JP5013397B2 - 含水ゲルシートの製造方法、その含水ゲルシートで製造されるシート状パック材の製造方法 - Google Patents
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さらに詳しくは、本発明は、吸水シートに含水ゲルを生成せしめてスライス法では得られない短時間で含水ゲルシートを製造する方法、及び得られた該ゲルシートの自由水を化粧液と置換して含浸化粧料の取扱い性と肌への密着性に優れたシート状化粧パック材とその製造方法に関する。
一方、アセトバクター属の菌により微生物セルロースが産生されることは、1886年にブラウン氏の報告があり、微生物セルロースによるゲル体はナタデココとして古くから知られていて特開平07−059523号公報、特開平07−079797号公報にも可食性ゲル体が記載されているがシート状パック材の新規の素材としても注目される。
そこで、ゲル復元性を高める方法として、従来、ゲルを粉砕して水溶性安定剤として、グルコース、フラクトース、シュークロース、デンプン、食塩、重曹、乳酸、クエン酸、リン酸、酒石酸、グルタミン酸又はアスパラギン酸より選ばれたものを用いることが提案された。
このスライス法によれば、18〜20mmの厚さの含水ゲル体を得るのに12〜13日を要する上に、ゲル体をスライスする手数がかかり、しかも薄い均一厚さのシートを得ることは不可能であり、特に厚さ3mm以下のシートを得ることは如何に鋭敏な刃のスライス形成装置を使用しても無理であった。一方、ゲルシートの厚さは、好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下のものが求められており、仮に厚さ3mmのゲルシートを圧縮して厚さ1mm以下にしても、化粧液を注液することにより、元の3mmに戻す工程が必要であった。
また、従来の静置培養法によって得られた含水ゲルシートは、時間経過と共に一般細菌が増殖するので、衛生面の安全を保つことが難しいという問題があった。
そこで、本発明は、公知の静置培養法を採用してもスライスする必要が無く、薄い均一厚さのシートを得るが可能となり、圧縮することもなく、3mm以下の含水シートを容易に製造する方法を提供する。
請求項2に係る発明の含水ゲルシートの製造方法は、前記微生物の培養が、ループ状にした吸水性シートを培養液に浸漬するエンドレス回転による培養であることを特徴とする。
請求項3に係る発明の含水ゲルシートの製造方法は、前記微生物の培養が、吸水性シートを2枚重ねで培養液に浸漬し、該2枚重ねのシートの両面に含水ゲルを生成せしめた後、2枚を分離して吸水性シートのそれぞれの片面に含水ゲルを生成する培養であることを特徴とする。
用いるAcetobacter xylinumとしては、ATCC10821、ATCC31174、ATCC23768、ATCC23769、ATCC14851、ATCC11142、ATCC11172、IFO03288、IFO13772、等がある。
本発明の培養液に用いるスクロースは、8〜20重量%を用いるのが適当であり、8重量%以下では菌に栄養不足となり、微生物セルロース産生が少なく、20重量%以上では、得られた含水ゲルシートが硬くなり、肌への密着性が低下する。
本発明では、含水ゲル体の透明度をよくするには、エタノールを培地に添加して、ナノファイバーの分散性を高めることが効果的である。
また、過剰の水分は、遠心脱水により除去するとよい。吸着水の50%未満を脱水するには、ゲル体のままでもよいが、細かく切断して、ホモミキサーにより離解して乾燥する方法が好ましい。乾燥は、温風乾燥機又は凍結乾燥機により自由水を全量脱水して、吸着水の脱水を50%未満とするが、脱水の品質管理は重量測定により行う。
さらに、本発明で製造されたゲルシートは、−40℃〜10℃の温度で冷凍又は冷蔵保存により一般細菌の増殖を押さえ、含有水分の酸化還元電位の上昇を押さえることにより衛生面の安全を保つことができる。
自由水及び吸着水を含む含水ゲルのミクロ構造は、図1に示すように、吸着水はナノファイバーの三次元空隙構造内に封じ込められた水分子であり、自由水はナノファイバーの三次元空隙構造の外にフリーに存在する水分子と考えられるが、三次元空隙構造内に封じ込められた水分子からなる吸着水の脱水は50%以上になると、不可逆的に影響してゲルの復元が難しくなる。
このときの加熱乾燥時間と、重量減の関係は図2に示すところであるが、この図によれば、乾燥温度が70℃であれば、約10分程度で、自由水の殆どが乾燥除去できるが、ナノファイバーの三次元空隙構造内に封じ込められた水分子の除去はきわめて緩慢であることがわかる。
吸着水を脱水した乾燥状態から、吸水して復元性をよくするには、糖アルコールとしてオリゴサッカライド、ソルビトール、キシリトール等から選ばれたものを含有することが有効である。
担持効果を得るためには、吸着水の脱水を50%未満として、吸着水を担持液と入れ替えることが重要である。自由水を入れ替えたのでは担持効果が得られないし、吸着水を50%以上脱水した場合には吸水性が著しく低下して上述のように担持効果が得られない。
