JP4997225B2 - 前立腺の機械的イメージングをリアルタイムで行うための二重アレイ式トランスデューサ・プローブ - Google Patents

前立腺の機械的イメージングをリアルタイムで行うための二重アレイ式トランスデューサ・プローブ Download PDF

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Description

本発明は、概して、医療用機器に関する。本発明は、より具体的には、前立腺癌に代表される、前立腺等の男性患者の触診可能な器官の疾病を検査、分析、及び診断するための機械的イメージングシステム、及び機械的イメージング方法に関する。本発明は、より広範には、触診可能な他の組織の機械的イメージングにも適用可能であり、それらの組織は、人体に生来備えられた種々の開口部、すなわち、口、耳、直腸、及び他の体腔を通じて接触可能な組織を含むが、必ずしもこれらに限定されない。また、本発明は、組織の剛比、及び弾性の測定に適用可能である。ここでの「患者」という用語は、機械的イメージングの対象となりうる人間及び動物の生体及び死体の両方を含むものとする。
発明の背景
特に高齢の男性の間での良性前立腺過形成(BPH)、及び前立腺癌の高い発生率が、早期発見のための効果的手法の必要性を裏付けている。前立腺癌は、毎年約30,000人もの男性の死因となっており、肺癌に次いで男性の死亡率が2番目に高い癌である。しかし、前立腺癌が早期に発見され、効果的な治療が行われた場合には、患者の生存率は大幅に向上する。前立腺癌の早期診断のための現行手法として、直腸内触診(DRE)、前立腺特異抗原(PSA)の血中濃度測定、及び経直腸超音波(TRUS)検査等がある。
以下に、従来技術に記載されており、前立腺の検査及びイメージングに適用可能な種々の手法についての有用な概略を示す。超音波を用いて前立腺のイメージングを行う種々の装置及び技術について記載する相当量の従来技術が蓄積されている。ゲン(Gheng)による米国特許第6,561,980号明細書は、超音波による前立腺の横断イメージが得られた後に超音波イメージを加工して前立腺、直腸、及び尿道の自動分割を実行するための手法について記載している。バッテン(Batten)による米国特許第6,824,516号明細書は、超音波イメージングに基づき、前立腺疾患の検査、解析、及び治療を行うための高度なシステムについて記載しており、同特許は参照されることにより本書に完全に組み込まれる。ラダック(Ladak)による米国特許第6,778,690号明細書は、2D及び3Dの超音波イメージを加工して前立腺の境界線を決定する手法について記載しているが、これは有用なイメージ加工方法を提供するため、参照されることにより本書に完全に組み込まれる。
残念ながら、前立腺癌のスクリーニング及び病期診断の手段としてのTRUSに関する今日までの経験は、期待外れな結果に終わっている。TRUSは、DRE及びPSAによるスクリーニングと殆ど変わらないので、それによる前立腺癌検出率の僅かな向上は高いコストに見合わない。TRUSは、スクリーニング検査としては特異度が低く、無病誤診率が高い。触診可能な腫瘍の多くはTRUSによっては可視化されない一方で、病理組織標本の評価においても、かなりの割合の腫瘍が同等の反響性を示すため周囲の組織から区別することが困難である。
単一検査として前立腺癌に対し最も感受性が良いのは血清PSAレベルの測定である。しかし、その陽性的中率は高くない。DREのみの場合は、さらに有用性が低い。しかし、これら2種類の様式を組み合わせることで、癌検出率をほぼ2倍にすることができる。PSA、DRE、及びTRUSを用いた前立腺癌の系統的スクリーニングに関する大規模な研究により、PSAとDREの組み合わせが、前立腺癌の診断に対して最大の感受性及び特異度をもたらすという結論が得られた。したがって、目下、これら2つの前立腺癌スクリーニング方法の組み合わせが、AUA及び米国癌協会により推奨されており、50歳から75歳までの患者に対してFDAにより承認されてきた。
現時点では、直腸内触診が、前立腺癌のスクリーニングに最も広範に用いられる方法である。触診可能な前立腺結節のうちの約30〜50%が、病理学検査の結果、悪性であることが判明する。スクリーニング検査により、DREにより異常が見つかり前立腺の全摘出手術を受けた男性の70%に組織限局癌(organ−confined cancer)があることが実証された。DREの異常と前立腺癌による死亡率の間の強い関連性が立証され、DREによるスクリーニングが前立腺癌による死亡者数を50〜70%もの割合で未然に防止しうる点が示唆された。また、DREは、特にPSAとの組み合わせにより、最も費用効率が高い前立腺スクリーニング方法であることが証明された。
DREの主な欠点は、主観によるところが大きい点である。ユーザは、指先で得た感触を、以前に行ったDREでの経験に直感的に結び付けなければならない。前立腺の大規模なマススクリーニングを行える熟練したユーザの数は十分ではないかもしれな。DREの他の制約は、DREを実施する医師が自ら検査した前立腺の状態を客観的にレポートすることができない点である。したがって、同じ前立腺に対する継続的な検査結果を客観的に比較することは困難である。そのため、前立腺検査を客観的に行うことができ、且つ、手術者の技量に依らず一貫性のある検査結果を得ることができる装置が必要とされている。
手を使った触診と同様の原理に基づく新たな前立腺イメージング方法がサルベイジャン(Sarvazyan)らによって開発されており、これは、共に係属中の米国特許出願公開第11/123,999号明細書、及び米国特許出願第11/146,367号明細書、並びに米国特許第6,569,108号明細書、米国特許6,142,959号明細書、米国特許5,922,018号明細書、米国特許5,836,894号明細書、米国特許5,785,663号明細書、及び米国特許5,524,636号明細書に記載されている。これらは全て参照されることにより本書に完全に組み込まれている。一般的に機械的イメージング(Mechanical Imaging)と呼ばれるこの方法は、「触覚をキャプチャし」、それを後の時間的相関分析及び傾向分析のために保存することを可能にする。機械的イメージングの最も重要な特徴は、圧迫された組織の表面の応力パターンを測定し、さらに、センサアレイを検査対象の組織上で運動させたときの応力パターンの変化を解析することである。応力パターンの時間的変化及び空間的変化は、検査対象の組織の機械的構造に関する情報を提供し、同組織の内部構造及び機械的不均質性(heterogeneities)の3次元的な再構成を実現する。機械的イメージングは、DREの欠点の多くとは無関係である。機械的イメージングは、従来の手動の触診技術により検出可能な病変の大きさ及び深さの限界を大きく上回ることが示されている(ウェイス(Weiss R.)、ハータント(Hartanto V.)、ペロッティ(Perrotti M.)、カミングス(Cummings K.)、ビカノフ(Bykanov A.)、エゴロフ(Egorov V.)、ソボルフスキ(Sobolevsky S.)、「前立腺の機械的イメージングシステムの試験的プロトタイプのインビトロ検査」、「泌尿器学」、第58巻、第6号、2001年、1059〜1063ページ)。
