JP2008527352A - 癌の予後予測方法、診断方法及び治療方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この出願は、米国特許法119に基づき、2005年1月6日に出願の米国仮出願第60/642,164号の優先権を主張し、出典により本明細書中にその内容全体が組み込まれるものである。
本発明はEphB2ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの検出に関する。また、本発明は、癌の予後予測方法、癌治療の選択方法、大腸腺腫に特徴的な疾患の検出、診断及び治療の方法に関する。
癌は、依然としてヒトの健康に対する最も致命的な脅威のうちの一つである。米国において、毎年1,300,000人近くの患者が癌に新たに罹患しており、心臓病に次いで二番目の主要な死因であり、およそ4人に1人と推定される。また、5年以内で癌が一番の死因である心臓血管系疾患を上回ると予測される。その死のほとんどが固形腫瘍である。特定の癌の薬物療法に有意な進歩があったにもかかわらず、すべての癌について全体の5年生存率は過去20年間でおよそ10%向上しただけであった。癌又は悪性腫瘍は転移して、コントロールのきかない状態で急速に成長するので、時宜を得た検出及び治療を極めて難しくする。結腸直腸癌は米国の癌死亡率で3番目に多い原因である。1999年の米国では、およそ129,000の症例が新たに結腸直腸癌と診断され、56,000人が結腸直腸癌のために死亡している(Landis 等, Cancer J Clin. 49:8-31 (1999))。
Ephレセプターはヒトゲノムのレセプターチロシンキナーゼの最も大きなファミリーをなしており、エフリン(ephrin)と呼ばれるリガンドと相互作用する(Kullander 等, Nat Rev Mol Cell Biol 2002、3:475-86に概説)。このファミリーは、配列同一性によって、タイプA及びタイプBのエフリンと称される、対応する膜貫通リガンドファミリーを有する2つのクラス、EphA及びEphBに分類される。EphB2レセプター(「EphB2」又は「EphB2R」)は、そのアミノ末端の半分にわたって伸びるシステインリッチなモチーフの後に2つのフィブロネクチンタイプIIのモチーフを有する細胞外領域を有する。ここに、保存されたキナーゼ領域及び膜貫通領域を特徴とする細胞内ドメインがある。癌において、EphB2発現が記載されている。例として、Cairns 等, 国際公開公報2003/000113、Mao 等, Cancer Res. 64, 781-788 (2004)参照。
本願明細書に開示される本発明は、被検体からの生体試料におけるEphB2ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)の検出を含む方法であって、EphB2ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)の検出により被検体の癌が予知又は予測される方法を提供するものである。本方法は、mRNA発現を検出するアッセイ、酵素活性の存在を検出する酵素のアッセイ、免疫組織化学アッセイ及び本願明細書に記載の他の方法を含む様々なアッセイ様式で実行されうる。また、本発明は、大腸腺腫疾患(大腸腺腫に特徴がある疾患)を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド発現の検出を含む癌治療の選択方法、及び大腸腺腫疾患の治療方法を提供する。
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の評価方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料(又はコントロール参照値)におけるEphB2の発現と比較する;そして(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測することを含み、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現により、該患者の癌が予知される方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の評価方法であって、(a) 該患者から生体試料を得る;そして(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出することを含み、該患者の生体試料においてEphB2が発現する場合に、該患者において癌が予知される方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
他の態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の癌治療の選択方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料におけるEphB2の発現と比較する;(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測する、このときコントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現により、該患者の癌が予知されるものであり;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
他の態様では、本発明は、患者の治療の選択方法であって、(a) 患者の生体試料を得る;(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出する、このとき該患者の生体試料においてEphB2が発現する場合に癌が予知されるものであり;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて、該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料と相対的な該患者の生体試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
他の態様では、本発明は、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの検出方法であって、(a) 生体試料を得る;そして(b) 生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現を検出することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、生体試料は大腸腺腫細胞及び/又は組織を含む。
他の態様では、本発明は、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの検出方法であって、生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現を検出することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、生体試料は大腸腺腫細胞及び/又は組織を含む。
他の態様では、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの検出方法であって、生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現とコントロール試料におけるEphB2の発現とを比較することを含む方法である。いくつかの実施態様では、生体試料は大腸腺腫細胞及び/又は組織を含む。
他の態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2抗体(例えば抗EphB2アンタゴニスト抗体)が投与されることによる、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法を提供する。
他の態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺癌を有する又は有すると思われる患者の治療方法を提供する。
他の態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2抗体又は有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法であって、さらにこのとき、抗EphB2抗体又は抗EphB2イムノコンジュゲートが投与される前、投与中又は投与後に、ヒト患者からの大腸腺腫細胞及び/又は組織においてEphB2の発現が検出される方法を提供する。いくつかの実施態様では、抗EphB2抗体又は抗EphB2イムノコンジュゲートが投与される前、投与中又は投与後に、EphB2の過剰発現が検出される。抗EphB2抗体又は抗EphB2イムノコンジュゲートの投与前;投与中;投与後;投与前と投与中;投与前と投与後;投与中と投与後;又は投与前、投与中及び投与後に発現が検出されてもよい。
いくつかの実施態様では、大腸腺腫疾患は、家族性大腸ポリープ症、Peutz-Jegher's症候群、若年性ポリープ症候群、遺伝性混合性ポリープ症候群、カウデン病、及びBannayan-Ruvalcaba-Riley症候群からなる群から選択される。
大腸腺腫疾患治療の選択又は癌治療の選択を伴う実施態様では、癌治療又は大腸腺腫疾患治療は、有効量の抗EphB2抗体又は、有効量の抗EphB2抗体を含有するイムノコンジュゲートの投与を含んでもよい。更なる他の実施態様では、治療は、化学療法、放射線療法及び手術の何れか一又は複数を含む。
EphB2発現の検出を伴う実施態様では、EphB2ポリヌクレオチド発現及び/又はEphB2ポリペプチド発現が検出されうる。EphB2発現の検出を伴う実施態様では、EphB2 mRNA発現が検出される。他の実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、抗EphB2薬剤を用いて検出される。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、抗体を用いて検出される。モノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体及び/又は抗体断片を含む、任意の適切な抗体は検出のために用いられうる。いくつかの実施態様では、EphB2ポリペプチド発現は、免疫組織化学(IHC)を用いて検出される。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、IHCを用いて2以上にスコア化される。いくつかの実施態様では、EphB2変異体及び/又は断片が検出される。いくつかの実施態様では、変異体ポリペプチドは、天然配列のポリペプチド、いくつかの実施態様では、図1、3及び/又は5に示すポリペプチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸同一性を有する。他の実施態様では、変異体ポリペプチドは、ストリンジェントな条件下でEphB2ポリヌクレオチド配列、いくつかの実施態様では、図2、4及び/又は6に示すポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によって、コードされる。いくつかの実施態様では、変異体ポリヌクレオチドは、天然配列のポリヌクレオチド、いくつかの実施態様では、図2、4及び/又は6に示すポリヌクレオチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のポリヌクレオチド配列同一性を有する。他の実施態様では、変異体ポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下でEphB2ポリヌクレオチド配列、いくつかの実施態様では、図1、3及び/又は5に示すポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様では、EphB2変異体は生物学的に活性である。EphB2生物活性は当分野で公知であり、限定するものではないが、(a) EphB2リガンド(一又は複数)(例えばエフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4)を結合する、(b) EphB2リガンドを結合して、EphB2リガンド生物活性又はEphB2リガンドにより媒介される下流の経路を活性化する、(c) EphB2リガンド結合に応答してシグナルを伝達する、ことの何れか一又は複数が含まれる。
