JP5017803B2 - 光学素子および光学装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光学素子および光学装置に関するものである。
光学素子として、透明基板の両面のそれぞれに、高屈折率層と低屈折率層とを交互に複数積層してなる誘電体多層膜を形成した光学多層膜フィルタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
例えば、特許文献1にかかる光学多層膜フィルタは、透明基板の両面のそれぞれに、誘電体多層膜が形成されている。かかる光学多層膜フィルタでは、各誘電体多層膜において、高屈折率層同士の厚さ、および、低屈折率層同士の厚さが互いに等しくなっており、各誘電体多層膜が反射膜として機能する。
各誘電体多層膜の高屈折率層および低屈折率層のそれぞれは、内部応力を有しており、この内部応力が透明基板に対し反りを生じさせるように作用する。そこで、特許文献1では、透明基板の両面に形成される高屈折率層および低屈折率層の総層数を比較的多くするとともに、透明基板の一方の面に形成される高屈折率層および低屈折率層の総層数と、透明基板の一方の面に形成される高屈折率層および低屈折率層の総層数との差を比較的小さくすることにより、透明基板の一方の面側の誘電体多層膜全体の内部応力を透明基板の他方の面側の誘電体多層膜全体の内部応力により緩和している。これにより、誘電体多層膜全体の内部応力によって透明基板に反りが生じるのを防止している。
しかしながら、特許文献1では、透明基板の反りを防止するために、透明基板の両面に形成される高屈折率層および低屈折率層の総層数を比較的多くする必要があるため、誘電体多層膜の膜厚が大きくなってしまい、製造工程の複雑化・長時間化、ひいては高コスト化を招いてしまう。
また、透明基板の一方の面に形成される高屈折率層および低屈折率層の総層数と、透明基板の一方の面に形成される高屈折率層および低屈折率層の総層数との差が比較的大きいと、透明基板の一方の面側の誘電体多層膜全体の内部応力を透明基板の他方の面側の誘電体多層膜全体の内部応力により緩和することができない。その結果、誘電体多層膜の内部応力によって透明基板に反りが生じてしまう。
より具体的に説明すると、例えば、透明基板の一方の面に、誘電体多層膜からなる反射膜、透明基板の他方の面に誘電体多層膜からなる反射防止膜を形成する場合、反射膜を構成する層の層数を比較的多くして反射膜の反射率を高めると、反射防止膜はその機能を比較的少ない層数で発揮できるにもかかわらず、透明基板の反りを防止するために、反射防止膜を構成する層の層数を大きなものとしなければならず、製造工程の複雑化・長時間化、ひいては高コスト化を招いてしまう。
特開平7−209516号公報
本発明の目的は、基板の両面に互いに層数の異なる多層膜を形成した場合に、各多層膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数を低減しつつ、基板に反りが生じるのを防止するとともに、所望の光学特性を得ることができる光学素子、および、この光学素子を備える光学装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光学素子は、光透過性を有する基板と、
前記基板の一方の面に、高屈折率層と低屈折率層とが交互に複数積層されてなる第1の多層膜と、
前記基板の他方の面に、前記第1の多層膜を構成する層の層数よりも少ない層数で、高屈折率層と低屈折率層とが交互に複数積層されてなる第2の多層膜とを有し、
前記第2の多層膜は、前記第2の多層膜に必要な光学特性を損なわない範囲で、前記第2の多層膜を構成する複数の層のうちの少なくとも1層の低屈折率層の厚さを大きくして、前記第1の多層膜全体に生じる内部応力と前記第2の多層膜全体に生じる内部応力とをほぼ釣り合わせており、
前記第2の多層膜の複数の低屈折率層のうち、前記基板側の層の厚さが前記基板と反対側の層の厚さよりも大きく、
前記第2の多層膜の複数の高屈折率層のうち、前記基板側の層の厚さが前記基板と反対側の層の厚さよりも大きいことを特徴とする。
これにより、基板の両面に互いに層数の異なる多層膜を形成した場合に、各多層膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数を低減しつつ、基板に反りが生じるのを防止するとともに、所望の光学特性を得ることができる。
また、第2の多層膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数を比較的少なくすることができるので、製造工程の簡略化・短時間化を図り、ひいては、低コスト化を図ることができる。
特に、第2の多層膜を構成する複数の層のうちの少なくとも1層の低屈折率層の厚さを大きくすることにより、より確実に、必要な光学特性を損なうことなく、基板に反りが生じるのを防止することができる。
また、第2の多層膜の複数の低屈折率層のうち、基板側の層の厚さを基板と反対側の層の厚さよりも大きくするとともに、第2の多層膜の複数の高屈折率層のうち、基板側の層の厚さを基板と反対側の層の厚さよりも大きくすることにより、第2の多層膜全体の厚さを抑えつつ、基板に反りが生じるのをより確実に防止することができる。
本発明の光学素子では、前記第2の多層膜を構成する複数の層のうちの前記少なくとも1層は、前記基板に最も近い低屈折率層であることが好ましい。
これにより、第2の多層膜全体の厚さを抑えつつ、基板に反りが生じるのをより確実に防止することができる。
本発明の光学素子では、前記第2の多層膜の低屈折率層は、SiOを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、第2の多層膜の低屈折率層の層厚を大きくしても、安定した光学特性を得ることができる。
本発明の光学素子では、前記第1の多層膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数と、前記第2の多層膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数との差は、2〜34層であることが好ましい。
これにより、基板に反りが生じるのをより確実に防止するとともに、第1の多層膜全体の厚さを抑えることができる。
本発明の光学素子では、前記第1の多層膜の高屈折率層同士または低屈折率層同士の厚さが互いに等しいことが好ましい。
これにより、第1の多層膜を反射膜とすることができる。
本発明の光学素子では、前記第1の多層膜は反射膜であり、前記第2の多層膜は反射防止膜であることが好ましい。