先ごろ、米国泌尿器科学会は、医師が前立腺癌の診断を確定する上での手助けとなる勧告を行った。同勧告は、DREにて異常が見つかった全ての患者、及び前立腺特異抗原レベルが高い全ての患者に対して生体組織検査(biopsy)を行うことを検討すべきであるとしている。DREの有効性及び信頼性はユーザの技能に大きく依存するが、これは、指先の感覚からは定量的な評価結果や客観的に立証可能な評価結果を得ることができないためである。そのため、コンピュータ制御された触診−イメージング装置を用いて、信頼性が高く、正確であり、感受性が良く、定量的な前立腺の評価を、一般開業医と泌尿器科医が同じように実施できるようにする新技術及び装置が強く求められている。さらに、前立腺の寸法、形状、及び弾力性等の正確な測定もまた、前立腺癌及びBPHの診断及びモニタリングにおいて重要である。機械的イメージング技術、及び低コストの前立腺イメージング装置によれば、プライマリケア環境において最小限の訓練しか受けていない者であっても著しく能力が向上し、患者に与える肉体的精神的苦痛を最小限に抑えつつ男性の体内で前立腺の病変の評価、スクリーニング、及びモニタリングを確実かつ有効に行うことができる。
従来の機械的イメージング装置は、データ収集が可能である一方、検査中に検査対象である前立腺について経直腸プローブから得られる情報は正確性に欠けるため、2次元及び3次元の前立腺イメージを再現する能力は高くない。その理由の一つは、前立腺が検査中に元の場所からシフトする可能性があるからである。したがって、従来の方法は、移動する前立腺に対するプローブの位置及び方向を、検査の進行に伴い適切に補正する手段を備えていないという点で、根本的な問題を内包するといえる。検査中のプローブヘッドに対する前立腺の位置の評価結果が不正確であり、プローブ装置自体の形状が適当でないと、取得されるイメージの質が低下し、様々なアーチファクトを生じさせる虞がある。
従来技術によるプローブの別の問題点は、多くの場合、プローブの形状が直腸の形状に合わせた円筒の繰り返しからなる点である。そのため、前立腺近くの領域を圧迫したときに、括約筋等の周辺組織や周辺器官に荷重を加えることなく同領域のみを均一に圧迫することは困難である。よって、括約筋等の周辺組織を圧迫することなく前立腺近傍の所望の領域のみを均一に圧迫できるような新規な方法及びプローブが必要とされている。周辺組織や周辺器官を圧迫してしまうと、誤って所望の領域から離れた場所でデータ収集を行ってしまい、プローブの傾斜、及び直腸の括約筋又は他の組織の伸縮を原因とするエラーを引き起こしてしまう。
また、検査中の前立腺プローブの位置データのゆがみ(distortion)を取り除き、前立腺の内部運動による影響を受けることのない前立腺検査手段及び方法が必要とされている。最後に、前立腺の機械的イメージングを行う医療従事者のトレーニングを可能にする装置及び方法が必要とされている。
発明の概要
然るに、本発明の目的は、前立腺等の触診可能な器官の客観性及び一貫性のある機械的イメージングのための新規な方法及び装置を提供し、手術者の技量が検査結果に及ぼす影響を排除することによって、従来技術の上記又は他の問題点を克服することである。
本発明の他の目的は、前立腺のみを適切に圧迫することができ、周辺組織及び周辺器官の圧迫による生じるゆがみを最小化することができるように成形された前立腺検査用の機械的イメージング装置を提供することである。
本発明の他の目的は、プローブのヘッド側のアレイ及びプローブのシャフト側のアレイからなる二重アレイ式の圧力ドランデューサ・プローブを備えた前立腺検査用の機械的イメージング装置を提供することである。
本発明による方法は、人体に将来備わった開口部から挿入されるプローブを用いて、触診可能な器官の機械的イメージングをリアルタイムで行うための方法に基づく。本発明の最も有用な実施形体において、同方法は、直腸を介した前立腺検査の方法を提供する。本発明による方法の一態様において、複数の圧力応答データ及びプローブ配向データに基づく2次元又は3次元の前立腺機械的イメージの生成は、以下の一般的なステップを含む。
先ず、プローブシャフトに配置された第2の圧力センサアレイによって括約筋を認識することにより、前立腺をプローブヘッド側の圧力センサアレイの下方に配置させ、次に、プローブを膀胱に到達するまで前進させてから、前立腺が存在すると予想される領域を特定するためにプローブを幾分引き戻すステップ。
プローブヘッド側の圧力センサアレイを、前回と重複する前立腺の様々な位置に繰り返し押し当てることで前立腺のスキャンを行うステップ。
前立腺に対してプローブを圧迫する各々の位置における圧力データを取得するステップ。
前立腺に対してプローブが押し当てられる各々の位置から新たに取得された機械的な前立腺情報を、規格化された前立腺の機械的イメージである部分的な2次元イメージに取り込むステップ。
各々の部分的な機械的イメージを、前回の部分的な機械的イメージと比較して、両者の重複部分を検出するステップ。
各々の部分的な機械的イメージと前回の部分的な機械的イメージの間の重複部分を用いて両者を統合することにより、複数の部分的イメージ全体から前立腺の合成済み機械的イメージを作成するステップ。これは第2の基準物体としての括約筋の利用を伴う。
さらに、付加的なステップとして、イメージ認識技術を用いて2次元及び3次元の合成済み機械的前立腺イメージを作成するステップに加えて、前立腺内部の関心領域を露呈させるために、2次元の規格化された機械的前立腺イメージをリアルタイムで視覚化するステップを含むことができる。
