JP4998656B2 - 燃料電池セルの密封構造 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池において、積層された燃料電池セル間のガス流路を密封するための密封構造に関する。
燃料電池は、高分子電解質膜の両面に一対の触媒電極層を設けた膜電極複合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)の厚さ方向両側を、セパレータで挟持した燃料電池セルを多数、多い場合は数百枚積層したスタック構造をとっている。そして、酸化ガス(酸素)が各セパレータの一方の面に形成された酸化ガス流路から一方の触媒電極層に供給され、燃料ガス(水素)が各セパレータの他方の面に形成された燃料ガス流路から他方の触媒電極層に供給され、水の電気分解の逆反応である電気化学反応、すなわち水素と酸素から水を生成する反応によって、電力を発生するものである。
スタック内の各セルのガス流路を密封するためのガスケットは、弾性体からなるものであって、セパレータの表面に一体に設けて膜電極複合体の表面に密接させるものや、逆に、膜電極複合体の表面に一体に設けてセパレータの表面に密接させるものがある。後者の場合、膜電極複合体の両側にシールリップを形成してセパレータとの面圧を確保するのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
特再2002−089240
この種の燃料電池において、スタックの小型・軽量化を図るには、各セルの部材を薄肉にすることが不可欠である。しかし、膜電極複合体の表面に、弾性体によるシールリップを形成したものにおいて、シール機能の長期耐久性を確保する観点から、シールリップの高さをそれほど小さくすることができないので、スタックの小型化が困難であった。
また、シールリップにより密封機能を奏するガスケットは、各セルを積層することによるスタックの組立時や、密封対象流体(水素ガスや酸化ガス等)の加圧時に、シールリップの倒れも懸念される。
更に、スタックの小型・軽量化には、セパレータを薄肉にすることが有効であるが、カーボン等で成形されたセパレータを薄肉にすると、その機械的強度が低下するため、シールリップの圧縮反力によって、セパレータが変形又は破損しやすくなることが懸念される。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、燃料電池セルの薄肉化によるスタックの小型・軽量化が可能な燃料電池セルの密封構造を提供することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る燃料電池セルの密封構造は、膜電極複合体とその厚さ方向両側のセパレータとの間に形成された流路を密封する構造であって、各セパレータの間に前記流路の形成領域を取り囲むように配置された弾性体が前記膜電極複合体に装着され、前記各セパレータが金属板からなるものであって、このセパレータに、前記流路の形成領域を取り囲むように延びて前記弾性体に圧接される突条が前記金属板のプレス成形により屈曲形成され、この突条が、前記弾性体の両側で互いに異なる位置に形成されたものである。このため、弾性体にはシールリップを形成する必要がなく、前記弾性体への突条の圧接による面圧極大部において、優れた密封性を奏し、各突条間で弾性体や膜電極複合体が挟圧されることによる圧縮応力を緩和することができる
請求項2の発明に係る燃料電池セルの密封構造は、請求項1に記載の構成において、弾性体が、膜電極複合体の外周面に接合されたものである。この場合、弾性体の厚さを、膜電極複合体の厚さと同等あるいはそれ以下にすることによって、燃料電池セルの薄肉化を図ることができる。
請求項1の発明に係る燃料電池セルの密封構造によれば、弾性体にシールリップを形成する必要がなくなるので、燃料電池セルの薄肉化によるスタックの小型・軽量化が実現される。また、シールリップの倒れといった問題が生じ得ないので、信頼性の高い密封構造を得ることができ、セパレータが金属板からなるものであるため、これによる燃料電池セルの薄肉化を図り、スタックの小型・軽量化を実現することができる。しかも各セパレータに形成された突条が、弾性体の両側で互いに異なる位置に圧接されるので、圧縮応力の集中を防止することができ、その結果、更なる燃料電池セルの薄肉化を図り、スタックの小型・軽量化を実現することができる。
請求項2の発明に係る燃料電池セルの密封構造によれば、請求項1による効果に加え、弾性体が、膜電極複合体の外周面に接合されることによって、膜電極複合体とセパレータ間の弾性体の介在による厚さの増大をなくすことができるので、燃料電池セルの一層の薄肉化を図り、スタックの小型・軽量化を実現することができる。
