JP5008839B2 - 強誘電体及びその製造方法、並びに、それを用いた強誘電体デバイス - Google Patents

強誘電体及びその製造方法、並びに、それを用いた強誘電体デバイス Download PDF

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本発明は、不揮発性メモリデバイス、コンデンサ、圧電デバイス、焦電赤外線センサデバイス等の強誘電体デバイスに用いられる強誘電体及びその製造方法、並びに、それを用いた強誘電体デバイスに関する。
強誘電体は、自発分極、高誘電率、焦電効果、圧電効果、電気光学効果等の機能をもち、従来から、コンデンサ、赤外線センサ、超音波発振器、圧力センサ、周波数フィルタ、光スィッチ等の多くのデバイス開発に応用されてきた。また、近年では、自発分極を利用した不揮発性メモリや高誘電率を利用したFETのゲート絶縁膜の開発が行われている。
ところで、チタン酸バリウムは、古くから知られたペロブスカイト構造の強誘電体であり、コンデンサ等に用いられている。
非特許文献1には、大きな自発分極を示す強誘電体は、ほとんどがペロブスカイト構造、又は、それに類似した構造を持つ、と記載されており、その具体例として、ペロブスカイト構造のチタン酸鉛(PbTiO3)やチタンジルコン酸鉛(Pb(Ti,Zr)O3)、層状ペロブスカイト構造のBi4Ti312等が挙げられている。但し、これらの強誘電体は、鉛やビスマスといった有毒重金属を含んでおり、製造に際しては、スパッタリング等の真空プロセスや1000℃以上の高温での熱処理が必要とされる。
特許文献1には、単純ペロブスカイト構造の(Ba,Sr,Sn)TiO3 からなる鉛を含まない強誘電体、及び、単純ペロブスカイト構造の(Ba,Sr,Sn)TiO3 と従来の他のペロブスカイト構造の強誘電体との固溶体からなる鉛含有量の少ない強誘電体が開示されている。但し、これらの強誘電体は、600℃以上に加熱した基板上へのパルスレーザー堆積法により製造されることから高温での熱処理が必要とされる。
塩嵜忠監修「強誘電体材料の開発と応用」シーエムシー出版、2001年12月発行、14〜15頁 特開2003−146660号公報
本出願の目的は、簡単な方法で製造することができ、しかも、有毒な重金属の含有を避けることができる高誘電率、又は、大きな残留分極を示す強誘電体及びその製造方法、並びに、それを用いた強誘電体デバイスを提供することである。
上記目的を達成する本発明は、有機カチオンと、ポリチタン酸アニオン、ポリニオブ酸アニオン及びポリタンタル酸アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアニオンと、からなる有機カチオン含有ポリアニオンを含む強誘電体である。
ここで、強誘電体とは、加えられる電極と分極との関係が線形でなくヒステリシスを示す誘電体である。
本発明の強誘電体は、その分散液を乾燥させる等の非常に簡単な方法により製造することができ、スパッタリング等の真空プロセスや高温での熱処理を必要としない。また、鉛やビスマスなどが含まれていなくても高誘電率、又は、大きな残留分極を示すので、有毒な重金属の含有を避けることができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(強誘電体及びそれを用いた強誘電体デバイス)
本発明の強誘電体は、有機カチオンと、ポリチタン酸アニオン、ポリニオブ酸アニオン及びポリタンタル酸アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアニオンと、からなる有機カチオン含有ポリアニオンを含む。つまり、この強誘電体は、有機カチオン含有ポリチタン酸アニオン、有機カチオン含有ポリニオブ酸アニオン及び有機カチオン含有ポリタンタル酸アニオンのうち少なくとも1種を含んで構成されている。
ここで、有機カチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオンなどの第4級アンモニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオンなどの第4級ホスホニウムカチオン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルオクチルアミンなどの第1級乃至第3級アミンを由来とするカチオンから選ばれる1種、又は、2種以上が挙げられる。これらのうち、第4級アンモニウムカチオンと第4級ホスホニウムカチオンとが特に好ましい。
