JP4997613B2 - ヒト神経幹細胞に選択的なモノクローナル抗体及びこれを用いたスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
神経幹細胞が多く含有される組織である神経系細胞については、神経幹細胞、神経前駆細胞といった未分化な細胞だけでなく、分化した神経系細胞が多く含まれている。また神経系以外の細胞で、神経幹細胞が含まれることが報告されており、かつ比較的入手しやすい細胞ソースとしては、臍帯血細胞や骨髄細胞が考えられる。しかし、これらのソースの大部分は神経系以外の種々の細胞である。従って、このような不均一な細胞集団を細胞ソースとして利用し、そこから神経幹細胞を分離するためには、その分離方法、NSPCのスクリーニング方法を確立する必要がある。
これらの抗体は、免疫原として、胎児のヒト脳組織のホモジェネートを用いて免疫したマウスの抗体産生細胞とミエローマ細胞とから作製されたハイブリドーマの産生抗体である。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生細胞状態でヒトNSPCを、同定、分離できる選択性の高い抗体、及びこれを用いた、不均一な細胞集団から、ヒトNSPCを検出、分離することができる方法、当該方法で使用するスクリーニング用試薬を提供することにある。
さらに、上記のような細胞集団について、神経幹細胞、神経前駆細胞の含有率などを評価することができる。
はじめに本発明の抗体及びこれを産生するハイブリドーマの製造方法について説明する。
本発明の抗体は、通常のモノクローナル抗体作成技術、すなわち、免疫感作した哺乳動物から取り出した抗体産生細胞とミエローマとを融合させ、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを調製することにより作製することができるが、免疫原として、培養されたヒト神経幹細胞及び神経前駆細胞を用いたことに特徴がある。
細胞融合後、HAT選択培地で培養することにより、抗体産生細胞と融合したハイブリドーマだけを増殖させることができる。
得られたハイブリドーマを、液体培地中又は哺乳動物細胞の腹腔内で増殖させることにより、目的の抗体を取得することができる。
本発明のモノクローナル抗体は、上記作製方法にて作製されるモノクローナル抗体であって、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の表面抗原と反応するが、分化した神経系細胞の表面抗原とは実質的に反応せず、且つ胎児期初期の大脳の脳室壁層及び脳室壁下層の細胞と反応するものである。具体的には、HFB184抗体と命名された受託番号FERM P−20607のハイブリドーマから産生される抗体、HFB25抗体と命名された、受託番号FERM P−20606のハイブリドーマから産生される抗体が挙げられる。
本発明の方法は、HFB25又はHFB184抗体をはじめとする本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的方法を利用して、不均一な細胞集団から、ヒトNSPCあるいはNestin高発現細胞を同定、検出、分離、分取する方法である。
フローサイトメトリーによる解析とは、蛍光色素でモノクローナル抗体を直接法、間接法、又はABC法で標識し、細胞集団と反応させた後、フローサイトメータで測定して、個々の細胞の表面上の抗原に結合した抗体から得られる蛍光を光学的にとらえ、さらに電気信号に変換し、標識を検出し、記録する測定方法である。標識に用いた蛍光色素の特有の波長の蛍光強度の中で、一次抗体を用いずに計測したバックグラウンドの強度より高い強度の蛍光域に含まれるものを陽性と判断する。
(1)免疫原について
国立病院機構大阪医療センター倫理委員会及び産業技術総合研究所倫理委員会承認の下、妊娠9週齢のヒト胎児前脳部由来のNSPCを、下記神経幹細胞増殖培地を用いて、Kanemuraらの方法(Kanemura et.al.Journal of Neurosicence Research 69,869−879,2002)により継代培養して得られたヒトニューロスフェアを急速凍結しホモジナイズした。得られたホモジェネートを免疫原として用いた。
DMEM /F12(1:1混合物、シグマ社)
ヒト組換え(以下「hr−」と略記する)EGF(インビトロジェン社)20ng/ml