これにより、基板の第2の多層膜側の面での光の反射を防止しつつ、第1の多層膜で光を反射させることができる。
本発明の光学素子では、前記反射防止膜は、その必要な光学特性として、40nm以上の幅を有する波長域の光の反射を防止する機能を有することが好ましい。
これにより、基板の反りをより確実に防止するとともに、所望の反射防止機能を有する反射防止膜を得ることができる。
本発明の光学素子では、前記第1の多層膜の低屈折率層の総層厚と前記第2の多層膜の低屈折率層の総層厚がほぼ等しいことが好ましい。
これにより、第2の多層膜全体の厚さを抑えつつ、より確実に、基板に反りが生じるのを防止することができる。
本発明の光学素子では、前記第1の多層膜の高屈折率層の総層厚と前記第2の多層膜の高屈折率層の総層厚がほぼ等しいことが好ましい。
これにより、第2の多層膜全体の厚さを抑えつつ、より確実に、基板に反りが生じるのを防止することができる。
本発明の光学装置は、本発明の光学素子を備えたことを特徴とする。
これにより、低コストで、優れた特性を有する光学装置を提供することができる。
本発明の光学装置は、可変波長フィルタであることが好ましい。
これにより、低コストで、優れた特性を有する波長可変フィルタを提供することができる。
以下、本発明の光学素子および光学装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、本発明の光学素子を備える光学装置として、波長可変フィルタを一例に説明する。
図1は、本発明の光学装置である波長可変フィルタの第1実施形態を示す分解斜視図、図2は、かかる波長可変フィルタの平面図、図3は、図2のA−A線での断面図、図4は、図3に示す波長可変フィルタに備えられた光学素子の部分拡大断面図である。また、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言い、図2中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図3中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左側」と言う。
図1に示すように、波長可変フィルタ1は、例えば、光を受け、干渉作用により、その光の波長のうち特定の波長に対応する光(干渉光)だけを出射させる装置であって、光を干渉させるためのギャップを区画形成する第1の基板2および第2の基板3が互いに接合されている。
第1の基板2は、光透過性および導電性を有し、例えばシリコンで構成されている。そして、第1の基板2は、第1の基板2と第2の基板3との間のギャップを可変とするための可動部21と、支持部22と、可動部21を支持部22に対し上下方向に変位可能とするようにこれらを連結する連結部23とを有している。これらは、第1の基板2に異形状の開口部24が形成されることにより、一体的に形成されている。
可動部21は、平面視にて、第1の基板2のほぼ中央部に位置し、円形状をなしている。なお、可動部21の形状、大きさ、配置は、図示の形状に特に限定されないのは言うまでもない。
可動部21の厚さ(平均)は、構成材料、用途等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、1〜500μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。
また、可動部21には、第2の基板3と対向する側の面(すなわち、可動部21の下面)に、光を比較的高い反射率で反射させる第1の反射膜(HRコート)25が形成され、第2の基板3と対向する側とは反対側の面(すなわち、可動部21の上面)に、光の反射を抑制する第1の反射防止膜(ARコート)26が形成されている。
第1の反射膜25は、図3に示すように波長可変フィルタ1の下方から後述の第2のギャップG2に入射した光を、後述する第2の反射膜35との間で複数回にわたって反射させるためのものである。第1の反射防止膜26は、図3に示すように波長可変フィルタ1の下方から第2のギャップG2に入射した光が第1の基板2の上面と外気との界面で図中下方に反射されるのを防止するためのものである。本実施形態では、前述した第1の基板2と第1の反射膜25と第1の反射防止膜26とが本発明の光学素子を構成する。なお、本発明の光学素子の構成については、後に詳述する。
このような可動部21を囲むように支持部22が形成され、可動部21は、連結部23を介して支持部22に支持されている。
連結部23は、前述した可動部21の周囲に周方向に等間隔で複数(本実施形態では4つ)設けられている。この連結部23は、弾性(可撓性)を有しており、これにより、可動部21は、支持部22に対し上下に変位可能となっている。なお、連結部23の数、位置、形状は、可動部21を支持部22に対し変位可能とするものであれば、前述したものに限定されない。
また、第1の基板2には、後述する引出し電極38に外部からアクセスするための開口部27が設けられている。この開口部27は、波長可変フィルタの製造工程において、第1の基板と第2の基板との間の空間に外部との圧力差が生じるのを防止する圧力開放用開口部としても機能する。
このような第1の基板2に対し、支持部22の下面で、第2の基板3が接合されている。
第2の基板3は、光透過性を有しており、第2の基板3には、その一方の面側に、第1の基板2と第2の基板3との間に第1のギャップG1を形成するための第1の凹部31と、第1の凹部31内側で第1の基板2と第2の基板3との間に第2のギャップG2を形成するための第2の凹部32とが形成されている。
このような第2の基板3の構成材料としては、用いる光の波長に関し光透過性を有していれば、特に限定されないが、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスや、シリコン等が挙げられる。
これらの中でも、第2の基板3の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)のようなアルカリ金属(可動イオン)を含有したガラスが好ましい。これにより、第1の基板2を例えばシリコンで構成した場合に、第1の基板2と第2の基板3とを陽極接合により、簡単かつ強固に接合することができる。
特に、陽極接合により第1の基板2と第2の基板3とを接合する場合には、第1の基板2の熱膨張係数と第2の基板3の熱膨張係数との差は、できるだけ小さいほうが好ましく、具体的には、50×10−7−1以下であるのが好ましい。
