩擦係数となり良好なシール性能を長期安定して維持できる回転軸を備えた洗濯機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の洗濯機は、貯水可能な水槽内に、横軸周りに回転可能に設けられた回転槽と、前記回転槽に直結され、周りを軸受ハウジングにて水密に回転可能に軸支された回転軸と、前記回転軸を介して前記回転槽を回転駆動する駆動機構部と、を備え、
前記回転軸は、その素材を低炭素鋼とし、表面に窒化合物層を形成するとともに、更に該窒化合物層の表面に酸化皮膜層を形成する表面処理を施したことを特徴とする(請求項1の発明)。
上記手段によれば、回転軸の素材を低炭素鋼とすることで、材料コストの低減が可能であるとともに、この低炭素鋼の表面の硬化処理に基づき耐磨耗性はもとより、特に水に対する耐食性、及び表面が滑らかに仕上がり低摩擦係数とすることができ、良好な水密性を長期安定して維持できるなどの改善が期待できる洗濯機を提供できる。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1実施例を示す図1ないし図3を参照して説明する。
まず図2は、本発明の洗濯機をドラム式洗濯機1に適用して概略的構成を示す縦断側面図で、ドラム式洗濯機1は、後述するように横軸周りに回転する回転槽たるドラム6を備えた洗濯機形式で、従って外郭を形成する筐体2の側方である前面側に洗濯物出入口3を設け、扉4を開閉可能に設けている。
筐体2の内部には、前面を開放した有底筒状をなす水槽5が、筐体2の底部に設けられた図示しないサスペンションを介して弾性支持されている。この水槽5は、例えばプラスチック製で前面を除き実質的に無孔状に形成され、つまり内方下部側に貯水可能としている。この水槽5の内部には類似形状とする金属製(詳細は後述する)のドラム6が設けられ、該ドラム6は水槽5の背壁側に設けられた後述する軸受ハウジング11を介して、水密に回転可能に軸支され、所謂ドラム6は回転槽として横軸周りに軸支されている。
具体的には、本実施例では水平位置より前方に向かって上昇する傾斜軸周りに軸支され、これらドラム6及び水槽5の前面開放口は、前記洗濯物出入口3と対向している。なお、水槽5の開放口部分には環状の槽カバー7を有しており、これをベロー8によって筐体2前面の洗濯物出入口3との間を水密に連ねた構成としている。また、回転槽としてのドラム6は、その回転動作に応じて収容した洗濯物の洗いや脱水作用を行うもので、機能的には脱水兼洗濯槽として機能するともいえる。しかるに、ドラム6を構成する胴部6aや後方の背壁を形成するバックカバー6bなどのドラム6周壁には、通水用の小孔9を多数形成している。
次いで、ドラム6を横軸周りに回転させる駆動手段につき概述すると、まず傾斜した回転軸10は、水槽5の背壁に固定された軸受ハウジング11に水密に回転可能に軸支されている。この軸受ハウジング11の後部には、駆動機構部としての例えばアウタロータ形のDCブラシレスモータからなるモータ12が設けられ、詳細は後述するが前記回転軸10の後端部が該モータ12に直結され、また前端部はドラム6に直結された構成とし、以ってドラム6を回転駆動可能としている。
図1は、主に上記駆動手段の要部を拡大して示す断面図で、以下図1に基づき説明すると、水槽5の後端部でもある背部は、強度十分な金属製の補強板13を複数個の図示しないネジ(含むボルト)により固着している。前記軸受ハウジング11は、この補強板13の中心部に設けられ、水槽5及びドラム6の中心軸と同軸心とする位置に一体に形成されている。