また、ポリチタン酸アニオンは、水酸化チタンが縮合したTiO2・xH2Oで表されるものから、そのプロトンの一部が解離してアニオンとなったものを意味する。具体的には、ポリチタン酸アニオンとしては、例えば、2チタン酸アニオン、3チタン酸アニオン、4チタン酸アニオン、5チタン酸アニオン等が挙げられる。同様に、ポリニオブ酸アニオンは、水酸化ニオブが縮合したTi25・xH2Oで表されるものから、そのプロトンの一部が解離してアニオンとなったものを意味し、具体的には、例えば、2ニオブ酸アニオン等が挙げられる。同様に、ポリタンタル酸アニオンは、水酸化タンタルが縮合したTa25・xH2Oで表されるものから、そのプロトンの一部が解離してアニオンとなったものを意味し、具体的には、例えば、2タンタル酸アニオン等が挙げられる。
なお、本発明の強誘電体には、複数種の有機カチオンが含まれていてもよく、また、ポリチタン酸アニオン、ポリニオブ酸アニオン及びポリタンタル酸アニオンのうち2種が含まれていても、3種全てが含まれていてもよい。
また、本発明の強誘電体には、任意成分として、有機酸が含まれていてもよい。但し、有機酸の含有量は、有機カチオン中和当量以下であることが好ましい。
本発明の強誘電体は、ポリアニオンで構成されたナノシートの層により形成された積層構造を有することが好ましい。積層構造のなかでも、レピドクロサイト型構造のポリチタン酸アニオンがより好ましい。例えば、テトラメチルアンモニウムカチオンとポリチタン酸アニオンとからなる有機カチオン含有ポリアニオンの強誘電体では、チタンを中心として8個の酸素が配位した八面体構造を基本ユニットとしてその基本ユニットが平面状に展開されて形成されたポリチタン酸アニオンナノシート層が約1nm間隔で積層された積層構造を有しており、しかも、ポリチタン酸アニオンナノシート層間にテトラメチルアンモニウムカチオン層が形成されて、ポリアニオン層と有機カチオン層との交互積層構造が構成されている。なお、ポリアニオン層の積層構造を有するか否かは、X線回折において面間隔が整数比となる2以上の回折ピークが存在するか否かで確認することができる。
以上の本発明の強誘電体は、高温での熱処理を行わなくても、非常に優れた誘電性能を有し、室温において、残留分極が1μC/cm2以上、又は、比誘電率が40以上である。このように、本発明の強誘電体は、鉛やビスマスなどが含まれていなくても高誘電率、又は、大きな残留分極を示すので、有毒な重金属の含有を避けることができる。
そして、本発明の強誘電体は、一対の電極間に設けられることにより、不揮発性メモリデバイス、コンデンサ、圧電デバイス、焦電赤外線センサデバイス等の強誘電体デバイスを構成することができる。
(強誘電体の製造方法)
以下、本発明の強誘電体の製造方法について説明する。
<分散液調製ステップ>
まず、有機カチオンと、水酸化チタン、水酸化ニオブ及び水酸化タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種の水酸化物と、を水に含有させて、その有機カチオンが溶解すると共に水酸化物から生成したポリアニオンが分散した分散液を調製する。
分散液を調製する方法としては、(1)有機カチオンと、水酸化チタン、水酸化ニオブ及び水酸化タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種の水酸化物と、を予め混合しておき、それを水に含有させる方法、(2)有機カチオンの水溶液に、水酸化チタン、水酸化ニオブ及び水酸化タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種の水酸化物を含有させる方法、(3)有機カチオンと、加水分解して水酸化チタンを生成する化合物、加水分解して水酸化ニオブを生成する化合物及び加水分解して水酸化タンタルを生成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を水に含有させる方法、及び、(4)アルカリ金属を対イオンとする層状チタン酸、層状ニオブ酸及び層状タンタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を酸で処理し、イオン交換されたアルカリ金属イオンを洗浄除去した後、カチオン又はアミンで処理する方法が挙げられる。
有機カチオンとしては、例えば、第4級アンモニウムカチオン源である水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウムカチオン源である水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム、水酸化テトラプロピルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウムなどの第4級ホスホニウム塩、第1級乃至第3級アミン由来のカチオン源であるメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルオクチルアミンなどのアミン化合物等が挙げられる。そして、これらの化合物から選ばれる1種、又は、2種以上を用いればよい。