hr−FGF2(Pepro Tech社)20ng/ml
hr−LIF(ケミコン・インターナショナル社)10ng/ml
ヘパリン(シグマ社)5mg/ml
B27(インビトロジェン社)
HEPES15mM
Antibiotic−antimycotic(インビトロゲン社)
モノクローナル抗体の作製は、Orlik,O & Altaner,C (J. Immunol. Methods.115:55−59,1998)による変法に従い、鼡径部リンパ節細胞を用いて行った。
(2)により免疫感作したマウス(5匹)の両鼡径部リンパ節を摘出し、RPMI1640培地(GIBCO ライフテクノロジー社)にいれて2枚のスリガラスに挟んですり合わせるようにしてリンパ球を取り出した(約1×108個)。一方、株化ミエローマ(FO−1細胞)を15%ウシ胎児血清(FCS)、8アザグアニン(20μg/ml)を含むRPMI1640培地で、37℃で培養し、さらに細胞融合前の2〜3日は、8アザグアニンを除去した同上組成培地で培養し、細胞を準備した(約4×107個)。
取り出したマウスリンパ球と株化ミエローマ細胞を増殖培地(RPMI1640培地+15%FCS)の50ml中で混和し、1000rpm(回転数/分)で5分間室温で遠心分離し、上清を捨て20mlの増殖培地に細胞を懸濁した。この細胞懸濁液20mlに、50%ポリエチレングリコール水溶液100μlを加えて37℃のCO2インキュベーターに90分間入れて保温した。その後、1000rpm(回転数/分)で5分間室温で遠心分離し、上清を捨て、さらに数秒程度の回転数にて遠心分離し上清を出来るだけ吸い取った。37℃の恒温水槽の水面に細胞試料の入った容器を軽く打ち付けるようにして温めながら上記遠心分離沈殿をほぐした。37℃であらかじめ温めた50%ポリエチレングリコール水溶液1mlを1分間かけてゆっくり添加して振盪し、さらに1mlを1分間かけてゆっくり添加して振盪した。さらに8mlを2−3分かけて添加して混ぜてから1000rpm(回転数/分)で5分間遠心分離した。
上記(3)で得られたハイブリドーマ由来の抗体について、下記酵素抗体法により、ヒト胎児脳組織標本と免疫反応するハイブリドーマを含むウェルを選別した。
このようにして得られたハイブリドーマは、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託され、受託番号FERM P−20606及びFERM P−20607ある。
ニードル小 (23G TERUMO) を用いて、シリンジ小(1ml TERUMO)でプリステン(テトラメチルペンタデカン;東京化成)を0.5ml/マウスの分量でマウス(4週齢の 雌BALB/cマウス、SCL)の腹腔内に打ち、前処理を実施した。前処理二週間後、ニードル小を用い、シリンジ大(5ml TERUMO)でPBS[PBS(−)pH 7.4 フィルター滅菌済み]に懸濁したハイブリドーマ細胞(0.5〜1×107個/ml/マウス)を腹腔内に投与した。数日後、マウスの腹部が膨れてきたことを確認後、ニードル中(16G TERUMO)を用いシリンジ大で腹水の採取を実施した。得られた腹水は、チューブ小に2mlずつ分注し、マイナス80℃で保存した。
えられたモノクローナル抗体を、それぞれHFB25抗体、HFB184抗体と命名した。これらは、いずれもIgM型抗体である。
(1)胎児脳についての免疫組織染色
ヒト8週齢胎児の大脳のパラフィン永久組織標本から5μmの切片を作成し、シランコーテイングスライドに貼付して、37℃インキュベーターで一晩乾燥させた。染色前に、ヒストクリアおよびエタノールにて脱パラフィンを行った。0.2%Tween−20を含むPBSで切片を洗浄し、2%過酸化水素加メタノールに30分室温にて浸し、内因性ペルオキシダーゼを不活化した。10%ヤギ血清/0.01%Triton−Xにて1時間、非特異吸着をブロックした後、(5)で得られたマウス腹水(HFB25およびHFB184抗体)を500倍希釈して、4℃で一晩反応させた。翌日、ビオチン化二次抗体(抗マウスIgM抗体)を滴下し、1時間室温にて反応させた。その後、ABCキット(ニチレイマルチステイン)を使用し、DABにて発色させた。必要に応じて核染色を実施し、脱水、透徹後、オイキットにて封入した。