以下、本発明に係る燃料電池セルの密封構造の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明の第一の形態を示す燃料電池セルの部分断面図で、この燃料電池セルにおいて、参照符号1は膜電極複合体、参照符号2は膜電極複合体1の厚さ方向両側に配置されたセパレータ、参照符号3は膜電極複合体1による発電領域を取り囲むように配置された弾性体である。
膜電極複合体1は、高分子電解質膜11をその厚さ方向両側から一対の触媒電極12,12で挟み、更にその厚さ方向外側に、一対のガス拡散層13,13を配置したものである。ガス拡散層13は、水素又は酸素を触媒電極12に導くための通気性と、水素と酸素の電気化学反応により発生した電力をセパレータ2に導くための導電性とを有しており、例えばカーボン繊維等の多孔質体からなる。
セパレータ2は導電性を有する金属の薄板からなるものであって、各セパレータ2には、プレス成形によって、多数の溝21が形成されており、この溝21によって、ガス拡散層13との間に、燃料ガス(水素ガス)又は酸化ガス(酸素)を通すための流路4が形成されている。
弾性体3は、各セパレータ2と膜電極複合体1との間に介在して、流路4から燃料ガス又は酸化ガスが漏出するのを防止するものであって、膜電極複合体1の外周部に沿って断面コ字形をなすように、ゴム状弾性材料によって、この膜電極複合体1に一体的に成形されている。すなわち、この弾性体3は、膜電極複合体1の外周部におけるセパレータ2との対向面に接合された互いに平行な一対の弾性層31,31と、その外縁部間を連続して延びると共に膜電極複合体1の外周面を包囲する端壁部32からなる。
弾性体3のゴム状弾性材料は、VMQ(シリコーンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはEPDM(エチレンプロピレンゴム)等から選択され、これを液状ゴムとして、多孔質のガス拡散層13,13に含浸させた状態で成形される。図中の参照符号33は、ガス拡散層13におけるゴム含浸層を示しており、このゴム含浸層33は弾性体3と連続するものである。
各セパレータ2には、流路4の形成領域(以下、流路形成領域という)Aの外周側に、弾性体3を膜電極複合体1の両側から包囲するようにフランジ部22が形成されており、このフランジ部22には山形(V字形)の突条22aが形成されている。すなわちこの突条22a,22aは、セパレータ2のプレス成形によって屈曲形成されたもので、流路形成領域Aを取り囲むように延びており、弾性体3の両側で互いに異なる位置に形成され、膜電極複合体1の外周部におけるセパレータ2との対向面に接合された弾性層31,31に食い込むように圧接されている。すなわち、図1における上側のセパレータ2の突条22aは、下側のセパレータ2の突条22aに対して、相対的に外周寄りに位置して形成されており、したがって、弾性体3の弾性層31,31に対する突条22a,22aの圧接位置が、互いにずれている。
以上の構成を備える燃料電池セルにおいて、膜電極複合体1の両側に形成された流路4,4のうち、一方には燃料ガス(水素)が供給され、他方には酸化ガス(酸素)が供給される。膜電極複合体1の触媒電極12,12のうち、ガス拡散層13を介して燃料ガスが供給される側(アノード)においては、水素分子を水素イオンと電子に分解する反応が行われ、ガス拡散層13を介して酸化ガスが供給される側(カソード)においては、酸素と水素イオンと電子により水を生成する反応が行われ、これによって起電力を発生する。
各セパレータ2に形成された山形の突条22aは、流路形成領域Aを取り囲むように膜電極複合体1に一体成形された弾性体3の弾性層31,31に、燃料電池セルの積層状態において食い込むように圧接されるので、突条22aの頂部で弾性層31との面圧が極大となるので、流路4内を流通する燃料ガス又は酸化ガスに対する優れた密封性を奏すると共に、膜電極複合体1の外周部を弾性的に挟持する機能を有する。また、弾性体3は、その端壁部32が膜電極複合体1の外周面を包囲するように延びると共に、ガス拡散層13の外周部にゴム含浸層33を形成しているので、燃料ガス又は酸化ガスが、多孔質構造のガス拡散層13を厚さ方向と直交する方向へ透過して外周側へ漏洩することもない。
そして、この形態によれば、上述のように、弾性体3(弾性層31)に各セパレータ2の突条22aを圧接させることによって、シールに有効な面圧極大部を形成しているので、弾性体3にシールリップを形成する必要がなく、このため燃料電池セルの肉厚を減少させることができ、ひいては、燃料電池セルの積層体であるスタックの小型・軽量化が可能となる。しかも、シールリップによる密封構造の場合は、各セルの積層時、あるいは密封対象の水素ガスや酸化ガス等の加圧時に、シールリップが倒れてしまうおそれがあるのに対し、上述の形態においては、そのようなことはない。