この軸受ハウジング11は、その筒状ケース部の前端部が水槽5側に形成された嵌合筒部14にシール部材15を介して水密に嵌合されることで水槽5の背部に支持され、また内蔵するボールベアリングからなる軸受16,17は、挿通された回転軸10を傾斜軸周りに回転自在に軸支する。なお、軸受16,17は軸受ハウジング11の夫々前後方向から圧入されて固定され、上記シール部材15は、その内端部が回転軸10の周面と弾性的に接触し、水密に摺動する構成としている。
ここで、回転軸10の具体形状につき図3を参照して述べる。この図3(a)は、回転軸10の正面図で、同図(b)は下半部を断面とした側面図を表している。
まず、全体形状としては、同図(b)から明らかなように図示右端部に向かって段階的に径小となる階段状をなしており、これは図示からも理解できるように、その径小端部側から軸受ハウジング11への挿入を可能とするとともに、前記軸受16,17が対応した径の各段部と圧入嵌合により支持された状態に組み込まれる。
この回転軸10は、詳細は後述するが金属製にて表面が窒化処理され、且つ本実施例ではコネクタ部18と、棒状軸部19とに2分割され、これらは例えば圧入嵌合により一体化されている。このコネクタ部18は、円形状の径大なフランジ部18aと筒状部18bとから構成され、詳細は追って述べるがフランジ部18aは、ドラム6と直結され、筒状部18bは、その外周面に前記シール部材15が摺接する部位として組み込まれる。従って、フランジ部18aには周方向の複数箇所(例えば、6箇所)に後述するネジ締結用のネジ孔18cと、中心部の1箇所にこれより径小なネジ孔18dが夫々形成されている。
一方、棒状軸部19は、図1に示すように前記した如く軸受ハウジング11内の2箇所に配置された軸受16,17に嵌合支持され、更に軸受ハウジング11から突出した右端部は、モータ12と直結される(詳細は後述する)。
ここで、回転軸10の表面処理につき述べると、本実施例では金属素材として低炭素鋼を採用し、その表面に軟窒化処理により窒素を浸み込ませた窒化合物層を形成して硬化し、更にこの上層に酸化処理による酸化皮膜層を形成したもので、この酸化皮膜層は特に耐食性、耐磨耗性に偉力を発揮し、この場合、窒化と同時に行う酸窒化法により表面処理することができる。上記軟窒化処理は、一般的に窒化処理に比して窒化層は浅くなるが寸法精度の影響が少なく滑らかで美麗な表面に仕上がるとともに、炭素鋼などの低級素材(安価)に好適し、しかも窒化に際して炭素の存在が窒素の拡散を促進する役割が大きいなどの利点を有する。
ところで、ドラム6の背壁を形成するバックカバー6bには、金属製の補強板を兼ねるドラム支え20が添えられ、複数個のネジ(図示せず)により結合され、強固なドラム6を構成している。そして本実施例では、ドラム6の胴部6a、及びバックカバー6bは鉄系鋼板である例えば酸洗鋼板を素材として、上記した酸窒化法による表面硬化処理を施している。
次いで、ドラム6と回転軸10との具体的な連結手段につき述べると、特に図1に示すようにドラム6背部の中心部において、その背面側に配置した前記ドラム支え20と円形状の端板22とを、回転軸10のコネクタ部18とで挟持する形態とし、この状態で複数本(例えば6本)のネジ23(2本のみ図示)を、コネクタ部18のネジ孔18cに螺挿して締結し、以って直結状態に連結される。
なお、ドラム6の中心部のネジ24は、上記連結用のネジ23の頭部などの締結部分を覆い隠すキャップ25を取付けるためのもので、前記コネクタ部18の中心部に設けたネジ孔18dに締結されている。また、これらネジ23,24をはじめ、水槽5やドラム6を組立てるに必要なネジ部品(図示せず)にも、酸窒化処理を施している。
斯くして、回転軸10はコネクタ部18にてドラム6と直結され、軸受ハウジング11内にてシール部材15及び軸受16,17にて水密で回転可能に支持され、その突出した棒状軸部19の後端部にモータ12が直結される。このモータ12との連結手段を述べるに際して、まずモータ12の具体構成につき述べると、該モータ12は前記した軸受ハウジング11と補強板13との背部側に位置して取付固定されている。
