JP5013135B2 - 磁気式位置検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気抵抗効果素子を用いた磁気式位置検出装置に関し、特に磁気式のスケールやロータリーエンコーダ等に用いて好適な磁気式位置検出装置に関する。
磁気式位置検出装置としては、従来から、図4(A)に示されるような、N極とS極が交互に着磁された磁気部材1の磁極配列方向に対して同一位置に4個のスピンバルブ型磁気抵抗素子(SV-GMR1〜SV-GMR4)を配置したものが知られている(下記特許文献1参照)。4個のスピンバルブ型磁気抵抗素子(SV-GMR1〜SV-GMR4)のうち、1対の2個(SV-GMR1及びSV-GMR2)はピン層磁化方向が90°ずれて配置され、残りの対の2個(SV-GMR3及びSV-GMR4)は前記1対の2個に対してピン層磁化方向が180°ずれて配置されている。SV-GMR1〜SV-GMR4は図4(B)のように接続され、この回路から互いに位相が90°ずれた2相の出力信号Vout1,Vout2が得られる。
また、別の磁気式位置検出装置として、磁気部材の着磁ピッチ=Pに対して4個のGMR素子を磁極配列方向にL=nP士(1/8)P(但し、nは整数)ずつ離間して配置したものが知られている(下記特許文献2参照)。4個のGMR素子は、感磁面が磁極配列面と平行である。4個のGMR素子のうち前側の2個のGMR素子は、固定層の磁化方向が磁極配列方向と交差して互いに反対方向に異なっている。後側の2個のGMR素子も同様である。4個のGMR素子はブリッジ接続され、この回路から互いに位相が90°ずれた2相の出力信号が得られる。
特開2006−23179号公報 特開2003−106866号公報
図4(A)に示される特許文献1の磁気式位置検出装置では、4個のスピンバルブ型磁気抵抗素子のうちピン層磁化方向が磁気部材1の磁極配列方向と平行なもの(SV-GMR2及びSV-GMR4)は、磁気部材1の発生磁界のうち磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する。また、特許文献2の磁気式位置検出装置では、いずれのGMR素子も、磁気部材の発生磁界のうち磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する。以下、磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する場合の課題について説明する。
図5は、磁気部材の発生磁界のうち磁極配列方向に平行な磁界成分Hx及び同発生磁界のうち磁極配列面に垂直な磁界成分Hzを磁極配列方向に沿ってシミュレーションした場合の規格化値と、理想的な正弦波とを比較した波形図である。なお、シミュレーションにおいて、磁気部材は、磁極配列方向に関する長さが50mmで着磁ピッチが20mmのものとした。また、計算ポイント(磁界成分Hx及びHzを計算した位置)は、磁極配列面から垂直に5mmだけ離れた位置(エアギャップ5mm)で、磁極配列方向に関して中央から前後にそれぞれ10mmずつ(計20mm)の範囲内とした。
同図より、磁極配列面に垂直な磁界成分Hzを磁極配列方向に沿ってシミュレーションした場合の規格化値は、磁気部材の端部(磁極配列方向の端部)に近づいても理想的な正弦波と比較した誤差が小さいことが分かる。他方、磁極配列方向に平行な磁界成分Hxを磁極配列方向に沿ってシミュレーションした場合の規格化値は、特に磁気部材の端部(磁極配列方向の端部)に近い位置において理想的な正弦波と比較した誤差が大きいことが分かる。理想的な正弦波と比較した誤差の原因としては、磁気部材が無限長でないために端部付近で磁界のバランスがくずれてしまうことによる影響がある。上記シミュレーションの結果より、その影響は、磁極配列面に垂直な磁界成分Hzよりも磁極配列方向に平行な磁界成分Hxに大きく及ぶと考えられる。したがって、特許文献2の磁気式位置検出装置のように磁気部材の発生磁界のうち磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する構成は、位置検出精度を高める観点からすると改善の余地がある。
また、特許文献1の磁気式位置検出装置では、磁気部材の端部に近い位置において、ピン層磁化方向が磁極配列面に垂直となっているSV-GMR1、SV-GMR3の磁気特性はそれぞれ、後述の図2(C)におけるa(低抵抗状態)、c(高抵抗状態)であり、磁気バランスのくずれに対して影響が小さい特性部分にある。ところが、ピン層磁化方向が磁極配列面に平行となっているSV-GMR2、SV-GMR4の磁気特性は、後述の図2(C)におけるb(中抵抗状態)であり、磁気バランスのくずれに対して影響が大きい特性部分に相当するため誤差が大きくなってしまう。
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、磁気部材の磁極配列面に垂直な磁界成分の変化を検出する構成とすることにより、磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する構成と比較して位置検出精度を高めることが可能な磁気式位置検出装置を提供することにある。
本発明のある態様は、磁気式位置検出装置である。この磁気式位置検出装置は、
N極とS極が交互に配列された磁気部材と、
前記磁気部材の磁極配列面に対向する位置に存在する第1及び第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子とを備え、