酢酸が検出されなくなるまで洗浄し、100℃30分の殺菌処理を行う。過剰の水分を除くには遠心脱水又はマングルを用いればよい。遠心脱水により過剰な水分を除いた含水シートは、図1に示すようにに85%の自由水と15%の吸着水の水分より成る。含水ゲルに化粧液を注液するには、注液相当分の自由水を除いて化粧液と入れ替える。自由水の20%以上、好ましくは40%以上を除いて除去部分を作って、除去部分に化粧液を注入する。自由水により化粧液が希釈されることになるので、化粧液の配合と注液量に応じて自由水を除く量を定めればよく、40重量%脱水した注液化粧料の濃度に対して、20%脱水した場合は、化粧料の濃度は2倍にする必要があるが、20重量%未満の脱水にはそれ以上の高濃度になるため、増粘剤など配合が適合しなくなり20重量%以上を可とする。
乾燥シートを用いてシート状パック材とする場合には、化粧液を含浸してゲルシートに復元させることになるが、乾燥によりゲル復元性が低下するので、HLB10以上の親水性の非イオン界面活性剤又は/及び糖アルコール含有させて乾燥する。乾燥は温風乾燥でも凍結乾燥であってもよい。HLB10未満の非イオン界面活性剤の含有により微生物セルロースを包み込んで、ナノファイバーの収束を防ぐことができる。糖アルコールを単独又は非イオン界面活性剤と併用しても有効である。糖アルコールとしては、オリゴサッカライド、ソルビトール等を用いることができる。
本発明によれば、短時間に吸水性シートの両面又は片面に含水ゲルを生成させることが可能で、しかも得られた吸水性シートは、厚さは3mm以下、好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下のゲルシートを1日以内に生産することができる。
また、本発明で製造されたゲルシートは、−40℃〜10℃に冷凍又は冷蔵又保存により一般細菌の増殖を押さえ、容易に衛生面の安全を確保することができる。
さらに、本発明の微生物セルロースによる含水ゲルシートの製造法では、従来法に比して取扱い性が抜群によくなる。また、得られたゲルシートは、破れたり変形することがなく、従来得られなかった3mm以下の厚さにすることにより、密着性をさらに高めて、且つ質量の低減とスライス工程の削除により安価になる。
さらに、親水性高分子ではなくナノセルロース繊維による擬似ゲル構造を用いることで、ゲル体を用いても成分の拘束性が向上し、化粧用シートとして、ゲル体を使用して化粧液に含浸させたときに、化粧成分を包接のように拘束することを改善する。
円周3mの水車型の枠に、メッシュ調のコットン不織布厚さ0.2mm、幅50cm、長さ3mの吸水性シートを固定した。水車の1/3を培養液に浸漬して、最初吸水性シート全体を培養液で湿潤して、毎分50cmの速度で回転した。8時間の培養で厚さ0.8mmの含水ゲルシートを生成した。該含水ゲルシートを流水により酢酸のなくなるまで洗浄し、100℃30分の殺菌処理を行った水冷して遠心脱水を行い、その重量は6g/100cm2であった。その85%が自由水であるので、自由水50%を除くために、マングルで絞り2.5g/100cm2を脱水して3℃に冷蔵した。次いで、フェイスマスクの形状に型抜きして、脱水部に相当する化粧液の2.5g/100cm2量を注液してシート状パック材を得た。
注液した化粧液は、精製水:81部、1.3−BG:17.4部、キサンタンガム:0.35部、アクリル酸ナトリウム:0.1部、メチルパラペン:0.14部、PEG−60水添ヒマシ油:0.5部、ヒヤルロンサンナトリウム:0.004部、ソウハクエキス;0.0014部、メリッサエキス0.0006部、を配合した液を用いた。
得られたシート状のパック材は厚さ0.8mmである。従来のパック材より取扱い性が優れており、顔の凹凸に密着性が抜群であった。
比較例として、脱水を10重量%の0.5g/100cm2としたものは、化粧液の注液適量が僅かで、それ以上の注液は困難でありパック化粧料として有効なものは得られなかった。
比較例として非イオン界面活性剤を含浸しないものは、該化粧液を注液して常温で1週間後でも風合が硬く含水ゲルに復元することがなかった。
Claims (3)
- 微生物により微生物セルロースを産生する培養液に、吸水性シートを浸漬する培養によって含水ゲルシートを製造する方法であって、
前記微生物セルロースを産生する培養液が、酢酸でpH3〜5に調整したココナッツ水にスクロースを溶解した培地に好気性のアセトバクター・キシリナムを植菌して得られる培養液であり、前記吸水性シートが吸水性を有する多孔質の、合成樹脂シート、不織布、織物、編物又は紙より選ばれたもので、上記吸水性シートを上記培養液に浸漬と引上げの繰り返しにより、微生物を培養することを特徴とする含水ゲルシートの製造方法。 - 前記微生物の培養が、ループ状にした吸水性シートを培養液に浸漬するエンドレス回転による培養であることを特徴とする請求項1に記載の含水ゲルシートの製造方法。
- 前記微生物の培養が、吸水性シートを2枚重ねで培養液に浸漬し、該2枚重ねのシートの両面に含水ゲルを生成せしめた後、2枚を分離して吸水性シートのそれぞれの片面に含水ゲルを生成する培養であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含水ゲルシートの製造方法。
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