本発明は、被転写体の表面にスタンパの微細な凹凸形状を転写するインプリント用スタンパおよびインプリント方法に関する。
従来、半導体デバイスなどで必要とされる微細パターンを加工する技術として、フォトリソグラフィ技術が多く用いられてきた。しかし、パターンの微細化が進み、要求される加工寸法が露光に用いられる光の波長程度まで小さくなるとフォトリソグラフィ技術での対応が困難となったため、これに代わって、荷電粒子線装置の一種である電子線描画装置が用いられるようになった。この電子線を用いたパターン形成は、i線,エキシマレーザー等の光源を用いたパターン形成における一括露光方法と異なり、マスクパターンを直接描画する方法をとる。よって、描画するパターンが多いほど露光(描画)時間が増加し、パターン完成までに時間がかかるという欠点があり、半導体集積回路の集積度が高まるにつれて、パターン形成に必要な時間が増大して、スループットが低下することが懸念される。そこで、電子線描画装置の高速化を図るために各種形状のマスクを組み合わせて、それらに一括して電子ビームを照射することで複雑な形状の電子ビームを形成する、一括図形照射法の開発が進められているが、パターンの微細化は進む一方で、電子線描画装置の大型化や、マスク位置の高精度制御など、装置コストが高くなるという欠点があった。これに対し、高精度なパターン形成を低コストで行うための技術として、ナノインプリント技術が知られている。このナノインプリント技術は、形成しようとするパターンの凹凸に対応する凹凸(表面形状)が形成されたスタンパを、例えば所定の基板上に樹脂層を形成して得られる被転写体に型押しするものであり、微細パターンを被転写体の樹脂層に形成することができる。ちなみに、このようなパターンが形成された樹脂層(以下、「パターン形成層」ということがある)は、基板上に形成される薄膜層(残膜)と、この薄膜層上に形成される凸部からなるパターン層とで構成されている。そして、このナノインプリント技術は、大容量記録媒体における記録ビットのパターンの形成や、半導体集積回路のパターンの形成への応用が検討されている。
図10にナノインプリント工程の一例について模式図を示す。この例においては、図10(a)に示すように、被転写基板1011の表面にパターン形成のための被転写樹脂1012を塗布した被転写体1010とスタンパ101は、互いの距離を制御できるステージ(図示省略)にそれぞれ固定されている。次に、図10(b)に示すように、ステージを駆動してスタンパ101を被転写樹脂1012に押しつけ、被転写樹脂1012を硬化させる。その後、ステージを駆動しスタンパ101と被転写体1010を剥離することで、図10(c)に示すようにスタンパ101の凹凸パターンが被転写樹脂1012に転写される。
このインプリント技術に関して、インプリント工程時のスタンパの物理的な損傷を抑制するために可撓性重合体スタンパを用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。
ナノインプリント技術においては、被転写基板表面に直径/高さが数十nmから数μmの突起や異物が局所的に存在する場合がある。このとき、スタンパや被転写基板の材料として非可撓性のものを用いると、この局所的な突起や異物の周辺に過剰な圧力がかかり、スタンパや被転写基板が破損するという問題がある。破損したスタンパは通常再利用することができない。また、スタンパが突起や異物に追従せず突起や異物の周辺でパターン転写不良領域、すなわちパターン転写が不完全な領域やパターンが転写されない領域が生じるという問題がある。
特許文献1のように、スタンパに可撓性材料を用いてインプリント中の加圧を分散させることでスタンパや被転写基板の破損を防ぐことが可能である。しかし、数nmオーダーの高精度パターンの転写や数μmオーダーで位置制御を行う場合、特許文献1に示されているようなスタンパでは、所望の形状精度および位置精度が得られない可能性がある。スタンパの破損を抑制し、被転写基板表面に突起や異物が存在した場合でも、突起や異物にスタンパが追従することでパターン転写不良領域を低減するとともに、アライメント精度に優れたスタンパであることが望まれる。
そこで本発明は、上述の問題に鑑み、被転写基板の局所的な突起に追従しパターン転写不良領域をできるだけ少なくすることが可能で、かつ転写時にスタンパの破損が発生しにくく、アライメント精度が良好なインプリント用スタンパおよびインプリント方法を提供することを目的とする。
本発明者らが誠意検討した結果、ヤング率の異なる多層構造のスタンパを用いることで上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、表面に微細な凹凸形状が形成されたスタンパを被転写体に接触させて、前記被転写体の表面に前記スタンパ表面の凹凸形状を転写するインプリント用スタンパにおいて、前記スタンパは、前記凹凸形状が形成されたパターン層と、前記パターン層の凹凸形状が形成された面の反対側の面に配置された緩衝層と、前記緩衝層の前記パターン層と反対側の面に配置された基材層とを有し、前記緩衝層のヤング率が前記パターン層のヤング率よりも小さく、かつ前記基材層のヤング率が前記緩衝層のヤング率よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明によるインプリント用スタンパは、前記緩衝層の厚みが前記パターン層の厚みよりも大きいことを特徴とする。
また、本発明によるインプリント用スタンパは、前記基材層の厚みが前記パターン層の厚みよりも大きいことを特徴とする。
また、本発明によるインプリント用スタンパは、前記緩衝層のヤング率が1.5GPa以下であることを特徴とする。
また、本発明によるインプリント用スタンパは、前記緩衝層の厚みが4.2μm以上であることを特徴とする。
また、本発明によるインプリント用スタンパは、前記パターン層の厚みが100nm以上かつ43μm以下の範囲であることを特徴とする。
また、本発明によるインプリント用スタンパは、前記パターン層は前記緩衝層から分離,交換可能であることを特徴とする。