また、セパレータ2が、金属板のプレス成形体からなるものであるため、従来のようにカーボン等で成形されたセパレータを用いたものに比較して、十分に薄肉にすることができる。このため、膜電極複合体1、セパレータ2,2及び弾性体3からなる燃料電池セルの肉厚を減少させることができ、ひいては、燃料電池セルの積層体であるスタックの小型・軽量化が可能となる。
次に図2は、本発明の第二の形態を示す燃料電池セルの部分断面図である。この燃料電池セルにおいて、上述した図1の形態と異なるところは、突条22aの断面形状にある。その他の部分は図1の形態と同様に構成されているので、図1と同一又は対応する部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。すなわち、図2における上側のセパレータ2の突条22aは、下側のセパレータ2の突条22aに対して、相対的に外周寄りに位置して形成されており、したがって、弾性体3の弾性層31,31に対する突条22a,22aの圧接位置が、互いにずれている。
図1又は図2の形態によれば、突条22a,22aが弾性体3の弾性層31,31に互いに異なる位置で圧接するので、弾性層31,31及びガス拡散層13,13に圧縮応力が集中しにくく、したがって、燃料電池セルの一層の薄肉化が可能となる。また、突条22aによる弾性層31との圧接部の面圧分布は、図1の形態に比較して緩やかに変化する。
次に図3は、本発明の第三の形態を示す燃料電池セルの部分断面図である。この燃料電池セルは、弾性体3が、膜電極複合体1と略同等の肉厚を有する矩形断面状に成形されていて、高分子電解質膜11をその厚さ方向両側から触媒電極12,12で挟み、更にその厚さ方向外側にガス拡散層13,13を配置した積層構造の膜電極複合体1の外周面に、一体的に成形されており、多孔質のガス拡散層13,13の外周部における弾性体3との接合部には、弾性体3から連続したゴム含浸層33が形成され、セパレータ2,2の断面山形の突条22a,22aが、弾性体3の両側で互いに異なる位置に形成されたものである。すなわち、図3における上側のセパレータ2の突条22aは、下側のセパレータ2の突条22aに対して、相対的に外周寄りに位置して形成されており、したがって、弾性体3に対する突条22a,22aの圧接位置が、互いにずれている。
次に図4は、本発明の第四の形態を示す燃料電池セルの部分断面図である。この燃料電池セルは、突条22aの断面形状のみが、上述した図3の形態と異なる。すなわち、突条22aが断面円弧状をなすように形成されていて、突条22aによる弾性体3との圧接部の面圧分布は、図3の形態に比較して緩やかに変化するようになっており、図4における上側のセパレータ2の突条22aは、下側のセパレータ2の突条22aに対して、相対的に外周寄りに位置して形成されており、したがって、弾性体3に対する突条22a,22aの圧接位置が、互いにずれている。
図3又は図4の形態によれば、突条22a,22aが弾性体3の両面に互いに異なる位置で圧接するので、弾性体3が突条22a,22a間で圧縮応力の発生が生じにくく、したがって弾性体3の一層の薄肉化、ひいては燃料電池セルの一層の薄肉化が可能となる。
本発明に係る燃料電池セルの密封構造の第一の形態を示す燃料電池セルの部分断面図である。 本発明に係る燃料電池セルの密封構造の第二の形態を示す燃料電池セルの部分断面図である。 本発明に係る燃料電池セルの密封構造の第三の形態を示す燃料電池セルの部分断面図である。 本発明に係る燃料電池セルの密封構造の第四の形態を示す燃料電池セルの部分断面図である。
符号の説明
1 膜電極複合体
11 高分子電解質膜
12 触媒電極
13 ガス拡散層
2 セパレータ
21 溝
22 フランジ部
22a 突条
3 弾性体
31 弾性層
32 端壁部
33 ゴム含浸層
4 流路
A 流路形成領域

Claims (2)

  1. 膜電極複合体(1)とその厚さ方向両側のセパレータ(2)との間に形成された流路(4)を密封する構造であって、各セパレータ(2)の間に前記流路(4)の形成領域(A)を取り囲むように配置された弾性体(3)が前記膜電極複合体(1)に装着され、前記各セパレータ(2)が金属板からなるものであって、このセパレータ(2)に、前記流路(4)の形成領域(A)を取り囲むように延びて前記弾性体(3)に圧接される突条(22a)が前記金属板のプレス成形により屈曲形成され、この突条(22a)が、前記弾性体(3)の両側で互いに異なる位置に形成されたことを特徴とする燃料電池セルの密封構造。
  2. 弾性体(3)が、膜電極複合体(1)の外周面に接合されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セルの密封構造。
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