すなわち、このアウタロータ形のDCブラシレスモータからなるモータ12は、そのステータ27が補強板13側に図示しないネジにて固定保持され、その外側に位置してロータ26が回転可能に配置され、該ロータ26の中心部に回転軸10の後端部が挿入され、抜け止め用のナット21にて締結され直結された構成としている。従って、回転軸10はモータ12に直結され回転動力が直接伝達され所謂駆動軸としても機能する。
上記構成の本実施例によれば、回転軸10に表面硬化熱処理を施し窒化合物層及び更に酸化皮膜層を形成したので、回転軸10に低コストの低炭素鋼などの汎用素材を用いることができ、従来の如き高級素材のステンレス鋼に比して材料コストの低減が図れ、大量生産によるコストの改善効果は極めて大きい。特に、回転軸10のコネクタ部18は、水槽5の内部に露出するとともに、水密構成とするためのシール部材15と摺動する部位であるため、耐磨耗性、耐食性が求められる他に、特に水密性の精度に優れ長期安定したシール性能が求められる。
しかるに、本実施例では軟窒化処理による表面硬化熱処理としたので、特に耐焼付性や耐疲労性に富み回転軸10の使用条件に好適するばかりか、表面も研磨仕上げを不要とするほど滑らかで美麗に仕上がり低摩擦係数の表面に仕上がることから、シール部材15はコネクタ部18の周面に密接し水密性能が良好で且つ長期安定したシール性能を維持できる。しかるに、従来のステンレス鋼による回転軸に対し、本実施例の如き分割したコネクタ部18のみステンレス鋼を用いることが最も簡単に実用化できるように思われるが、本実施例の表面処理によればステンレス鋼を一切使用することなくステンレス鋼と同等以上の効果が期待できるとともに、この場合、回転軸10全体を表面処理してもよいし、小型部品のコネクタ部18のみを容易に大量に表面処理することもできるなど、且ついずれも材料コストの低減が可能な回転軸10を容易に提供できる。
また、本実施例ではドラム6の胴部6aやバックカバー6bにも、鉄系鋼板の酸洗鋼板を用いて酸窒化処理を施し窒化合物層及び酸化皮膜層を形成したので、従来のステンレス鋼などの高級素材を使用することなく耐食性、耐磨耗性、耐疲労性等に優れたドラム6が構成できる。しかも、硬化処理面が低摩擦係数の滑らかで美麗に仕上がることから、脱水運転時に遠心作用を受けて特に胴部6aにへばり付いた洗濯物は剥がれ易く、次行程がすすぎ洗いであれば洗濯物は胴部6aから速やかに剥がれてほぐれ、効率の良いすすぎ洗い効果が得られる。また、この種ドラム式洗濯機では乾燥機能を備えたものが多いが、この場合には、上記脱水運転を経て乾燥行程に至った場合に、洗濯物が胴部6aから速やかに剥がれほぐれた状態になることから、しわの発生を抑え乾燥ムラのない効率のよい乾燥作用が期待できる。
その他、上記表面処理は、水に浸かり、或は水が付着するような構成部品に広く展開でき、例えば図1中に示すドラム6の取付に関連したネジ23,24とか、或はドラム6や水槽5等を水密に組立てるべくネジ部品(図示せず)などへの応用も有効である。
(第2の実施の形態)
図4,5は、本発明の洗濯機を脱水兼用洗濯機31に適用した第2実施例を示すもので、図4は要部を破断して示す脱水兼用洗濯機31全体の側面図、図5は要部を拡大して示す断面図である。この脱水兼用洗濯機31は、周知のように縦軸周りの回転槽たる脱水兼洗濯槽32を備えた洗濯機形式にあって、以下その全体構成につき概述する。外郭を形成する筐体32内には、有底筒状をなす貯水可能な水槽34が複数の弾性吊持機構35を介して弾性支持され、その内方に類似形状の前記脱水兼洗濯槽33を回転可能に設けている。