ここで重要なのは、プローブヘッド側の圧力センサアレイ(主要な又は第1の圧力データ源として利用される)とプローブシャフト側の圧力センサアレイ(第2の圧力データ源として利用される)の両方からのデータを用いてデータ加工が行われることが好ましい点である。これにより、取得された個々の機械的イメージにおいて共通に認識される特徴を維持しつつ、プローブを前立腺に対して相対的に運動させることが可能となる。換言すれば、装置の加工手段は、完全な2D又は3Dイメージを作成できるように、プローブがある位置から別の位置に移動する都度、認識可能な所定の特徴、及び括約筋までの距離を、前の機械的イメージが得られてから次の機械的イメージが得られるまで追跡調査することができる。このように、連続的な圧力パターンを前立腺の所定箇所に関連付ける上では、前立腺及びプローブの絶対位置を把握する必要は必ずしもない。好ましい実施形態において、本発明による二重アレイ式プローブ及びシステムは、括約筋近傍の圧力応答データを収集するための圧力センサアレイを備えたS字状のプローブシャフト、前立腺容量の近傍のデータを収集するためのプローブヘッド側の圧力センサアレイ、プローブの配向データを収集するためのプローブ配向追跡センサ、圧力応答データ及び配向データを処理して機械的イメージの生成及び前立腺の外観の予測を行うための処理装置、及び少なくとも前立腺の2次元イメージを表示するための表示装置を含む。
ここで重要なのは、ヘッド側の圧力センサアレイの形状及び寸法が、前立腺付近の関心領域のみを均一に圧迫し、直腸内の他の領域を圧迫しないように選択される点である。さらに、S字状の設計、及びプローブのヘッドとシャフトの間のオフセットが、同態様での本発明の実施を容易にする。このような有利な形状は、取得される圧力データの正確性を向上させ、不注意によるプローブの傾斜が原因で生じるアーチファクトを軽減して括約筋の損傷を防止する。
検査結果の正確性をさらに向上させるため、プローブヘッドの配向及び検査対象の前立腺に対する相対位置が、3D磁気センサ及び2D加速度センサから読み込んだ配向データによって計算され、ヘッド側の圧力センサアレイ及びシャフト側の圧力センサアレイから読み込まれた圧力応答データと結合される。
従来技術による装置とは対照的に、本願発明は、3つの独立した情報源からの位置情報を組み合わせて利用することができるという利点を有する。
つまり、検査対象の前立腺に対するプローブヘッドの相対位置をリアルタイムで計算し視覚化することで、前立腺自体を基準物体として利用することができる。
また、一体となって動作する複数の圧力センサアレイによって、前立腺の位置を、括約筋等の位置がより安定している周辺組織に対して相対的に特定することができる。
そして、プローブ配向データからプローブヘッドの位置を計算することができる。
本発明の装置は、これら全ての情報源を組み合わせることで、配向データ及び圧力応答データの両方を含む計算結果を提供する。本発明の装置及び方法は、患者に優しいシステムを作るための設計理念に基づき案出されており、その使用は、検査を実行する医師にとり容易であり理解しやすい。その結果、本発明は、前立腺癌の早期発見、前立腺の幾何学的・機械的特徴の定量的分類、連続的検査における変化の自動識別、特定の治療方法による影響の追跡調査及び傾向分析、及びシステムの性能証明となるシステム出力値と病理学的所見の整合を達成することができる。
図面の簡単な説明
本発明の対象物及び種々の利点は、添付図面を参照する以下の詳細な説明を参照することで、より完全に理解されることができる。
図1は、本発明によるシステムの機能的構造を示す概略図である。
図2は、2次元のヘッド側圧力センサアレイ、シャフト側の圧力センサアレイ、及び配向センサを有するプローブの側面図である。
図3A及び3Bは、本発明によるプローブヘッド及びプローブシャフトをそれぞれ示す断面図である。
図4は、本発明の好ましい実施形態において利用される配向追跡システムを示す図である。
図5は、本発明による装置の電子ユニットを示す概略図である。
図6は、診断情報を取得するための方法について説明するためのフローチャートである。
図7は、検査対象の前立腺に対して配置された経直腸プローブの斜視図であり、3つの直交軸を備えた基準座標系及びプローブの配向角を示している。
図8は、2次元及び3次元の機械的イメージの合成、及び前立腺の外観の予測の方法について説明するためのフローチャートである。
図9は、リアルタイムの2次元前立腺イメージ、及び前立腺検査中にユーザを誘導するための括約筋領域の機械的イメージのプローブに対する相対位置を示す図である。
図10は、合成された3次元の前立腺の機械的イメージを示す図である。
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明
以下、添付図面を参照して本発明について詳細な説明を示す。なお、図中において、同種の構成要素は同様の参照文字及び参照番号で示される。
図1は、前立腺のスキャン結果に対応する複数のデータフレームから、前立腺の3次元体積の機械的イメージを生成する装置の好ましい実施形態を示す概略図である。同装置は、主要な構成要素として、以下の構成要素を含む。
前立腺4の圧力応答データを受信するためのヘッド側の2次元圧力センサアレイ1、括約筋領域5の補足的な圧力応答データを受信するためのシャフト側の圧力センサアレイ2が組み込まれた二重アレイ式の経直腸プローブ3、電子ユニット6、及び一例として小型のパーソナルコンピュータに組み込まれた処理・表示手段7。
前立腺検査は、以下の一般的なステップを用いて実行される。患者は、腰よりも下の着衣を全て脱ぐよう指示される。検査は、患者の腰部が90度の角度をなすような前かがみの立ち姿勢で行われることが好ましい。このような新規な立ち姿勢により、検査用プローブ近傍の筋肉を弛緩させることができ、他の検査における立ち姿勢よりも好適な結果を得ることができる。この立ち姿勢において、患者の胸部は、テーブル又は他の水平面に乗せられ、同テーブルには患者の体重が加えられるので患者の脚部の筋肉が緊張することはない。患者は、膝を胸に向けて曲げた状態で横向き寝て検査を受けることもできる。上記プローブは、潤滑性を有する使い捨てカバーの内部に封入されていることが好ましい。直腸内への挿入時に患者が感じる苦痛を最小化できるように、肛門括約筋に加わる圧力がモニタされる。同じ目的で、補助的な圧力アレイから得られた圧力応答データが用いられてもよい。センサ表面を下にしたプローブがゆっくりと挿入されるにつれて、臀部に穏やかな圧力が加わる。2、3秒かけて外括約筋及び内括約筋を弛緩させることで、患者の苦痛を回避することができる。スキャニングは、矢状面において、先ず、補助的な基準器官として用いられる括約筋を随意にイメージングすることで始まる。そして、プローブが、膀胱が視覚化されるまで挿入される。次に、プローブを後方にスライドさせると括約筋から約4〜5cmのところで前立腺を検出することができ、その後に、プローブがスクリーン中央に前立腺表面を表示できるように配置される。プローブが適切に配置されると、前立腺の正中溝(median sulcus)及び側葉(lateral lobe)に対する一連の複合的な圧迫を通じて、前立腺の評価が実行される。前立腺の各々の圧迫位置は、同様の圧迫を前回行った位置と一致するものとされる。特定の事例においては、前立腺を可視化するために、プローブの仰角の変更が必要である。