これにより、陽極接合時に第1の基板2および第2の基板3が高温下にさらされても、第1の基板2と第2の基板3との間に生じる応力を低減して、第1の基板2または第2の基板3の損傷を防止することができる。
したがって、第2の基板3の構成材料としては、ソーダガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス等を用いるのが好ましく、例えば、コーニング社製のパイレックスガラス(登録商標)等が好適に用いられる。
また、第2の基板3の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、10〜2000μm程度であるのが好ましく、100〜1000μm程度であるのがより好ましい。
第1の凹部31は、その外形が円形をなしており、前述した可動部21と連結部23と開口部24とに対応する位置に配置されている。また、第1の凹部31の底面には、可動部21の外周部に対応する位置で、円環状の駆動電極33、絶縁膜34がこの順で積層されている。
駆動電極33は、図示しない電源に接続されており、駆動電極33と可動部21との間に電位差を生じさせることが可能となっている。
駆動電極33の構成材料としては、導電性を有しているものであれば、特に限定されず、例えば、Cr、Al、Al合金、Ni、Zn、Tiなどの金属、カーボンやチタンなどを分散した樹脂、多結晶シリコン(ポリシリコン)、アモルファスシリコン等のシリコン、窒化シリコン、ITOのような透明導電材料、Au等が挙げられる。
このような駆動電極33の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましい。
絶縁膜34は、可動部21と駆動電極33との接触による短絡を防止する機能を有するものである。
このような第1の凹部31内の空間内に、可動部21の駆動のための静電ギャップとして、第1のギャップG1が形成される。すなわち、可動部21と駆動電極33との間に、第1のギャップG1が形成される。
第1のギャップG1の大きさ(すなわち、可動部21と駆動電極33との間の距離)は、用途などに応じて適宜選択され、特に限定されないが、0.5〜20μm程度であるのが好ましい。
第2の凹部32は、その外形が円形をなし、前述した第1の凹部31とほぼ同心でかつ第1の凹部31および可動部21の外径よりも小さい外径を有している。また、第2の凹部32の底面には、そのほぼ全域に、第2の反射膜35が形成されている。
第2の反射膜35は、前述したように、図3に示すように波長可変フィルタ1の下方から第2のギャップG2に入射した光を、第1の反射膜25との間で複数回にわたって反射させるためのものである。すなわち、この第2の反射膜35は、前述した第1の反射膜25と協働して、第2のギャップG2の大きさ(すなわち、第2の反射膜35と第1の反射膜25との間の距離)に対応する波長の光を干渉させることができる。この第2のギャップG2の大きさは、前述した第1のギャップG1の大きさよりも大きい。
第2のギャップG2の大きさは、用途などに応じて適宜選択され、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましい。
また、第2の基板3には、前述した駆動電極33を外部に引き出すために、第3の凹部37と、第3の凹部37と第1の凹部31とを連通させる溝部36とが形成されている。 溝部36および第3の凹部37は、その深さが第1の凹部31の深さとほぼ同等となっており、これらの底面には、駆動電極33に接続される引出し電極38が設けられている。
引出し電極38の構成材料としては、前述した駆動電極33の構成材料と同様のものを用いることができ、導電性を有しているものであれば、特に限定されず、例えば、Cr、Al、Al合金、Ni、Zn、Tiなどの金属、カーボンやチタンなどを分散した樹脂、多結晶シリコン(ポリシリコン)、アモルファスシリコン等のシリコン、窒化シリコン、ITOのような透明導電材料、Au等が挙げられる。
また、引出し電極38の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましい。そして、引出し電極38は、前述した駆動電極33と一体的に形成されているのが好ましい。
また、第2の基板3の他方の面(すなわち、前述した第1の凹部31等が形成されている面とは反対側の面)には、第2の反射防止膜39が形成されている。
第2の反射防止膜39は、図3に示すように波長可変フィルタ1の下方から第2のギャップG2に向け照射された光が第2の基板2の下面と外気との界面で図中下方に反射されるのを防止するためのものである。本実施形態では、前述した第1の基板2と第1の反射膜25と第1の反射防止膜26と同様に、第2の基板3と第2の反射膜35と第2の反射防止膜39とが本発明の光学素子を構成する。
このような構成を有する波長可変フィルタ1の動作(作用)を説明する。
可動部21と駆動電極33との間に電圧が印加されると、可動部21と駆動電極33とが互いに逆極性に帯電して、両者の間にクーロン力(静電引力)が発生する。
このクーロン力によって、可動部21は、駆動電極33に向け下方向に移動(変位)し、連結部23の弾性力とクーロン力が釣り合う位置で静止する。これにより、第1のギャップG1および第2のギャップG2の大きさが変化する。
一方、図3に示すように、波長可変フィルタ1の下方から第2のギャップG2に向け光Lが照射されると、光Lは、第2の反射防止膜39、第2の基板3、第2の反射膜35を透過して、第2のギャップG2に入射する。このとき、この光Lは、第2の反射防止膜39により、ほとんど損失せずに第2のギャップG2に入射する。
入射した光は、第1の反射膜25と第2の反射膜35との間において、反射を繰り返す(干渉する)。この際、第1の反射膜25および第2の反射膜35により、光Lの損失を抑えることができる。
前述したように第1の反射膜25と第2の反射膜35との間で光が反射を繰り返す過程において、第1の反射膜25と第2の反射膜35との間の第2のギャップG2の大きさに対応する干渉条件を満たさない波長の光は急激に減衰し、この干渉条件を満たした波長の光だけが残って最終的に波長可変フィルタ1から出射する。したがって、可動部21と駆動電極33との間に印加される電圧を変更することにより、第2のギャップG2を変更(すなわち干渉条件を変更)すれば、可変波長フィルタ1を透過する光の波長を変更することができる。