上記脱水兼洗濯槽33は、胴部33aなどの周壁に多数の通水用の小孔36を有し、内底部には洗い用の撹拌体37を回転可能に設けている。この撹拌体37を有する点で第1実施例のドラム式洗濯機と異なり、従って本実施例にいう回転軸としては、脱水兼洗濯槽33に直結された所謂脱水用の中空状の回転軸39の他に、撹拌体37に直結された洗い用の撹拌軸38が相当する(詳細は後述する)。
これら、撹拌軸38及び回転軸39の下方に延びた端部には駆動機構部として、図示しないクラッチ機構と、アウタロータ形のDCブラシレスモータからなるモータ40が設けられ、該モータ40からの動力が上記クラッチ機構を介して撹拌軸38と回転軸39とに伝達され、撹拌体37及び脱水兼洗濯槽33を回転駆動する構成としている。
このモータ40は、そのステータ41が上方に設けられた軸受ハウジング44に図示しないネジにて固定保持され、ステータ41の外側に位置してロータ42が回転可能に配置され、本実施例では該ロータ42の中心部に上記撹拌軸38の下端部がナット43にて抜け止め状態に締結固定されている。一方、撹拌軸38の上端部は、脱水兼洗濯槽33を貫通して撹拌体37にネジ45にて締結され連結固定されている。
これに対し、中空状の回転軸39は中空部に上記撹拌軸38を回転可能に挿通しており、モータ40(ロータ42)からの動力は図示しないクラッチ機構の動作に応じて選択的に伝達される。具体的には、本実施例ではクラッチ機構の動作に基づき、洗い運転では撹拌軸38(撹拌体37)のみが回転駆動されて脱水兼洗濯槽33内に収容された洗濯物を洗い、一方脱水運転では回転軸39と共に撹拌軸38も一体的に回転駆動され、つまり脱水兼洗濯槽33が高速回転されることにより、洗濯物から遠心脱水が行われる。
このような回転軸39は、水槽34の外底部に取付固定された軸受ハウジング44に回転可能に軸支されるのであるが、該回転軸39も第1実施例と同様にコネクタ部46と、中空軸部47との2部品を一体的に結合した構成からなる。そのコネクタ部46は、上部の鍔状のフランジ部46aと、その下方に筒状部46bを有する構成としており、フランジ部46aには周方向に複数のネジ孔46c(図5中に1箇所のみ示す)を設けている。
しかして、特に図5に明示するように回転軸39の上方部分は、コネクタ部46のフランジ部46aに脱水兼洗濯槽33の中央底部が宛がわれ、複数のネジ48がネジ孔46cに螺挿されて該脱水兼洗濯槽33を直結している。そして、筒状部46bの周囲には第1のシール部材49が水密に摺動可能に設けられている。この第1のシール部材49は、軸受ハウジング44の上端部に保持され、内面側でコネクタ部46と水密に摺接し、外面側で水槽34の底部との間で水密状態を維持できるよう組み込まれており、主として回転軸用のシール部材として機能する。
この第1のシール部材49の直下には、ボールベアリングからなる軸受50が圧入保持され、回転軸39の中空軸部47が嵌合し回転可能に軸支されている。なお、軸受50と同様の構成から成る軸受51が軸受ハウジング44の下端部に配設され(図4参照)、この上下に配置した軸受50,51により長寸の回転軸39を安定して回転可能に軸支している。
そして、この回転軸39の内部に挿通された撹拌軸38は、その上端部において、コネクタ部46の内方上端部に装着された第2のシール部材52と水密に摺動可能な状態にあり、該第2のシール部材52は撹拌軸用のシール部材として機能する。また、このシール部材52の直下と、回転軸39(中空軸部47)の内方下端部の2箇所には、円筒状の滑り軸受53,54(図4参照)が設けられ、撹拌軸38を回転可能に支持している。
