JP5016780B2 - プロピレン重合体発泡シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン重合体からなる発泡シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンは、その優れた剛性、耐熱性、耐薬品性等を生かして各成形分野に広く利用されている。近年、省資源、軽量化等に対する要求から、様々な用途で発泡化が進んでいるが、ポリプロピレンは、結晶性を有するために溶融粘度の温度依存性が大きく、溶融張力が大幅に低下して、発泡倍率が二倍を越えるような高倍率の発泡成形時に気泡壁が破断し、均一かつ微細な独立気泡を有する発泡体を得ることが困難であった。
【0003】
ポリプロピレンの溶融張力を向上させるための手段として、高分子量成分を導入する方法(例えば、特許文献1参照。)や、長鎖分岐成分を導入したポリプロピレンを得る方法(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。しかし、上記に提案されている組成物では溶融張力が向上し、高倍率の発泡体を得ることは可能となったが、同時に成形時の流動性、延展性等が損なわれるため、発泡体及び該発泡体を使用した発泡容器を安定的に生産することが困難であった。又、高分子量成分や長鎖分岐成分を組成物内に均一に存在させることが困難なため、なお均一かつ微細な独立気泡を得ることが難しいという問題点も残っている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−181178号公報
【特許文献2】
特開平2−298536号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、流動性、延展性等の成形性に優れ、且つ均一かつ微細な独立気泡を有するプロピレン重合体発泡シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の性状を有するプロピレン重合体が成形性、気泡性状の優れた発泡体を与えることを見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、MFRが1〜5、結晶化ピーク温度Tcが88.6〜116.8℃、昇温溶離分別(TREF)におけるピーク溶出温度Tpが70〜110℃の範囲にあり、かつ、下記性状(1)〜(5)を有するプロピレン重合体からなることを特徴とする発泡シートが提供される。
性状(1):交点弾性率Goが30,000〜45,000Paである。
(ここで、交点弾性率とは、200℃の溶融粘弾性測定における周波数−貯蔵弾性率(G’)曲線と周波数−損失弾性率(G’’)曲線との交点の弾性率をいう。)
性状(2):結晶化ピーク温度Tc(℃)とMFR(g/10分)とが式(I)を満たす。
116.8≧Tc≧4.5×MFR+75.1 式(I)
性状(3):結晶化発熱ピークの半値幅ΔTc(℃)と結晶化ピーク温度Tc(℃)が式(II)を満たす。
−0.030×Tc+7.4≧ΔTc≧−0.030×Tc+6.5 式(II)
性状(4):昇温溶離分別(TREF)におけるピーク溶出温度Tpと、全量の80重量%が溶出する温度T80(℃)と全量の20重量%が溶出する温度T20(℃)の差ΔT(ΔT=T80−T20)とが式(III)を満たす。
−0.060×Tp+11.0≧ΔT≧−0.60×Tp+8.0 式(III)
性状(5):40℃のオルソジクロルベンゼンに可溶な成分の量が0.7重量%以下である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるプロピレン重合体は、次の性状(1)〜(5)を有している必要がある。
【0011】
性状(1):弾性率
本発明で用いるプロピレン重合体は、200℃で測定された溶融粘弾性における貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の交点の弾性率(交点弾性率)Goが30,000〜45,000Pa、好ましくは32,000〜45,000Pa、より好ましくは34,000〜45,000Paである。Goが30,000Pa未満であると、発泡シートの配向が強まり、その機械物性に異方性が生じたり、更に発泡シートを二次成形するために再加熱した際に配向の緩和が起こりシートが変形する不具合が生じる。上記不具合は、発泡に伴う急激かつ局所的な変形の緩和が不十分なためであると予想される。一方、Goが45,000Paを超えるプロピレン重合体は工業的に製造することは困難である。
【0012】
Goは、分子量分布の広さが影響する性状であり、Goが小さいほど分子量分布が広くなる傾向にある。ただし、Goは、GPC測定により求められるMw/Mnに比べて、特に分子量分布曲線のピーク付近における広がりの影響を鋭敏に反映する指標である。Goにより分子量分布の広さを表現することにより、触媒系やコモノマーを問わず、一律に好ましい範囲を定めることが可能となる。
なお、ここで示した、Goの範囲のポリプロピレン重合体を得る方法は、狭い分子量分布を与える重合触媒にメタロセン触媒を用いる方法があげられる。
ここで、Goは、以下の方法により求める値である。
市販又は自作の溶融粘弾性測定装置(例えばレオメトリックス社製RDA−II型ダイナミックアナライザー)を用い次の条件で測定する。
温度:200℃
固定治具:25mmφパラレルプレート
測定モード:周波数掃引
ギャップ(試料厚み):1.5mm
測定周波数範囲:0.01〜100rad/s
歪:10%
得られた周波数−貯蔵弾性率G’曲線及び周波数−損失弾性率G’’曲線のデータから、|G’−G’’|が最小になるときの周波数を選び出す。続いて、この周波数及び、その前後2点ずつ合計5点の周波数を選び、G’、G’’各々を最小二乗法により、周波数ωの二次関数として近似して両近似曲線からG’とG’’の交点Goの値を求める。
