JP5007238B2 - 癌の予後予測、診断および治療に有用な方法および組成物 - Google Patents

癌の予後予測、診断および治療に有用な方法および組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP5007238B2
JP5007238B2 JP2007550509A JP2007550509A JP5007238B2 JP 5007238 B2 JP5007238 B2 JP 5007238B2 JP 2007550509 A JP2007550509 A JP 2007550509A JP 2007550509 A JP2007550509 A JP 2007550509A JP 5007238 B2 JP5007238 B2 JP 5007238B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ephb2
expression
cancer
antibody
patient
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007550509A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008527352A (ja
Inventor
エイドリアン, エム. ヤブ,
ハートムット ケッペン,
Original Assignee
ジェネンテック, インコーポレイテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ジェネンテック, インコーポレイテッド filed Critical ジェネンテック, インコーポレイテッド
Publication of JP2008527352A publication Critical patent/JP2008527352A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5007238B2 publication Critical patent/JP5007238B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6876Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
    • C12Q1/6883Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
    • C12Q1/6886Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material for cancer
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/106Pharmacogenomics, i.e. genetic variability in individual responses to drugs and drug metabolism
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/118Prognosis of disease development

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Description

【発明の開示】
【0001】
(関連出願)
この出願は、米国特許法119に基づき、2005年1月6日に出願の米国仮出願第60/642,164号の優先権を主張し、出典により本明細書中にその内容全体が組み込まれるものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明はEphB2ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの検出に関する。また、本発明は、癌の予後予測方法、癌治療の選択方法、大腸腺腫に特徴的な疾患の検出、診断及び治療の方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
癌は、依然としてヒトの健康に対する最も致命的な脅威のうちの一つである。米国において、毎年1,300,000人近くの患者が癌に新たに罹患しており、心臓病に次いで二番目の主要な死因であり、およそ4人に1人と推定される。また、5年以内で癌が一番の死因である心臓血管系疾患を上回ると予測される。その死のほとんどが固形腫瘍である。特定の癌の薬物療法に有意な進歩があったにもかかわらず、すべての癌について全体の5年生存率は過去20年間でおよそ10%向上しただけであった。癌又は悪性腫瘍は転移して、コントロールのきかない状態で急速に成長するので、時宜を得た検出及び治療を極めて難しくする。結腸直腸癌は米国の癌死亡率で3番目に多い原因である。1999年の米国では、およそ129,000の症例が新たに結腸直腸癌と診断され、56,000人が結腸直腸癌のために死亡している(Landis 等, Cancer J Clin. 49:8-31 (1999))。
【0004】
癌治療、例えば化学療法、放射線及び/又は手術は関連するリスクを有し、最適に、最も利益を得そうな患者を選択できることが有用である。予後試験は、例えば、より強力であるがよりリスクが高い治療方策が決定するほど予後が不良な患者を同定するため、及びリスクを正当化できるだけの十分な利益がもたらされないリスクのある治療を受ける予後が良好な患者を同定するために有用である。新規の癌予後因子の必要性が非常に高まっている。
Ephレセプターはヒトゲノムのレセプターチロシンキナーゼの最も大きなファミリーをなしており、エフリン(ephrin)と呼ばれるリガンドと相互作用する(Kullander 等, Nat Rev Mol Cell Biol 2002、3:475-86に概説)。このファミリーは、配列同一性によって、タイプA及びタイプBのエフリンと称される、対応する膜貫通リガンドファミリーを有する2つのクラス、EphA及びEphBに分類される。EphB2レセプター(「EphB2」又は「EphB2R」)は、そのアミノ末端の半分にわたって伸びるシステインリッチなモチーフの後に2つのフィブロネクチンタイプIIのモチーフを有する細胞外領域を有する。ここに、保存されたキナーゼ領域及び膜貫通領域を特徴とする細胞内ドメインがある。癌において、EphB2発現が記載されている。例として、Cairns 等, 国際公開公報2003/000113、Mao 等, Cancer Res. 64, 781-788 (2004)参照。
【0005】
(発明の概要)
本願明細書に開示される本発明は、被検体からの生体試料におけるEphB2ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)の検出を含む方法であって、EphB2ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)の検出により被検体の癌が予知又は予測される方法を提供するものである。本方法は、mRNA発現を検出するアッセイ、酵素活性の存在を検出する酵素のアッセイ、免疫組織化学アッセイ及び本願明細書に記載の他の方法を含む様々なアッセイ様式で実行されうる。また、本発明は、大腸腺腫疾患(大腸腺腫に特徴がある疾患)を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド発現の検出を含む癌治療の選択方法、及び大腸腺腫疾患の治療方法を提供する。
【0006】
したがって、ある態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の評価方法であって、(a) 患者から生体試料を得る;(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出する;(c) 生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料(又はコントロール参照値)におけるEphB2の発現と比較する;そして(d) (c)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測することを含み、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現により、該患者の癌が予知される方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の評価方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料(又はコントロール参照値)におけるEphB2の発現と比較する;そして(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測することを含み、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現により、該患者の癌が予知される方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
【0007】
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の評価方法であって、該患者からの生体試料におけるEphB2の発現とコントロール試料におけるEphB2の発現との比較に基づいて該患者の癌の予後を予測することを含み、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現により、該患者の癌が予知される方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の評価方法であって、(a) 該患者から生体試料を得る;そして(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出することを含み、該患者の生体試料においてEphB2が発現する場合に、該患者において癌が予知される方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
【0008】
いくつかの実施態様では、癌の予後の予測には、癌と予測される又は癌と診断された患者の生存期間、再発のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者の進行のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者群の応答速度、癌と予測される又は癌と診断された患者又は患者群の応答期間、及び/又は癌と予測される又は癌と診断された患者の転移尤度の何れか一又は複数の予測又は予想(予知)を提供することが含まれる。いくつかの実施態様では、生存期間は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、生存期間は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、再発のない生存期間は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、再発のない生存期間は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、応答速度は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、応答速度は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、応答期間は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、応答期間は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、転移の尤度は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、転移の尤度は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、コントロール試料との相対的な患者の生体試料におけるEphB2発現の増加により、生存期間の延長が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料との相対的な患者の生体試料におけるEphB2発現の増加により、再発のない生存の延長が予測される。
【0009】
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の癌治療の選択方法であって、(a) 患者から生体試料を得る;(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出する;(c) 生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料(コントロール参照値)におけるEphB2の発現と比較する;(d) (c)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測する、このときコントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現により、該患者の癌が予知されるものであり;そして(e) (a)−(d)の工程の後に、(d)の工程において決定された該患者の予後に基づいて該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の癌治療の選択方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料におけるEphB2の発現と比較する;(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測する、このときコントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現により、該患者の癌が予知されるものであり;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
【0010】
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の癌治療の選択方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現とコントロール試料におけるEphB2の発現との比較に基づいて該患者の癌の予後を予測する、このときコントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現により、該患者の癌が予知されるものであり;そして(b) (a)の工程の後に、(a)の工程において決定された該患者の予後に基づいて該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
他の態様では、本発明は、患者の治療の選択方法であって、(a) 患者の生体試料を得る;(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出する、このとき該患者の生体試料においてEphB2が発現する場合に癌が予知されるものであり;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて、該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
【0011】
いくつかの実施態様では、癌は、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)及び肝細胞癌からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、癌は結腸直腸癌である。
他の態様では、本発明は、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの検出方法であって、(a) 生体試料を得る;そして(b) 生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現を検出することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、生体試料は大腸腺腫細胞及び/又は組織を含む。
他の態様では、本発明は、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの検出方法であって、生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現を検出することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、生体試料は大腸腺腫細胞及び/又は組織を含む。
他の態様では、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの検出方法であって、生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現とコントロール試料におけるEphB2の発現とを比較することを含む方法である。いくつかの実施態様では、生体試料は大腸腺腫細胞及び/又は組織を含む。
【0012】
他の態様では、本発明は、生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現を検出することを含む、大腸腺腫疾患の診断方法を提供する。
他の態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2抗体(例えば抗EphB2アンタゴニスト抗体)が投与されることによる、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法を提供する。
他の態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺癌を有する又は有すると思われる患者の治療方法を提供する。
他の態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2抗体又は有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法であって、さらにこのとき、抗EphB2抗体又は抗EphB2イムノコンジュゲートが投与される前、投与中又は投与後に、ヒト患者からの大腸腺腫細胞及び/又は組織においてEphB2の発現が検出される方法を提供する。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体又は抗EphB2イムノコンジュゲートが投与される前、投与中又は投与後に、EphB2の過剰発現が検出される。抗EphB2抗体又は抗EphB2イムノコンジュゲートの投与前;投与中;投与後;投与前と投与中;投与前と投与後;投与中と投与後;又は投与前、投与中及び投与後に発現が検出されてもよい。
いくつかの実施態様では、大腸腺腫疾患は、家族性大腸ポリープ症、Peutz-Jegher's症候群、若年性ポリープ症候群、遺伝性混合性ポリープ症候群、カウデン病、及びBannayan-Ruvalcaba-Riley症候群からなる群から選択される。
大腸腺腫疾患治療の選択又は癌治療の選択を伴う実施態様では、癌治療又は大腸腺腫疾患治療は、有効量の抗EphB2抗体又は、有効量の抗EphB2抗体を含有するイムノコンジュゲートの投与を含んでもよい。更なる他の実施態様では、治療は、化学療法、放射線療法及び手術の何れか一又は複数を含む。
【0013】
抗体の投与を伴ういくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、モノクローナル抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及び抗体断片からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14(2005年2月24日に寄託)により産生される抗体である。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14により産生される抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン(一又は複数)を含んでなる抗体であり、該抗体はヒトEphB2を特異的に結合する。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14により産生される抗体のHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2及び/又はHVR-H3からなる群から選択される配列を含有する少なくとも1(少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5及び/又は6)の高頻度可変性配列(一又は複数)(HVR(一又は複数))を含んでなり、該抗体はヒトEphB2を特異的に結合する。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14により産生される抗体と同じヒトEphB2上のエピトープと結合する抗体である。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、ヒトEphB2への結合に関して、米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14により産生される抗体と競合する抗体である。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、(a) 配列KSSQSLLNSGNQENYLA (配列番号1)を含むHVR-L1、(b) 配列GASTRES (配列番号2)を含むHVR-L2、(c) 配列QNDHSYPFT (配列番号3)を含むHVR-L3、(d) 配列SYWMH (配列番号4)を含むHVR-H1、(e) 配列FINPSTGYTDYNQKFKD (配列番号5)を含むHVR-H2、及び(f) 配列RLKLLRYAMDY (配列番号6)を含むHVR-H3、からなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5及び/又は6の高頻度可変領域(HVR)配列を含有する。一実施態様では、抗EphB2抗体は、配列:DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMNCKSSQSLLNSGNQENYLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDHSYPFTFGAGTKVEIKR (配列番号7)を有する軽鎖可変ドメインを含んでなる。一実施態様では、抗EphB2抗体は、配列:QVQLQQSGAELAKPGASVKMSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGFINPSTGYTDYNQKFKDKATLTVKSSNTAYMQLSRLTSEDSAVYYCTRRLKLLRYAMDYWGQGTTLTVSA (配列番号8)を有する重鎖可変ドメインを含んでなる。一実施態様では、抗EphB2抗体は、配列:DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMNCKSSQSLLNSGNQENYLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDHSYPFTFGAGTKVEIKR (配列番号7)を有する軽鎖可変ドメインを含んでなり、そして、配列:QVQLQQSGAELAKPGASVKMSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGFINPSTGYTDYNQKFKDKATLTVKSSNTAYMQLSRLTSEDSAVYYCTRRLKLLRYAMDYWGQGTTLTVSA (配列番号8)を有する重鎖可変ドメインを含んでなる。
【0014】
いくつかの実施態様では、抗EphB2イムノコンジュゲートは、毒素、化学療法剤、成長阻害性剤又は放射性物質を更に含む。いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートはメイタンシノイドを含んでなる。いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートはMMAEを含んでなる。
EphB2発現の検出を伴う実施態様では、EphB2ポリヌクレオチド発現及び/又はEphB2ポリペプチド発現が検出されうる。EphB2発現の検出を伴う実施態様では、EphB2 mRNA発現が検出される。他の実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、抗EphB2薬剤を用いて検出される。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、抗体を用いて検出される。モノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体及び/又は抗体断片を含む、任意の適切な抗体は検出のために用いられうる。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、免疫組織化学(IHC)を用いて検出される。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、IHCを用いて2以上にスコア化される。いくつかの実施態様では、EphB2変異体及び/又は断片が検出される。いくつかの実施態様では、変異体ポリペプチドは、天然配列のポリペプチド、いくつかの実施態様では、図1、3及び/又は5に示すポリペプチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸同一性を有する。他の実施態様では、変異体ポリペプチドは、ストリンジェントな条件下でEphB2ポリヌクレオチド配列、いくつかの実施態様では、図2、4及び/又は6に示すポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によって、コードされる。いくつかの実施態様では、変異体ポリヌクレオチドは、天然配列のポリヌクレオチド、いくつかの実施態様では、図2、4及び/又は6に示すポリヌクレオチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のポリヌクレオチド配列同一性を有する。他の実施態様では、変異体ポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下でEphB2ポリヌクレオチド配列、いくつかの実施態様では、図1、3及び/又は5に示すポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様では、EphB2変異体は生物学的に活性である。EphB2生物活性は当分野で公知であり、限定するものではないが、(a) EphB2リガンド(一又は複数)(例えばエフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4)を結合する、(b) EphB2リガンドを結合して、EphB2リガンド生物活性又はEphB2リガンドにより媒介される下流の経路を活性化する、(c) EphB2リガンド結合に応答してシグナルを伝達する、ことの何れか一又は複数が含まれる。
【0015】
EphB2発現の検出を伴ういくつかの実施態様では、EphB2発現の存在及び/又は欠如及び/又はレベルが検出されうる。EphB2発現は増加しうる。EphB2発現の欠如はわずかなレベルを含むか、最少のレベルであると解釈される。いくつかの実施態様では、試験生体試料中のEphB2発現は、コントロール生体試料(又は、コントロール発現レベル)について観察されるものより高い。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、コントロール生体試料よりも試験生体試料において、少なくともおよそ2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、150倍以上である。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、免疫組織化学(「IHC」)アッセイにおいて、決定され、染色強度について少なくとも2以上にスコア化される。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、IHCアッセイにおいて、決定され、染色強度について少なくとも1以上又は少なくとも3以上にスコア化される。いくつかの実施態様では、試験生体試料では、コントロール生体試料(又は、コントロール発現レベル)で観察されるものより低い。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、コントロール生体試料よりも試験生体試料において、少なくともおよそ2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、75分の1、100分の1、150分の1以下である。
【0016】
検出を伴ういくつかの実施態様では、前記方法は、一又は複数のEphB2リガンドの発現の検出を更に含む。
他の態様では、本発明は、EphB2ポリヌクレオチド(一又は複数)及び/又はポリペプチド(一又は複数)及び/又は抗EphB2イムノコンジュゲートを具備するキット、組成物及び製造品を提供する。いくつかの実施態様では、キット及び製造品は、本願明細書において、開示される何れかの方法のための指示書を更に具備する。
【0017】
(本発明のの詳細な説明)
ある態様では、本発明は、被検体、例えばヒト被検体からの生体試料中のポリペプチド(一又は複数)(例えばEphB2)を検出するための方法を提供する。驚くべきことに、本出願人は、EphB2の発現により癌の予後が予測できることを発見した。したがって、開示された方法は、患者を治療するために好適な治療法を選択することを含み、前記疾患の将来の経過を予測するために有用なデータ及び情報を得るための、簡便で、有効で、費用効率がよいと思われる手段を提供することができる。
他の態様では、また、本発明は、癌治療の選択方法を提供する。いくつかの実施態様では、前記の処置には、抗EphB2薬剤(例えば抗体)の有効量、又は細胞障害性剤、例えば化学療法剤、成長阻害性剤、毒素(例えば合成、細菌、真菌、植物又は動物の起源の活性な毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした抗EphB2抗体を含有するイムノコンジュゲートの有効量の投与を含む。
他の態様では、本発明は、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者においてEphB2発現を検出する方法、大腸腺腫疾患の診断方法、及び大腸腺腫疾患の治療方法を提供する。
また、キット、組成物及び製造品を提供する。
【0018】
一般的技術
本願明細書中に記載又は引用される技術及び手順は、一般に十分に理解されるものであり、当業者によって従来の方法論を用いて共通して実施されるものである。その例として、以下の文献に記載される方法論が広く利用されている。Sambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, 等 編集, (2003));the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames 及び G. R. Taylor 編集 (1995))、Harlow and Lane, 編集 (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, 編集. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, 編集, 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, 編集, 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R. I. Freshney), 編集, 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, 及び D. G. Newell, 編集, 1993-8) J. Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir 及び C. C. Blackwell, 編集);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller 及び M. P. Calos, 編集, 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis 等, 編集, 1994);Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan 等, 編集, 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley 及び Sons, 1999);Immunobiology (C. A. Janeway 及び P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practical approach (D. Catty., 編集, IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd 及び C. Dean, 編集, Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow 及び D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti 及び J. D. Capra, 編集, Harwood Academic Publishers, 1995);及び Cancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita 等, 編集, J.B. Lippincott Company, 1993)。