加水分解して水酸化チタン、水酸化ニオブ又は水酸化タンタルを生じる化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ニオブペンタエトキシド、タンタルペンタエトキシドなどの金属アルコキシド、塩化チタン、フッ化チタン、塩化ニオブ、塩化タンタルなどのハロゲン化物、硝酸チタン、硝酸ニオブ、硝酸タンタルといった硝酸塩、硫酸チタン、硫酸ニオブ、硫酸タンタルといった硫酸塩、硝酸チタニル、硫酸チタニル等が挙げられる。そして、これらの化合物から選ばれる1種、又は、2種以上を用いればよい。
なお、有機カチオンの溶解性を高めるため、水に水溶性有機溶媒、例えば、炭素数1〜4のアルコールを添加してもよい。
分散液には、さらに、任意成分として、pHを調製するための有機酸や分散性を良くするためのポリオール類を混合してもよい。
調製する分散液は、有機カチオンの濃度を0.01〜30質量%とすることが好ましく、0.1〜15質量%とすることがより好ましい。そして、水酸化物、或いは、加水分解して水酸化物を生じる化合物の量、つまり、ポリアニオンの含有量を、金属(チタン、ニオブ、タンタル)の有機カチオンに対するモル比(金属/有機カチオン)が0.5〜5となる量にすることが好ましく、0.8〜3となる量にすることがより好ましい。定量的には、ポリアニオンの濃度を0.01〜30質量%とすることが好ましく、0.1〜15質量%とすることがより好ましい。
また、調製する分散液はpHを10以上とすることが好ましく、pHを12以上の強アルカリ性とすることがより好ましい。従って、有機カチオンとしては、第4級アンモニウムカチオンと第4級ホスホニウムカチオンとが特に好適である。また、分散液の調製時には強アルカリ性の状態で行い、液調製後にポリアニオンの分散性を損なわない範囲で有機酸を加えてpHを下げるようにしてもよい。
さらに、分散液は2〜200℃に調温して調製することが好ましく、生成物の安定性の観点から10〜150℃とするのがより好ましく、20〜100℃とするのがさらに好ましい。
また、分散液の攪拌、つまり、反応時間は、0.1〜20時間とするのが好ましく、1〜10時間とするのがより好ましい。
<固形化ステップ>
分散液調製ステップに次いで、調製した分散液に含まれる有機カチオンとポリアニオンとを固形化させる。
ここで、有機カチオン含有ポリアニオンを固形化させる方法としては、例えば、分散液を風乾して水分を除去する方法、分散液を加熱することにより水分を除去する方法、分散液を減圧下に置くことにより水分を除去する方法等が挙げられる。
また、有機カチオン含有ポリアニオンに対する溶解度が水よりも低い溶媒を分散液に添加すれば、過剰な有機カチオンが添加溶媒に抽出されるので、より純度の高い有機カチオン含有ポリアニオンを得ることができる。この場合、有機カチオン含有ポリアニオンを析出させた後に溶媒を除去してもよいが、析出物をそれに対する溶解度の低い溶媒で洗浄した後に乾燥を行うことが好ましい。このようにすることで過剰の有機カチオンの含有量をさらに低く抑えることができる。そのような溶媒としては、有機カチオンがテトラメチルアンモニウムカチオンの場合には、イソプロピルアルコールが挙げられる。
有機カチオン含有ポリアニオンを固形化させるときの温度は、有機カチオンが分解や揮散等する温度に達しない温度とする必要がある。例えば、有機カチオンがテトラメチルアンモニウムカチオンの場合には200℃以下とすればよい。
以上の通り、本発明の有機カチオン含有ポリアニオンの強誘電体は、その分散液を乾燥させる等の非常に簡単な方法により製造することができる。なお、スパッタリング等の真空プロセスや高温での熱処理を必要としないが、それらのプロセスや処理を加えることも可能である。
そして、得られる有機カチオン含有ポリアニオンの強誘電体である固形化物は、一般的には粉状であるが、その粉状の固形化物を膜状乃至板状等の所定形状に成形することで実用に供するようにすればよい(成形ステップ)。具体的には、例えば、所定量の粉状の固形化物を金型に充填して加熱及び加圧してプレス成形する方法等が挙げられる。なお、このとき、成形性を向上させるために、粉状の固形化物にバインダを混入させてもよい。
また、有機カチオン含有ポリアニオンの固形化を平坦な基板上で行わせて成膜させることで実用に供するようにしてもよい。具体的には、平坦な基板の表面に分散液を付着させ、基板上で水分を除去すればよい。
