JP5024587B2 - 磁界および電流測定に使用される磁界検出器及び電流測定方法 - Google Patents

磁界および電流測定に使用される磁界検出器及び電流測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁界および電流測定に使用される磁界検出器及び電流測定方法に係り、特に、多層基板により製作されるシールディドループ型の磁界検出器を技術的なベースとした磁界検出器に関する。また、半導体チップ上の配線、半導体パッケージのボール部分やボンディングワイヤ部分を測定のターゲットとした、非接触で電流や磁界を計測する技術に関する。
従来より、プリント基板配線等を対象とした磁界検出および電流計測に使用される磁界検出器が考案されており、実際に製品化もされている。例えば、特許文献1ではプリント基板配線中の高周波電流を計測するための多層基板を利用した磁界プローブが考案されている。また、特許文献2、特許文献3には薄膜プロセスによるシールディドループが考案されている。これらの磁界検出器の応用の例としては特許文献4にあるように、配線上の磁界を計測して電流に変換する電流センサーがある。また、特許文献5には透磁率測定用のシールディドループコイルが提案されている。特許文献6にはシールド強化型の構造がある。特許文献7にはループを形成するプリント配線パターンの周囲にビアを配置して特性改善を図る例が記述されている。
特許第2970615号公報 特許第3173501号公報 特許第3102420号公報 特開2000−171504号公報 特許第3085651号公報 特許第3633593号公報 特開2004−69337号公報
上記のシールディドループ型の磁界検出器の基本構造を図14に示す。プリント基板等の多層基板で製作され、各層の配線パターンは銅などの金属の薄い膜である。各層の間は誘電体で充填されている。第1層のグランド配線1と第3層グランド配線3に信号配線2が挟まれ、各層は先端でビア4で電気的に接続されている。第1、2、3層は全体として磁界を検出しながら電界をシールドするシールディドループ構造となっている。このシールディドループ構造は高周波帯では非常に優れた磁界検出器を構成できるが、信号層のC字状部2bが存在しない側のグランド層が開放されているため、電磁界が回り込み、磁界出力を伝送するためのストリップラインを構成しているC字状部の信号伝送に影響を与えることが指摘されていた。このような多層構造は従来セミリジッド同軸ケーブルを用いて製作されていたが、それを多層基板に置き換えたことにより生じた不完全さによるものである。シールディドループの古典的な文献であるJohn D. Dyson, “Measurement of Near Fields of Antenna and Scatters”, IEEE Transactions on Antenna and Propagation, Vol.AP-21, No.4, pp.446-461 (1973.7).には、図15に示すとおり、同軸構造の半円部6bと中空でない円形導体による半円部6cとで構成されるシールディドループが記載されている。この中空でない円形導体部を多層基板で置き換えたために誤差が生じる要因となっていた。
これを解決するために、特許文献6では図16のようなビア接続によるシールド強化構造が提案されている。本構造によりシールド強化は可能であるが、プリント基板等を用いる場合、製造プロセスの微細化に限界があり、ビア形成のピッチに制限があるため、配列することができるビアの数には限界があった。また、グランド配線1と3の間の距離が離れているときにはビア4、9、10に沿う方向はプリント基板の厚み方向にスリットができ、電界シールドがしにくいという欠点があった。
さらに信号層とグランド層がビアで接続されているため、高周波においては反射が生じ、測定誤差を生じる要因になる場合もあった。
このような磁界検出器は特許文献4にあるように、図17に示すようなプリント回路配線やICチップ上の配線に垂直に設置されて配線を周回する磁界を検出する測定に使用される。測定された磁界は、適切な変換式を用いて配線を流れる電流に変換することができる。しかし、配線が下層に存在するため表面層付近で測定することができなかったり、ICチップ表面をパッケージ側に向けて実装するフェイスダウン実装を行うとICチップ表面の配線が隠れてしまうため、図16に示すような方式では測定ができない問題点があった。また、フェイスアップ実装の場合でも、測定したい配線が下層にある場合にはICチップ表面に出てくる磁界を高い精度で測定することができなかった。
