JP5010190B2 - 画像検出装置及び、イメージング・システム - Google Patents

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Description

本発明は一般的には、ピクセル型検出器を用いたイメージング・システムに関し、さらに具体的には、イメージング・システムのピクセル型半導体検出器に関する。
ガンマ・カメラ及び計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムのような撮像装置は医療分野で用いられて、それぞれ例えば患者のような被検体から発する140keVの範囲のγ線の放射性放出事象を検出し、また被検体によって減弱されなかった透過X線を検出する。これらの検出から、典型的には対象内部での放出源の分布及び/又は対象の減弱の分布を図形的に表わす画像の形態にある出力が形成される。撮像装置は、放出数を検出する1又は複数の検出器を有し、また対象を透過したX線を検出する1又は複数の検出器を有し得る。検出された放出及びX線の各々を「カウント」と呼ぶことができるが、検出された放出が「信号電流」として一括で計数される場合がある。検出器はまた、異なる空間的位置で受け取られたカウントの数を決定する。次いで、イメージャは位置依存型のカウント記録を用いて、典型的には処理されたカウント記録を表わす異なる色又は陰影を有する図形的画像の形態でγ線発生源及びX線減弱体の分布を決定する。
ピクセル型半導体検出器は、例えばカドミウム亜鉛テルライド(CZT)で作製され、γ線及びX線を検出する経済的な方法を提供することができる。明確に述べると、少なくとも一つの公知のイメージング・システムは室温半導体放射線検出器(RTD)を含んでおり、この検出器を用いて比較的高い画質を有する画像を形成する。動作時には、RTDは、光電効果、コンプトン効果及び/又は電子−電子散乱の少なくとも一つを用いて放射線フォトンを電荷(Q)へ変換する。フォトンを電荷へ直接変換すると、公知のシンチレータ技術で生ずる発光のステップ及び光検出のステップを省略して対応する非効率性を解消するのが容易になる。しかしながら、室温で動作するためには、RTDは、物質内の自由電荷担体(N)の量を減少させて比較的高いバイアス電圧(バイアス高電圧HV)の印加を可能にするのに十分に広いバンド・ギャップ・エネルギ(BG)を有していなければならない。これにより、本書で暗電流(I)と呼ぶ背景電流を発生せずに信号パルスの検出を行なうことが可能になる。動作時に、暗電流は、読み出し電子回路を飽和させ、且つ/又は信号電荷(Q)を測定するときの信号対雑音比(SNR)を低下させる場合がある。信号電荷(Q)を測定するために、検出用の電極及び電子回路がRTDの表面に施される。電荷移動度(μ)及び担体再結合寿命(τ)が十分に高い場合には、バイアス高電圧によって電極及び電子回路での電荷(Q)の検出が行なわれる。
米国特許第6,114,696号 米国特許第6,373,062号
しかしながら、カドミウム亜鉛テルライド(CZT)材料を用いて作製された公知の検出器は、比較的広いバンド・ギャップによって十分に制御されない暗電流(I)を有する場合がある。従って、少なくとも幾つかの公知のイメージング・システムは、冷却システムを含んで、自由電荷担体(N)を減少させ且つ/又は暗電流(I)を減少させるのを容易にしている。例えば、少なくとも一つの公知のイメージング・システムは、液体窒素を用いた冷却システムを含んで、自由電荷担体(N)を減少させ且つ/又は暗電流(I)を減少させるのを容易にしている。しかしながら、液体窒素系を用いることは一般的には、商用のイメージング・システムでの用途としては非実用的である。もう一つの公知のシステムは、循環冷水を用いてCZT及び電子回路の温度を制御しているが、これもまた、製造及び安全性の観点でかなりの経費を要する。さらに、少なくとも一つの公知のイメージング・システムは、ペルチェ素子を用いて自由電荷担体(N)を減少させ且つ/又は暗電流(I)を減少させるのを容易にして、これにより、例えば電子回路のような近傍の物体の熱によって発生し得る暗電流(I)の不都合な増大を回避するのを容易にしている。