ここで、基板としては、例えば、金属基板、半導体基板、ITOなどの透明導電性酸化膜、導電性ポリマー基板、表面に金属等の導電体層が形成されたポリマー基板等が挙げられる。導電性を有する基板であれば、それを電極として用いることができる。
分散液を基板に付着させる方法としては、例えば、基板を分散液中に浸漬する浸漬法、分散液を基板に吹き付けるスプレー法、スピンコート法、刷毛塗り法等が挙げられる。
膜状等の有機カチオン含有ポリアニオンの強誘電体は、一対の電極間に設けられて強誘電体デバイスに構成される。
ここで、電極は、上記のように基板自体によって構成したり、蒸着やスパッタリングによる導電層の形成、導電性ペーストの塗布により構成することができる他、有機カチオン含有ポリアニオンの強誘電体に接触する金属等により構成することもできる。
(試験評価1)
<試験評価サンプル>
−実施例1−
25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(和光純薬工業社製)1.823g(水酸化テトラメチルアンモニウム:5mmol)に水10gを混合した。
次いで、これを室温下で攪拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業社製)を少しずつ2.8422g(10mmol)滴下した。このとき、チタンテトライソプロポキシドの滴下直後には、それが加水分解して白濁したが、攪拌を継続すると無色透明の分散液となった。この分散液は、テトラメチルアンモニウムカチオンの濃度が3質量%、ポリチタン酸アニオンの濃度が6質量%で、チタンの有機カチオンに対するモル比が2である。また、分散液のpHは12であった。
そして、この分散液をポリチタン酸アニオンの濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、チタン基板上に塗布して水分を飛散させることにより乾燥させて作製したテトラメチルアンモニウムカチオン含有ポリチタン酸アニオンの薄膜を実施例1とした。
−実施例2−
水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液の代わりに、40質量%の水酸化テトラブチルホスホニウム水溶液(和光純薬工業社製)3.456g(水酸化テトラブチルホスホニウム:5mmol)を用いて、テトラブチルホスホニウムカチオンの濃度が8質量%、ポリチタン酸アニオンの濃度が5質量%で、チタンの有機カチオンに対するモル比が2の分散液を調製した。また、分散液のpHは12であった。
そして、この分散液をポリチタン酸アニオンの濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、チタン基板上に塗布して水分を飛散させることにより乾燥させて作製したテトラブチルホスホニウムカチオン含有ポリチタン酸アニオンの薄膜を実施例2とした。
−実施例3−
25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液の量を3.646g(水酸化テトラメチルアンモニウム:10mmol)とし、チタンテトライソプロポキシドの代わりにニオブペンタエトキシド(和光純薬工業社製)3.182g(10mmol)を用いて、テトラメチルアンモニウムカチオンの濃度が4質量%、ポリニオブ酸アニオンの濃度が8質量%で、ニオブの有機カチオンに対するモル比が1の分散液を調製した。また、分散液のpHは12であった。
そして、この分散液をポリニオブ酸アニオンの濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、チタン基板上に塗布して水分を飛散させることにより乾燥させて作製したテトラメチルアンモニウムカチオン含有ポリニオブ酸アニオンの薄膜を実施例3とした。
−実施例4−
25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液の量を3.646g(水酸化テトラメチルアンモニウム:10mmol)とし、チタンテトライソプロポキシドの代わりにタンタルペンタエトキシド(和光純薬工業社製)4.063g(10mmol)を用いて、テトラメチルアンモニウムカチオンの濃度が4質量%、ポリタンタル酸アニオンの濃度が12質量%で、タンタルの有機カチオンに対するモル比が1の分散液を調製した。また、分散液のpHは12であった。
そして、この分散液をポリタンタル酸アニオンの濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、チタン基板上に塗布して水分を飛散させることにより乾燥させて作製したテトラメチルアンモニウムカチオン含有ポリタンタル酸アニオンの薄膜を実施例4とした。