本発明の目的は、信号層の非対称性を解決、あるいはシールドを強化する手段を提供する。また、本発明の他の目的は、反射や不要な電磁界の回り込みを防止するための手段を提供することにある。また、本発明の他の目的は、BGA(Ball Grid Allay)やボンディングワイヤ近傍の磁界を検出する手法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、磁界から電流を計算する非接触電流測定法を提供することにある。
本発明の磁界検出器は、第1の線状導体パターンと、該第1の線状導体パターンの端部に接続され、該端部から分岐した第1及び第2の導体パターンとを有し、該第1及び第2の導体パターンの先端部が所定距離離間し、対向して配置される第1層と、
前記第1層と同形状の導体パターンを有し、前記第1層に対向して配置される第2層と、
前記第1の線状導体パターンに対向する第2の線状導体パターンと、前記第1の導体パターンの幅より細く、該第2の線状導体パターンの先端部に接続された、前記第1導体パターンに対向し、前記第1又は第2の導体パターンの先端部に対向する位置まで延びた第3の導体パターンと、該第3の導体パターンの第1先端部に接続された、前記第2の導電パターンに対向する第4の導体パターンとを有し、前記第4の導体パターンが前記第2の線状導体パターン付近で切り欠きを持ち、前記第1層と前記第2層との間に配置される第3層と、
前記第1層と前記第2層と前記第3層とを、前記第3の導体パターンの前記第1先端部又は前記第4の導体パターンの切り欠かれた第2先端部を通して電気的に接続する第1のビア導体とを有することを特徴とする。
また本発明の磁界検出器は、線状導体パターンと、該線状導体パターンの端部に接続され、該端部から分岐した第1及び第2の導体パターンとを有し、該第1及び第2の導体パターンの先端部が所定距離離間し、対向して配置される第1層と、
前記第1層と同形状の導体パターンを有し、前記第1層に対向して配置される第2層と、
前記第1の導体パターンの幅より細く、前記第1導体パターンに対向する第3の導体パターン、あるいは前記第1及び第2導体パターンに対向する第3及び第4の導体パターンを有し、前記第1層と前記第2層との間に配置される第3層と、を備え、
前記第3又は第4の導体パターンの先端部において、前記第1層と前記第3層との間、及び前記第2層と前記第3層との間にそれぞれ抵抗体を挿入したことを特徴とする。
特に、前記第1層、第2層、第3層により伝送路を形成する部分の特性インピーダンスをRとし、前記第1層と第3層との間の抵抗体の抵抗値をR1、前記第2層と第3層との間の抵抗体の抵抗値をR2とするとき、
R=(R1・R2)/(R1+R2)
なる関係を満たすことが望ましい。
また本発明の磁界検出器は、線状導体パターンと、該線状導体パターンの端部に接続され、該端部から分岐した第1及び第2の導体パターンとを有し、該第1及び第2の導体パターンの先端部が所定距離離間し、対向して配置される第1層と、
前記第1層と同形状の導体パターンを有し、前記第1層に対向して配置される第2層と、
前記第1の導体パターンの幅より細く、前記第1導体パターンに対向する第3の導体パターン、あるいは前記第1及び第2導体パターンに対向する第3及び第4の導体パターンを有し、前記第1層と前記第2層との間に配置される第3層と、を有し、前記第1層と前記第2層との間に配置される第3層と、を備え、
前記第3又は第4の導体パターンの先端部において、前記第1層と前記第3層との間、及び前記第2層と前記第3層との間にそれぞれ電磁気の吸収体を挿入したことを特徴とする。
本発明によれば、不要な電磁界の回り込みを防止し、導体の非対称性、終端部の反射による高周波における磁界計測の精度低下を防止することができる。
また本発明によれば、ボールを流れる電流を非接触計測できる手法を提供するのでBGAなどの実装方式に対応できる。
また本発明によれば、ボンディングワイヤで非接触電流計測できる手法を提供できるので、ICチップ上層に測定した配線がない場合でも対応できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