【0019】
定義
ここで用いる「EphB2」(「EphB2R」とも交換可能に称される)は、ヒトのEphB2レセプターを含む、すべての哺乳類種の天然配列のEphB2レセプターとして定められる。EphB2又は他の任意のポリペプチドと関連した「天然配列の」なる用語は、調整方法にかかわらず、天然由来の対応するポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。このような天然配列のポリペプチドは、天然から単離してもよいし、又は組換え及び/又は合成手段ないしその何れかの組合せにより産生されうる。「天然配列の」なる用語は、特に天然に生じる切断型ないし分泌型(例えば細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異体型(例えば選択的スプライシング型)及び天然に生じる対立遺伝子変異体を包含する。ここで用いる「EphB2」は、タンパク質及び/又はポリペプチド発現を指す。通常、この用語は、ポリペプチド及びポリヌクレオチドの発現を指す。しかしながら、この場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの何れかを参照することを意図することを表しうる。
【0020】
「EphB2細胞外ドメイン」又は「EphB2 ECD」なる用語は、膜貫通及び細胞質のドメインから基本的に遊離したEphB2の形態を指す。通常、ECDは、このような膜貫通及び細胞質のドメインの1%未満、好ましくは、このようなドメインの0.5%未満を占めるであろう。本発明のポリペプチドについて同定された何れかの膜貫通領域(一又は複数)がそのタイプの疎水性ドメインを同定するために当分野で通常用いられる判定基準に従って同定されることは理解されるであろう。膜貫通ドメインの正確な境界域は、始めに同定されたドメインの何れかの末端のおよそ最大5アミノ酸の分だけ異なりうる。好ましい実施態様では、ECDは、膜貫通及び細胞質ないしは細胞内のドメイン(そして膜は結合していない)から遊離しているポリペプチドの可溶性の、細胞外ドメイン配列から成る。
ここで用いる「EphB2リガンド」なる用語は、すべての哺乳類種の天然配列のエフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及びエフリン-A4を含む、すべての哺乳類種の天然配列のEphB2リガンドを含む。ここで用いる「EphB2リガンド」は、タンパク質及び/又はポリペプチド発現を指す。通常、この用語はポリペプチド及びポリヌクレオチドの発現を指す。しかしながら、この場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの何れかを参照することを意図することを表しうる。
【0021】
「癌の予後」は、一般に癌の蓋然的な経過又は結果の予想又は予測を指す。ここで用いるように、癌の予後は、癌と予測される又は癌と診断された患者の生存期間、再発のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者の進行のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者群の応答速度、癌と予測される又は癌と診断された患者又は患者群の応答期間、及び/又は癌と予測される又は癌と診断された患者の転移尤度の何れか一又は複数の予想又は予測を含む。ここで用いる「癌の予後予測」は、癌の蓋然的な経過又は結果の予想又は予測を提供することを意味する。いくつかの実施態様では、「癌の予後予測」は、癌と予測される又は癌と診断された患者の生存期間、再発のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者の進行のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者群の応答速度、癌と予測される又は癌と診断された患者又は患者群の応答期間、及び/又は癌と予測される又は癌と診断された患者の転移尤度の何れか一又は複数の予想又は予測(予後予測)を提供することを含む。
【0022】
「被検体」または「患者」は、治療が望まれる任意の単一の被検体、例えばヒト、ウシ、イヌ、モルモット、ウサギ、ニワトリなどを意味する。また、臨床試験に用いられる疾患の臨床的な特徴を全く示さない任意の被検体、または疫学的な研究に用いられる被検体、またはコントロールとして用いられる被検体も被検体に含まれる。
本明細書中で用いられる「哺乳動物」なる用語は、哺乳動物と分類される任意の動物、例えばヒト、ウシ、ウマ、イヌおよびネコを意味する。
【0023】
「生体試料」(「試料」又は「組織ないし細胞試料」と交換可能に称される)は、固体から入手した様々なタイプの試料を包含し、診断アッセイ又はモニタリングアッセイに用いられうる。この定義には、血液及び生体起源の他の液体試料、生検標本や組織培養物やそれらに由来する細胞などの固形組織試料、及びこれらのプロジェニーが包含される。また、この定義には、入手後何らかの方法、例えば試薬で処理する、可溶化する、又はタンパク質やポリヌクレオチドなどの特定の成分について濃縮する、又は切片化のために半流動性基質ないしは固形基質に包埋することによって操作してある試料が含まれる。「生体試料」なる用語は臨床試料を包含し、培養物中の細胞、細胞上清物、細胞溶解物、血清、血漿、体液、及び組織試料も含む。生体試料の供給源は、新鮮な、凍結されたおよび/または保存されていた臓器や組織試料または生検または吸引による固形組織;血液または血液成分;大脳脊髄液、羊水、腹水又は間質液などの体液;被検体の妊娠期または発生期の任意の時期の細胞であってもよい。いくつかの実施態様では、生体試料は原発性腫瘍または転移性腫瘍から得られる。生体試料は、防腐剤、抗凝血物質、バッファ、固定液、栄養分、抗生物質など天然の組織にはもともと混在していない化合物を含んでもよい。
【0024】
本明細書中の組織試料の「切断部分」とは、組織試料の一部または一片、例えば組織試料から切り出した組織または細胞の一薄片を意味する。組織試料の複数の切断部分は採取され、本発明の分析に供されうることが理解される。いくつかの実施態様では、組織試料の同じ切断部分は形態学的および分子的レベルで分析されるか、タンパク質および核酸の両方に関して分析される方法を含む。
【0025】
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドポリマーを称し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。もし存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立て(アセンブリ)の前後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは重合化後に、例えば標識成分と結合することによりさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ」、類似体による自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電性結合(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダーゼ、カルバマート(cabamate)等)及び荷電性結合(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、介入物を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された結合を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖類に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる結合を調製するために活性化されてもよく、もしくは固体状支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャッピング基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシル類は標準的な保護基に誘導されてもよい。さらにポリヌクレオチドは当該技術で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ-又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び脱塩基性ヌクレオチド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル結合は代替の結合基で置き換えてもよい。これらの代替の結合基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのRまたはR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての架橋が同一である必要はない。先の記述において、RNA及びDNAを含む、ここで引用された全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0026】
「遺伝子」は、タンパク質をコードする又は転写する、あるいは他の遺伝子発現を調節する際に機能的に働く任意のポリヌクレオチド配列またはその一部を意味する。遺伝子は、機能的なタンパク質のコードを担うすべての核酸またはタンパク質のコードあるいは発現を担う核酸の一部のみを構成してもよい。ポリヌクレオチド配列は、エクソン、イントロン、開始領域または終末領域、プロモータ配列、他の調節配列または遺伝子に近接する特定の領域内に遺伝的な異常を含有してもよい。
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブや抗体などの試薬に直接的または間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識または蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0027】
ここで「抗体」なる用語は、広い意味で用いられ、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成した多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片の範囲にわたる。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つのCDRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のCDRは、FR領域に近接して結合され、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害活性への抗体の関与を示す。
【0028】
「抗体断片」は、完全な抗体の一部のみ、一般的には例えば完全な抗体の抗原結合部位で抗原結合能を有するものなどが含まれる。この定義に包含される抗体断片の例には、(i) VL、CL、VH及びCH1ドメインを有するFab断片;(ii) Fab'断片、これはCH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を有するFab断片である;(iii) VH及びCH1ドメインを有するFd断片;(iv) VHとCH1ドメインとCH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を有するFd'断片;(v) 抗体の単一アームのVL及びVHドメインを有するFv断片;(vi) VHドメインからなるdAb断片(Ward 等, Nature 341, 544-546 (1989));(vii) 単離したCDR領域;(viii) F(ab‘)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2つのFab'断片を含んでなる二価断片;(ix) 単鎖抗体分子(例えば、単鎖Fv;scFv)(Bird 等, Science 242:423-426 (1988);及びHuston 等, PNAS (USA) 85:5879-5883 (1988));(x) 同じポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含んでなる、2つの抗原結合部位を有する「ダイアボディ」(例として、欧州特許404,097;国際公開公報93/11161;及びHollinger 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);(xi) 相補的な軽鎖ポリペプチドとともに抗原結合領域の一部を形成するタンデムFdセグメントの一部(VH-CH1-VH-CH1)を含んでなる「直鎖抗体」(Zapata 等 Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995);及び米国特許第5,641,870)などがある。
【0029】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、一般的に少量存在しうる天然に生じうる突然変異形を除いて同一のものである。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」との修飾語句は、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作成することもできる。
【0030】
ここで言うモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するまたは類似する重鎖および/または軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来または他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するまたは類似するものである(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも一又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0031】
本願明細書において、用いられる「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列中の高頻度に可変しているおよび/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。通常、抗体は、VH(H1、H2、H3)の3つと、VL(L1、L2、L3)の3つの計6つの高頻度可変領域を含んでなる。多くの高頻度可変領域が描写されており、本願明細書において、包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列多様性に基づいており、最も一般的に用いられるものである(Kabat 等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置を指す(Chothia 及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM高頻度可変領域は、KabatCDRとChothia構造ループとが組み合わさったものであり、Oxford Molecular's AbM抗体モデリングソフトウェアにより使用されている。「接触」高頻度可変領域は、利用できる複雑な結晶構造の分析に基づくものである。
【0032】
「ヒト抗体」は、ヒトにより生成される抗体のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を有するもの、及び/又は本明細書中に開示したヒト抗体をつくるためのいずれかの技術を使用して、つくられたものである。この定義におけるヒト抗体は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特別に除く。ヒト抗体は当分野で公知の様々な技術を用いて産生することができる。ある実施態様では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージディスプレイから選択される(Vaughan 等 Nature Biotechnology 14:309-314 (1996);Sheets 等 PNAS (USA) 95:6157-6162 (1998);Hoogenboom 及び Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks 等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。また、ヒト抗体は、内在性の免疫グロブリン遺伝子を部分的又は完全に不活性化しているマウスなどのトランスジェニック動物にヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作製することができる。誘導すると、遺伝子再編成、アセンブリ及び抗体レパートリを含めて、すべての点においてヒトに見られるものと非常に類似したヒト抗体の産生が観察される。この方法は、例えば米国特許第5,545,807号;米国特許第5,545,806号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,661,016、及び以下の科学文献:Marks 等, Bio/Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg 等., Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368:812-13 (1994);Fishwild 等, Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996);Lonberg 及び Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)に記載される。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球の不死化によって調製されうる(このようなBリンパ球は個体から回収してもよいし、インビトロで免疫化してもよい)。例として、Cole 等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner 等, J. Immunol., 147 (1):86-95 (1991);及び米国特許第5,750,373号を参照のこと。
【0033】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のCDRに1つ以上の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させる。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産できる。Marks他は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas他、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier他、Gene, 169:147-155 (1995);Yelton他、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995);Jackson他, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995);およびHawkins他, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
目的の抗原に「結合する」抗体とは、抗体が抗原に対する治療薬及び/又は検出薬(例えば診断薬)及び/又は予後予測薬として有用となるように十分な親和性及び/又は結合活性を有して抗原に結合することができるものである。いくつかの実施態様では、目的の抗原を「結合する」抗体は、具体的又は好ましくは、目的の抗原を結合する。いくつかの実施態様では、目的の抗原を「結合する」抗体は目的の抗原のみを結合する。
【0034】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、そのアンタゴニスト又は抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)ローリー法で測定した場合95%を越える抗体、最も好ましくは99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端或いは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、或いは、(3)クーマシーブルー或いは好ましくは銀染色を用いた非還元或いは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
【0035】
ポリペプチド「変異体」は、天然配列のポリペプチドと少なくともおよそ80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを意味する。このような変異体は、例えば、ポリペプチドのN末端又はC末端で一又は複数のアミノ酸残基が付加されたか又は欠失されたポリペプチドを含む。通常、変異体は、天然配列のポリペプチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸同一性を有する。
ポリヌクレオチド「変異体」は、天然配列のポリヌクレオチドと少なくともおよそ80%のポリヌクレオチド配列同一性を有するポリヌクレオチドを意味する。このような変異体は、例えば、ポリヌクレオチドの5'端又は3'端で一又は複数のヌクレオチドが付加されたか又は欠失されたポリヌクレオチドを含む。通常、天然配列のポリヌクレオチドと少なくともおよそ80%の配列同一性、好ましくは少なくともおよそ81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
【0036】
ポリペプチド「断片」(「領域」とも称する)は、ポリペプチド配列の少なくともおよそ5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950又は950以上の隣接するアミノ酸を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドである。
ポリヌクレオチド「断片」(「領域」とも称する)は、ポリヌクレオチド配列の少なくともおよそ20、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、750、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、3400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500又は4500以上の隣接するヌクレオチドを有するポリヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドである。
【0037】
「癌」、「癌性」又は「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を称するか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、芽細胞腫、及び肉腫が含まれる。このような癌のより具体的な例には、結腸直腸癌、直腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、メラノーマ及び乳癌が含まれる。
「治療的有効量」という用語は、哺乳類の疾病や疾患の治療のために有効な薬剤の量に相当する。癌の場合は、治療的有効量の薬剤により、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の成長をある程度阻害し;及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげることが可能である。ある程度、薬剤は、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を殺すことが可能で、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、例えば生存期間、病状の進行時間(TTP)、応答速度(RR)、応答期間、及び/又は生活の質の測定により測定される。大腸腺腫の場合、治療的有効量の薬剤により、例えば、腺腫細胞数の減少;腺腫サイズの減少;腺腫数の減少;腺腫の成長のある程度の阻害;及び/又は本疾患に関係する一又は複数の症状のある程度の軽減しうる。
【0038】
ここで用いる「治療」は、有益ないしは所望の臨床成績を得る手法である。本発明の目的を達成するために、有益ないしは所望の臨床結果は、癌細胞の数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢臓器への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度の遅延及び/又は停止)、腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延及び/又は停止)、ある程度の腫瘍成長の阻害、及び/又は、疾患と関係する一又は複数の症状の軽減、腫瘍のサイズの縮小、疾患から生じる症状の減少、疾患に罹患しているものの生活の質の向上、疾患の治療を必要とする他の薬物治療の用量の減少、疾患の進行の遅延、及び/又は患者の生存の延長の一又は複数を含むが、これに限定されるものではない。
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドないしタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドないしタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドないしタンパク質の診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドないしタンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端或いは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、(2)クーマシーブルー或いは好ましくは銀染色を用いた非還元或いは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで、或いは、(3)質量分光法又はペプチドマッピング技術による均一性まで精製される。単離された物質には、その自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内にインサイツのポリペプチドないしタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドないしタンパク質は少なくとも一つの精製工程により調製される。
【0039】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」なる用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書中で交換可能に用いられる。ポリマーは線形でも又は分岐したものでもよく、修飾したアミノ酸を含んでなってもよく、非アミノ酸により中断されたものでもよい。また、この用語は、天然に又はインターベンション、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化又は他の任意の操作又は修飾、例えば標識成分とのコンジュゲートにより修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する。また、例えば、アミノ酸の一又は複数の類似体を含有するポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、並びに当分野に公知の他の修飾を含有するポリペプチドもこの定義内に含まれる。
【0040】
本明細書中で同定された配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないで、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要であれば間隙(ギャップ)を導入して、参照配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法により達成可能であり、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な指定のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のためには、%アミノ酸同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって作成され、そのソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, Californiaを通して公的に入手可能である。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0041】
「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、目的の参照核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。ここでの目的のためには、%核酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0042】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングに必要な温度が高くなり、プローブが短くなるとそれに必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合に、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション配列の間で所望される同一性の程度が高くなればなるほど、用いることができる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにすることになり、低い温度はストリンジェントを低下させることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明については、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Wiley Interscience Publishers, 2003)を参照のこと。
【0043】
ここで定義される「高度なストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄に低イオン強度及び高温度を用いる、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム;又は(3)42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%の硫酸デキストラン溶液を用いて、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中と55℃の50%ホルムアミドにて洗浄し、ついで55℃で、EDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行うものによって同定される。
【0044】
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 1989)に記載されているように同定され、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中にて37℃で終夜インキュベーションし、次いで1×SSC中にて約37−50℃でフィルターを洗浄することを含む。当業者であれば、プローブ長などの因子に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかは理解されるであろう。
【0045】