【0013】
性状(2):TcとMFRの関係
本発明で用いるプロピレン重合体は、Tc(℃)とMFR(g/10分)とが式(I)を満たす。好ましくは式(I’)を満たし、より好ましくは式(I’’)を満たす。
135.0≧Tc≧4.5×MFR+40.0 式(I)
135.0≧Tc≧4.5×MFR+45.0 式(I’)
135.0≧Tc≧4.5×MFR+50.0 式(I’’)
Tcが4.5×MFR+40.0未満では発泡による温度低下によって引き起こされる結晶化が完了する前にセル壁が大変形し、破泡や不均一セル形成を起こす結果、得られる発泡シートが満足な性能を示さない。一方、Tcが135℃を超えるポリプロピレン重合体は現在のところ製造困難である。
【0014】
均一微細な発泡体を得る上では樹脂の溶融粘度と結晶化温度とのバランスが極めて重要である。材料のMFRが高くなればなるほど、その溶融粘度は低下するため、発泡に伴い発生する膨張応力による変形量が大きくなる。変形量が大きくなり過ぎると、セル壁の強度限界を超えて、破泡に至る場合がある。従って、MFRの高い材料の場合には、それに見合った高いTcを持つ樹脂を使用し、変形量が大きくなり過ぎる前の樹脂温度が比較的高い段階で結晶化を起こさせる必要がある。上記の理由から、均一微細な発泡を得るために必要な材料特性の要件として、式(I)を規定した。
【0015】
ここで示した、TcとMFRの関係を満たすポリプロピレン重合体を得る方法について説明する。Tcは、ポリプロピレン重合体の結晶性の尺度であり、立体・位置選択性の異なる重合触媒を選択することで制御することが可能である。また、エチレンや1−ブテン等のコモノマーを共重合させることや重合温度、重合圧力を選択することによってもTcを調整することが可能である。MFRは、ポリプロピレン重合体の分子量の尺度であるが、これの制御は、連鎖移動剤として水素を用いることや重合温度、重合圧力を選択することによっ可能であることが広く知られている。
ここで、MFRは、JIS K6758(230℃、荷重21.18N)で測定される値である。
また、Tc及び後述するΔTcは下記の方法により求める。
セイコー社製示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS−K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に従い測定する。具体的には、サンプル8±2mgを採り、200℃で10分間保持した後、40℃まで10℃/分の冷却速度で結晶化させる。このとき得られるDSC曲線の最大発熱ピ−ク温度を結晶化ピ−ク温度Tcとし、また、このTcピークの半値幅をΔTcとする。
【0016】
性状(3):結晶化発熱ピークの半値幅ΔTcとTcの関係
本発明で用いるプロピレン重合体は、結晶化発熱ピークの半値幅ΔTcと結晶化ピーク温度Tc(℃)が式(II)を満たす。好ましくは式(II’)を満たし、より好ましくは式(II’’)を満たす。
−0.030×Tc+8.2≧ΔTc≧−0.030×Tc+6.5 式(II)
−0.030×Tc+8.0≧ΔTc≧−0.030×Tc+6.5 式(II’)
−0.030×Tc+7.8≧ΔTc≧−0.030×Tc+6.5 式(II’’)
ΔTcが−0.03×Tc+8.2を超えると、均一な気泡径を有する発泡体が得にくくなる不具合が生じる。一方、ΔTcは小さければ小さいほど好ましいが、ΔTc<−0.03×Tc+6.5を満たす材料を製造することは困難である。
【0017】
結晶化発熱ピークの半値幅であるΔTcは、結晶化の開始から終了までの時間幅の指標である。ΔTcが大きければ大きいほど結晶化の開始から終了までの時間が長くなり、発泡とともに生じるセル壁での結晶化に時間的なムラが起きるため、発泡過程でのセル壁粘度にムラが発生して均一な発泡体が得にくくなる。また、材料の結晶化ピーク温度が高くなればなるほど、ΔTcを小さくしないと発泡の均一性を保持するのが困難になる。これは、一般にピーク結晶化温度の高い材料は結晶化度が高いため、より結晶化段階でのムラを鋭敏に反映してしまうためと考えられる。
上述の理由により、均一な発泡体を得るために必要な材料特性の要件として式(II)を規定した。
【0018】
ここで示した、ΔTcの範囲のポリプロピレン重合体を得る方法については、結晶性分布が狭いポリプロピレン重合体を与えるメタロセン触媒を用いて製造する方法が挙げられる。
【0019】
性状(4):TREFにおけるTpとΔT(T80−T20)の関係
本発明で用いるプロピレン重合体は、昇温溶離分別(TREF)におけるピーク溶出温度Tpと、全量の80重量%が溶出する温度T80と全量の20重量%が溶出する温度T20の差ΔT(ΔT=T80−T20)が、好ましくは式(III)を満たし、より好ましくは式(III’)を満たす。
−0.060×Tp+11.0≧ΔT≧−0.60×Tp+8.0 式(III)
−0.060×Tp+10.5≧ΔT≧−0.60×Tp+8.0式 (III’)
均質な結晶化を達成し、均一微細な発泡セルを得るためにはΔTが上記範囲にあることが好ましく、ΔTが上記範囲より大きくなると均一な結晶化が阻害されて、セル壁の強度が均質に向上しないことがある。
【0020】
ここで示した、ΔTcの範囲のポリプロピレン重合体を得る方法については、結晶性分布が狭いポリプロピレン重合体を与えるメタロセン触媒を用いて製造する方法が挙げられる。
【0021】
性状(5):40℃のオルソジクロルベンゼンに可溶成分の量
本発明で用いるプロピレン重合体は、40℃のオルソジクロルベンゼンに可溶成分の量は1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.7重量%以下である。40℃のオルソジクロルベンゼンに可溶な成分の量が1重量%を超えるとセル壁の強度が部分的に低下して均一な発泡体が得られなくなる場合がある。ひどい場合には破泡を生じることもある。