まず、参考例として図14に示す従来型の磁界検出器について説明する。このような磁界検出器はプリント基板や半導体パッケージなどの電子部品近傍の磁界を検出し、磁界分布を可視化したり、磁界から配線を流れる電流を計算する非接触電流計測に使用される。通常このような磁界検出器を測定したい電磁界中に曝すと、電磁気の法則に従い電圧が各導体に誘起される。このとき磁界による電圧は主として配線導体パターン1b、1c、3b、3c中を右回りあるいは左回りに電流を流す方向に誘起する。流れた電流は先端のビア4を介して導体2の中を伝送され、さらに配線1を伝送して測定器の入力段で電圧として検出される。これがこの種の磁界検出器を使用する際の一般的な動作である。このとき、通常、測定対象物周辺に磁界だけ存在するということはなく、電界も存在し、各導体の長手方向に沿うようにして電圧を誘起させる。通常このようなプリント基板には測定対象以外の部品が実装されているため、本来測定したくない電磁界が発生している。このとき、磁界検出器が導体1に対してほぼ対称な形をしているので、電界による電圧はキャンセルされるか、あるいは磁界による電圧出力に比べて非常に小さな値となる。このようにして電界をシールドすることができ、磁界検出器を構成することができる。
ところが、図14の従来型の磁界検出器では内層の信号配線2は片側しか存在しておらず、グランド配線1の長手方向(伝送方向)に対して対称ではない。磁界検出器全体は多層基板により構成されるため、グランド層の側面は開放されており、若干の電界が内部に侵入し、測定誤差を増やす要因となっている。このような現象は常にこの種の磁界検出器で見られるわけではなく、小型化やレンズ効果防止等の理由によりグランド配線1、3の幅を、信号配線2や各層の層間厚に比べて十分に広くできない場合に生じる。
[実施形態1]
図1(a)、(b)は本発明の第1実施形態の磁界検出器を示す斜視図及び平面図である。
図1において、グランド配線(基本的にはGNDに限らず定電位の配線であればよい)となる第1層の配線導体パターン1は、線状導体パターン1a、線状導体パターン1aから分岐した導体パターン1b及び導体パターン1cを有する。導体パターン1b及び導体パターン1cの先端部は所定距離離間し対向して配置される。導体パターン1b、1cはそれぞれ「C」字状又は「コ」の字状の導体パターンであり、導体パターン1b、1c合わせて「C」字状の導体パターンを構成している。なお、導体パターン1b,1cは同じ長さとなっており、導体パターン1b、1cの先端部間のギャップは磁界検出器のほぼ中心に配置されているが、導体パターン1b、1cのいずれかの長さが長く、中心からずれてギャップが配置されてもよい。ギャップは特性上、磁界検出器の中心又はその中心近傍に配置されることが望ましいが、基本的には磁界検出器の中心から線状導体パターン1aの接続部近傍までのどの位置に配されても磁界検出を行うことができるので、磁界検出器として求められる性能を考慮してギャップの位置を適宜変更してもよい。
信号配線となる第2層の配線導体パターン2は、線状導体パターン2a、線状導体パターン2aに接続される導体パターン2b、導体パターン2bの先端部とつながれる導体パターン2cを有する。導体パターン2b、2cは合わせて「C」字状を構成しており、導体パターン2cは線状導体パターン付近で切り欠きをもっている。線状導体パターン2a、導体パターン2b、導体パターン2cは、線状導体パターン1a、導体パターン1b、導体パターン1cと対向するように設けられ、線状導体パターン1a、導体パターン1b、導体パターン1cの幅よりも細い幅となっている。導体パターン2cの幅は導体パターン2bと同じ幅となっている。
グランド配線(基本的にはGNDに限らず定電位の配線であればよい)となる第3層の配線導体パターン3は、第1層の配線導体パターンと同形状のパターンを有する。すなわち、配線導体パターン3は、線状導体パターン3a、線状導体パターン3aから分岐した導体パターン3b及び導体パターン3cを有する。導体パターン3b、3cはそれぞれ「C」字状又は「コ」の字状の導体パターンであり、導体パターン3b、3c合わせて「C」字状の導体パターンを構成している。
配線導体パターン1と配線導体パターン2、配線導体パターン3とは、導体パターン2bの先端部を通って電気的にビア導体4で電気的に接続される。なお、ビア導体4は導体パターン2cの先端部(導体パターン2aの近傍)を通ってもよい(後述する各実施形態においても同様である)。ビア導体4は導体パターン2b又は2cの先端部から特性上問題のない程度離れた近傍領域を通るように設けてもよい(かかる領域も先端部に含めるものとする)。また、ここではビア導体4は導体パターン1c、3cの先端部(ギャップを作る一方の先端部)を通っているが、導体パターン1b、3bの先端部(ギャップを作る他方の先端部)を通ってもよい。
