JP4987781B2 - 光触媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、触媒に関する。
近年、二酸化チタンに代表される光触媒材料が注目を集めている。「光触媒材料」とは、半導体的な物性を有し、その伝導電子帯と荷電子帯とのバンドギャップエネルギーより大きなエネルギーを有する光が照射されると励起状態となり、電子・正孔対を生成する物質のことである。
二酸化チタンの場合、387nm以下の波長の光が照射されると光励起され、その内部に電子・正孔対が生成される。すると、その電子正孔対により光触媒材料の表面及びその近傍に、水酸基ラジカルや、スーパーオキサイドイオンなどの活性酸素種が発生し、これらの活性酸素種の持つ酸化力が分解活性や親水化を引き起こす。そして、これらの作用を利用して自己洗浄作用や、脱臭作用、抗菌作用などを得ることができるので、光触媒材料を設けた各種の部材、製品群が提案されている。
また、代表的な光触媒材料である二酸化チタンの場合には主な励起光が紫外線であるため、紫外線の少ない室内では充分な性能が得られないという問題がある。そのため、いわゆる可視光応答型の光触媒材料が検討されており、代表的なものとしては酸化タングステンや硫化カドミウムなどがある。
このような、光触媒材料を各種の部材、製品群などに使用する際には、基体表面に光触媒材料を設ける必要がある。その場合、光触媒材料を含有した液などを予め製造し、基体表面に塗布するようにすれば便利である。
そのため、光触媒材料を含有した液やクリームが提案されている(特許文献1、2を参照)。しかしながら、これらの技術においては、光触媒材料の触媒活性度との関連において光触媒材料の分散性に関する考慮がなされていなかった。そのため、光触媒材料同士が凝集を起こしたり、分散が不均一となるおそれがあった。また、光触媒材料の触媒活性度が低下するおそれもあった。
特開平11−1620号公報 特開2002−212464号公報
本発明は、、光触媒材料において、所望の分散性を得るとともに、触媒活性度の低下を抑制することができる触媒を提供する。
また、本発明の態様によれば、基体と、前記基体の上に設けられ、触媒分散体を前記基体の表面に付着させ乾燥させることにより形成された光触媒と、を備え、前記光触媒分散体は、酸化タングステンと溶媒と、前記溶媒が乾燥したときに前記酸化タングステンを結合する結合剤と、を含み、前記溶媒の水素イオン指数は、pH2.1以上、pH5.7以下の範囲内にあり、前記酸化タングステンの含有量は、20wt%以下であり、前記結合剤は、無機物の粒子であり、前記結合剤の含有量は、前記酸化タングステンの含有量の10分の1以上であり、前記結合剤の粒径は、前記酸化タングステンの粒径よりも小さく、前記溶媒は、室温において蒸発すること、を特徴とする光触媒体が提供される。
本発明によれば、光触媒材料において、所望の分散性を得るとともに、触媒活性度の低下を抑制することができる触媒が提供される。
以下、本発明の実施の形態について例示をする。
なお、本実施の形態において、光触媒分散体は、溶媒としての流動性物質に少なくとも光触媒材料を分散させたものとしているが、その流動性物質としては、いわゆるゲル状の物質をも含むものとする。
一般的に、金属酸化物の粒子は、アルカリ水溶液中ではその表面が水酸基(−OH)に置き換わり、ゼータ電位の絶対値が大きくなって分散性が向上する。そのため、光触媒材料をアルカリ水溶液に分散させたものを光触媒分散体とすれば、光触媒材料同士の凝集を抑制することができ、また、分散の均一性を改善することができる。
しかしながら、アルカリ濃度を余り高くすると(即ち、水素イオン指数を余り高くすると)、金属酸化物が水溶液中に分子やイオンとなって溶解する場合がある(ここでは、金属酸化物が水酸基(−OH)とともに錯体となり水溶液中に分子となって溶解する場合もある)。特に、光触媒材料の場合においては、水素イオン指数を余り高くすると水酸基(−OH)の置き換わり量が多くなりすぎて、光触媒材料としての活性度が低下してしまうおそれもある。