図2は、プローブのヘッド21に取り付けられたヘッド側圧力センサアレイ1、及びプローブのハンドル24に取り付けられたシャフト22に取り付けられたシャフト側圧力センサアレイ2を備えた経直腸プローブ3の好ましい実施形態を示す側面図である。弾力性のある任意の使い捨てカバー(不図示)として、プローブヘッド21、プローブシャフト22、及びプローブハンドル24の一部の表面を完全に包み込むものが想定される。プローブハンドル24は、3軸の磁気センサ25及び2軸の加速度センサ26からな配向追跡手段をさらに備えている。また、プローブは、検査「開始−終了」ボタン23を含む。ここで注目すべきは、プローブヘッド21のプローブシャフト22に対するオフセットである。プローブは、前立腺の圧迫により括約筋に横力が加わることのないように、患者の骨格によく適合するように設計される。シャフト側とヘッド側のセンサアレイは、それぞれ前立腺と括約筋の視覚化に適している。プローブヘッドの先端部は、ヘッド側のセンサアレイを包含する直線部分を含む。この直線部分の長さは、約25mm(1インチ)〜50mm(2インチ)の間から選択されることが好ましい。この長さは、膀胱又は他の周辺組織に干渉することなく前立腺領域を適切にカバーすることを可能にする。
図3Aは、本実施形態による圧力センサ31が表面に取り付けられた楕円形のプローブヘッド21の好適な断面図である。本発明のプローブは、2次元の圧力センサアレイを備えている。ヘッド側の圧力センサアレイの寸法、グリッド、及びセンサ個数は変更可能である。ヘッド側の圧力センサアレイは、幅が約12〜20mmで長さが30〜50mmの圧力感知領域を備えていることが好ましい。プローブヘッドの曲率半径もまた変更可能であるが、前立腺を圧迫する際の応力パターンを均一にするためには、約10〜20mmとされることが好ましい。個々の圧力センサは、圧電性の圧力トランスデューサ、抵抗性の圧力トランスデューサ、MEMSを用いた圧力トランスデューサ、量子トンネリング複合物からなる圧力トランスデューサであり、マイクロマシン技術により成形された部品又はナノテクノロジーを利用するものである場合がある。個々の圧力センサは、弾力性のある化合物によって覆われた容量性の圧力トランスデューサを含むことが好ましい。
重要なのは、センサの個数、密集度、及びアレイ配置が、プローブを触診可能な器官に対して押し付ける都度、2次元の圧力データを得るための十分な圧力応答データを提供可能となるように選択されることである。プローブが押し当てられる前立腺上の各々の位置が前回の位置と重複する場合、圧力アレイの分解能は、前回の位置と今回の位置に対応する部分的な機械的イメージどうしの一致部分を十分に確認できる程度でなければならない。以下、この点についてさらに説明する。このタイプの装置として従来から知られているものは、センサが直線的に配置されているか、又はセンサの数が十分でないため、1回の圧迫では2次元的な圧力パターンを得ることができない。そのため、圧力感知アレイを1回圧迫するだけで有用な2次元パターンを得るには不十分であった。プローブのシャフト22は、ヘッドとシャフトの間に直線的なオフセットを形成するように設計されたS字状の先端部22aを有している。プローブヘッドが前立腺に押し当てられるときには、プローブ全体が前立腺に向かって幾分下方に動かされる。プローブシャフトにS字状の部分が存在しているため、プローブヘッドを前立腺に押し付けたときに、シャフトの周囲の組織や器官を圧迫することなく前立腺のみを圧迫することが可能となる。プローブシャフトのS字状の先端部の寸法は、シャフトとヘッドの直線オフセットが約4mm(5/32インチ)〜15mm(19/32インチ)の範囲内となるように選択されることが好ましい。本発明の最も好ましい実施形態において、この長さは10mmである。
プローブの設計上のさらなる改良が、プローブヘッドの長手方向軸とプローブシャフトの長手方向軸の間のオフセット角度についてなされている。シャフトの軸をヘッドの軸に対して約4〜12度傾けることにより、プローブヘッドが前立腺に押し付けられたときに周囲の組織及び器官に生じるゆがみをさらに軽減することができる。ヘッド側の圧力センサアレイとシャフト側の圧力センサアレイの間の距離を適切に保つことで、プローブが肛門の括約筋の位置から前立腺の推定位置を求めることができる。本発明による二重アレイ式の経直腸プローブの好ましい形状において、ヘッド側の圧力アレイとシャフト側の圧力アレイの間の距離は、それぞれの圧力センサアレイの中心間の測定値が約40mm(19/16インチ)〜80mm(31/8インチ)となるように選択される。最も好ましい距離は約60mmであり、これは括約筋と前立腺の中心の間の平均距離に等しい。
これと同タイプであり直線的な圧力感知アレイを有する既知の装置とは対照的に、本発明のプローブは、図3Aのような2次元の圧力センサアレイを備えている。このような2次元の圧力センサアレイ1は、主に次の3つの目的において有用である。
前立腺検査中に圧力応答データを提供する。
機械的イメージ認識技術を利用してプローブヘッドの前立腺に対する相対位置の変化に関する情報を提供する。
ヘッド側の圧力センサアレイの完全な2次元圧力パターンをリアルタイムで表示することにより、前立腺検査中のユーザを誘導する。
図3Bは、本実施形態による補助圧力センサ32が表面に取り付けられたプローブシャフト22の好適な側面図である。図2のように、複数の補助的な圧力センサ32が、上記のシャフト側の圧力センサアレイ2を構成している。このシャフト側の圧力センサアレイは、次の2つの目的において有用である。
シャフト側の圧力センサアレイによる完全な2次元圧力パターンをリアルタイムで表示することで前立腺検査中のユーザを誘導するために必要な括約筋領域の補助的な圧力データ受信する。
プローブヘッドの前立腺に対する横方向の相対位置の付加的な補正のために、プローブの配向角のリアルタイム変化を考慮して、括約筋に対するプローブヘッドの長軸方向の相対位置を計算する。
ヘッド側の圧力センサと同様に、シャフト側の補助圧力センサアレイの寸法、グリッド、設計、及びセンサ数は変更可能である。最も基礎的な形状において、シャフト側の圧力センサアレイは、単一の線形圧力アレイからなる。また、2つ又は好ましく3つの線形圧力センサアレイを用い、特に、それらをプローブの外周に等間隔に配置したときには、更に高い機能性を実現することができる。最も好ましい構造において、シャフト側の圧力センサアレイは、プローブシャフトの外周の全域に亘る長さ約40mm圧力感知領域を備えており、100を超える数の圧力センサを含む。シャフトの直径もまた変更可能であるが、好ましくは約12.5mmである。個々の圧力センサは、圧電性の圧力トランスデューサ、抵抗性の圧力トランスデューサ、MEMSを用いた圧力トランスデューサ、又は量子トンネリング複合物からなる圧力トランスデューサでありうるが、好ましい実施形態においては容量性のトランスデューサである。