本発明による別のインプリント用スタンパは、表面に微細な凹凸形状が形成されたスタンパを被転写体に接触させて、前記被転写体の表面に前記スタンパ表面の凹凸形状を転写するインプリント用スタンパにおいて、前記スタンパは、前記凹凸形状が形成されたパターン層と、前記パターン層の凹凸形状が形成された面の反対側の面に配置された緩衝層と、前記緩衝層の前記パターン層と反対側の面に配置された基材層と、前記パターン層と前記緩衝層の間、および前記緩衝層と前記基材層の間のいずれかには少なくとも1層の中間層を有し、前記緩衝層のヤング率が前記パターン層のヤング率よりも小さく、かつ前記基材層のヤング率が前記緩衝層のヤング率よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記緩衝層の厚みが前記パターン層の厚みよりも大きいことを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記基材層の厚みが前記パターン層の厚みよりも大きいことを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記中間層のヤング率が前記パターン層のヤング率よりも小さいことを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記中間層の厚みが前記緩衝層の厚みよりも小さいことを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記緩衝層のヤング率が1.5GPa以下であることを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記緩衝層の厚みが4.2μm以上であることを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記パターン層の厚みが100nm以上から43μm以下の範囲であることを特徴とする。
本発明による別のインプリント用スタンパは、前記パターン層を含む少なくとも1層からなる交換部と、前記交換部の前記凹凸形状が形成された面の反対側の面に配置され、前記基材層を含む少なくとも1層からなる再利用部とを有し、前記交換部を前記再利用部から分離,交換可能であることを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記交換部と、前記再利用部と、その間に接着層を有し、前記接着層は熱や光を加えることで接着性を失うことを特徴とする。
また、本発明による別のインプリント用スタンパは、前記交換部と前記再利用部とが密着固定されていることを特徴とする。
本発明によるインプリント方法は、前記スタンパが、表面に前記凹凸形状が形成された交換部と、前記交換部の裏面に配置された再利用部からなり、前記スタンパと前記被転写体とを接触させる接触工程と、前記被転写体に前記スタンパを加圧して前記凹凸形状を前記被転写体に転写する転写工程と、前記交換部を前記再利用部から分離する工程と、前記被転写体と前記交換部を剥離する工程と、前記再利用部に新たな交換部を密着させる工程とを有することを特徴とする。
また、本発明によるインプリント方法は、前記スタンパの前記交換部がパターン層と中間層を含み、かつ前記再利用部が緩衝層と基材層とを含むことを特徴とする。
本発明により、被転写基板の局所的な突起に追従しパターン転写不良領域をできるだけ少なくすることが可能で、かつ転写時にスタンパの破損が発生しにくいインプリント用スタンパおよびインプリント方法を提供することができる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係るスタンパおよび被転写体の構成概略図である。図1に示すように、本実施形態に係るスタンパ101は、基材層104下に緩衝層103およびパターン層102の順に配置することで構成されている。パターン転写時には、被転写体1010として、被転写基板1011上に被転写樹脂1012を塗布したものを用い、スタンパ101のパターン層102と被転写樹脂1012が対向するように配置される。パターン層102の被転写樹脂1012側の面には、凹凸形状からなる微細パターンが形成されている。スタンパ101の外形は、円形,楕円形,多角形のいずれであってもよく、このようなスタンパ101には、中心穴が加工されていてもよい。このような構成のスタンパでは、各層材料のヤング率や各層の厚さがスタンパの突起追従性に影響を及ぼす。
ここで、本明細書における用語「突起追従性」の定義について説明する。前記したように、被転写基板上に局所的に存在する突起の周辺ではスタンパが突起に完全には追従せず、凹凸パターンが形成されない転写不良領域が生じる。そこで、ある高さの突起に対するスタンパの追従の程度を示す値として、図11に示すように、突起の端から不良転写領域の外周までの距離をLc、突起の高さをhで表し、Lcをhで割った値、Lc/hを「突起追従性」とした。
基材層104は、スタンパが突起に追従するための加圧調整と、インプリント工程におけるアライメントや搬送等に適するよう、次に説明する緩衝層103よりも硬く、ヤング率が大きい材料であればよい。スタンパの形状基材層104の材料としては、例えば、シリコーン,ガラス,アルミニウム,樹脂等の各種材料を加工したものが挙げられる。また、基材層104はその表面に金属層,樹脂層,酸化膜層等が形成された多層構造体であってもよい。パターン層,緩衝層のみのスタンパではスタンパの保持が困難となり、スタンパの変形によりパターン精度やアライメント精度の低下が懸念される。これに対して、基材層104を設けることにより、スタンパの変形を抑え、パターン精度,アライメント精度の向上が図れる。