従って、公知の冷却システムは、暗電流(I)を減少させることに対してプラスの効果を奏し得るが、電荷移動度(μ)及び担体再結合寿命(τ)には悪影響を及ぼし得る。例えば、真性半導体素子内部の不純物及びバンド端状態の量が増大する場合すなわち等級の低い検出器及び/又はドープされた半導体装置の場合には、電荷(Q)と、浅いトラップ及び深いトラップと呼ばれる局所的な状態との相互作用が増大することにより、冷却によって電荷移動度(μ)が低下し担体再結合寿命(τ)が短くなる場合がある。さらに明確に述べると、カドミウム亜鉛テルライド(CZT)材料を用いて半導体素子が作製された場合には、電荷移動度(μ)及び担体再結合寿命(τ)の積が限界に近く、上述のようなトラップが制限的要因になる可能性がある。
一観点では、画像検出装置内部の分極を低減する方法を提供する。この方法は、画像検出装置に少なくとも1個の遮断接点を結合するステップと、画像検出装置内部の分極を低減するのを容易にするために画像検出装置を加熱するステップとを含んでいる。
他の観点では、画像検出装置を提供する。この画像検出装置は、基材と、基材に結合されている遮断接点と、画像検出装置内部の分極を低減するのを容易にするために上述の基材の温度を高めるように構成されている熱源とを含んでいる。
さらにもう一つの観点では、イメージング・システムを提供する。このイメージング・システムは、フォトン束を放出するように構成されている放射線源と、フォトン束を受け取ってフォトン束に基づいて応答を発生するように構成されている画像検出装置とを含んでおり、画像検出装置は、カドミウム亜鉛テルライド(CZT)を用いて作製された基材と、基材に結合されている遮断接点と、画像検出装置内部の分極を低減するのを容易にするために基材の温度を高めるように構成されている熱源とを含んでいる。
図1及び図2は、イメージング・システムの一例、例えば計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムを示している。システム10は、「第三世代」CTイメージング・システムに典型的なガントリ12を含むものとして示されている。ガントリ12はX線管14(本書ではX線源14とも呼ばれる)を有しており、X線管14は、X線ビーム16をガントリ12の反対側に設けられている検出器アレイ18に向かって投射する。検出器アレイ18は、複数の検出器素子20を含む複数の検出器横列(図示されていない)によって形成されており、検出器素子20は一括で、アレイ18と線源14との間の患者22のような対象を透過した投射X線を感知する。各々の検出器素子20は、入射X線ビームの強度を表わし従って対象又は患者22を透過する際のビームの減弱を推定するのに用いることのできる電気信号を発生する。X線投影データを取得するための1回の走査の間に、ガントリ12及びガントリ12に装着されている構成部品は回転中心24の周りを回転する。図2は、検出器素子20の単一の横列(すなわち検出器横列1列)のみを示している。しかしながら、マルチ・スライス検出器アレイ18は、1回の走査中に複数の準平行スライス又は平行スライスに対応する投影データが同時に取得され得るように検出器素子20の複数の平行な検出器横列を含んでいる。
ガントリ12の構成要素の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構26によって制御される。制御機構26は、X線制御器28とガントリ・モータ制御器30とを含んでおり、X線制御器28はX線源14に電力信号及びタイミング信号を供給し、ガントリ・モータ制御器30はガントリ12の構成要素の回転速度及び位置を制御する。制御機構26内に設けられているデータ取得システム(DAS)32が検出器素子20からのアナログ・データをサンプリングして、後続の処理のためにこのデータをディジタル信号へ変換する。画像再構成器34が、サンプリングされてディジタル化されたX線データをDAS32から受け取って高速画像再構成を実行する。再構成された画像はコンピュータ36への入力として印加され、コンピュータ36は記憶装置38に画像を記憶させる。画像再構成器34は、特殊化したハードウェアであってもよいし、コンピュータ36で実行されるコンピュータ・プログラムであってもよい。