前記光Lの干渉の結果、第2のギャップG2の大きさに対応した波長の光(干渉光)は、第1の反射膜25、可動部21、反射防止膜26を透過し、波長可変フィルタ1の上方へ出射する。このとき、可動部21の上面に反射防止膜26が形成されているため、ほとんど損失せずに波長可変フィルタ1の外部へ出射する。
なお、本実施形態では、第2のギャップG2に入射した光を波長可変フィルタ1の上方へ出射したが、第2のギャップG2に入射した光を波長可変フィルタ1の下方へ出射してもよい。
また、本実施形態では、波長可変フィルタ1に対し、その下方から光を入射したが、上方から光を入射してもよい。
<光学素子>
ここで、本発明の光学素子として、前述した第1の基板2と第1の反射膜25と第1の反射防止膜26とで構成された光学素子を一例に図4に基づいて詳細に説明する。なお、第2の基板3と第2の反射膜35と第2の反射防止膜39とで構成された光学素子については、第1の基板2と第1の反射膜25と第1の反射防止膜26とで構成された光学素子と同様の構成であるため、その説明を省略する。
本実施形態では、光透過性を有する第1の基板2の一方の面に第1の多層膜として形成された第1の反射膜(誘電体多層膜)25は、高屈折率層25a1〜25a7と低屈折率層25b1〜25b7とが交互に複数積層されてなる。
一方、第1の基板2の他方の面に形成された第2の多層膜である第1の反射防止膜(誘電体多層膜)26は、第1の反射膜25よりも層数の少ない層数で、高屈折率層26a1、26a2と低屈折率層26b1、26b2とが交互に複数積層されてなる。そして、第1の反射防止膜26は、その必要な光学特性を損なわない範囲で、第1の反射膜25全体に生じる応力を緩和するように、第1の反射防止膜26中の高屈折率層26a1、26a2および低屈折率層26b1、26b2の厚さが調整されている。
より具体的に説明すると、第1の反射膜25は、図4に示すように、第1の基板2の一方の面に対し、低屈折率層25b1、高屈折率層25a1、低屈折率層25b2、高屈折率層25a2、低屈折率層25b3、高屈折率層25a3、低屈折率層25b4、高屈折率層25a4、低屈折率層25b5、高屈折率層25a5、低屈折率層25b6、高屈折率層25a6、低屈折率層25b7、高屈折率層25a7の順にこれらが積層されている。このような第1の反射膜25にあっては、特定の波長の光のみを高効率で反射するように、その波長に応じて、高屈折率層25a1〜25a7および低屈折率層25b1〜25b7の厚さが設定されている。そして、高屈折率層25a1〜25a7が互いにほぼ同じ厚さとなっており、また、低屈折率層25b1〜25b7が互いにほぼ同じ厚さとなっている。すなわち、第1の反射膜25の高屈折率層同士または低屈折率層同士の厚さが互いに等しくなっている。これにより、第1の反射膜25は、その反射機能を好適に発揮することができる。
一方、第1の反射防止膜26は、第1の基板2の他方の面に対し、高屈折率層26a1、低屈折率層26b1、高屈折率層26a2、低屈折率層26b2の順にこれらが積層されている。このような第1の反射防止膜26にあっては、光の反射を防止しつつ特定の波長の光を高効率で透過するように、その波長に応じて、高屈折率層26a1、26a2、低屈折率層26b1、26b2の厚さが設定されている。
本実施形態では、第1の反射膜25中の高屈折率層の構成材料と、第1の反射防止膜26中の高屈折率層の構成材料が同じであり、また、第1の反射膜25中の低屈折率層の構成材料と、第1の反射防止膜26中の低屈折率層の構成材料が同じである。なお、第1の反射膜25中の高屈折率層の構成材料と、第1の反射防止膜26中の高屈折率層の構成材料が異なっていてもよく、また、第1の反射膜25中の低屈折率層の構成材料と、第1の反射防止膜26中の低屈折率層の構成材料が異なっていてもよい。また、第1の反射膜25中の高屈折率層同士、低屈折率層同士の構成材料は、同じであっても、異なっていてもよい。また、第1の反射防止膜26中の高屈折率層同士、低屈折率層同士の構成材料は、同じであっても、異なっていてもよい。
また、低屈折率層25b1〜25b7、26b1、26b2を構成する材料は、高屈折率層25a1〜25a7、26a1、26a2を構成する材料よりも応力の生じやすいものである。なお、高屈折率層25a1〜25a7、26a1、26a2を構成する材料が、低屈折率層25b1〜25b7、26b1、26b2を構成する材料よりも応力の生じやすいものであってもよい。
したがって、第1の反射防止膜26にあっては、第1の反射防止膜26に必要な光学特性を損なわない範囲で、主に低屈折率層26b1の厚さを他の層の厚さよりも大きくすることにより、第1の反射防止膜26を構成する層の層数を抑えつつ、第1の反射防止膜26全体の内部応力を増大させている。その結果、第1の反射防止膜26全体の内部応力により、第1の反射膜25全体の内部応力を緩和または相殺している。すなわち、第1の反射防止膜26全体の内部応力と第1の反射膜25全体の内部応力とを釣り合わせるように、第1の反射防止膜26が構成されている。
このようにして、第1の反射防止膜26は、その必要な光学特性を損なわない範囲で、第1の反射膜25全体に生じる応力を緩和するように、第1の反射防止膜26中の高屈折率層26a1、26a2および低屈折率層26b1、26b2の厚さが調整されている。
そのため、第1の反射防止膜26を構成する層の層数を抑えても、第1の基板2に反りが生じるのを防止することができる。また、前記内部応力の緩和または相殺を、第1の反射膜26に必要な光学特性を損なわない範囲で行うので、所望の光学特性を得ることができる。特に、第1の反射防止膜26の低屈折率層を厚くしているので、より確実に、必要な光学特性を損なうことなく、第1の基板2に反りが生じるのを防止することができる。
また、第1の反射防止膜26を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数を比較的少なくすることができるので、製造工程の簡略化・短時間化を図り、ひいては、低コスト化を図ることができる。
また、第1の反射防止膜26を構成する高屈折率層および低屈折率層の一部を厚くせずに、第1の反射膜25全体の内部応力を緩和するような層を別途設けることにより、第1の基板2の反りを防止することが可能であるが、その場合に比べても、第1の反射防止膜26を構成する層の層数を少なくでき、製造工程の簡略化・短時間化を図り、ひいては、低コスト化を図ることができる。
第1の反射膜25全体に生じる内部応力が引張応力である場合、前記調整は、第1の反射防止膜26を構成する高屈折率層26a1、26a2および低屈折率層26b1、26b2のうち、主として、第1の反射防止膜26全体に対しより大きな引張応力を生じさせる方の層(本実施形態では低屈折率層26b1)を他の層よりも厚くすることにより行われたものである。これにより、第1の反射防止膜26の厚さをより確実に抑えることができる。