緩衝層103は、基材層103上に形成される弾性層であって、基材層104を構成する材料や、次に説明するパターン層102と比較してヤング率が小さく、室温で弾性変形する材料で構成される。このようなヤング率の緩衝層103は、局所的な突起に対してスタンパの形状変化を促し、突起に追従可能なようにすることができる。ちなみに本実施形態でのスタンパ101は、被転写基板1011に塗布された被転写樹脂1012が光硬化性である場合、このスタンパ101を介して紫外光等の電磁波を照射する必要があることから、透明性を有するものより選択される。よって、緩衝層103の材料としては透明性を有するものが好ましい。ただし、非転写樹脂1012を光硬化性樹脂に代えて、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等のその他の被加工材料が使用される場合には、不透明なものであってもよい。緩衝層103の材料としては、前記の条件を満たす材料であって、例えば、フェノール樹脂(PF),ユリア樹脂(UF),メラミン樹脂(MF),ポリエチレンテレフタレート(PET),不飽和ポリエステル樹脂(UP),アルキド樹脂,ビニルエステル樹脂,エポキシ樹脂(EP),ポリイミド樹脂(PI),ポリウレタン(PUR),ポリカーボネート(PC),ポリスチレン(PS),アクリル樹脂(PMMA),ポリアミド樹脂(PA),ABS樹脂,AS樹脂,AAS樹脂,ポリビニルアルコール、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリアリレート樹脂,酢酸セルロース,ポリプロピレン,ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリフェニレンサルファイド(PPS),ポリフェニリンオキシド、シクロオレフィンポリマー,ポリ乳酸,シリコーン樹脂,ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。緩衝層103はこれらのいずれかを単独で用いても、異なる樹脂を複数混合して用いてもよい。また、無機フィラーや有機フィラー等の充填剤を含んでいてもよい。
図2に、緩衝層103のヤング率を変化させた場合の突起追従性の変化を示す。このときの各層の条件は、緩衝層103の厚さが1mm、パターン層の厚さが0.1μmであり、パターン層にはヤング率が2.4GPaで光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂、基材層には厚さが1mm,ヤング率が72GPaの石英ガラスを用いた。転写時には、基材層104の上部から1MPaの圧力を加えた。図2より、ヤング率が小さいほど突起追従性が良くなることがわかる。ここで、突起追従性と不良転写領域は比例関係にあり、不良転写領域を約10%以内に抑えるためには、突起追従性Lc/hを100以下にする必要がある。そのため、この条件下では、緩衝層103のヤング率は1.5GPa以下にする必要がある。ただし、各層のヤング率や厚さ、加圧等の条件によって突起追従性は変わるため、適宜設計する必要がある。
図3に、緩衝層103の厚さを変化させた場合の突起追従性の変化を示す。このときの各層の条件は、パターン層102の厚さが0.1μm、緩衝層103にはヤング率が100MPaのアクリル系樹脂,パターン層102にはヤング率が2.4GPaで光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂,基材層104には厚さが1mm,ヤング率が72GPaの石英ガラスを用いた。転写時には、基材層104の上部から1MPaの圧力を加えた。図3より、緩衝層103の厚さが小さくなるほど突起追従性は良くなる傾向にあるが、極小値が存在し、薄くしすぎると逆に突起追従性が悪くなることがわかる。よって、この条件下で突起追従性Lc/hを100以下にするためには、緩衝層103の厚さを4.2μm以上にする必要がある。ただし、この場合も、各層のヤング率や厚さ、加圧等の条件によって突起追従性は変わるため、適宜設計する必要がある。
パターン層102は、前記したように、被転写体1010に転写するための微細パターンを有する層であって、転写時の加圧によって表面に形成された凹凸形状に塑性変形が生じないような材料から構成される。パターン層102を形成する材料としては、前記の条件を満たす材料であって、例えば、フェノール樹脂(PF),ユリア樹脂(UF),メラミン樹脂(MF),ポリエチレンテレフタレート(PET),不飽和ポリエステル樹脂(UP),アルキド樹脂,ビニルエステル樹脂,エポキシ樹脂(EP),ポリイミド樹脂(PI),ポリウレタン(PUR),ポリカーボネート(PC),ポリスチレン(PS),アクリル樹脂(PMMA),ポリアミド樹脂(PA),ABS樹脂,AS樹脂,AAS樹脂,ポリビニルアルコール、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリアリレート樹脂,酢酸セルロース,ポリプロピレン,ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリフェニレンサルファイド(PPS),ポリフェニリンオキシド,シクロオレフィンポリマー,ポリ乳酸,シリコーン樹脂,ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。パターン層102はこれらのいずれかを単独で用いても、異なる樹脂を複数混合して用いてもよい。また、無機フィラーや有機フィラー等の充填剤を含んでいてもよい。また、パターン層102の表面(パターン形成層)には、被転写樹脂1012とスタンパ101との剥離を促進するために、フッ素系,シリコーン系などの離型処理を施すこともできる。また、金属化合物など薄膜を剥離層として形成することもできる。
また、パターン層102は、転写時の耐加圧性と突起追従性を両立可能な範囲の厚さであることが望ましい。図4に、パターン層102の厚さを変えた場合の突起追従性を示す。各層の条件は、緩衝層103の厚さが100μm、緩衝層103にはヤング率が10MPaのアクリル系樹脂,パターン層102にはヤング率が2.4GPaで光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂,基材層104には厚さが1mm,ヤング率が72GPaの石英ガラスを用いた。転写時には、基材層104の上部から1MPaの圧力を加えた。図4より、パターン層102の厚さが薄いほど突起追従性は良くなることがわかる。この条件下で突起追従性Lc/hを100以下にするためには、パターン層102の厚さを100nm以上かつ43μm以下の範囲にすることが好ましい。パターン層102の厚さが100nmよりも小さいと転写時の耐加圧性が低下し、転写不良が起こる。また、厚さが43μmよりも大きくなると、突起追従性が低下し、転写されない領域が広がる。このことから、パターン層102の厚さは100nm以上から43μm以下の範囲にする必要がある。ただし、この場合も、各層のヤング率や厚さ、加圧等の条件によって突起追従性は変わるため、適宜設計する必要がある。
