本発明の一実施形態に係るブレーキ装置を、図1〜15を用いて説明する。図1は、ドア開動作規制装置20が組み込まれた自動車10を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態では、ドア開動作規制装置20は、自動車10の各ドア(運転席、助手席、後部座席などのドア)に設けられており、当該ドアの開動作を規制する。本実施形態では、助手席の近傍に設けられるドア11に設けられる開動作規制装置20を、代表して説明する。
ドア11は、自動車10の車体13に形成された昇降用開口14に開閉可能に設けられている。具体的には、ドアは、図1中点線で示すヒンジ装置15によって車体外側に回動しながら開く。
ドア開動作規制装置20は、ロック装置30と、ロータリーエンコーダ100と、ECU22と、メインスイッチ110と、車外側スイッチ26と、車室側スイッチ28とを備えている。なお、ロック装置30は、ドア11の内部に収容されており、それゆえ、図中点線で示されている。
図2は、ドア11が分解された状態を一部切り欠いて示す斜視図である。ドア11内には、ドアチェッカ16が収容されている。図2は、ドア11において、ドアチェッカ16とロック装置30との近傍を断面して示している。
ドア11は、インナパネル11aとアウタパネル11bとを備えており、インナパネル11aとアウタパネル11bとが互いに車幅方向に重なることによって、構成されている。
ここで、ドアチェッカ16について説明する。図2に示すように、ドアチェッカ16は、インナパネル11aとアウタパネル11bとの間に配置されている。なお、インナパネル11aの先端11cは、車幅方向外側に向かって延びており、略かぎ状になっている。
ドアチェッカ16は、インナパネル11aに固定される本体部17と、本体部17に摺動可能に保持されるアーム部材18と、図示しないヒンジ部とを備えている。
本体部17は、インナパネル11aの先端11c(車幅方向に延びる部位)に設置されている。本体部17内には、後述されるアーム部材18を、当該アーム部材18が摺動可能であるように挟み込む摺動部材が設けられている。
アーム部材18は、本体部17内を前後方向(ドア11が全閉している状態での車体前後方向)に貫通するとともに、上記された摺動部材に挟持されている。アーム部材18は、摺動部材に対して摺動可能である。ドア11の開動作に追随して、アーム部材18は、本体部17に対して相対的に変位する。言い換えると、アーム部材18は、ドア11の開動作に追随して、インナパネル11aに対して相対的に変位する。
図示しないヒンジ部は、車体13に形成される昇降用開口14の縁に設置されている。ヒンジ部には、アーム部材18の一端が回動可能に固定されている。このため、アーム部材18は、ドア11が開いた状態であっても、一端部がヒンジ部で回動することによって、ドア11の姿勢の変位に追随することができる。
アーム部材18の他端部には、ストッパ部19が設けられている。ストッパ部19は、本体部17に形成される開口17a(アーム部材18が通る開口)よりも大きい。ストッパ部19が本体部17の開口17aの縁に当接することによって、それ以上、ドア11が開かなくなる。つまり、ストッパ部19が開口17aの縁に当接した状態がドア11の全開の位置となる。
また、アーム部材18には、凹部18aが形成されている。凹部18aは、アーム部材18の表面が凹むことによって形成されている。アーム部材18が、ドア11の開閉にともなって摺動部材に対して摺動すると、当該摺動部材が凹部18a内に嵌る。それゆえ、凹部18aが摺動部材を通過する際の摺動抵抗は、大きくなる。この結果、凹部18a内に摺動部材が嵌っている状態では、ドア11を当該位置に保持しようとする保持力が発生する。このようにドア11が開いた状態で保持される位置を中間保持位置とする。
ロック装置30の説明に戻る。ロック装置30は、例えばインナパネル11aにおいてアウタパネル11bに対向する面に固定されている。具体的には、ドアチェッカ16の本体部17よりも車体後方に配置されている。ロック装置30は、第1のカバー部材31と、第2のカバー部材32と、これら第1,2のカバー部材31,32間に収容される収容部33とを備えている。ロック装置30は、本発明で言うロック機構の一例である。
図2に示すように、第1のカバー部材31は、ロック装置30においてアウタパネル11b側に向いている。第2のカバー部材32は、ロック装置30においてインナパネル11a側に向いている。
図3は、ロック装置30を、第2のカバー部材32が取り外された状態においてインナパネル11a側から見た状態を示している。なお、図3中からは、後述される第3のギヤ45は省略されている。図4は、図3に示されたロック装置30から第1,2のカバー部材31,32が取り外された状態を、インナパネル11a側から見た状態を示している。なお、図中後述される第3のギヤ45は、省略されている。図5は、図2中に示すF5−F5線に沿って示すロック装置30の断面図である。
図3〜5に示すように、ロック装置30は、第1,2のカバー部材31,32間に収容される収容部33として、フレーム41と、ワイヤ34と、プーリ35と、回転支持軸36と、スプリングクラッチ装置37と、伝達機構38と、解除用アーム39と、アクチュエータ40とを備えている。フレーム41は、第1,2のカバー部材31,32間において、上記されたプーリ35、スプリングクラッチ装置37、伝達機構38、アクチュエータ40を保持している。
図2に示すように、ワイヤ34の一端部34aは、ドアチェッカ16のストッパ部19に固定されている。ストッパ部19は、ドア11の開閉動作にともなって、ドア11に対する位置が変位する部位の一例である。
