JP5017808B2 - 雑音除去装置及びそのプログラム - Google Patents
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特許文献1に開示された会話支援装置は、車室内の複数の座席の各々にマイクとスピーカの対を備え付け、ある座席のマイクが収音した声を他の座席のスピーカから放音させる。この技術によれば、座席に着座した特定の乗員間における会話のやり取りを円滑に行わせることができる。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、自動車内の乗員間や乗員と車外の相手との間で、雑音のキャンセルされたクリアな発言の伝達を実現させることを目的とする。
本願発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態は、以下の3つの特徴を有する。1つ目の特徴は、様々な走行状態の自動車の車室内で発生するであろう雑音のパワースペクトル(以下、「雑音スペクトル」と呼ぶ)を予め推定してデータベース化しておくようにした点である。
2つ目の特徴は、走行中の自動車の車内音をマイクによって収音すると共に、その走行状態を決定付ける要素の1つである車速をセンサによって検出するようにした点である。
3つ目の特徴は、走行中に収音される車内音のパワースペクトル(以下、「車内音スペクトル」と呼ぶ)を求める一方で現在の車速に応じた雑音スペクトルをデータベースから抽出し、雑音スペクトルを車内音スペクトルから差し引いた残りのスペクトルから得た音声信号を雑音の除去された車内音として車外へ無線送信するようにした点である。
収音部10は、運転席の近傍に備え付けられたマイクロホンであり、車内音を収音して得た音声信号を制御部50へ供給する。
車速検出部20は、車速を検出する速度センサであり、車速を検出してその検出結果を示す車速値を制御部50へ供給する。
雑音スペクトルデータベース31に記憶される各雑音スペクトルは、以下の手順に従って取得される。まず、本システムを搭載させる自動車をその車速を切り替えながら走行させ、走行中に車室外から車室内へ漏出してくる雑音に個別に記録する。ここで、車室内に漏出する雑音には、エンジンのシリンダの爆発音のほか、ボディの風切り音やタイヤと路面の接触音であるロードノイズなどが含まれ得る。続いて、記録した各雑音の音声信号にフーリエ変換を施す。このフーリエ変換により、雑音の波形の特徴を各周波数毎のパワーとして示す雑音スペクトルが得られる。最後に、得られた各雑音スペクトルに車速値をインデックスとして対応付けた上で、データベースに記憶する。
無線通信部40は、制御部50から供給される音声信号を無線信号として車外の通信機器(例えば、携帯電話)へと発信する。
本願発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、車両の走行状態を決定付ける要素の1つであるエンジンの回転数とアクセルの開度とをセンサによって検出する。そして、エンジンの回転数を所定の算出式に入力することによって雑音を形成する基本周波数成分と倍音周波数成分の周波数位置を求めた後、求めた各周波数のスペクトルパワーをアクセルの開度に応じて個別に割り当てることにより、雑音スペクトルを求める。
図3は、本実施形態にかかる車室内雑音除去システムの物理的構成を示すブロック図である。本システムは、収音部10、記憶部30、無線通信部40、制御部50、エンジン回転数検出部60、及びアクセル開度検出部70を備える。
アクセル開度検出部70は、アクセルの近傍に備え付けられたセンサであり、アクセルの開度を検出してその検出結果を示す開度値を制御部50へ供給する。
基本周波数算出関数32は、エンジンの回転数を入力値として雑音の基本周波数f0を出力するための算出式である。この関数の内容は、本システムを搭載する自動車のエンジンの駆動形式に応じて異なるものとなる。例えば、4サイクルエンジンを搭載した自動車に本システムを搭載する場合、基本周波数算出関数32は、以下のような内容となる。この式の入力値rは、1分あたりのエンジンの回転数値(回/分)である。
(数1)
f0=r/(60×2)(Hz)
本実施形態は、種々の変形実施が可能である。
第2実施形態では、アクセルの開度値に依存した各周波数成分のパワースペクトル比率を示す比率情報をスペクトル比率データベース33に記憶させておき、このスペクトル比率データベース33から抽出した比率情報に応じた各スペクトルパワーをエンジンの回転数から求めた基本周波数成分及び倍音周波数成分に割り振ることにより、雑音スペクトルを求めていた。これに対し、スペクトル比率データベース33に記憶させる比率情報を、自動車のボディの遮音性能や車速や、車速やエンジン回転数の単位時間当たりの変化量などといったような、アクセルの開度とはまた別の要素に依存した内容としてもよい。但し、自動車のボディの遮音性能は、走行状態に応じて変動するという性質を有し得ないため、この変形例の場合、スペクトル比率データベース33には、基本周波数成分及び倍音周波数成分のパワースペクトル比率を示す1つの比率情報が記憶されることになる。そして、エンジンの回転数から基本周波数成分とその倍音周波数成分の周波数位置が求められた後、スペクトル比率データベース33に記憶された比率情報を読み出し、その比率情報に従って各周波数成分のスペクトルパワーが割り振られることになる。
上記両実施形態は、本願発明を、自動車の車内音を車室外へ無線送信する態様を説明したが、本願発明の用途はこれに限られない。例えば、バスの運転席に、収音部10を備え付け、この収音部10を介して収音された乗務員の音声から雑音を除去した上で車室内後方のスピーカから放音させるといった用途にも適用可能である。
