以下、適宜図面が参照されつつ本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一実施形態にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲でこの実施形態が適宜変更されることは言うまでもない。
図1は、本発明の一実施形態である複合機10の外観斜視図である。
複合機10は、主に、下部に設けられたプリンタ部11と、上部に設けられたスキャナ部12と、正面上部に設けられた操作パネル40とを備えている。複合機10は、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びコピー機能などの各種の機能を有している。プリンタ機能は、プリンタ部11によって発揮される。このプリンタ部11は、インクジェット方式を採用している。複合機10は、被記録シート(典型的には記録用紙)の表面(第1面)及び裏面(第2面)の両面に画像を記録することができるようになっている。本実施形態に係る複合機10の特徴とするところは、記録用紙に生じたコックリング等の変形を簡単に矯正することができる点にあり、これにより、複合機10は、裏面への良好な画像記録を実現し、両面記録に対する高い信頼性を発揮している。なお、複合機10においてプリンタ機能以外の機能は任意であり、例えば、スキャン機能やコピー機能、ファクシミリ機能を有しないプリンタ機能のみを有するプリンタとして本発明の画像記録装置が実施されてもよい。
プリンタ部11の正面に開口13が形成されている。この開口13の内部に給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20は、記録用紙を積載することができる。この給紙トレイ20に積載された記録用紙は、プリンタ部11の内部へ給紙(給送)され、所望の画像が記録された後に排紙トレイ21へ排出されるようになっている。なお、給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口13からプリンタ部11内に挿抜可能に構成されている。
スキャナ部12は、いわゆるフラットベッドスキャナとして構成されている。スキャナ部12の上部に原稿カバー30が設けられている。原稿カバー30は、複合機10の天板として設けられており、この原稿カバー30の下に、図示しないプラテンガラスが配置されている。原稿は、プラテンガラス上に載置され、原稿カバー30に覆われた状態でスキャナ部12によって読み取られる。
操作パネル40は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するためのものであって、各種操作ボタンや液晶表示部を備えている。ユーザは、操作パネル40を操作することにより各種機能の設定や動作を実行することができる。例えば、ユーザーは、記録用紙の種類(普通紙又は葉書など)の設定や、記録用紙の表面のみに画像を記録する片面記録モードの設定、表裏両面に画像を記録する両面記録モードの設定、解像度(ドラフトモード又はフォトモード)の設定などを操作パネル40を介して指示することができる。
次に、図2を参照して、プリンタ部11の構成の概略について説明する。図2は、プリンタ部11の構造を示す縦断面図である。
プリンタ部11は、主に、上記給紙トレイ20と、給紙トレイ20から記録用紙を給紙する給送部15と、給送部15によって給紙される記録用紙が搬送方向第1向き(矢印83の向き)に搬送される搬送路23(本発明における「第1パス」の一例)と、搬送路23の途中に設けられた記録部24と、記録用紙が排出される排紙トレイ21と、搬送路23との境界に分岐口75を形成して記録用紙を後述のように案内する反転案内通路16(本発明における「第2パス」の一例)と、記録部24及び排紙トレイ21の間に配置された経路切換部41(本発明の「移動部材」の一例)とを備えている。
上記記録部24は、搬送路23を搬送される記録用紙にインク滴を噴出することにより当該記録用紙に画像を記録する。記録用紙の表面に画像が記録される場合は、記録用紙は第1端(すなわち表面記録時先端)から搬送路23に沿って搬送され、裏面に画像が記録される場合は、記録用紙は後述のようにスイッチバックされて第2端(すなわち表面記録時後端であって、裏面記録時先端)から搬送路23に沿って搬送される。上記経路切換部41は、表面に画像が記録された記録用紙がスイッチバックされる際に、当該記録用紙を搬送路23から反転案内通路16に案内する。上記反転案内通路16は、記録用紙を上記分岐口75から記録部24を迂回させて搬送路23の搬送向き第1向き後側(以下、単に「上流側」と称される。)の部位へ戻すようになっている。また、本実施形態では、経路切換部41は、記録用紙の搬送経路を切り換えるのみならず、記録用紙の後端を押圧して癖付ける役割を担っている。
給紙トレイ20は、給送部15の下側に配置されている。給紙トレイ20は、プリンタ部11の底側に位置し、上面が開放された矩形の箱状に構成されている。給紙トレイ20は底板113を有し、この底板113の上に記録用紙が載置される。複数の記録用紙が底板113上に積層された状態で載置される。給紙トレイ20に積載された記録用紙は、給送部15が備える給紙ローラ25によって搬送路23に送り出される。
排紙トレイ21は、給紙トレイ20の上側に配置されている。排紙トレイ21の先端(図2において左端)にフラップ17が取り付けられている。このフラップ17は、後述されるガイド部材34(本発明の「支持部材」の一例)及びガイド部材35と共に反転案内通路16を区画する。なお、ガイド部材34と、後述される経路切換部41の第1ローラ45及び第2ローラ46と、後述される分岐口75とによって本発明の「退避部」が実現されている。