「検出」は、直接的及び間接的な検出を含む任意の検出手段を含む。例えば、「検出可能なわずかな」産物は直接的又は間接的に観察されてもよく、この用語はいくらかの減少(産物を含まない)も示す。同様に、直接的又は間接的に観察されるかどうかにかかわらず「検出可能な多くの」産物はいくらかの増加も意味する。
「含んでなる」は含むことを意味する。
ここで用いられる、単数形「a」、「and」及び「the」には、明らかな記載がない限り複数形も含まれる。ゆえに、例えば、「遺伝的な変更」なる表現は複数のこのような変更を含み、「プローブ」なる表現は一又は複数のプローブに対する表現を含む。
【0046】
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシン又はその他インターカレート剤、酵素及びその断片、例えば核溶解性酵素、抗生物質、及び小分子毒素などの毒素、又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、その断片及び/又はその変異体を含むもの、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むことを意図する。他の細胞障害性薬が下記に記載されている。殺腫瘍性薬剤により腫瘍細胞の破壊が起こる。
【0047】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TM1を含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ラソキサントロン(losoxantrone);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETM クレモフォール(Cremophor)を含まない、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビンNAVELBINE(登録商標);ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン(capecitabine)(XELODA(登録商標));上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体;並びに、上記のうちの2以上の組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニソロンの併用治療の略記号であるCHOP、及び5-FUとロイコボリン(leucovovin)と組み合わされるオキサリプラチン(ELOXATINTM)による治療投薬計画の略記号であるFOLFOXが含まれる。
【0048】
また、癌の成長を促進しうるホルモンの影響を調節、低減、阻止(ブロック)又は阻害するように作用する抗ホルモン剤もこの定義に含まれる。これらはホルモン類自体でもよい。例として、抗卵胞ホルモン類及び、選択的なエストロゲンレセプターモジュレータ類(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン及びFARESTON(登録商標)トレミフェン、抗プロゲステロン類、エストロゲンレセプター下方制御因子(ERD)、卵巣を抑制するか又は一時停止させるように機能する薬剤、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば、LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)酢酸ロイプロリド、ゴセレリンアセテート、ブセレリンアセテート及びトリプトレリン(tripterelin)、他の抗アンドロゲン類、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド、及び、副腎のエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害薬、例として、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標) エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標) ボロゾール、FEMARA(登録商標) レトロゾール及びARIMIDEX(登録商標) アナストロゾールなどがある。加えて、化学療法剤のこのような定義には、ビスホスホネート、例えばクロドロン酸(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロン酸、NE-58095、ZOMETA(登録商標) ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロン酸、SKELID(登録商標) チルドロン酸又はACTONEL(登録商標)、リセドロン酸、並びにトロキサチタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの、例として、例えばPKC-α、Raf、H-Ras及び上皮性成長因子レセプター(EGF-R)、ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン、LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター、ABARELIX(登録商標) rmRH、ラパチニブジトシラート(ErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子インヒビター、GW572016とも称される)、及び、上記の何れかの薬学的に受容可能な塩類、酸又は誘導体が含まれる。
【0049】
ここで用いられる際の「成長阻害剤」は、細胞(例えばEphB2発現細胞)の成長をインビトロ又はインビボで阻害する化合物又は組成物を意味する。即ち、成長阻害剤は、S期の細胞(例えばEphB2発現細胞)の割合を有意に減少させるものである。成長阻害剤の例は、細胞周期を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシンを含む。G1を停止するこれらの薬剤は、S期停止にも溢流し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle reguration, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakamiら, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)はイチイ由来の抗癌剤である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標), Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標), Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルはチュービュリン二量体から微小管の集合(アセンブリ)を促進して、脱重合を予防することによって微小管を安定させる。その結果、細胞の有糸分裂が阻害される。
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は、(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
【0050】
発明の方法
EphB2の検出を含む方法
ある態様では、本発明は、癌を有する又は有すると思われる患者からの生体試料中のEphB2ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)を検出することを含み、この検出により患者の癌の予後が予測又は予想される方法を提供する。驚くべきことに、本出願人は、EphB2の発現により癌の予後が予測できることを発見した。したがって、開示された方法は、患者を治療するために好適な治療法を選択することを含み、前記疾患の将来の経過を予測するために有用なデータ及び情報を得るための、簡便で、有効で、費用効率がよいと思われる手段を提供することができる。
したがって、ある態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の予後の評価方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料(又はコントロール参照値)におけるEphB2の発現と比較する;そして(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測することを含み、EphB2発現により患者の癌の予後を予測する方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な該患者の試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な該患者の試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
【0051】
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の予後の評価方法であって、(a) 患者の生体試料を得る;そして(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出することを含み、EphB2発現により、該患者の癌を予測する方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
癌の例は、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍などであるが、これに限定されるものではない。このような癌のより具体的な例は、扁平細胞癌(例えば上皮性扁平細胞癌)、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞性癌、胃腸癌を含む胃又は胃癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿路癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜ないしは子宮上皮癌、唾液腺上皮癌、腎臓又は腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門の上皮癌、陰茎上皮癌、メラノーマ、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、脳並びに頭頸部癌、及び関連する転移などがある。いくつかの実施態様では、癌は、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)及び肝細胞癌からなるグループから選択される。いくつかの実施態様では、癌は結腸直腸癌である。他の実施態様では、癌は手術によって、潜在的に治療可能な大腸癌である。他の実施態様では、癌は手術不可能の大腸癌である。いくつかの実施態様では、癌は転移性大腸癌である。さらに他の実施態様では、癌は本願明細書において、開示されるように、EphB2発現を用いた予後の分析から利益を得る任意の疾患、例として、EphB2発現を増加ないしは減少に特徴がある疾患である。
【0052】
一般に、本明細書中で用いるように、癌の予後の予測には、癌と予測される又は癌と診断された患者の生存期間、再発のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者の進行のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者群の応答速度、癌と予測される又は癌と診断された患者又は患者群の応答期間、及び/又は癌と予測される又は癌と診断された患者の転移尤度の何れか一又は複数の予測又は予想(予知)を包含する。生存期間は治療の初回管理から死亡までの時間として定義される。また、生存期間は治療中の患者の死亡のリスクを表す、コントロール群に対する治療群の危険率(HR)を層別化することによって測定することもできる。再発のない生存期間は治療から癌の再発までの時間として定義される。疾患進行までの時間は治療の管理から疾患進行までの時間として定義される。応答速度は治療に応答した治療患者のパーセンテージとして定義される。応答速度は治療への初回応答から疾患進行までの時間として定義される。いくつかの実施態様では、生存期間と進行のない生存期間が予測される。いくつかの実施態様では、予後の予測は補助療法がない条件下での結果を決める。
【0053】
いくつかの実施態様では、癌の予後の予測には、癌と予測される又は癌と診断された患者の生存期間、再発のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者の進行のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者群の応答速度、癌と予測される又は癌と診断された患者又は患者群の応答期間、及び/又は癌と予測される又は癌と診断された患者の転移尤度の何れか一又は複数の予測又は予想(予知)を提供することが含まれる。いくつかの実施態様では、生存期間は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、生存期間は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、再発のない生存期間は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、再発のない生存期間は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、応答速度は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、応答速度は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、応答期間は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、応答期間は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、転移の尤度は増加の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、転移の尤度は減少の予測又は予想である。いくつかの実施態様では、コントロール試料との相対的な患者の生体試料におけるEphB2発現の増加により、生存期間の延長が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料との相対的な患者の生体試料におけるEphB2発現の増加により、再発のない生存の延長が予測される。
【0054】
EphB2は当分野で公知である。例示的なEphB2ポリヌクレオチドとアミノ酸配列を図1−6に示す。例示的なEphB2配列は、例えばAnnu. Rev. Neurosci. 21:309-345 (1998), Int. Rev. Cytol. 196:177-244 (2000);国際公開公報2003042661;国際公開公報200053216;国際公開公報2004065576;国際公開公報2004020583;国際公開公報2003004529 (頁 128-132);及び国際公開公報200053216にさらに開示される。本願明細書中で用いる、EphB2は、天然に生じる切断型又は分泌型(例えば細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変態型(例えば選択的スプライシング型)及び完全長ポリペプチドの天然に生じる対立遺伝子変異型を包含する。
また、本発明の方法はEphB2変異体ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)を検出しうる。いくつかの実施態様では、変異体ポリペプチドは、天然配列のポリペプチド、いくつかの実施態様では、図1、3及び/又は5に示すポリペプチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸同一性を有する。他の実施態様では、変異体ポリペプチドは、ストリンジェントな条件下でEphB2ポリヌクレオチド配列、いくつかの実施態様では、図2、4及び/又は6に示すポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施態様では、変異体ポリヌクレオチドは、天然配列のポリヌクレオチド、いくつかの実施態様では、図2、4及び/又は6に示すポリヌクレオチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のポリヌクレオチド配列同一性を有する。他の実施態様では、変異体ヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下でEphB2ポリヌクレオチド配列、いくつかの実施態様では、図1、3及び/又は5に示すポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様では、EphB2変異体は生物学的に活性である。EphB2生物活性は当分野で公知であり、限定するものではないが、(a) EphB2リガンド(一又は複数)(例えばエフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4)を結合する;(b) EphB2リガンドを結合して、EphB2リガンド生物活性又はEphB2リガンドにより媒介される下流の経路を活性化する;(c) EphB2リガンド結合に応答してシグナルを伝達する、ことの何れか一又は複数が含まれる。本発明の方法はEphB2断片も検出しうる。
【0055】
発現の検出は質的又は量的なものでありうる。EphB2発現の存在及び/又は欠如及び/又はレベル(量)が検出されうる。EphB2発現の欠如はわずかなレベルを含むか、最少のレベルであると解釈される。試験生体試料中のEphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの発現は、コントロール生体試料(又は、コントロール発現レベル)について観察されるものより高い(「過剰発現」と称する)。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、試験生体試料において、少なくともおよそ2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、150倍又は150倍以上である。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、免疫組織化学(「IHC」)アッセイにおいて決定され、染色強度について少なくとも2以上にスコア化される。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、IHCアッセイにおいて決定され、染色強度について少なくとも1以上又は少なくとも3以上にスコア化される。試験生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの発現は、コントロール生体試料で観察されるものより低い(「過少発現」と称する)。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、試験生体試料において、少なくともおよそ2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、75分の1、100分の1、150分の1又は150分の1以下である。
【0056】
当分野で周知のように、試験生体試料(すなわち、癌を有する又は癌を有すると思われる患者からの生体試料)におけるEphB2発現を好適なコントロール試料と比較しうる。例示的なコントロールには、類似の正常試料(例えば、試験生体試料に存在するのと同じタイプの正常な非癌性組織又は細胞)、同じ患者からの一致した正常試料、汎用性のコントロール試料、又は正常参照値(コントロール参照値とも称する)などがある。本願明細書中で用いられる、「コントロール」又は「コントロール試料」なる用語は正常参照値を包含する。発現レベル(例えば発現の有無又は量)の比較方法は当分野で公知であり、そのいくつかは本願明細書中に記載され、例示される。
本願明細書中で検討される、生体試料中のEphB2は、当分野で周知の多くの方法、例えば、限定するものではないが、免疫組織化学及び/又はウェスタン分析、生化学的な酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、mRNAのノーザン分析及び/又はPCR分析、及びゲノムサザン分析(例えば遺伝子欠損又は増幅を試験するため)、並びに遺伝子、タンパク質及び/又は組織アレイ分析によって行われうる多様なアッセイの何れか一によって検出することができる。ポリヌクレオチド及びポリペプチドの状態を評価する典型的なプロトコールは、例えばAusubel 等 編集, 2003にみられ、そのいくつかは本願明細書中に記載され、例示される。
【0057】
EphB2ポリペプチドの検出
ある態様では、本発明は、被検体、例えばヒト患者からの生体試料中のポリペプチド(一又は複数)(例えばEphB2)(例えばポリペプチドの有無又は量)を検出するための方法を提供する。多様なポリペプチドの検出方法を行うことができ、その方法には、例えば免疫組織化学分析、免疫沈降法、ウェスタンブロット分析、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光色素活性化細胞分類(FACS)、質量分光法、タンパク質マイクロアレイなどが含まれる。
いくつかの実施態様では、生体試料中のEphB2は、(a) 抗体、その断片又はタンパク質(例えば組み換えタンパク質)などのEphB2結合剤と該試料を作用させる;そして(b) 該試料中のEphB2結合剤-EphB2ポリペプチド複合体を検出することによって検出される。
抗EphB2抗体は当分野で公知であり(例えば、カタログ番号AF467, R&D Systems, Minneapolis, MN)、当分野で周知の方法を用いて生成しうる。抗EphB2抗体は、(a) EphB2に結合する;(b) EphB2活性化をブロック又は低減する;(c) EphB2リガンド(例えば、エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4)活性化及び/又は結合をブロック又は低減する、の特徴(当分野で周知のアッセイ)の何れか一又は複数を表す。EphB2活性化についてのアッセイをMao 等 Cancer Res. 64: 781-788, 2004に記載する。付加的な例示的抗EphB2抗体を本願明細書中に記載する。
【0058】
抗EphB2抗体は、EphB2を結合しうる、好ましくはEphB2を結合する又はEphB2のみを結合する。いくつかの実施態様では、抗体はEphB2を結合し、EphB1R及び/又はEphB3Rと有意に交差反応しない。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体はEphB2を結合し、EphB1R、EphB3R、EphB4R、EphB5R及び/又はEphB6Rと有意に交差反応しない。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、少なくともおよそ5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940又は940以上の隣接するアミノ酸を有するEphB2ポリペプチド断片を結合する。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、図2、4又は6に示す少なくともおよそ5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940又は940以上の隣接するアミノ酸を有するEphB2ポリペプチド断片を結合する。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、ヒトEphB2、マウスEphB2、齧歯類EphB2、及び/又はサルEphB2を結合しうる。いくつかの実施態様では、抗EPHB2抗体はヒトEphB2を結合する。いくつかの実施態様では、抗体はEphB2 ECDに結合する。EphB2 ECDは当分野で公知である。抗EphB2薬剤(例えば抗EphB2抗体)は一又は複数の天然配列のEphB2ポリペプチドを認識しうることが理解される。一又は複数のこのようなポリペプチドを結合する薬剤(そのような抗体)を選択すること、及びさらに薬剤が一又は複数のそのようなポリペプチドを認識するかどうかを決定することは当分野の常法である。
【0059】
EphB2結合領域を含んでなる抗EphB2タンパク質には、例えば、エフリン-B1イムノアドヘシン、エフリン-B2イムノアドヘシン、エフリン-B3イムノアドヘシン及びエフリン-A4イムノアドヘシンが含まれる。便宜上、抗EphB2抗体を用いた検出は一般的に本願明細書中で検討される。一般的に、抗EphB2薬剤は、本願明細書中に記載の方法において抗体の代わりに(抗体に加えて)用いられうる。
【0060】
試料におけるタンパク質の発現は、免疫組織化学及び染色プロトコールを用いて試験しうる。組織切片の免疫組織化学染色は、試料中のタンパク質の存在を評価ないしは検出するための確実な方法であることが示されている。免疫組織学法(「IHC」)技術は、抗体を用いて、一般的には色素生産性方法または蛍光性方法によって、インサイツで細胞性抗原を探索して視覚化する。試料の調整では、哺乳動物(典型的にはヒト患者)の組織または細胞試料を用いてもよい。試料の例として、大腸、乳房、前立腺、卵巣、肺、胃、膵臓、リンパ系および白血球などの癌細胞が含まれるが、これらに限定するものではない。前記試料は、当分野で公知の様々な手順、限定するものではないが、外科的切除、吸引または生検などによって採取することができる。組織は新鮮なものでも凍結したものでもよい。一実施態様では、前記試料は固定し、パラフィンなどに包埋する。前記組織試料は従来の方法によって固定(すなわち保存)されてもよい(例として、“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology,” 3rd edition (1960) Lee G. Luna, HT (ASCP) Editor, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, Editor, Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)。当分野の通常の技術者は、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液を選択することは理解するところであろう。また、当分野の通常の技術者は、組織試料の大きさおよび用いる固定液に応じて固定の長さを決定することも理解するであろう。実施例では、中性緩衝ホルマリン、ブアン固定液またはパラホルムアルデヒドを用いて試料を固定してもよい。通常、まず試料を固定し、次いで段階的に増加させたアルコールによって、脱水し、パラフィンまたは他の切片溶液に浸透させて包埋し、組織試料を切断できるようにする。別法として、組織を切断して、得られた切片を固定してもよい。例として、従来の方法によって、組織試料を包埋して、パラフィンで処理してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。使用されうるパラフィンの例として、Paraplast、BroloidおよびTissuemayがあるが、これらに限定するものではない。組織試料を包埋すると、試料をミクロトーム等によって、切断してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。この手順の例として、切片はおよそ3ミクロンからおよそ5ミクロンの範囲の厚さでよい。切断すると、いくつかの標準的な方法によって、切片をスライドに付着させてもよい。スライド接着剤の例として、シラン、ゼラチン、ポリ‐L‐リジンなどがあるが、これに限定されるものではない。例として、パラフィン包埋切片は、正に荷電したスライドおよび/またはポリ‐L‐リジンでコートしたスライドに付着させてもよい。包埋材料としてパラフィンを用いた場合、組織切片は通常、脱パラフィン化して、水に再水和させる。組織切片は、いくつかの従来の標準的な方法によって、脱パラフィン化してもよい。例えば、キシレンおよび段階的に減少するアルコールを用いてもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。別法として、Hemo-De7(CMS, Houston, Texas)などの市販の脱パラフィン化非有機薬剤が用いられてもよい。
【0061】
場合によって、試料の調整の後に、組織切片をIHCを用いて分析してもよい。IHCは、形態学的染色および/または蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて行ってもよい。IHCの直接アッセイおよび間接アッセイの2つの一般的な方法が有用である。第一のアッセイでは、標的抗原(例えばEphB2)に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる酵素標識一次抗体または蛍光タグ付加一次抗体などの標識された試薬を用いる。代表的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、次いで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原を視覚化させるために色素生産性基質ないしは蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと反応するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。
一般的に、免疫組織化学に使用する一次および/または二次抗体は、検出可能な成分にて標識されるであろう。通常、以下の種類に分類できる多くの標識が利用可能である:
【0062】
(a) ラジオアイソトープ、例えば35S、14C、125I、Hおよび131I。抗体は例えばImmunology, Volumes 1 and 2, Coligen 等, 編集 Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて放射性同位体にて標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b) コロイド金粒子
(c) 希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン又はSPECTRUM ORANGE7およびSPECTRUM GREEN7などの市販の蛍光体および/または上記の何れか一ないしは複数の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(d) 様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測器を用いて)か、またはエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivanら., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0063】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i) 基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii) 色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii) 色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
多数の他の酵素基質の組合せは当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4,275,149号および4,318,980を参照。標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされることがある。これを行うための様々な技術は当分野の技術者に公知である。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した大きな4つの分類のうちの何れかはアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体は小ハプテンとコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの1つは抗ハプテン抗体とコンジュゲートさせる。したがって、抗体と標識は間接的にコンジュゲートすることができる。
【0064】
上記の試料調整手順以外に、IHC前、IHCの間又はIHC後に組織切片の更なる処置が所望されてもよい。例えば、クエン酸塩バッファ中で組織サンプルを加熱するなどのエピトープ検索方法が実施されてもよい(例として、Leong 等 Appl. Immunohistochem. 4(3): 201 (1996)を参照)。