Claims (4)
- 車両の走行状態を示す状態値を検出する状態検出手段と、
車内音を収音する収音手段と、
雑音を形成する基本周波数成分及びその倍音周波数成分のスペクトルパワー比を示す比率情報を記憶した記憶手段と、
前記収音手段が収音した車内音に所定の変換処理を施し、その車内音の特徴を示す車内音スペクトルを取得する変換手段と、
前記検出した状態値を所定の関数に作用させることによって当該車両の走行状態に依存した雑音の基本周波数成分の周波数位置を求めると共に、その基本周波数を整数倍した倍音周波数成分の周波数位置を求める雑音周波数推定手段と、
前記記憶手段に記憶された比率情報を読み出す比率情報読出手段と、
前記雑音周波数推定手段が求めた周波数位置の各々に前記読み出した比率情報に応じたスペクトルパワーを割り当てることによって雑音の特徴を示す雑音スペクトルを取得する雑音スペクトル推定手段と、
前記取得した雑音スペクトルを前記取得した車内音スペクトルから差し引くスペクトルサブトラクト手段と、
前記雑音スペクトルを差し引いた残りのスペクトルに逆変換処理を施し、雑音の除去された車内音を取得する逆変換手段と、
前記逆変換手段が取得した車内音を出力する出力手段と
を備えた雑音除去装置。 - 自動車の走行制御機構の一部を成す第1のデバイスの稼動状態を示す状態値を検出する第1の状態検出手段と、
自動車の走行制御機構の一部を成す前記第1のデバイスとは別の第2のデバイスの稼動状態を示す状態値を取得する第2の状態検出手段と、
車内音を収音する収音手段と、
雑音を形成する基本周波数成分及びその倍音周波数成分のスペクトルパワー比を夫々示す各比率情報と前記第2のデバイスの稼動状態を夫々示す各状態値とを対応付けて記憶した記憶手段と、
前記収音手段が収音した車内音に所定の変換処理を施し、その車内音の特徴を示す車内音スペクトルを取得する変換手段と、
前記第1の状態検出手段が検出した状態値を所定の関数に作用させることによって雑音の基本周波数成分の周波数位置を求めると共に、その基本周波数を整数倍した倍音周波数成分の周波数位置を求める雑音周波数推定手段と、
前記第2の状態検出手段が検出した状態値と対応付けて前記記憶手段に記憶された比率情報を読み出す比率情報読出手段と、
前記雑音周波数推定手段が求めた周波数位置の各々に前記読み出した比率情報に応じたスペクトルパワーを割り当てることによって雑音の特徴を示す雑音スペクトルを取得する雑音スペクトル推定手段と、
前記取得した雑音スペクトルを前記取得した車内音スペクトルから差し引くスペクトルサブトラクト手段と、
前記雑音スペクトルを差し引いた残りのスペクトルに逆変換処理を施し、雑音の除去された車内音を取得する逆変換手段と、
前記逆変換手段が取得した車内音を出力する出力手段と
を備えた雑音除去装置。 - 車両の走行状態を示す状態値を検出する状態検出手段、車内音を収音する収音手段、及び雑音を形成する基本周波数成分とその倍音周波数成分のスペクトルパワー比を示す比率情報を記憶した記憶手段を備えたコンピュータ装置に、
前記収音した車内音に所定の変換処理を施し、その車内音の特徴を示す車内音スペクトルを取得する変換機能と、
前記検出した状態値を所定の関数に作用させることによって当該車両の走行状態に依存した雑音の基本周波数成分の周波数位置を求めると共に、その基本周波数を整数倍した倍音周波数成分の周波数位置を求める雑音周波数推定機能と、
前記記憶手段に記憶された比率情報を読み出す比率情報読出機能と、
前記雑音周波数推定機能によって求められた周波数位置の各々に前記読み出した比率情報に応じたスペクトルパワーを割り当てることによって雑音の特徴を示す雑音スペクトルを取得する雑音スペクトル推定機能と、
前記取得した雑音スペクトルを前記取得した車内音スペクトルから差し引くスペクトルサブトラクト機能と、
前記雑音スペクトルを差し引いた残りのスペクトルに逆変換処理を施し、雑音の除去された車内音を取得する逆変換機能と、
前記逆変換機能によって取得された車内音を出力する出力機能と
を実現させるプログラム。 - 自動車の走行制御機構の一部を成す第1のデバイスの稼動状態を示す状態値を検出する第1の状態検出手段、自動車の走行制御機構の一部を成す前記第1のデバイスとは別の第2のデバイスの稼動状態を示す状態値を取得する第2の状態検出手段、車内音を収音する収音手段、及び雑音を形成する基本周波数成分とその倍音周波数成分のスペクトルパワー比を夫々示す各比率情報を前記第2のデバイスの稼動状態を夫々示す各状態値と対応付けて記憶した記憶手段を備えたコンピュータ装置に、
前記収音した車内音に所定の変換処理を施し、その車内音の特徴を示す車内音スペクトルを取得する変換機能と、
前記第1の状態検出手段が検出した状態値を所定の関数に作用させることによって雑音の基本周波数成分の周波数位置を求めると共に、その基本周波数を整数倍した倍音周波数成分の周波数位置を求める雑音周波数推定機能と、
前記第2の状態検出手段が検出した状態値と対応付けて前記記憶手段に記憶された比率情報を読み出す比率情報読出機能と、
前記雑音周波数推定機能により求められた周波数位置の各々に前記読み出した比率情報に応じたスペクトルパワーを割り当てることによって雑音の特徴を示す雑音スペクトルを取得する雑音スペクトル推定機能と、
前記取得した雑音スペクトルを前記取得した車内音スペクトルから差し引くスペクトルサブトラクト機能と、
前記雑音スペクトルを差し引いた残りのスペクトルに逆変換処理を施し、雑音の除去された車内音を取得する逆変換機能と、
前記逆変換機能によって取得された車内音を出力する出力機能と
を実現させるプログラム。
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