記録用紙の表面のみに画像が記録される場合は、給紙ローラ25によって給紙された記録用紙は、第1端を先頭として搬送路23に沿って下方から上方へUターンするように案内されて記録部24へ送られる。記録部24に送られた記録用紙は、表面に画像が記録された後に排紙トレイ21に排出される。また、記録用紙の表裏両面に画像が記録される場合は、表面に画像が記録された記録用紙は、その表面が給紙ローラ25に当接するように、経路切換部41によって反転案内通路16へ第2端を先頭として案内される。この記録用紙は、給紙ローラ25によって再び搬送路23に戻され、第2端を先頭として記録部24へ送られる。そして、記録部24によって記録用紙の裏面に画像が記録された後に排紙トレイ21へ排出される。
記録部24は、搬送路23の途中に配置されており、キャリッジ38と記録ヘッド39とを備えている。記録ヘッド39は、ノズル面が搬送路23に露出した状態でキャリッジ38に搭載されている。キャリッジ38は、記録ヘッド39とともにガイドレールに沿って主走査方向(図2において紙面に垂直な方向)に往復移動するように構成されている。キャリッジ38の往復過程において、記録ヘッド39は、微小なインク滴をプラテン42(図3参照)上を搬送される記録用紙に噴出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。このインクは、図示されていないインクカートリッジから供給される。なお、記録部24によって画像が記録された記録用紙は、その幅方向が波打つ所謂コックリングが生じる場合があるが、後述するように、記録用紙の後端が経路切換部41によって癖付けられることによって、上記コックリングは軽減される。
次に、プリンタ部11の構成が説明される。図3は、プリンタ部11の部分拡大断面図である。なお、図3では、説明の便宜上、記録部24が省略されている。
給送部15は、給紙ローラ25と給紙アーム26と駆動伝達機構27とを備える。給紙ローラ25は、給紙トレイ20の上側に配置されている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に回転自在に軸支されている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙に接触して搬送路23へ送り出す。給紙ローラ25は、SFモータ(Sheet Feed Motor)74(図10参照)を駆動源として駆動伝達機構27を介して回転駆動される。この駆動伝達機構27は概ね直線状に並設された複数のギヤで構成されている。なお、給紙ローラ25にロータリーエンコーダ86(図10参照)が設けられている。このロータリーエンコーダ86は、給紙ローラ25と共に回転するエンコーダディスク(図示せず)のパターンを光学センサで検知する。この光学センサが検知した信号に基づいて、後述する制御部84が給紙ローラ25の回転を制御する。
給紙アーム26は、その基端部が基軸28に支持されており、基軸28を回動中心軸として回転可能となっている。このため、給紙アーム26は、上下に揺動し、給紙トレイ20に対して接離することができる。また、給紙アーム26は、自重又はバネ等の付勢力によって下側へ回動付勢されている。このため、給紙アーム26の先端に設けられた給紙ローラ25は、通常において給紙トレイ20の記録用紙の上面に接触している。なお、給紙アーム26は、給紙トレイ20がプリンタ部11に対して挿抜される際に上側へ退避するように構成されている。
給紙トレイ20から記録用紙が給紙される場合は、給紙アーム26が下側へ回動付勢され、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接された状態で、給紙ローラ25が回転される。給紙ローラ25が記録用紙に圧接されると、両者間に摩擦力が発生し、この摩擦力によって、最上位置の記録用紙が搬送路23側(図3の左側)へ送り出される。送り出された記録用紙が給紙トレイ20に設けられた分離傾斜板22に当接すると、この記録用紙は上方へ案内され、矢印14に沿って搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって一緒に送り出される場合があるが、この記録用紙は分離傾斜板22に当接することによって制止される。
搬送路23は、湾曲路23Aと、記録部24から排紙トレイ21に至る排紙路23Bとを備えている。湾曲路23Aは、給紙ローラ25と記録部24との間に形成されている。湾曲路23Aは、給紙ローラ25から分離傾斜板22を経て、その後上方へ向かってから正面側(図3の右側)へU字状に曲がって記録部24に達している。したがって、給紙ローラ25によって給紙トレイ20から給紙された記録用紙は、給紙ローラ25が当接していた面とは反対側の面が記録部24の記録ヘッド39と対向する。つまり、当該面が記録用紙の表面である。排紙路23Bは、記録部24から複合機10の正面側(図3において右側)へとほぼ直線状に延びて、排紙トレイ21へ通じている。
搬送路23は、記録部24等が配設されている箇所以外では、外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。例えば、複合機10の背面側の湾曲路23Aは、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19により構成されている。これらは本体フレーム53に固定されている。外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19は、所定間隔を隔てて対向配置されている。この場合、外側ガイド部材18が外側ガイド面を形成し、内側ガイド部材19が内側ガイド面を形成している。
搬送ローラ60及びピンチローラ61が記録部24よりも搬送路23の上流側に設けられている。これらは対をなしている。ピンチローラ61は、搬送ローラ60の下側に圧接するように配置されている。搬送ローラ60及びピンチローラ61は、湾曲路23Aに沿って搬送方向第1向きに搬送されてきた記録用紙を狭持してプラテン42上へさらに同向きに搬送する。
排紙ローラ62及び拍車63(図5及び図6参照)が記録部24よりも搬送路23における搬送方向第1向き前側(以下、単に「下流側」と称される。)に設けられている。排紙ローラ62及び拍車63は、表面に画像が記録された記録用紙を狭持してさらに同向きへ(排紙トレイ21側へ)搬送する。
搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71(図10参照)から回転駆動力が伝達されて回転される。搬送ローラ60及び排紙ローラ62の駆動は同期しており、画像記録時に間欠駆動される。これにより、記録用紙は所定の改行幅で送られながら画像記録がなされる。
なお、搬送ローラ60にロータリーエンコーダ87(図10参照)が設けられている。このロータリーエンコーダ87は、搬送ローラ60と共に回転するエンコーダディスク(図示せず)のパターンを光学センサで検知するようになっている。この光学センサが検知した信号に基づいて、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。なお、画像記録の前後においては、搬送ローラ60及び排紙ローラ62は連続駆動される。これにより、迅速な用紙搬送が実現されている。
レジセンサ102(図10参照)が湾曲路23Aに設けられている。このレジセンサ102は、搬送ローラ60よりも上流側に配置されている。このレジセンサ102は、回転子103及び光学センサ(例えばフォトインタラプタ)を備えている。回転子103は、外側ガイド18から湾曲路23Aに突出しており、湾曲路23Aを横切っている。回転子103は、外側ガイド18に形成された図示しないスリットを通じて湾曲路23A側に延びており、湾曲路23Aに出没可能となっている。本実施形態では、回転子103は、常時湾曲路23Aに突出するように弾性付勢されている。湾曲路23Aを搬送される記録用紙が回転子103に当接することにより、回転子103が外側ガイド18へ没入する。回転子103の出没により、上記光学センサがON又はOFFされる。制御部84は、上記光学センサから出力される信号などに基づいて、搬送路23における記録用紙の先端又は後端の位置を判定する。
反転案内通路16は、一端が搬送路23の排紙路23Bに接続されており、他端が湾曲路23Aに接続されている。反転案内通路16は、排紙路23Bの搬送方向第1向き前側部位(以下、単に「下流側部位」と称される。)36から分岐して、給紙トレイ20へ向けて斜め下方に延びている。反転案内通路16と排紙路23Bとの境界に上記分岐口75が形成されている。記録用紙は、排紙路23Bから分岐口75を経て反転案内通路16へ導かれる。この分岐口75は、ガイド部材34と後述される第1ローラ45との間に形成されている。分岐口75から分岐した反転案内通路16は、給紙トレイ20上を経て、排紙路23Bの搬送方向第1向き前側部位(以下、単に「上流側部位」と称される。)37まで延びている。このように形成された反転案内通路16は、表面に画像が記録された記録用紙を排紙路23Bから再び給紙トレイ20を経て搬送路23の上流側部位37に導く反転経路を構成している。
反転案内通路16は、第1ガイド面32と第2ガイド面33とによって区画されている。第1ガイド面32は、複合機10の本体フレーム53の内部に配置されたガイド部材34の表面により形成されている。ガイド部材34は、記録部24よりも下流側に設けられている。具体的には、ガイド部材34は、上記分岐口75に隣設されており、当該分岐口75の搬送方向第2向き側に配置されている。ガイド部材34は、反転案内通路16の第1ガイド面32だけでなく、排紙路23Bの下側ガイド面43(本発明における「搬送ガイド面」の一例)も形成している。記録部24を通過した記録用紙は、ガイド部材34の下側ガイド面43で支持されながら、一対の排紙ローラ62及び拍車63によって下流側へ排紙される。
第2ガイド面33は、本体フレーム53の内部に配置されたガイド部材35の表面と排紙トレイ21に軸支されたフラップ17の表面とにより形成されている。ガイド部材34とガイド部材35及びフラップ17とは、所定間隔を隔てて対向配置されている。第1ガイド面32及び第2ガイド面33は、搬送路23の下流側部位36から給紙ローラ25に向かって斜め下方に延びている。
なお、本実施形態では、反転案内通路16は、記録用紙を給紙トレイ20上に戻すように構成されているが、これに限定されるものではない。反転案内通路16は、要するに、搬送路23の下流側部位36と上流側部位37とを接続することができれば十分であり、したがって、記録用紙は、反転案内通路16以外の経路を通って下流側部位36から上流側部位37に戻されてもよい。
フラップ17は、支持軸115を有する。支持軸115は、排紙トレイ21の先端に配置されており、フラップ17は、この支持軸115に支持されている。したがって、フラップ17は、支持軸115を中心にして回動可能である。フラップ17は、突出部117を備えている。この突出部117は、給紙トレイ20の底板113へ向けて斜め下向きに延びている。突出部117は、給紙トレイ20の幅方向(図3において紙面に垂直な方向)の中央部に設けられている。この突出部117は、給紙トレイ20に記録用紙が存在しない状態において、底板113まで延びている。
フラップ17は、その自重によって矢印119が示す向き(給紙トレイ20の底板113側の向き)へ回動する。なお、フラップ17は、同向きに弾性的に付勢されていてもよい。その場合の付勢手段として、支持軸115に取り付けられたねじりコイルバネが採用される。フラップ17の先端は、給紙トレイ20の最上位の記録用紙に当接する。給紙トレイ20における記録用紙の積載量によって最上位の記録用紙の高さ位置が変化するが、本実施形態では、積載量にかかわらず、常にフラップ17の先端が記録用紙の上面に当接するように構成されている。したがって、給紙トレイ20に積載された記録用紙は、フラップ17から下向きの押圧力を常に受ける。なお、この押圧力が記録用紙に作用することによって、反転案内通路16を通過して再び給紙トレイ20に戻された記録用紙の第2端(裏面記録時先端)が仮にカール(反り返り)していたとしても、そのカールがフラップ17によって押さえつけられる。