コンピュータ36はまた、キーボードを有するコンソール40を介して操作者から指令及び走査用パラメータを受け取る。付設されている表示器42例えば陰極線管又は他の適当な表示装置によって、操作者は、再構成された画像及びコンピュータ36からのその他のデータを観察することができる。操作者が供給した指令及びパラメータはコンピュータ36によって用いられて、DAS32、X線制御器28及びガントリ・モータ制御器30に制御信号及び情報を供給する。加えて、コンピュータ36は、電動式テーブル46を制御するテーブル・モータ制御器44を動作させて、患者22をガントリ12内で配置する。具体的には、テーブル46は患者22の各部分をガントリ開口48を通して移動させる。
一実施形態では、コンピュータ36は、フレキシブル・ディスク、CD−ROM、DVD、又はネットワーク若しくはインターネット(商標)のような他のディジタル・ソース等のコンピュータ読み取り可能な媒体52からの命令及び/又はデータを読み取る命令読み取り又は受け取り装置50、例えばフレキシブル・ディスク・ドライブ、CD−ROMドライブ、DVDドライブ、光磁気ディスク(MOD)装置又はイーサネット(商標)装置等のネットワーク接続装置を含めたその他任意のディジタル装置、並びに開発途上のディジタル手段を含んでいる。他の実施形態では、コンピュータ36はファームウェア(図示されていない)に記憶されている命令を実行する。コンピュータ36は、本書に記載する作用を実行するようにプログラムされており、本書で用いられるコンピュータという用語は当技術分野でコンピュータと呼ばれている集積回路のみに限らず、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブル論理コントローラ、特定応用向け集積回路、及び他のプログラム可能な回路を広範に指しており、これらの用語は本書では互換的に用いられている。以上に述べた特定の実施形態は第三世代CTシステムを参照しているが、本書に記載する方法は第四世代CTシステム(静止型検出器−回転式X線源)にも第五世代CTシステム(静止型検出器及び静止型X線源)にも同等に適用可能である。加えて、CT以外の撮像モダリティにおいても本発明の利点が得られると想到される。加えて、本書に記載する方法及び装置は計算機式断層写真法イメージング・システムにおいて記載されているが、ガンマ・カメラ、及び/又は産業環境若しくは運輸環境で、例えば限定しないが空港や他の運輸拠点での手荷物走査システムのような非破壊試験に典型的に用いられるシステム等のような他の医用及び非医用イメージング・システムにおいても本発明の利点が得られると想到される。
図3は、撮像装置検出器の一例100の断面立面図であり、この検出器100は、本発明の一実施形態によればイメージング・システム10と共に用いることができ、例えば検出器において放射線相互作用事象を局所化することに関連して用いることのできる複数のピクセル型半導体検出器素子102と、検出器基材104とを含んでいる。検出器100は、放射線応答性半導体物質例えばカドミウム亜鉛テルライド(CZT)結晶で形成されていてよい。検出器素子102は、検出器基材104の第一の表面110(下面として図示する)に結合されている本書でアノードとも呼ばれる対応する複数のピクセル電極108をピクセル化することにより基材104の上に形成されることができる。ピクセル電極108の断面の寸法及び形状、並びにピクセル電極108の各々の間の間隔は、各々のピクセル型検出器素子102の位置及び寸法を決定するのを容易にする。明確に述べると、各々のピクセル型検出器素子102は、検出器基材104の第二の表面112(上面として図示する)の近傍に、対応するピクセル電極108の長手軸114と実質的に整列して位置している。検出器100の固有空間分解能は、各々のピクセル型検出器素子102の寸法及び各々の検出器素子102の間の間隔によって画定することができる。