そのため、溶媒としての流動性物質に光触媒材料を分散させて光触媒分散体とする場合には、分散性の観点から水素イオン指数の下限値を決め、触媒活性度の低下を抑制する観点から水素イオン指数の上限値を決めるようにすることが好ましい。すなわち、光触媒分散体としては、光触媒材料と、溶媒としての流動性物質とを含み、その溶媒としての流動性物質の水素イオン指数が、光触媒材料の凝集を阻害し、かつ、光触媒の触媒活性度の低下を抑制する範囲とすることが好ましい。
ここで、光触媒材料のうちで、アルカリ水溶液に溶けやすいものとしては酸化タングステンを例示することができる。そのため、以下、本実施の形態においては、一例に、光触媒材料として酸化タングステンを用いて、それを溶媒としての流動性物質に分散させる場合を説明する。
一般に、酸化タングステンと呼ばれているものは三酸化タングステンWOであり、空気中では極めて安定した金属酸化物である。また、酸化タングステンはバンドギャップが2.5eVであり480nmまでの可視光を利用することができるので、室内用途に使用する光触媒材料として有用である。また、酸化タングステンは工業材料として比較的入手しやすく、有害性の少ない比較的安価な材料でもある。
このような酸化タングステンを溶媒としての流動性物質に分散させて、光触媒分散体とするためには、まず、分散性の観点から水素イオン指数の下限値を決めることができる。 本発明者の得た知見によれば、例えば、酸化タングステンの添加量が2.5wt%の場合において、酸化タングステンを分散させた流動性物質の水素イオン指数をpH2.1未満とすれば分散性が悪くなることが判明した。この場合、酸化タングステンの粒子同士が凝集していることも確認された。
また、触媒活性の低下抑制の観点から水素イオン指数の上限値を決めることができる。 本発明者の得た知見によれば、例えば、酸化タングステンの添加量が2.5wt%の場合において、酸化タングステンを分散させた溶媒としての流動性物質の水素イオン指数をpH5.7を超えるものとすれば触媒活性度が著しく低下することが判明した。
図1、図2は、アセトアルデヒドガスの分解特性を例示するためのグラフ図である。 なお、図1、図2は、光触媒分散体を基体表面に付着させることで光触媒体を形成し、これに可視光を照射することでアセトアルデヒドガスを分解させた場合の特性を例示するためのグラフ図である。
また、図1は、溶媒としての流動性物質の水素イオン指数(pH)が下限値に近い場合における分解特性を表し、図2は、溶媒としての流動性物質の水素イオン指数(pH)の上限値に近い場合における分解特性を表している。
また、図1、図2の縦軸はアセトアルデヒドガス残存率(%)を表している。すなわち、酸化タングステンに可視光を照射することでアセトアルデヒドガスを分解させ、その残存率(%)を計測したものである。
また、図1、図2の横軸は時間を表し、T1において酸化タングステンに可視光を照射し、T2において可視光の照射を停止するようにしている。
図1に示すように、流動性物質の水素イオン指数がpH2.1未満となれば、アセトアルデヒドガス残存率が50%を上回り、光触媒の性能に悪影響を及ぼしていることが分かる。
また、図2に示すように、水素イオン指数がpH5.7を超えれば、アセトアルデヒドガス残存率が50%を上回り、光触媒の性能に悪影響を及ぼしていることが分かる。
そのため、光触媒材料として酸化タングステンを用いた場合には、水素イオン指数がpH2.1以上、pH5.7以下の光触媒分散体とすることが好ましい。
光触媒分散体の製造などにおいて、水素イオン指数の調整のために酸、アルカリを添加することができる。酸、アルカリについては特に限定はないが、安定性などを考慮して蒸発しにくいものを選択することが好ましい。例えば、酸としては硫酸、アルカリとしてはテトラメチルアンモニウムオキサイドなどを例示することができる。
また、光触媒分散体の水素イオン指数を維持するために緩衝液を添加することもできる。緩衝液としては、弱酸と、その塩を添加した水溶液を例示することができる。例えば、クエン酸緩衝液としてクエン酸とクエン酸ナトリウムを添加した水溶液、酢酸緩衝液として酢酸と酢酸ナトリウムを添加した水溶液、リン酸緩衝液としてリン酸とリン酸ナトリウムを添加した水溶液などを例示することができる。
また、本発明者の得た知見によれば、光触媒材料の含有量が20wt%を超えるものとすれば、光触媒材料の分散性が悪化するおそれがある。そのため、光触媒材料の含有量が20wt%以下であることが好ましい。