一方、第1の反射膜25全体に生じる内部応力は圧縮応力である場合、前記調整は、第1の反射防止膜26を構成する高屈折率層26a1、26a2および低屈折率層26b1、26b2のうち、主として、第1の反射防止膜26全体に対しより大きな圧縮応力を生じさせる方の層(本実施形態では低屈折率層26b1)を他の層よりも厚くすることにより行われたものである。これにより、第1の反射防止膜26の厚さをより確実に抑えることができる。
また、第1の反射膜25を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数と、第1の反射防止膜26を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数との差は、10層である。これにより、第1の基板2に反りが生じるのをより確実に防止するとともに、第1の反射膜25全体の厚さを抑えることができる。
なお、第1の反射膜25を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数と、第1の反射防止膜26を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数との差は、前述したものに限定されない。ただし、第1の基板2に反りが生じるのをより確実に防止するとともに、第1の反射膜25全体の厚さを抑えるには、当該差は、4〜30層であるのが好ましく、4〜20層であるのがより好ましく、4〜10層であるのがさらに好ましい。
また、第1の反射防止膜26の複数の低屈折率層のうち、最も第1の基板2側の層の厚さが第1の基板2と反対側の層の厚さよりも大きくなっている。これにより、第1の反射防止膜26全体の厚さを抑えつつ、第1の基板2に反りが生じるのをより確実に防止することができる。
また、第1の反射防止膜26の複数の高屈折率層のうち、第1の基板2側の層の厚さが第1の基板2と反対側の層の厚さよりも大きくなっている。この点でも、第1の反射防止膜26全体の厚さを抑えつつ、第1の基板2に反りが生じるのをより確実に防止することができる。
また、第1の反射膜25の低屈折率層の総層厚と第1の反射防止膜26の低屈折率層の総層厚がほぼ等しくなっている。これにより、第1の反射防止膜26全体の厚さを抑えつつ、より確実に、第1の基板2に反りが生じるのを防止することができる。なお、第1の反射膜25全体の内部応力を緩和または相殺するとともに、所望の光学特性を得ることができれば、第1の反射膜25の低屈折率層の総層厚と第1の反射防止膜26の低屈折率層の総層厚が異なっていてもよい。
また、第1の反射膜25の高屈折率層の総層厚と第1の反射防止膜26の高屈折率層の総層厚がほぼ等しくなっている。これにより、第1の反射防止膜26全体の厚さを抑えつつ、より確実に、第1の基板2に反りが生じるのを防止することができる。なお、第1の反射膜25全体の内部応力を緩和または相殺するとともに、所望の光学特性を得ることができれば、第1の反射膜25の高屈折率層の総層厚と第1の反射防止膜26の高屈折率層の総層厚が異なっていてもよい。
前述したような高屈折率層25a1〜25a7、26a1、26a2を構成する材料としては、第1の反射膜25や第1の反射防止膜26に必要な光学特性を得ることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、可視光から赤外領域で用いる場合には、TiO、Ta、酸化ニオブなどが挙げられ、また、紫外光領域で用いる場合には、Al、HfO、ZrO、ThOなどが挙げられる。本実施形態では、第1の基板2がシリコンで構成されているため、波長可変フィルタ1には赤外光が用いられる。そのため、高屈折率層25a1〜25a7、26a1、26a2を構成する材料として、TiO、Ta、酸化ニオブなどが好適に用いられる。
また、第1の反射防止膜26は、その必要な光学特性として、40nm以上の幅の波長域の光の反射を防止する機能(反射防止帯域の幅)を有するのが好ましく、40〜150nm以上の幅の波長域の光の反射を防止する機能を有するのがより好ましい。これにより、第1の基板2の反りをより確実に防止するとともに、所望の反射防止機能を有する第1の反射防止膜26を得ることができる。
低屈折率層25b1〜25b7、26b1、26b2を構成する材料は、第1の反射膜25や第1の反射防止膜26に必要な光学特性を得ることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、可視光領域や紫外光領域で用いる場合には、MgF、SiOなどが挙げられる。
特に、第1の反射防止膜26の低屈折率層は、SiOを主材料として構成されているのが好ましい。SiOで成膜を行うと、第1の反射防止膜26の低屈折率層の層厚を大きくしても、安定した光学特性を得ることができる。
第1の反射膜25中の高屈折率層および低屈折率層の総層数は、第1の反射膜25に必要な光学特性を得ることができるものであれば、特に限定されないが、10層以上であるのが好ましく、10〜40層であるのがより好ましい。
第1の反射防止膜26中の高屈折率層および低屈折率層の総層数は、第1の反射防止膜26に必要な光学特性を得ることができるものであれば、特に限定されないが、2〜9層であるのが好ましく、4〜6層であるのがより好ましい。
なお、第1の反射膜25および第1の反射防止膜26を構成する高屈折率層および低屈折率層の層数、厚さは、その光学特性を損なわない範囲で、第1の反射膜25全体に生じる応力を緩和することができるものであれば、前述したものに限定されず、任意である。このように多層膜で構成された第1の反射膜25および第1の反射防止膜26は、構成する高屈折率層および低屈折率層の厚さ、層数、材質を設定(調整)することによって、所望の特性を得ることができる。また、一般に、多層膜により反射膜を構成する場合、その光学特性を得るために必要な層数は12層以上であり、多層膜により反射防止膜を構成する場合、その光学特性に必要な層数は4層程度である。
<波長可変フィルタの製造方法>
次に、波長可変フィルタ1の製造方法の一例を図5ないし図8に基づいて説明する。
図5〜図8は、波長可変フィルタ1の製造工程を説明するための図である。なお、図5〜図8は、図2のA−A線断面に対応する断面を示している。