さらに、この実施形態の例では、第二の表面112は、単一のカソード電極154によって実質的に覆われていてよい。第一の表面110は、微小な例えば1平方ミリメートル(mm)〜約10mmの矩形(又は六角形その他)のアレイを有し、一般的には、方形のピクセル電極108がアノードとして構成されている。動作時にピクセル電極108とカソード154との間に印加される電圧差は、基材104に電場(検出器場)を生成する。検出器場は、例えば約1キロボルト毎センチメートル〜3キロボルト毎センチメートルであってよい。この実施形態の例ではピクセル電極108は全体的に方形であるものとして説明しているが、ピクセル電極108の他の形状、具体的には円形又は面積充填形状等も思量されるので、方形の形状を限定と理解すべきでない。
動作について述べると、線源140からのコリメートされていないフォトン束144、例えば放出ガンマ及び透過X線144が第二の表面112に向かう。フォトンは、基材104に入射すると、一般的には、吸収及び続く電離によってその全てのエネルギを基材104において失い、基材104の微小な局所領域に可動電子156及び正孔158の対を残す。検出器場の結果として、正孔158はカソード154に向かって運ばれ、電子156はピクセル電極108に向かって運ばれて、これにより、ピクセル電極108及びカソード154に電荷を誘導する。ピクセル電極108に誘導された電荷は検出されて、例えば、フォトンが検出された時刻、検出されたフォトンが基材104にどれほどのエネルギを堆積させたか、及びフォトン相互作用が生じた基材104内の位置を読み出し電子回路160を用いて識別する。さらに、カソード154に誘導された電荷も読み出し電子回路160によって用いられて、タイミング及びエネルギ情報を決定することができる。
代替的な実施形態では、撮像装置は、複数の開口を貫通画定して含むコリメータ(図示されていない)を含んでいる。動作時には、線源140からのフォトン例えば放出ガンマ及び透過X線は、コリメータに向かい且つ/又はコリメータを通過する。フォトンはコリメータを用いてコリメートされて、コリメートされたフォトン束が表面112に向かう。
図4は、検出器100内部の分極を低減するのを容易にする方法の一例200を示す流れ図である。本書で用いる場合には、分極とは、検出器100内部に生ずる電荷の蓄積と定義される。従って、方法200は、分極を招く条件すなわち電荷トラップを低減し且つ/又は解消するのを容易にする。
この実施形態の例では、方法200は、画像検出装置に少なくとも1個の遮断接点を結合するステップ202と、撮像装置の動作温度を高めるのを容易にするために画像検出装置を加熱するステップ204とを含んでいる。
図5は、少なくとも1個の遮断接点300を含む検出器の一例100の断面図である。本書で用いる場合には、遮断接点(電極)とは、印加電圧が強制したとしても電荷担体が接点から半導体物質に入ることのないように妨げるためのものである。例えば、遮断接点300は、半導体検出器の表面にカソードとして施される金及び/又は白金層を用いて作製されることができ、担体の運動に対してポテンシャル・エネルギ・ステップを与える。このように、ショットキー障壁接合の場合と同様に、担体運動は、エネルギを放出する方向では促進され、エネルギを吸収する方向では妨げられる。ショットキー接合及び遮断接点は、ドープされた半導体の層を積層させる又は酸化物のような誘電体材料の中間層を組み入れる等のような他の態様で、また他の手段によって製造することもできる。全ての金属電極が遮断接点となる訳ではない。例えばインジウムのカソードは電子担体の遮断接点とはならない。本書に記載するような遮断接点の独特の特性は、検出器の温度が低下すると共に光電流が増大することである。暗電流を制限するのに有用な遮断層は、電子が比較的高い易動性を有する場合にはカソード側に設けられ、正孔又は正の担体が比較的高い易動性を有する場合にはアノード側に設けられる。CZTでは電子が比較的高い易動性を有する。従って、遮断接点300は検出器100の表面に施される。
この実施形態の例では、検出器100はまた、検出器100の動作温度を高めるように構成されている外部熱源310を含んでいる。例えば、正常動作時には、検出器100内部の温度は、検出器100に取り付けられている電子回路に供給される電力及び/又は検出器100が動作している外部環境の温度に基づいて高まるか低くなるかのいずれかとなる。例えば、検査室内の周囲空気の温度は高まることも低くなることもあり、従って、検出器100の動作温度を高めるか低くする。従って、本書で用いられる検出器100の動作温度との用語は、公知の検出器動作環境内で典型的な条件下で動作している検出器100の温度を定義するのに用いられる。