このような構成とした回転軸である中空状の回転軸39及び撹拌軸38は、その素材を低炭素鋼とし、表面には例えば酸窒化法により表面処理が施され、窒化合物層及び酸化皮膜層を形成している。また、脱水兼洗濯槽33の胴部33aには、鉄系鋼板の酸洗鋼板を用いて酸窒化処理を施し、内表面側に窒化合物層及び酸化皮膜層を形成している。更に、第1実施例と同様に水に浸かり易い部分のネジ45,48とか、水密な組立部分に使用するネジ部品(図示せず)においても同様の酸窒化法による表面処理を施してある。
上記構成の本実施例によれば、回転軸としての脱水用の中空状の回転軸39及び洗い用の撹拌軸38に表面硬化熱処理を施し窒化合物層及び更に酸化皮膜層を形成し、これら回転軸の素材に低コストの低炭素鋼などの汎用素材が使用できることで、従来の高級素材のステンレス鋼に比して材料コストの低減が図れ、大量生産によるコストの改善効果は極めて大きい。特に、中空状の回転軸39のコネクタ部46は、水槽34内に露出することから水密構成とするための第1のシール部材49と摺動する部位となるため、耐磨耗性、耐食性が求められる他に、特に水密性の精度に優れ長期安定したシール性能が求められる。
しかるに、本実施例では軟窒化処理による表面硬化熱処理することで、特に耐焼付性や耐疲労性に富むばかりか、表面も研磨仕上げを不要とするほど滑らかで美麗に仕上がり低摩擦係数とすることができることから、第1のシール部材49はコネクタ部46の周面に密接し水密性能が良好で且つ長期安定したシール性能を維持できる。しかるに、本実施例では回転軸39全体に表面処理を施したが、コネクタ部46のみに表面処理することも可能である。いずれも、ステンレス鋼を使用した場合に比し安価に提供でき、且つステンレス鋼と同等以上の性能が期待できる。
一方、洗い用の撹拌軸38も同様に低炭素鋼を素材に軟窒化処理による表面処理を施し、表面に窒化合物層及び更に酸化皮膜層を形成したので、上記回転軸39と同様の効果が期待できるもので、特には撹拌軸38の上端部の周面は第2のシール部材52が摺動する部位にあるが、該周面は硬質化処理にて滑らかで美麗に仕上がり低摩擦係数の表面に仕上げることができることから、第2のシール部材52が密接し水密性能を良好とし且つ長期安定したシール性能を維持できる。また、滑り軸受53,54との摺動に対しても、同様に耐磨耗性などに優れるとともに滑らかな安定した回転動作が長期期待できる。
その他、回転槽たる脱水兼洗濯槽33の胴部33aを鉄系鋼板の酸洗鋼板を用いて酸窒化法による表面処理を施し窒化合物層及び酸化皮膜層を形成したので、ステンレス鋼などの高級素材を使用することなく耐食性、耐磨耗性、耐疲労性等に優れた脱水兼洗濯槽33が構成できる。しかも、脱水兼洗濯槽33の少なくとも内面側を硬化熱処理することで、低摩擦係数の滑らかで美麗に仕上げることができるから、脱水運転時に遠心作用を受けて胴部33a側にへばり付いた洗濯物は剥がれ易く、次行程がすすぎ洗いであれば洗濯物は胴部33aから速やかに剥がれてほぐれ易くなり、結果として効率の良いすすぎ洗い効果が期待できる。
なお、上記表面処理は、水に浸かり、或は水が付着するような構成部品に広く展開でき、例えば撹拌体37連結用のネジ45(図4参照)、脱水兼洗濯槽33連結用のネジ48(図5参照)、その他、水槽34等を水密に組立てるべくネジ部品(図示せず)などへの応用も有効である。また、本実施例では回転軸である中空状の回転軸39と撹拌軸38との両方に表面処理を施したが、少なくともいずれか一方を表面処理することでも、材料コストの低減をはじめ、一方の回転軸に対する上記した種々の性能改善が期待できる。
(変形例)
図6,7は、上記第2実施例に対する変形例を示すもので、このものは縦軸周りの脱水兼洗濯槽を備えた洗濯形式であるなど基本的構成は共通とするものの、駆動手段において、駆動機構部からの回転動力が途中のギヤ変速機構を介して回転軸に伝達されるようにした点で異なるとするものである。