前記磁気部材の磁極配列ピッチをPとしたとき、前記第1及び第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の磁極配列方向に関してP/4だけ相互に離間し、
前記第1及び第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は、前記磁気部材の前記磁極配列面に平行でなく、かつ前記磁気部材の前記磁極配列方向に対して略垂直であり、
前記磁気部材の磁極配列面に対向する位置に存在する第3及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子をさらに備え、
前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の前記磁極配列方向に関して同じ位置にあり、かつ、一方のピン層磁化方向が前記磁気部材の存在する側を向いているのに対して他方のピン層磁化方向は前記磁気部材の存在しない側を向き、
前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の前記磁極配列方向に関して同じ位置にあり、かつ、一方のピン層磁化方向が前記磁気部材の存在する側を向いているのに対して他方のピン層磁化方向は前記磁気部材の存在しない側を向いている。
ある態様の磁気式位置検出装置において、前記第1乃至のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子を含む回路から、位相が相互に90°ずれた2相の出力信号を得るとよい。
ある態様の磁気式位置検出装置において、
高電圧端子と低電圧端子との間に前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、
高電圧端子と低電圧端子との間に前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、
前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点並びに前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点から2相の出力信号を得るとよい。
ある態様の磁気式位置検出装置において、
前記磁気部材の磁極配列面に対向する位置に存在する第5乃至第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子をさらに備え、
前記第5及び第7のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の前記磁極配列方向に関して前記第1のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子と同じ位置にあり、かつ、前記第5のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は前記第1のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向と反対側を向き、前記第7のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は前記第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向と反対側を向き、
前記第6及び第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の前記磁極配列方向に関して前記第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子と同じ位置にあり、かつ、前記第6のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は前記第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向と反対側を向き、前記第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は前記第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向と反対側を向き、
高電圧端子と低電圧端子との間に、前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、前記第5及び第7のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、前記第6及び第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、
前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点と前記第5及び第7のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点との電位差、並びに前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点と前記第6及び第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点との電位差が、2相の出力信号とされているとよい。
ある態様の磁気式位置検出装置において、各スピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向が、前記磁気部材の前記磁極配列面に対して略垂直であるとよい。