他の態様では、本発明は、EphB2ポリヌクレオチド(一又は複数)及び/又はポリペプチド(一又は複数)及び/又は抗EphB2イムノコンジュゲートを具備するキット、組成物及び製造品を提供する。いくつかの実施態様では、キット及び製造品は、本願明細書において、開示される何れかの方法のための指示書を更に具備する。
ある態様では、本発明は、被検体、例えばヒト被検体からの生体試料中のポリペプチド(一又は複数)(例えばEphB2)を検出するための方法を提供する。驚くべきことに、本出願人は、EphB2の発現により癌の予後が予測できることを発見した。したがって、開示された方法は、患者を治療するために好適な治療法を選択することを含み、前記疾患の将来の経過を予測するために有用なデータ及び情報を得るための、簡便で、有効で、費用効率がよいと思われる手段を提供することができる。
他の態様では、また、本発明は、癌治療の選択方法を提供する。いくつかの実施態様では、前記の処置には、抗EphB2薬剤(例えば抗体)の有効量、又は細胞障害性剤、例えば化学療法剤、成長阻害性剤、毒素(例えば合成、細菌、真菌、植物又は動物の起源の活性な毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした抗EphB2抗体を含有するイムノコンジュゲートの有効量の投与を含む。
他の態様では、本発明は、大腸腺腫疾患を有する又は有すると思われる患者においてEphB2発現を検出する方法、大腸腺腫疾患の診断方法、及び大腸腺腫疾患の治療方法を提供する。
また、キット、組成物及び製造品を提供する。
本願明細書中に記載又は引用される技術及び手順は、一般に十分に理解されるものであり、当業者によって従来の方法論を用いて共通して実施されるものである。その例として、以下の文献に記載される方法論が広く利用されている。Sambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, 等 編集, (2003));the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames 及び G. R. Taylor 編集 (1995))、Harlow and Lane, 編集 (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, 編集. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, 編集, 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, 編集, 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R. I. Freshney), 編集, 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, 及び D. G. Newell, 編集, 1993-8) J. Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir 及び C. C. Blackwell, 編集);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller 及び M. P. Calos, 編集, 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis 等, 編集, 1994);Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan 等, 編集, 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley 及び Sons, 1999);Immunobiology (C. A. Janeway 及び P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practical approach (D. Catty., 編集, IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd 及び C. Dean, 編集, Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow 及び D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti 及び J. D. Capra, 編集, Harwood Academic Publishers, 1995);及び Cancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita 等, 編集, J.B. Lippincott Company, 1993)。
ここで用いる「EphB2」(「EphB2R」とも交換可能に称される)は、ヒトのEphB2レセプターを含む、すべての哺乳類種の天然配列のEphB2レセプターとして定められる。EphB2又は他の任意のポリペプチドと関連した「天然配列の」なる用語は、調整方法にかかわらず、天然由来の対応するポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。このような天然配列のポリペプチドは、天然から単離してもよいし、又は組換え及び/又は合成手段ないしその何れかの組合せにより産生されうる。「天然配列の」なる用語は、特に天然に生じる切断型ないし分泌型(例えば細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異体型(例えば選択的スプライシング型)及び天然に生じる対立遺伝子変異体を包含する。ここで用いる「EphB2」は、タンパク質及び/又はポリペプチド発現を指す。通常、この用語は、ポリペプチド及びポリヌクレオチドの発現を指す。しかしながら、この場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの何れかを参照することを意図することを表しうる。
ここで用いる「EphB2リガンド」なる用語は、すべての哺乳類種の天然配列のエフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及びエフリン-A4を含む、すべての哺乳類種の天然配列のEphB2リガンドを含む。ここで用いる「EphB2リガンド」は、タンパク質及び/又はポリペプチド発現を指す。通常、この用語はポリペプチド及びポリヌクレオチドの発現を指す。しかしながら、この場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの何れかを参照することを意図することを表しうる。
本明細書中で用いられる「哺乳動物」なる用語は、哺乳動物と分類される任意の動物、例えばヒト、ウシ、ウマ、イヌおよびネコを意味する。
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブや抗体などの試薬に直接的または間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識または蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つのCDRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のCDRは、FR領域に近接して結合され、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害活性への抗体の関与を示す。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも一又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
目的の抗原に「結合する」抗体とは、抗体が抗原に対する治療薬及び/又は検出薬(例えば診断薬)及び/又は予後予測薬として有用となるように十分な親和性及び/又は結合活性を有して抗原に結合することができるものである。いくつかの実施態様では、目的の抗原を「結合する」抗体は、具体的又は好ましくは、目的の抗原を結合する。いくつかの実施態様では、目的の抗原を「結合する」抗体は目的の抗原のみを結合する。
ポリヌクレオチド「変異体」は、天然配列のポリヌクレオチドと少なくともおよそ80%のポリヌクレオチド配列同一性を有するポリヌクレオチドを意味する。このような変異体は、例えば、ポリヌクレオチドの5'端又は3'端で一又は複数のヌクレオチドが付加されたか又は欠失されたポリヌクレオチドを含む。通常、天然配列のポリヌクレオチドと少なくともおよそ80%の配列同一性、好ましくは少なくともおよそ81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
ポリヌクレオチド「断片」(「領域」とも称する)は、ポリヌクレオチド配列の少なくともおよそ20、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、750、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、3400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500又は4500以上の隣接するヌクレオチドを有するポリヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドである。