次に、経路切換部41について説明される。図4は、経路切換部41及びその周辺の構成を詳細に示す拡大断面図である。同図(A)は、排出姿勢に移動された経路切換部41を示し、同図(B)は、反転姿勢(本発明の「第3位置」に相当)に移動された経路切換部41を示す。
経路切換部41は、記録部24よりも下流側に配置されている。具体的には、経路切換部41は、上記分岐口75よりも搬送方向第1向き側、すなわち反転案内通路16が排紙路23Bから分岐する部位に配置されている。経路切換部41は、第1ローラ45及び第2ローラ46(本発明における「一対のローラ」の一例)と、第2ローラ46に並設された補助ローラ47とを備えている。
第1ローラ45及び第2ローラ46は、排紙ローラ62及び拍車63から送られた記録用紙を狭持して上流側又は下流側へ搬送するものである。第1ローラ45が正転されることによって、記録部24を通過した記録用紙は、排紙路23Bに沿ってさらに下流側(排紙トレイ21側)へ搬送される。また、第1ローラ45が逆転することによって、記録用紙が排紙路23Bでスイッチバックされて反転案内通路16へ向けて搬送される。
第2ローラ46及び補助ローラ47は、フレーム48に取り付けられている。フレーム48は、複合機10の左右方向(図4において紙面に垂直な方向)に延びている。フレーム48の断面形状は、概ねL字状を呈している。これにより、フレーム48の所要の曲げ剛性が確保されている。フレーム48は、図4が示すように排紙路23Bが延びる方向に沿って延びている。本実施形態では、フレーム48は、後述される駆動機構44(図7参照)によって、第1ローラ45の中心軸52を中心に回動可能である。すなわち、経路切換部41は、図4(A)が示す排出姿勢(本発明の「第1位置」に相当)と、図4(B)が示す反転姿勢との間で回動可能である。図6が示すように、経路切換部41が第1位置にあるときは、記録用紙は排紙路23Bを通過することが許容される。図7が示すように、経路切換部41が第2位置に変位することによって、記録用紙は、後に詳述されるように排紙路23Bから外側に押されて反転案内通路16に案内される。
図4(A)が示すように経路切換部41が排出姿勢に変化すると、補助ローラ47が仰ぎ、排紙路23Bを通過する記録用紙から離反する。このため、排紙ローラ62及び拍車63によって搬送された記録用紙は、排紙路23Bを第1ローラ45及び第2ローラ46側へ通過することができる。また、図4(B)が示すように経路切換部41が反転姿勢に変化すると、補助ローラ47が分岐口75内に進入する。このため、記録用紙は、補助ローラ47によって押し付けられ、下側ガイド面43外側(同図では下側)に退く。したがって、記録用紙がスイッチバックされたとき、記録用紙の第2端は、反転案内通路16側に強制的に向けられる。なお、フレーム48の駆動機構44については後述される。
フレーム48は、8つのサブフレーム49を備えている(図7参照)。図7が示すように、各サブフレーム49は、複合機10の中心を基準として上記左右方向に対称に配置されている。各サブフレーム49は、記録用紙の搬送方向に延びている。各サブフレーム49は、それぞれ第2ローラ46及び補助ローラ47を軸支している。したがって、フレーム48は、それぞれ8つの第2ローラ46及び補助ローラ47を備えている。各第2ローラ46及び各補助ローラ47は、記録用紙の搬送方向と直交する方向、すなわち記録用紙の幅方向に均等に並設されている。
図6が示すように、第2ローラ46及び補助ローラ47は、各サブフレーム49(図7参照)に設けられた支持軸50、51に軸支され、その支持軸50、51の回りに回転自在に構成されている。支持軸50は、サブフレーム49の下流側の端部に設けられており、支持軸51は、サブフレーム49の上流側の端部に設けられている。したがって、補助ローラ47は、第2ローラ46よりも所定距離だけ上流側に配置されている。本実施形態では、第2ローラ46及び補助ローラ47は、拍車状に形成されている。第2ローラ46は、コイルバネを含む懸架機構に支持されており、このコイルバネによって常に第1ローラ45に弾性的に押し付けられている。
第1ローラ45は、所要の駆動伝達機構を介してLFモータ71(図10参照)と連結されている。第1ローラ45は、LFモータ71を駆動源として回転駆動される。第1ローラ45は、中心軸52を備えている。この中心軸52は、複合機10の本体フレーム53側に支持されている。
第1ローラ45の上方に第2ローラ46が配置されている。第2ローラ46は、第1ローラ45に当接しており、第1ローラ45に従動して回転する。第1ローラ45は、単一の細長円柱形状に形成されていてもよい。第1ローラ45が複数のローラから構成されていてもよい。その場合、第1ローラ45を構成する各ローラがそれぞれ各第2ローラ46と対向配置されているのが好ましい。第1ローラ45は、LFモータ71によって正転又は逆転される。前述のように、記録部24から排紙路23Bに沿って搬送された記録用紙は、第1ローラ45及び第2ローラ46によって挟持される。本実施形態では、第1ローラ45の外径は、排紙ローラ62の外径よりも若干大きく設定されている。すなわち、両者が同回転速度で駆動された場合は、第1ローラ45の周速度の方が排紙ローラ62の周速度よりも大きくなる。そのため、記録用紙が排紙ローラ62及び第1ローラ45の双方によって搬送されるときは、記録用紙は常に搬送方向第1向きに引っ張られるようになっている。
図7ないし図9を参照して、経路切換部41の駆動機構44が説明される。図7は、経路切換部41及び駆動機構44の斜視図である。図8は、図7におけるVIII−矢視図である。図9は、図7におけるIX−矢視図である。
駆動機構44は、経路切換部41を図4(A)に示す排出姿勢と図4(B)に示す反転姿勢との間で回動させるものである。図7が示すように、駆動機構44は、中心軸52に設けられた従動ギヤ54と、これと噛み合う駆動ギヤ55と、駆動ギヤ55と連結されたカム57とを備えている。
