JP4993713B2 - エレベータの乗籠への給電装置 - Google Patents

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本発明は、エレベータの乗籠で消費される電力を非接触で供給する給電装置に関する。
エレベータの乗籠で使用される電力は、乗籠の底部に吊下げられて昇降路側に設置される制御装置に接続されたテールコードによって供給される。テールコードは、信号線などと一纏めにされたケーブルであり、乗籠が昇降路内を移動するために十分な長さを有している。建築物が高層化するにつれて、テールコードの長さが増す。テールコードは、乗籠の底部に吊下げられているだけなので、建物が高いと風や地震で建物が揺れることによってテールコードが昇降路内の機器に接触したり、絡まったりすることが懸念される。そのため、テールコードを用いずに乗籠に電力を供給する技術が検討されている。
軌道に沿って移動する自走式の移動体に対して、電磁誘導によって外部から非接触に電力を供給する給電技術がある。特許文献1に記載された非接触給電システムは、給電線とフェライトシートと受電ユニットとを備える。給電線は、誘導レールに沿って一往復するように配置されている。フェライトシートは、給電線に面した誘導レールの構造部材に貼り付けられている。受電ユニットは、フェライトシートと対向するように車両に取り付けられ、給電線を一本ずつ囲うように形成されたコアと、このコアに装着されて当該部に生じる磁束の変化によって起電するコイルを備える。
また、特許文献2に記載された無接触給電装置は、モノレール式の搬送システムに適用されており、送電線と磁性部材とピックアップユニットとを備える。送電線は、モノレールに沿って一往復に配置されている。磁性部材は、送電線が敷設された全長に渡ってモノレールと送電線との間に配置される。ピックアップユニットは、移動体に設けられ、コアとピックアップコイルとで構成されている。
コアは、磁性部材を一部として送電線を1本ずつ囲うように形成されている。ピックアップコイルは、送電線の間に延びるコアの中央突出部分に装着されている。送電線に高周波電流が流されるとコアおよび磁性部材の内部に磁束が生じ、その結果、電磁誘導によってピックアップコイルが発電する。
特開平8−175233号公報 特開平8−196003号公報
上記特許文献の構成によれば、受電ユニットやピックアップユニットが通過する範囲全体にわたって磁性材料を配設している。この技術をエレベータに適用する場合、昇降路の全域にわたって磁性材料を配置することになる。そのためこの機器を設置するためにコストが増加する。
この非接触の給電技術は、特に昇降路程が長いエレベータに適用したいのだが、全長に渡って磁性材料を配置するための機器のコストが増大するだけでなく、磁性材料を配置する場合に乗籠を案内するガイドレールと同様の位置決め精度を要するため、単位長さ当たりのエレベータの設置工事費が高くなる。
エレベータにおいて、乗籠が消費する電力は、停止中と走行中とで異なる。乗籠が停止している間に消費する電力は、ドアを開閉させるためにモータなどを駆動させるので、一時的に増加する。一方、走行中に乗籠で消費される電力は、照明器具や操作ボタンなどに限られるため、ほとんど変化することなく、小さい値で一定している。消費電力量が大きい停止中の条件に合わせて電力を供給すると、走行中の余剰な電力が無駄になるため、全体としての電力効率が悪くなる。
そこで、本発明は、エレベータの乗籠が停止している間に非接触に供給される電力の供給率を向上させ、かつ装置全体として安価である給電装置を提供する。
本発明に係る一実施形態の給電装置は、エレベータの乗籠に対して非接触に電力を供給する。この給電装置は、給電線と高周波電源とコアとコイルと磁性体とを備える。給電線は、エレベータの昇降路内を乗籠が移動する範囲に渡って架設される。高周波電源は、給電線に高周波電流を供給する。コアは、乗籠に取り付けられて給電線が内側に非接触に配置される溝を有する。コイルは、給電線に交差する方向を中心にコアに捲回される。磁性体は、乗籠が各階床に停止した状態でコアに対して非接触に昇降路の一部に配置されてコアとともに磁気回路を構成する。
この場合、コアは、溝を2つ有し、磁性体は、乗籠が停止した状態で2つの溝に対して一続きに覆い被さる。または、磁性体は、コアの溝を覆う側からコアの外側に沿って隙間を有して延びる翼部を備える。または、磁性体は、コアの溝に挿入された状態に位置決めされる。または、磁性体は、コアの溝に入り込む凸部を有している。または、磁性体は、給電線を支持する非磁性の支持具のステム部に固定される。