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。標識は、3,3'-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)であることが望ましい。好ましくは、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
【0065】
したがって、調製される検査材料はマウントしてカバーグラスをかけてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当分野で通常用いられる染色強度判定基準を用いてもよい。染色強度判定基準は以下の通りに評価してもよい:
表1
Figure 0005007238
【0066】
腫瘍又は上皮腺腫の細胞及び/又は組織をIHCを用いて試験する場合、一般的に、染色は(試料中に存在しうる間質性組織又は周辺組織とは対照的に)腫瘍細胞及び/又は組織内で決定又は評価されることは理解される。典型的に、IHCアッセイのおよそ2+以上の染色パターンスコアは予後を予測するものである。いくつかの実施態様では、およそ1+以上の染色パターンスコアは予後を予測するものである。他の実施態様では、およそ3以上の染色パターンスコアは予後を予測するものである。
いくつかの実施態様では、生体試料を、抗EphB2薬剤-EphB2複合体が形成するために十分な条件下で抗EphB2薬剤(例えばEphB2を結合する抗体)と接触させ、次いで該複合体を検出してもよい。検出は、当分野で公知の多くの方法、例えば血漿又は血清を含む多種多様な組織および試料を検定するためのウェスタンブロッティングおよびELISA手順によって行ってもよい。このようなアッセイ様式を用いた広範囲にわたるイムノアッセイ技術は利用可能である。米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号および同第4,018,653号参照。これらには、単一の部位および2-部位の両方、あるいは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合的結合アッセイが含まれる。また、これらのアッセイには、EphB2に対する標識抗体の直接結合が含まれる。
【0067】
サンドイッチアッセイは最も有用なものの一つで、一般的に用いられるアッセイである。サンドイッチアッセイ技術には多くのバリエーションあり、そのすべては本発明により包含されることを目的とする。簡潔には、代表的な最近のアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定して、試験する試料を結合した分子に接触させる。抗体-抗原複合体が形成されるくらいの適当な期間インキュベートした後、検出可能なシグナルを産生できるレポーター分子で標識した、抗原特異的な第二抗体を添加して、更なる抗体-抗原-標識抗体の複合体が形成されるために十分な時間インキュベートする。反応しなかった材料を洗い流し、レポーター分子により産生されるシグナルを観察することによって抗原の存在を決定する。結果は、可視的なシグナルを単純に観察したものであれば質的なものであり、バイオマーカーを既知量含有するコントロール試料と比較したものであれば量的なものである。
【0068】
前記のアッセイへのバリエーションには、試料および標識抗体の両方を結合した抗体に同時に添加する同時アッセイなどがある。これらの技術は当分野の技術者には公知であり、多少のバリエーションが加えられることは容易に明らかであろう。代表的な近年のサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対して特異性を有する第一抗体は固形表面に共有結合するか受動的に結合する。固形表面は一般的にガラス又はポリマーであり、最も一般的に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固形支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートの皿、又はイムノアッセイを行うために適切な他の任意の表面の形態でもあってもよい。結合方法は従来技術において周知であり、一般に、架橋性共有結合又は物理的な吸着から成り、ポリマー-抗体複合体は試験試料の調整において洗浄される。次いで、試験される試料の分割量を固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットが結合するために十分な時間(例えば、より便利であるならば2〜40分又は前夜)と適切な条件(例えば室温から40℃、例えば25℃から32℃の間)下でインキュベートする。インキュベーションの後、抗体サブユニット固相を洗浄して、乾燥させ、一部のバイオマーカーに特異的な二次抗体とともにインキュベートする。二次抗体は、分子マーカーへの二次抗体の結合を表すために用いられるレポーター分子に結合させる。
【0069】
別法では、試料中の標的バイオマーカーを固定して、その後レポーター分子にて標識しているかまたは標識していない特異的抗体に固定された標的を曝すことを伴う。標的の量およびレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することによって、検出可能でありうる。あるいは、一次抗体に特異的な二次標識抗体を標的-一次抗体複合体に曝して、標的-一次抗体-二次抗体の三位複合体を形成させる。複合体は、レポーター分子により発されるシグナルにより検出される。本明細書中で用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって、抗原と結合した抗体を検出するための分析して同定可能となるシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて、最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、蛍光体または分子を含有する放射性核種(すなわち放射性同位体)および化学発光分子である。
【0070】
酵素イムノアッセイの場合、一般にグルタールアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、酵素を二次抗体にコンジュゲートさせる。しかしながら、容易に認識されるように、技術者に容易に利用可能である多種多様な異なるコンジュゲート技術が存在する。一般的に用いられる酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ−中でもガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどがある。特定の酵素と共に用いられる基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解の際に生じる検出可能な色の変化で選択する。適切な酵素の例として、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどがある。また、上記の色素生産性基質よりも蛍光性産物を産生する蛍光性基質を用いることができる。すべての例において、酵素標識抗体を一次抗体-分子マーカー複合体に加えて、結合させ、次いで過剰な試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に加える。基質は二次抗体と結合した酵素と反応して、通常は分光測定法による量的なものでもある定性的な可視化シグナルを生じ、試料中に存在するバイオマーカーの量を表す。あるいは、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光性化合物を、抗体の結合能を変化させることなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射することにより活性化されると、蛍光色素標識抗体はその光エネルギーを吸収し、それによリその分子において励起状態が誘発され、続いて光学顕微鏡を用いて目視で検出可能な特徴的な色で光が放射される。EIAでは、蛍光標識抗体は、一次抗体-分子マーカー複合体に結合できる。結合していない試薬を洗い落とした後に、残りの三位複合体を適当な波長の光に曝すと、対象の分子マーカーの存在を示す蛍光発光が観察される。免疫蛍光法およびEIA技術は何れも、当分野で非常に確立されたものである。しかしながら、放射性同位体、化学発光性分子または生物発光性分子などの他のレポーター分子も用いられてもよい。
【0071】
いくつかの実施態様では、エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4などのEphB2のリガンドの発現は、本願明細書中に詳述されるように検出される(単独又はEphB2発現との結合)。更なる他の実施態様では、APC、p53、DCC、DPC4、JV18-1/MADR2及び/又はras(例えば、c-Ki-ras又はN-ras)の発現はEphB2発現との結合で検出される。
また、生体試料におけるEphB2の発現は、機能的なアッセイ又は活性ベースのアッセイを用いて検出されうる。EphB2機能のアッセイ方法は当分野で公知であり、Mao 等 Cancer Res. 64: 781-788, 2004に記載のアッセイが含まれる。
【0072】
EphB2ポリヌクレオチドの検出
ある態様では、本発明は、被検体、例えばヒト患者からの生体試料中のポリペプチド(一又は複数)(例えばEphB2ポリヌクレオチド)(例えばポリヌクレオチドの有無又は量)を検出するための方法を提供する。様々なポリヌクレオチドの検出方法を行うことができ、例えばRT-PCR、タックマン、増幅法、ポリヌクレオチドマイクロアレイなどが含まれる。
ポリヌクレオチド(例えばmRNA)の検出方法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、標識したEphB2のリボプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション)、ノーザンブロットおよび関連した技術、および様々な核酸増幅アッセイ(例えば、EphB2に特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCRおよび、他の増幅型の検出法、例えば枝分れDNA、SPIA、Ribo-SPIA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
【0073】
いくつかの実施態様では、EphB2ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションに好適なポリヌクレオチド(一又は複数)(例えばプライマー及び/又はプローブ)はEphB2ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、EphB1Rポリヌクレオチド及び/又はEphB3Rポリヌクレオチドと有意に交差反応しない。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドはEphB2ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、EphB1Rポリヌクレオチド、EphB3Rポリヌクレオチド、EphB4Rポリヌクレオチド、EphB5Rポリヌクレオチド及び/又はEphB6Rポリヌクレオチドと有意に交差反応しない。いくつかの実施態様では、EphB2ポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、少なくともおよそ10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、750、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、3400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500又は4500以上の近接するヌクレオチドを含んでなる。いくつかの実施態様では、EphB2ポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、図2、4及び/又は6に示す少なくともおよそ20、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、750、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、3400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500又は4500以上の近接するヌクレオチドを含んでなる。いくつかの実施態様では、EphB2ポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ヒトEphB2、マウスEphB2、齧歯類EphB2、及び/又はサルEphB2である。いくつかの実施態様では、EphB2ポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドはヒトEphB2である。EphB2にハイブリダイズするポリヌクレオチドは、一又は複数の天然配列のEphB2ポリヌクレオチドにハイブリダイズしうる。一又は複数の天然配列のEphB2ポリヌクレオチドを結合するポリヌクレオチドを選択すること、及びさらにポリヌクレオチドが一又は複数の天然配列のEphB2ポリヌクレオチドを認識するかどうかを決定することは当分野の常法である。
【0074】
哺乳動物の生体試料は、例えばノーザン、ドットブロットまたはPCR分析を用いて、EphB2のmRNAについて都合よくアッセイすることができる。例えば、定量的PCRアッセイなどのRT-PCRアッセイは公知技術である。本発明の例示的実施態様では、生体試料中のEphB2のmRNAの検出方法は、少なくとも一のプライマーを用いて逆転写によって、試料からcDNAを生成し、該EphB2のcDNAを増幅するために、EphB2のポリヌクレオチドをセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用いて産生された該cDNAを増幅し、そして、増幅されたEphB2のcDNAの有無を検出することを含む。加えて、このような方法は、生体試料中のEphB2のmRNAの量(レベル)を決定し得る一ないし複数の工程(例えば、アクチンファミリメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子のコントロールmRNA配列と該レベルを同時に検討すること)を含んでもよい。場合によって、増幅されたEphB2のcDNAの配列を決定してもよい。
プローブ及び/又はプライマーは、検出可能なマーカー、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤又は酵素にて標識されてもよい。このようなプローブおよびプライマーを、試料中のEphB2のポリヌクレオチドの存在を検出するため、および、EphB2のタンパク質を発現する細胞を検出するための手段として用いることができる。技術者に理解されるように、多数の異なるプライマーおよびプローブは、(例えば、本願明細書中で示される配列に基づいて)調製されてもよく、EphB2のmRNAの有無および/または量を増幅、クローン化および/または決定するために効率的に用いてもよい。
【0075】
本発明の任意の方法には、マイクロアレイ技術によって、組織又は細胞試料中のポリヌクレオチド、例えばEphB2ポリヌクレオチドの検出を含む手順が含まれる。例えば、核酸マイクロアレイを用いて、試験およびコントロールの組織試料から得た試験およびコントロールのmRNA試料を逆転写させて、cDNAプローブを生成するために標識する。次いで、プローブを、固形支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイの配列および各々のメンバーの位置がわかるように、アレイを設定する。例えば、特定の疾患状態において発現されうる選択した遺伝子を、固形支持体上に配列してもよい。特定のアレイメンバーと標識プローブとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、貴重な情報を提供する。マイクロアレイ技術は、単一の実験で何千もの遺伝子のmRNA発現性質を評価するために、核酸ハイブリダイゼーション技術および演算技術を利用する。(2001年10月11日公開の国際公開公報01/75166を参照、(例えば米国特許第5,700,637号、同第5,445,934号および同第5,807,522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996))、アレイ製作の考察のためにはCheung, V.G.等, Nature Genetics 21(Suppl): 15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラスまたは他の基質上で染色されるか直接合成される遺伝子断片を含有する微小なアレイである。何千もの遺伝子は、通常単一のアレイ上に現れる。代表的なマイクロアレイ実験は以下の工程を伴う:1.試料から単離したRNAからの蛍光性標識標的の調製、2.マイクロアレイへの標識した標的のハイブリダイゼーション、3.洗浄、染色およびアレイのスキャニング、4.走査画像の分析、そして5.遺伝子発現性質の生成。一般に、DNAマイクロアレイには2つの主要な種類、cDNAから調製されたPCR産物を含有する遺伝子発現アレイおよびオリゴヌクレオチドアレイ(通常25〜70mer)が用いられる。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、事前に作製して表面にスポットしても、(インサイツで)表面上で直接合成してもよい。
【0076】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含んでなる市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(通常25mer)は、半導体ベースのフォトリソグラフィーと固相化学合成技術との組合せによって、ガラスウェーハ上へ直接合成される。各々のアレイは最高400,000の異なるオリゴを含有し、各々のオリゴは何百万ものコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の位置で合成されるので、ハイブリダイゼーションのパターンおよびシグナル強度は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによる遺伝子同一性と相対的な発現レベルに置き換えて解釈できる。各々の遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによって、アレイ上に表される。各々のプローブ対は、完全一致のオリゴヌクレオチドと、不一致のオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して完全に相補的な配列を有するため、遺伝子の発現を測定する。不一致プローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって、完全一致プローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これによって、完全一致オリゴを決定するシグナルの一因となるバックグラウンドおよび非特異的ハイブリダイゼーションを決定できる。Microarray Suiteソフトウェアは、完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度から不完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度を減算して、それぞれのプローブセットの絶対値または特異的強度の値を決定する。プローブは、Genbankおよび他のヌクレオチド貯蔵所の当時の情報に基づいて選択される。この配列は遺伝子の3'末端の特定の領域を認識すると思われている。GeneChipハイブリダイゼーションオーブン(「回転式(rotisserie)」オーブン)を用いて、一度に最高64アレイのハイブリダイゼーションを行う。fluidics stationでは、プローブアレイの洗浄と染色が行われる。これは完全に自動化しており、4つのモジュールを含有しており、その各々のモジュールが一つのプローブアレイを保持している。各々のモジュールは、事前にプログラム化されたfluidicsプロトコールを用いたMicroarray Suiteソフトウェアにより個々に制御される。スキャナは、プローブアレイ結合した標識cRNAにより発される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光発光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを有するコンピュータワークステーションがfluidics stationとスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイについて事前にプログラム化したハイブリダイゼーション、洗浄および染色プロトコールを用いてfluidics stationを8つまで制御できる。また、ソフトウェアは、ハイブリダイゼーション強度データを得て、適切なアルゴリズムを使用して各々の遺伝子の存在/非存在情報に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較分析によって、遺伝子発現における実験間の変化を検出して、テキストファイルに出力する。このファイルは更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムに用いることができる。
【0077】
いくつかの実施態様では、EphB2遺伝子欠損、遺伝子変異又は遺伝子増幅が検出される。遺伝子欠損、遺伝子変異又は増幅は、当分野で公知の様々なプロトコールの何れか一つ、例えば、慣例的なサザンブロット、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201 5205 (1980))、ドットブロット(DNA分析)、又は適切に標識したプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション(例えばFISH)、適切に標識したプローブを用いた細胞遺伝学的方法又は比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)によって、測定できる。加えて、これらの方法を用いて、EphB2リガンド遺伝子欠損、リガンド変異又は遺伝子増幅を検出してもよい。本願明細書中で用いられる「EphB2発現を検出する」はEphB2遺伝子欠損、遺伝子変異又は遺伝子増幅の検出を包含する。
【0078】
加えて、組織又は細胞試料中のEphB2の遺伝子のメチル化状態を調べてもよい。遺伝子5'調節領域内のCpG島の異常な脱メチル化および/または過剰メチル化は、不死化細胞および形質転換細胞内でしばしば起こり、様々な遺伝子の発現が変化する。遺伝子のメチル化状態を調べるための様々なアッセイは、公知技術である。例えば、サザンハイブリダイゼーション方法では、CpG島のメチル化状態を評価するために、メチル化されたCpG部位を含有する配列を切断することができないメチル化感受性制限酵素を利用できる。加えて、MSP(メチル化特異的PCR)は、与えられる遺伝子のCpG島に存在するすべてのCpG部位のメチル化状態の分布を迅速に測定できる。この手順は、亜硫酸水素ナトリウムによるDNAの初期修飾(すべてのメチル化されていないシトシンをウラシルに変換する)の後に、メチル化されたDNA対非メチル化DNAに特異的なプライマーを用いた増幅を伴う。また、メチル化干渉を伴うプロトコールは、例えばCurrent Protocols In Molecular Biology, Unit 12, Frederick M. Ausubel 等 eds., 1995、De Marzo 等, Am. J. Pathol. 155(6): 1985-1992 (1999)、Brooks 等, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev., 1998, 7:531-536)、および、Lethe 等, Int. J. Cancer 76(6): 903-908 (1998)にみられる。本願明細書中で用いられる「EphB2発現を検出する」はEphB2遺伝子メチル化の検出を包含する。
いくつかの実施態様では、エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4などのEphB2のリガンドの発現は、本願明細書中に詳述されるように検出される(単独又はEphB2発現との(同時及び/又は連続した)結合)。更なる他の実施態様では、APC、p53、DCC、DPC4、JV18-1/MADR2及び/又はras(例えば、c-Ki-ras又はN-ras)の発現はEphB2発現との結合で検出される。
【0079】
EphB2リガンドの検出
本発明の方法において、生体試料は、EphB2リガンド(一又は複数)(例えばEphB2リガンドポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド)の発現について(EphB2発現と組み合わさって又は独立して)試験されてもよい。上記及び当分野で記載されるように、現在、EphB2は少なくとも4つの異なるリガンド:エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及びエフリン-A4と結合すると思われている。本願明細書において、記述されるものを含め、当分野で公知の方法を用いて、エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド発現が検出されてもよい。例として、上記のIHC技術は、試料中において、一又は複数のこのような分子の存在を検出するために行われうる。本願明細書において、用いられる「組み合わさって」は、任意の同時及び/又は連続的な検出を包含することを意味する。ゆえに、生体試料がEphB2の存在についてだけでなく、例えばエフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4について試験される実施態様では、異なるスライドが同じ組織又は試料から調製されてもよく、それぞれのスライドがEphB2及び/又はリガンドそれぞれと結合する試薬により試験されることが考慮される。あるいは、単一のスライドは組織又は細胞試料から調製されてもよく、EphB2に対する抗体とリガンドを多色染色プロトコールと関連して使い、EphB2とリガンドの視覚化及び検出を行う。
【0080】
データ分析及び比較
検出により生成されるデータは、任意の好適な手段(例えば、視覚的、コンピュータなどによって)を用いて分析できる。一実施態様では、データは、プログラム可能なデジタルコンピュータを用いて分析される。データ分析はシグナルの強度を決定する工程を含みうる。強度は正常化することによって、いくつかの基準値と相対的に調整される。例えば、基準値は結合のバックグラウンドノイズであってもよい。あるいは、基準値は、コントロール抗体のタンパク質結合強度であってもよい。EphB2発現の比較(例えば試験生体試料における発現レベルとコントロール生体試料における発現レベル又はコントロール参照値の比較)は、χ-二乗検定、スチューデントt検定又はスピアマンの順位相関係数などの標準的な統計的方法を含む標準法によって、好適に実行できる。更なる統計的方法は、Wohlgemuth 等, 米国公開公報2004/0009479 A1、Birbeck 等 Annals Surg 235:449-457 (2002)において検討され、本願明細書において例示される。統計学的分析を実行するためのソフトウェアパッケージは大いに利用できる。
【0081】
癌治療の選択を含む方法
また、本発明は癌治療の選択方法を提供する。上記したように、癌治療、例えば化学療法、放射線及び/又は手術は関連するリスクを有し、最も利益を得そうな患者を最適に選択することが可能であることが有用である。予後試験は、例えば、より強力であるがよりリスクが高い治療方策が決定するほど予後が不良な患者を同定するため、及びリスクを正当化できるだけの十分な利益がもたらされないリスクのある治療を受ける予後が良好な患者を同定するために有用である。したがって、本発明は、患者の癌治療の選択方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料(又はコントロール参照値)におけるEphB2の発現と比較する;(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測する、このときEphB2発現により患者の癌が予知されるものであり;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて、該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、患者の(試験)試料においてEphB2の発現が増加している場合に、患者に癌が予測される。
【0082】
他の態様では、本発明は、患者の癌治療の選択方法であって、(a) 患者の生体試料を得る;(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出して、EphB2の発現により該患者の癌の予後を予測する;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、治療は、癌の寛解、発症の減少、緩和、発達の遅延、及び/又は進行の遅延を含む。
例示的な癌は本願明細書中に記載される。癌の治療は当分野で周知である。例として、Cancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita 等, 編集, Williams & Wilkins Co., 2001);Manual of Clinical Oncology (Casciato, DA, 編集, Lippincott, Williams & Wilkins Co., 2000);Bacquiran, DC 編集, Lippincott’s Cancer Chemotherapy Handbook, Lippincott Co., 2001);Armitage, JO, 編集, High-Dose Cancer Therapy, Lippincott, Williams & Wilkins Co., 1999)を参照のこと。いくつかの実施態様では、処置には、細胞障害性剤、例えば化学療法剤、成長阻害性剤、毒素(例えば合成、細菌、真菌、植物又は動物の起源の活性な毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした抗EphB2抗体を含有するイムノコンジュゲートの有効量の投与を含む。イムノコンジュゲートは当分野で公知であり、例示的なイムノコンジュゲートは本願明細書中に記載される。Pennell, CA. Immunol. Res. 25, 177-191 (2002; Kreitman, RJ, Curr. Pharm. Biotechnol. 2: 313-325 (2001)も参照のこと。
【0083】
