JP5010719B2 - タービンロータの補修溶接方法 - Google Patents
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Description
サブマージアーク溶接は、溶接部に沿って粒状のフラックスを供給しながら、その中に溶接ワイヤを挿入して溶接を行うものである。このとき、供給されたフラックスは溶接が行われている間に堆積している必要がある。一方、タービンロータを補修するには、回転軸を水平に支持したタービンロータを回転させながら肉盛り溶接を行うので、図7に示すように、フラックスFをタービンロータ10の円弧状をなす施工面15に堆積させる必要がある。したがって、タービンロータ10の半径が大きい場合にはホッパ20から供給されるフラックスFを施工面15に堆積させるのは容易であるが、タービンロータ10の半径が小さくなると施工面15の曲率が小さくなるために供給されるフラックスFが落下してしまい、サブマージアーク溶接に必要な量のフラックスFを施工面15に堆積させることが困難になる。したがって、例えば直径がφ600mm以下の小径のタービンロータ10の補修をサブマージアーク溶接で行うことは困難であった。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、小径のタービンロータであっても溶接工程を通じて施工面に安定してフラックスを堆積させることで、タービンロータの補修をサブマージアーク溶接で行うのが容易な方法を提供することを目的とする。
本発明はこの前提の下、施工面からのフラックスの落下を防止するじゃま部材を、タービンロータに近接して配置することを特徴とする。つまり、じゃま部材によりフラックスが施工面から落下するのを防止して、サブマージアーク溶接を行うのに足りる量のフラックスを堆積させる。
本発明において、肉盛り溶接が連続的に行われ、肉盛り溶接部を含むタービンロータの径が大きくなるのに対応して、じゃま部材の位置を制御することが好ましい。この場合、じゃま部材とタービンロータの間隔を一定に保つことが好ましいが、サブマージアーク溶接を行うのに足りる量のフラックスが堆積できるのであれば、一定である必要はない。
サブマージアーク溶接におけるフラックスは供給ホッパより自由落下されるものがほとんどである。第1供給ホッパは、これに従えばよい。しかし、第2供給ホッパは、タービンロータの回転方向とは逆向きにフラックスを供給する必要があるが、自由落下に頼るフラックス供給ではこれを実現することはできない。そこで、第2のホッパに、フラックスを強制的に供給する機能を持たせるのである。
はじめに、タービンロータ10を肉盛り溶接により補修する主要な工程を図1に基づいて説明する。
タービンロータ10の翼溝12に亀裂Cが入り損傷していることを定期的な検査で発見したものとする(図1(a))。
そうすると、亀裂Cが入っていない翼溝12の部分も含めて、タービンロータ10の外周から亀裂Cを除去できる深さまでを削り取ることで、損傷のないタービンロータ10を得る(図1(b))。なお、このタービンロータ10は、当初よりも径が縮小されている。次に、損傷が除かれたタービンロータ10の外周に肉盛り溶接による補修部13を設け(図1(c))、しかる後に、翼溝12を形成するとタービンロータ10の補修は終了する(図1(d))。本実施の形態はこの肉盛り溶接をサブマージアーク溶接により行う。新たに形成された翼溝12を介して翼をタービンロータ10に取付けることで、タービンロータ10が再生される。本実施の形態は、以下に図2〜図4を参照しながら説明するように、上記工程の中で、肉盛り溶接をする工程に特徴を有している。
本発明はこの前提の下、施工面からのフラックスFの落下を防止するじゃま部材40を、タービンロータ10に近接して配置することで、サブマージアーク溶接を行うのに足りる量のフラックスFを堆積させる。
補修されるタービンロータ10には、肉盛り溶接でよく行われるように、溶接施工面と同一面を形成するように、耳板11がその側面に取付けられている。
肉盛り溶接装置50は、タービンロータ10の軸線を通る鉛直方向の直上(以下、単に頂上と略記する)に溶接トーチ30を設けている。この溶接トーチ30よりもタービンロータ10の回転方向の上流側に設けられる第1ホッパ21から供給されるフラックスFは、溶接トーチ30の溶接ワイヤ31を覆うようにタービンロータ10上に堆積される。第1ホッパ21に収容されるフラックスFは、自由落下により第1ホッパ21からタービンロータ10に向けて吐出される。
この中で、周方向じゃま部44は、第1ホッパ21から供給されるフラックスFがタービンロータ10の回転に伴ってその周方向に沿って落下するのを防止する。そのために、平板状の周方向じゃま部44は、その下面がタービンロータ10及び耳板11と近接して配置される。また、周方向じゃま部44は、タービンロータ10と対向する所定の距離を確保するべく、その下面にタービンロータ10の外周面に沿うよう傾斜面が形成されている。