可溶成分量の少ないポリプロピレン重合体を得る方法については、結晶性分布が狭いポリプロピレン重合体を与えるメタロセン触媒を用いて製造する方法が挙げられる。
【0022】
ここで、性状(4)に記載のTp、ΔT、及び性状(5)に記載の40℃のオルソジクロルベンゼンに可溶な成分の量は、昇温溶離分別(TREF)法により求めるものであり、具体的には以下の手順に従って求める。
試料を140℃でオルソジクロルベンゼンに溶解し、5mg/mLの溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/minの降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/minの降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるオルソジクロルベンゼンを1mL/minの流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルソジクロルベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、さらに40℃から140℃まで60分間時間に対してリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
カラムサイズ:4mmφ × 150mm
カラム充填材:ガラスビーズ
試料注入量:0.2mL
溶出に用いる溶媒:オルトジクロルベンゼン
溶媒流速:1mL/min
検出機:波長固定型赤外検出器
測定波長:3.42μm
上記条件に従って得た溶出曲線から全量の20重量%が溶出する温度T20、80重量%が溶出する温度T80及び40℃で溶出する成分の全量に対する割合(重量%)を算出する。T80−T20をもってΔTとする。また、溶出曲線のピーク位置の温度をTpとする。
【0023】
本発明で用いるプロピレン重合体は、上記の条件を満たすものであれば、何ら限定されるものではないが、さらに以下の示す性状を有していることが好ましい。
本発明で用いるプロピレン重合体は、MFRが好ましくは0.5〜10g/10分、より好ましくは1.0〜5g/10分である。MFRが0.5g/10分未満であると押出成形性が低下し、MFRが10g/10分を越えると熱成型時のドローダウン性が低下する。
本発明で用いるプロピレン重合体は、Tpが好ましくは70〜110℃、より好ましくは78〜105℃である。Tpが70℃未満であると発泡後の結晶化速度が低下して破泡を起こしやすくなることがあり、また、Tpが110℃を超えると発泡に伴う分子鎖の配向が十分に緩和される前に結晶が生成して形状の安定性が悪化する場合がある。
【0024】
本発明で用いるプロピレン重合体は、上記の条件を満たすものであれば、何ら限定されるものではなく、例えば、プロピレン単独重合体であってもプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であってもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0025】
プロピレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンとしては、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンが使用され、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を例示することができる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは、一種類でも二種類以上を用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。
【0026】
本発明で用いるプロピレン重合体を製造する方法は、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、メタロセン触媒を用いて製造される。
例えば下記に示すような成分(a)、成分(b)、および、必要に応じて使用する成分(c)からなる触媒を用いることができる。
成分(a):後述する遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):(b−1)有機アルミオキシ化合物、(b−2)ルイス酸、(b−3)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン化合物(ただしルイス酸を除く)、(b−4)イオン交換性層状珪酸塩から選ばれる1種以上の成分
成分(c):有機アルミニウム化合物
【0027】
成分(a):メタロセン遷移金属化合物
成分(a)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物を挙げることができる。
Q(C5H4−aR1 a)(C5H4−bR2 b)MeXY (1)
(式中、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、R1、R2は水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を示す。XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なってもよい。)
【0028】
一般式(1)において、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基或いはオリゴシリレン基、または炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基、等が例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
【0029】
XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基等を例示することができる。XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なってもよい。
【0030】
R1、R2は、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基等が例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基、等を典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したR1、R2は、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
【0031】
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
【0032】
上記成分(a)の中で、本発明で用いるプロピレン重合体の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基或いはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレン基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、或いはゲルミレン基で架橋された2,4位置換インデニル基、2,4位置換アズレン基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
【0033】
成分(b):(b−1)有機アルミオキシ化合物、(b−2)ルイス酸、(b−3)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン化合物(ただしルイス酸を除く)、(b−4)イオン交換性層状珪酸塩から選ばれるもののから選ばれる1種以上の成分
成分(b)のうち、(b−1)、(b−2)、(b−3)、(b−4)についての具体的な化合物の製造方法については、特開平6−239914号、特開平8−208733号、特開平10−226712号、特開平14−069116号の各公報に例示された化合物や製造方法等を挙げることができる。
【0034】
例えば、成分(b−1)としては、1種類又は2種類以上のトリアルキルアルミニウムと水から得られるから誘導される有機アルミオキシ化合物が挙げられる。1種類のトリアルキルアルミニウムから誘導される有機アルミオキシ化合物としては、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン等が挙げられ、2種類以上のトリアルキルアルミニウムと水から得られるから誘導される有機アルミオキシ化合物としては、メチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が挙げられる。また、アルキルボロン酸とトリアルキルアルミニウムの反応物等を挙げることができる。
【0035】
成分(b−2)としては、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、アルミナ、塩化マグネシウムを、成分(b−3)としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いることができる。
【0036】
更に、成分(b−4)としては、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよく、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等の化学処理が施されていることが好ましい。
【0037】
成分(c):有機アルミニウム化合物
必要に応じて、成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(2)で示される化合物を挙げることができる。
AlRaP3−a (2)
(式中、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Pは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン類等も使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0038】
成分(a)、成分(b)、および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時、またはオレフィンの重合時に行ってもよい。
(i)成分(a)と成分(b)を接触させる。
(ii)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する。
(iii)成分(a)と成分(c)を接触させた後に成分(b)を添加する。
(iv)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する。
(v)三成分を同時に接触させる。
【0039】
本発明で使用する成分(a)、成分(b)の使用量は任意であるが、成分(b)として何を選択するかで好ましい使用量の範囲が異なる。
成分(b)として成分(b−1)を使用する場合、成分(b−1)のアルミニウムオキシ化合物中のアルミニウム原子と成分(a)中の遷移金属の原子比(Al/Me)が1〜100,000、好ましくは10〜10,000、更に好ましくは50〜5,000の範囲内である。
成分(b)として成分(b−2)を使用する場合、及び、成分(b−2)のルイス酸や成分(b−3)のイオン性化合物を使用する場合には、成分(a)中の遷移金属と成分(b−2)、成分(b−3)のモル比が0.1〜50の範囲で使用される。
成分(b)として成分(b−4)を使用する場合、成分(b)1g当たり成分(a)が0.001〜10mmol、好ましくは0.001〜5mmol使用される。