また、光触媒材料の分散性を向上させるために分散剤を添加することもできる。この場合、分散剤として有機物を用いるものとすれば、光触媒材料の作用で分解、劣化するおそれがあるため無機物とすることが好ましい。なお、分散剤を添加する場合であっても、少なくとも前述した水素イオン指数の上限値を超えないように水素イオン指数を調整する必要がある。
また、光触媒分散体を基体表面などに付着させる場合においては、乾燥後に形成される光触媒膜の硬度がある程度高くなることが好ましい。ここで、酸化タングステンの表面に水酸基(−OH)が多く存在すれば、乾燥時に酸素基(−O−)を介して酸化タングステン粒子同士を強固に結合させることができる。しかしながら、水酸基(−OH)を多くするために水素イオン指数を高くしすぎると、前述したように触媒活性が低下するおそれがある。
本発明者の得た知見によれば、所謂バインダーなどとして、表面に水酸基(−OH)を多く有する結合剤をさらに添加すれば、溶媒として用いる流動性物質の乾燥時に、その結合剤を介して酸化タングステン粒子同士を結合させることができるので、形成される光触媒膜の硬度を高めることができる。ここで、結合剤としては、光触媒の作用で分解、劣化しないものが好ましい。そのようなものとしては、無機物の粒子を溶液中に分散させたものなどを例示することができる。例えば、コロイダルシリカやコロイダルアルミナなどを例示することができる。
本発明者の得た知見によれば、所謂バインダーなどの結合剤に含まれる酸化シリコンやアルミナなどの無機物の粒子径が光触媒材料の粒子径より大きいと、形成される光触媒膜の硬度が低下する。そのため、結合剤の粒径が、光触媒材料の粒径と同等か、それよりも小さいことが好ましい。即ち、結合剤として用いられるバインダーの粒子径の大きさは、光触媒材料(例:酸化タングステン(WO)材料)の粒子径と同等以下であることが好ましいものといえる。
また、無機物の粒子径を小さくするほど形成される光触媒膜の透明性を高めることができる。そして、透明性を高めることができれば、光触媒膜の表面に設けられた光触媒材料だけでなく、光触媒膜の内部に設けられた光触媒材料にも光を照射することができるので、触媒効率を高めることができる。
また、本発明者の得た知見によれば、所謂バインダー等の結合剤の含有量は、光触媒材料の濃度の10分の1以上であることが好ましい。
また、結合剤の添加量や、その結合剤に含まれる無機物等の粒子径の大きさを変えることで、光触媒分散体の粘度を調整することができる。そのため、後述するように、光触媒体の態様などに合わせて、光触媒分散体の粘度を適宜決定することもできる。
なお、このような結合剤を添加する場合であっても、光触媒分散体の水素イオン指数がpH2.1以上、pH5.7以下となるように水素イオン指数を調整する必要がある。
また、溶媒としての流動性物質を室温において蒸発するもの(例えば、水など)とすることもできる。そのようにすれば、後述するように光触媒分散体を用いて基体の表面に光触媒膜を形成させる際の作業性を向上させることができる。
また、光触媒分散体を製造する場合には、溶媒としての流動性物質の水素イオン指数が、光触媒材料の凝集を阻害し、かつ、光触媒材料の触媒活性の低下を抑制する範囲となるように調整し、光触媒材料を混合すればよい。あるいは、溶媒としての流動性物質に光触媒材料を混合させた後に、水素イオン指数を調整してもよい。
この場合、水素イオン指数の範囲が、pH2.1以上、pH5.7以下となるように調整することができる。また、光触媒材料を結合する結合剤を添加することができ、その添加量が10wt%以下となるようにすることもできる。
次に、光触媒体について例示をする。
図3は、本発明の実施の形態にかかる光触媒体の断面構造を例示するための模式図である。
図3に示すように、光触媒体1は、基体100の表面に膜状に被覆された光触媒膜10を有する。基体100の材料としては、特に限定されることがなく、例えば、ガラスやセラミクスなどの無機材料、ステンレスなどの金属材料、あるいは高分子材料などの有機材料など、各種の材料を用いることができる。また、その形状やサイズも適宜決定することができる。なお、基体100として高分子材料などの有機材料を用いる場合には、光触媒の作用により基体100が分解、劣化するおそれがある。そのため、有機材料からなる基体100を用いる場合には、光触媒膜10と基体100との間に図示しない中間層を設けるようにすることが好ましい。中間層としては、例えば、シリコーン樹脂層、アクリル変性シリコーン樹脂層、有機−無機複合傾斜層などを例示することができる。