継代培養されたヒトニューロスフェアを、4%パラホルムアルデヒドで4℃で20分間固定した。その後、30%ショ糖/PBSに4℃で30分間つけ、OCT−コンパウンドに凍結包埋した。その後、クリオスタットを用いて12μmの切片を作製し、免疫組織学的解析を実施した。凍結切片を100倍希釈したHFB25抗体、HFB184抗体をそれぞれ1次抗体として、一晩4℃反応させた。翌日、二次抗体として、Alexa Flour488で標識したヤギ産生抗マウスIgM−ポリクローナル抗体(1:500、Molecular Probes社)を反応させ、核染色用のTO−PRO−3iodide(1μM:Molecular Probes社)と反応させた。染色結果を、共焦点レーザースキャン顕微鏡(LSM510,Carl Zeiss社)で観察した。
図3及び図4のいずれも抗体の染色結果と核染色結果は、ほぼ一致していた。従って、ヒトニューロスフェアを構成するほとんどの細胞、すなわちヒトNSPCが、両抗体の陽性細胞であることがわかる。
ヒトNSPCをトリプシンを用いて分散し、セルストレーナーを使用して単一細胞の細胞懸濁液を作成した。これらの細胞懸濁液に対して、100倍希釈したHFB25抗体、HFB184抗体(マウス腹水)を各々、氷上で30分間反応させた後、培養液を用いて洗浄した。その後、Alexa488標識抗マウス−IgM抗体(1:500、ヤギ産生ポリクローナル抗体,Molecular Probes社)を30分間、氷上で反応させた後、培養液で洗浄し、更にPI(プロピジウムイオダイド)染色を行った。解析はベクトンディッキンソン社(San Jose,カリフォルニア州)のFACS Calibur Flow Cytometer(商品名:カタログ番号343202)の4カラー式を用いて行い、各モノクローナル抗体で各々の標識される細胞(陽性細胞)と非標識細胞(陰性細胞)の割合を算出した。
以上から、本発明HFB25抗体、HFB184抗体、いずれも未分化の神経系細胞に発現する表面抗原を選択的に認識する抗体で、分化した神経系細胞、非神経系細胞の表面抗原とは反応しない抗体であることがわかる。
(1)神経幹細胞の分化誘導
分化誘導方法A:
ニューロスフェア法で用いる培地から増殖因子を除去し10%FBSを添加した培地にて分化誘導を行ない、分化誘導後、1−2週間ごとに0.05%トリプシン溶液を用いて単細胞に分散させて継代するという操作を複数回繰り返した。この方法により、グリア細胞ほぼ100%の細胞集団が得られる。
分化誘導方法B:
ニューロスフェア法で用いる培地から増殖因子を除去し、1%FBSを添加した培地にて2週間培養し、分化誘導を行った。この方法では、神経細胞とグリア細胞の混合培養(以下「N/G細胞」という)集団(チューブリンβIII陽性の神経細胞が約20%、GAFP陽性のグリア細胞が約80%)が得られる。
2ロット(ロットNo.1、2)のヒトNSPC細胞集団を、それぞれAの方法で分化誘導させた。分化誘導2週間後、7週間後の細胞集団について、前述と同じ方法を用いてFACSでHFB25抗体陽性細胞の比率を検討した。
分化誘導させなかったヒトNSPC、並びに分化誘導2週間後、及び7週間後の結果を、それぞれ図6(a)、(b)、(c)に示す。図6中、横軸は蛍光強度であり、縦軸は、細胞数カウントである。強度10以上がHFB25抗体陽性細胞に該当する。各細胞集団におけるHFB25抗体陽性細胞の割合をまとめると、表2のようになる。
分化誘導法Bを用いて作成した細胞で、分化誘導2週間後、7週間後の各細胞集団について、神経系マーカーである抗チューブリンβIII抗体とHFB25抗体の二重染色を行なった。細胞は4%パラホルムアルデヒドで固定し、10%ヤギ正常血清で室温で1時間反応させてブロッキングした後、1次抗体として100倍希釈したHFB25抗体(マウス腹水)と抗tubulinβIII(TuJ1)抗体(1:500;mouse IgG monoclonal, BabCO社)を含む10%正常ヤギ血清/0.01%Triton−X/PBSを4℃にて一晩反応させた。反応後、2次抗体(Alexa Fluor 488で標識されたヤギ産生抗ウサギIgM抗体及びAlexa Fluor 568で標識されたヤギ産生抗ウサギIgG抗体,いずれもMolecular Probes社)と核染色用のTO−PRO−3 iodide(1μM,Molecular Probes社)を室温にて1時間反応させた。染色後の観察は共焦点レーザー顕微鏡(LSM510;Carl Zeiss社)を用いて実施した。