カム57は、回転駆動軸58の一端に連結されている。回転駆動軸58は、フレーム48の長手方向と平行に配置されている。回転駆動軸58は、LFモータ71を駆動源として駆動される。図9が示すように、カム57に案内溝59が設けられている。この案内溝59は、回転駆動軸58の回りに環状に形成されている。具体的には、案内溝59は、回転駆動軸58を中心とする小円弧部69及び大円弧部70と、小円弧部69の一端及び大円弧部70の一端を連結する連結溝72と、小円弧部69の他端及び大円弧部70の他端を連結する連結溝73とを備えている。
後に詳述されるが、記録用紙が所定の位置(後述の「第1姿勢」及び「第2姿勢」)で停止されている状態で、LFモータ71によってカム57が回転されて経路切換部41が回動される。本実施形態では、この経路切換部41の回動動作の際にLFモータ71の駆動力が排紙ローラ62や第1ローラ45に伝達しないように構成されている。排紙ローラ62及び第1ローラ45へのLFモータ71の駆動力の伝達が遮断されるために、例えば遊星ギヤなどが採用される。また、経路切換部41が排出姿勢(図4(A)参照)又は反転姿勢(図4(B)参照)に維持される必要がある場合は、記録用紙の搬送中にLFモータ71の駆動力がカム57に伝達しないように構成されている。カム57へのLFモータ71の駆動力の伝達が遮断されるために、例えば遊星ギヤなどが採用される。
図7及び図8が示すように、従動ギヤ54は、歯部64とフランジ部65とを備えている。従動ギア54は、中心軸52を中心に回転する。歯部64は、インボリュート歯車の一部として構成されている。歯部64も中心軸52に嵌め込まれ、中心軸52の回りに回転することができるようになっている。また、フランジ部65は、歯部64と一体的に形成されており、フレーム48と連結されている。したがって、歯部64が回転すると、中心軸52を中心としてフレーム48、サブフレーム49、第2ローラ46及び補助ローラ47が一体的に回動するようになっている。
駆動ギヤ55は、支持軸66に回動自在に支持されている。この支持軸66は、本体フレーム53に設けられている。駆動ギヤ55は、歯部67とアーム68とを備えている。駆動ギア55は、中心軸66を中心に回転する。歯部67は、インボリュート歯車の一部として構成されている。歯部67は、上記歯部64と噛み合っている。アーム68は、ピン56(図9参照)を備えており、このピン56は、アーム68に突設されている。ピン56は、案内溝59に嵌め込まれており、案内溝59に沿ってスライド自在となっている。そして、歯部67が駆動されることにより歯部64が回転し、その結果、中心軸52を中心としてフレーム48、サブフレーム49、第2ローラ46及び補助ローラ47が一体的に回動する。本実施形態では、ピン56が大円弧部70に位置するときに経路切換部41が排出姿勢(図4(A)参照)となり、ピン56が小円弧部69に位置するときに経路切換部41は反転姿勢(図4(B)参照)となる。
図9が示すように、カム57が回転すると、ピン56は案内溝59に沿って相対的に移動する。特に、ピン56が連結溝72、73に沿ってスライドするときは、ピン56はカム57の径方向に移動することになる。このため、図9においてカム57が時計回り(矢印82の方向)に回転したときは、ピン56は、大円弧部70、連結溝72及び小円弧部69に順に移動する。したがって、駆動ギヤ55は、図8において時計回りに回転する。その結果、従動ギヤ54は、図8において中心軸52を中心として反時計回りに回転する。前述のように、従動ギヤ54はフレーム48と連結されているから、従動ギヤ54が回転することにより、中心軸52を中心としてフレーム48、サブフレーム49、第1ローラ46及び補助ローラ47が一体的に回動する。なお、カム57が逆回転すれば、当然に、中心軸52を中心としてフレーム48、サブフレーム49、第1ローラ46及び補助ローラ47が一体的に逆方向へ回動する。
図5及び図6は、経路切換部41の動作を説明するための模式図である。図5及び図6では、ガイド部材34が省略されている。なお、本実施形態では、経路切換部41の姿勢変化は、LFモータ71(図10参照)の回転方向が切り換えられて、第1ローラ45が正転又は逆転のいずれかに切り換えられることにより達成される。
本実施形態において、LFモータ71により第1ローラ45が正転(図5及び図6において時計回りの回転)されると、経路切換部41はその姿勢を上記排出姿勢に維持する。これにより、記録部24を通過した記録用紙が排紙トレイ21側(図5の右側)へ送られる。表面にのみ記録が行われる場合は、第1ローラ45が継続して正転され、記録用紙は第1ローラ45及び第2ローラ46に挟持されて下流側へ搬送され、排紙トレイ21に排出される。
両面記録が行われる場合は、第1ローラ45及び第2ローラ46によって記録用紙が搬送され、所定の姿勢に達した状態で搬送が一時停止される。この所定の姿勢とは、記録用紙の第1端(表面記録時の先端)が上記分岐口75を覆った姿勢(本発明における「第1姿勢」に相当)と、記録用紙の第2端(表面記録時の後端)が下側ガイド面43の下流側のガイド端43A(図4参照)に支持された姿勢(本発明における「第2姿勢」に相当)である。
記録用紙が第1姿勢で停止している状態で経路切換部41が上記排出姿勢(図5参照)から後述される押圧姿勢(本発明の「第2位置」に相当。図12(B)参照)に姿勢変化し、再び上記排出姿勢に戻るように往復移動する。この往復移動の過程において、補助ローラ47が分岐口75に没入して下側ガイド面43よりも下側に移動し、復帰する。これにより、補助ローラ47は、排紙路23Bの記録用紙を下方へ押圧して、記録用紙の第1端側(表面記録時の先端側)を下側ガイド面43よりも下側へ退避させる。
その後、この記録用紙は、第2姿勢となるまで搬送され、当該第2姿勢で停止している状態で経路切換部41が再び上記排出姿勢から押圧姿勢に姿勢変化した後、上記排出姿勢に復帰する。前述と同様にこの往復移動の過程においても、補助ローラ47が分岐口75に没入して下側ガイド面43よりも下側に移動し、復帰する。これにより、補助ローラ47は、排紙路23Bの記録用紙を下方へ押圧して、記録用紙の第2端側(表面記録時の後端側)を下側ガイド面43よりも下側へ退避させる。