【0040】
成分(c)の有機アルミニウム化合物を使用する場合、その使用量は、対成分(a)に対するモル比で105以下、更に104以下、特に103以下の範囲が好ましい。
【0041】
本発明に用いられるプロピレン重合体の製造は、プロピレン単独、或いはプロピレンとエチレン、或いは、炭素数4〜20のα−オレフィンとメタロセン触媒とを混合接触させることによって行われる。共重合の場合には、結晶化温度の分布、TREFにおける溶出温度の分布が狭い共重合体を得るという観点から、反応系中の各モノマーの量比は経時的に一定であることが望ましい。
【0042】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならばあらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずにプロピレンを溶媒として用いるバルク法、溶液重合法、或いは、実質的に液体溶媒を用いず各モノマーを実質的にガス状に保つ気相法等を採用することができる。
また、重合方法としては、連続式重合にも回分式重合にも適用されるが、重合環境がより均一に制御が可能である連続重合が好ましい。重合の条件は、重合温度が−78〜160℃、好ましくは0〜150℃であり、重合圧力は常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜6MPa、特に好ましくは常圧〜5MPaが好ましい。この際に、分子量調節剤として補助的に水素を用いることが可能である。ところで、ここで用いる水素に関しても、重合反応中で経時的に変化しないことが、Goを一定範囲に制御するためには重要なことである。
【0043】
本発明で用いるポリプロピレン重合体には、本発明の目的が損なわれない範囲で、各種添加剤、例えば造核剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤、エラストマーなどを配合することができる。配合は通常溶融混練機を用いて190℃〜350℃で加熱溶融混練し、粒状に裁断されたペレット状態で提供される。
【0044】
本発明のプロピレン重合体からなる発泡シートは、押出機内で上述のプロピレン重合体に発泡剤を添加して溶融混練する方法により製造するのが好ましい。
発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤、揮発性発泡剤、分解型発泡剤が用いられ、これらは単独もしくは混合して用いることができる。
【0045】
上記無機系発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、空気、窒素等が挙げられる。
上記揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素類及び環式脂肪族炭化水素類が、モノクロロジフロロメタン、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
上記分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、P,P′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
プロピレン重合体への発泡剤の添加量は、発泡剤の種類や設備、運転条件、製品の発泡倍率等によって異なるが、発泡倍率2〜10倍(発泡成形体密度0.09〜0.46g/cm3)の発泡体を得るためには、例えば発泡剤に炭酸ガス発生型の化学発泡剤を使用する場合、結晶性ポリプロピレンに対して1〜8重量部添加するのが好ましい。
【0047】
本発明の発泡シートを得るための好ましい製造方法は、本発明で用いるプロピレン重合体と発泡剤との混合物をダイスより溶融押出する方法である。ダイスの形状はT型ダイス、環状ダイスのいずれを使用しても差し支えない。
【0048】
発泡シートの密度や厚みは、発泡剤の添加量、押出温度、単位時間当りの押出量、発泡シートの引取速度等によって調整することができる。
【0049】
さらに、必要に応じて本発明の発泡シートに非発泡層をその片面もしくは両面に積層させる場合は、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法、共押出法、プレス法等の通常適用される積層方法によればよい。
【0050】
本発明のプロピレン重合体発泡シートは、流動性、延展性等の成形性に優れ、かつ均一微細な独立気泡を有するので、種々な用途に用いることができ、特に、食品や工業用で熱成型を必要とする用途や緩衝材等の用途に好適に用いることができる。
【0051】
【実施例】
以下実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた評価方法及びプロピレン重合体の製造例は以下の通りである。
【0052】
1.物性測定法、発泡シートの評価方法
(1)MFR:JIS K6758(230℃、荷重21.18N)に準拠して測定した。
(2)溶融粘弾性測定によるGoの測定:前記した方法に従って測定した。
(3)DSC測定によるTc及びΔTcの測定:前記した方法に従って測定した。
(4)TREF測定によるTp、T20、T80、40℃のオルソジクロルベンゼンに可溶な成分の量(40℃Sol量):前記した方法に従って測定した。
(5)発泡倍率:発泡シートを10cm角に切り取り、その重量と厚みから発泡体の密度を算出し、下式により計算して求めた。
発泡倍率=(未発泡時密度)÷(発泡時密度)
(6)発泡シートの気泡性状の判定:発泡シートの断面を光学顕微鏡で観察し、発泡体の気泡径を測定して次の基準で評価した。
◎:均一微細(気泡径100μ以下)
○:均一(気泡径100〜200μ)
×:不均一、粗大(気泡径30μ以上)
(7)独立気泡率:ASTM−D2856に準じて測定した。