図18に示すように、配線導体パターン1と配線導体パターン2とは絶縁層41を介して対向しており、配線導体パターン2と配線導体パターン23は絶縁層42を介して対向している。配線導体パターン1、2、3は、例えばAgPdやAu等の金属層で形成することができ、絶縁層41はガラスセラミックシートを用いることができる。図19は他の構成例の磁界検出器を示すもので、図20は図19のA−A’断面図を示す。図20に示すように、本構成例の磁界検出器では、基板内に配線導体パターン2、配線導体パターン3が設けられ、基板上に配線導体パターン1が設けられた多層基板の構成である。配線導体パターン1と配線導体パターン2、配線導体パターン3が基板内に設けられてもよい。
図18及び図19において、d1は配線導体パターン1、3の長さ、d2は配線導体パターン1、3の幅を示し、d1/d2が1以上が望ましい。
本実施形態の磁界検出器の、図14の従来型磁界検出器との違いは、信号配線となる配線導体パターン2は、ビア導体4を越えて伸びてC字状の導体パターン2cを有しており、信号配線となる配線導体パターン2は配線導体パターン1と対向しており、信号配線が配線導体パターン1の線状導体パターン1aからみてほぼ対称な形状となっている。このような構成にすると若干の電界が側面から侵入しても、同程度の電圧が誘起されるため電界による電圧はキャンセルしやすくなる。
また、本実施形態の磁界検出器の構造は配線導体パターン1の線状導体パターン1aに対して対称となるように信号配線となる配線導体パターン2を配置することにより、電磁界分布の乱れを対称化し、電磁界のかく乱による非対称な電圧成分の誘起を抑える効果がある。したがって、磁界による出力に対する電界の出力の割合が減少し、いわゆるS/N比が向上する。
[実施形態2]
図2(a)、(b)は本発明の第2実施形態の磁界検出器を示す斜視図及び平面図である。本実施形態において、図2(a)、(b)中、図1(a)、(b)に示した構成部材と同一構成部材については同一符号を付して説明を省略する。
図2(a)、(b)に示す磁界検出器は第1の実施形態と同様に、不要な電磁界が信号配線が存在しないC字状部分の側面から侵入して望ましくない電圧や電流が電磁界により誘起される場合に、片側を図15の6cに近づける構成となっている。
さらに図2(a)、(b)に示す磁界検出器では、図2(a)、(b)に示すように信号配線となる導体パターン2cの切り欠き14付近の終端部にもビア導体9を設けることにより、上下のグランド配線となる配線導体パターン1,3と一体化した構造とすることができ、C字状部分の片側が完全な金属体に近づく。プリント基板でこのような磁界検出器を製作する場合、特性インピーダンスを所定の値に合わせるために各層の間隔を狭くできない場合がある。また、ビアのピッチは歩留まり等の都合上から狭くすることができない場合がある。そのため、ビアに沿う方向にスリット状の隙間ができ、不必要な電磁界が侵入したり、ビアに沿う方向に不必要な電圧が誘起される可能性がある。図2のように上下のグランド配線に沿うような配線パターンを設け、さらにビア9のようなビア接続数を増やすことにより、よりシールドを強化することができる。
[実施形態3]
図3は本発明の第3実施形態の磁界検出器を示す斜視図である。本実施形態において、図3中、図2(a)、(b)に示した構成部材と同一構成部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態においては、第2実施形態とは異なり、導体パターン2bと繋がれる導体パターン2dの幅を上下のグランド配線となる導体パターン1c、3cと同じ幅に広げている。このように導体の面積を増やすと図15の構成に近づけることが可能となる。導体パターン2dの幅は導体パターン1c、3cよりも小さくてもよい。
[実施形態4]
図4は本発明の第4実施形態の磁界検出器を示す斜視図である。図4はビア導体を半周部分の全面に配置した構造となっており、グランドに沿う方向とグランド間を接続する方向に導体が格子状に配置されることになり、横から見た場合の開口面積が減るので図15の構造にさらに近づけることができる。図4ではビア導体はビア導体4、9のみ示されており、他のビア導体は簡易化のため、導体パターン1c上にビアホールのみが示されているが、実際は図16(a)と同様に、ビアホール下にビア導体4、9と同様のビア導体が設けられている。図4中、図2(a)、(b)に示した構成部材と同一構成部材については同一符号を付して説明を省略している。
[実施形態5]
図5は本発明の第5実施形態の磁界検出器を示す斜視図である。図5中、図3に示した構成部材と同一構成部材については同一符号を付して説明を省略する。図5は中間層(導体層)11を設けて導体を増やすことにより全体の厚みを変えずに金属部分を増やすことができる。図4の場合と同様に上下のグランド配線と中間層を全て接続するようなビアを設けることも可能である。図5ではグランド配線1と信号配線2との間、グランド配線3と信号配線との間に、それぞれ、二つの中間層11を設けている。中間層11はグランド配線1と信号配線2との間、グランド配線3と信号配線との間に、それぞれ1つ又は3つ以上設けてもよい。
