JP5000623B2 - 火花点火式内燃機関の制御方法 - Google Patents

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本発明は、燃焼室内にプラズマを生成させ、プラズマと点火プラグによる火花放電とにより混合気に着火する火花点火式内燃機関の制御方法に関するものである。
従来、車両、特には自動車に搭載される火花点火式内燃機関においては、点火プラグの中心電極と接地電極との間の火花放電により、点火時期毎に燃焼室内の混合気に着火している。このような点火プラグによる着火にあって、例えば燃料を直接気筒内に噴射する型式の内燃機関において、噴射した燃料を点火プラグの火花放電の位置に分布させないと、着火しないことが希に生じる。
このため、このような内燃機関では、点火プラグの火花放電を補うために、例えば特許文献1に記載のもののように、点火プラグの放電領域にプラズマ雰囲気を生成しておき、プラズマ雰囲気中にアーク放電を行うことにより、従来に比べて高い電圧を印加することなく燃焼室内の混合気に確実に着火し、安定した火炎を得ることができるように構成したものが知られている。
特開2007‐32349号公報
ところで、大気圧下でプラズマを生成する方法として、マグネトロンを用いるものが考えられている。マグネトロンを用いて燃焼室内にプラズマを生成する場合、上述の特許文献1の補助電極のような、点火プラグ又はその周辺にマグネトロンからのマイクロ波を放射する電極つまりアンテナを備える必要がある。
このような場合に、例えば内燃機関の負荷の大きさに応じてマグネトロンの出力を高くすると、アンテナと燃焼室内壁との間で放電が生じることがある。つまり、本来、アンテナは、燃焼室内にプラズマを生成するための高周波電界を形成するものである。そのようなアンテナにおいて、点火プラグに先立って放電が生じた場合、意図しないタイミングで混合気に着火する可能性が高くなる。したがって、本来の点火時期における着火及び燃焼とは異なるために、必要なトルクを得ることができなくなる可能性が生じた。
そこで本発明は、このような不具合を解消することを目的としている。
すなわち、本発明の火花点火式内燃機関の制御方法は、点火プラグを備えるとともに、点火プラグの火花放電方向に対して直交する方向に高周波電界を形成するためのアンテナを燃焼室内に備える火花点火式内燃機関において、点火プラグにより燃焼室内に火花放電を形成し、アンテナにより形成する高周波電界により火花放電を増幅して混合気に着火する火花点火式内燃機関の制御方法であって、アンテナによる高周波電界を、火花放電する際に点火プラグにより形成される電界より弱く、かつアンテナを介しての燃焼室内への放電不能な強度に設定することを特徴とする。
このような構成によれば、アンテナにより形成される高周波電界は、点火プラグにより形成される電界の強度より低く、かつ燃焼室内への放電が不能な強度であるので、アンテナを介して高周波電界を形成している間において、点火プラグの火花放電以外に放電は生じない。したがって、圧縮された混合気が、点火時期以外のタイミングで不用意に着火することが抑制される。
本発明は、以上説明したような構成であり、高周波電界を形成するためのアンテナにおける放電を抑制することにより、意図した点火時期で、かつ点火プラグの位置において、確実に混合気に着火し、燃焼させることができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に1気筒の構成を概略的に示したエンジン100は、自動車用の3気筒のものである。エンジン100の吸気系1には、図示しないアクセルペダルに応動して開閉するスロットルバルブ2が配設され、そのスロットルバルブ2の下流にはサージタンク3が設けられている。サージタンク3が連通するシリンダヘッド4側の端部近傍には、さらに燃料噴射弁5が設けてあり、この燃料噴射弁5を電子制御装置6により制御するようにしている。そして、燃焼室7の天井部分には、点火プラグ8及びプラズマを生成するためのアンテナ9が取り付けてある。この実施形態におけるアンテナ9は、モノポール型アンテナで、燃焼室7の天井の点火プラグ8の近傍位置に取り付けられている。点火プラグ8には、イグナイタを一体に備える点火コイル10が交換可能に取り付けられている。アンテナ9は、棒状のもので、絶縁体を介して燃焼室7の壁に取り付けられ、燃焼室7内に突出して設けられる。アンテナ9は、高圧交流発生装置11に図示しない導波管及び同軸ケーブルを介して接続されている。また、排気系12には、図示しないマフラに至るまでの管路に三元触媒(以下、触媒13と称する)が配設され、その上流にはO2センサ14が取り付けられている。