ある態様の磁気式位置検出装置において、各スピンバルブ型磁気抵抗効果素子の感磁面が、前記磁気部材の発生磁界に対して略平行であるとよい。
ある態様の磁気式位置検出装置において、前記スピンバルブ型磁気抵抗効果素子がトンネル効果型磁気抵抗効果素子であるとよい。
ある態様の磁気式位置検出装置において、前記磁気部材の磁極配列面が平面又は曲面であるとよい。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、第1及び第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は磁気部材の磁極配列面に平行でなくかつ前記磁気部材の磁極配列方向に対して略垂直であるため、磁気特性において磁気バランスのくずれの影響が少ない磁気特性部分を使用することになり、磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する構成と比較して位置検出精度を高めることが可能となる。
(A)は本発明の実施の形態に係る磁気式位置検出装置の概略的構成図、(B)は同磁気式位置検出装置におけるスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続関係を示す回路図、(C)は同磁気式位置検出装置の出力信号の波形図。 スピンバルブ型巨大磁気抵抗効果素子(SV-GMR)の膜構成及び磁気特性であって、(A)は膜構成の概略斜視図、(B)は低抵抗状態、中抵抗状態及び高抵抗状態となるときのピン層磁化方向とフリー層磁化方向との関係を示す説明図、(C)はSV-GMRの面内磁気特性(ピン層磁化方向とフリー層磁化方向の成す角度と抵抗変化率との関係)を示す波形図。 変形例に関し、(A)は実施の形態(図1)におけるSV-MR3及びSV-MR4を固定抵抗器に替えた場合の回路図、(B)はスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の使用個数を8つとしたフルブリッジ接続の場合の回路図。 (A)は特許文献1の磁気式位置検出装置の概略的構成図、(B)は同磁気式位置検出装置におけるスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続関係を示す回路図。 磁気部材の発生磁界のうち磁極配列方向に平行な磁界成分及び同発生磁界のうち磁極配列面に垂直な磁界成分を磁極配列方向に沿ってシミュレーションした場合の規格化値と、理想的な正弦波とを比較した波形図。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1(A)は、本発明の実施の形態に係る磁気式位置検出装置100の概略的構成図である。なお、本図では分かりやすくするために磁気部材1との関係で相対的にスピンバルブ型磁気抵抗効果素子(SV-MR1〜SV-MR4)を大きく図示しているが、実際には微小寸法である(他の図においても同様)。図1(B)は、同磁気式位置検出装置100におけるSV-MR1〜SV-MR4の接続関係を示す回路図である。図1(C)は、同磁気式位置検出装置100の出力信号Vout1,Vout2の波形図である。
磁気式位置検出装置100は、被検知体である磁気部材1と、第1乃至第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子(SV-MR1〜SV-MR4)とを備える。磁気部材1において、N極とS極が交互に現れる磁極配列面1aは平面であって、磁極配列方向は磁気部材1の長手方向で、各磁極は直線的に配列されている。磁気部材1の磁極配列面1aに対向する位置に、SV-MR1〜SV-MR4が存在する。磁気部材1及びSV-MR1〜SV-MR4の少なくとも一方は、磁気部材1の磁極配列方向に直線移動可能である。
SV-MR1〜SV-MR4は、例えばスピンバルブ型巨大磁気抵抗効果素子(SV-GMR)である。SV-GMRは、図2(A)の膜構成に示すように、磁化方向が一方向に固定された強磁性体のピン層と、電流が主として流れる非磁性層と、磁化方向が外部磁界方向(外部磁束方向)に一致する強磁性体のフリー層とで構成されている。ピン層磁化方向と外部磁界のベクトル方向が一致するときは図2(B)の状態a(低抵抗状態)となり、SV-GMRの感磁面内において外部磁界のベクトル方向を回転させると、ピン層磁化方向となす角度により抵抗値が変化し、角度90°では状態b(中抵抗状態)で外部磁界による抵抗値変化が実質ゼロとなり、反対方向のときは状態c(高抵抗状態)となる。図2(C)は、SV-GMRの面内磁気特性図であり、SV-GMRの感磁面(フリー層が存在する平面)に平行な外部磁界が存在する条件下で外部磁界を感磁面に垂直な回転中心軸にて回転させた場合のピン層磁化方向に対する回転角度と抵抗変化率(ΔR/R)との関係を示す。この場合、抵抗変化率(ΔR/R)は正弦波形でなだらかに変化する。なお、SV-MR1〜SV-MR4は、トンネル効果型磁気抵抗効果素子(SV-TMR)であってもよい。SV-TMRも、ピン層磁化方向と外部磁界のベクトル方向との角度に応じて、SV-GMRと同様の面内磁気特性を有する。また、SV-GMRの場合と比較して出力信号の振幅をより大きく取れるため、磁界検出の感度を高めることができる。