次に、一対の棒状部材からなる幅方向じゃま部45は、タービンロータ10の幅方向の両側に耳板11に対向して配置されることで、第1ホッパ21から供給されるフラックスFがタービンロータ10の幅方向から落下するのを防止する。そのために、各々の幅方向じゃま部45もまた、その下面が耳板11と近接して配置される。供給されるフラックスFは、周方向じゃま部44によりタービンロータ10上に堆積されるが、堆積が進むとタービンロータ10の幅方向からフラックスFが落下するおそれがある。そこで、幅方向じゃま部45を設けることで、周方向じゃま部44と協働して、サブマージアーク溶接に必要な量のフラックスFを堆積させる。
周方向じゃま部49は、第1ホッパ21から供給されるフラックスFがタービンロータ10の回転方向とは逆向きの周方向に沿って落下するのを防止する。そのために、平板状の周方向じゃま部49は、その下面がタービンロータ10及び耳板11と近接して配置される。また、周方向じゃま部49は、タービンロータ10と対向する所定の距離を確保するべく、その下面がタービンロータ10の外周面に沿う傾斜面が形成されている。
ここで、第1ホッパ21から供給されるフラックスFは、タービンロータ10の回転に伴って運ばれるため、タービンロータ10の回転方向とは逆向きの周方向に落下する可能性は小さい。しかし、第1じゃま部材41によりフラックスFの流れが塞き止められるために、堆積されたフラックスFの一部がタービンロータ10の回転方向とは逆向きの周方向に落下することも想定される。そこで、サブマージアーク溶接に必要な量のフラックスFを確実に堆積させるために、周方向じゃま部49を設けている。
なお、この実施形態では、支持機構53a、53bを昇降させることで、第1じゃま部材41及び第2じゃま部材46とタービンロータ10との距離を一定に制御することとしているが、本発明はこれに限定されず、支持機構53a、53bを互いに離間する向きに移動させることで、距離を一定に制御することもできるし、昇降と互いに離間する向きへの移動を組み合わせることもできる。
また、肉盛り溶接装置50は、第1じゃま部材41及び第2じゃま部材46とタービンロータ10との間隔を自動的に一定に保つことができるので、複数層の肉盛り溶接を実施する際にタービンロータ10の回転を止めることなく必要な層の肉盛り溶接を連続的に行うことができる。
また、第1じゃま部材41及び第2じゃま部材46を昇降することができるので、肉盛り溶接装置50は、径の異なるタービンロータ10に柔軟に対応できる。
例えば、図5(a)に示すように頂上からタービンロータ10の回転方向の下流側に変位した位置に溶接トーチ30を配置してもよいし、図5(c)に示すようにさらに回転方向の下流側に溶接トーチ30を変位させてもよい。また、図5(c)に示すように、頂上からタービンロータ10の回転方向の下流側に変位した位置に溶接トーチ30を配置してもよい。
これらの場合、タービンロータ10自体が第2じゃま部材46として機能することが期待されるので、第1じゃま部材41に対応する部材を設ける一方、第2じゃま部材46に対応する部材を省略することができる。また、これらの場合、第1ホッパ21、溶接トーチ30、じゃま部材41は、この順で重力方向に並ぶように配置される。じゃま部材41のタービンロータ10に対する角度は、設置位置に応じて調整される。
なお、図5には要部以外の記載を省略しているが、図2〜図4に記載した種々の要素を図5の例に適用できることは言うまでもない。次の図6も同様である。
そのために、フラックス吐出ノズル23は、第1じゃま部材41と同程度の幅を有している。
また、第2ホッパ22は、タービンロータ10の回転方向の上流側に向けて強制的にフラックスFを供給する。強制的にフラックスを供給させる機能として、モータを内蔵させることができる。
20…ホッパ、21…第1ホッパ、22…第2ホッパ
30…溶接トーチ、31…溶接ワイヤ
40…じゃま部材
41…第1じゃま部材、44…周方向じゃま部、45…幅方向じゃま部
46…第2じゃま部材、49…周方向じゃま部
50…肉盛り溶接装置
51…ベース、52a,52b…コラム、53a,53b…支持機構
60…コントローラ、61…測距センサ
F…フラックス
Claims (4)
- 回転軸が水平に支持されたタービンロータをその回転軸を中心に回転させながら、溶接施工面に第1供給ホッパからフラックスを供給し、堆積された前記フラックス中に溶接トーチのワイヤを挿入するサブマージアーク溶接で肉盛り溶接を行う、タービンロータの補修溶接方法において、
前記施工面からの前記フラックスの落下を防止するじゃま部材を、前記タービンロータに近接して配置することを特徴とするタービンロータの補修溶接方法。 - 前記肉盛り溶接が連続的に行われる間、
肉盛り溶接部を含むタービンロータの径が大きくなるのに対応して、じゃま部材の位置を制御する、
請求項1に記載のタービンロータの補修溶接方法。 - 前記じゃま部材の前記タービンロータとの対向端に耐熱柔軟部材を設け、前記耐熱柔軟部材を前記タービンロータに接触させることで、前記じゃま部材と前記タービンロータとの隙間を塞ぐ、
請求項1又は2に記載のタービンロータの補修溶接方法。 - 前記第1供給ホッパに加えて前記第1供給ホッパよりも前記タービンロータの回転方向の下流側に第2供給ホッパを設け、前記第2供給ホッパのフラックス吐出ノズルをじゃま部材として機能させ、かつ前記第2供給ホッパから前記フラックスが前記回転方向の上流側に向けて強制的に供給される、
請求項1又は2に記載のタービンロータの補修溶接方法。
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