高圧交流発生装置11は、マグネトロン15とマグネトロン15を制御する制御回路16とを備えてなる。マグネトロン15が出力するマイクロ波は、導波管及び同軸ケーブルによりアンテナ9に印加される。又、制御回路16には、電子制御装置6から出力される高圧交流発生信号nが入力される構成で、制御回路16は、入力される高圧交流発生信号nに基づいてマグネトロン15が出力するマイクロ波の出力時期及び出力電力を制御するものである。
電子制御装置6は、中央演算処理装置18と、記憶装置19と、入力インターフェース20と、出力インターフェース21とを具備してなるマイクロコンピュータシステムを主体に構成されている。中央演算処理装置18は、記憶装置19に格納された後述のプログラムを実行して、エンジン100の運転制御を行うものである。
そしてエンジン100の運転制御を行うために必要な情報が入力インターフェース20を介して中央演算処理装置18に入力されるとともに、中央演算処理装置18は出力インターフェース21を介して制御のための信号を燃料噴射弁5などに出力する。具体的には、入力インターフェース20には、サージタンク3内の吸入空気の圧力を検出するための吸気圧センサ22から出力される吸気圧信号a、エンジン回転数を検出するための回転数センサ23から出力される回転数信号b、スロットルバルブ2の開閉状態を検出するためのアイドルスイッチ24から出力されるIDL信号c、エンジン100の冷却水温を検出するための水温センサ25から出力される水温信号d、エンジン100が吸入する新気の温度を検出するための吸気温センサ26から出力される吸気温信号e、燃焼室7から排気弁を介して排出された排気ガス中の酸素濃度を検出するためのO2センサ14から出力される電圧信号fなどが入力される。一方、出力インターフェース21からは、燃料噴射弁5に対して燃料噴射信号p、イグナイタ10に対して点火信号m及び高圧交流発生装置11に対して高圧交流発生信号nなどが出力されるようになっている。
電子制御装置6には、吸気圧センサ22から出力される吸気圧信号aと回転数センサ23から出力される回転数信号bとを主な情報とし、エンジン100の運転状態に応じて決まる各種の補正係数で基本噴射時間を補正して燃料噴射弁5の開成時間、すなわちインジェクタ最終通電時間を決定し、その決定された通電時間により燃料噴射弁5を制御して、エンジン負荷に応じた燃料を該燃料噴射弁5から吸気系1に噴射させるためのプログラムが内蔵してある。
このエンジン100にあっては、始動後の通常運転状態では高圧交流発生装置11が発生するマイクロ波を上述した出力時期に合わせてアンテナ9から燃焼室7内に放射し、それにより生成されるプラズマと点火プラグ8による火花放電とを反応させて、混合気に着火するように構成されている。プラズマを生成する場合、マイクロ波がアンテナ9に印加されることにより、燃焼室7内には、点火プラグ8による火花放電に対して直交する方向に高周波電界が形成される。
点火に際しては、点火プラグ8に点火コイル(図示しない)により火花放電を発生させて、火花放電とほぼ同時あるいはその直後にマイクロ波により高周波電界を発生させてプラズマを生成させることにより、燃焼室7内の混合気を急速に燃焼させる構成である。
具体的には、点火プラグ8による火花放電が高周波電界中でプラズマになり、火炎が大きくなる。
これは、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じたイオンやラジカルが、高周波電界の影響を受け振動、蛇行することで行路長が長くなり、周囲の水分子や窒素分子と衝突する回数が飛躍的に増加することによるものである。イオンやラジカルの衝突を受けた水分子や窒素分子は、OHラジカルやNラジカルになると共に、イオンやラジカルの衝突を受けた周囲の気体は電離した状態、言換するとプラズマ状態となることで、飛躍的に火炎が大きくなるものである。
この結果、高周波電界と反応することにより増大した火花放電により混合気に着火するため、着火領域が拡大し、点火プラグ8のみの二次元的な着火から三次元的な着火になる。したがって、初期燃焼が安定し、上述したラジカルの増加に伴って燃焼が燃焼室7内に急速に伝播し、高い燃焼速度で燃焼が拡大する。