図5は以上のべたようなシールド強化構造を施した磁界検出器と従来型磁界検出器の比較を行った結果である。図17に示されるようにマイクロストリップライン上に磁界検出器を設置すると磁界による出力が得られる。ここで、磁界検出器の向きを設置グランド配線1を中心として180度回転させると磁界による出力は反転するが、誤差要因である電界による出力は反転しない。したがって、磁界検出器を0度に設置した場合の出力と180度に設置した場合の出力に差がないことが理想である。図6はこの0度と180度の出力差をグラフ化したものである。図6の従来型は図14の磁界検出器の特性を示し、図6の新型は図4の磁界検出器である。新型の方が、特に4GHz以上の周波数帯については0デシベルに近く、性能が改善されていることが分かる。
[実施形態6]
図7は信号層となる配線導体パターン2とグランド層となる配線導体パターン1、3を接続するビア導体がなく、導体パターン2bの先端を通して、グランド配線となる配線導体パターン1,3間にそれぞれ抵抗体12が挿入されている。
そして、配線導体パターン1、配線導体パターン2、配線導体パターン3により伝送路を形成する部分の特性インピーダンスをRとし、配線導体パターン2と配線導体パターン1と間の抵抗体12の抵抗値をR1、配線導体パターン2と配線導体パターン3と間の抵抗体12の抵抗値をR2とするとき、
R=(R1・R2)/(R1+R2)
なる関係を満たすように、抵抗値R1、R2を設定することが望ましい。これは伝送路側から見た場合、抵抗値R1の抵抗体と抵抗値R2の抵抗体とが並列に接地されており、伝送路の特性インピーダンスと2つの抵抗体の合成抵抗値とが等しくなるようにすれば、伝送される信号の反射を抑えることが可能になるからである。
例えば、グランド層となる配線導体パターン1、3と信号層となる配線導体パターン2とが形成するストリップラインの特性インピーダンスが50Ωである場合には、抵抗体12の抵抗値は100Ωで設計される。このような抵抗体12を挿入すると特にギガヘルツを超える高周波帯において、伝送される信号の反射を抑えることが可能になる。
このような抵抗体の挿入は図15の従来型の磁界検出器でも行われているが、本実施形態のように、多層基板に抵抗体を挿入することにより、多層基板を用いて製作される磁界検出器でも同じ機能を実現することができ、測定精度の向上に役立つ。また直流磁界の検出も可能となる。
なお、導体パターン2cはなくてもよい。また、抵抗体の位置を変えることもでき、図2において、ビア導体4を設けず、図2のビア導体9の代わりに抵抗体を挿入して抵抗体を配置することもできる。
[実施形態7]
実施形態6における抵抗体12を電磁気の吸収体に置換すれば、より精度の高い無反射終端条件を実現することが可能となる。吸収体に抵抗成分を持たせたり、抵抗体と並列に挿入することにより、広帯域で使用できる磁界検出器を構成することも可能となる。吸収体としては電磁気を吸収可能な材料であればよく、例えばフェライト系の材料、フェライト系材料を混ぜた高分子材料等を用いることができる。
[実施形態8]
ICチップ上の配線を流れる電流を計測する場合、図17に示すようにICチップ上面から磁界検出器を垂直に設置して配線の回りを周回する方向の磁界を検出して電流に変換するのが一般的な使い方である。しかし、ICチップがフェイスダウンと呼ばれる実装方式で実装される場合、表面に磁界検出器を接近させることができるような配線が存在しないため、図17のような方法では磁界や電流の測定が難しい。
図8はこのような場合に磁界や電流を測定する磁界検出器を説明するための図である。図8において、21はボール、22はICチップ、23はICパッケージ、24は磁界、25はプリント基板、26は線状引き出し線、27は引き出し線、28はコネクタ、30は電流である。
ICチップ上では磁界を測定できないので、ICチップをパッケージに接続するための半田ボールあるいは金ボールなどの接続用のボール周辺で磁界を測定する。このようなボールは多くの場合球形か、円柱形をしている。電流はICパッケージとプリント基板間を接続するボール中を流れるため、ボール近傍ではボール表面を周回するような磁界が生じる。この磁界を検出するためにはボール近傍に微小な磁界検出器を設置しなければならない。図8はそのような磁界検出器の一実施形態例である。