前記実施形態で微細パターンが転写された被転写体は、磁気記録媒体や光記録媒体等の情報記録媒体に適用可能である。また、この被転写体は、大規模集積回路部品や、レンズ,偏光板,波長フィルタ,発光素子,光集積回路等の光学部品,免疫分析,DNA分離,細胞培養等のバイオデバイスへの適用が可能である。
本発明では、局所的な突起に対して追従するための加圧調整とインプリント工程におけるアライメントおよび搬送に適した基材層と、基材層よりもヤング率が小さくスタンパの形状変化を可能とする緩衝層と、突起追従が可能で、かつ転写時の加圧に対しても塑性変形せず、かつ転写時の加圧によってスタンパの凹凸形状に変形が生じないような材料からなるパターン層の多層構造のスタンパにより、被転写基板の局所的な突起にもスタンパのパターン形成面が追従し、スタンパが破損せず、かつ転写不良領域を大幅に低減することができる。
以下、実施例を用いて詳細に説明する。
本発明の一実施例について説明する。まず、本実施例で用いた3層構造スタンパの構成およびその作製方法について説明する。
図1は本発明における請求項1に記載のスタンパおよび被転写体樹脂の構成概略図である。まず、基材層104として直径100mmΦ,厚さ1mmの石英ガラスを用いた。石英ガラスのヤング率は72GPaであった。基材層104表面に、直径が80mmΦの穴が開けられた厚さ1mmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ。その後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は10MPaであった。次に、緩衝層103表面にディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが0.1μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射してパターン層102を形成した。パターン層102に用いた光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。
本実施例においてスタンパ101の外形は円形であったが、本発明はこれに限ったものではない。スタンパ101の外形は加圧方式に応じて、円形,楕円形,多角形のいずれであってもよく、このようなスタンパ101には、中心穴が加工されていてもよい。なお、このようなスタンパ101は、被転写体1010の所定の領域に微細パターンを転写することができれば、被転写体1010とその形状、表面積が異なっていてもよい。
次に、本実施例のスタンパを用いた転写方法について説明する。
図5は、本発明のスタンパおよび被転写体の断面図であり、転写プロセスを示す。図5(a)は、転写前のスタンパ101と被転写樹脂1012が接する前のそれぞれの形状を示している。この状態でスタンパ101は、パターン層102の裏面に緩衝層103が、緩衝層103の裏面に基材層104がそれぞれ接着しており、平板である。被転写体1010は、20mm×20mm,厚さ1mmのSi製被転写基板1011表面に、光硬化性の被転写樹脂1012が塗布されたものを用いた。パターン転写時には、パターン層102のパターン形成面と、被転写樹脂1012が対向するように配置される。樹脂1012の中央部には被転写基板1011の突起形状に倣った高さ10μmの突起があり、他の面より先にスタンパ101と接することになる。図5(b)は、スタンパ101と被転写樹脂1012が接触し、スタンパと樹脂間に加えられた圧力により、スタンパ101が樹脂の突起に倣い変形した状態で転写が進行している様子を示している。本実施例では、基材層104のパターン層と反対側の面より1MPaで加圧した。スタンパ101は、パターン層102よりもヤング率の小さい緩衝層103の効果により樹脂の突起に追従する。このとき、ヤング率の大きい基材層104の効果で突起の周辺により大きな圧力がかかり、緩衝層103が突起により追従するようになる。また、パターン層102は大きなヤング率を持つ樹脂であり、パターン層102表面に形成された微細パターンは転写時の加圧でも塑性変形せず、弾性変形するため、突起部を含む樹脂表面においても、スタンパ101の微細パターンが転写され、突起部にもその反転パターンの形成が可能となっており、転写後に微細パターンが破損することはない。図5(c)は、パターン転写が終了し、被転写樹脂1012とスタンパ101が離れた離型状態を示している。被転写樹脂1012の表面にはスタンパ101のパターンを反転したパターンが転写され、中央の突起部にも形状の乱れはあるがパターンが見える。変形の少ないスタンパを用いると、突起の周辺にはスタンパのパターンが届かないために未転写領域が生ずるが、前記のように変形可能なスタンパを用いることにより、未転写領域を最小限に抑えることができる。図5(d)は、スタンパ101が被転写樹脂1012から離れて、時間経過と共に、突起に倣った形状から従前の平板に復帰した状態を示し、被転写樹脂1012では形成された微細パターンが維持されており、スタンパの破損はみられなかった。以上のようにして作製したスタンパを使用すれば、被転写基板の表面に形成した樹脂膜にスタンパを接触させて、スタンパ表面の凹凸パターンを転写することにより、複雑な形状の溝や構造体を形成するための樹脂パターンを、突起がある基板上の樹脂においても一括転写することが可能となる。
続いて、本実施例のスタンパで突起を有する基板の上にある樹脂層に微細パターンを転写した際の突起追従性を評価した結果について説明する。