従って、この実施形態の例では、検出器100はまた、検出器100の動作温度を典型的な動作温度よりも高い温度まで高めるように構成されている外部熱源310を含んでいる。例えば、この実施形態の例では、熱源310は、遮断接点300の上部に配置されている加熱装置312を含んでいる。この実施形態の例では、加熱装置312は、第一の電気的絶縁層314、第二の電気的絶縁層316、及び第一の層314と第二の層316との間に配置されている電気発熱体318を含んでいる。第一及び第二の層314及び316は、発熱体318によって発生された熱を検出器100に伝達するように最適に構成されている材料で作製され、このようにして検出器100の動作温度を高める。この実施形態の例では、第一及び第二の層314及び316は、例えば比較的薄い熱可塑性ポリマー材料で作製される。
動作時には、発熱体318は、発熱体318の温度が高められるように作動させられる。発熱体318の温度を高めると、第一及び第二の層314及び316を伝導加熱するのが容易になり、このようにして検出器100の外面を加熱する。この実施形態の例では、発熱体318に電圧を印加して発熱体318を作動させるのを容易にしている。明確に述べると、発熱体318に印加される電圧が高まるにつれて、検出器100の動作温度も高まる。このように、電圧を自動的に変化させ制御して、検出器100を所望の温度で動作させるのを容易にすることができる。
もう一つの実施形態の例では、熱源310は、検出器100に隣接して配置されている加熱装置320を含んでいる。この実施形態の例では、加熱装置320は、電気ファン・アセンブリ322及び発熱装置324を含んでいる。一実施形態では、発熱装置324は、例えば比較的温かい加熱流体を流動させている放熱器である。もう一つの実施形態では、発熱装置324は、複数の開口を貫通延在させて含んでいる電気的発熱体である。
動作時には、ファン・アセンブリ322は、ファン・アセンブリ322によって発生される空気流の少なくとも一部が発熱装置324を通って運搬されて空気流の温度を高めるのを容易にするように、作動させられる。次いで、熱せられた空気は検出器100の外面に向かい、このようにして検出器100の外面を加熱する。この実施形態の例では、検出器100内部の温度は、他の材料因子にもよるが約10℃〜約100℃に保たれる。
図6は、検出器装置100を少なくとも部分的に包囲している断熱層400を含む検出器100の遠近図である。図7は、図6に示す放射線検出器100の上面図である。さらに明確に述べると、検出器100は、底面402、第一の側面404、第二の側面406、第一の側面404に対向する第三の側面408、及び第二の側面406に対向する第四の側面410を含んでいる。検出器100はまた上面412を含んでいる。この実施形態の例では、検出器上面412は、前述したような遮断接点300によって少なくとも部分的に覆われている。この実施形態の例では、検出器100内部の温度を高めるのを容易にするように加熱装置312が遮断接点300の上面に配置されている。さらに、この実施形態の例では、検出器100はまた、検出器100と共に加熱装置312を用いて発生される熱を保つのを容易にする断熱層400を含んでいる。さらに明確に述べると、底面402、第一の側面404、第二の側面406、第三の側面408及び第四の側面410の少なくとも1面は、検出器100内部の熱を保つのを容易にする断熱層400で少なくとも部分的に覆われていてもよいしいなくてもよい。この実施形態の例では、底面402、第一の側面404、第二の側面406、第三の側面408及び/又は第四の側面410は各々、検出器100内部の熱を保つのを容易にするように断熱層400によって実質的に覆われている。もう一つの実施形態では、底面402、第一の側面404、第二の側面406、第三の側面408、第四の側面410及び加熱装置312すなわち検出器100の上面は、検出器100内部の熱を保つのを容易にするように断熱層400で覆われており、すなわち検出器100及び/又は多数の検出器アセンブリは、断熱層400の内部に共に又は別個に完全に収容されている。この実施形態の例では、放射線の入射する表面例えば検出器100のカソード側を少なくとも部分的に覆うために断熱層400を用いる場合には、放射線に対して実質的に透明な材料で断熱層400を作製し、例えば断熱層を約2ミリメートル厚〜約5ミリメートル厚として、例えばフォームラバーで作製する。