この磁界検出器は先端に多層基板で製作される磁界検出器を有している。そしてその引き出し線である、グランド配線1、3及び信号配線2により構成される伝送線路(ストリップライン)を必要な長さに伸張している。これはボールの隙間を塗って磁界検出器先端部を挿入するためである。通常図8に示されるようなBGAパッケージの場合、ボールの高さは数十マイクロメートルから数百マイクロメートルであり、狭い隙間に磁界検出部を挿入しなければならないことになる。この場合、引き出し線を真横に出すことが求められるが、引き出し線の先端に装着されるスペクトラムアナライザー等の測定器に接続するためのコネクタの外形寸法が十分小さい場合は問題がない。しかし、一般的にはコネクタはSMA型式のものなどが用いられるため、真っ直ぐに隙間に挿入することが困難である。そこで本実施形態では、引き出し線1に対して角度を持つような引き出し線2を接続し伝送線路を形成することにより、コネクタとプリント基板の物理的な干渉を回避している。尚、コネクタの代わりに増幅器等が集積化された基板などが装着されることもある。このような構成にすることにより、ボール近傍に生じる磁界の方向に磁界検出器を向けることができ、S/Nを向上させると共に電流計算の精度を高める効果がある。また、磁界検出器を挿入する際の操作性も向上する。
図9はボンディングワイヤへの応用例を示す図である。図9において、29はボンディングワイヤ、30は電流である。
図9はフェイスアップでICチップが実装されているが、ICチップの下層に測定対象の配線が存在する場合には測定誤差が大きくなる。そのため、ボンディングワイヤで電流を測定することが必要になる場合もある。通常このようなワイヤには直線状の部分があるが、その部分に磁界検出器を近接させることができればワイヤ周囲の磁界を検出することができ、電流に変換することが可能となる。この際、図9に示すとおりに測定対象物の形状に応じた角度をつけた引き出し線を設けることにより、磁界検出器の支持が簡単になり操作性が向上する。このような測定法は近年盛んに使われているSiP(System in a package)の一部の実装にも適用でき、適用範囲は広い。
[実施形態9]
先に述べた通りボール及びボンディングワイヤ周辺の磁界を測定すればボール及びワイヤを流れる電流を計算することが可能になる。
ワイヤ及びボールを、図10に示すように線電流モデルで近似すれば、一例として次の式から磁界と電流を対応付けることができる。
Figure 0005024587
この式は電磁気学の最も基礎的な式の一つであり、Hはボールあるいはワイヤ近傍を周回する磁界であり、Iはボールあるいはワイヤ中を流れる電流である。
磁界検出器が磁界を検出するとその出力はスペクトラムアナライザー等の測定器で電圧Vpとして測定される。磁界検出器の磁界校正係数をCfとすれば、電圧Vpから磁界Hを求めることができる。この磁界校正係数は測定あるいは計算により求めることができる。
Figure 0005024587
この式を(1)式に代入すれば次の式が得られる。
Figure 0005024587
(3)式より最終的にワイヤあるいはボールを流れる電流値を求めることができる。
図11のようにボールあるいはワイヤ表面に電流が等しく分布している場合には、(1)式の代わりに(4)式を用いる。31は分割された領域内を流れる表面電流である。
図12は図11をボールの上面から見た図であるが、rkは分割されたk番目の領域に存在する電流からの距離、θkは磁界検出器の開口部の方向の磁界成分を算出するための角度である。また、32は分割されたk番目の表面電流、33は磁界検出器の中央開口部の中心、34は磁界検出器の中央開口部に垂直な磁界成分である。
Figure 0005024587
ここでNはワイヤ表面の分割数であるため、分割された領域での電流値はI/Nという値を持つ。(2)式を(4)式に適用すれば、次の式が得られ、測定された電圧から電流を求めることができる。
Figure 0005024587
以上述べた通り、測定対象物の形状に応じて適切な電流モデルを設定すれば、測定された近傍磁界からボールやワイヤを流れる総電流値を算出することができ、磁界検出器を利用した非接触電流測定システムを構築することが可能となる。
ボールやワイヤ内部にも分割電流を設定する場合には、表面を分割するのと同じ容量で各領域に分割電流を仮定すれば計算できる。
表皮効果等で表面付近にのみ電流が存在する場合には、適切な計算法で電流の深さ方向の分布を算定すればやはり同様の手順で測定された磁界からボールやワイヤを流れる総電流を計算することができる。
これらの計算を行う際には、電流校正係数という概念を導入すれば計算がさらに簡略化される。