本実施形態の波長可変フィルタ1の製造方法は、[A]第2の基板3を製造する工程と、[B]SOI基板を第2の基板3に接合する工程と、[C]SOI基板を加工して第1の基板2を製造する工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
[A] 第2の基板3の製造
−A1−
まず、第2の基板3を形成するための基板として、図5(a)に示すように、光透過性を有する基板4を用意する。
基板4としては、厚さが均一で、たわみや傷のないものが好適に用いられる。基板4の構成材料としては、第2の基板3の説明で述べたものを用いることができる。前述したように、基板4の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)のようなアルカリ金属(可動イオン)を含有したガラスを用いるのが好ましい。したがって、以下の説明では、基板4の構成材料として、アルカリ金属を含有したガラスを用いた場合について説明する。
−A2−
次に、図5(b)に示すように、基板4の一方の面にマスク層5を形成(マスキング)する。
マスク層5を構成する材料としては、例えば、Au/Cr、Au/Ti、Pt/Cr、Pt/Tiなどの金属、多結晶シリコン(ポリシリコン)、アモルファスシリコン等のシリコン、窒化シリコン等が挙げられる。マスク層5の構成材料にシリコンを用いると、マスク層5と基板4との密着性が向上する。マスク層5の構成材料に金属を用いると、形成されるマスク層5の視認性が向上する。
マスク層5の厚さは、特に限定されないが、0.01〜1μm程度とすることが好ましく、0.09〜0.11μm程度とすることがより好ましい。マスク層5が薄すぎると、基板4を十分に保護できない場合があり、マスク層5が厚すぎると、マスク層5の内部応力によりマスク層5が剥がれ易くなる場合がある。
マスク層5は、例えば、化学気相成膜法(CVD法)、スパッタリング法、蒸着法等の気相成膜法、メッキ法等により形成することができる。
−A3−
次に、図5(c)に示すように、マスク層5に、第1の凹部31と溝部36と第3の凹部37との平面視形状に対応した平面視形状をなす開口51を形成する。
より具体的には、まず、例えばフォトリソグラフィ法を用い、マスク層5上に、フォトレジストを塗布し、露光、現像を行って、開口51に対応する開口を有するレジストマスクを形成する。次に、このレジストマスク介してマスク層5をエッチングして、マスク層5の一部を除去した後、レジストマスクを除去する。このようにして、マスク層5に開口51が形成される。このエッチングとしては、例えば、CFガス、塩素系ガス等によるドライエッチング、フッ酸+硝酸水溶液、アルカリ水溶液等によるウェットエッチングを用いることができる。
−A4−
次に、マスク層5を介して基板4の一方の面をエッチングして、図5(d)に示すように、第1の凹部31と溝部36と第3の凹部37とを形成する。
このエッチングとしては、ドライエッチング法、ウェットエッチング法を用いることができるが、ウェットエッチング法を用いるのが好ましい。これにより、形成される第1の凹部31をより理想的な円柱状とすることができる。この場合、ウェットエッチングのエッチング液としては、例えばフッ酸系エッチング液などが好適に用いられる。また、エッチング液にグリセリン等のアルコール(特に多価アルコール)を添加すると、形成される第1の凹部31の底面を極めて滑らかなものとすることができる。
−A5−
次に、マスク層5を除去した後に、前述した工程A2およびA3と同様の方法を用いて、図5(e)に示すように、第2の凹部32の平面視形状に対応した平面視形状の開口を有するマスク層6を形成する。
マスク層5の除去方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ水溶液(例えばテトラメチル水酸化アンモニウム水溶液等)、塩酸+硝酸水溶液、フッ酸+硝酸水溶液等によるウェットエッチング、CFガス、塩素系ガス等によるドライエッチングなどを用いることができる。
特に、マスク層5の除去方法としてウエットエッチングを用いると、簡易な操作で、効率よく、マスク層5を除去することができる。
−A6−
次に、前述した工程A4と同様の方法を用いて、マスク層6を介して基板4をエッチングして、図5(f)に示すように、第2の凹部32を形成する。
−A7−
次に、図6(a)に示すように、第2の凹部32の底面に、第2の反射膜35を形成する。
より具体的には、第2の凹部32の底面に、前述したような高屈折率層と低屈折層とを交互に積層することにより、第2の反射膜35を形成する。
高屈折率層および低屈折率層の形成方法としては、例えば、化学的気相成長法(CVD)、物理的化学気相成長法(PVD)が好適に用いられる。
−A8−
次に、前述した工程−A5−と同様の方法を用いて、図6(b)に示すように、マスク層6を除去する。
−A9−
次に、図6(c)に示すように、基板4の第1の凹部31等が形成された側の面に一様に、駆動電極33および引出し電極38を形成するための導電層7を形成する。
導電層7の形成方法としては、例えば、化学的気相成長法(CVD)、物理的化学気相成長法(PVD)が好適に用いられる。
また、導電層7の構成材料は、前述した駆動電極33の構成材料を用いることができる。
−A10−
次に、図6(d)に示すように、導電層7の不要部分を除去して、駆動電極33を形成するとともに、駆動電極33上に絶縁膜34を形成する。さらに、基板4の第1の凹部31等が形成された側と反対側の面に、第2の反射防止膜39を形成する。
導電層7の不要部分を除去する方法としては、前述した工程A3と同様の方法を用いることができる。
また、駆動電極33の形成方法としては、前述したマスク層5の形成方法と同様のものを用いることができる。
第2の反射防止膜39の形成方法としては、前述した第2の反射膜35の形成方法と同様のものを用いることができる。
以上のようにして、第2の基板3を製造することができる。
[B]SOI基板と第2の基板3との接合
−B1−
まず、図7(a)に示すように、SOI(Silicon on Insulator)基板8を用意する。
このSOI基板8は、Siで構成されたベース層81、SiOで構成された絶縁層82、Siで構成された活性層83の順でこれら3層が積層されてなるものである。なお、SOI基板8に代えて、SOS(Silicon on Sapphire)基板、シリコン基板等を用いることもできる。
SOI基板8の厚さは、特に限定されないが、特に活性層83の厚さが10〜100μm程度であるのが好ましい。
−B2−
次に、SOI基板8と第2の基板3との接合に先立ち、図7(b)に示すように、SOI基板8の活性層83側の面に、第1の反射膜25を形成する。