図1(A)に示されるように、SV-MR1及びSV-MR2は磁気部材1の磁極配列方向に関してP/4(P:磁気部材1の磁極配列ピッチ)だけ相互に離間している。SV-MR3は磁極配列方向に関してSV-MR1と同じ位置にあり、SV-MR4は磁極配列方向に関してSV-MR2と同じ位置にある。SV-MR1及びSV-MR2のピン層磁化方向は磁気部材1の磁極配列面1aと略垂直かつ磁気部材1の存在する側を向いていて、SV-MR3及びSV-MR4のピン層磁化方向は磁気部材1の磁極配列面1aと略垂直かつ磁気部材1の存在しない側を向いている。つまり、SV-MR1〜SV-MR4は、ピン層磁化方向が磁気部材1の磁極配列面1aと略垂直であり、かつ磁極配列方向に関して同じ位置にあるものはピン層磁化方向が互いに逆向きである。SV-MR1〜SV-MR4の感磁面は、磁気部材1の発生磁界に対して略平行(つまり磁極配列面1aと略垂直かつ磁極配列方向と平行)である。
図1(B)に示されるように、SV-MR1〜SV-MR4はブリッジ接続される。すなわち、SV-MR1及びSV-MR3は高電圧端子(電圧Vin)と低電圧端子(GND)との間に直列に接続され、SV-MR2及びSV-MR4も高電圧端子(電圧Vin)と低電圧端子(GND)との間に直列に接続され、SV-MR1及びSV-MR3の接続点並びにSV-MR2及びSV-MR4の接続点から2相の出力信号Vout1,Vout2(GND基準)が得られる。
以下、磁気式位置検出装置100の動作を説明する。磁気部材1とSV-MR1〜SV-MR4との相対位置関係(以下のケース1〜4)の各々において、SV-MR1〜SV-MR4並びに出力信号Vout1,Vout2の状態は次のとおりとなる。
ケース1… SV-MR1及びSV-MR3が磁気部材1のN極の中心に近接対向し、SV-MR2及びSV-MR4がN極とS極の境界に近接対向しているとき。
・SV-MR1:高抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが反対)
・SV-MR2:中抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが垂直)
・SV-MR3:低抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが一致)
・SV-MR4:中抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが垂直)
・Vout1:最小値
・Vout2:中間値
ケース2… SV-MR1及びSV-MR3が磁気部材1のN極とS極の境界に近接対向し、SV-MR2及びSV-MR4がS極の中心に近接対向しているとき。
・SV-MR1:中抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが垂直)
・SV-MR2:低抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが一致)
・SV-MR3:中抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが垂直)
・SV-MR4:高抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが反対)
・Vout1:中間値
・Vout2:最大値
ケース3… SV-MR1及びSV-MR3が磁気部材1のS極の中心に近接対向し、SV-MR2及びSV-MR4がN極とS極の境界に近接対向しているとき。
・SV-MR1:低抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが一致)
・SV-MR2:中抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが垂直)
・SV-MR3:高抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが反対)
・SV-MR4:中抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが垂直)
・Vout1:最大値
・Vout2:中間値
ケース4… SV-MR1及びSV-MR3が磁気部材1のN極とS極の境界に近接対向し、SV-MR2及びSV-MR4がN極の中心に近接対向しているとき。
・SV-MR1:中抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが垂直)
・SV-MR2:高抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが反対)
・SV-MR3:中抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが垂直)
・SV-MR4:低抵抗状態(ピン層磁化方向と外部磁界の向きが一致)
・Vout1:中間値
・Vout2:最小値
磁気部材1とSV-MR1〜SV-MR4との相対位置関係が上記ケース1〜4を順番に繰り返す(ケース間の相対位置関係の変化は連続)ことで、図1(C)に示されるような互いに位相が90°ずれた2相の出力信号Vout1,Vout2(実質的な正弦波)が得られる。なお、着磁ピッチP分の相対移動が図1(C)の0°〜360°に対応する。
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