本実施例では、高さh=10μmの突起がある基板を用いた。突起の端から転写不良領域の外周までの距離Lcを計測し、それを突起の高さhで割った値Lc/hを突起追従性として評価した。本実施例の場合、Lc/hは2.7であった。また、転写後にスタンパの破損は見られなかった。
実施例1と同様にして、別の3層構造スタンパの構成およびその作製方法について突起追従性を評価した結果を説明する。
本実施例では、基材層104として直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径が80mmΦの穴が開けられた厚さ100μmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ。その後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は10MPaであった。次に、緩衝層103表面にディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが42μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射してパターン層102を形成した。パターン層102に用いた光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。
次に、高さh=1μmの突起がある基板を用いて、突起の端から転写不良領域の外周までの距離Lcを計測し、それを突起の高さhで割った値Lc/hを突起追従性として評価した。本実施例の場合、Lc/hは99.7であった。また、転写後にスタンパの破損は見られなかった。
実施例1と同様にして、別の3層構造スタンパの構成およびその作製方法について突起追従性を評価した結果を説明する。
本実施例では、基材層104として直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径が80mmΦの穴が開けられた厚さ100μmのシリコーン樹脂製の型を設置し、基材層104表面にディスペンス法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を滴下し、緩衝層103の厚さが4.2μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射して緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は100MPaであった。次に、緩衝層103表面にディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが42μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射してパターン層102を形成した。パターン層102に用いた光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。
次に、高さh=10μmの突起がある基板を用いて、突起の端から転写不良領域の外周までの距離Lcを計測し、それを突起の高さhで割った値Lc/hを突起追従性として評価した。本実施例の場合、Lc/hは100であった。また、転写後にスタンパの破損は見られなかった。
実施例1と同様にして、別の3層構造スタンパの構成およびその作製方法について突起追従性を評価した結果を説明する。
本実施例では、基材層104として直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径が80mmΦの穴が開けられた厚さ1mmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ。その後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は1.6GPaであった。次に、緩衝層103表面にディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが0.1μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射してパターン層102を形成した。パターン層102に用いた光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。
次に、高さh=1μmの突起がある基板を用いた。突起の端から転写不良領域の外周までの距離Lcを計測し、それを突起の高さhで割った値Lc/hを突起追従性として評価した。本実施例の場合、Lc/hは100であった。また、転写後にスタンパの破損は見られなかった。
表1に実施例1から実施例4のスタンパにおける各層の条件、および突起追従性の評価結果、およびパターン転写後にスタンパが破損しているかどうかの結果をまとめて示す。ここで、○は「破損なし」、×は「破損あり」を示す。
〔比較例1〕
実施例1と同様にして、別の3層構造スタンパの構成およびその作製方法について突起追従性を評価した結果を説明する。
本比較例では、基材層104として直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径が80mmΦの穴が開けられた厚さ1mmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ。その後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は10MPaであった。次に、緩衝層103表面にディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ30nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが50nmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射してパターン層102を形成した。パターン層102に用いた光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。