光触媒膜10は、前述した光触媒分散体を基体100の表面に付着させ、これを乾燥させることで形成することができる。付着方法は特に限定されるわけではなく、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを例示することができる。また、前述したように、光触媒分散体の粘度を適宜選択することで付着作業の作業性を向上させることができる。例えば、風などの外乱の影響を受けやすい場所や垂直な面などに対しては粘度の高い光触媒分散体を用いることが好ましい。そのようにすれば、液だれなどを抑制することができるので作業性を向上させることができる。一方、粘度の低い光触媒分散体を用いるものとすれば、光触媒膜10の厚みの均一性を向上させることができる。
また、付着させた光触媒分散体の乾燥方法に関しても特に限定されるわけではなく、例えば、自然乾燥(室温乾燥)、加熱による乾燥などとすることができる。乾燥温度に関しては、溶媒としての流動性物質を適宜選択したり、添加剤を添加することで調整することができる。この場合、溶媒としての流動性物質が室温において蒸発するもの(例えば、水など)とすれば、作業性を向上させることができる。
光触媒体1の用途に関しては特に限定されるものではなく、光触媒分散体を表面に付着させることができるものに広く適用することができる。
例えば、室内外の建材などの表面に光触媒分散体を付着、乾燥させることによりその表面に光触媒膜10を形成させるようなものを例示することができる。室内外の建材などの表面に光触媒膜10を形成させることができれば、太陽光や室内光を利用することで、大気中の有害物質や臭気物質を分解除去したり、防汚、除菌、防黴などの優れた機能を発揮させることができる。
この場合、光触媒材料として酸化タングステンを用いるものとすれば、紫外線の少ない室内などにおいても、光触媒材料の作用を発揮させることができる。そのため、室内などであってもアセトアルデヒドやホルムアルデヒドなどの有害物質を室内光を利用して分解除去することができるので、シックハウス症候群への対応としても有益である。
光触媒体1の適用例としては、例えば、壁紙、カーテン、カーペット、天井材、床材、窓ガラス、鏡、タイル、衛生用品、家具、照明器具、空調機器や脱臭器のフィルター部品、家電製品、包装材料、情報記録媒体などを例示することができる。
また、建築物の外面を構成する部材に適用させることもできる。例えば、建築物の壁面を構成する建材(例えば、石膏ボード、セメント硬化板、コンクリート板、木質繊維板など)にも適用させることができる。
また、自動車、電車、航空機、船舶などの輸送機器の内外壁面や内外装品、食品などの包装容器などにも適用させることができる。
以上、本発明の実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
アセトアルデヒドガスの分解特性を例示するためのグラフ図である。 アセトアルデヒドガスの分解特性を例示するためのグラフ図である。 本発明の実施の形態にかかる光触媒体の断面構造を例示するための模式図である。
符号の説明
1 光触媒体、10 光触媒膜、100 基体

Claims (1)

  1. 基体と、
    前記基体の上に設けられ、触媒分散体を前記基体の表面に付着させ乾燥させることにより形成された光触媒と、
    を備え
    前記光触媒分散体は、
    酸化タングステンと
    溶媒と、
    前記溶媒が乾燥したときに前記酸化タングステンを結合する結合剤と、
    を含み、
    前記溶媒の水素イオン指数は、pH2.1以上、pH5.7以下の範囲内にあり、
    前記酸化タングステンの含有量は、20wt%以下であり、
    前記結合剤は、無機物の粒子であり、
    前記結合剤の含有量は、前記酸化タングステンの含有量の10分の1以上であり、
    前記結合剤の粒径は、前記酸化タングステンの粒径よりも小さく、
    前記溶媒は、室温において蒸発すること、を特徴とする光触媒体。
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