−比較例1−
市販のチタン酸バリウム(共立セラミック社製)0.1g(0.43mmol)を水19.9gに分散させた分散液を調製した。
この分散液をチタン基板上に塗布して水分を乾燥させることにより作製したチタン酸バリウムの薄膜を比較例1とした。
なお、調製された分散液は、チタン酸バリウムの濃度が0.5質量%である。
<試験評価方法>
−X線回折分析−
実施例1〜4及び比較例1のそれぞれについて、X線回折分析を行いX線回折パターンを得た。
−残留分極測定−
実施例1〜4及び比較例1のそれぞれについて、ヒステリシス測定を行うことにより残留分極を求めた。
ヒステリシス測定は、サンプルに残留した水によるリーク電流の影響を排除するべく、非特許文献1の272〜275頁の記載に基づいて行った。具体的には、各サンプルに一対の電極を取り付け、図1に示すような三角波パルスのシーケンスを行い、パルスの極性を反転させたときと反転させないときとの電流値の差を自発分極による電流と扱うと共に、その自発分極による電流を積分したものを自発分極電荷とし、得られたヒステリシス曲線から残留分極を読み取った。なお、三角波パルスの上下ピーク電圧+5V及び−5V、パルス幅2秒、及び、パルス間隔1秒とした。また、測定は室温下で行った。
<試験評価結果>
−X線回折分析−
X線回折分析の結果、実施例1〜4では、いずれもポリチタン酸アニオンによる層状構造を示すX線回折パターンが得られたのに対し、比較例1では、かかる層状構造を示すX線回折パターンは得られなかった。
図2は、実施例2のX線回折パターンを示す。
図2によれば、d値で1.70nm(2θ=5.2°)付近に第1ピーク(主ピーク)が認められ、次いで、d値で0.89nm(2θ=9.9°)付近に第2ピーク、さらに、d値で0.60nm(2θ=14.7°)付近に第3ピークがそれぞれ認められる。そして、第1ピークのd値に対して、第2ピークのd値が1/2及び第3ピークのd値が1/3とそれぞれ整数比になっていることから、実施例2がポリチタン酸アニオンで構成された層により形成された層状構造を有していると考えられる。なお、40℃付近以降のピークは、基板に用いた金属チタン由来のピークである。
−残留分極−
表1は、実施例1〜4及び比較例1のそれぞれの残留分極を示す。
Figure 0005008839
表1によれば、実施例1〜4及び比較例1のいずれも強誘電体であるといえるが、実施例1〜4では、いずれも10μC/cm2以上の非常に高い残留分極を示しているのに対し、比較例1では、0.2μC/cm2である。比較例1のチタン酸バリウムの薄膜も高温の熱処理を施して単結晶に作製すれば、高い残留分極を得ることができる。しかしながら、実施例1〜4では、作製に際して、かかる高温の熱処理を必要とせずに、非常に高い残留分極が得られている。
(試験評価2)
<試験評価サンプル>
−実施例5−
実施例1の作製の際に調製したのと同一の分散液14.6gに100gのイソプロピルアルコールを添加した。このとき、テトラメチルアンモニウムカチオン含有ポリチタン酸アニオンの白色沈殿が生成した。
次いで、これを濾過して得られた沈殿物をイソプロピルアルコールで充分に洗浄した後、60℃に温度設定した真空乾燥機で12時間乾燥させて強誘電体であるテトラメチルアンモニウムカチオン含有ポリチタン酸アニオンの白色粉末を作製した。
そして、このテトラメチルアンモニウムカチオン含有ポリチタン酸アニオンの白色粉末を、プレス成形機により98MPaの圧力を負荷することにより直径16mm、厚さ0.59mm及び重さ0.2gの円盤状ペレットに成形し、これを実施例5とした。
−比較例2−
強誘電体である市販のチタン酸バリウム(共立セラミック社製)を、プレス成形機により490MPaの圧力を負荷することにより直径16mm、厚さ0.76mm及び主さ0.6gの円盤状ペレットに成形し、これを比較例2とした。
<試験評価方法>
実施例5及び比較例2のそれぞれについて、円盤状ペレットの両面のそれぞれに電極を接触させ、インピーダンスメータ(ヒューレットパッカード社製HP4284A)を用いて周波数1kHzでの比誘電率を計測した。
<試験評価結果>
表2は、実施例5及び比較例2のそれぞれの比誘電率を示す。
Figure 0005008839
表2によれば、実施例5の方が比較例2に比べて、比誘電率が60倍以上も大きいことが分かる。比較例2のチタン酸バリウムも高温の熱処理を施して単結晶に作製すれば、高い比誘電率を得ることができる。しかしながら、実施例5では、作製に際して、かかる高温の熱処理を必要とせずに、非常に高い比誘電率が得られている。
(試験評価3)
<試験評価サンプル>
−実施例6−