また、本発明は、抗EphB2薬剤(例えばアンタゴニスト抗体)の使用を提供する。EphB2結合領域を含んでなる抗EphB2タンパク質、例えばエフリン-B1イムノアドヘシン、エフリン-B2イムノアドヘシン、エフリン-B3イムノアドヘシン及びエフリン-A4イムノアドヘシンを用いてもよい。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体はモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体又は抗体断片である。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14(2005年2月24日に寄託)により産生される抗体である。共願の同時継続米国仮特許出願番号60/648,541(2005年1月31日に出願)(出典明記により本明細書中に組み込まれる)を参照のこと。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14により産生される抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン(一又は複数)を含んでなる抗体であり、該抗体はヒトEphB2を特異的に結合する。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14により産生される抗体のHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2及び/又はHVR-H3からなる群から選択される配列を含有する少なくとも1(少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5及び/又は6)の高頻度可変性配列(一又は複数)(HVR(一又は複数))を含んでなり、該抗体はヒトEphB2を特異的に結合する。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14により産生される抗体と同じヒトEphB2上のエピトープと結合する抗体である。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、ヒトEphB2への結合に関して、米国のTissue Type Culture(ATCC)番号PTA-6606を有するハイブリドーマ細胞株2H9.11.14により産生される抗体と競合する抗体である。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体は、(a) 配列KSSQSLLNSGNQENYLA (配列番号1)を含むHVR-L1、(b) 配列GASTRES (配列番号2)を含むHVR-L2、(c) 配列QNDHSYPFT (配列番号3)を含むHVR-L3、(d) 配列SYWMH (配列番号4)を含むHVR-H1、(e) 配列FINPSTGYTDYNQKFKD (配列番号5)を含むHVR-H2、及び(f) 配列RLKLLRYAMDY (配列番号6)を含むHVR-H3、からなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5及び/又は6の高頻度可変領域(HVR)配列を含有する。一実施態様では、抗EphB2抗体は、配列:DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMNCKSSQSLLNSGNQENYLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDHSYPFTFGAGTKVEIKR (配列番号7)を有する軽鎖可変ドメインを含んでなる。一実施態様では、抗EphB2抗体は、配列:QVQLQQSGAELAKPGASVKMSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGFINPSTGYTDYNQKFKDKATLTVKSSNTAYMQLSRLTSEDSAVYYCTRRLKLLRYAMDYWGQGTTLTVSA (配列番号8)を有する重鎖可変ドメインを含んでなる。一実施態様では、抗EphB2抗体は、配列:DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMNCKSSQSLLNSGNQENYLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDHSYPFTFGAGTKVEIKR (配列番号7)を有する軽鎖可変ドメインを含んでなり、そして、配列:QVQLQQSGAELAKPGASVKMSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGFINPSTGYTDYNQKFKDKATLTVKSSNTAYMQLSRLTSEDSAVYYCTRRLKLLRYAMDYWGQGTTLTVSA (配列番号8)を有する重鎖可変ドメインを含んでなる。更なる例示的な抗EPHB2抗体は本願明細書中に記載される。
【0084】
また、本発明は、細胞障害性剤、例えば化学療法剤、薬剤、成長阻害性剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物の酵素的に活性な毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした本願明細書中に記載の何れかの抗EphB2抗体を含んでなるイムノコンジュゲート(「抗体-薬剤コンジュゲート」又は「ADC」と交換可能に称される)の使用を提供する。
癌の治療において、細胞障害性剤又は細胞増殖抑制剤、すなわち腫瘍細胞を殺すか又は阻害する薬剤の局所への配送のために抗体-薬剤コンジュゲートを用いると(Syrigos 及び Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614、 Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26: 151-172、米国特許第4,975,278号)、薬剤分子が腫瘍に狙って運搬され、そこで細胞内蓄積する。このときこの非コンジュゲート薬剤を全身投与すると除去しようとする腫瘍細胞だけでなく正常細胞にも容認できないほどのレベルの毒性が生じうる(Baldwin 等, (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986): 603-05、Thorpe, (1985) "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review," in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, A. Pinchera 等 (編集), pp. 475-506)。これによって、ごくわずかな毒性と最大限の有効性が追求される。これらの方策に有用なポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体が報告されている(Rowland 等, (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。これらの方法で使用する薬剤には、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキセート及びビンデシンなどがある(上掲のRowland 等, (1986))。抗体-毒素コンジュゲートにおいて、使用される毒素には、細菌毒素、例えばジフテリアトキシン、植物性毒素、例えばリシン、小分子毒素、例えばゲルダナマイシン(Mandler 等 (2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19): 1573-1581、Mandler 等 (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028、Mandler 等 (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(欧州特許1391213、Liu 等, (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode 等 (1998) Cancer Res. 58: 2928、 Hinman 等 (1993) Cancer Res. 53: 3336-3342)などがある。毒素は、チュービュリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含むメカニズムによって、それらの細胞障害能及び細胞静止効果に作用しうる。大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートされる場合、細胞障害性剤の中には不活性であるかより活性が低い傾向のものがある。
【0085】
ゼバリン(ZEVALIN)(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン(ibritumomab tiuxetan), Biogen/Idec)は正常及び悪性のBリンパ球の細胞表面上にみられるCD20抗原に対するマウスIgG1κモノクローナル抗体と111In又は90Y放射性同位体とがチオウレアリンカーキレート剤にて結合した抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wisemanら (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77;Wisemanら (2002) Blood 99(12):4336-42;Witzigら (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63;Witzigら (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼバリンはB細胞非ホジキン性リンパ球(NHL)に対して活性を有するが、投与によってほとんどの患者に重症で長期の血球減少を引き起こす。カリケアマイシンに連結したhuCD33抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるマイロターグ(MYLOTARG)(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin), Wyeth Pharmaceuticals)は、急性骨髄性白血病の治療用注射剤として2000年に認可された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同第5079233号;同第5585089号;同第5606040号;同第5693762号;同第5739116号;同第5767285号;同第5773001号)。ジスルフィドリンカーSPPを介してメイタンシノイド薬剤分子DM1と連結しているhuC242抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるカンツズマブメルタンシン(Cantuzumab mertansine)(Immunogen, Inc.)は、CanAgを発現する癌、例として大腸、膵臓、胃などの治療用に第II相試験へと進んでいる。メイタンシノイド薬剤分子DM1と連結している抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm., BZL Biologics, Immunogen Inc.)は、前立腺癌の潜在的治療の開発段階にある。アウリスタチン(auristatin)ペプチド、アウリスタチンE(AE)及びモノメチルアウリスタチン(MMAE)、ドラスタチン(dolastatin)の合成類似体は、キメラモノクローナル抗体cBR96(癌細胞上のルイスYに特異的)及びcAC10(血液系悪性腫瘍上のCD30に特異的)(Doroninaら (2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784)にコンジュゲートしており、治療的開発段階にある。
【0086】
免疫コンジュゲート(イムノコンジュゲート)の生成に有用な化学治療薬を本願明細書中に記載(例えば上記)した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。例として、1993年10月28日に公開の国際公開公報93/21232を参照のこと。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。抗体及び細胞障害性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開94/11026参照。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン(aurostatin)、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
【0087】
i. メイタンシン及びメイタンシノイド
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している本発明の抗体(完全長又は断片)を含んでなる。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4,137,230号;同4,248,870号;同4,256,746号;同4,260,608号;同4,265,814号;同4,294,757号;同4,307,016号;同4,308,268号;同4,308,269号;同4,309,428号;同4,313,946号;同4,315,929号;同4,317,821号;同4,322,348号;同4,331,598号;同4,361,650号;同4,364,866号;同4,424,219号;同4,450,254号;同4,362,663号;及び同4,371,533号に開示されている。
メイタンシノイド薬剤成分は、(i) 発酵又は化学修飾、発酵産物の誘導体化によって調製するために相対的に利用可能である(ii) 抗体に対する非ジスルフィドリンカーによる共役に好適な官能基による誘導体化に従う、(iii) 血漿中で安定、そして(iv) 様々な腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体薬剤コンジュゲートの魅力的な薬剤成分である。
【0088】
メイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲート、その作製方法及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5,208,020号、同5,416,064号、欧州特許第0425235 B1号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞障害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合している免疫コンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞障害性はヒト乳癌株化細胞SK-BR-3におけるインビトロで試験され、細胞当たり3×10HER-2表面抗原が発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞障害度が達成され、該細胞障害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加する。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞障害性を示した。
【0089】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5,208,020号(この開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)を参照。1分子の毒素/抗体は、裸抗体の使用において細胞障害性を高めることが予期されているが、抗体分子当たり、平均3−4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞障害性を向上させるといった効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、公知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5,208,020号、及び他の特許、及び上述した特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体である。
例えば、米国特許第5,208,020号又は欧州特許第0425235 B1号、Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)、及び2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960,602(これらの開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)に開示されているもの等を含め、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含んでなる抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960,602に開示されるように調製されうる。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。更なる結合基を本願明細書中に記載し、例示する。
【0090】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合により提供されるN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737[1978])が含まれる。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施形態において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
【0091】
ii. アウリスタチン類及びドラスタチン類
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチジル類似体及び誘導体、アウリスタチン(auristatin) (米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含んでなる。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke 等 (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌活性(US 5663149)及び抗真菌性活性(Pettit 等 (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬剤成分は、ペプチジル薬剤分子のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端により抗体に接着しうる(国際公開公報02/088172)。
例示的なアウリスタチンの実施態様は、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬剤成分DE及びDFを含み、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands", US Ser. No. 10/983,340, filed Nov. 5, 2004に開示される。この開示内容は出典明記によってその全体が特別に組み込まれる。
一般的に、ペプチドベースの薬剤成分は、2以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することによって調製されうる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知の液相合成方法に従って調製することができる(E. Schroder and K. Lubke, "The Peptides", volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬剤成分は、US 5635483; US 5780588;Pettit 等 (1989) J. Am. Chem. Soc. 111: 5463-5465;Pettit 等 (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit, G.R., 等 Synthesis, 1996, 719-725;及びPettit 等 (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863の方法に従って調製されうる。また、Doronina (2003) Nat Biotechnol 21(7): 778-784; "Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願のUS Ser. No. 10/983,340も参照のこと。これらは出典明記によってその全体が本願明細書中に組み込まれる(例えば、リンカー及びモノメチルバリン化合物、例えばMMAE及びリンカーにコンジュゲートしたMMAFの調整方法を開示している)。
【0092】
iii. カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した本発明の抗体を含んでなる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ 、α 、α 、N-アセチル-γ 、PSAG及びθ (Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
【0093】
iv. 他の細胞障害剤
本発明の抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成される免疫コンジュゲートをさらに考察する。
【0094】
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性コンジュゲートした抗体を生成するために、種々の放射性同位体が利用される。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが検出に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0095】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB (succinimidyl-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467-498頁を参照。
【0096】
v. 抗体薬剤コンジュゲートの調製
本発明の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)において、抗体(Ab)を、リンカー(L)を介して、一つ以上の薬剤部分(D)、例えば抗体につき約1〜約20の薬剤部分にコンジュゲートする。式IのADCはいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態および試薬を用いて調製されうる:(1) 共有結合の後に薬剤部分Dと反応してAb-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた抗体の求核基の反応;及び(2) 共有結合の後に抗体の求核基と反応してD-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた薬剤部分の求核基の反応、が含まれる。ADCを調製するための更なる方法は本願明細書中に記載される。
Ab−(L−D)p I
リンカーは、一つ以上のリンカー成分から成ってもよい。例示的なリンカー成分は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボンイル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。更なるリンカー成分は当分野で公知であり、そのいくつかは本願明細書において、記述される。また、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願した米出願番号10/983,340を参照。その内容は出典明記により本願明細書に組み込まれる。
【0097】
いくつかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含みうる。例示的なアミノ酸リンカー成分には、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドなどがある。例示的なジペプチドは、バリン-シトルリン(vc又はval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)を含む。例示的なトリペプチドは、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)を含む。アミノ酸リンカー成分を含んでなるアミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに微量のアミノ酸及び非天然に生じるアミノ酸類似体、例えばシトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分は設定され、特に酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性に最適化できる。
【0098】
抗体上の求核基には、限定するものでなく、以下のものを含む:(i) N末端アミン基、(ii) 側鎖アミン基、例えばリシン、(iii) 側鎖チオール基、例えばシステイン、および(iv) 抗体がグリコシル化される糖水酸基又はアミノ基。アミン、チオールおよび水酸基は、求核であり、反応して、リンカー部分上の求電子性の群およびリンカー試薬により共有結合を形成することができる:(i) 活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸および酸ハロゲン化物;(ii) アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii) アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド群、が含まれる。特定の抗体は、還元しうる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)による処置によって、リンカー試薬を用いたコンジュゲート反応を行ってもよい。ゆえに、各々のシステイン架橋は、理論的には、2の反応性のチオール求核基を形成する。チオールにアミンを転換させる2-イミノチオラン(トラウトの試薬)を用いてリシンを反応させることによって抗体に付加的な求核基を導入することができる。反応性のチオール基は、1、2、3、4又はそれ以上のシステイン残基を導入する(例えば、一又は複数の非天然のシステインアミノ酸残基を含んでなる変異体抗体を調製する)ことによって抗体(又は、その断片)に導入されてもよい。
【0099】
また、本発明の抗体薬剤コンジュゲートは、抗体を修飾して求電子性の部分を導入する(リンカー試薬又は薬剤上の求核置換基と反応させることができる)ことによって生成してもよい。グリコシル化された抗体の糖質を、例えば過ヨウ素酸塩酸化剤を用いて酸化して、リンカー試薬又は薬剤部分のアミン基と反応するアルデヒド又はケトン基を形成させてもよい。生じたイミンシッフ塩基群が安定結合を形成するか、又は例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって、還元してもよい。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩の何れかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬剤(Hermanson, Bioconjugate Techniques)上の適当な基と反応することができるタンパク質のカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基が生じうる。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含んでいるタンパク質はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成する(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;US 5362852)。このようなアルデヒドは、薬剤部分又はリンカー求核基と反応することができる。
【0100】
同様に、薬剤部分上の求核基には、限定するものではないが、以下のものを含む:反応して、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子性の基と共有結合することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステルおよびアリールヒドラジド基:(i) 活性エステル(例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸および酸ハロゲン化物);(ii) アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii) アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基、が含まれる。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0101】
抗EphB2抗体の治療的製剤は、所望される程度の純度を持つ抗体を凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態で、最適な製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th edition (2000))。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、酢酸、Tris、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド、ベンズエトニウムクロライド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;トレハロース及び塩化ナトリウムなどのトニシファイヤー;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ポリソルベート等の界面活性剤;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)(登録商標)、プルロニクス(PLURONICS)(登録商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。製剤は、好ましくは5−200mg/mlの間、好ましくは10−100mg/mlの間の濃度の抗体で構成される。
【0102】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th edition (2000)に開示されている。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0103】
抗体(例えば抗体を含有してなる薬剤組成物)は、公知の方法、例えばボーラス、もしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により、患者に投与されてもよい。抗体の静脈内又は皮下投与が好ましい。
一実施態様では、本発明の治療は、抗EphB2抗体と一又は複数の化学療法剤の併用投与を伴う。本発明は、異なる化学療法剤の反応混液の投与を考慮する。組合せ投与には、別々の製剤又は単一の医薬製剤を使用する同時投与、及び好ましくは両方(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を働かせる時間があるいずれかの順での連続投与が含まれる。
このような化学療法剤の調製及び投与スケジュールは製造者の注意書きに従い使用されるか、又は熟練した実務者により経験的に決定される。このような化学療法の調製及び投与スケジュールは、例えばChemotherapy Service編 M.C.Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD(1992)及びLippincott’s Cancer Chemotherapy handbook, Baquiran 等, 編集 Lippincott, Williams and Wilkins (2002)にも記載されている。化学療法剤は、抗体の投与前でも投与後でもよく、又は抗体の投与と同時でもよい。
【0104】
疾患の予防又は治療のための抗体の適切な用量は、上記のような治療される疾患の種類、疾患の重症度及び過程、抗体を予防目的で投与するのか治療目的で投与するのか、過去の治療、患者の臨床歴及び抗体の応答性、手当てをする医師の裁量に依存するであろう。抗体は、一時的又は一連の治療の間に患者に最適に投与される。併用療法投薬計画において、本発明の組成物は、治療的に有効な量又は相乗効果を示す量で投与される。ここで用いるように、治療上の有効量は、抗EphB2抗体と一又は複数の他の治療薬の同時投与、又は本発明の組成物の投与によって、標的とする疾患又は症状が軽減又は阻害される量である。治療的に相乗効果を示す量は、相乗的又は有意に特定の疾患に関連する病態又は症状を軽減するか又は取り除くのに必要な抗EphB2抗体及び一又は複数の他の治療薬の量である。
疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一又は複数の別個の投与又は連続注入のいずれであれ、体重1kg当たり約1μgないし50mg(例えば0.1−20mg/kg)の抗体を患者への最初の投与量の候補とすることができる。上述した因子に応じて、典型的な一日の投与量は約1μg/kgから約100mg/kgあるいはそれ以上の範囲である。数日間又はそれ以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、疾患の徴候が望ましく抑制されるまで処置を維持する。しかしながら、他の投与計画が有用でありうる。好適な態様では、本発明の抗体は2〜3週ごとに、約5mg/kg〜約15mg/kgの範囲の用量で投与される。本発明の治療の経過は、従来の技術及びアッセイによって、容易にモニターされる。本発明の治療の有効性は、癌治療を評価する際に共通して用いられる様々なエンドポイント、限定するものではないが、腫瘍再発、腫瘍重量ないしサイズの収縮、進行時間、生存期間、進行がない生存、全体の応答速度、応答の継続期間及び生活の質などで測定されてもよい。
【0105】
大腸腺腫を含む疾患の治療方法