すなわち、筐体62内には弾性吊持機構63により弾性支持された水槽64、回転槽たる縦軸周りの脱水兼洗濯槽65、及び脱水兼洗濯槽65の内底部に設けた撹拌体66を備えた脱水兼用洗濯機61にあって、具体的な物品形状等は異なるものの以下に述べる駆動手段を除き上記実施例と実質的に同じ構成にある。
しかして、以下駆動手段の構成につき述べると、回転軸としては脱水兼洗濯槽65を回転駆動する脱水用の中空状の回転軸67と、洗い用の撹拌軸68とによる2重軸構成を基本的構成とする点では上記実施例と共通であるが、本実施例ではいずれも途中でギヤ変速機構69を介して所定の回転動力を伝達する構成としている点で異なる。すなわち、このギヤ変速機構69は、大略的には太陽ギヤ69aと、遊星ギヤ69bと、その周囲の内歯ギヤ69cと、及び内歯ギヤ69cを一体的に保持するとともに前記変速ギヤ群を囲み内蔵するギヤケーシング70とを備えた構成にある。特にギヤケーシング70は、後述するように中空状の回転軸67と連結され一体的に回転駆動するとともに、外側方に設けられたブレーキ装置83の図示しないブレーキ片がギヤケーシング70の外側面に圧接して制動可能とするなど、複数の機能を兼用した構成としている。
このように途中にギヤ変速機構69が介在するため、回転軸も上下に2分割された構成となり、具体的に中空状の回転軸67は、上,下回転軸67a,67bと、また撹拌軸68は上,下撹拌軸68a,68bとに分割された構成からなり、上回転軸67aは水槽64底部を貫通して脱水兼洗濯槽65の底部に、複数個のネジ75により締結固定され、一方上撹拌軸68aは撹拌体66とネジ76により締結固定され、夫々回転駆動可能としている。
ところが、前者の上,下回転軸67a,67bは、前記ギヤケーシング70を介して連結されているため、これらは一体的に回転可能である。これに対し、内部に夫々挿通された上,下撹拌軸68a,68bは、変速ギヤ群を介して分断された形態をなしており、後述するように下撹拌軸68bから変速ギヤ群を経て減速された回転動力が上撹拌軸68aに伝達され、撹拌体66を所定の回転速度で回転駆動する構成にある。
そして、このような回転軸67及び撹拌軸68の下端部には、図6に示すように従動プーリ71が取付固定され、ベルト72を経て駆動プーリ73と連動するベルト伝達機構を構成している。しかるに、駆動プーリ73は駆動モータ74のモータ軸に連結されており、以ってプーリ(径)比に応じた所定の回転速度が、回転軸側に伝達される駆動機構部が形成されている。
なお、中空状の回転軸67は、その外周囲に配置された軸受ハウジング77により水密で回転可能に軸支されている。例えば、上回転軸67aでは、その外周面に摺動し且つ水槽64底部の水密構造を兼ねた第1のシール部材78が水密に配置され、その直下に位置するボールベアリングからなる軸受79に嵌合支持され、以って回転可能に軸支されるとともに、これらシール部材78及び軸受79は、軸受ハウジング77の上端部に嵌合支持され、そのうち軸受79は、該ハウジング77の下方における下回転軸67b側にも設けられている(図6参照)。
一方、中空状の回転軸67の内周側には、特に脱水兼洗濯槽65側からの水に対する水密構成とするために第2のシール部材80が設けられ、該シール部材80の内端側は上撹拌軸68aに水密で摺動可能に設けられている。
これに対し、上撹拌軸68aの外周面には、前記第2のシール部材80の下位に位置して、滑り軸受81,82が上下に離間した位置に配置され上撹拌軸68a部分を回転可能に軸支している。この上下2箇所に配置された滑り軸受81,82は、下撹拌軸68b側にも同様に配置され、斯くして撹拌軸68は、中空状の回転軸67の内部に回転可能に軸支された構成としている。