次に、高さh=10μmの突起がある基板を用いて、突起の端から転写不良領域の外周までの距離Lcを計測し、それを突起の高さhで割った値Lc/hを突起追従性として評価した。本比較例の場合、Lc/hは2であったが、転写後にスタンパの破損が見られた。
〔比較例2〕
実施例1と同様にして、別の3層構造スタンパの構成およびその作製方法について突起追従性を評価した結果を説明する。
本比較例では、基材層104として直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径が80mmΦの穴が開けられた厚さ100μmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ。その後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は10MPaであった。次に、緩衝層103表面にディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが60μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射してパターン層102を形成した。パターン層102に用いた光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。
次に、高さh=1μmの突起がある基板を用いて、突起の端から転写不良領域の外周までの距離Lcを計測し、それを突起の高さhで割った値Lc/hを突起追従性として評価した。本比較例の場合、転写後にスタンパの破損は見られなかったが、Lc/hは122.5であった。
〔比較例3〕
実施例1と同様にして、別の3層構造スタンパの構成およびその作製方法について突起追従性を評価した結果を説明する。
本比較例では、基材層104として直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径が80mmΦの穴が開けられた厚さ100μmのシリコーン樹脂製の型を設置し、基材層104表面にディスペンス法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を滴下し、緩衝層103の厚さが4μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射して緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は100MPaであった。次に、緩衝層103表面にディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが0.1μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射してパターン層102を形成した。パターン層102に用いた光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。
次に、高さh=10μmの突起がある基板を用いて、突起の端から転写不良領域の外周までの距離Lcを計測し、それを突起の高さhで割った値Lc/hを突起追従性として評価した。本実施例の場合、転写後にスタンパの破損は見られなかったが、Lc/hは105であった。
〔比較例4〕
実施例1と同様にして、別の3層構造スタンパの構成およびその作製方法について突起追従性を評価した結果を説明する。
本比較例では、基材層104として直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径が80mmΦの穴が開けられた厚さ1mmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ。その後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は2.2GPaであった。次に、緩衝層103表面にディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが0.1μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射してパターン層102を形成した。パターン層102に用いた光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。
次に、高さh=1μmの突起がある基板を用いて、突起の端から転写不良領域の外周までの距離Lcを計測し、それを突起の高さhで割った値Lc/hを突起追従性として評価した。本比較例の場合、転写後にスタンパの破損は見られなかったが、Lc/hは148.4であった。
表2に比較例1から比較例4のスタンパにおける各層の条件、および突起追従性の評価結果、およびパターン転写後にスタンパが破損しているかどうかの結果をまとめて示す。ここで、○は「破損なし」、×は「破損あり」を示す。
実施例1と同様にして、特許文献1で開示されているような単層スタンパについて突起追従性を評価した。本比較例では、ヤング率が1.9GPaの材料を用いた。また、基板上の突起としては、高さが1μmの円柱突起を用いた。スタンパの厚さを変えた場合の突起追従性の評価結果を表3に示す。
本実施例では、前記3層スタンパにおけるパターン層と緩衝層の間に中間層を挟んだ4層スタンパについて説明する。まず、本実施例で用いたスタンパの構造および作製方法について説明する。
図6は本発明における請求項7に記載のスタンパの構成概略図である。スタンパ101は、弾性の異なるパターン層102と緩衝層103と基材層104の3層に加え、図6(a)〜(c)で示したようにパターン層102と緩衝層103の間、緩衝層103と基材層104の間の少なくともどちらか一方に配置された1層以上の中間層601から構成され、パターン層102の表面には微細パターンが存在する。本実施例では、図6(a)に示した構成のスタンパを用いた。