「治療的有効量」という用語は、哺乳類の疾病や疾患の治療のために有効な薬剤の量に相当する。癌の場合は、治療的有効量の薬剤により、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の成長をある程度阻害し;及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげることが可能である。ある程度、薬剤は、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を殺すことが可能で、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、例えば生存期間、病状の進行時間(TTP)、応答速度(RR)、応答期間、及び/又は生活の質の測定により測定される。大腸腺腫の場合、治療的有効量の薬剤により、例えば、腺腫細胞数の減少;腺腫サイズの減少;腺腫数の減少;腺腫の成長のある程度の阻害;及び/又は本疾患に関係する一又は複数の症状のある程度の軽減しうる。
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドないしタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドないしタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドないしタンパク質の診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドないしタンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端或いは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、(2)クーマシーブルー或いは好ましくは銀染色を用いた非還元或いは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで、或いは、(3)質量分光法又はペプチドマッピング技術による均一性まで精製される。単離された物質には、その自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内にインサイツのポリペプチドないしタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドないしタンパク質は少なくとも一つの精製工程により調製される。
「含んでなる」は含むことを意味する。
ここで用いられる、単数形「a」、「and」及び「the」には、明らかな記載がない限り複数形も含まれる。ゆえに、例えば、「遺伝的な変更」なる表現は複数のこのような変更を含み、「プローブ」なる表現は一又は複数のプローブに対する表現を含む。
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は、(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
EphB2の検出を含む方法
ある態様では、本発明は、癌を有する又は有すると思われる患者からの生体試料中のEphB2ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)を検出することを含み、この検出により患者の癌の予後が予測又は予想される方法を提供する。驚くべきことに、本出願人は、EphB2の発現により癌の予後が予測できることを発見した。したがって、開示された方法は、患者を治療するために好適な治療法を選択することを含み、前記疾患の将来の経過を予測するために有用なデータ及び情報を得るための、簡便で、有効で、費用効率がよいと思われる手段を提供することができる。
したがって、ある態様では、本発明は、癌を有する又は癌を有すると思われる患者の予後の評価方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料(又はコントロール参照値)におけるEphB2の発現と比較する;そして(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測することを含み、EphB2発現により患者の癌の予後を予測する方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な該患者の試料におけるEphB2発現が増加している場合に被検体の癌が予測される。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な該患者の試料におけるEphB2発現が減少している場合に被検体の癌が予測される。
癌の例は、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍などであるが、これに限定されるものではない。このような癌のより具体的な例は、扁平細胞癌(例えば上皮性扁平細胞癌)、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞性癌、胃腸癌を含む胃又は胃癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿路癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜ないしは子宮上皮癌、唾液腺上皮癌、腎臓又は腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門の上皮癌、陰茎上皮癌、メラノーマ、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、脳並びに頭頸部癌、及び関連する転移などがある。いくつかの実施態様では、癌は、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)及び肝細胞癌からなるグループから選択される。いくつかの実施態様では、癌は結腸直腸癌である。他の実施態様では、癌は手術によって、潜在的に治療可能な大腸癌である。他の実施態様では、癌は手術不可能の大腸癌である。いくつかの実施態様では、癌は転移性大腸癌である。さらに他の実施態様では、癌は本願明細書において、開示されるように、EphB2発現を用いた予後の分析から利益を得る任意の疾患、例として、EphB2発現を増加ないしは減少に特徴がある疾患である。
また、本発明の方法はEphB2変異体ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)を検出しうる。いくつかの実施態様では、変異体ポリペプチドは、天然配列のポリペプチド、いくつかの実施態様では、図1、3及び/又は5に示すポリペプチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸同一性を有する。他の実施態様では、変異体ポリペプチドは、ストリンジェントな条件下でEphB2ポリヌクレオチド配列、いくつかの実施態様では、図2、4及び/又は6に示すポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施態様では、変異体ポリヌクレオチドは、天然配列のポリヌクレオチド、いくつかの実施態様では、図2、4及び/又は6に示すポリヌクレオチドと少なくともおよそ80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のポリヌクレオチド配列同一性を有する。他の実施態様では、変異体ヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下でEphB2ポリヌクレオチド配列、いくつかの実施態様では、図1、3及び/又は5に示すポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様では、EphB2変異体は生物学的に活性である。EphB2生物活性は当分野で公知であり、限定するものではないが、(a) EphB2リガンド(一又は複数)(例えばエフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4)を結合する;(b) EphB2リガンドを結合して、EphB2リガンド生物活性又はEphB2リガンドにより媒介される下流の経路を活性化する;(c) EphB2リガンド結合に応答してシグナルを伝達する、ことの何れか一又は複数が含まれる。本発明の方法はEphB2断片も検出しうる。
本願明細書中で検討される、生体試料中のEphB2は、当分野で周知の多くの方法、例えば、限定するものではないが、免疫組織化学及び/又はウェスタン分析、生化学的な酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、mRNAのノーザン分析及び/又はPCR分析、及びゲノムサザン分析(例えば遺伝子欠損又は増幅を試験するため)、並びに遺伝子、タンパク質及び/又は組織アレイ分析によって行われうる多様なアッセイの何れか一によって検出することができる。ポリヌクレオチド及びポリペプチドの状態を評価する典型的なプロトコールは、例えばAusubel 等 編集, 2003にみられ、そのいくつかは本願明細書中に記載され、例示される。
ある態様では、本発明は、被検体、例えばヒト患者からの生体試料中のポリペプチド(一又は複数)(例えばEphB2)(例えばポリペプチドの有無又は量)を検出するための方法を提供する。多様なポリペプチドの検出方法を行うことができ、その方法には、例えば免疫組織化学分析、免疫沈降法、ウェスタンブロット分析、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光色素活性化細胞分類(FACS)、質量分光法、タンパク質マイクロアレイなどが含まれる。
いくつかの実施態様では、生体試料中のEphB2は、(a) 抗体、その断片又はタンパク質(例えば組み換えタンパク質)などのEphB2結合剤と該試料を作用させる;そして(b) 該試料中のEphB2結合剤-EphB2ポリペプチド複合体を検出することによって検出される。
抗EphB2抗体は当分野で公知であり(例えば、カタログ番号AF467, R&D Systems, Minneapolis, MN)、当分野で周知の方法を用いて生成しうる。抗EphB2抗体は、(a) EphB2に結合する;(b) EphB2活性化をブロック又は低減する;(c) EphB2リガンド(例えば、エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4)活性化及び/又は結合をブロック又は低減する、の特徴(当分野で周知のアッセイ)の何れか一又は複数を表す。EphB2活性化についてのアッセイをMao 等 Cancer Res. 64: 781-788, 2004に記載する。付加的な例示的抗EphB2抗体を本願明細書中に記載する。
一般的に、免疫組織化学に使用する一次および/または二次抗体は、検出可能な成分にて標識されるであろう。通常、以下の種類に分類できる多くの標識が利用可能である:
(b) コロイド金粒子
(c) 希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン又はSPECTRUM ORANGE7およびSPECTRUM GREEN7などの市販の蛍光体および/または上記の何れか一ないしは複数の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(d) 様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測器を用いて)か、またはエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivanら., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