図4は、本発明の好ましい実施形態において使用される配向追跡センサ手段を示す図である。配向追跡手段は、互いに直交する感知軸M、M、Mを有する3軸の磁気センサ、及び感知軸A、Aを有する2軸の加速度センサ26を含む。重要なのは、A軸がM軸と平行であり、A軸がM軸と平行である点である。磁気センサ25と加速度センサ26は、X軸とY軸が互いに平行となるように、両方ともプラットフォーム41に取り付けられ、その結果、プラットフォーム41はプローブヘッドの圧力感知面と平行になる。好ましくは、プラットフォーム41は、プローブハンドルに組み込まれており、前立腺検査中には括約筋の近傍に位置することになる。磁気センサの測定値は、地球の磁場に対するセンサの配向を示すものである。地球の重力ベクトルと垂直をなす水平面に対するプラットフォームの傾斜を相殺するために磁気センサの測定値を補正するには、プラットフォームの傾斜角が必要である。そこで、2次元の加速度センサが高度(φ)及び回転角(θ)の測定値を与える傾斜センサとして利用される。X、Y、Zの磁気測定値は、以下の回転方程式を適用して、水平面上にトレースされることができる。
Figure 0004997225
Figure 0004997225
ここで、Xh及びYhは、地球の磁気ベクトルを水平面上に投影したものである。Xh及びYhが既知であれば、以下のように、アジマス角(azimuth)を計算することが可能である。
Figure 0004997225
加速度センサの傾斜センサとして利用としての利用を容易にするため、既知のローパスフィルタが適用可能である。
使用に際しては、プローブハンドルの「開始」ボタンを押すことで、加工手段7が、角度に関する全ての測定値の供給を受け、最新のアジマス角を計算し、そのアジマス角を角度ゼロに等しいアジマス基準角として定める。同時に、アジマス基準角に対するアジマス角の不連続部分(discontinuity)の配向の近さが計算される。この近さが所定のしきい値を超えた場合、アジマス角の不連続部分をプローブの作動領域から外に出すため、数式1及び数式2におけるX軸及びY軸が互いに入れ替えられる。その後、前立腺検査中の全てのアジマス角が前述のアジマス基準角に対して相対的に計算されるので、ユーザはプローブの配向角、すなわち、アジマス、仰角、及び回転角をリアルタイムで監視することができる。
図5は、本発明による装置の電子ユニット6の概略図を示す。図中には、ヘッド側の圧力センサアレイ1を形成する複数の圧力センサ31、及びシャフト側の圧力センサアレイ3を形成する複数の圧力センサ32が示されている。電子ユニット6の内部の圧力感知回路は、前立腺検査中に個々のセンサに加わる圧力を検知できるように、個々の圧力センサにより生成された電気信号を増幅及び変換すべく設計されたアナログ式切替装置45、増幅器46、変換器及び/又は積分器49を備えている。アナログ・ディジタル変換器48は、アナログ入力信号をディジタル信号に変換し、それを処理装置52に送信する。複数の増幅器43は、前立腺を圧迫したときのプローブの配向、及び一のプレス場所から別のプレス場所へのプローブの運動を検知するための上記の加速度センサ25及び磁気センサ26により生成された信号を増幅する。増幅器43からの増幅信号は、マルチプレクサ47に送信される。多重化された信号は、アナログ−ディジタル変換器51によりディジタル信号に変換され、処理装置52に送信される。処理装置52により制御されるセット/リセット回路44は、磁気センサ26の磁区が最大の感知性能を発揮できるように磁気センサ26に供給されるセット/リセットパルスを生成する。セット/リセット回路44の構造及び機能特性は、プローブ設計に用いられる磁気センサの種類、及び個々の磁気センサ製造業者による推奨に応じて決定される。経直腸プローブのハンドルに設けられた制御ボタン23は、前立腺検査工程を制御し、少なくとも開始/終了の機能を提供するために、ドライバ50を介して処理装置52に連結されている。処理装置52は、アナログ−ディジタル変換器48及び51、マルチプレクサ45及び47、ならびに外部の処理・表示手段55とのデータ交換を支援するためのCOMポートと通信する。外部の処理・表示手段55は、小型のラップトップコンピュータであることが好ましい。前立腺検査のデータ、及び配向センサの較正データや圧力センサの較正・調整データ等の正常な動作のために即座に必要となる情報を保存するために、電子ユニット6内のデータ保存装置53が用いられる。処理手段は、過度のノイズや感知機能の障害等のセンサの誤作動を自動的に検出できるように設計されており、取得した圧力のデータフレームから異常のあるセンサによるデータを除外する。
外部の処理・表示手段55は、検査データの処理に用いられる。これは、以下の機能を実行可能となるように構成される。
前立腺検査中に個々の圧力センサの位置を計算する機能。
前立腺及び周辺組織の部分的な機械的イメージの近似及び補正を行う機能。
前立腺の部分的な機械的イメージを分離及び解析を行う機能。
前立腺の形体、及び前立腺の損傷、結節、硬組織等の内部構造の機械的特性を測定する機能。
以下のように前立腺イメージの視覚化の準備を行う機能。
表示手段55は、前立腺検査中に装置と通信するためのタッチスクリーン機能を備えていることが好ましい。
図6は、本発明において診断結果を得るための方法について説明するためのフローチャートである。先ず、プローブヘッド側の圧力センサアレイからヘッド側の圧力信号が取得され、それがセンサの較正特性に応じてkPa等の単位で表現されるヘッド側の圧力応答データ61に変換される。ブロック62での時間フィルタリング及び2次元の空間フィルタリングの後、ユーザのためにデータが前立腺検査中にリアルタイムで表示される(ブロック63)。それにより、ユーザは、検査中の前立腺内の異常な部位又は不審な部位の特定にプローブを役立てることができる。プローブシャフト側の圧力センサアレイからシャフト側の圧力信号が取得され、それがセンサの較正特性に応じてkPa等の単位で表現されるシャフト側の圧力応答データ61に変換される。ブロック66での時間フィルタリング及び2次元の空間フィルタリングの後、前立腺検査中にリアルタイムで表示される(ブロック67)。それにより、ユーザが前立腺を検出できるように括約筋領域の一部を視覚化し、プローブの操作を支援することができる。配向データ70は、プローブ配向センサから取得される。さらに、ブロック71でのアジマス、仰角、及び回転角の計算後、これらの角度が、ユーザのプローブ操作を支援するために、前立腺検査中にリアルタイムで表示される(ブロック72)。