A方法による分化誘導2週間後、7週間後の各細胞集団について、グリア系細胞のマーカーである抗GAFP抗体とHFB25抗体の二重染色を行なった。方法は、前述と同様に、細胞を固定し、ブロッキングした後、1次抗体として500倍希釈したHFB25抗体(マウス腹水)とウサギ産生抗GFAPポリクローナル抗体(シグマ社)(1:80)を含む10%正常ヤギ血清/0.01%Triton−X/PBSを4℃にて一晩反応させた。反応後、2次抗体(Alexa Fluor 488で標識したヤギ産生抗マウスIgM抗体及びAlexa Fluor 568で標識したヤギ産生抗マウスIgG抗体,いずれもMolecular Probes社)とTO−PRO−3 iodide(1μM,Molecular Probes社)を室温にて1時間反応させた。染色後の観察は共焦点レーザー顕微鏡(LSM510; Carl Zeiss社)を用いて実施した。
(1)クロロホルム処理による脱脂の影響
脂質性抗原の特性を有するかどうかの検討のため、クロロホルム処理による脱脂の影響を検討した。
未処理のHFB25抗体との反応結果の顕微鏡写真を図11に、クロロホルム処理したHFB25抗体との反応結果の顕微鏡写真を図12に示す。
図11と図12との比較からわかるように、HFB25抗体をクロロホルム処理しても、ほとんど細胞染色性に影響なく、抗原結合部位に影響がなかった。一方。A2B5抗体は、脱脂された抗体結合部位が破壊されたために、細胞染色部分がほとんど消失していた。
糖鎖抗原性の検討を行うため、各種糖鎖切断酵素による処理の影響を検討した。
継代培養されたヒトニューロスフェアを0.05%トリプシン溶液処理液処理して単細胞に分散させてなる細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液に対して4%パラホルムアルデヒド処理4℃、20分間の固定後、切片を作製し、免疫組織学的解析を実施した。切片はN−グリコシダーゼ、O−グリコシダーゼ、コンドロイチナーゼABC、ケラタナーゼ、ヘパリチナーゼ、又はヘパリナーゼを、表3に示すような濃度となるように添加し、表3に示す時間だけ反応させた。これらの酵素は、表3に示す部分を切断する。酵素処理後、10%ヤギ正常血清で室温で1時間反応させてブロッキングした。1次抗体として100倍希釈したHFB25抗体(マウス腹水)を含む10%正常ヤギ血清/0.01%Triton−X/PBSを4℃にて一晩反応させた。翌日、二次抗体として、Alexa Flour488で標識したヤギ産生抗マウスIgM−ポリクローナル抗体(1:500、Molecular Probes社)と、核染色用のTO−PRO−3(1μM:Molecular Probes社)を室温1時間反応させた。染色結果は、共焦点レーザースキャン顕微鏡(LSM510,Carl Zeiss社)で観察した。
いずれも未処理(図11参照)の場合と同程度に染色されていて、これらの酵素処理では、HFB25抗体の抗原結合部位は、影響を受けないことがわかった。
(1)ヒト臍帯血から有核球細胞集団の分離
遠心チューブにヒト臍帯血と等量のLymphoprep(AXIS−SHIELD)を入れ、その上にヒト臍帯血を重層し、20℃で800g、20分間遠心し、有核球の層を採取した。分離細胞はヒトNSPCの保存と同様の方法で凍結保存(バンバンカー)し、以下の解析に使用した。
(1)で調製したヒト臍帯由来細胞3ロットを、それぞれ1×107細胞/100μlに希釈した細胞懸濁液(UCB1〜UCB3)を調製した。
この細胞懸濁液に、HFB25抗体を産生したマウス腹水2μlを添加混合して、氷上で30分間反応させた。次いで、二次抗体としてAlexa488で標識したヤギ産生抗マウスIgM−ポリクローナル抗体(1:500、Molecular Probes社)と反応させ、さらにPI染色を行い、ベクトンディッキンソン社(San Jose,カリフォルニア州)のFACS Calibur Flow Cytometer(商品名:カタログ番号343202)の4カラー式をフローサイトメーターを用いて測定した。
図19から、ロット間でばらつきがあるものの、いずれもHFB25抗体陽性細胞が、2〜6.7%程度含まれていることがわかった。
さらにセルソーター(FACS Vantage−SE、ベクトン−ディクソン社製)を用いて、ヒト臍帯血由来HFB25陽性細胞(標識された細胞)とHFB25陰性細胞(標識されなかった細胞)とを分取した。