(1) SV-MR1〜SV-MR4のピン層磁化方向が磁気部材1の磁極配列面1aと略垂直であるため、SV-MR1〜SV-MR4は磁気部材1の磁極配列面1aに垂直な磁界成分の変化を検出することとなり、磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する構成と比較して位置検出精度を高めることが可能となる。これは、図5で既述のように、磁気部材1の発生磁界のうち磁極配列面1aに垂直な磁界成分のほうが、磁極配列方向と平行な磁界成分と比較して、磁極配列方向への移動に対する大きさの変動が理想的な正弦波に近いためである。
(2) 磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する構成と比較して磁極配列方向に関して磁気部材1の端部に近づいても高精度の位置検出が可能なため、磁気部材1の長さが同じであれば同構成と比較して位置検出範囲を広げることができ、同じ位置検出範囲であれば磁気部材1の長さを短くして小型化とコスト削減を図ることができる。
(3) SV-MR1〜SV-MR4の感磁面が磁気部材1の発生磁界(発生磁束)に対して略平行であるため、磁気部材1の発生磁界を有効利用できて好ましい。
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
実施の形態ではスピンバルブ型磁気抵抗効果素子を4つ(SV-MR1〜SV-MR4)用いる場合を説明したが、変形例ではスピンバルブ型磁気抵抗効果素子を2つとしてもよい。この場合、SV-MR1及びSV-MR3のいずれか並びにSV-MR2及びSV-MR4のいずれかを例えば固定抵抗器とする。図3(A)は、SV-MR3及びSV-MR4を固定抵抗器に替えた場合の回路図である。本変形例では、実施の形態と比較して磁界検出の感度は落ちるものの、磁極配列方向と平行な磁界成分の変化を検出する構成と比較して位置検出精度を高めることは可能である。
あるいは、図3(B)に示すように、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子の使用個数を8つとしてもよい。SV-MR1'〜SV-MR4'は、実施の形態に追加して設けたもので、磁極配列方向に関してSV-MR1〜SV-MR4と同じ位置にあり、SV-MR1〜SV-MR4とピン層磁化方向は逆となっている。SV-MR1'及びSV-MR3'は高電圧端子(電圧Vin)と低電圧端子(GND)との間に直列に接続され、SV-MR2'及びSV-MR4'も高電圧端子(電圧Vin)と低電圧端子(GND)との間に直列に接続される。つまり、SV-MR1とSV-MR3とSV-MR1'とSV-MR3'とがフルブリッジ接続され、SV-MR2とSV-MR4とSV-MR2'とSV-MR4'とがフルブリッジ接続される。そして、SV-MR1及びSV-MR3の接続点とSV-MR1'及びSV-MR3'の接続点との電位差が出力信号Vout1となり、SV-MR2及びSV-MR4の接続点とSV-MR2'及びSV-MR4'の接続点との電位差が出力信号Vout2となる。本変形例では、実施の形態と比較して磁界検出の感度をさらに高めることが可能となる。
実施の形態ではSV-MR1〜SV-MR4のピン層磁化方向が磁気部材1の磁極配列面1aと略垂直である場合を説明したが、これに限定されず、SV-MR1〜SV-MR4が磁気部材1の磁極配列面1aに垂直な磁界成分の変化を検出する構成である限り、SV-MR1〜SV-MR4のピン層磁化方向は任意である。すなわち、SV-MR1〜SV-MR4のピン層磁化方向は、磁気部材1の磁極配列面1aに平行でなく、かつ磁気部材1の磁極配列方向に対して略垂直であればよい。
実施の形態ではSV-MR1及びSV-MR3が磁極配列面1aに垂直に並んでいて、SV-MR2及びSV-MR4も同様である場合を説明したが、変形例では並び方向は磁極配列面1aと平行(縦方向への重ね合わせ)であってもよく、あるいは、磁極配列面1aと任意の角度を成していてもよい。
実施の形態では磁気部材1の磁極配列面1aが平面である場合を説明したが、変形例では磁極配列面1aは円弧面等の曲面であってもよい。
1 磁気部材
1a 磁極配列面
100 磁気式位置検出装置
SV-MR1〜SV-MR4 スピンバルブ型磁気抵抗効果素子
Vout1,Vout2 出力信号

Claims (8)

  1. N極とS極が交互に配列された磁気部材と、
    前記磁気部材の磁極配列面に対向する位置に存在する第1及び第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子とを備え、
    前記磁気部材の磁極配列ピッチをPとしたとき、前記第1及び第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の磁極配列方向に関してP/4だけ相互に離間し、
    前記第1及び第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は、前記磁気部材の前記磁極配列面に平行でなく、かつ前記磁気部材の前記磁極配列方向に対して略垂直であり、
    前記磁気部材の磁極配列面に対向する位置に存在する第3及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子をさらに備え、
    前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の前記磁極配列方向に関して同じ位置にあり、かつ、一方のピン層磁化方向が前記磁気部材の存在する側を向いているのに対して他方のピン層磁化方向は前記磁気部材の存在しない側を向き、