また、図6に示すように回転軸下部にはクラッチ機構84が設けられ、前記ブレーキ装置83と連動する構成としている。このクラッチ機構84は、中空状の回転軸67と撹拌軸68とを一体的に連結した状態とする「拘束」状態と、これを解除する「解放」状態とを繰り返し行うもので、例えばクラッチ機構84が動作して上記「拘束」状態としたときは、従動プーリ71からの動力は下撹拌軸68b及び下回転軸67b共に伝達され、回転駆動される。
このとき、同時にブレーキ装置83はギヤケーシング70から離間して制動状態から解放された状態となるため、中空状の回転軸67は回転駆動が可能な状態に維持され、下回転軸67bからの回転動力がギヤケーシング70、及び上回転軸67aに伝達され、該上回転軸67aに連結された脱水兼洗濯槽65を高速回転し、つまり脱水運転を実行可能とする。ところが、下撹拌軸68bの回転動力は、内歯ギヤ69cがギヤケーシング70と共に高速回転しているので、他の変速ギヤ群の回転伝達は無効化され、上撹拌軸68a側に伝達されず、従って撹拌体66は自由動状態にある。
これに対し、クラッチ機構84が動作して下撹拌軸68bと下回転軸67bとの連結が解除された場合には、駆動機構部からの回転動力は下撹拌軸68b側のみ伝達される。同時に、ブレーキ装置83が動作しブレーキ片(図示せず)がギヤケーシング70の外側面に圧接した制動状態に維持される。従って、ギヤケーシング70は、制動状態に拘束された静止状態に保持されるため、回転軸67が回転駆動されることはない。
そして、内歯ギヤ69cが静止状態に保持されるので太陽ギヤ69aと遊星ギヤ69bとの回転動作が有効化され、この場合、所定速度に減速されて上撹拌軸68aに伝達され、撹拌体66を適正な速度で回転する洗い運転が可能となる。
上記したように、本実施例の脱水兼用洗濯機61によれば、ブレーキ装置83やクラッチ機構84の動作に応じて、中空状の回転軸67、若しくは撹拌軸68のうちのいずれかの回転駆動を有効化し、脱水運転若しくは洗い運転を選択的に実行可能である。しかるに、回転軸67は、ギヤ変速機構69を備えた構成では、途中にギヤケーシング70を介在するなどして、上,下に分断した回転軸67a,67bとする構成にある。そして、特に水密構成を要する部位は水槽64を貫通する上方側の部位にあり、従って上回転軸67aと水槽64底部間に水密構成を施す必要があり、本実施例では軸受ハウジング77の上端部で保持された第1のシール部材78により水密構成が施されている。
このため、本実施例では少なくとも上回転軸67aに対し、例えば酸窒化法で、低炭素鋼を素材とする表面に軟窒化処理を施すことで、表面に窒化合物層及び更に酸化皮膜層を形成し、上記実施例で述べたと同様に上回転軸67aの表面が低摩擦係数の滑らかで美麗に仕上げられる。この結果、その外周面に摺動する第1のシール部材78による水密性能は良好で、且つ長期安定したシール性能が期待できる。勿論、他に耐食性や耐磨耗性等に優れた性能を発揮するもので、当然これらとの相乗効果も期待できるものであることはいうまでもない。
一方、撹拌軸68においてもギヤ変速機構69を介して、上下に分断した形態となり、
且つ脱水兼洗濯槽65内に突出した上撹拌軸68a側において、水密処置を施すことが必要であり、因みに本実施例では上回転軸67a内に装着された第2のシール部材80が、上撹拌軸68aの外周面に水密に摺動する構成にある。しかして、撹拌軸68においても、少なくとも上方の上撹拌軸68aを、低炭素鋼の素材として表面に窒化合物層及び更に酸化皮膜層を形成することで、上記同様に表面が低摩擦係数の滑らかで美麗に仕上げられ、シール性能に極めて有効であり、且つ材料コストを低く抑えることができるなど、実用的な脱水兼用洗濯機61を提供できる。
また、本実施例でも回転軸67若しくは撹拌軸68のいずれか一方に表面処理を施しても、コストやシール性能等に大きな成果が期待できるとともに、下方側の回転軸67bや撹拌軸68bも含めて表面処理すれば、各種の軸受による軸支部分において精度良く支持され、回転性能や軸支機能として有効に作用するものである。