(2)で分取したヒト臍帯血由来HFB25陽性細胞及び陰性細胞のそれぞれを、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、cytospin3(Thermo Shandon社)を用いてスライドガラスに貼付けた。10%ヤギの正常血清で室温で1時間反応させてブロッキングした後、一次抗体としてウサギ産生抗ヒトNestinポリクローナル抗体(1:500)を4℃で一晩反応させ、続いて二次抗体としてAlexa Flour568(赤色)で標識したヤギ産生抗ウサギIgG(H+L)conjugate highly cross−adsorbed(終濃度4μg/ml、Molecular Probes社)と室温で1時間反応させ、免疫細胞染色標本を作製した。上記二次抗体は、ヤギ産生でマウスのH鎖及びL鎖を認識し、ヒト、ウシ、ヤギ、ウサギ、ラットの抗体は認識しないものである。
(1)ヒト成人末梢血から有核球細胞集団の分離
遠心チューブにヒト成人末梢血と等量のLymphoprep(AXIS−SHIELD)を入れ、その上にヒト成人末梢血を重層し、20℃で800g、20分遠心し、有核球の層を採取した。分離細胞はヒトNSPCの保存と同様の方法で凍結保存(バンバンカー)し、以下の解析に使用した。
臍帯血の場合と同様にして、ベクトンディッキンソン社(San Jose,カリフォルニア州)のFACS Calibur Flow Cytometer(商品名:カタログ番号343202)の4カラー式をフローサイトメータを用いて、HFB25抗体陽性細胞の割合を測定した。
結果を図21に示す。図21中、横軸は蛍光強度であり、縦軸は細胞数カウントである。強度10以上がHFB25抗体陽性細胞である。
図21から、ヒト成人末梢血にはHFB25抗体陽性が、25%程度含まれていることがわかった。
さらにセルソーター(FACS Vantage−SE、ベクトン−ディクソン社製)を用いて、ヒト成人末梢血由来HFB25陽性細胞(標識された細胞)とHFB25陰性細胞(標識されなかった細胞)とを分取した。
臍帯血の場合と同様にして、Nestin発現量を調べた結果、図22及び表5のようになった。
(1)抗体チップを用いた神経幹細胞の発現タンパク質のスクリーニング
抗体チップ解析は、512種類の既知抗体が固定されたBD ClontechTM Ab Microarray 500(BD Biosciences Clontech製)を用いて実施した。スライドガラスのスキャンはグラススライドスキャナー(Applied Precision製)を用いて実施した。
ヒトNSPC、および上記Aの分化誘導方法で得られたグリア細胞集団からそれぞれタンパク質を、BD ClontechTM Ab Microarray500添付の試薬により抽出し、各サンプルをCy3あるいはCy5蛍光色素(Amersham Bioscience製)で標識した後、抗体チップ解析を行ない、各細胞集団におけるJAM−1発現量を調べた。
グリア細胞集団におけるJAM−1発現量に対するヒトNSPC細胞集団のJAM−1発現量(ヒトNSPC/グリア細胞)は、0.673772であった。
JAM−1の発現様式をさらに検討するため、合計13種類のヒト株化細胞でのJAM−1の発現様式を同様にウエスタンブロットで検討した。
神経系細胞として、U−251MG,U−87MG,U−373MG,T98G,YKG−1(human glioblastoma由来)、D283 Med,Daoy(human medulloblastoma由来);分化能を有する神経系前駆細胞としてNTERA2(teratoma由来のhuman embryonal carcinoma);非神経系細胞としてJurkat(human acute T cell leukemia由来),293T(human fetal transformed kidney epithelial cell),HepG2,HUH−6,HUH−7(human hepatocelluler carcinoma)の合計13種類のヒト株化細胞をそれぞれ標準的な方法で培養し、細胞を調製した。コントロールとして、前述Bの分化誘導方法で得られたN/G細胞集団(N/G)、及び前述Aの分化誘導方法で分化させたグリア細胞集団(AS)を用いた。