基材層104には、直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径80mmΦの穴が開けられた厚さ1mmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は10MPaであった。緩衝層103を硬化させた後、その上に中間層601となる直径82mmΦ,厚さ5μmのPETシートを密着させた。その上からディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが1μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射して中間層601上にパターン層102を形成した。パターン層102に用いた不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と緩衝層103と基材層104の3層構造を有するスタンパ101を得た。本実施例では、交換部701となる中間層601およびパターン層102を形成する前に、交換部701における中間層601と再利用部702における緩衝層103を密着させたが、この交換部701と再利用部702を密着させる工程は、交換部701を形成している最中、あるいは交換部701を形成した後に行われてもよい。
次に、実施例1と同様にして、スタンパの突起追従性を評価した結果を説明する。本実施例では、被転写体1010として、表面に高さ1μmの突起がある被転写基板1011上に光硬化性樹脂1012をディスペンス法により塗布したものを用いた。本実施例の場合、突起追従性Lc/hは27であった。また、転写後にスタンパの破損は見られなかった。
続いて、本実施例のスタンパの一部を交換して、残りの部分を再利用し複数回転写する方法について説明する。
図8に、本実施例におけるナノインプリント工程の模式図を示す。図8(a)は、転写前のスタンパ101と被転写基板1011の表面に光硬化性の被転写樹脂1012を塗布した被転写体1010が接する前のそれぞれの形状に関して、断面の拡大図を示している。図8(a)の状態で、本実施例では、交換部701と再利用部702が機械的に固定されている。(図示省略)図8(a)の状態から、図8(b)に示したようにスタンパ101と被転写樹脂1012を接触させ、スタンパ101と被転写体1010を1MPaで加圧する。基材層104の上部より紫外光を照射して、被転写樹脂1012を硬化させると、パターン層102の凹凸形状の反転パターンが被転写樹脂1012に転写される。転写が終了し、スタンパ101と被転写体1010を剥離させると、図8(c)のようになる。次に、図8(d)に示したように、密着している交換部701と再利用部702を分離する。本実施例では、ここで交換部701と再利用部702の機械的な固定をはずし、中間層601と緩衝層103の間に楔状の部材を差し込み、交換部701を再利用部702から引き剥がした。最後に、図8(e)に示したように、新しい交換部701における中間層601を、再利用部702における緩衝層103に密着させ、再びパターン層102を中間層601と緩衝層103を介して基材層104に側面から機械的に固定する。ここで、交換部701と再利用部702の分離および密着の方式に関しては、本実施例に記載の方式に限ったものではない。以上のようにすれば、転写の度にスタンパ全体を交換する必要がなく、低コスト化が可能となる。
本実施例では、本発明のスタンパの一部を交換して、残りの部分を再利用し複数回転写する別の方法について説明する。まず、本実施例で用いるスタンパの構成および作製方法について説明する。
図7に、本実施例で用いたスタンパの構成図を示す。スタンパ101は、パターン層102と中間層601からなる交換部701、および緩衝層103と基材層104からなる再利用部702から構成されている。
基材層104には、直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径80mmΦの穴が開けられた厚さ1mmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は10MPaであった。緩衝層103を硬化させた後、その上に中間層601となる加熱によって接着性がなくなる非可逆性の接着シートと、直径82mmΦ,厚さ5μmのPETシートを設置した。その上からディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが1μmになるように加圧した状態で基材層104側から紫外光を照射して中間層601上にパターン層102を形成した。パターン層102に用いた不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、パターン層102と中間層601と緩衝層103と基材層104の4層構造を有するスタンパ101を得た。本実施例では、交換部701となる中間層601およびパターン層102の形成時に、交換部701における中間層601と再利用部702における緩衝層103を接着させたが、この交換部701と再利用部702を接着させる工程は、交換部701を形成した後に行われてもよい。
次に、本発明のスタンパの一部を交換して、残りの部分を再利用し複数回転写する方法について説明する。
図8に、本実施例におけるナノインプリント工程の模式図を示す。図8(a)は、転写前のスタンパ101と被転写基板1011の表面に光硬化性の被転写樹脂1012を塗布した被転写体1010が接する前のそれぞれの形状に関して、断面の拡大図を示している。図8(a)の状態から、図8(b)に示したようにスタンパ101と被転写樹脂1012を接触させ、スタンパ101と被転写体1010を1MPaで加圧する。基材層104の上部より紫外光を照射して、被転写樹脂1012を硬化させると、パターン層102の凹凸形状の反転パターンが被転写樹脂1012に転写される。転写が終了し、スタンパ101と被転写体1010を剥離させると、図8(c)のようになる。次に、図8(d)に示したように、密着している交換部701と再利用部702を分離する。本実施例では、スタンパを加熱することによって、中間層601に含まれる接着シートの接着性をなくし、その後中間層601と緩衝層103の間に楔状の部材を差し込み、交換部701を再利用部702から引き剥がした。最後に、図8(e)に示したように、新しい交換部701における中間層601の接着シート面を、再利用部702における緩衝層103に密着させる。以上のようにすれば、転写の度にスタンパ全体を交換する必要がなく、低コスト化が可能となる。