他の態様では、本発明は、大腸腺腫のEphB2発現の検出方法及び大腸腺腫に特徴がある疾患(交換可能に「大腸腺腫疾患」と呼ばれる)の治療方法を提供する。驚くべきことに、出願人は、EphB2が大腸腺腫において、過剰発現することを発見した。したがって、EphB2は、患者は多数の結腸腺腫ポリープを発達させている大腸腺腫を特徴とする疾患、例えば家族性大腸ポリープ症(FAP)のイムノコンジュゲート治療のための魅力的な標的である。したがって、一態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を有する又は有すると思われる患者に有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を寛解、その発症率の減少、緩和、その発達の遅延、その進行の遅延、又はその予防をするための方法を提供する。他の態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2薬剤(例えば抗体)が投与されることによる、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を有する又は有すると思われる患者に有効量の抗EphB2剤が投与されることによる、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を寛解、その発症率の減少、緩和、その発達の遅延、その進行の遅延、又はその予防をするための方法を提供する。
【0106】
本発明の方法は、複数の大腸腺腫(例えば10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又は1000以上の大腸腺腫)に特徴がある疾患、少なくとも、APC遺伝子の突然変異によって、生じる常染色体優性家族性大腸ポリープ症(FAP)(Tomlinson 等, J Med Genet 1996、33:268-73)、Peutz-Jegher's症候群(PJS)、若年性ポリポーシス症候群(JPS)、MYH遺伝子における変異に起因する弱毒性FAP(Sieber 等 N Eng J Med 348:791-9 (2003))、遺伝性混合性ポリポーシス症候群(HMPS)、カウデン病及びBannayan-Ruvalcaba-Riley症候群を含むものに特に好適である。また、Crawford JM, the Gastrointestinal tract, in: Cotran RS 等 Robbin's Pathological Basis of Disease, 6th ed. London: Saunders (1999) pp775-844、Nicum 等, Acta Oncol 42:263-275 (2003)、Kinzler, KW, 及び Vogelstein, B. Colorectal Tumors, in Kinzeler KW, Vogelstein B, 編集 The Genetic Basis of Human Cancer: McGraw-Hill 1999, p. 565-87を参照。
例示的な抗EphB2薬剤(例えば抗体及びイムノコンジュゲート)は本願明細書において、記述される。例示的な製剤及び投薬は本願明細書において、記述される。本発明の治療の経過は、当分野で公知及び本願明細書中に記載の従来の技術及びアッセイによって、容易にモニターされる。本発明の治療の有効性は、治療を評価する際に共通して用いられる様々なエンドポイント、限定するものではないが、腫瘍再発、腫瘍重量ないしサイズの収縮、進行時間、生存期間、進行がない生存、全体の応答速度、応答の継続期間及び生活の質などで測定できる。
【0107】
大腸腺腫におけるEphB2発現の検出方法
他の態様では、本発明は、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料において、EphB2ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)を検出することを含む。本願明細書において、強調されるように、驚くべきことに、出願人はEphB2が大腸腺腫、例えば扁平状、管状、管絨毛状、及び絨毛状の腺腫において、過剰発現することを発見した。大腸腺腫におけるEphB2発現の検出は、例えば、抗EphB2薬剤(例えば抗EphB2抗体を含んでなるイムノコンジュゲート)による治療への適合性の決定、抗EphB2イムノコンジュゲート又は他の薬剤による治療又はインターベンション(例えば手術、放射線)のモニター、腺腫の再発の決定、腺腫の進行のモニターなどに有用である。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、治療(例えば抗EphB2薬剤による治療)の前、治療の間、治療の後、治療の前と間、治療の前後、治療の間と後、治療の前、間及び後に検出される。
【0108】
したがって、一態様では、本発明は、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの検出方法であって、生体試料において、EphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの発現を検出することを含む方法を提供する。他の態様において、本発明は、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの検出方法であって、生体試料中のEphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの発現をコントロール試料中(又はコントロール参照値)のEphB2の発現と比較することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な患者試料中のEphB2発現の増加により、被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な患者試料中のEphB2発現の減少により、被検体の癌が予測される。
【0109】
他の態様では、本発明は、患者からの大腸腺腫細胞及び/又は組織におけるEphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド発現の検出方法であって、(a) 大腸腺腫細胞及び/又は組織を得る、そして(b) 大腸腺腫細胞及び/又は組織におけるEphB2の発現を検出することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な患者生体試料中のEphB2発現の増加により、被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な患者試料中のEphB2発現の減少により、被検体の癌が予測される。
また、本発明の方法は、EphB2変異体ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)及び/又はEphB2断片を検出してもよい。EphB2変異体及び断片の検出は本願明細書において、記述される。
【0110】
発現の検出は質的なものでも量的なものでもよい。EphB2発現の存在及び/又は欠如及び/又はレベルが検出されてもよい。EphB2発現の欠如はごくわずかなレベル又は最小限のレベルであるものを含むと解釈される。試験生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの発現は、コントロール生体試料で観察されるよりも高くてもよい(「過剰発現」と称される)。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、試験生体試料において、少なくともおよそ2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、150倍又はそれ以上である。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、免疫組織化学(「IHC」)アッセイにおいて、決定され、染色強度について少なくとも2以上にスコア化される。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、IHCアッセイにおいて、決定され、染色強度について少なくとも1以上又は少なくとも3以上にスコア化される。試験生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの発現は、コントロール生体試料で観察されるよりも低くてもよい(「過少発現」と称される)。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、試験生体試料において、少なくともおよそ2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、75分の1、100分の1、150分の1又はそれ以下である。EphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの検出方法は、当分野で公知であり、本願明細書中に開示され、例示される。
他の態様において、本発明は、大腸腺腫に特徴がある疾患の診断方法であって、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料において、EphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを検出することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な患者生体試料中のEphB2発現の増加により、被検体の大腸腺腫性疾患が診断される。
【0111】
キット、組成物及び製造品
また、前記又は上記で提案される適用法ために、キット、組成物及び製造品が本発明により提供される。いくつかの実施態様では、キットは、抗EphB2薬剤(例えば抗体)、抗EphB2イムノコンジュゲート、EphB2ポリヌクレオチド及び/又はEphB2ポリペプチドを収容する一又は複数の容器、そして、いくつかの実施態様では、本願明細書中に記載の何れかの方法(例として、癌を有する又は有すると思われる患者の評価(例えば予後の評価)の方法、患者の癌治療の選択方法、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの検出方法、患者からの大腸腺腫細胞又は組織におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチド発現の検出方法、及び/又は生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現の検出を含む方法)に従った使用のための指示書をさらに具備する。さらに、キットは、適切なコントロール(コントロール参照値)を具備しうる。
【0112】
このようなキットは、ガラス瓶、チューブなどの一又は複数の密閉した容器内に収容するために区分けされている運搬容器を具備しており、それぞれの容器には本方法に使用する別個の成分の何れか一つを含んでいる。例えば、容器の一つには検出可能なように標識してあるないしは標識できるポリヌクレオチド(例えばプローブ又はプライマー)を含んでもよい。このポリヌクレオチドは、EphB2タンパク質又はEphB2ポリヌクレオチドのそれぞれに特異的な抗体ないしはポリヌクレオチドであってもよい。標的核酸を検出するためにキットに核酸ハイブリダイゼーションが必要な場合には、キットは、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチド(一又は複数)を収容する容器、及び/又は、酵素標識、蛍光標識又は放射性標識などのレポーター分子に結合した、ビオチン結合タンパク質、例えばアビジン又はストレプトアビジンなどのレポーターの働きをするものを収容する容器も具備する。
典型的に、本発明のキットは、上記の容器と、商業的及び使用者の観点からみて望ましい物質、例えばバッファ、希釈液、フィルター、針、注射器及び使用のための指示書を有するパッケージ挿入物を収容する一又は複数のその他の容器とを具備する。特定の治療又は非治療的用途に該組成物が使用されることを示すために容器上にラベルがあってもよく、またそのラベルは上記のようなインビボの使用又はインビトロの使用の何れかについての指導を示すものであってもよい。
【0113】
本発明のキットは多くの実施態様を有する。典型的な実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はEphB2のポリペプチド配列に結合する一次抗体を含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のEphB2のタンパク質の存在を評価できることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のEphB2のタンパク質の有無を検出することを含むEphB2抗体の使用についての指示書を示すものである。さらに、キットは、組織試料を調整して組織試料の同一片に抗体及びプローブを適用するための一組の指示書と材料を具備しうる。キットは、一次抗体と、酵素標識などの標識にコンジュゲートしている二次抗体の両方を具備してもよい。
他の実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はストリンジェントな条件下でEphB2のポリヌクレオチドの相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のEphB2の存在を評価できることを示し、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のEphB2のRNA又はDNAの存在を評価するためのEphB2のポリヌクレオチドの使用についての指示書を含むものである。
【0114】
キットの他の任意の成分には、一又は複数のバッファ(例えばブロックバッファ、洗浄バッファ、基質バッファなど)、酵素標識によって、化学的に変化する基質などの他の試薬(例えば色素原)、エピトープ探索溶液、コントロール試料(ポジティブコントロール及び/又はネガティブコントロール)、コントロールスライド(一又は複数)などがある。
組成物(薬剤組成物など)は、抗EphB2薬剤(例えば抗体)、抗EphB2イムノコンジュゲート、EphB2ポリヌクレオチド及び/又はEphB2ポリペプチドを含有してなり、いくつかの実施態様では、本願明細書中に記載の何れかの方法(例として、癌を有する又は有すると思われる患者の評価(例えば予後の評価)の方法、患者の癌治療の選択方法、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの検出方法、患者からの大腸腺腫細胞又は組織におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチド発現の検出方法、及び/又は生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現の検出を含む方法)に従った使用のための指示書をさらに具備する。
製造品はキット構成要素を具備する及び/又は、組成物は本願明細書において、記述される。
【0115】
本発明の範囲を限定するためのものではない以下の実施例によって、本発明の様々な態様が記載され、説明される。
【実施例】
【0116】
実施例
方法及び材料
遺伝子論理データベース
EphB2の発現は、正常な大腸(n=288)、腺腫(n=30)、原発性癌(n=122)、遠隔転移(n=55)、レーザー顕微解剖正常上皮(n=16)、及びレーザーは原発性癌からのレーザー顕微解剖上皮(n=9)を含む結腸直腸組織について、Affymetrix HG-U133プローブアレイデータ(プローブセット209588_at)のGene Logic (Gaithersburg, MD)データベースにおいて、調べた。簡潔に言うと、遺伝子発現情報を含む専売特許のデータベースであるGeneExpress(登録商標) (Gene Logic Inc., Gaithersburg, MD)データベースの分析を、GeneExpress(登録商標)データベースとの使用のためのGene Logic Inc., Gaithersburg, MDから市販のソフトウェア、又は、GeneExpress(登録商標)データベースとの使用のためのGenentech, Inc.で作製され開発された専売特許のソフトウェアを用いて行った。GeneLogicシステムの更なる説明については、Jubb 等, J Clin Pathol 2004 57:514-512を参照のこと。例えば、正常な必須組織及び/又は正常な増殖組織における組織特異性、腫瘍特異性及び発現レベルを含むいくつかの判定基準に基づいて、分析におけるポジティブヒットを評価した。
【0117】
組織試料及び組織マイクロアレイ(TMA)構築
細胞株
Colo206及びCX-1はDSMZ (Braunschweig, Germany)から入手し、KM12はNational Cancer Institute (Bethesda, MD)から入手し、他の全てのCRC細胞株はATCC (Manassas, VA)から入手した。細胞は、2mM L-グルタミン及び10% ウシ胎児血清を添加した50/50のHamF12及びDulbeco変性イーグル培地にて培養した。過去に記載されるように、総RNAを回収して、Affymetrix HG-U133 GeneChipプローブアレイにハイブリダイズさせた。(Yang 等, Arterioscler Thromb Vasc Biol 2002、22:1797-803)。また、細胞ペレットをホルマリンに固定して、パラフィン包埋して、過去に記載のようにTMAに表した。(Kononen 等 Nat Med 1998、4:844-7)。
【0118】
ヒト組織
倫理的再調査委員会(University of Leeds, UK)は、すべての組織及び臨床情報の使用を承認した。Leeds General Infirmary (Leeds, UK)組織病理学公的記録(アーカイブ)を、84の管状腺腫、27の乳頭状腺腫、5の絨毛状腺腫及び32の扁平腺腫を含む148の匿名の結腸直腸腺腫を識別するためにスクリーニングした。ホルマリン固定パラフィン包埋組織は、前述したように、各々線腫をTMAにおいて、代表するために生検を行われた。(Kononen 等 Nat Med 1998、4:844-7)。
対応する原発性癌からのホルマリン固定パラフィン包埋組織及び複数の供与源からの転移を、Genentech公的記録から検索した。これらには、27人の患者で、28の原発性CRC及び30の転移(腸間膜6、リンパ節21及び肝臓3)が含まれていた。更なる9の対応しない肝臓転移も含まれた。全切片を切り出して、以降のアッセイに用いた。
また、この研究では、1990年1月から1995年12月のMarien-Hospital (Duesseldorf, Germany)の外科で切除術を行った330人の患者からのUniversity of Leeds組織公的記録の342のCRCを調べた。疾患の再発に関する情報を含めて、対応する正常粘膜及び生存データをすべての患者について利用した。追跡調査期間中央値時間は、4.2年(範囲:5か月〜11.4年)であった。手術後に、14人の患者は化学療法を受け、12人の患者は放射線療法を受け、7人の患者はその両方を受けた。110の腫瘍(32%)は左結腸曲の近位であり、診断の平均年齢は69歳(範囲:28〜88歳)であり、150人の患者(45%)は男性であった。追跡調査期間の終わりに、局部疾患の再発は25人の患者、遠隔転移は49人の患者にみられ、8人の患者はその両方を示した。(Grabsch 等 Am J Clin Pathol 2004、122:511-6)。過去に記載されるようにTMAを作製した。(Kononen 等 Nat Med 1998、4:844-7)。
【0119】
インサイツハイブリダイゼーション(ISH)
33P標識リボプローブを用いて、EphB2 mRNA発現を評価した。cDNA鋳型を、全ヒト脳 marathon-ready cDNA (BD Clontech, Palo Alto, CA)から、ポリメラーゼ連鎖反応によって、増幅した。フォワード及びリバースのプライマは、それぞれ5'T7及びT3 RNAポリメラーゼ開始部位を含有した。リボプローブは転写産物変異体2のmRNA配列のヌクレオチド3043−3500(GenBank受託NM_004442)及び転写産物変異体1のmRNA配列のヌクレオチド2972−3404(GenBank受託NM_017449):フォワード5'-T7-GCCCTCCTGGTGCTCTATCC-3' (配列番号15)、リバース5'-T3-TCTGTCCATCTGTCCCGTCCT-3' (配列番号16))を補完するように設定した。センス及びアンチセンスプローブのインビトロ転写、ハイブリダイゼーション及び切片の反応は、Jubb 等 J Pathol 2003、200:577-88に記載のように行った。ハイブリダイズした組織切片は、明視野及び暗視野の顕微鏡検査によって、精査し、10%より多くの上皮におけるEphB2発現の最大強度について0−3のスケールにスコア付けした。
【0120】
免疫組織化学(IHC)
Jubb 等 J Pathol 2003、200:577-88の記載のようにIHCを行った。簡潔に言えば、製造者の指示に従って、切片を脱パラフィン化し(Target retrieval solution, DAKO cytomation, Carpinteria, USA)、内在性ビオチン(Avidin-Biotin blocking kit, Vector Labs, Burlingame, CA)と10%の正常ウマ血清による非特異的免疫グロブリンのブロッキングを行って、熱媒介性抗原検索を行った。1μg/mLのナイーブヤギ免疫グロブリン(R&D Systems)又は抗EphB2ポリクローナル抗体(カタログ番号AF467, R&D Systems, Minneapolis, MN)によって、免疫標識を行った。ビオチン化抗ヤギ二次抗体(Vector Labs)とアビジン-ビオチン-西洋わさびペルオキシダーゼ複合体(Vectastain Elite, Burlingame, CA)によって、免疫複合体を標識した。10%より多くの上皮におけるEphB2発現の最大強度について0−3のスケールに組織をスコア化した。細胞ペレットTMAを、染色強度の多様性について調節するために各染色実験に含めた。
【0121】
統計学的分析
同じ病理学者によりすべての症例をスコア付けして、臨床結果を盲検とした。表1に記載の判定基準にしたがってスコア付けした。すべてのTMAにおいて、最も高い発現のコアのスコア(n=1−3/試料)を用いて患者を表した。全体についてカプラン-メイヤー曲線及び対応する危険率から各サブグループ内の平均生存期間を推定し、JMPソフトウェアバージョン5.1(SAS Institute Inc., Cary, NC)を用いて比例的障害フィッテングモデルによって、再発のない生存を推定した。統計学的な作用を、χ-二乗試験、スチューデントt検定又はスピアマンの順位相関係数を適切に用いて評価した。P値が<0.05である場合に統計学的に有意であるとした。
【0122】
実験結果
EphB2発現を、正常な粘膜、腺腫、対応する原発性癌及び転移、及び詳細な臨床追跡調査を行った一連の原発性癌において、分析した。この研究の目的は、結腸直腸癌(「CRC」)のEphB2の予後の影響を調査すること、及び腺癌配列に対する腺腫全体のEphB2発現の相対的なレベルを調べることにある。上記の方法及び材料を用いて実験を行った。後述するように、これらの実験の結果を図7−11に示す。
オリゴヌクレオチドマイクロアレイデータ
Gene Logicデータベースの分析により、正常な大腸は、結腸直腸腺腫、原発性癌及び遠隔転移よりも平均のEphB2発現が有意に低い(P<0.0001)ことが示された(図7A)。この傾向は、レーザー顕微解剖した試料で見られた(P=0.01)(図7B)。原発性癌は、腺腫(P=0.06)又は転移(P=0.48)よりも平均の発現が有意に大きくなかった(図7A)。発現プロファイリングでは、EphB2はCRC細胞株にほとんど存在せず、正常な大腸と同じレベルであることが多いことが示唆された(図7C)。EphB2転写産物及びEphB2タンパク質のレベルは、CRC細胞株において、有意に相関した(P<0.0001)。
局在化
正常大腸及び腫瘍性大腸の両方において、EphB2 mRNA及びタンパク質の発現は上皮に局在化していた(図8、9)。EphB2タンパク質の発現は主に膜であり、細胞質での発現は弱かった。正常大腸のすべての試料において、mRNA(n=47)及びタンパク質(n=342)の発現は腺窩(スコア=2)の基部で最も強く、管腔上皮(スコア=0)につれて発現が低下していた。腫瘍性細胞群における発現の最大強度は、結腸腺窩の基部での発現と等しかった(図8、9)。すべてのサブタイプの結腸直腸腺腫は同種のEphB2発現の所見を示しており、ポリープ状の病変部と比較して扁平腺腫では相対的に高い発現レベルであった(表2)。腫瘍サイズ又は形成異常の重症度との相互関係の欠如は、発現が腫瘍形成の非常に早期から存在することを示唆する(データは示さない)。82%の原発性CRC及び64%の転移が全体の切片において、多少のレベルのEphB2発現を示す(図8)にもかかわらず、EphB2は悪性腫瘍全体にわたって均質又は均一に発現されなかった。これは、存在する場合には、腫瘍性細胞群全体にわたって均一にEphB2を発現した腺腫病変とは対照的である。すべての腺腫の23%がEphB2を発現しなかった。センスISHプローブのハイブリダイゼーション及びナイーブな免疫グロブリンの染色は、バックグラウンドを上回らなかった(データは示さない)。良性間質組織、正常リンパ節組織及び正常肝組織は、EphB2発現について均一にネガティブであった。
【0123】
表2 組織学的に異なるサブタイプの腺腫におけるEphB2発現の強度
Figure 0005007238
ポリープ状の腺腫に対する扁平腺腫についてのT検定、P=0.001。
【0124】
結腸直腸腺腫、原発性癌及び転移
148の腺腫のうちの115(77%)はEphB2発現についてポジティブであった(スコア≧1)。これは、原発性CRCで観察される発現の強度とは統計学的に違いがない(P=0.37)(図10)。EphB2発現は、すべての正常腺窩、77%の腺腫、82%の原発性癌及び64%の転移を含む結腸直腸腫瘍形成のすべてのステージで示された。存在する場合、EphB2は腺腫全体にわたって均一に発現された。組織学的に異なるサブタイプのポリープ状腺腫は、EphB2発現(表2)の強度において、統計学的に有意な相違を示さなかったが、発現は扁平腺腫において、有意に大きかった(P=0.001)。部位、形成異常の重症度、ポリープ頻度、ポリープサイズ又は患者の性別とは有意な関係がなかった(データは示さない)。EphB2発現は、原発性CRCと転移において、同等であった(P=0.17)(図10)。均一な発現が腺腫において、観察されたにもかかわらず、染色のパターンはほとんどの悪性病変に局所しており、腫瘍性細胞群全体にわたって染色の強度がかなり異なっていた。腫瘍細胞の平均25%は、EphB2発現についてポジティブとスコア付けした原発性悪性腫瘍及び二次性悪性腫瘍において、EphB2タンパク質を発現した。すべてのサブタイプの結腸直腸腺腫は均一なEphB2発現の所見を示し、ポリープ状病変と比較して扁平腺腫では相対的にその発現レベルが大きかった(表2)。腫瘍サイズ又は形成異常の重症度との相互関係の欠如は、発現が腫瘍形成の非常に早期から存在することを示唆する。
【0125】
原発性CRCの予後研究
330人の患者のうちの327人は、EphB2タンパク質発現に関する情報を示した:185人の患者は0、101人の患者は1、41人の患者は2にスコア付けした(この一連の研究ではスコア3の患者はいなかった。3人の患者のスコアは欠如していた)。47のCRC(8人の患者はスコア0、19人の患者はスコア1、18人の患者はスコア2、2人の患者はスコア3)を含む1つのTMAでISHを行った。対応する正常な結腸腺窩は、すべての症例の基部でポジティブであった。EphB2 IHCとISHスコアについて有益な46の癌において、EphB2 IHCとISHスコアに有意な関係が観察された(P<0.01)。
EphB2タンパク質発現の効果は、全体の生存率に対する危険度の割合に含まれる。高レベルのEphB2発現は、結腸直腸癌の平均生存期間の延長及び平均の再発のない生存の延長と関係していた。EphB2発現について腫瘍の染色が2+を示した(対0/1+)患者は全体の生存の有意な延長を示した:平均生存期間2514対1044日、危険率0.45、95%の信頼区間:0.18−0.95(図11A)。再発のない生存の分析においても同様な結果が見られた(平均生存795対2233日、HR 0.60、CI:0.30−1.10)(図11B)。スコア0又は1の患者の生存曲線は重なり合っていた。EphB2タンパク質発現が高い患者では平均年齢が有意に低い(65対69.3歳、P<0.02)(表3)が、この一連の研究では年齢は予後因子ではなかった(データは示さない)。他の統計学的に有意な関係は観察されず(表2)、2つのグループが受けたアジュバント治療の頻度に相違はなかった(データは示さない)。表2に示される臨床病理変数の生存の影響は既に検討されている。(Grabsch 等 Am J Clin Pathol 2004、122:511-6)。ステージ、グレード、リンパの浸潤及び血管浸潤を含め、多変量解析では、EphB2スコア2は、有意な、非依存性の予後因子であった(HR 0.47、CI 0.18−0.99)。
【0126】
表3 327のCRCの患者におけるEphB2発現と臨床病理変数の関係
Figure 0005007238
【0127】
前述の発明は、理解の明確性を目的とした図と実施例によって、ある程度詳細に記載しているが、この記載及び実施例は本発明の権利範囲を限定するものとして解釈されるものではない。本願明細書において、引用されるすべての特許及び科学的な文献の開示内容は、出典明記によって、全体にはっきりと組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】EphB2転写産物変異体1の予想されるアミノ酸配列(GenBank受託番号NM_017449)(配列番号:9)を表す。
【図2A】EphB2転写産物変異体1のcDNA配列(GenBank受託番号NM_017449)(配列番号:10)を表す。
【図2B】EphB2転写産物変異体1のcDNA配列(GenBank受託番号NM_017449)(配列番号:10)を表す。
【図3】EphB2転写産物変異体2の予想されるアミノ酸配列(GenBank受託番号NM_004442)(配列番号:11)を表す。
【図4A】EphB2転写産物変異体2のcDNA配列(GenBank受託番号NM_004442)(配列番号:12)を表す。
【図4B】EphB2転写産物変異体2のcDNA配列(GenBank受託番号NM_004442)(配列番号:12)を表す。
【図5】国際公開公報03/000113の図101に開示されるEphB2の予想されるアミノ酸配列(配列番号:13)を表す。
【図6】国際公開公報03/000113の図23に開示されるEphB2のcDNA配列(配列番号:14)を表す。
【図7】結腸直腸腫瘍の発達を示す全組織(A)、正常な大腸及び原発性癌からの顕微解剖した上皮(B)(Gene Logicから入手)、結腸直腸腫瘍細胞株(C)におけるEphB2 mRNA発現を表す。EphB2発現は、Affymetrix HG-U133 GeneChipプローブアレイ上へのプローブセット209588_atからの平均シグナル強度(±95%の信頼区間)として表される。細胞株は、それらのEphB2免疫組織化学(IHC)強度スコアに従って分類される。
【図8】EphB2は、正常な結腸腺窩の基部(A)、及び腺腫腺窩を含むすべてのステージの結腸直腸腫瘍形成(B左上、右下の正常な腺窩に隣接する)、原発性癌(C)、リンパ節転移(D)、腸間膜転移(E)及び肝臓転移(F)において、発現される。膜及び細胞質のEphB2の局在は、ヘマトキシリン対比染色(青色)に対して、DABクロモゲン沈着(茶色)により示される。
【図9】正常な大腸及び結腸直腸癌における免疫組織化学(IHC)及びインサイツハイブリダイゼーション(ISH)によるEphB2発現を示す。免疫組織化学スコア0、1及び2の代表的な原発性癌が示される。EphB2発現を示す膜及び細胞質のDABクロモゲン沈着(茶色)は、ヘマトキシリン対比染色(青色)に対して、正常な大腸及び腫瘍細胞全体に観察される。対応する明視野(ヘマトキシリン‐エオジンによる染色及び暗視野ISH画像により、暗視野の銀粒子の沈着により示される、同一のパターンの上皮限局性EphB2発現が示される。バー=100μm。
【図10】結腸直腸腺腫(TMA、n=148)と、一連の原発性癌(全切片、n=28)及び転移(全切片、n=39)におけるEphB2発現の頻度を表す。
【図11】EphB2発現の高い(スコア2)又はEphB2発現の低い(スコア0又は1)CRC患者サブグループについての全体の生存率(A)と再発のない生存率(B)を示すカプラン-マイヤープロット線を表す。全体の生存率について、EphB2発現の高い患者サブグループの危険率は0.45、95%の信頼区間(CI)は0.18−0.95、再発のない生存率については、0.60、CI 0.30−1.10であった。(A)及び(B)の点線はEphB2スコア0、1を表す、そして(A)及び(B)の線はEphB2スコア2を表す。