本発明は上記し且つ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、例えば駆動機構部はモータのみに限らずモータからの回転動力をベルト駆動により変速して伝達する手段を有する構成としてもよい。また、回転軸等への表面処理は軟窒化処理に限定されないなど、実施に際して本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施可能である。
本発明の第1実施例を示すドラム式洗濯機の要部の拡大断面図 ドラム式洗濯機の概略構成を示す縦断側面図 回転軸を示し、(a)は正面図で、(b)は下半部を断面とした側面図 本発明の第2実施例に係る脱水兼用洗濯機の一部破断して示す側面図 要部の拡大断面図 変形例に係る脱水兼用洗濯機の下半部を一部破断して示す側面図 要部の拡大断面図
符号の説明
図面中、1はドラム式洗濯機(洗濯機)、5,34,64は水槽、6はドラム(回転槽)、6aは胴部、6bはバックカバー、10,39,67は回転軸、11,44,77は軸受ハウジング、12,40,74はモータ(駆動機構部)、18はコネクタ部、31,61は脱水兼用洗濯機(洗濯機)、33,65は脱水兼洗濯槽(回転槽)、37,66は撹拌体、38,68は撹拌軸、69はギヤ変速機構、及び70はギヤケーシングを示す。

Claims (4)

  1. 貯水可能な水槽内に、横軸周りに回転可能に設けられた回転槽と、
    前記回転槽に直結され、周りを軸受ハウジングにて水密に回転可能に軸支された回転軸と、
    前記回転軸を介して前記回転槽を回転駆動する駆動機構部と、を備え、
    前記回転軸は、その素材を低炭素鋼とし、表面に窒化合物層を形成するとともに、更に該窒化合物層の表面に酸化皮膜層を形成する表面処理を施したことを特徴とする洗濯機。
  2. 貯水可能な水槽内に、横軸周りに回転可能に設けられた回転槽と、
    前記回転槽に直結され、周りを軸受ハウジングにて水密に回転可能に軸支された回転軸と、
    前記回転軸を介して前記回転槽を回転駆動する駆動機構部と、を備え、
    前記回転軸は、回転槽側に連結されるとともに周りを水密に軸支されたコネクタ部と、該コネクタ部に一端が結合され他端が駆動側に延びる棒状軸部との分割構成とし、そのうちの前記コネクタ部の素材を低炭素鋼とし、その表面に窒化合物層を形成するとともに、更に該窒化合物層の表面に酸化皮膜層を形成する表面処理を施したことを特徴とする洗濯機。
  3. 貯水可能な水槽内に、縦軸周りに回転可能に設けられた回転槽と、
    前記回転槽内に回転可能に設けられた撹拌体と、
    前記回転槽に一端が直結され、周りを軸受ハウジングにて水密に回転可能に軸支された中空状の回転軸と、
    前記撹拌体に一端が直結され、前記回転軸の中空部を通して水密に回転可能に軸支された撹拌軸と、
    前記回転軸及び撹拌軸の他端側に設けられ、これら軸を介して選択的に前記回転槽及び前記撹拌体を回転駆動する駆動機構部と、を備え、
    前記回転軸及び前記撹拌軸の少なくとも一方を、その素材を低炭素鋼とし、表面に窒化合物層を形成するとともに、更に該窒化合物層の表面に酸化皮膜層を形成する表面処理を施したことを特徴とする洗濯機。
  4. 回転軸及び撹拌軸は、途中に変速ギヤ機構を介して回転駆動される構成とし、この変速ギヤ機構の上部に位置する前記回転軸及び撹拌軸の少なくとも一方に表面処理を施したことを特徴とする請求項3記載の洗濯機。
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