(i) 基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii) 色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii) 色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
多数の他の酵素基質の組合せは当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4,275,149号および4,318,980を参照。標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされることがある。これを行うための様々な技術は当分野の技術者に公知である。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した大きな4つの分類のうちの何れかはアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体は小ハプテンとコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの1つは抗ハプテン抗体とコンジュゲートさせる。したがって、抗体と標識は間接的にコンジュゲートすることができる。
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。標識は、3,3'-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)であることが望ましい。好ましくは、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
表1
いくつかの実施態様では、生体試料を、抗EphB2薬剤-EphB2複合体が形成するために十分な条件下で抗EphB2薬剤(例えばEphB2を結合する抗体)と接触させ、次いで該複合体を検出してもよい。検出は、当分野で公知の多くの方法、例えば血漿又は血清を含む多種多様な組織および試料を検定するためのウェスタンブロッティングおよびELISA手順によって行ってもよい。このようなアッセイ様式を用いた広範囲にわたるイムノアッセイ技術は利用可能である。米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号および同第4,018,653号参照。これらには、単一の部位および2-部位の両方、あるいは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合的結合アッセイが含まれる。また、これらのアッセイには、EphB2に対する標識抗体の直接結合が含まれる。
また、生体試料におけるEphB2の発現は、機能的なアッセイ又は活性ベースのアッセイを用いて検出されうる。EphB2機能のアッセイ方法は当分野で公知であり、Mao 等 Cancer Res. 64: 781-788, 2004に記載のアッセイが含まれる。
ある態様では、本発明は、被検体、例えばヒト患者からの生体試料中のポリペプチド(一又は複数)(例えばEphB2ポリヌクレオチド)(例えばポリヌクレオチドの有無又は量)を検出するための方法を提供する。様々なポリヌクレオチドの検出方法を行うことができ、例えばRT-PCR、タックマン、増幅法、ポリヌクレオチドマイクロアレイなどが含まれる。
ポリヌクレオチド(例えばmRNA)の検出方法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、標識したEphB2のリボプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション)、ノーザンブロットおよび関連した技術、および様々な核酸増幅アッセイ(例えば、EphB2に特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCRおよび、他の増幅型の検出法、例えば枝分れDNA、SPIA、Ribo-SPIA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
プローブ及び/又はプライマーは、検出可能なマーカー、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤又は酵素にて標識されてもよい。このようなプローブおよびプライマーを、試料中のEphB2のポリヌクレオチドの存在を検出するため、および、EphB2のタンパク質を発現する細胞を検出するための手段として用いることができる。技術者に理解されるように、多数の異なるプライマーおよびプローブは、(例えば、本願明細書中で示される配列に基づいて)調製されてもよく、EphB2のmRNAの有無および/または量を増幅、クローン化および/または決定するために効率的に用いてもよい。
いくつかの実施態様では、エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4などのEphB2のリガンドの発現は、本願明細書中に詳述されるように検出される(単独又はEphB2発現との(同時及び/又は連続した)結合)。更なる他の実施態様では、APC、p53、DCC、DPC4、JV18-1/MADR2及び/又はras(例えば、c-Ki-ras又はN-ras)の発現はEphB2発現との結合で検出される。
本発明の方法において、生体試料は、EphB2リガンド(一又は複数)(例えばEphB2リガンドポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド)の発現について(EphB2発現と組み合わさって又は独立して)試験されてもよい。上記及び当分野で記載されるように、現在、EphB2は少なくとも4つの異なるリガンド:エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及びエフリン-A4と結合すると思われている。本願明細書において、記述されるものを含め、当分野で公知の方法を用いて、エフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド発現が検出されてもよい。例として、上記のIHC技術は、試料中において、一又は複数のこのような分子の存在を検出するために行われうる。本願明細書において、用いられる「組み合わさって」は、任意の同時及び/又は連続的な検出を包含することを意味する。ゆえに、生体試料がEphB2の存在についてだけでなく、例えばエフリン-B1、エフリン-B2、エフリン-B3及び/又はエフリン-A4について試験される実施態様では、異なるスライドが同じ組織又は試料から調製されてもよく、それぞれのスライドがEphB2及び/又はリガンドそれぞれと結合する試薬により試験されることが考慮される。あるいは、単一のスライドは組織又は細胞試料から調製されてもよく、EphB2に対する抗体とリガンドを多色染色プロトコールと関連して使い、EphB2とリガンドの視覚化及び検出を行う。
検出により生成されるデータは、任意の好適な手段(例えば、視覚的、コンピュータなどによって)を用いて分析できる。一実施態様では、データは、プログラム可能なデジタルコンピュータを用いて分析される。データ分析はシグナルの強度を決定する工程を含みうる。強度は正常化することによって、いくつかの基準値と相対的に調整される。例えば、基準値は結合のバックグラウンドノイズであってもよい。あるいは、基準値は、コントロール抗体のタンパク質結合強度であってもよい。EphB2発現の比較(例えば試験生体試料における発現レベルとコントロール生体試料における発現レベル又はコントロール参照値の比較)は、χ-二乗検定、スチューデントt検定又はスピアマンの順位相関係数などの標準的な統計的方法を含む標準法によって、好適に実行できる。更なる統計的方法は、Wohlgemuth 等, 米国公開公報2004/0009479 A1、Birbeck 等 Annals Surg 235:449-457 (2002)において検討され、本願明細書において例示される。統計学的分析を実行するためのソフトウェアパッケージは大いに利用できる。
また、本発明は癌治療の選択方法を提供する。上記したように、癌治療、例えば化学療法、放射線及び/又は手術は関連するリスクを有し、最も利益を得そうな患者を最適に選択することが可能であることが有用である。予後試験は、例えば、より強力であるがよりリスクが高い治療方策が決定するほど予後が不良な患者を同定するため、及びリスクを正当化できるだけの十分な利益がもたらされないリスクのある治療を受ける予後が良好な患者を同定するために有用である。したがって、本発明は、患者の癌治療の選択方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料(又はコントロール参照値)におけるEphB2の発現と比較する;(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測する、このときEphB2発現により患者の癌が予知されるものであり;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて、該患者の癌治療を選択することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、患者の(試験)試料においてEphB2の発現が増加している場合に、患者に癌が予測される。
例示的な癌は本願明細書中に記載される。癌の治療は当分野で周知である。例として、Cancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita 等, 編集, Williams & Wilkins Co., 2001);Manual of Clinical Oncology (Casciato, DA, 編集, Lippincott, Williams & Wilkins Co., 2000);Bacquiran, DC 編集, Lippincott’s Cancer Chemotherapy Handbook, Lippincott Co., 2001);Armitage, JO, 編集, High-Dose Cancer Therapy, Lippincott, Williams & Wilkins Co., 1999)を参照のこと。いくつかの実施態様では、処置には、細胞障害性剤、例えば化学療法剤、成長阻害性剤、毒素(例えば合成、細菌、真菌、植物又は動物の起源の活性な毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした抗EphB2抗体を含有するイムノコンジュゲートの有効量の投与を含む。イムノコンジュゲートは当分野で公知であり、例示的なイムノコンジュゲートは本願明細書中に記載される。Pennell, CA. Immunol. Res. 25, 177-191 (2002; Kreitman, RJ, Curr. Pharm. Biotechnol. 2: 313-325 (2001)も参照のこと。