    前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の前記磁極配列方向に関して同じ位置にあり、かつ、一方のピン層磁化方向が前記磁気部材の存在する側を向いているのに対して他方のピン層磁化方向は前記磁気部材の存在しない側を向いている、磁気式位置検出装置。
  2. 請求項1に記載の磁気式位置検出装置において、前記第1乃至のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子を含む回路から、位相が相互に90°ずれた2相の出力信号を得る、磁気式位置検出装置。
  3. 請求項1又は2に記載の磁気式位置検出装置において、
    高電圧端子と低電圧端子との間に前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、
    高電圧端子と低電圧端子との間に前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、
    前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点並びに前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点から2相の出力信号を得る、磁気式位置検出装置。
  4. 請求項1又は2に記載の磁気式位置検出装置において、
    前記磁気部材の磁極配列面に対向する位置に存在する第5乃至第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子をさらに備え、
    前記第5及び第7のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の前記磁極配列方向に関して前記第1のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子と同じ位置にあり、かつ、前記第5のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は前記第1のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向と反対側を向き、前記第7のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は前記第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向と反対側を向き、
    前記第6及び第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、前記磁気部材の前記磁極配列方向に関して前記第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子と同じ位置にあり、かつ、前記第6のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は前記第2のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向と反対側を向き、前記第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向は前記第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向と反対側を向き、
    高電圧端子と低電圧端子との間に、前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、前記第5及び第7のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、前記第6及び第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が直列に接続され、
    前記第1及び第3のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点と前記第5及び第7のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点との電位差、並びに前記第2及び第4のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点と前記第6及び第8のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の接続点との電位差が、2相の出力信号とされている、磁気式位置検出装置。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の磁気式位置検出装置において、各スピンバルブ型磁気抵抗効果素子のピン層磁化方向が、前記磁気部材の前記磁極配列面に対して略垂直である、磁気式位置検出装置。
  6. 請求項1からのいずれかに記載の磁気式位置検出装置において、各スピンバルブ型磁気抵抗効果素子の感磁面が、前記磁気部材の発生磁界に対して略平行である、磁気式位置検出装置。
  7. 請求項1からのいずれかに記載の磁気式位置検出装置において、前記スピンバルブ型磁気抵抗効果素子がトンネル効果型磁気抵抗効果素子である、磁気式位置検出装置。
  8. 請求項1からのいずれかに記載の磁気式位置検出装置において、前記磁気部材の磁極配列面が平面又は曲面である、磁気式位置検出装置。
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