プローブヘッド側の圧力センサアレイにより前立腺の位置を特定したら、ユーザは、プローブハンドル上の検査開始/終了ボタンを押して、リアルタイムで前立腺の機械的イメージを合成するためのアルゴリズムを開始する(ブロック68)。このアルゴリズムについては、以下の図9の説明において記述する。前立腺の2次元の機械的イメージは、ブロック73において合成され表示される。同時に、圧力応答データ及びプローブ配向データを含む前立腺検査データが、ブロック64において蓄積される。ブロック60内の全ての動作は、前立腺検査中にリアルタイムで実行される。
前立腺検査終了後、ユーザは、プローブハンドルの検査開始/終了ボタンを再度押して、リアルタイムで前立腺の機械的イメージを合成するためのアルゴリズムを終了する。以下に記述するように、ブロック75において、前立腺の3次元の機械的イメージを合成するためのアルゴリズムが自動的に作動する。合成された3次元の機械的前立腺イメージは、ブロック77において視覚化されることができる。ブロック76及び78において、前立腺の形体及び機械的特性がそれぞれ計算される。前立腺検査結果のプリントアウトは、前立腺に関する最も顕著な検出結果を示す一連の機械的イメージ、及び前立腺の寸法、対称性、中型のグルーブ、損傷検知の分類子となるアウトプット、及びこれらと同様のものを含む前立腺の定量的データを含む。
図7は、検査対象に前立腺に相対するプローブの斜視図であり、3つの直交軸からなる基準座標系、及び配向角を示している。処理手段は、最初に前立腺の機械的イメージをキャプチャした瞬間にX、Y、Zからなる基準座標系を定義する。瞬間的な配向角、すなわち、仰角(80)、アジマス(81)、及び回転角82が、基準座標系X、Y、Zにおける基準角として定義される。その後の基準座標系X、Y、Zに対するプローブの配向角は、全て基準角に対して相対的に計算される。前立腺の機械的イメージの初回のキャプチャが行われるときには、プローブヘッド21が前立腺4に対して押し当てられる。本発明の好適な方法において、プローブの回転角は、ゼロ近くに保たれなければならない。プローブヘッドの圧力感知面は曲率を有しているが、X座標軸に沿ったXY平面への機械的イメージの投影は、その曲率を考慮せずに行われる。これによりプローブヘッドの機械的イメージが2次元イメージとして取得され、予め定義された前立腺容量の内部での前立腺イメージの再構成のために利用される。リアルタイム計算の単純化のため、基準座標系X、Y、ZのうちX、Y両軸は、プローブヘッド側の圧力センサアレイの機械的イメージ平面内に配置され、第3の基準であるZ座標はこの機械的イメージ平面に対して垂直をなすものとされる。
図8は、前立腺の2次元及び3次元の機械的イメージを合成して前立腺の特性を計算するために必要な方法について説明するフローチャートである。このアルゴリズムは、全ての検査記録がそろったときに(ブロック64)、点線83で示されるように前立腺検査中にリアルタイムで作動するか、又は検査終了後に作動することができる。最初のステップは、ヘッド側の圧力センサアレイからの連続的なデータシーケンスを、多数の部分的な機械的前立腺イメージを計算するための手段により抽出することを含む。前立腺がプローブヘッドの下方に位置して個々の2次元圧力データフレームが取得される都度、同データが前立腺イメージの合成にのみ利用されるように、1つの部分的な機械的イメージが計算される。このような抽出処理は、検査の動的特性に鑑みて自動又は手動で行われる。このような抽出を行う他の目的は、プローブを直腸に挿入するときの括約筋に相当する信号をヘッド側の圧力データから除外することである。
次のステップは、本発明の経直腸プローブに対する前立腺の個々の圧迫痕(pressure imprint)を計算するための手段によって実行される。同手段は、ヘッド側の圧力センサアレイから読み込んだ各々の解析済み圧力データフレームに含まれる前立腺圧迫痕の検出を開始する(ブロック84)。同手段は、機械的イメージの中央部において圧力信号が増加する確率を評価するためのアルゴリズムを実行する機能ブロックを包含する。センサアレイ内のいくつかの行と列の調整又は較正が不正確である可能性に加えて、いくつかのセンサが誤った信号を生成する可能性が考慮に入れられる。このような行及び列内の誤差は、圧力データ内の誤った圧力急上昇や圧力格差の原因となる。センサアレイの内側の行又は列を考慮して、検出アルゴリズムは、境界圧力に基づく線形補正に対する圧力信号値を計算する。最大及び最小の圧力値を示す地点のうち所定数のものは除外される。残りの値の合計値が示す正符号又は負符号が、その並び全体の符号を決定する。各々の並び(行又は列)には所定の加重が割り当てられるが、中央の並びには最大の加重が、境界部の並びには最小の加重が割り当てられる。全ての並びの符号つき加重の合計値が既定値よりも大きい場合、その機械的イメージは前立腺痕を包含しているとみなされる。その合計値は、2つの尺度母数を用いて既定の範囲に規格化され、機械的イメージ内に前立腺痕が存在するか否かの定量的な推定結果を与える。前立腺の圧力信号が解析済みの圧力データフレーム内で検知されない場合、そのデータフレームは考慮されない。他方、前立腺の圧力信号が検知された場合、ブロック85における次の手順が、解析済みの圧力応答データフレーム内の前立腺圧力応答データ(ピクセル)のみを抽出する処理を作動させる。
前立腺イメージを取り出すための同手順は、比較的大きな圧力信号を含む1又は複数の比較的大きなコヒーレント領域の分離からなる。同手順の他の目的は、境界効果、及び括約筋及び膀胱の圧力信号に対応するセンサアレイの最上部及び最下部における圧力ピークの抑制の影響を軽減することである。この手順は、隣接するセンサどうしの間の2×2補間を利用してイメージ内のピクセル数を4倍にすることで始動する。この圧力パターンのバイナリイメージは、圧力が平均より高いピクセルを黒に設定することにより生成される。同時に、圧力が平均よりも低いピクセルは白に設定される。その後、バイナリイメージに対して2種類のフィルタリングが適用される。拡大フィルタリングは、各々の白ポイントに隣接する黒ピクセルの数を計算する。その数が所定の値よりも大きい場合、黒の領域を拡張して白い小さなホール部分を覆うため、白ポイントを黒ポイントに変える。反対に黒ポイントに同様の効果を与えるための絞りフィルタリングが続けて適用される。それが各々の黒ポイントに隣接する白ピクセルの数を計算する。その数が所定の値より大きい場合、黒い領域を絞り、その境界部分を平滑化するために白ポイントに変える。