本発明に係る給電装置によれば、乗籠に取り付けられたコアに捲回されたコイルが、給電線に流れる高周波電流によって発電する。そして、乗籠が停止した状態でコアに対峙して磁気回路を構成する磁性体を備えるので、走行中よりも効率良く電力を発電することができ、停止中に乗籠で消費される必要な電力をまかなうことができる。
また、昇降路側に配置される磁性体は、乗籠が移動する範囲全体にわたって設けるのではなく、乗籠が停止した状態で対峙する位置に部分的に設けられている。したがって、この給電装置を設けるために必要となる磁性体が少量ですむため、設備コストを低く抑えることができる。さらに、乗籠の移動範囲のうち乗籠が停止する位置に対応させて磁性体を配置しているので、乗籠とともに移動するコアに対する磁性体の位置決めは、乗籠が停止する位置およびその近傍において必要十分な精度が確保されていればよい。したがって、この給電装置を設置および保守する際において、位置決め調整が容易になるので、設置工事費およびメンテナンス費用を低く抑えることができる。
本発明に係る第1の実施形態の給電装置10は、エレベータ1の乗籠2で消費される電力を非接触で供給するものであって、図1から図3を参照して説明する。エレベータ1は、図1に示すように、昇降路3の上部に巻上機4を設置し、この巻上機4に掛けられたメインロープ5の端部に乗籠2と釣合錘6とを吊下げている。乗籠2および釣合錘6は、それぞれガイドレール7に案内されており、巻上機4によって駆動されて、つるべ式に昇降路3内を上または下に移動する。
給電装置10は、昇降路3側から乗籠2へ、電磁誘導によって非接触に電力を供給する。給電装置10は、図1に示すように給電線11と高周波電源12と受電ユニット13と磁性体14とを備える。給電線11は、昇降路3を乗籠2が移動する範囲に渡って、ガイドレール7と平行に架設されている。高周波電源12は、昇降路3の上部に配置され、給電線11が接続されている。高周波電源12は、給電線11に供給する高周波電流を商用電力から生成する。給電線11は、昇降路3の下部で折り返されており、昇降路3の途中の数箇所で支持具15によって位置決め保持されている。
この給電装置10では、給電線11に端子などを直接に接触させて電力を供給させるものではないので、給電線11は、絶縁性部材で被覆されている。支持具15は、昇降路3の内部にある他の機器や建屋に接触させないように給電線11を保持する。また、給電線11に流れる高周波電流による磁場の影響を受けないように、支持具15は、絶縁部材で構成される。図1および図3に示すように支持具15は、ガイドレール7およびこれを保持するサポートから延びるブラケット16に固定される。
受電ユニット13は、図1および図3に示すように、乗籠2の外壁に設けられ、乗籠2とともに移動する。受電ユニット13は、コア131とコイル132と電力変換回路とを備える。図2に示すように、コア131は、磁性部材で形成され、ベース133を介して乗籠2の側壁に固定されており、給電線11が内側に非接触に配置される溝134を有している。溝134の開口側は、給電線11の支持具15が通過する十分な大きさを有している。具体的には図3に示すように、コア131は、給電線11を横切る断面においてE字形あり、給電線11の間に延びる中央脚135と、この中央脚135に対して給電線11を挟んで配置される外側脚136とを備える。
コイル132は、給電線11に交差する方向を中心にコア131の中央脚135に捲回されている。給電線11に交流の高周波電流が流れると、給電線11の周りに磁場が形成される。この磁場による磁束Bは、図3に破線で示すように、給電線11の周りを囲うように配置されるコア131の内部を通り、電磁誘導によってコア131に捲回されたコイル132に電圧を発生させる。電力変換回路は、コイル132に発生した電圧を、乗籠2に搭載される各機器に適した電圧および電流に変換する。
磁性体14は、図1に示すように乗籠2が各階床Aで停止した状態Pで、図2に示すようにコア131に対して非接触で溝134に対峙する位置に配置されている。この状態Pで、磁性体14は、図3に示すように、コア131とともに磁気回路を構成する。磁性体14は、コア131内部を通る磁束Bの漏れを抑制することで、コイル132の中を通る磁束Bを増やし、コイル132の発電効率を向上させる。
コア131は、2本の給電線11を1本ずつ内側に配置する2つ溝134を有している。磁性体14は、コア131に設けられたこの2つの溝134を一続きに覆い被さるように形成され、かつ、溝134が開口する側から外側脚136を回りこむように隙間を有した状態でコア131の外側に沿って延びる翼部141を備えている。
以上のように構成された給電装置10は、階床間を移動する走行中には、コア131単独で磁気回路を構成してコイル132に電力を発生させ、いずれかの階床に着床した停止中には、コア131と磁性体14とで磁気回路を構成してコイル132に電力を発生させる。
エレベータ1は、停止中に乗籠2のドア21を開け閉めするため、このドア21を駆動するモータやロック機構に電力が必要である。したがって、エレベータ1は、走行中に必要な電力よりも、各階床Aに停止している間に必要となる電力のほうが大きい。この給電装置10は、乗籠2が停止する状態Pで、受電ユニット13がある箇所に対応して昇降路3側の一部に磁性体14を配置している。この状態で、コア131と磁性体14とが磁気回路を構成するので、給電線11に流れる高周波電流から電磁誘導によって効率よくコイル132で電力を発生させることができる。
また、乗籠2が移動している間、コア131の溝134は開放された状態であり、コア131単独で構成する磁気回路によってコイル132に電力を発生させているので、停止中と比べて起電力は低下する。しかし、走行中にコア131が磁性体14と対峙していない。そのため、コア131と磁性体14とが相対的に移動した場合にコア131および磁性体14内部に生じる渦電流や磁気抵抗によるエネルギー損失が生じない。
本実施形態において、磁性体14は、コア131の溝134の開口部側から外側脚136を回り込んで延びる翼部141を有している。磁気回路を構成するコア131と磁性体14との対向面積が大きくなるため、この間の磁気抵抗が減る。コア131と磁性体14とで構成する磁気回路を通る磁束Bが増すので、コイル132の発電効率が向上する。コア131および磁性体14に用いられる材料は、導電性が低く高周波においても渦電流の影響が小さいフェライト系の材料を適用することが有効である。
このように、本実施形態の給電装置10は、エレベータ1の乗籠2に対して非接触に電力を供給するとともに、大きな電力が必要となる乗籠2の停止した状態Pにおいて受電ユニット13が配置される箇所にのみ対応させて磁性体14を配置し、それ以外の箇所には磁性体14を配置していない。磁性体14を部分的に配置するので、装置としての材料コストが抑えられるとともに、受電ユニット13に対する磁性体14の位置決めが容易になる。したがって、乗籠2に必要な電力を十分に供給しつつ、装置コストおよび設置コストが低い給電装置10を提供できる。
磁性体14の形状は、第1の実施形態で示した形状に限らない。コア131に設けられた溝134を塞ぐように中央脚135と外側脚136との間を架橋して磁気回路を構成すればよい。以下に給電装置10の他の実施形態を示す。各実施形態において同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。また、給電装置10全体の構成は、図1およびその説明に係る記載を参酌し、以下での記載を割愛する。
本発明に係る第2の実施形態の給電装置10は、図4を参照して説明する。この給電装置10の受電ユニット13と磁性体14との断面において、磁性体14が翼部141を備えていない点が第1の実施形態と異なっている。そのほかの構成は同じである。第1の実施形態の給電装置10に比べて翼部141を備えない分だけ、図4に示すコア131と磁性体14とが正対した状態における発電効率が低い。しかし、形状が単純であり、コア131の外側脚136を挟む方向に、コア131と磁性体14との位置決めが簡単になるため、製造および設置コストを抑える点において、第1の実施形態よりも優れている。
本発明に係る第3の実施形態の給電装置10は、図5を参照して説明する。第1および第2の実施形態における給電装置10の磁性体14は、コア131の2つの溝134を一続きに覆い被さるように配置している。これに対して、本実施形態における給電装置10の磁性体14は、乗籠2が各階床Aに停止している状態Pで、図5に示すように、溝134に挿入されて開口部の一部を埋める状態に保持具17で位置決めされている。磁性体14と溝134の内面との間は、乗籠2がこの階床Aを通過する場合に互いに接触しない十分な隙間を有している。この場合、隙間は、ガイドレール7に対する乗籠2の案内装置の相対最小クリアランスよりもやや大きく設定される。
このように構成されることによって、中央脚135と磁性体14との間の磁束Bが2方向に分散され、給電線11に対してコア131と磁性体14とが構成する磁気回路における磁気抵抗が減少するため、電力の変換効率を向上させることができる。
本発明に係る第4の実施形態の給電装置10は、図6を参照して説明する。この給電装置10の磁性体14は、他の実施形態と同様に、乗籠2が停止した状態Pで受電ユニット13のコア131に対峙して昇降路3に位置決めされている。この磁性体14は、図6に示すように、コア131に設けられた2つの溝134に対して一続きに覆い被さるとともに、溝134に入り込む凸部142を一体に有している。このように磁性体14を形成することによって、コア131と磁性体14との間の対向面積が増すので、磁気回路を通る磁束Bが増え、コイル132で発電される電力も増える。
本発明に係る第5の実施形態の給電装置10は、図7および図8を参照して説明する。この給電装置10において、図7に示すように、乗籠2が停止した状態Pで受電ユニット13のコア131に対峙する位置に配置される磁性体14は、給電線11の支持具15に保持されている。図7に示す状態において、乗籠2は、停止した状態Pから少し下がった位置にある状態である。磁性体14の上端および下端は、それぞれ給電線11の支持具15のステム部151に嵌合している。
磁性体14が給電線11に対して平行に保たれるのであれば、上端および下端を支持する代わりに中央部を1つの支持具15で保持してもよい。したがって、給電線11の支持具15が磁性体14の保持具も兼ねるので、支持具15の数を減らすことができる。また、支持具15を固定するために昇降路3側に用意されるブラケット16の数も減らすことができる。
このように構成された給電装置10において、コア131は、乗籠2の停止した状態Pにおいて磁性体14と合致する。この状態で、コア131と磁性体14とが図8に示すように磁性回路を構成するので、給電線11が作る磁場によって効率よくコイル132に電力を発電させることができる。また、コア131と磁性体14とが合致する状態で、支持具15が給電線11と磁性体14とを保持しているので、コア131と磁性体14と給電線11との位置決めが成される。したがって、この実施形態の給電装置10は、これらの相対位置のずれによる給電効率の低下を防止できる。
なお、上述の各実施形態において、コア131の形状は、給電線11を横切る方向の断面において、E字形に形成されているが、1つの溝134に1つの給電線11を配置したコアが2つ離れて配置されていてもよい。また、溝134の開口する向きは、同じ側に揃っていなくてもよい。例えば、コア131の断面形状が、S字形であってもよいし、H字形であってもよい。
本発明に係る第1の実施形態の給電装置を備えたエレベータを示す斜視図。 図1に示した給電装置およびその近傍を拡大した斜視図。 図2中のF3−F3線に沿って示す給電装置の断面図。 本発明に係る第2の実施形態の給電装置を示す断面図。 本発明に係る第3の実施形態の給電装置を示す断面図。 本発明に係る第4の実施形態の給電装置を示す断面図。 本発明に係る第5の実施形態の給電装置を示す斜視図。 図7に示した給電装置のコアと磁性体の中央部を乗籠の停止した状態で水平に横切る断面図。
符号の説明
1…エレベータ、2…乗籠、3…昇降路、10…給電装置、11…給電線、12…高周波電源、14…磁性体、15…支持具、131…コア、132…コイル、134…溝、141…翼部、142…凸部、151…ステム部。

Claims (6)

  1. エレベータの昇降路内を乗籠が移動する範囲に渡って架設される給電線と、
    前記給電線に高周波電流を供給する高周波電源と、
    前記乗籠に取り付けられて前記給電線が内側に非接触に配置される溝を有するコアと、
    前記給電線に交差する方向を中心に前記コアに捲回されるコイルと、
    前記乗籠が各階床に停止した状態で前記コアに対して非接触に前記昇降路の一部に配置されて前記コアとともに磁気回路を形成する磁性体と
    を備えることを特徴とする給電装置。
  2. 前記コアは、前記溝を2つ有し、
    前記磁性体は、前記乗籠が停止した状態で2つの前記溝に対して一続きに覆い被さることを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
  3. 前記磁性体は、前記コアの溝を覆う側から前記コアの外側に沿って隙間を有して延びる翼部を備えることを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
  4. 前記磁性体は、前記コアの溝に挿入された状態に位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
  5. 前記磁性体は、前記コアの溝に入り込む凸部を有していることを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
  6. 前記磁性体は、前記給電線を支持する非磁性の支持具のステム部に固定されることを特徴とする請求項4に記載の給電装置。
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