その後、この記録用紙は、第2端(表面記録時の後端)がガイド部材34のガイド端43Aを通過するまで搬送される。記録用紙の後端がガイド端43Aを通過すると、記録用紙が再び一時停止される。そして、経路切換部41が矢印29の向きに回動して、上記排出姿勢(図5参照)から上記反転姿勢(図6参照)に姿勢変化する。経路切換部41の姿勢が排出姿勢から反転姿勢に変化したことにより、記録用紙の第2端が下方へ曲げられて反転案内通路16側へ向けられる。つまり、裏面記録時の先端が反転案内通路16側に向く。この状態でLFモータ71により第1ローラ45が逆転されると、記録用紙が搬送方向第2向きに搬送される。これにより、記録用紙がスイッチバックされて、反転案内通路16を給紙ローラ25へ向けて搬送される。
なお、本実施形態では、第1ローラ45が正転のときは、SFモータ74(図10参照)の駆動力が給紙ローラ25に伝達し、第1ローラ45が逆転のときは、駆動力が給紙ローラ25に伝達しないようにSFモータ74が駆動制御されている。つまり、記録用紙が反転案内通路16を第1ローラ45等によって搬送されている間は、給紙ローラ25は回転しない。このような構成は、給紙ローラ25に駆動力を供給するSFモータ74を独立して制御することにより実現可能である。もちろん、給紙ローラ25及び搬送ローラ62等の各ローラを共通のモータで駆動させる駆動伝達系が採用された場合は、クラッチや遊星ギヤなどの駆動伝達切換機構によって上記動作が実現され得る。
次に、複合機10の制御部84の構成について説明される。図10は、複合機10の制御部84の構成を示すブロック図である。制御部84は、複合機10の全体動作を制御するものであるが、スキャナ部12及び記録部24の制御についての詳細な説明は省略される。なお、本実施形態では、制御部84によって本発明の搬送制御手段及び駆動制御手段が具現化される。
制御部84は、CPU88、ROM89、RAM90、EEPROM91を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス92を介して各部に接続されている。
ROM89は、複合機10の各種動作を制御するためのプログラム等を格納している。例えば、図11が示すフローチャートにしたがって各手順(ステップ)の処理を実行するための制御プログラムが格納されている。
RAM90は、CPU88が上記プログラムを実行する際に用いられる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。
EEPROM91は、電源オフ後も保持すべきデータや設定、フラグ等を格納している。
駆動回路94は、搬送ローラ60、排紙ローラ62、第1ローラ45などに接続されたLFモータ71や、給紙ローラ25に接続されたSFモータ74を駆動させる。駆動回路94は、LFモータ71及びSFモータ74を駆動するためのドライバをそれぞれ備えており、LFモータ71及びSFモータ74が独立して制御される。駆動回路94は、CPU88から出力された相励磁信号を受けて、LFモータ71及びSFモータ74を回転させるための電気信号を生成する。この電気信号を受けてLFモータ71及びSFモータ74が回転し、その回転力がギヤや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、搬送ローラ60、排紙ローラ62、第1ローラ45、給紙ローラ25へ伝達される。
本実施形態に係る複合機10では、LFモータ71は、プラテン42上に位置する記録用紙の搬送や記録済みの記録用紙を排紙トレイ21へ排出するための駆動源となっていると共に、所定の動力伝達機構を介して排紙ローラ62を駆動する駆動源にもなっている。また、LFモータ71は、駆動機構44の回転駆動軸58や図示しない伝達ギヤなどを介して、経路切換部41を排出姿勢(図4(A)参照)から押圧姿勢(図12(B)参照)を経て反転姿勢(図4(B)参照)までの間で回動させる駆動源にもなっている。
バス92には、搬送路23を搬送される記録用紙の第1端(表面記録時の先端)又は第2端(裏面記録時の先端)を検知するためのレジセンサ102、LFモータ71により駆動される搬送ローラ60等の回転量を検知するロータリーエンコーダ87、SFモータ74により駆動される給紙ローラ25の回転量を検知するためのロータリーエンコーダ86などが接続されている。制御部84は、レジセンサ102の出力信号及びロータリーエンコーダ86、87が検知するエンコーダ量に基づいて、搬送路23における記録用紙の第1端及び第2端の位置並びに記録用紙の搬送量を把握する。
次に、複合機10のプリンタ部11において両面画像記録を行う場合に制御部84によって実行される制御処理の手順の一例について説明する。図11は、複合機10の制御部84によって実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。同図は、両面画像記録の指示が複合機10に入力された場合の制御処理を示している。図12ないし図14は、両面記録時における記録用紙の状態を時系列順に示す断面図である。
両面画像記録の実行指示が入力されると、制御部84のCPU88は、SFモータ74を駆動制御して、給紙ローラ25を駆動させる。これにより、記録用紙が給紙トレイ20から搬送路23へ給送される(S1)。記録用紙が湾曲路23Aを搬送される過程において、記録用紙は、給紙ローラ25が当接した面とは反対の面(表面)が記録ヘッド39のノズル面と対向するように反転される。記録用紙は、搬送路23内を下流側へ搬送される。
記録用紙が搬送ローラ60及びピンチローラ61に到達すると、搬送ローラ60及びピンチローラ61によって記録用紙が挟持されて、搬送ローラ60及びピンチローラ61によってプラテン42上へ搬送される。そして、記録ヘッド39が作動することにより、記録用紙の表面への画像記録が開始される(S2)。