拡張及び絞りを続けて行うことにより、境界部分の欠陥を除去するか又は著しく軽減し、内側の白いホールを取り除き、内側の大型領域の結合及び円形化を行うことができる結合させ角を取る。その結果生じる黒い領域は圧力センサアレイにマッピングされ、その黒い領域に属する圧力センサのみが前立腺イメージ解析の次段階に加わることができる。本発明の利点は、前立腺自体を参照物体として利用することができる点である。これは、一連の手順における初期段階で前立腺痕を測定した後に、それに続く数ステップにおいて、前立腺の合成画像を作成するための手段により達成される。具体的には、手順86において、初回分の2次元の機械的前立腺画像を作成するために、圧力応答データの最初のnフレーム分がキャプチャされる。このようなキャプチャ処理は、圧力前立腺信号の合計が所定のしきい値を超えたときに行われる。平均化の後、キャプチャされた初回分の前立腺構造は、2次元の合成前立腺イメージ91に転換される。その後、前立腺の圧力応答データを伝送する圧力応答データフレームの各々が、ブロック90において部分的な機械的イメージを比較するための手段によって解析され、前回の部分的な機械的イメージとの重複領域が検出される。続いて、合成済みイメージ94を作成するための手段が、新しい圧力応答情報を2次元の合成済み前立腺イメージ上に配置するために利用される。ブロック90は、最新の前立腺圧力応答イメージの、2次元の合成済み前立腺イメージ内での最良の適合状態を検出するためのマッチングを行うアルゴリズムを作動させる。最良の適合状態は、関数Fを最大化することによって計算される。
Figure 0004997225
ここで、k及びlは、最新の前立腺の機械的イメージを含む圧力フレーム内の水平方向及び鉛直方向のピクセルの個数であり、n及びmは、前回最適化された機械的イメージに対するピクセル単位の最大シフト量であり、Si,jは、i,jピクセルの最新の圧力応答信号であり、Pn+i,m+jは、2次元合成前立腺イメージ内のn+i,m+jピクセルの圧力信号である。
最良の適合状態が検出された後、最新の機械的前立腺イメージの各ピクセル値が2次元の合成済み前立腺イメージ内の各ピクセル値を超える場合には、各ピクセルが既定の加重因数を用いて2次元の合成済み前立腺イメージに配置される(ブロック94)。ブロック86、90、91、及び94における全ての計算は、前立腺の機械的イメージの各ピクセル値が、ブロック87において計算された解析済みの圧力データフレームの修正された平均値によって区分されるように、規格化されたピクセルを用いて実行されることが好ましい。ここで、修正された平均値は、最大値を示す圧力ピクセルSmaxから既定の個数を除外した後に、数式5に従って計算される。
Figure 0004997225
ここで、k及びlは、解析済みの前立腺の機械的イメージを含む圧力応答フレーム内の水平方向及び鉛直方向のピクセルの個数である。
ブロック93において瞬間的な圧力応答データフレームについて計算されたアジマス、仰角、及び回転角、並びにブロック89においてシャフト側の圧力データに基づき評価されたY座標が、数式4に従ってマッチングのためのアルゴリズムを開始するために、2次元の機械的イメージ空間におけるフレーム内の局所的な基準位置の検出に用いられる。同時に、イメージのゆがみを除去するための手順95及び、2次元の機械的イメージ91を補正するための手順96が、前立腺検査中に作動される。手順95は、イメージ91内の計算された2次元勾配磁場において既定のしきい値を上回るゆがみを平滑化する。手順96は、前立腺の形体のゆがみが許容される前立腺形体の変化の限度を越える場合に、前立腺の形体を補正する。
前立腺イメージを伝送する個々の圧力データフレームは、ブロック90において計算されるXY平面上の位置、及びブロック87において計算される最新のフレーム87のための修正された平均値に比例するとみなされるZ座標に基づき、3次元の機械的前立腺イメージに含められる。同ブロックにおいて3次元イメージを合成するためのアルゴリズムに関するさらに詳細な説明が、以下の図10についての記載中に示されている。
前立腺検査の終了後、最終的な円滑化処理、及び3次元補間を行うための手順97が、最新のイメージ92に対して適用される。そして、より優れた視覚性のために、複数の輪郭、薄片、イソ表面、及びこれらと同等のものを示す最終的な2次元及び3次元の機械的前立腺イメージが、ブロック98において作成される。前立腺の寸法(小/中/大)102、中型のグルーブ(なし/あり)103、前立腺形状(対称/非対称)104等の前立腺の特徴が、これらの数値を既定の判定基準に基づきテストすることで最終的な前立腺イメージから直接的に計算される。
小結節の分類子は、以下の3つの小結節検出器を含む。ブロック99に示される1つ目の検出器は、小結節の存在が陽性である場合に特有の具体的特徴を検知するために、前立腺圧力データの信号分配を解析する。ブロック100に示される2つ目の小結節検知器は、想定される小結節の多様な形状から実際に小結節を検知するために、予め定められた一連の畳み込みフィルタを2次元の前立腺機械的イメージの各々に適用する。畳み込みフィルタの種類は、小結節の形状に関して調査すべき内容に対応していることが好ましい。ブロック101に示される3つ目の小結節検知器は、ブロック98における最終的な3次元の前立腺イメージに、一連の3次元畳み込みフィルタを適用する。フィルタ処理された前立腺イメージ内の特定の3次元物体の存在は、小結節が存在する可能性、及びその位置を示唆するものである。
図9は、前立腺領域及び括約筋領域をリアルタイムで示す機械的イメージの実例を、前立腺検査中にユーザを誘導するためのプローブ位置調整方法の一例とともに示す図である。前立腺4に対するプローブヘッド21の複数回の圧迫によって、ヘッド側の圧力センサアレイは前立腺を示す圧力応答データを取得することができる。前立腺に圧迫されるときプローブの各位置は、前回の位置と重複している。そして、図8(ブロック91)に記載されるように、圧力応答データが、合成済みの2次元の機械的前立腺データ109に変換される。同時に、シャフト側の圧力センサアレイは、括約筋領域を示す補助的な機械的データを提供し、同データは、2次元の括約筋の機械的イメージ110と同一のイメージフレーム106において視覚化される。その後、図8に記載されたブロック89、90、及び93の手順を用いて、プローブのアジマス角113及び括約筋の中心とプローブの中心111の間の距離に加えて、基準座標系X,Y,Zにおけるプローブヘッドの中心111の最新の座標107,108が計算される。前立腺イメージ109、括約筋イメージ110、及びプローブヘッド位置を全て含めた視覚化により、プローブの操作が容易になり、ユーザに効果的なフィードバックを提供することが可能になる。
このような本発明の配向追跡システムは、アジマス角113を含む配向角を提供するにすぎないので、シャフト側の圧力センサアレイを用いて括約筋の中心位置を検出し、それをプローブヘッドの動作を計算するための基準点として用いることが必要となる。プローブの初期位置は、前立腺に対するプローブヘッドの初回の圧迫に対応しており、それに対するアジマス角として0が割り当てられる。シャフト側のセンサアレイによって検知された括約筋の中心と最新のアジマス角113の間の距離が分かれば、その距離にアジマス角の正弦を掛けることでプローブヘッドの新しい座標を計算可能である。
図10は、本発明の方法に従って合成された3次元の前立腺の機械的イメージを示す図である。3次元の前立腺の機械的イメージ114(上記した図8中のブロック9についての説明も参照のこと)は、それぞれ平面116、118、119内に配置された2次元の機械的前立腺イメージ115、117、120を包含する。前立腺4に対してプローブヘッド21を複数回圧迫することで前立腺のスキャンを行う際に、ヘッド側の圧力センサアレイは、前立腺の圧力応答データを提供する。新たな圧力応答データフレームの各々は、図8のように、手順85、並びに手順90によって計算される107、108のようなX、Y座標、及び手順87によって計算されるZ座標に基づき、2次元の機械的前立腺イメージに変換される。その後、最新のピクセル値が2次元の機械的前立腺イメージ内のしきい値を超える場合には、その圧力応答データフレームの各ピクセルが、既定の加重因子を用いて、117のような2次元の機械的前立腺イメージ内に配置される。このとき、3次元の機械的前立腺イメージは2種類作成されることが好ましい。一方のイメージは、規格化されたピクセルのみを含み(前立腺の機械的イメージの各ピクセル値が、解析済みの圧力応答データフレームの修正された平均値によって区分される)、もう一方のイメージは、全体的な圧力応答ピクセルのみを含む。
シャフト側の圧力センサアレイの存在により、患者の模型を用いた授業、又は実際の前立腺評価の練習のために利用することも可能である。患者が感じる苦痛を最小限に抑えるために患者の直腸の近辺におけるプローブと組織の間の接触力を小さくすることが、上記のような訓練の目的である。シャフト側の圧力センサアレイは、プローブによって括約筋及び他の組織・器官に加えられる様々な力(前立腺自体に加えられる力は除く)の大きさを測定するために使用されることができる。これらの力を最小化するための検査中のプローブ位置調整が可能となるように、これらの力はリアルタイムで表示されることができる。
本書において本発明は特定の実施形体について説明されたが、これらの実施形態は単に本発明の原理及び用途を例示したものにすぎないと理解されるべきである。従って、これらの例示的な実施形態に対しては数々の修正が加えられることができ、特許請求の範囲に定められた本発明の精神及び技術的範囲から逸脱しない限りにおいて他の構成が案出されることができる点が理解されるべきである。
本発明によるシステムの機能的構造を示す概略図である。 2次元のヘッド側圧力センサアレイ、シャフト側の圧力センサアレイ、及び配向センサを有するプローブの側面図である。 本発明によるプローブヘッド及びプローブシャフトをそれぞれ示す断面図である。 本発明によるプローブヘッド及びプローブシャフトをそれぞれ示す断面図である。 本発明の好ましい実施形態において利用される配向追跡システムを示す図である。 本発明による装置の電子ユニットを示す概略図である。 診断情報を取得するための方法について説明するためのフローチャートである。 検査対象の前立腺に対して配置された経直腸プローブの斜視図であり、3つの直交軸を備えた基準座標系及びプローブの配向角を示している。 2次元及び3次元の機械的イメージの合成、及び前立腺の外観の予測の方法について説明するためのフローチャートである。 リアルタイムの2次元前立腺イメージ、及び前立腺検査中にユーザを誘導するための括約筋領域の機械的イメージのプローブに対する相対位置を示す図である。 合成された3次元の前立腺の機械的イメージを示す図である。

Claims (6)

  1. 生来的な身体開口を通じて触診可能な器官の機械的イメージングを行うための装置であって、
    前記身体開口を通過可能な寸法に形成され、前記触診可能な身体器官に押し当てられたときに圧力応答データを取得可能な2次元の圧力センサアレイを備えたプローブヘッドと、
    前記プローブヘッドに連結されており、前記プローブヘッドから前記圧力応答データを取得することが可能な電子ユニットと、
    前記電子ユニットに連結された処理・表示手段と、を含んでおり、
    前記処理・表示手段は、前記プローブが前記触診可能な器官に対して押し当てられたときの前記圧力応答データから計算される各々の部分的な機械的イメージからなる複数の部分的な機械的イメージを計算する手段と、各々の部分的な機械的イメージと前回の部分的な機械的イメージの重複部分を検出するために両者を比較する手段と、前記複数の部分的な機械的イメージを統合するために、前記重複部分を用いて前記複数の部分的な機械的イメージを統合することで、前記複数の部分的な機械的イメージから前記触診可能な器官の合成イメージを作成する手段と、をさらに含むことを特徴とする装置。
  2. 前記プローブヘッド側の圧力センサアレイは、複数の個別圧力センサを含んでおり、
    前記センサは、容量性の圧力トランスデューサ、圧電性の圧力トランスデューサ、抵抗性の圧力トランスデューサ、及びマイクロマシン技術を用いた圧力トランスデューサからなる群から選択されることを特徴とする請求項に記載の装置。
  3. 前記プローブヘッドは、前記プローブの位置の位置データを提供可能な配向追跡手段をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の装置。
  4. 前立腺の機械的イメージングを行うための二重アレイ式の経直腸プローブであって、
    直腸内に収まる寸法に形成され、2次元のヘッド側圧力センサアレイを備えたプローブヘッドと、
    前記プローブヘッドに取り付けられ、シャフト側圧力センサアレイを備えたプローブシャフトと、を含む経直腸プローブ。
  5. 前記シャフト側圧力センサアレイは、少なくとも1つの直線配列の圧力センサアレイを含むことを特徴とする請求項に記載の経直腸プローブ。
  6. 前記シャフト側圧力センサアレイは、2次元の圧力センサアレイであることを特徴とする請求項に記載の経直腸プローブ。
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