JAM−1の発現は、神経系細胞に関しては、U−373MGでは殆ど見られず、D283Med,T98Gでは発現がグリア細胞(AS)でより低かった。残りの神経系細胞におけるJAM−1の発現は、グリア細胞(AS)より高かった。非神経系細胞に関するJAM−1の発現は、Jurkatについてはグリア細胞(AS)よりやや低かったが、残りの非神経系細胞(293T、HepG2、HUH−6、HUH−7)ではグリア細胞(AS)より高かった。
ヒトNSPCの分化誘導におけるJAM−1陽性細胞の存在率を評価するため、ヒトNSPCとそこから分化誘導したグリア細胞を用いて、ベクトンディッキンソン社(San Jose,カリフォルニア州)のFACS Calibur Flow Cytometer(商品名:カタログ番号343202)の4カラー式で測定して、JAM−1陽性細胞の存在率を評価した。
同一ロットのヒトNSPC細胞集団を3つのグループに分け、そのうちの2グループを、それぞれAの方法で分化誘導させた。分化誘導4週間後、7週間後の細胞集団について、0.05%トリプシン溶液処理により細胞懸濁液を調製した。
分化誘導させなかったヒトNSPC、並びに分化誘導4週間後、及び7週間後の結果を、それぞれ図24(a)、(b)、(c)に示す。図24中、横軸は蛍光強度であり、縦軸は、細胞数カウントである。横軸10以上が抗JAM−1抗体陽性細胞に該当する。各細胞集団における抗JAM−1抗体陽性細胞の割合をまとめると、表6のようになる。
これらの結果から、抗JAM−1抗体は、神経幹細胞から完全分化の過程で一時的に現れる表面抗原に選択的に結合する。従って、神経前駆細胞及び神経幹細胞の混合集団では、抗JAM−1抗体陰性であれば、神経幹細胞であると判定することができる。
Claims (11)
- 受託番号FERM P−20607のハイブリドーマ。
- 受託番号FERM P−20607のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体。
- 不均一な細胞集団から、ヒト神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の特性を有する細胞及びその細胞の局在性を同定する方法であって、
請求項2に記載のモノクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行ない、染色された部分を神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞であると同定する工程を含む神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の同定方法。 - ヒト神経幹細胞を含有する細胞集団を、請求項2に記載のモノクローナル抗体と反応させ、該モノクローナル抗体との反応が陽性である細胞を検出する工程を含む、ネスチン高発現細胞のスクリーニング方法。
- 更に、請求項4で検出されたモノクローナル抗体陽性細胞について、抗JAM−1抗体の反応が陰性である細胞を検出する工程を含むスクリーニング方法。
- 前記ネスチン高発現細胞は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞である請求項4又は5に記載のスクリーニング方法。
- 前記細胞集団は、ヒト臍帯血由来細胞を含む集団である請求項4〜6のいずれかに記載のスクリーニング方法。
- 前記細胞集団は、ヒト末梢血由来細胞を含む集団である請求項4〜6のいずれかに記載のスクリーニング方法。
- 前記細胞集団は、ヒトニューロスフェアを単細胞に分散させてなる細胞集団である請求項4〜6のいずれかに記載のスクリーニング方法。
- ヒト神経幹細胞及び神経前駆細胞を含有する細胞集団において、請求項4又は5で検出された細胞について、
該細胞集団における、請求項2に記載のモノクローナル抗体陽性細胞の割合を算出する工程を含む、細胞集団の評価方法。 - ヒト神経幹細胞及び神経前駆細胞含有細胞集団から神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の富化集団をスクリーニングするための試薬であって、
請求項2に記載のモノクローナル抗体と、溶媒とを含有することを特徴とする神経幹細胞及び神経前駆細胞スクリーニング用試薬。
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