癌の治療において、細胞障害性剤又は細胞増殖抑制剤、すなわち腫瘍細胞を殺すか又は阻害する薬剤の局所への配送のために抗体-薬剤コンジュゲートを用いると(Syrigos 及び Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614、 Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26: 151-172、米国特許第4,975,278号)、薬剤分子が腫瘍に狙って運搬され、そこで細胞内蓄積する。このときこの非コンジュゲート薬剤を全身投与すると除去しようとする腫瘍細胞だけでなく正常細胞にも容認できないほどのレベルの毒性が生じうる(Baldwin 等, (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986): 603-05、Thorpe, (1985) "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review," in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, A. Pinchera 等 (編集), pp. 475-506)。これによって、ごくわずかな毒性と最大限の有効性が追求される。これらの方策に有用なポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体が報告されている(Rowland 等, (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。これらの方法で使用する薬剤には、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキセート及びビンデシンなどがある(上掲のRowland 等, (1986))。抗体-毒素コンジュゲートにおいて、使用される毒素には、細菌毒素、例えばジフテリアトキシン、植物性毒素、例えばリシン、小分子毒素、例えばゲルダナマイシン(Mandler 等 (2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19): 1573-1581、Mandler 等 (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028、Mandler 等 (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(欧州特許1391213、Liu 等, (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode 等 (1998) Cancer Res. 58: 2928、 Hinman 等 (1993) Cancer Res. 53: 3336-3342)などがある。毒素は、チュービュリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含むメカニズムによって、それらの細胞障害能及び細胞静止効果に作用しうる。大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートされる場合、細胞障害性剤の中には不活性であるかより活性が低い傾向のものがある。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン(aurostatin)、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している本発明の抗体(完全長又は断片)を含んでなる。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4,137,230号;同4,248,870号;同4,256,746号;同4,260,608号;同4,265,814号;同4,294,757号;同4,307,016号;同4,308,268号;同4,308,269号;同4,309,428号;同4,313,946号;同4,315,929号;同4,317,821号;同4,322,348号;同4,331,598号;同4,361,650号;同4,364,866号;同4,424,219号;同4,450,254号;同4,362,663号;及び同4,371,533号に開示されている。
メイタンシノイド薬剤成分は、(i) 発酵又は化学修飾、発酵産物の誘導体化によって調製するために相対的に利用可能である(ii) 抗体に対する非ジスルフィドリンカーによる共役に好適な官能基による誘導体化に従う、(iii) 血漿中で安定、そして(iv) 様々な腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体薬剤コンジュゲートの魅力的な薬剤成分である。
例えば、米国特許第5,208,020号又は欧州特許第0425235 B1号、Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)、及び2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960,602(これらの開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)に開示されているもの等を含め、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含んでなる抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960,602に開示されるように調製されうる。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。更なる結合基を本願明細書中に記載し、例示する。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施形態において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチジル類似体及び誘導体、アウリスタチン(auristatin) (米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含んでなる。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke 等 (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌活性(US 5663149)及び抗真菌性活性(Pettit 等 (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬剤成分は、ペプチジル薬剤分子のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端により抗体に接着しうる(国際公開公報02/088172)。
例示的なアウリスタチンの実施態様は、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬剤成分DE及びDFを含み、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands", US Ser. No. 10/983,340, filed Nov. 5, 2004に開示される。この開示内容は出典明記によってその全体が特別に組み込まれる。
一般的に、ペプチドベースの薬剤成分は、2以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することによって調製されうる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知の液相合成方法に従って調製することができる(E. Schroder and K. Lubke, "The Peptides", volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬剤成分は、US 5635483; US 5780588;Pettit 等 (1989) J. Am. Chem. Soc. 111: 5463-5465;Pettit 等 (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit, G.R., 等 Synthesis, 1996, 719-725;及びPettit 等 (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863の方法に従って調製されうる。また、Doronina (2003) Nat Biotechnol 21(7): 778-784; "Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願のUS Ser. No. 10/983,340も参照のこと。これらは出典明記によってその全体が本願明細書中に組み込まれる(例えば、リンカー及びモノメチルバリン化合物、例えばMMAE及びリンカーにコンジュゲートしたMMAFの調整方法を開示している)。
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した本発明の抗体を含んでなる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ1 I、α2 I、α3 I、N-アセチル-γ1 I、PSAG及びθI 1(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
本発明の抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成される免疫コンジュゲートをさらに考察する。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB (succinimidyl-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467-498頁を参照。
本発明の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)において、抗体(Ab)を、リンカー(L)を介して、一つ以上の薬剤部分(D)、例えば抗体につき約1〜約20の薬剤部分にコンジュゲートする。式IのADCはいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態および試薬を用いて調製されうる:(1) 共有結合の後に薬剤部分Dと反応してAb-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた抗体の求核基の反応;及び(2) 共有結合の後に抗体の求核基と反応してD-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた薬剤部分の求核基の反応、が含まれる。ADCを調製するための更なる方法は本願明細書中に記載される。
Ab−(L−D)p I