一実施形態では、断熱層400は、検出器100を少なくとも部分的に収容するような寸法に選択されるフォーム断熱材である。もう一つの実施形態では、断熱層400は、例えば検出器100の外面の少なくとも一部を包む繊維断熱材を用いて形成される断熱ブランケットである。
本書に記載しているような断熱層400を用いると、検出器100内部の高められた動作温度を保つのが容易になる。例えば、動作時には、加熱装置312を用いて検出器100の動作温度を予め決められた動作温度まで高める。検出器の温度が予め決められた温度に達したら、断熱層400が検出器を予め決められた温度に保つのを容易にし、このようにして、周囲環境への熱損を補償するのに加熱装置312を用いる訳ではないので加熱装置100によって消費される電力を低減し、このようにして断熱層400は検出器の熱損を抑えるのを容易にし、またこのようにして加熱装置312を含めて検出器100によって消費される全電力を低減する。断熱はまた、センサ及び制御回路によって温度を制御するのをさらに容易にする。
図8は、熱源310(図5に示す)を用いて加熱される遮断接点300を備えた検出器100の測定データのグラフである。x軸は、X線発生器電流制御パラメータによって測定したときの入射放射線束の大きさである。y軸は、検出器の測定カウント率である。幾つかのピクセル102、108及び160の応答曲線を示す。比較的低い温度すなわち約26℃では、測定カウント率(kcps)は、比較的高い線束については約0となり、比較的高い温度(約60℃)では入射束(I)の関数として継続的に増大する。
図9は、公知の検出器の正常動作時の光電流のグラフである。光電流は、吸収されるX線又はγ線フォトンから発生される電荷流に帰属可能な信号電流と暗電流との合計である。商用で「オーム型」として知られる検出器では、暗電流は線束と共に増大し、この現象を光伝導性ゲインとも呼ぶ。この暗電流の光電流に対する寄与によって、暗電流自体について上述した増幅器過負荷、信号依存型発熱という同じ問題が生ずる。図10は、本書に記載する方法及び装置を用いて達成される高線束及び持続的動作という条件下での低減した光電流を示す検出器100の測定されたグラフである。さらに明確に述べると、図9は、y軸に沿って、測定対象のCZTのピクセル102、108及び160毎の暗電流を示す。図示のように、暗電流(I)は、無遮断接点すなわち例えばオーム型接点を用いて作製されたCZT標本については線束及び温度と共に増大する。図10は、遮断接点300を用いると、光電流(I)はやはり線束と共に増大するが、熱源310を用いて検出器を加熱することにより、線束に比例した増大を実質的に解消することを示している。挿入されている囲みの中の計算は、光電流が、光伝導性ゲインによって生ずる暗電流から重大な寄与を受けない状態の信号電流単独に等しいことを示している。このように、低温では、電流は線束と共に増大して信号は線束と共に消失する。この挙動は、カソードから発する電流を増大させ検出器バルクでの電場を低減する分極電荷に起因するものと考えられる。従って、遮断接点300及び熱源310の両方を用いると、検出器100内部で暗電流を減少させると共に分極を低減するのが容易になる。そして、分極を低減すると、バルクでの電場を保存すると同時に、カソードから発する暗電流が減少して、これにより高線束でも検出器を動作させることができる。
上述の撮像装置検出器は、撮像用検出器内部の分極を低減する経費効率及び信頼性の高い手段を提供する。さらに明確に述べると、撮像用検出器は、検出器100内部の電流及び分極を低減するように協働する遮断接点及び熱源を含んでいる。