表面への画像記録は、搬送ローラ60及びピンチローラ61によって記録用紙が間欠的に搬送され、かかる間欠搬送過程において記録用紙が一時停止しているときにキャリッジ38がスライドされつつ記録ヘッド39からインク滴が吐出される。これにより、記録用紙の表面に画像が記録される。記録用紙が排紙ローラ62及び拍車63に到達すると、排紙ローラ62及び拍車63によっても搬送される。つまり、記録用紙が搬送ローラ60及び排紙ローラ62によってさらに下流側へ搬送される。排紙ローラ62及び拍車63によって搬送された記録用紙は、ガイド部材34の下側ガイド面43に支持されながら排紙路23Bを下流側へ搬送される。
図12(A)が示すように、記録用紙93が上記第1姿勢に到達すると、記録用紙93の搬送が停止される。この停止位置は、「第1停止位置」と定義される。つまり、記録用紙93の第1端95が上記分岐口75を覆った状態となるまで第1ローラ45及び第2ローラ46によって記録用紙が搬送されて、当該第1停止位置で第1ローラ45及び第2ローラ46の駆動が停止される(図11:S3)。なお、記録用紙が第1停止位置に到達したがどうかは、操作パネル40や外部接続されたパーソナルコンピュータなどから入力された記録用紙のサイズ情報や、レジセンサ102やロータリーエンコーダ86、87から取得された情報や、給紙トレイ20から第1停止位置までの経路長などに基づいて判断される。
続いて、記録用紙93が第1停止位置で停止されている状態で、経路切換部41が、排出姿勢(図12(A)参照)から押圧姿勢(図12(B)参照)を経て、再び排出姿勢に戻るように連続的に往復移動される(図11:S4)。ここで、押圧姿勢は、図12(B)が示すように、補助ローラ47のローラ面の一部が分岐口75から下方へ没入して、下側ガイド面43よりも外側(下側)に配置される姿勢である。ただし、この押圧姿勢は、排出姿勢と反転姿勢(図4(B)及び図13参照)との間で任意に設定される姿勢である。本実施形態では、押圧姿勢は、排出姿勢と反転姿勢との間の中央位置に設定されている。
上記押圧姿勢において、補助ローラ47は、記録用紙93を下側ガイド面43よりも下側へ押し付ける。これにより、記録用紙93の第1端95部分は、分岐口75の内部へ凸となるように湾曲状に癖付けられる。しかも、この癖付けは、記録用紙93の幅方向(図12の紙面に垂直な方向)にわたってなされる。なお、経路切換部41の上記往復移動は、例えば、LFモータ71が一方向へ回転駆動されることにより駆動機構44のピン56が大円弧部70から連結溝72(又は連結溝73)の中間付近まで移動され、その後、実質的な停止時間が設けられることなくLFモータ71が逆方向へ回転駆動されて再びピン56が大円弧部70に戻されることによって実現される。
記録用紙93が補助ローラ47によって下方へ押し付けられて下方へ屈曲されると、記録用紙93に元の形状に戻ろうとする上方への反発力が作用する。この反発力は、記録用紙93の剛性(コシの強さ)に比例しており、剛性が大きいほど大きく、小さいほど小さい。前述のように、本実施形態では、経路切換部41が押圧姿勢で実質的に停止しない。そのため、記録用紙93の癖付け度合いは、記録用紙93の剛性の影響を強く受ける。
例えばトレーシングペーパーなどのように比較的薄くて剛性の小さい記録用紙が上記往復移動過程において補助ローラ47によって押圧された場合は、上記反発力が小さいために記録用紙は大きく癖付けられる。薄い記録用紙は、画像が記録されると、大きなコックリングが生じる傾向にあるため、このような記録用紙が大きく癖付けられることにより、当該記録用紙に生じたコックリングを好適に解消することができる。
一方、葉書や光沢紙などのように比較的厚くて剛性の大きい記録用紙が上記往復移動過程において補助ローラ47によって押圧されても、上記反発力が大きいため記録用紙は少ししか癖付けられない。厚い記録用紙は、画像が記録されても微小なコックリングしか生じない。そのため、厚くて剛性の大きい記録用紙に小さな癖付けがなされることにより、過度な癖付けが防止されて、当該記録用紙に生じたコックリングを好適に解消することができる。
つまり、本実施形態のプリンタ部11では、剛性の異なる様々な記録用紙に対して、表面に画像が記録されたことでコックリングが生じた記録用紙93を、その剛性にかかわらず、略均一に矯正することができる。ただし、このようなコックリングを矯正する動作は、表面に吐出されたインクの吐出量に応じて行われてもよい。すなわち、インクの吐出量が一定以上である場合にのみ経路切換部41の往復移動が行われるように構成されていてもよい。なお、インクの吐出量は、記録ヘッドによる吐出回数から予測可能である。
経路切換部41が元の姿勢、すなわち排出姿勢に復帰すると、続いて、CPU88によってLFモータ71が再び回転駆動される。これにより、記録用紙93が再び搬送(再搬送)される(図11:S6)。そして、記録用紙の第2端94がガイド部材34のガイド端43Aを通過して、分岐口75に到達した姿勢(本発明における「第2姿勢」に相当)となるまで搬送され、停止される(図11:S6)。この停止位置は、「第2停止位置」と定義される。
続いて、図13が示すように、経路切換部41が駆動され、排出姿勢にある経路切換部41が反転姿勢へ変化される(図11:S7)。経路切換部41が排出姿勢から反転姿勢へ変化するときは、第1ローラ45の中心軸52を中心として、補助ローラ47がガイド部材35のガイド面33に当接するまで当該経路切換部41が回動される。これにより、記録用紙93の第2端94が補助ローラ47によって反転案内通路16側に押し付けられる。そして、記録用紙93の第2端94が、図13が示すように、反転案内通路16に進入する。
さらに、第1ローラ45が逆転駆動される(図11:S8)。これにより、記録用紙93がスイッチバックされて、反転案内通路16を給紙ローラ25へ向けて搬送される。記録用紙93が給紙ローラ25に到達すると、給紙ローラ25が駆動され、記録用紙93が再び記録部24へ向けて搬送される(図11:S9)。記録用紙93は、搬送路23に進入して湾曲路23Aにて表裏反転され、裏面が記録ヘッド39のノズル面と対向する。その後、記録ヘッド39によって裏面に画像が記録される(図11:S10)。