リンカーは、一つ以上のリンカー成分から成ってもよい。例示的なリンカー成分は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボンイル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。更なるリンカー成分は当分野で公知であり、そのいくつかは本願明細書において、記述される。また、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願した米出願番号10/983,340を参照。その内容は出典明記により本願明細書に組み込まれる。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
一実施態様では、本発明の治療は、抗EphB2抗体と一又は複数の化学療法剤の併用投与を伴う。本発明は、異なる化学療法剤の反応混液の投与を考慮する。組合せ投与には、別々の製剤又は単一の医薬製剤を使用する同時投与、及び好ましくは両方(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を働かせる時間があるいずれかの順での連続投与が含まれる。
このような化学療法剤の調製及び投与スケジュールは製造者の注意書きに従い使用されるか、又は熟練した実務者により経験的に決定される。このような化学療法の調製及び投与スケジュールは、例えばChemotherapy Service編 M.C.Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD(1992)及びLippincott’s Cancer Chemotherapy handbook, Baquiran 等, 編集 Lippincott, Williams and Wilkins (2002)にも記載されている。化学療法剤は、抗体の投与前でも投与後でもよく、又は抗体の投与と同時でもよい。
疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一又は複数の別個の投与又は連続注入のいずれであれ、体重1kg当たり約1μgないし50mg(例えば0.1−20mg/kg)の抗体を患者への最初の投与量の候補とすることができる。上述した因子に応じて、典型的な一日の投与量は約1μg/kgから約100mg/kgあるいはそれ以上の範囲である。数日間又はそれ以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、疾患の徴候が望ましく抑制されるまで処置を維持する。しかしながら、他の投与計画が有用でありうる。好適な態様では、本発明の抗体は2〜3週ごとに、約5mg/kg〜約15mg/kgの範囲の用量で投与される。本発明の治療の経過は、従来の技術及びアッセイによって、容易にモニターされる。本発明の治療の有効性は、癌治療を評価する際に共通して用いられる様々なエンドポイント、限定するものではないが、腫瘍再発、腫瘍重量ないしサイズの収縮、進行時間、生存期間、進行がない生存、全体の応答速度、応答の継続期間及び生活の質などで測定されてもよい。
他の態様では、本発明は、大腸腺腫のEphB2発現の検出方法及び大腸腺腫に特徴がある疾患(交換可能に「大腸腺腫疾患」と呼ばれる)の治療方法を提供する。驚くべきことに、出願人は、EphB2が大腸腺腫において、過剰発現することを発見した。したがって、EphB2は、患者は多数の結腸腺腫ポリープを発達させている大腸腺腫を特徴とする疾患、例えば家族性大腸ポリープ症(FAP)のイムノコンジュゲート治療のための魅力的な標的である。したがって、一態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を有する又は有すると思われる患者に有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を寛解、その発症率の減少、緩和、その発達の遅延、その進行の遅延、又はその予防をするための方法を提供する。他の態様では、本発明は、患者に有効量の抗EphB2薬剤(例えば抗体)が投与されることによる、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を有する又は有すると思われる患者に有効量の抗EphB2剤が投与されることによる、大腸腺腫(一又は複数)に特徴がある疾患を寛解、その発症率の減少、緩和、その発達の遅延、その進行の遅延、又はその予防をするための方法を提供する。
例示的な抗EphB2薬剤(例えば抗体及びイムノコンジュゲート)は本願明細書において、記述される。例示的な製剤及び投薬は本願明細書において、記述される。本発明の治療の経過は、当分野で公知及び本願明細書中に記載の従来の技術及びアッセイによって、容易にモニターされる。本発明の治療の有効性は、治療を評価する際に共通して用いられる様々なエンドポイント、限定するものではないが、腫瘍再発、腫瘍重量ないしサイズの収縮、進行時間、生存期間、進行がない生存、全体の応答速度、応答の継続期間及び生活の質などで測定できる。
他の態様では、本発明は、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料において、EphB2ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)を検出することを含む。本願明細書において、強調されるように、驚くべきことに、出願人はEphB2が大腸腺腫、例えば扁平状、管状、管絨毛状、及び絨毛状の腺腫において、過剰発現することを発見した。大腸腺腫におけるEphB2発現の検出は、例えば、抗EphB2薬剤(例えば抗EphB2抗体を含んでなるイムノコンジュゲート)による治療への適合性の決定、抗EphB2イムノコンジュゲート又は他の薬剤による治療又はインターベンション(例えば手術、放射線)のモニター、腺腫の再発の決定、腺腫の進行のモニターなどに有用である。いくつかの実施態様では、EphB2発現は、治療(例えば抗EphB2薬剤による治療)の前、治療の間、治療の後、治療の前と間、治療の前後、治療の間と後、治療の前、間及び後に検出される。
また、本発明の方法は、EphB2変異体ポリペプチド(一又は複数)及び/又はポリヌクレオチド(一又は複数)及び/又はEphB2断片を検出してもよい。EphB2変異体及び断片の検出は本願明細書において、記述される。
他の態様において、本発明は、大腸腺腫に特徴がある疾患の診断方法であって、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料において、EphB2ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを検出することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、コントロール試料(又はコントロール参照値)と相対的な患者生体試料中のEphB2発現の増加により、被検体の大腸腺腫性疾患が診断される。
また、前記又は上記で提案される適用法ために、キット、組成物及び製造品が本発明により提供される。いくつかの実施態様では、キットは、抗EphB2薬剤(例えば抗体)、抗EphB2イムノコンジュゲート、EphB2ポリヌクレオチド及び/又はEphB2ポリペプチドを収容する一又は複数の容器、そして、いくつかの実施態様では、本願明細書中に記載の何れかの方法(例として、癌を有する又は有すると思われる患者の評価(例えば予後の評価)の方法、患者の癌治療の選択方法、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの検出方法、患者からの大腸腺腫細胞又は組織におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチド発現の検出方法、及び/又は生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現の検出を含む方法)に従った使用のための指示書をさらに具備する。さらに、キットは、適切なコントロール(コントロール参照値)を具備しうる。
典型的に、本発明のキットは、上記の容器と、商業的及び使用者の観点からみて望ましい物質、例えばバッファ、希釈液、フィルター、針、注射器及び使用のための指示書を有するパッケージ挿入物を収容する一又は複数のその他の容器とを具備する。特定の治療又は非治療的用途に該組成物が使用されることを示すために容器上にラベルがあってもよく、またそのラベルは上記のようなインビボの使用又はインビトロの使用の何れかについての指導を示すものであってもよい。
他の実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はストリンジェントな条件下でEphB2のポリヌクレオチドの相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のEphB2の存在を評価できることを示し、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のEphB2のRNA又はDNAの存在を評価するためのEphB2のポリヌクレオチドの使用についての指示書を含むものである。
組成物(薬剤組成物など)は、抗EphB2薬剤(例えば抗体)、抗EphB2イムノコンジュゲート、EphB2ポリヌクレオチド及び/又はEphB2ポリペプチドを含有してなり、いくつかの実施態様では、本願明細書中に記載の何れかの方法(例として、癌を有する又は有すると思われる患者の評価(例えば予後の評価)の方法、患者の癌治療の選択方法、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者の治療方法、大腸腺腫性疾患を有する又は有すると思われる患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの検出方法、患者からの大腸腺腫細胞又は組織におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチド発現の検出方法、及び/又は生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現の検出を含む方法)に従った使用のための指示書をさらに具備する。
製造品はキット構成要素を具備する及び/又は、組成物は本願明細書において、記述される。
方法及び材料
遺伝子論理データベース
EphB2の発現は、正常な大腸(n=288)、腺腫(n=30)、原発性癌(n=122)、遠隔転移(n=55)、レーザー顕微解剖正常上皮(n=16)、及びレーザーは原発性癌からのレーザー顕微解剖上皮(n=9)を含む結腸直腸組織について、Affymetrix HG-U133プローブアレイデータ(プローブセット209588_at)のGene Logic (Gaithersburg, MD)データベースにおいて、調べた。簡潔に言うと、遺伝子発現情報を含む専売特許のデータベースであるGeneExpress(登録商標) (Gene Logic Inc., Gaithersburg, MD)データベースの分析を、GeneExpress(登録商標)データベースとの使用のためのGene Logic Inc., Gaithersburg, MDから市販のソフトウェア、又は、GeneExpress(登録商標)データベースとの使用のためのGenentech, Inc.で作製され開発された専売特許のソフトウェアを用いて行った。GeneLogicシステムの更なる説明については、Jubb 等, J Clin Pathol 2004 57:514-512を参照のこと。例えば、正常な必須組織及び/又は正常な増殖組織における組織特異性、腫瘍特異性及び発現レベルを含むいくつかの判定基準に基づいて、分析におけるポジティブヒットを評価した。