Claims (21)

  1. 結腸直腸癌を有する又は結腸直腸癌を有すると思われるヒト患者における癌の予後の評価のための方法であって、
    (a) 患者からの生体試料及びコントロール試料においてEphB2の発現を検出し、そして
    (b) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料におけるEphB2の発現と比較することを含み、
    このとき該患者試料におけるEphB2発現がコントロール試料と比較して増加していることが該患者における癌の良好な予後を示す、方法。
  2. 結腸直腸癌を有する又は結腸直腸癌を有すると思われるヒト患者における癌の予後の評価のための方法であって、患者から得た生体試料においてEphB2発現を検出することを含み、このとき該患者試料におけるEphB2発現がコントロール試料と比較して増加していることが該患者における癌の良好な予後を示し、この患者試料におけるEphB2発現の増加とは上皮において10%より多くの細胞が中程度以上のEphB2発現を示すことを意味し、この中程度のEphB2発現は正常な結腸上皮の結腸腺窩の基部でのEphB2発現のレベルと等しいものである、方法。
  3. 抗EphB2抗体を含むイムノコンジュゲートによる癌治療に応答する患者の区別のための方法であって、
    (a) 患者からの生体試料及びコントロール試料においてEphB2の発現を検出し、そして
    (b) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料におけるEphB2の発現と比較することを含み、
    このとき該患者試料におけるEphB2発現がコントロール試料と比較して増加していることが、該患者における癌の良好な予後と、EphB2抗体を含むイムノコンジュゲートによる治療に対する応答を示す、方法。
  4. EphB2ポリヌクレオチドの発現が検出される、請求項1ないしの何れか一に記載の方法。
  5. EphB2ポリペプチドの発現が検出される、請求項1ないしの何れか一に記載の方法。
  6. EphB2 mRNAの発現が検出される、請求項に記載の方法。
  7. EphB2ポリペプチドの発現が抗EphB2薬剤を用いて検出される、請求項に記載の方法。
  8. EphB2薬剤が抗体である、請求項に記載の方法。
  9. EphB2ポリペプチドの発現が免疫組織化学を用いて検出される、請求項に記載の方法。
  10. さらに、任意の一又は複数のEphB2リガンドの発現を検出することを含む、請求項1ないしの何れか一に記載の方法。
  11. ムノコンジュゲートがメイタンシノイドを含んでなる、請求項に記載の方法。
  12. ムノコンジュゲートがMMAEを含んでなる、請求項に記載の方法。
  13. EphB2ポリヌクレオチドの発現が検出される、請求項11又は12に記載の方法。
  14. EphB2ポリペプチドの発現が検出される、請求項11又は12に記載の方法。
  15. EphB2 mRNAの発現が検出される、請求項13に記載の方法。
  16. EphB2ポリペプチドの発現が抗EphB2薬剤を用いて検出される、請求項14に記載の方法。
  17. 抗EphB2薬剤が抗体である、請求項16に記載の方法。
  18. EphB2ポリペプチドの発現が免疫組織化学を用いて検出される、請求項14に記載の方法。
  19. さらに、任意の一又は複数のEphB2リガンドの発現を検出することを含む、請求項11ないし18の何れか一に記載の方法。
  20. ムノコンジュゲートに存在する抗EphB2抗体が、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及び抗体断片からなる群から選択される、請求項11ないし19の何れか一に記載の方法。
  21. 予後には、癌と予測される又は癌と診断された患者の生存期間、再発のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者の進行のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者群の応答割合、癌と予測される又は癌と診断された患者又は患者群の応答期間、及び/又は癌と予測される又は癌と診断された患者の転移可能性の何れか一又は複数が含まれる、請求項1ないし20の何れか一に記載の方法。
JP2007550509A 2005-01-06 2006-01-05 癌の予後予測、診断および治療に有用な方法および組成物 Expired - Fee Related JP5007238B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US64216405P 2005-01-06 2005-01-06
US60/642,164 2005-01-06
PCT/US2006/000497 WO2006074392A2 (en) 2005-01-06 2006-01-05 Cancer prognostic, diagnostic and treatment methods