(8)延展性:発泡シートを株式会社浅野研究所製の間接加熱式真空成形機(名称:コスミック成形機)を使用して350℃のセラミックヒーターで上下より加熱し、縦24cm、横18cm、深さ3cmの金型を使用して容器を成型して以下の基準で延展性を評価した。
◎:延展性に非常に優れ、成型品の肉厚が均一となる
○:延展性に優れる
×:延展性に劣る(一部で延展不良=シワが発生する)
【0053】
2.ポリプロピレン重合体の製造
製造例1
(1)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリドのラセミ体の合成
特開平10−226712号公報の実施例12に記載された方法に従って合成した。
(2)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理:ゼパラブルフラスコに蒸留水1130g、96%硫酸750gを加え内温を90℃に保ち、そこに平均粒径25μmの造粒スメクタイト(水沢化学社製ベンクレイSL)300gを添加し5時間反応させた。
洗浄:1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH=3.69まで洗浄した。このときの洗浄倍率は1/10000以下であった。この段階の固体を一部乾燥させて酸処理による溶出率を求めたところ33.5%であった。
得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後53μm以上の粗大粒子を除去しさらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイトを得た。
上記の化学処理スメクタイト200gを内容積3Lの攪拌翼のついたガラス製反応器に導入し、ノルマルヘプタン750ml、さらにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(500mmol)を加え、室温で攪拌した。1時間後、ノルマルヘプタンにて洗浄(残液率1%未満)し、スラリーを2000mLに調製した。
(3)触媒の調製/予備重合
あらかじめ(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]ジルコニウムジクロリド3mmolのヘプタンスラリー870mlとトリイソブチルアルミニウム(30mmol)のヘプタン溶液42.6mlを室温にて1時間反応させておいた混合液を、上記スメクタイトスラリーに加え、1時間攪拌した。
続いて、窒素で十分置換を行った内容積10Lの攪拌式オートクレーブにノルマルヘプタン2.1Lを導入し、40℃に保持した。
そこに先に調製したスメクタイト/錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を40℃に維持した。4時間後、プロピレンの供給を停止し、さらにそのまま2時間維持した。回収した予備重合触媒スラリーから、上澄みを約3L除き、トリイソブチルアルミニウム(30mmol)のヘプタン溶液を170ml添加し、10分間撹拌した後に、40℃にて減圧下熱処理した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.2gを含む予備重合触媒1が得られた。
(4)重合
内容積270Lの攪拌装置付き液相重合槽、内容積400Lの失活槽、スラリー循環ポンプ、、二重管式熱交換器と流動フラッシュ槽からなる高圧脱ガスシステム、さらに低圧脱ガス槽および乾燥器などを含む後処理系を組み込んだプロセスにより、プロピレン・エチレン共重合体の連続製造を実施した。
上記で製造した予備重合触媒1を流動パラフィン(東燃社製:ホワイトレックス335)に濃度15重量%で分散させて、触媒成分として0.75g/hrで液相重合槽に導入した。さらにこの重合槽に液状プロピレンを38kg/hr、エチレンを1.3kg/hr、水素を0.05g/hr、トリイソブチルアルミニウムを9g/hrで連続的に供給し、内温を62℃に保持し、重合を行った。
液相重合槽からポリマーと液状プロピレンの混合スラリーをポリマーとして12kg/hrとなるように失活槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活槽には、失活剤としてエタノールを10.5g/hrで供給した。失活後のポリマーを高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m3/hrの流量で流した。乾燥後のポリマーは、ホッパーから取り出し、プロピレン重合体(PP−1)を得た。
得られた重合体(PP−1)の固体触媒1g当たりの収量は16kg、エチレン含量=3.3wt%、MFR=3.0g/10minであった。
【0054】
製造例2
(1)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリドのラセミ体の合成
特開平10−226712号公報の実施例15に記載された方法に従って合成した。
(2)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理:製造例1(2)において、イオン交換性層状珪酸塩として平均粒径19μmの造粒スメクタイト(水沢化学社製ベンクレイSL)を使用し、反応時間を5時間とした。
塩類処理:硫酸リチウム1水和物211gを蒸留水521gに溶かし、さらに上記酸処理で得られた固体200g(乾燥重量)を加え室温で120分撹拌した。このスラリーを濾過し、得られた固体に蒸留水3000g加え5分間室温で撹拌した。更にこのスラリーを濾過した。得られた固体に蒸留水2500gを加え5分撹拌後再び濾過した。この操作をさらに4回繰り返した。得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後53μm以上の粗大粒子を除去しさらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイトを得た。