細胞株
Colo206及びCX-1はDSMZ (Braunschweig, Germany)から入手し、KM12はNational Cancer Institute (Bethesda, MD)から入手し、他の全てのCRC細胞株はATCC (Manassas, VA)から入手した。細胞は、2mM L-グルタミン及び10% ウシ胎児血清を添加した50/50のHamF12及びDulbeco変性イーグル培地にて培養した。過去に記載されるように、総RNAを回収して、Affymetrix HG-U133 GeneChipプローブアレイにハイブリダイズさせた。(Yang 等, Arterioscler Thromb Vasc Biol 2002、22:1797-803)。また、細胞ペレットをホルマリンに固定して、パラフィン包埋して、過去に記載のようにTMAに表した。(Kononen 等 Nat Med 1998、4:844-7)。
倫理的再調査委員会(University of Leeds, UK)は、すべての組織及び臨床情報の使用を承認した。Leeds General Infirmary (Leeds, UK)組織病理学公的記録(アーカイブ)を、84の管状腺腫、27の乳頭状腺腫、5の絨毛状腺腫及び32の扁平腺腫を含む148の匿名の結腸直腸腺腫を識別するためにスクリーニングした。ホルマリン固定パラフィン包埋組織は、前述したように、各々線腫をTMAにおいて、代表するために生検を行われた。(Kononen 等 Nat Med 1998、4:844-7)。
対応する原発性癌からのホルマリン固定パラフィン包埋組織及び複数の供与源からの転移を、Genentech公的記録から検索した。これらには、27人の患者で、28の原発性CRC及び30の転移(腸間膜6、リンパ節21及び肝臓3)が含まれていた。更なる9の対応しない肝臓転移も含まれた。全切片を切り出して、以降のアッセイに用いた。
また、この研究では、1990年1月から1995年12月のMarien-Hospital (Duesseldorf, Germany)の外科で切除術を行った330人の患者からのUniversity of Leeds組織公的記録の342のCRCを調べた。疾患の再発に関する情報を含めて、対応する正常粘膜及び生存データをすべての患者について利用した。追跡調査期間中央値時間は、4.2年(範囲:5か月〜11.4年)であった。手術後に、14人の患者は化学療法を受け、12人の患者は放射線療法を受け、7人の患者はその両方を受けた。110の腫瘍(32%)は左結腸曲の近位であり、診断の平均年齢は69歳(範囲:28〜88歳)であり、150人の患者(45%)は男性であった。追跡調査期間の終わりに、局部疾患の再発は25人の患者、遠隔転移は49人の患者にみられ、8人の患者はその両方を示した。(Grabsch 等 Am J Clin Pathol 2004、122:511-6)。過去に記載されるようにTMAを作製した。(Kononen 等 Nat Med 1998、4:844-7)。
33P標識リボプローブを用いて、EphB2 mRNA発現を評価した。cDNA鋳型を、全ヒト脳 marathon-ready cDNA (BD Clontech, Palo Alto, CA)から、ポリメラーゼ連鎖反応によって、増幅した。フォワード及びリバースのプライマは、それぞれ5'T7及びT3 RNAポリメラーゼ開始部位を含有した。リボプローブは転写産物変異体2のmRNA配列のヌクレオチド3043−3500(GenBank受託NM_004442)及び転写産物変異体1のmRNA配列のヌクレオチド2972−3404(GenBank受託NM_017449):フォワード5'-T7-GCCCTCCTGGTGCTCTATCC-3' (配列番号15)、リバース5'-T3-TCTGTCCATCTGTCCCGTCCT-3' (配列番号16))を補完するように設定した。センス及びアンチセンスプローブのインビトロ転写、ハイブリダイゼーション及び切片の反応は、Jubb 等 J Pathol 2003、200:577-88に記載のように行った。ハイブリダイズした組織切片は、明視野及び暗視野の顕微鏡検査によって、精査し、10%より多くの上皮におけるEphB2発現の最大強度について0−3のスケールにスコア付けした。
Jubb 等 J Pathol 2003、200:577-88の記載のようにIHCを行った。簡潔に言えば、製造者の指示に従って、切片を脱パラフィン化し(Target retrieval solution, DAKO cytomation, Carpinteria, USA)、内在性ビオチン(Avidin-Biotin blocking kit, Vector Labs, Burlingame, CA)と10%の正常ウマ血清による非特異的免疫グロブリンのブロッキングを行って、熱媒介性抗原検索を行った。1μg/mLのナイーブヤギ免疫グロブリン(R&D Systems)又は抗EphB2ポリクローナル抗体(カタログ番号AF467, R&D Systems, Minneapolis, MN)によって、免疫標識を行った。ビオチン化抗ヤギ二次抗体(Vector Labs)とアビジン-ビオチン-西洋わさびペルオキシダーゼ複合体(Vectastain Elite, Burlingame, CA)によって、免疫複合体を標識した。10%より多くの上皮におけるEphB2発現の最大強度について0−3のスケールに組織をスコア化した。細胞ペレットTMAを、染色強度の多様性について調節するために各染色実験に含めた。
同じ病理学者によりすべての症例をスコア付けして、臨床結果を盲検とした。表1に記載の判定基準にしたがってスコア付けした。すべてのTMAにおいて、最も高い発現のコアのスコア(n=1−3/試料)を用いて患者を表した。全体についてカプラン-メイヤー曲線及び対応する危険率から各サブグループ内の平均生存期間を推定し、JMPソフトウェアバージョン5.1(SAS Institute Inc., Cary, NC)を用いて比例的障害フィッテングモデルによって、再発のない生存を推定した。統計学的な作用を、χ-二乗試験、スチューデントt検定又はスピアマンの順位相関係数を適切に用いて評価した。P値が<0.05である場合に統計学的に有意であるとした。
EphB2発現を、正常な粘膜、腺腫、対応する原発性癌及び転移、及び詳細な臨床追跡調査を行った一連の原発性癌において、分析した。この研究の目的は、結腸直腸癌(「CRC」)のEphB2の予後の影響を調査すること、及び腺癌配列に対する腺腫全体のEphB2発現の相対的なレベルを調べることにある。上記の方法及び材料を用いて実験を行った。後述するように、これらの実験の結果を図7−11に示す。
オリゴヌクレオチドマイクロアレイデータ
Gene Logicデータベースの分析により、正常な大腸は、結腸直腸腺腫、原発性癌及び遠隔転移よりも平均のEphB2発現が有意に低い(P<0.0001)ことが示された(図7A)。この傾向は、レーザー顕微解剖した試料で見られた(P=0.01)(図7B)。原発性癌は、腺腫(P=0.06)又は転移(P=0.48)よりも平均の発現が有意に大きくなかった(図7A)。発現プロファイリングでは、EphB2はCRC細胞株にほとんど存在せず、正常な大腸と同じレベルであることが多いことが示唆された(図7C)。EphB2転写産物及びEphB2タンパク質のレベルは、CRC細胞株において、有意に相関した(P<0.0001)。
局在化
正常大腸及び腫瘍性大腸の両方において、EphB2 mRNA及びタンパク質の発現は上皮に局在化していた(図8、9)。EphB2タンパク質の発現は主に膜であり、細胞質での発現は弱かった。正常大腸のすべての試料において、mRNA(n=47)及びタンパク質(n=342)の発現は腺窩(スコア=2)の基部で最も強く、管腔上皮(スコア=0)につれて発現が低下していた。腫瘍性細胞群における発現の最大強度は、結腸腺窩の基部での発現と等しかった(図8、9)。すべてのサブタイプの結腸直腸腺腫は同種のEphB2発現の所見を示しており、ポリープ状の病変部と比較して扁平腺腫では相対的に高い発現レベルであった(表2)。腫瘍サイズ又は形成異常の重症度との相互関係の欠如は、発現が腫瘍形成の非常に早期から存在することを示唆する(データは示さない)。82%の原発性CRC及び64%の転移が全体の切片において、多少のレベルのEphB2発現を示す(図8)にもかかわらず、EphB2は悪性腫瘍全体にわたって均質又は均一に発現されなかった。これは、存在する場合には、腫瘍性細胞群全体にわたって均一にEphB2を発現した腺腫病変とは対照的である。すべての腺腫の23%がEphB2を発現しなかった。センスISHプローブのハイブリダイゼーション及びナイーブな免疫グロブリンの染色は、バックグラウンドを上回らなかった(データは示さない)。良性間質組織、正常リンパ節組織及び正常肝組織は、EphB2発現について均一にネガティブであった。
148の腺腫のうちの115(77%)はEphB2発現についてポジティブであった(スコア≧1)。これは、原発性CRCで観察される発現の強度とは統計学的に違いがない(P=0.37)(図10)。EphB2発現は、すべての正常腺窩、77%の腺腫、82%の原発性癌及び64%の転移を含む結腸直腸腫瘍形成のすべてのステージで示された。存在する場合、EphB2は腺腫全体にわたって均一に発現された。組織学的に異なるサブタイプのポリープ状腺腫は、EphB2発現(表2)の強度において、統計学的に有意な相違を示さなかったが、発現は扁平腺腫において、有意に大きかった(P=0.001)。部位、形成異常の重症度、ポリープ頻度、ポリープサイズ又は患者の性別とは有意な関係がなかった(データは示さない)。EphB2発現は、原発性CRCと転移において、同等であった(P=0.17)(図10)。均一な発現が腺腫において、観察されたにもかかわらず、染色のパターンはほとんどの悪性病変に局所しており、腫瘍性細胞群全体にわたって染色の強度がかなり異なっていた。腫瘍細胞の平均25%は、EphB2発現についてポジティブとスコア付けした原発性悪性腫瘍及び二次性悪性腫瘍において、EphB2タンパク質を発現した。すべてのサブタイプの結腸直腸腺腫は均一なEphB2発現の所見を示し、ポリープ状病変と比較して扁平腺腫では相対的にその発現レベルが大きかった(表2)。腫瘍サイズ又は形成異常の重症度との相互関係の欠如は、発現が腫瘍形成の非常に早期から存在することを示唆する。
330人の患者のうちの327人は、EphB2タンパク質発現に関する情報を示した:185人の患者は0、101人の患者は1、41人の患者は2にスコア付けした(この一連の研究ではスコア3の患者はいなかった。3人の患者のスコアは欠如していた)。47のCRC(8人の患者はスコア0、19人の患者はスコア1、18人の患者はスコア2、2人の患者はスコア3)を含む1つのTMAでISHを行った。対応する正常な結腸腺窩は、すべての症例の基部でポジティブであった。EphB2 IHCとISHスコアについて有益な46の癌において、EphB2 IHCとISHスコアに有意な関係が観察された(P<0.01)。