本実施例では、実施例5と同様の手順で作製したスタンパの交換部701(図7参照)を交換して、再利用部702を再利用し複数回転写する方法について説明する。
図9に、本実施例におけるナノインプリント工程の模式図を示す。図9(a)は、転写前のスタンパ101と被転写基板1011の表面に光硬化性の被転写樹脂1012を塗布した被転写体1010が接する前のそれぞれの形状に関して、断面の拡大図を示している。図9(a)の状態で、本実施例では、交換部701と再利用部702は機械的に固定されている。(図示省略)図9(a)の状態から、図9(b)に示したようにスタンパ101と被転写樹脂1012を接触させ、スタンパ101と被転写体1010を1MPaで加圧する。基材層104におけるパターン層と反対側の面から紫外光を照射して、被転写樹脂1012を硬化させると、パターン層102の凹凸形状の反転パターンが被転写樹脂1012に転写される。ここで、交換部701と再利用部702の機械的な固定をはずし、交換部701と被転写体1010を再利用部702から分離すると、図9(c)のようになる。その後、図9(d)に示したように、交換部701と被転写体1010を剥離すると、パターン層102の凹凸形状の反転パターンが被転写樹脂1012に転写されている。最後に、図9(e)に示したように、新しい交換部701における中間層601を、再利用部702における緩衝層103に密着させ、交換部701と再利用部702を機械的に固定する。以上のようにすれば、転写の度にスタンパ全体を交換する必要がなく、低コスト化が可能となる。
本実施例では、本発明のスタンパの一部を交換して、残りの部分を再利用し複数回転写する別の方法について説明する。まず、本実施例で用いるスタンパの構成および作製方法について説明する。
図7に、本実施例で用いたスタンパの構成図を示す。スタンパ101は、パターン層102と中間層601からなる交換部701、および緩衝層103と基材層104からなる再利用部702から構成されている。
基材層104には、直径100mmΦ,厚さ1mm,ヤング率72GPaの石英ガラスを用いた。基材層104表面に、直径80mmΦの穴が開けられた厚さ1mmのシリコーン樹脂製の型を設置し、キャスティング法により緩衝層103となるアクリル系の光硬化性樹脂を流し込んだ後、紫外光を照射して硬化させ、緩衝層103を形成した。緩衝層103に用いたアクリル系の光硬化性樹脂の紫外光硬化後におけるヤング率は10MPaであった。緩衝層103を硬化させた後、その上に直径82mmΦ,厚さ5μmのPETシートを設置した。その上からディスペンス法によりパターン層102となる光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を滴下し、その上に幅50nm,深さ80nm,ピッチ100nmの溝パターンが形成されたSi製のマスターモールドを設置し、パターン層102の厚さが1μmになるように加圧した状態で、紫外光を照射してPETシート上にパターン層102を形成した。パターン層102に用いた不飽和ポリエステル樹脂の紫外光硬化後のヤング率は2.4GPaであった。その後、パターン層102とマスターモールドを剥離し、PETシートのパターン層と反対側の面に、紫外光照射によって接着性がなくなる非可逆性の接着シートを設置し、その接着シートを緩衝層103の基材層104と反対側の面に接着させた。本実施例では、PETシートと接着シートの2層が中間層601となる。このようにして、パターン層102と2層からなる中間層601と緩衝層103と基材層104を有するスタンパ101を得た。
次に、本発明のスタンパの一部を交換して、残りの部分を再利用し複数回転写する方法について説明する。
図9に、本実施例におけるナノインプリント工程の模式図を示す。図9(a)は、転写前のスタンパ101と被転写基板1011の表面に光硬化性の被転写樹脂1012を塗布した被転写体1010が接する前のそれぞれの形状に関して、断面の拡大図を示している。図9(a)の状態から、図9(b)に示したようにスタンパ101と被転写樹脂1012を接触させ、スタンパ101と被転写体1010を1MPaで加圧する。基材層104の上部より紫外光を照射して、被転写樹脂1012を硬化させると、パターン層102の凹凸形状の反転パターンが被転写樹脂1012に転写される。このとき、紫外光照射により中間層601に含まれる非可逆性接着シートの接着性が失われる。転写が終了し、交換部701と被転写体1010を再利用部702から分離すると、図9(c)のようになる。その後、図9(d)に示したように、交換部701と被転写体1010を剥離すると、パターン層102の凹凸形状の反転パターンが被転写樹脂1012に転写されている。最後に、図9(e)に示したように、新しい交換部701の中間層601に含まれる接着シートを、再利用部702の緩衝層103に接着させる。以上のようにすれば、転写の度にスタンパ全体を交換する必要がなく、低コスト化が可能となる。
本発明の請求項1におけるスタンパおよび被転写体樹脂の構成概略図。
本発明のスタンパを用いた際の突起追従性と緩衝層のヤング率との関係図。
本発明のスタンパを用いた際の突起追従性と緩衝層の厚さとの関係図。
本発明のスタンパを用いた際の突起追従性とパターン層の厚さとの関係図。
本発明のパターン転写方法の説明図。
本発明によるスタンパ構造の模式図。
本発明によるインプリント工程に用いるスタンパ構造の模式図。
本発明によるインプリント方法の模式図。
本発明による別のインプリント方法の模式図。
ナノインプリントによる微細パターン形成方法の一例を示す工程模式図。
突起追従性の説明図。
符号の説明
101 スタンパ
102 パターン層
103 緩衝層
104 基材層
601 中間層
701 交換部
702 再利用部
1010 被転写体
1011 被転写基板
1012 被転写樹脂