洗浄:上記化学処理スメクタイトを製造例1と同様に洗浄し、2000mLのスラリーを調製した。
(3)触媒の調製/予備重合
(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]ハフニウムジクロリドと上記スメクタイトスラリーを用い、製造例1と同様に予備重合を行い、触媒1g当たりポリプロピレン2.1gを含む予備重合触媒2を得た。
(4)重合
製造例1(4)重合において、予備重合触媒2を触媒成分とし、導入量を0.36g/hrとし、液状プロピレンを36kg/hr、エチレンを0.8kg/hr、水素を0.09g/hrとして重合を行い、プロピレン重合体(PP−2)を得た。
得られた重合体(PP−2)の固体触媒1g当たりの収量は28kg、エチレン含量=2.1wt%、MFR=3.0g/10minであった。
【0055】
製造例3
エチレンフィードと停止し、触媒量を1.0g/hr、水素を0.03g/hr、重合槽からの失活槽へのポリマー抜き出し量を12kg/hrとした以外は、製造例2と同様の方法でプロピレン単独重合体の連続製造を実施し、プロピレン重合体(PP−3)を得た。
得られた重合体(PP−3)の固体触媒1g当たりの収量は12kg、MFR=3.0g/10minであった。
【0056】
製造例4
触媒量を0.5g/hr、水素を0.32g/hrとした以外は、製造例1と同様の方法でプロピレン・エチレン共重合体の連続製造を実施し実施し、プロピレン重合体(PP−4)を得た。
得られた重合体(PP−4)の固体触媒1g当たりの収量は24kg、エチレン含量=3.3wt%、MFR=11.0g/10minであった。
【0057】
製造例5(1)固体触媒成分(A)の製造
特開平2001−206905号公報の実施例1に記載された方法と同様にして固体触媒成分(A)を製造した
(2)プロピレン単独重合体の製造
内容積270Lの攪拌装置付き液相重合槽、内容積400Lの失活槽、スラリー循環ポンプ、、二重管式熱交換器と流動フラッシュ槽からなる高圧脱ガスシステム、さらに低圧脱ガス槽および乾燥器などを含む後処理系を組み込んだプロセスにより、プロピレン単独重合体の連続製造を実施した。液相重合槽には、液化プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム(TEA)、t−ブチルエチルジメトキシシラン(TBEDMS)を連続的にフィードした。なお、液化プロピレンおよびTEAのフィード量は、それぞれ35kg/hr、6.0g/hrであり、TBEDMSはプロピレン液中の濃度が1.0molppmとなるように調整した。水素は気相部の組成が、水素/プロピレン=0.5vol%となるように調整した。重合温度は70℃であり、液相重合槽からポリマーと液状プロピレンの混合スラリーをポリマーとして15kg/hrとなるように失活槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.5時間であった。失活槽には、失活剤としてエタノールを12.8g/hrで供給した。失活後のポリマーを高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m3/hrの流量で流した。乾燥後のポリマーは、ホッパーから取り出し、プロピレン重合体(PP−5)を得た。
触媒活性は70,000g/g、MFRは1.3g/10minであった。なお、触媒活性は、固体触媒成分(A)中に含まれる固体成分1gあたりのポリプロピレン収量(g)で定義する。
【0058】
製造例6
(1)プロピレン単独重合体の製造
プロピレン液中のTBEDMS濃度を0.01molppm、気相部の組成が、水素/プロピレン=0.12vol%となるように調整した以外は製造例5と同様にしてプロピレンの連続重合を行い、プロピレン重合体(PP−6)を得た。
平均滞留時間は1.5時間であり、触媒活性は35,000g/g、MFRは0.4g/10minであった。
【0059】
製造例7
(1)プロピレン・エチレンランダム共重合体の製造
製造例5と同様のプロセスにより、プロピレン・エチレン共重合体の連続製造を実施した。液相重合槽には、液化プロピレン、エチレン、水素、TEA、TBEDMSを連続的にフィードした。なお、液化プロピレンおよびTEAのフィード量は、それぞれ35kg/hr、6.0g/hrであり、TBEDMSはプロピレン液中の濃度が2.8molppmとなるように調整した。エチレン及び水素は気相部の組成が、エチレン/プロピレン=3.3vol%、水素/プロピレン=1.2vol%となるように調整した。重合温度は65℃であり、液相重合槽からポリマーと液状プロピレンの混合スラリーをポリマーとして15kg/hrとなるように失活槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.5時間であった。失活槽には、失活剤としてエタノールを12.8g/hrで供給した。失活後のポリマーを高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m3/hrの流量で流した。乾燥後のポリマーは、ホッパーから取り出し、プロピレン重合体(PP−7)を得た。
平均滞留時間は1.5時間であり、触媒活性は200,000g/g、エチレン含量=4.5wt%、MFRは0.5g/10minであった。
【0060】
実施例1
プロピレン重合体(PP−1)に対して中和剤、酸化防止剤を混合した後、φ50mm単軸押出機で230℃にて造粒した。得られたペレットはMFR=3.0g/10min、Tm=125℃、Go=41,900Pa、Tc=88.6℃、ΔTc=4.3℃、Tp=78.0℃、ΔT=4.6℃、40℃SoL量=0.7重量%であった。本ペレットを用いて物性を測定した結果を表1に示す。