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012085349A Division JP2012177698A (ja) 2005-01-06 2012-04-04 癌の予後予測方法、診断方法及び治療方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008527352A JP2008527352A (ja) 2008-07-24
JP5007238B2 true JP5007238B2 (ja) 2012-08-22

Family

ID=36648221

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007550509A Expired - Fee Related JP5007238B2 (ja) 2005-01-06 2006-01-05 癌の予後予測、診断および治療に有用な方法および組成物
JP2012085349A Pending JP2012177698A (ja) 2005-01-06 2012-04-04 癌の予後予測方法、診断方法及び治療方法

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012085349A Pending JP2012177698A (ja) 2005-01-06 2012-04-04 癌の予後予測方法、診断方法及び治療方法

Country Status (9)

Country Link
US (2) US20080008705A1 (ja)
EP (1) EP1833996B1 (ja)
JP (2) JP5007238B2 (ja)
AU (1) AU2006203884B2 (ja)
CA (1) CA2593325A1 (ja)
ES (1) ES2398568T3 (ja)
HK (1) HK1108924A1 (ja)
NZ (1) NZ556284A (ja)
WO (1) WO2006074392A2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
NZ556317A (en) * 2005-01-31 2011-01-28 Genentech Inc Anti-EphB2 antibodies and methods using same
NZ562237A (en) * 2007-10-05 2011-02-25 Pacific Edge Biotechnology Ltd Proliferation signature and prognosis for gastrointestinal cancer
JP5130465B2 (ja) * 2007-12-25 2013-01-30 財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査方法
US8273541B2 (en) 2008-09-17 2012-09-25 Innate Pharma Compositions and methods for detecting TLR3
WO2014202775A1 (en) * 2013-06-21 2014-12-24 Innate Pharma Enzymatic conjugation of polypeptides
JP2023540452A (ja) 2020-08-10 2023-09-25 イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム 抗体を使用した細胞表面mica及びmicbの検出
WO2022214432A1 (en) 2021-04-05 2022-10-13 Innate Pharma Immunohistochemistry methods and kir3dl2-specific reagents
CN113834941B (zh) * 2021-11-02 2024-01-05 复旦大学附属中山医院 基于b细胞表达的结肠癌预后诊断用标记物及其用途

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100576674B1 (ko) 2001-06-20 2006-05-10 제넨테크, 인크. 종양의 진단 및 치료를 위한 방법 및 이를 위한 조성물
WO2003057163A2 (en) * 2002-01-03 2003-07-17 Smithkline Beecham Corporation Methods for preparing immunoconjugates
AU2003291736A1 (en) * 2002-11-05 2004-06-03 Cell Signaling Technology, Inc. Methods and materials for examining pathways associated with glioblastoma progression
EP1583821A4 (en) * 2003-01-15 2007-07-18 Millennium Pharm Inc METHODS AND COMPOSITIONS FOR TREATING UROLOGICAL DISORDERS USING GENES 44390, 54181, 211, 5687, 884, 1405, 636, 4421, 5410, 30905, 2045, 16405, 18560, 2047, 33751, 52872, 14063, 20739, 32544, 43239, 44373, 51164, 53010, 16852, 1587, 2207, 22245, 2387, 52908, 69112, 14990, 18547, 115, 579
JP4762889B2 (ja) * 2003-03-12 2011-08-31 バスジーン セラピューティクス,インコーポレイテッド 血管形成及び腫瘍成長を阻止するための核酸化合物
ATE528397T1 (de) * 2003-08-08 2011-10-15 Perseus Proteomics Inc Bei krebs überexprimiertes gen
US7402389B2 (en) * 2004-02-24 2008-07-22 The Translational Genomics Research Institute (Tgen) Compositions and methods for prognosis of cancers
NZ556317A (en) * 2005-01-31 2011-01-28 Genentech Inc Anti-EphB2 antibodies and methods using same

Also Published As

Publication number Publication date
AU2006203884A1 (en) 2006-07-13
EP1833996B1 (en) 2012-12-05
WO2006074392A3 (en) 2006-12-14
ES2398568T3 (es) 2013-03-20
US20080008705A1 (en) 2008-01-10
JP2008527352A (ja) 2008-07-24
CA2593325A1 (en) 2006-07-13
US20090324595A1 (en) 2009-12-31
AU2006203884B2 (en) 2012-02-16
HK1108924A1 (en) 2008-05-23
EP1833996A2 (en) 2007-09-19
WO2006074392A2 (en) 2006-07-13
JP2012177698A (ja) 2012-09-13
NZ556284A (en) 2009-11-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8945572B2 (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of cancer
JP2012177698A (ja) 癌の予後予測方法、診断方法及び治療方法
US20070141066A1 (en) Method for Diagnosing, Prognosing and Treating Glioma
US20110002845A1 (en) Methods of treating, diagnosing or detecting fgf21-associated disorders
JP2010526029A (ja) がんを処置し、診断し、そして検出するためのfxyd5調節剤
US20150376289A1 (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of cancer
JP5297375B2 (ja) 癌の診断及び治療のための方法及び組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081217

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20101104

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20101207

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20110304

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20110311

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110331

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111004

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20111226

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20120106

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20120202

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20120209

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20120301

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20120308

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120404

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120501

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120528

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150601

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees