JP4993559B2 - 地盤改良注入材 - Google Patents
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Description
そして、溶液系の地盤改良注入材としては、例えば、主材である水ガラスと、添加材である非水溶性のエステル及び水と、が混合されたものが、従来からある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、近年では、トンネル工事等においては、即時に、よりいっそう強い固結強度を発現し、耐久性も発現する地盤改良注入材が求められるようになっている。そこで、従来の地盤改良注入材について、水ガラス及び非水溶性のエステルを増量して、対応することも考えられるが、エステルを増量すると、エステルと水との分離が激しくなるとの問題が生じる。この点、エステルとして、水溶性のものを使用することも考えられるが、水溶性のものを使用すると、水ガラスとエステルとを混合させた混合液が、瞬結してしまうため、浸透性の点で、好ましくない。
水ガラスが配合された主材と、エステル及び水が配合された添加材と、が混合された地盤改良注入材であって、
前記主材は、シリカ濃度が16(質量/容量)%以上となるように混合され、
前記添加材は、前記エステルとしてトリアセチンが配合され、クエン酸が配合され、界面活性剤が配合されてミセル化されており、かつ前記水ガラス中アルカリ分のエステル分解生成酸及び前記クエン酸による中和率が40%以上となるように混合されている、ことを特徴とする地盤改良注入材。
〔配合〕
本形態の地盤改良注入材は、溶液系であり、従来の地盤改良注入材と同様に、水ガラスが配合された主材と、非水溶性のエステル及び水が配合された添加材と、が混合されてなる。
ただし、本形態の地盤改良注入材において、主材は、混合後のシリカ濃度が16(質量/容量)%以上となるように、好ましくは20(質量/容量)%以上となるように混合され、また、添加材は、好ましくはクエン酸が配合され、界面活性剤が配合されてミセル化されており、かつ水ガラス中アルカリ分のエステル分解生成酸及びクエン酸による中和率が40%以上となるように、好ましくは50%以上となるように混合されている。
シリカ濃度が16(質量/容量)%以上となるように混合されていると、即時に、強い固結強度を発現するようになる。
また、このようにシリカ濃度が高くなる場合(水ガラスの増量)においては、添加材が、水ガラス中アルカリ分のエステル分解生成酸及びクエン酸による中和率が40%以上となるように混合されている(反応材たるエステルの増量、クエン酸の配合)必要がある。これは、注入による固結体が多量にアルカリ分を含有すると、自己溶解反応が起こり、固結体の耐久性が著しく劣るとの問題が生じるためである。そして、エステルを増量すると、従来の地盤改良注入材においては、エステルと水との分離が激しくなるとの問題が生じたが、本形態の地盤改良注入材においては、界面活性剤が配合されてミセル化されるので、かかる問題は生じない。
さらに、本形態の地盤改良注入材は、非水溶性のエステルを使用しつつ、前述分離の問題を解決するものであり、水溶性のエステルを使用するものではないため、瞬結(浸透性)の問題も生じない。
一方、本形態の地盤改良注入材は、添加材にクエン酸が配合されているため、注入当初の固結強度が強くなり、また、ゲルの収縮が低下する(耐久性の向上)。これは、エステル分解物生成物であるアルコールによりゲルの収縮が起こるが、クエン酸の添加によりエステルの添加量を抑えることができるためである。
なお、シリカ濃度は、30(質量/容量)%以下となるように、中和率は120%と以下となるように、するとよい。
本形態の地盤改良注入材において使用することができる水ガラスは、その種類が特に限定されない。例えば、JIS1408規定の珪酸ソーダ(XNa2O・YSiO2)相当品、すなわち、JIS1号、2号、3号水ガラスや、珪素を溶解してモル比(SiO2/Na2O)4程度の高モル比とした水ガラスなどを使用することができる。ただし、低モル比の水ガラスは、相対的にアルカリの割合が高いため、中和のための酸の添加量を増やす必要がある。したがって、クエン酸の添加によってエステルの必要量を減らす本形態は、水ガラスが低モル比である場合に、特に好ましいものとなる。
なお、例えば、JIS3号水ガラスは、SiO2(28〜30質量%)、Na2O(9〜10質量%)及び水(残部)からなるものであり、モル比(SiO2/Na2O)が2.8〜3.33とされる。
本形態の地盤改良注入材において使用することができる水ガラスは、ナトリウム以外のアルカリ金属、例えば、カリウムやリチウムなどを構成成分としていてもよい。つまり、本明細書において、水ガラスという言葉を用いているのは、アルカリ金属がナトリウムであることに限定する趣旨ではない。
本形態の地盤改良注入材において使用することができる非水溶性のエステルは、その種類が特に限定されない。例えば、リン酸エステル、スルホン酸エステル、カルボン酸エステル、硫酸エステル、等を例示することができる。
ただし、この中でも特にカルボン酸エステル使用するのが好ましい。カルボン酸エステルは、香料等の食品添加物として汎用されていることからわかるように、安全性に優れているためである。
非水溶性のカルボン酸エステルとしては、例えば、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等を、より具体的には、リンゴ酸ジエチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、安息香酸エチル、ジアセチン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ジアセトキシエタン、等を例示することができる。
ただし、この中でも特に多価アルコールカルボン酸エステルを使用するのが好まく、例えば、グリセリンと酢酸のエステルであるトリアセチン(3価、溶解度64g/L(20℃))等の水に対する溶解度10(質量/容量)%以下のモノカルボン酸多価アルコールエステルを使用するのが特に好ましい。モノカルボン酸アルコールエステルは、例えば、酢酸エステルで比較すると、酢酸エチル(1価)は引火点−4℃、トリアセチン(3価)は引火点138℃であり、多価アルコールエステルの方が、引火点が高く、施工時の安全性を保つことができる。なお、ジカルボン酸多価アルコールエステルは、立体障害により合成が困難である。また、トリアセチンは、加水分解すると、それぞれ酢酸を生成して水ガラスと中和反応する。そして、生成されるアルカリ金属酢酸塩及びグリセリンは、毒性が低く、環境への影響が小さいと考えられる。
本形態の地盤改良注入材において使用することができる界面活性剤は、その種類が特に限定されない。例えば、カルボン酸塩系、スルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、アルキル燐酸エステル塩等の燐酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アミン塩、アミン等のカチオン界面活性剤、カルボキシ、スルホネート又はサルフェートを含有する第2級又は第3級アミンの脂肪族誘導体、複素環式第2級又は第3級アミンの脂肪族誘導体等の両性イオン界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレート等の多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロシキ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット密ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のノニオン界面活性剤(非イオン系界面活性剤)を、例示することができる。
ただし、この中でも特にノニオン界面活性剤を使用するのが好ましい。水ガラスは、イオン系物質によって、不安定になりやすいためである。
本形態において使用する酸は、水ガラスに添加してもゲル化を起こしにくいものであるのが望ましい。ここで、クエン酸の酸解離指数は、pKa1=2.87、pKa2=4.35、pKa3=5.69であり、pKa1及びpKa2は低いものの、pKa3は高い。したがって、アルカリ過剰では、pH変化が起こりにくく、水ガラスへの添加時にゲル化しにくい。一方、例えば、乳酸は、pka1=3.66と低いため、ゲル化しやすい(後述実施例の試験例6参照。)。また、例えば、コハク酸は、pKa1=4.00、pKa2=5.24とクエン酸とほぼ同等であるが、溶解度が6.5%と低いため、水ガラスへの添加時に不安定になりやすい(後述実施例の試験例7参照。)したがって、クエン酸を配合するのが好ましい。
本形態の地盤改良注入材において、主材と添加材との混合方法としては、例えば、主材と添加材とを注入管の入口付近で衝突させて混合する1.5ショット方式、主材と添加材とを二重管等からなる注入管によって別々に搬送し、注入管の先端部で衝突させて混合する2ショット方式等を例示することができる。なお、この他に、主材と添加材とをあらかじめ混合し、この混合液を注入管で注入する1ショット方式もあるが、本注入材は、10分程度と、即時に固結する性質を有するため、1.5ショット方式、あるいは2ショット方式によるのが好ましい。
水ガラスからなる主材と、非水溶性のエステル、界面活性剤、水などからなる添加材と、を混合して得た混合液について、各成分の配合割合を変化させて、材令1日におけるサンドゲル一軸強度(KN/m2、豊浦砂を使用。)、ホモゲルタイム(分)及び材令7日におけるゲル収縮率(%)又は材令1日から水中養生し水没20日における一軸圧縮強度(KN/m2)を調べた。結果を、表1に示した。なお、水ガラスとしては、SiO2:28.0質量%、 Na2O:9.3質量%、比重1.4の3号水ガラス(試験例1〜16)又は、SiO2:24.0%、Na2O:6.3%、比重1.28の特殊水ガラス(試験例17〜20)を使用した。また、非水溶性のエステルとしては、比重1.156、平均分子量218のトリアセチンを使用した。さらに、界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを使用した。
Claims (1)
- 水ガラスが配合された主材と、エステル及び水が配合された添加材と、が混合された地盤改良注入材であって、
前記主材は、シリカ濃度が16(質量/容量)%以上となるように混合され、
前記添加材は、前記エステルとしてトリアセチンが配合され、クエン酸が配合され、界面活性剤が配合されてミセル化されており、かつ前記水ガラス中アルカリ分のエステル分解生成酸及び前記クエン酸による中和率が40%以上となるように混合されている、ことを特徴とする地盤改良注入材。
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