図示した検出器の構成要素は、本書で説明した特定の実施形態に限定されず、本書で説明した他の構成要素とは独立且つ別個に、又は反復的に用いられ得る。例えば、以上に述べた検出器の構成要素を異なるイメージング・システムと共に用いてもよい。本書で説明したシステム及び方法の実施形態の技術的効果としては、検出器に少なくとも1個の遮断接点を結合して、公知の検出器の典型的な動作温度よりも高い温度まで検出器を加熱することにより、CZT材料を用いて作製される検出器内部の検出器性能を高める、すなわち高線束、暗電流及びスペクトル改善を達成すること等がある。
さらに、検出器の加熱と遮断接点の利用とを組み合わせると、主に暗電流の減少と電荷移動度及び寿命の増大という独特の組み合わせを可能にする。そして、このことにより、NM及びCTの応用についてエネルギ・スペクトルの決定的な改善及び高速動作を可能にする。加えて、検出器の加熱と遮断接点の利用とを組み合わせると、有用線束限界を高めながら、高線束感度低下、信号依存型不安定性及びエネルギ応答低下を防止するのが容易になる。さらに、暗電流を減少させると、検出器を読み出し電子回路に直接結合することが可能になる。直接結合される電子回路は、構築が遥かに単純であり、入力キャパシタンスの低下を可能にする。入力キャパシタンスを低下させると、雑音が低減して信号が高まる。低い暗電流は、ゲイン及びカウント率の不安定性の原因である半導体での信号依存型加熱を防ぐ。信号依存型不安定性は極めて重大であり、較正して除去することができず、従って、医療撮像の限界的応用での半導体検出器の利用を阻む場合があった。このように、本書で説明した方法及び装置を用いて高線束及び低線束での検出器応答を改善することにより、製造者は、検出器を製造するのに比較的等級が低く且つ/又は比較的廉価な等級のCZT材料を用い易くなる。従って、本書で説明した検出器は、透過型医療撮像でのフォトン計数を達成することができ、これにより、フォトン計数手法によって予期される信号雑音(Swank雑音とも呼ぶ)の低減を可能にする。この雑音低減によって、画質を高め、或いは患者に対する照射線量を減少させることができる。透過型医療撮像でのフォトン計数はまた、最小の検出器信号振幅から導かれる画像の部分に影響を及ぼす電流モード検出器での暗電流から導かれる雑音を低減することもできる。さらに、単一応答型すなわちスペクトル尾を低減した本書で説明した半導体放射線検出器を、公知の検出器によって分解するには2個の発生源のエネルギが近過ぎる場合の同時型二重同位体撮像のような核医学応用に用いることができる。また、スペクトルの尾成分を低減したNM応用についてCZTがうまく動作すると、現状で生じていた感度/分解能のトレードオフをさらに最適化することができる。透過型撮像においてエネルギ分解を改善すると、例えばカルシウム得点応用でのエネルギ分解、従って物質決定を可能にすることができる。
様々な特定の実施形態によって本発明を説明したが、当業者は、特許請求の範囲の要旨及び範囲内に含まれる改変を施して本発明を実施し得ることを認められよう。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
CTイメージング・システムの見取り図である。 図1に示すシステムのブロック模式図である。 複数のピクセル型半導体検出器素子を有する放射線検出器の一例の断面図である。 図1に示す検出器内部の分極を低減する方法の一例を示す流れ図である。 熱源の例及び遮断接点の例を含む図1に示す放射線検出器の断面図である。 断熱被覆の例を含む図3に示す放射線検出器の遠近図である。 図4に示す放射線検出器の上面図である。 図3に示す検出器の正常動作時のグラフ図である。 公知の検出器の正常動作時のグラフ図である。 図4に示す検出器の正常動作時のグラフ図である。
符号の説明
10 イメージング・システム
12 ガントリ
14 X線源
16 X線
18 スライス検出器アレイ
20 検出器素子
22 患者配置
24 回転中心
26 制御機構
28 X線制御器
30 ガントリ・モータ制御器
32 DAS
34 画像再構成器
36 コンピュータ
38 記憶装置
40 コンソール
42 表示器
44 テーブル・モータ制御器
46 電動式テーブル
48 ガントリ開口
50 読み取り及び受け取り装置
52 コンピュータ読み取り可能な媒体
60 高温
100 検出器
102 検出器素子
104 基材
108 ピクセル電極
110 第一の表面
112 第二の表面
114 長手軸
140 線源
144 フォトン
154 カソード
156 電子
158 正孔
160 読み出し電子回路
200 方法
202 結合するステップ
204 加熱するステップ
300 遮断接点
310 熱源
312 加熱装置
314 第一及び第二の層
316 第二の層
318 発熱体
320 加熱装置
322 ファン・アセンブリ
324 発熱装置
400 断熱層
402 底面
404 第一の側面
406 第二の側面
408 第三の側面
410 第四の側面
412 上面

Claims (10)

  1. 基材と、
    該基材に結合されている遮断接点(300)と、
    当該画像検出装置内部の分極を低減するのを容易にするために前記基材の温度を高めるように構成されている熱源(310)と、
    を備え
    前記熱源(310)は、前記遮断接点(300)に熱的に接続するように前記遮断接点(300)に結合された発熱体(318)を含んでおり、該発熱体(318)は前記画像検出装置の動作温度を高めるように構成されている、画像検出装置(20)。
  2. 前記基材はカドミウム亜鉛テルライド(CZT)を含んでいる、請求項1に記載の画像検出装置(20)。
  3. 前記遮断接点(312)は金材料及び白金材料の少なくとも一方を含んでいる、請求項1又は2に記載の画像検出装置(20)。
  4. 前記基材の少なくとも一部を包囲しており、当該画像検出装置内部の前記高められた温度を保つのを容易にするように構成されている断熱材(400)をさらに含んでいる請求項1乃至3のいずれかに記載の画像検出装置(20)。
  5. 前記熱源は、
    前記基材に隣接して結合されている発熱装置(310)と、
    空気の温度を高めるのを容易にするために前記発熱装置(400)を通る空気流を運搬すると共に、当該画像検出装置の前記動作温度を高めるのを容易にするために前記基材に前記熱せられた空気流を運搬するように構成されているファン・アセンブリ(322)と、
    を含んでいる、請求項1に記載の画像検出装置(20)。
  6. 前記熱源(310)は、前記基材の内部温度を約10℃〜約100℃まで高めるように構成されている、請求項1に記載の画像検出装置(20)。
  7. 前記熱源(310)は、前記遮断接点(300)の上部に配置されている加熱装置(312)を含み、該加熱装置(312)は、第一の電気的絶縁層(314)、第二の電気的絶縁層(316)及び、該第一及び第二の電気的絶縁層(314、316)の間に配置されている前記発熱体(318)を含んでいる、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像検出装置(20)。
  8. フォトン束を放出するように構成されている放射線源と、
    前記フォトン束を受け取って該フォトン束に基づいて応答を発生するように構成されている画像検出装置(20)と、
    を備えたイメージング・システム(10)であって、前記画像検出装置は、
    カドミウム亜鉛テルライド(CZT)を用いて作製された基材と、
    該基材に結合されている遮断接点(300)と、
    当該画像検出装置内部の分極を低減するのを容易にするために前記基材の温度を高めるように構成されている熱源(310)と、
    を含み、
    前記熱源(310)は、前記遮断接点(300)に熱的に接続するように前記遮断接点(300)に結合された発熱体(318)を含んでおり、該発熱体(318)は前記画像検出装置の動作温度を高めるように構成されている、イメージング・システム(10)。
  9. 前記遮断接点(300)は金材料及び白金材料の少なくとも一方を含んでいる、請求項8に記載のイメージング・システム(10)。
  10. 前記熱源(310)は、前記遮断接点(300)の上部に配置されている加熱装置(312)を含み、該加熱装置(312)は、第一の電気的絶縁層(314)、第二の電気的絶縁層(316)及び、該第一及び第二の電気的絶縁層(314、316)の間に配置されている前記発熱体(318)を含んでいる、請求項8または9に記載のイメージング・システム(10)。
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