尚、以上に示したような磁界の計算式の表現方法はこれ以外にも多数考えられる。例えば、上に述べた式では、磁界検出部の中央部の開口部の中心に生じる磁界を計算しているが、磁界を検出する領域がある一定の面積で表される場合は、図13に示すような中央部の開口部およびその周囲を含む等価的な磁界検出範囲にわたって磁界を積分するなどの方法が取られる。図13において、35は積分範囲である。
本発明は磁界および電流測定に使用される磁界検出器に用いられ、特に、多層基板により製作されるシールディドループ型の磁界検出器を技術的なベースとした磁界検出器に用いられる。また、半導体チップ上の配線、半導体パッケージのボール部分やボンディングワイヤ部分を測定のターゲットとした、非接触で電流や磁界を計測する技術に用いられる。
(a)、(b)は本発明の第1実施形態の磁界検出器を示す斜視図及び平面図である。 (a)、(b)は本発明の第2実施形態の磁界検出器を示す斜視図及び平面図である。 本発明の第3実施形態の磁界検出器を示す斜視図である。 本発明の第4実施形態の磁界検出器を示す斜視図である。 本発明の第5実施形態の磁界検出器を示す斜視図である。 磁界検出器を0度に設置した場合の出力と180度に設置した場合の出力差を示す特性図である。 本発明の第6実施形態の磁界検出器を示す斜視図である。 磁界や電流を測定する磁界検出器を示す図である。 ボンディングワイヤで電流を測定する磁界検出器を示す図である。 ボール及びワイヤを流れる電流を線電流モデルで計算する方法を説明する図である。 ボールあるいはワイヤ表面に電流が等しく分布している場合の電流を計算する方法を説明する図である。 図11のボールを上面から見た図である。 ボール及びワイヤを流れる電流を計算する方法を説明する図である。 シールディドループ型の磁界検出器の基本構造を示す図である。 同軸構造の半円部と中空でない円形導体による半円部とで構成されるシールディドループを示す図である。 ビア接続によるシールド強化構造を示す図である。 プリント回路配線やICチップ上の配線に垂直に設置されて配線を周回する磁界を検出する測定を示す図である。 磁界検出器の分解斜視図である。 図19は他の構成例の磁界検出器を示す平面図である。 図19のA−A’断面図である。
符号の説明
1 第1層のグランド配線パターン
1a 第1層のグランド配線の直線部分
1b 第1層のグランド配線のストリップラインを形成するC字状部分
1c 第1層のグランド配線のストリップラインを形成しないC字状部分
2 第2層の信号配線パターン
2a 第2層の信号配線パターンの直線部
2b 第2層のグランド配線パターンとストリップラインを形成するC字状部
2c 第2層のストリップラインを形成しない側のC字状部
2d 第2層のストリップラインを形成しない側の幅を広げたC字状部
3 第3層のグランド配線パターン
3a 第3層のグランド配線の直線部分
3b 第3層のグランド配線のストリップラインを形成するC字状部分
3c 第3層のグランド配線のストリップラインを形成しないC字状部分
4 第2層の信号線パターン先端で、第1,2,3層を接続するビア
5 ギャップ
6 同軸ケーブルの外導体
6a 外導体の直線部
6b 外導体の同軸を形成する側のC字状部
6c 同軸を形成しない側のC字状部
7 中心導体
8 ギャップ
9 切り欠き部付近の第1、3層を接続するビア
10 ビア4とビア9の中間に配置されるビア
11 第1,2層及び第2,3層間に挿入されるC字状パターン
12 抵抗体または吸収体
13 プリント基板(外形)
14 切り欠き部
15 磁界検出器
16 配線周囲の磁界
17 配線の電流
18 ストリップ導体
19 グランド導体
20 誘電体
21 ボール
22 ICチップ
23 ICパッケージ
24 磁界
25 プリント基板
26 引き出し線1
27 引き出し線2
28 コネクタ
29 ボンディングワイヤ
30 電流
31 分割された領域内を流れる表面電流
32 分割されたk番目の表面電流
33 磁界検出器の中央開口部の中心
34 磁界検出器の中央開口部に垂直な磁界成分
35 積分範囲

Claims (11)

  1. 第1の線状導体パターンと、該第1の線状導体パターンの端部に接続され、該端部から分岐した第1及び第2の導体パターンとを有し、該第1及び第2の導体パターンの先端部が所定距離離間し、対向して配置される第1層と、
    前記第1層と同形状の導体パターンを有し、前記第1層に対向して配置される第2層と、