また上記のペレットを1段目スクリュー径φ48mm2軸押出機、2段目スクリュー径φ90mm単軸押出機で構成されるタンデム押出機で溶融混練しながら1段目押出機より炭酸ガスを2L/hの流量で注入し、次いで、これを180℃に加熱したφ76mmのサーキュラーダイスよりブロー比=約3倍の設定で押出して発泡シートを得た。この発泡シートの評価結果を表1に示す。
【0061】
実施例2
プロピレン重合体(PP−2)に対して中和剤、酸化防止剤を混合した後、φ50mm単軸押出機で230℃にて造粒した。得られたペレットはMFR=3.0g/10min、Tm=140℃、Go=39,600Pa、Tc=101.6℃、ΔTc=4.4℃、Tp=90.5℃、ΔT=4.0℃、40℃SoL量=0.4重量%であった。本ペレットを実施例1と同様に評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0062】
実施例3
プロピレン重合体(PP−3)に対して中和剤、酸化防止剤を混合した後、φ50mm単軸押出機で230℃にて造粒した。得られたペレットはMFR=3.0g/10min、Tm=154℃、Go=37,800Pa、Tc=116.8℃、ΔTc=3.7℃、Tp=103.9℃、ΔT=3.9℃、40℃SoL量=0.1重量%であった。本ペレットを実施例1と同様に評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0063】
比較例4
プロピレン重合体(PP−7)に対して中和剤、酸化防止剤、核剤(旭電化(株)製NA11 0.1重量部)、有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキサ25B 0.03重量部)を混合した後、φ50mm単軸押出機で230℃にて造粒した。得られたペレットはエチレン含量=4.5wt%、MFR=3.5g/10min、Tm=137℃、Go=39,600、Tc=107.4℃、ΔTc=4.7℃、Tp=90.4℃、ΔT=11.6℃、40℃SoL量=9.2重量%であった。本ペレットを実施例1と同様に評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
プロピレン重合体(PP−5)に対して中和剤、酸化防止剤、核剤(旭電化(株)製NA11 0.1重量部)を混合した後、φ50mm単軸押出機で230℃にて造粒した。得られたペレットはMFR=1.3g/10min、Tm=166℃、Go=27,200Pa、Tc=132.4℃、ΔTc=3.6℃、Tp=113.9℃、ΔT=4.5℃、40℃SoL量=0.9重量%であった。本ペレットを実施例1と同様に評価に供した。評価結果を表1に示す。なお、当該ペレットを用いた発泡シートは独立気泡性及び、二次成型時の延展性が劣っていた。
【0065】
比較例2
プロピレン重合体(PP−6)に対して中和剤、酸化防止剤、有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキサ25B 0.03重量部)を混合した後、φ50mm単軸押出機で230℃にて造粒した。得られたペレットはMFR=3.0g/10min、Tm=161℃、Go=35,600Pa、Tc=115.6℃、ΔTc=5.4℃、Tp=110.7℃、ΔT=8.4℃、40℃SoL量=3.2重量%であった。本ペレットを実施例1と同様に評価に供した。評価結果を表1に示す。なお、当該ペレットを用いた発泡シートは気泡性状が不均一であり、独立気泡性、二次成型時の延展性)が劣っていた。
【0066】
比較例3
プロピレン重合体(PP−4)に対して中和剤、酸化防止剤を混合した後、φ50mm単軸押出機で230℃にて造粒した。得られたペレットはエチレン含量=3.3wt%、MFR=11.0g/10min、Tm=125℃、Go=37,500Pa、Tc=86.2℃、ΔTc=4.8℃、Tp=77.7℃、ΔT=5.9℃、40℃SoL量=0.9重量%であった。本ペレットを実施例1と同様に評価に供した。評価結果を表1に示す。なお、当該ペレットを使用した発泡シートは発泡倍率が低く、気泡性状が不均一であり、独立気泡性、二次成型時の延展性)が劣っていた。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
本発明のプロピレン重合体発泡シートは、流動性、延展性等の成形性に優れ、且つ均一かつ微細な独立気泡を有するので、熱成型して得られる食品容器、工業用部品、トレイ等の用途における熱成型品として用いることができ、産業上有効な材料である。
Claims (1)
- MFRが1〜5、結晶化ピーク温度Tcが88.6〜116.8℃、昇温溶離分別(TREF)におけるピーク溶出温度Tpが70〜110℃の範囲にあり、かつ、下記性状(1)〜(5)を有するプロピレン重合体からなることを特徴とする発泡シート。
性状(1):交点弾性率Goが30,000〜45,000Paである。
(ここで、交点弾性率とは、200℃の溶融粘弾性測定における周波数−貯蔵弾性率(G’)曲線と周波数−損失弾性率(G’’)曲線との交点の弾性率をいう。)
性状(2):結晶化ピーク温度Tc(℃)とMFR(g/10分)とが式(I)を満たす。
116.8≧Tc≧4.5×MFR+75.1 式(I)
性状(3):結晶化発熱ピークの半値幅ΔTc(℃)と結晶化ピーク温度Tc(℃)が式(II)を満たす。
−0.030×Tc+7.4≧ΔTc≧−0.030×Tc+6.5 式(II)
性状(4):昇温溶離分別(TREF)におけるピーク溶出温度Tpと、全量の80重量%が溶出する温度T80(℃)と全量の20重量%が溶出する温度T20(℃)の差ΔT(ΔT=T80−T20)とが式(III)を満たす。
−0.060×Tp+11.0≧ΔT≧−0.60×Tp+8.0 式(III)
性状(5):40℃のオルソジクロルベンゼンに可溶な成分の量が0.7重量%以下である。
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