ジエチルアミン(和光純薬工業社製)7.3gを水160gに溶解させた後、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業社製)を少しずつ28.4g滴下した。
次いで、それを室温下で1日攪拌して透明な分散液に調製し、それを60℃に温度設定した真空乾燥機で12時間乾燥させて強誘電体であるジエチルアミン由来のカチオン含有ポリチタン酸アニオンの白色粉末を作製した。
続いて、このテトラメチルアンモニウムカチオン含有ポリチタン酸アニオンの白色粉末を、プレス成形機により圧力を負荷することにより板状ペレットの強誘電体に成形した。
そして、図3に示すように、板状ペレットの強誘電体11の両面のそれぞれに導電性のニッケルペースト12を介してアルミニウム箔の電極13を接着して強誘電体デバイス10を構成し、これを実施例6とした。
<試験評価方法>
実施例6の強誘電体デバイス10に一方の電極13を基準として、他方の電極13に+5Vの電圧を2秒間印加してデバイスを正に分極させた後、分極状態を読み出すためにピーク電圧+5V、パルス幅2秒の三角波電圧を印加し、電流値から流れた電荷量を求めた。同様に、強誘電体デバイス10に一方の電極13を基準として、他方の電極13に−5Vの電圧を2秒間印加してデバイスを負に分極させた後、分極状態を読み出すためにピーク電圧+5V、パルス幅2秒の三角波電圧を印加し、電流値から流れた電荷量を求めた。
<試験評価結果>
他方の電極13に+5Vを印加して正に分極させたデバイスの状態を+5Vの三角波で読み出したときに流れた電荷量が1.2μCであったのに対し、他方の電極13に−5Vを印加して負に分極させたデバイスの状態を+5Vの三角波で読み出したときに流れた電荷量が1.8μCであり、電荷量により分極の方向を知ることができた。従って、実施例6の強誘電体デバイス10は、分極の正負方向により異なる情報を記憶するメモリとして動作することが分かる。
本発明は、強誘電体及びその製造方法、並びに、それを用いた強誘電体デバイスについて有用である。
試験評価1で残留分極測定の際にサンプルに印加した電圧波形を示す図である。 実施例2のX線回折パターンを示す図である。 強誘電体デバイスを示す斜視図である。
符号の説明
10 強誘電体デバイス
11 強誘電体
13 電極

Claims (6)

  1. 有機カチオンと、
    ポリチタン酸アニオン、ポリニオブ酸アニオン及びポリタンタル酸アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアニオンと、
    からなる有機カチオン含有ポリアニオンを含む強誘電体であって、
    上記ポリアニオンで構成された層により形成された積層構造を有する強誘電体
  2. 請求項1に記載された強誘電体を製造する方法であって、
    有機カチオンと、水酸化チタン、水酸化ニオブ及び水酸化タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種の水酸化物と、を水に含有させて、該有機カチオンが溶解すると共に該水酸化物から生成したポリアニオンが分散した分散液を調製する分散液調製ステップと、
    上記分散液調製ステップで調製した分散液に含まれる有機カチオンとポリアニオンとを固形化させる固形化ステップと、
    を備えた強誘電体の製造方法。
  3. 上記分散液調製ステップにおいて、水酸化物に代えて、加水分解して水酸化チタンを生成する化合物、加水分解して水酸化ニオブを生成する化合物及び加水分解して水酸化タンタルを生成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を水に含有させる、請求項に記載の強誘電体の製造方法。
  4. 上記固形化ステップにおいて、有機カチオンとポリアニオンとの固形化を、平坦な基板上で行わせることにより成膜させる、請求項2又は3に記載の強誘電体の製造方法。
  5. 上記固形化ステップで得られた固形化物を所定形状に成形する成形ステップをさらに備えた、請求項2〜4のいずれかに記載の強誘電体の製造方法。
  6. 一対の電極間に強誘電体が設けられた強誘電体デバイスであって、
    上記強誘電体は、
    有機カチオンと、
    ポリチタン酸アニオン、ポリニオブ酸アニオン及びポリタンタル酸アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアニオンと、
    からなる有機カチオン含有ポリアニオンを含み、
    上記ポリアニオンで構成された層により形成された積層構造を有する強誘電体デバイス。
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