    前記第1の線状導体パターンに対向する第2の線状導体パターンと、前記第1の導体パターンの幅より細く、該第2の線状導体パターンの先端部に接続された、前記第1導体パターンに対向し、前記第1又は第2の導体パターンの先端部に対向する位置まで延びた第3の導体パターンと、該第3の導体パターンの第1先端部に接続された、前記第2の導電パターンに対向する第4の導体パターンとを有し、前記第4の導体パターンが前記第2の線状導体パターン付近で切り欠きを持ち、前記第1層と前記第2層との間に配置される第3層と、
    前記第1層と前記第2層と前記第3層とを、前記第3の導体パターンの前記第1先端部又は前記第4の導体パターンの切り欠かれた第2先端部を通して電気的に接続する第1のビア導体とを有することを特徴とする磁界検出器。
  2. 前記第1先端部と前記第2先端部の一方を前記第1のビア導体が通るとともに、前記第1先端部と前記第2先端部の他方を第2のビア導体が通り、前記第1及び第2のビア導体により前記第1層と前記第2層と前記第3層とが電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の磁界検出器。
  3. 前記第4の導体パターンは、前記第3の導体パターンと同じ幅である請求項1又は2に記載の磁界検出器。
  4. 前記第4の導体パターンの幅は、前記第3の導体パターンの幅より大きく、前記第2の導体パターンと同じ幅又は前記第2の導体パターンよりも小さい幅であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出器。
  5. 前記第1のビア導体と前記第2のビア導体との間に、前記第1、2及び3層を接続する複数のビア導体を設けたことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の磁界検出器。
  6. 前記第1、3層間と前記第2、3層間とのそれぞれに、前記第4の導体パターンと対向し、且つ前記第4の導体パターンと同じ幅又は前記第4の導体パターンよりも小さい幅の導体層を少なくとも一つ設け、該導体層を前記第1又は/及び第2ビア導体と接続したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁界検出器。
  7. 線状導体パターンと、該線状導体パターンの端部に接続され、該端部から分岐した第1及び第2の導体パターンとを有し、該第1及び第2の導体パターンの先端部が所定距離離間し、対向して配置される第1層と、
    前記第1層と同形状の導体パターンを有し、前記第1層に対向して配置される第2層と、
    前記第1の導体パターンの幅より細く、前記第1導体パターンに対向する第3の導体パターン、あるいは前記第1及び第2導体パターンに対向する第3及び第4の導体パターンを有し、前記第1層と前記第2層との間に配置される第3層と、を備え、
    前記第3又は第4の導体パターンの先端部において、前記第1層と前記第3層との間、及び前記第2層と前記第3層との間にそれぞれ抵抗体を挿入したことを特徴とする磁界検出器。
  8. 前記第1層、第2層、及び第3層により伝送路を形成する部分の特性インピーダンスをRとし、前記第1層と第3層との間の抵抗体の抵抗値をR1、前記第2層と第3層との間の抵抗体の抵抗値をR2とするとき、
    R=(R1・R2)/(R1+R2)
    なる関係を満たすことを特徴とする請求項7に記載の磁界検出器。
  9. 線状導体パターンと、該線状導体パターンの端部に接続され、該端部から分岐した第1及び第2の導体パターンとを有し、該第1及び第2の導体パターンの先端部が所定距離離間し、対向して配置される第1層と、
    前記第1層と同形状の導体パターンを有し、前記第1層に対向して配置される第2層と、
    前記第1の導体パターンの幅より細く、前記第1導体パターンに対向する第3の導体パターン、あるいは前記第1及び第2導体パターンに対向する第3及び第4の導体パターンを有し、前記第1層と前記第2層との間に配置される第3層と、を備え、
    前記第3又は第4の導体パターンの先端部において、前記第1層と前記第3層との間、及び前記第2層と前記第3層との間にそれぞれ電磁気の吸収体を挿入したことを特徴とする磁界検出器。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁界検出器が有している直線状のストリップラインに対して角度を持つストリップラインを接続したことを特徴とする磁界検出器。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の磁界検出器を用いて、ボール又はボンディングワイヤ周辺の磁界を測定して電流に変換する電流測定方法。
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