このような構成において、エンジン100は、点火プラグ8により燃焼室7内に火花放電を形成し、アンテナ9により高周波電界を形成して混合気に着火するように運転を制御されるもので、エンジン100の運転状態を検出し、検出した運転状態に応じてアンテナに供給する高周波電力を調整する制御プログラムにより、制御される。この制御プログラムにあっては、火花放電する際に点火プラグ8により形成される電界より弱く、かつアンテナ9を介しての燃焼室7内への放電不能な強度に高周波電界の強度を設定している。この高周波電界の強度は、マグネトロン15の出力を制御することにより、常にこの設定した高周波電界強度を下回るように制御するものである。
以下、この内燃機関100の制御の概略手順を、図2に示すフローチャートにより説明する。
ステップS1では、エンジン100の運転状態を検出する。エンジン100の運転状態は、例えばエンジン回転数と吸気管圧力とに基づいて検出するものである。この場合、運転状態は、低回転、中回転及び高回転に対して、低負荷、中負荷及び高負荷をそれぞれ組み合わせて検出するものである。
ステップS2では、検出した運転状態に基づいてマグネトロン15の出力を決定する。マグネトロン15の出力は、エンジン100の運転状態が低回転、低負荷である場合に小さく、高回転、高負荷である場合に大きくなるように設定してある。この場合に、マグネトロン15の出力に対しては、その上限値が設定してある。すなわち、マグネトロン15の出力は、高回転、高負荷の運転状態においても、燃焼室7内に形成する高周波電界の強度が、点火プラグ8が火花放電する際に形成される電界の強度より弱くなるように、又、高周波電界の供給電極としてのアンテナ9と供給電極に対する接地電極である燃焼室7内壁との間での放電を不能にする強度の高周波電界を形成するのに十分な出力に、上限値により制限されるものである。
ステップS3では、決定した出力となるようにマグネトロン15を制御する。
このように、マグネトロン15の出力は、エンジン100の運転状態に応じて制御するものであるが、その上限の出力を上限値により規制しているので、アンテナ9と燃焼室7内壁との間で放電が生じることはない。したがって、それぞれの気筒において、設定された点火時期毎に、点火プラグ8の位置において混合気に着火することができる。したがって、高周波電界による火花放電の増幅、つまりプラズマと火花放電との反応により大きくした火花放電により、良好な燃焼状態でエンジン100を運転することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
高圧交流発生装置としては、上述のようなマグネトロンに代えて、進行波管などであってよく、さらには半導体によるマイクロ波発振回路を備えるものであってもよい。
加えて、上述の実施形態においては、モノポール型のアンテナを説明したが、ビーム型のアンテナであってもよい。
さらには、点火プラグ8の中心電極をアンテナとして機能させて、高周波給電部とするものであってもよい。この場合、高周波を一定の電圧で中心電極に継続して印加すると、中心電極の温度が過剰に上昇するため、中心電極の耐熱温度に基づいて設定する上限温度を下回るように、高周波の電圧を制御するものである。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明の活用例として、ガソリンや液化天然ガスを燃料として点火プラグによる火花放電を着火に必要とする火花点火式内燃機関に活用することができる。
本発明の実施形態の概略構成を示す構成説明図。 同実施形態の制御手順を示すフローチャート。
符号の説明
6…電子制御装置
7…燃焼室
8…点火プラグ
15…マグネトロン
18…中央演算処理装置
19…記憶装置
20…入力インターフェース
21…出力インターフェース
9…アンテナ

Claims (1)

  1. 点火プラグを備えるとともに、点火プラグの火花放電方向に対して直交する方向に高周波電界を形成するためのアンテナを燃焼室内に備える火花点火式内燃機関において、点火プラグにより燃焼室内に火花放電を形成し、アンテナにより形成する高周波電界により火花放電を増幅して混合気に着火する火花点火式内燃機関の制御方法であって、
    アンテナによる高周波電界を、火花放電する際に点火プラグにより形成される電界より弱く、かつアンテナを介しての燃焼室内への放電不能な強度に設定する火花点火式内燃機関の制御方法。
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