EphB2タンパク質発現の効果は、全体の生存率に対する危険度の割合に含まれる。高レベルのEphB2発現は、結腸直腸癌の平均生存期間の延長及び平均の再発のない生存の延長と関係していた。EphB2発現について腫瘍の染色が2+を示した(対0/1+)患者は全体の生存の有意な延長を示した:平均生存期間2514対1044日、危険率0.45、95%の信頼区間:0.18−0.95(図11A)。再発のない生存の分析においても同様な結果が見られた(平均生存795対2233日、HR 0.60、CI:0.30−1.10)(図11B)。スコア0又は1の患者の生存曲線は重なり合っていた。EphB2タンパク質発現が高い患者では平均年齢が有意に低い(65対69.3歳、P<0.02)(表3)が、この一連の研究では年齢は予後因子ではなかった(データは示さない)。他の統計学的に有意な関係は観察されず(表2)、2つのグループが受けたアジュバント治療の頻度に相違はなかった(データは示さない)。表2に示される臨床病理変数の生存の影響は既に検討されている。(Grabsch 等 Am J Clin Pathol 2004、122:511-6)。ステージ、グレード、リンパの浸潤及び血管浸潤を含め、多変量解析では、EphB2スコア2は、有意な、非依存性の予後因子であった(HR 0.47、CI 0.18−0.99)。
Claims (56)
- 癌を有する又は癌を有すると思われるヒト患者の評価方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料におけるEphB2の発現と比較する;そして(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測することを含み、該患者試料におけるEphB2発現がコントロール試料と比較して増加している場合に、該患者において癌の予後が予測される方法。
- 癌を有する又は癌を有すると思われるヒト患者の評価方法であって、(a) 患者の生体試料を得る;そして(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出することを含み、該患者の生体試料においてEphB2が発現する場合に、該患者において癌の予後が予測される方法。
- ヒト患者の癌治療の選択方法であって、(a) 該患者からの生体試料におけるEphB2の発現をコントロール試料におけるEphB2の発現と比較する;(b) (a)の比較に基づいて該患者の癌の予後を予測する、このとき該患者試料におけるEphB2発現がコントロール試料と比較して増加している場合に、該患者において癌が予知されるものであり;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて、該患者の癌治療を選択することを含む方法。
- ヒト患者の癌治療の選択方法であって、(a) 患者の生体試料を得る;(b) 該生体試料においてEphB2発現を検出する、このとき該患者の生体試料においてEphB2が発現する場合に癌が予知されるものであり;そして(c) (a)と(b)の工程の後に、(b)の工程において決定された該患者の予後に基づいて、該患者の癌治療を選択することを含む方法。
- EphB2ポリヌクレオチドの発現が検出される、請求項1ないし4の何れか一に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が検出される、請求項1ないし4の何れか一に記載の方法。
- EphB2 mRNAの発現が検出される、請求項5に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が抗EphB2薬剤を用いて検出される、請求項6に記載の方法。
- 前記抗EphB2試薬が抗体である、請求項8に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が免疫組織化学を用いて検出される、請求項6に記載の方法。
- 前記生体試料が、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)及び肝細胞癌からなる群から選択される癌のものである、請求項1ないし10の何れか一に記載の方法。
- 前記生体試料が結腸直腸癌のものである、請求項11に記載の方法。
- さらに、任意の一又は複数のEphB2リガンドの発現の検出を含む、請求項1ないし12の何れか一に記載の方法。
- 前記処置が、有効量の抗EphB2抗体を含んでなるイムノコンジュゲートが投与されることを含む、請求項3又は4に記載の方法。
- 前記イムノコンジュゲートがメイタンシノイドを含んでなる、請求項14に記載の方法。
- 前記イムノコンジュゲートがMMAEを含んでなる、請求項14に記載の方法。
- 前記処置が、任意の一又は複数の化学療法、放射線療法及び手術を含む、請求項3又は4に記載の方法。
- EphB2ポリヌクレオチドの発現が検出される、請求項14ないし17の何れか一に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が検出される、請求項14ないし17の何れか一に記載の方法。
- EphB2 mRNAの発現が検出される、請求項18に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が抗EphB2薬剤を用いて検出される、請求項19に記載の方法。
- 抗EphB2薬剤が抗体である、請求項21に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が免疫組織化学を用いて検出される、請求項19に記載の方法。
- 前記生体試料が、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)及び肝細胞癌からなる群から選択される癌のものである、請求項14ないし23の何れか一に記載の方法。
- 前記生体試料が結腸直腸癌である、請求項24に記載の方法。
- さらに、任意の一又は複数のEphB2リガンドの発現の検出を含む、請求項14ないし25の何れか一に記載の方法。
- 前記のイムノコンジュゲートに存在する抗EphB2抗体が、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及び抗体断片からなる群から選択される、請求項14ないし26の何れか一に記載の方法。
- 患者に有効量の抗EphB2イムノコンジュゲートが投与されることによる、大腸腺腫を有するヒト患者又は大腸腺腫を有すると思われるヒト患者の治療方法。
- 前記大腸腺腫性疾患が、家族性大腸ポリープ症、Peutz-Jegher's症候群、若年性ポリープ症候群、遺伝性混合性ポリープ症候群、カウデン病、及びBannayan-Ruvalcaba-Riley症候群からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
- 前記イムノコンジュゲートがメイタンシノイドを含んでなる、請求項28又は29に記載の方法。
- 前記イムノコンジュゲートがMMAEを含んでなる、請求項28又は29に記載の方法。
- 前記のイムノコンジュゲートに存在する抗EphB2抗体が、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及び抗体断片からなる群から選択される、請求項28ないし31の何れか一に記載の方法。
- 前記抗EphB2抗体がモノクローナル抗体である、請求項32に記載の方法。
- 前記抗EphB2抗体がヒト抗体である、請求項32に記載の方法。
- 前記抗EphB2抗体がヒト化抗体である、請求項32に記載の方法。
- 抗EphB2イムノコンジュゲートが投与される前、投与中又は投与後に、ヒト患者からの大腸腺腫細胞ないし組織においてEphB2の発現が検出される、請求項28ないし35の何れか一に記載の方法。
- EphB2の発現がポリヌクレオチドの発現である、請求項36に記載の方法。
- EphB2の発現がポリペプチドの発現である、請求項36に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が抗EphB2薬剤を用いて検出される、請求項38に記載の方法。
- 前記抗EphB2薬剤が抗体である、請求項39に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が免疫組織化学を用いて検出される、請求項38に記載の方法。
- 生体試料中のEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現を検出することを含む、大腸腺腫を有するヒト患者又は大腸腺腫を有すると思われるヒト患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの検出方法。
- 生体試料中のEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現をコントロール試料中のEphB2の発現と比較することを含む、大腸腺腫を有するヒト患者又は大腸腺腫を有すると思われるヒト患者からの生体試料におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの検出方法。
- ヒト患者からの大腸腺腫細胞ないし組織におけるEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現の検出方法であって、(a) 大腸腺腫細胞ないし組織を得る;そして(b) 大腸腺腫細胞ないし組織におけるEphB2の発現を検出することを含む方法。
- 前記生体試料が大腸腺腫細胞ないし組織を含む、請求項42又は43に記載の方法。
- コントロール試料と比較して生体試料中のEphB2の発現が増加している、請求項42ないし45の何れか一に記載の方法。
- EphB2ポリヌクレオチドが検出される、請求項42ないし46の何れか一に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドが検出される、請求項42ないし46の何れか一に記載の方法。
- EphB2 mRNAの発現が検出される、請求項47に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が抗EphB2薬剤を用いて検出される、請求項48に記載の方法。
- 前記抗EphB2薬剤が抗体である、請求項50に記載の方法。
- EphB2ポリペプチドの発現が免疫組織化学を用いて検出される、請求項48に記載の方法。
- 生体試料中のEphB2ポリヌクレオチドないしポリペプチドの発現を検出することを含む、大腸腺腫性疾患の診断方法。
- EphB2の発現により、癌と予測される又は癌と診断された患者の生存期間、再発のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者の進行のない生存期間、癌と予測される又は癌と診断された患者群の応答速度、癌と予測される又は癌と診断された患者又は患者群の応答期間、及び/又は癌と予測される又は癌と診断された患者の転移尤度の何れか一又は複数が予測される、請求項1ないし27の何れか一に記載の方法。
- 増加したEphB2の発現が検出される、請求項2に記載の方法。
- 減少したEphB2の発現が検出される、請求項2に記載の方法。
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