第1の反射膜25の形成方法としては、前述した第2の反射膜35の形成方法と同様のものを用いることができる。
−B3−
次に、図7(c)に示すように、SOI基板8と第2の基板3とを接合する。
SOI基板8と第2の基板3との接合方法としては、例えば、陽極接合、接着剤による接合、表面活性化接合、低融点ガラスを用いた接合等を用いることができるが、陽極接合を用いるのが好ましい。
SOI基板8と第2の基板3との接合方法として陽極接合を用いる場合には、例えば、まず、図示しない直流電源のマイナス端子を第2の基板3に、プラス端子をSOI基板8の活性層83に接続する。そして、第2の基板3を加熱しながら、第2の基板3とSOI基板8の活性層83との間に電圧を印加する。この加熱により、第2の基板3のアルカリ金属のプラスイオン、例えば、ナトリウムイオン(Na+)が移動しやすくなる。これにより、第2の基板3と活性層83との接合面のうち、第2の基板3側の接合面がマイナス、活性層83側の接合面がプラスに相対的に帯電する。その結果、シリコン(Si)と酸素(O)とが電子対を共有する共有結合により、第2の基板3と活性層83とは強固に接合される。
[C]第1の基板2の製造
−C1−
次に、図8(a)に示すように、エッチングや研磨を行ってSiベース層81を除去する。
このエッチング方法としては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチングを用いることができるが、ドライエッチングを用いるのが好ましい。いずれの場合も、ベース層81の除去のとき、絶縁層82がストッパーとなるが、ドライエッチングは、エッチング液を用いないので、駆動電極33に対向している活性層83の損傷を好適に防ぐことができる。これにより、波長可変フィルタ1の製造時における歩留まりの向上を図ることができる。
−C2−
次に、図8(b)に示すように、エッチングを行って絶縁層82を除去する。
このエッチング方法としては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチングを用いることができるが、フッ酸を含むエッチング液によるウェットエッチングを用いるのが好ましい。これにより、絶縁層82を簡単に除去することができるとともに、絶縁層82の除去により露出する活性層83の面を極めて平滑にすることができる。
なお、前述した工程B1にて、SOI基板8に代えて、以降の工程を行うのに最適な厚さをすでに有しているシリコン基板を用いた場合には、工程C1、C1は行わなくてもよい。これにより、波長可変フィルタ1の製造工程を簡略化することができる。
−C3−
次に、図8(c)に示すように、活性層83の上面に、第1の反射防止膜26を形成する。
第1の反射防止膜26の形成方法としては、前述した第2の反射膜35の形成方法と同様のものを用いることができる。
−C4−
次に、図8(d)に示すように、開口部24および開口部27に対応する開口を有するレジスト層9を形成する。
レジスト層9の形成方法としては、前述した工程A2、A3と同様の方法を用いることができる。
−C5−
次に、レジスト層9を介して、ドライエッチング法、特にICPエッチングにより、活性層83をエッチングして、図8(e)に示すように、開口部27を形成した後に、図8(f)に示すように、開口部24を形成する。これにより、可動部21と支持部22と連結部23とが形成される。
より具体的には、レジスト層9を介して活性層83をドライエッチングすると、マイクロローディング効果によって開口部27でのエッチング速度に比べて開口部24の各開口領域でのエッチング速度が遅くなるので、図8(e)に示すように、開口部24の形成よりも先に開口部27の形成が完了する。このとき、溝部36を介して第1の凹部31に連通する第3の凹部37の上方に開口部27が形成されるので、活性層83と第2の基板3との間の空間が外部に開放され、当該空間と外部との圧力差が解消される。
ここで、マイクロローディング効果とは、開口寸法が小さくなるに従ってエッチング速度が低下する現象である。したがって、開口部27として、開口部24の各開口領域でのエッチング速度よりもエッチング速度が速くなるような寸法のものを採用する。本実施形態では、開口部27の形状を、図1に示すように、開口部24の各開口領域の短手方向の開口幅よりも幅広な寸法を一辺の長さとした正方形状としている。なお、開口部27の寸法および形状としては、開口部27でのエッチング速度が開口部24の各開口領域でのエッチング速度よりも速くなるものであれば、前述したものに限定されず、任意の構成を採用することができる。
このようにマイクロローディング効果を利用すると、開口部27を形成するためのエッチング工程を別途設けなくても、開口部24および開口部27を同一のエッチング工程により形成しつつ、開口部27、開口部24の順にこれらを形成することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
開口部27が形成された後、更にドライエッチングを継続すると、図8(f)に示すように開口部24が貫通形成されて、可動部21と支持部22と連結部23との形成が完成する。
このとき、前述したように、活性層83に可動部21を形成する前(すなわち、開口部24を形成する前)にあらかじめ、活性層83と第2の基板3との間の空間と、外部との圧力差が解消されているので、開口部24の形成に伴って連結部23が破損するのを防止することができる。
特に、本工程では、ICPエッチングを行う。すなわち、エッチング用ガスによるエッチングと、デポジッション用ガスによる保護膜の形成とを、交互に繰り返し行って、可動部21を形成する。
前記エッチング用ガスとしては、例えば、SF等が挙げられ、また、前記デポジッション用ガスとしては、例えば、C等が挙げられる。
本工程において、ドライエッチング技術を使用して異方性エッチングを行うのは、以下に示す理由による。
ウェットエッチング技術を使用した場合、エッチングが進むに従ってエッチング液が活性層83に形成された孔から、活性層83と第2の基板3との間に侵入し、駆動電極33や絶縁膜34を除去してしまうおそれがある。これに対し、ドライエッチング技術を使用した場合はそのような危険性がない。
また、等方性エッチングを使用した場合には、活性層83が等方的にエッチングされ、サイドエッチングが生じる。特に、連結部23に対しサイドエッチングが生じると、連結部23の強度が弱くなり、耐久性が劣化してしまう。これに対し、異方性エッチングを使用した場合には、サイドエッチングが生じないので、エッチング寸法の制御に優れており、連結部23の側面も活性層83の板面に対し垂直に形成され、連結部23の強度の向上を図ることができる。