記録用紙93の第2端94(裏面記録時の先端)が経路切換部41に進入する前に、経路切換部41は反転姿勢から再び排出姿勢に復帰される(図11:S11)。その後、記録用紙93の裏面への画像記録が終了し、両面に画像が記録された記録用紙93が第1ローラ45及び第2ローラ46によって下流側へ搬送される。このとき、第1ローラ45及び第2ローラ46は正転し、記録用紙93は排紙トレイ21へ排出される(図11:S12)。
以上のように、本実施形態では、経路切換部41が排出姿勢(図12(A)参照)から押圧姿勢(図12(B)参照)へ移動して再び排出姿勢に戻るので、記録用紙93は、生じたコックリングの程度に応じた癖付けがなされる。しかも、経路切換部41は、実質的に一時停止することなく連続して姿勢変化を行うので、記録用紙93の一旦停止時間もきわめて短くなる。したがって、いわゆるバンディングの問題も発生しない。その結果、裏面への画像記録時に、裏面記録時の先端部分へも良好な画像記録が可能となる。
また、本実施形態では、経路切換部41の押圧姿勢として、排出姿勢と反転姿勢との中間姿勢が採用されているが、押圧姿勢はこの姿勢に限定されない。上記押圧姿勢の位置は、補助ローラ47が記録用紙93を下方へ押し付けたときに記録用紙93を所期の量だけ湾曲変形させることが可能な位置に設定されていればよい。したがって、補助ローラ47が記録用紙93を屈曲変形させ得る姿勢であれば、どのような姿勢であっても採用され得る。例えば、押圧姿勢が反転姿勢と同姿勢であってもよい。
本実施形態では、本発明における「移動部材」が経路切換部41によって実現され、本発明における「退避部」がガイド部材34、第1ローラ45及び第2ローラ46及び分岐口75によって実現されている。ただし、「退避部」はかかる構成に限定されない。例えば、「退避部」の実施の変形例として図14が示す機構が採用され得る。この変形例では、排紙路23Bの上側ガイド131に回動部材130(本発明における「移動部材」の一例)が設けられており、排紙路23Bの下側ガイド132に凹陥部137(本発明における「退避部」の一例)が設けられている。回動部材130は、支持軸134を中心に回転可能に支持されており、支持軸134から排紙路23Bへ向けて延びている。回動部材130の先端は、記録用紙93に当接する当接部135である。支持軸134は、モータなどの駆動源に連結されており、制御部84によって回転制御される。回動部材130は、記録用紙93の第1端95が凹陥部137の下流側の端部137A付近に到達するまで、図14(A)が示す排出姿勢を保持している。記録用紙93の第1端95が凹陥部137を覆うと、(図14(A)参照)、記録用紙93が停止される。その後、回動部材130が矢印138の方向へ回動して押圧姿勢(図14(B)参照)となる。これにより、当接部135が記録用紙93に当接して記録用紙93を屈曲させる。そして、回動部材130は、押圧姿勢から実質的に停止することなく直ちに元の排出姿勢に戻る。かかる変形例においても、記録用紙93の剛性にかかわらず、記録用紙93に生じるコックリングの程度に応じた癖付けがなされる。
なお、この変形例において、凹陥部137が上側ガイド131に設けられ、回動部材130が下側ガイド132に設けられた構成が採用され得る。さらに、回動部材130に代えて、排紙路23Bに交差する方向へ直線的に移動可能に支持され、上記排出姿勢と上記押圧姿勢との間を連続的に往復移動するように構成された移動部材が採用されてもよい。
上記実施形態及びその変形例では、記録用紙93の第1端95(表面記録時の先端)部分の変形が矯正される。ところで、インクが塗布されることによるコックリング等の変形は、記録用紙93の第2端94(表面記録時の後端)部分にも生じ得る。この第2端94は、スイッチバックされた記録用紙93の先端(裏面記録時の先端)となるから、当該第2端94部分の変形も矯正されることが望ましい。
図15は、スイッチバックされた記録用紙93の搬送状態を時系列順に示す模式図である。同図は、記録用紙93の第2端94部分の変形が矯正される手順を示している。
前述のように第1ローラ45及び第2ローラ46によってスイッチバックされた記録用紙93は、同図(A)が示すように、第2端94(表面記録時の後端であり、裏面記録時の先端)を先頭として反転案内通路16に送られ、給送部15を経て搬送路23に案内される。この記録用紙93は、さらに搬送方向第1向きに送られ、第2端94が搬送ローラ60に達する。この位置で記録用紙93がレジストされる。
搬送ローラ60が駆動されることにより、記録用紙93は搬送ローラ60及びピンチローラ61により挟持され、搬送方向第1向きに送られる。一般に搬送ローラ60及びピンチローラ61からなるローラ対は、プラテン42に対して所定の搬送角度となるように配置されている。すなわち、搬送ローラ60及びピンチローラ61によって搬送される記録用紙93は、同図(B)が示すように、プラテン42上に押しつけられるような角度で搬送される。
記録用紙93の第2端94がプラテン42に当接した後、記録用紙93は所定距離だけさらに搬送され、その状態で搬送が所定時間だけ停止される。これにより、同図(B)が示すように、記録用紙93の第2端94部分がプラテン42側に凸となるように湾曲され、癖付けされる。したがって、仮に記録用紙93の第2端94にコックリング等の変形が発生していたとしても、この変形が矯正される。
その後、再び搬送ローラ60が駆動されることにより、記録用紙93は搬送方向第1向きに送られ、画像記録がなさされる。裏面への画像記録がなされた記録用紙93は、前述と同様の要領で排紙トレイ21へ排出される。
このように、記録用紙93の第1端95の変形のみならず第2端94の変形も矯正されるので、両面記録の精度、特に裏面への綺麗な画像記録が可能となる。