なお、本発明では、本工程において、前記と異なるドライエッチング法を用いて可動部21と支持部22と連結部23とを形成してもよく、また、ドライエッチング法以外の方法を用いて可動部21と支持部22と連結部23とを形成してもよい。
−C6−
その後、レジスト層9を除去して、図1に示すような波長可変フィルタ1が得られる。
以上、本発明の光学素子および光学装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例)
1.光学素子の作製
まず、基板として、シリコン基板を用意した。この基板の厚さは、0.18mmであった。
次に、この基板の一方の面に、第1の多層膜として、16層からなる反射膜を形成し、基板の他方の面に、第2の多層膜として、4層からなる反射防止膜を形成して、光学素子を得た。
なお、反射膜および反射防止膜の形成は、ともに基板温度300℃で真空蒸着法により行った。
反射膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の層厚および材料等を表1に示し、反射防止膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の層厚および材料等を表2に示す。なお、表1および表2において、層No.は基板に近いほうから遠いほうへ、1、2、3・・・となっている。
Figure 0005017803
Figure 0005017803
(参考例)
反射防止膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の層厚を表3に示すようにした以外は、前述した実施例と同様にして光学素子を作製した。なお、表3において、層No.は基板に近いほうから遠いほうへ、1、2、3・・・となっている。
Figure 0005017803
2.光学素子の評価
本発明にかかる実施例の光学素子は、基板の反りが生じなかった。これに対し、参考例の光学素子は、基板の反りが生じていた。
実施例の光学素子は、図9に示すように、参考例の光学素子と同様に、1550nm帯域付近で、優れた反射防止機能を有していた。
このように、本発明にかかる実施例の光学素子は、基板の反りを防止しつつ、優れた光学特性を有していた。
本発明の構造体の実施形態である波長可変フィルタを示す分解斜視図である。 図1に示す波長可変フィルタを示す平面図である。 図2中のA−A線断面図である。 図1に示す波長可変フィルタに備えられた光学素子を説明するための部分拡大断面図である。 図1に示す波長可変フィルタの製造方法を説明するための図である。 図1に示す波長可変フィルタの製造方法を説明するための図である。 図1に示す波長可変フィルタの製造方法を説明するための図である。 図1に示す波長可変フィルタの製造方法を説明するための図である。 本発明にかかる実施例における第2の多層膜(反射防止膜)の光学特性を示すグラフである。
符号の説明
1……波長可変フィルタ 2……第1の基板 21……可動部 22……支持部 23……連結部 24……開口部 25……第1の反射膜 25a1〜25a7……高屈折率層 25b1〜25b7……低屈折率層 26……第1の反射防止膜 26a1、26a2……高屈折率層 26b1、26b2……低屈折率層 27……開口部 3……第2の基板 31……第1の凹部 32……第2の凹部 33……駆動電極 34……絶縁膜 35……第2の反射膜 36……溝部 37……第3の凹部 38……引出し電極 39……第2の反射防止膜 4……基板(第2の基板) 5、6……マスク層 51……開口 7……導電層 8……SOI基板 81……ベース層 82……絶縁層 83……活性層(第1の基板) 9……レジスト層 G1……第1のギャップ G2……第2のギャップ L……光

Claims (11)

  1. 光透過性を有する基板と、
    前記基板の一方の面に、高屈折率層と低屈折率層とが交互に複数積層されてなる第1の多層膜と、
    前記基板の他方の面に、前記第1の多層膜を構成する層の層数よりも少ない層数で、高屈折率層と低屈折率層とが交互に複数積層されてなる第2の多層膜とを有し、
    前記第2の多層膜は、前記第2の多層膜に必要な光学特性を損なわない範囲で、前記第2の多層膜を構成する複数の層のうちの少なくとも1層の低屈折率層の厚さを大きくして、前記第1の多層膜全体に生じる内部応力と前記第2の多層膜全体に生じる内部応力とをほぼ釣り合わせており、
    前記第2の多層膜の複数の低屈折率層のうち、前記基板側の層の厚さが前記基板と反対側の層の厚さよりも大きく、
    前記第2の多層膜の複数の高屈折率層のうち、前記基板側の層の厚さが前記基板と反対側の層の厚さよりも大きいことを特徴とする光学素子。
  2. 前記第2の多層膜を構成する複数の層のうちの前記少なくとも1層は、前記基板に最も近い低屈折率層である請求項に記載の光学素子。
  3. 前記第2の多層膜の低屈折率層は、SiOを主材料として構成されている請求項またはに記載の光学素子。
  4. 前記第1の多層膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数と、前記第2の多層膜を構成する高屈折率層および低屈折率層の総層数との差は、2〜34層である請求項1ないしのいずれかに記載の光学素子。
  5. 前記第1の多層膜の高屈折率層同士または低屈折率層同士の厚さが互いに等しい請求項1ないしのいずれかに記載の光学素子。
  6. 前記第1の多層膜は反射膜であり、前記第2の多層膜は反射防止膜である請求項1ないしのいずれかに記載の光学素子。
  7. 前記反射防止膜は、その必要な光学特性として、40nm以上の幅を有する波長域の光の反射を防止する機能を有する請求項に記載の光学素子。
  8. 前記第1の多層膜の低屈折率層の総層厚と前記第2の多層膜の低屈折率層の総層厚がほぼ等しい請求項1ないしのいずれかに記載の光学素子。
  9. 前記第1の多層膜の高屈折率層の総層厚と前記第2の多層膜の高屈折率層の総層厚がほぼ等しい請求項1ないしのいずれかに記載の光学素子。
  10. 請求項1ないしのいずれかに記載の光学素子を備えたことを特徴とする光学装置。
  11. 光学装置は、可変波長フィルタである請求項10に記載の光学装置。
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