一端部34aは、ドア11が開かれるにしたがって、引っ張られる。ワイヤ34の他端部は、プーリ35に固定されている。ワイヤ34は、プーリ35に巻き付けられている。このため、ドア11が開かれるにしたがい、プーリ35は、ワイヤ34を繰り出す。
図5に示すように、回転支持軸36は、第1,2のカバー部材31,32間に渡って延びており、その両端が第1,2のカバー部材31,32に回転しないように固定されている。プーリ35は、回転支持軸36に回動自由に支持されている。ドア11の開閉に伴ってワイヤ34が引き出される方向に付勢されると、プーリ35が回転することによって、ワイヤ34が繰り出される。
プーリ35は、図示しないばね部材などによって、ワイヤ34を巻き取る方向に付勢されている。図1に示すように、ロック装置30の近傍には、プーリ35の回転を検出するロータリーエンコーダ100が設置されている。ロータリーエンコーダ100は、例えばインクリメンタル方式が採用されている。
ロータリーエンコーダ100は、プーリ35が所定回転角度回転するごとに、互いにタイミングのずれた2相(A相とB相)のパルスを検出する。このため、ロータリーエンコーダ100がパルスを検出することによって、プーリ35の回転角が検出される。
プーリの35の回転が検出されることによって、ワイヤ34の引き出し量が検出される。ワイヤ34の引き出し量よりドア11の開度が検出される。
また、ドア11の開動作が停止すると、パルスが検出されなくなる。言い換えると、ロータリーエンコーダ100によるパルスの検出の有無によって、ドア11が停止しているか、もしくは開動作されているかを検出することができる。
スプリングクラッチ装置37は、回転支持軸36においてプーリ35と反対側に設けられている。なお、スプリングクラッチ装置37の具体的な構造は、後で詳細に説明される。
図5中に矢印Aで示すように、伝達機構38は、プーリ35の回転をスプリングクラッチ装置37に伝達する。伝達機構38は、第1のギヤ42と、回転軸43と、第2のギヤ44と、第3のギヤ45とを備えている。
第1のギヤ42は、回転支持軸36と同軸上に回転自由に支持されている。具体的には、後で詳細に説明されるスプリングクラッチ装置37に回転自由に支持される。第1のギヤ42は、回転支持軸36上においてプーリ35よりも内側に配置されている。プーリ35の回転は、第1のギヤ42に伝達される。
プーリ35から第1のギヤ42への回転の伝達について具体的に説明する。図16は、プーリ35と第1のギヤ42とを、第1のギヤ42側から見た斜視図である。図17は、プーリ35と第1のギヤ42とを、プーリ35側からみた斜視図である。なお、図16,17は、ともに、プーリ35と第1のギヤ42とが第1の回転軸36上に組み付けられた状態を示している。
図16,17に示すように、プーリ35は、プーリ本体200と、回転伝達部201とを有している。プーリ本体200は、略円板状であって、周面にワイヤ34を収容する溝が形成されている。回転伝達部201は、プーリ本体200の第1のギヤ42と対向する側面(第1の回転軸36に沿って第1のギヤ42側の面)に形成されている。回転伝達部201は、プーリ本体200の側面の一部に形成されており、第1のギヤ42側に向かって突出している。なお、回転伝達部201の形状については、後で詳細に説明する。
第1のギヤ42は、回転伝達部201の内側に配置される内側部分202と、回転伝達部201と当接可能な当接部203とを有している。内側部分202は、第1の回転軸36上において回転伝達部201の内側に位置している。このため、内側部分202は、側面形状が円状であり、回転伝達部201は、内側に内側部分202を回動自由に収容可能な円状の凹部204が形成されている。このため、プーリ35が回転する際に、内側部分202と回転伝達部201とが互いに干渉することはない。
当接部203は、内側部分202において、回転伝達部201と重ならない部位より周方向外側に突出するように形成されている。当接部203は、扇状である。図16,17中には、当接部203と回転伝達部201との間には、第1の回転軸36の周方向にそって、隙間206が形成されている。この隙間206は、常に形成されているものではない。プーリ35の回転にともなって回転伝達部201が移動することによって、隙間206はなくなる。
なお、第1のギヤ42のギヤ部(後述される第2のギヤ44とかみ合う部分)は、当接部203の周面に形成されている。図中、ギヤ部はその一部が示されており、他の部分は、2点鎖線で示されている。
上記の構造によって、図16に示すようにワイヤ34が引っ張られると、プーリ35が矢印の方向に回転する。プーリ35が回転すると、回転伝達部201が隙間206内を当接部203に向かって移動する。そして、さらにプーリ35が回転されると、回転伝達部201が当接部203に当接する。回転伝達部201が当接部203に当接することによって、プーリ35の回転が第1のギヤ42に伝達されるようになる。
回転軸43は、回転支持軸36の近傍に配置されている。回転軸43は、第1,2のカバー部材31,32間に渡って延びており、つまり回転支持軸36と平行に延びている。回転軸43の両端は、第1,2のカバー部材31,32に回動自由に支持されている。
第2のギヤ44は、回転軸43に固定されている。第2のギヤ44は、第1のギヤ42と噛み合っており、それゆえ、第1のギヤ42の回転が第2のギヤ44に伝達される。第2のギヤ44は、回転軸43に固定されているので、第1のギヤ42の回転が回転軸43に伝達される。
第3のギヤ45は、回転軸43に固定されている。第3のギヤ45は、回転軸43において第2のギヤ44と反対側に配置されており、スプリングクラッチ装置37に噛み合っている。それゆえ、回転軸43の回転に伴って第3のギヤ45が回転し、当該第3のギヤ45の回転がスプリングクラッチ装置37に伝達されるようになる。
図6は、スプリングクラッチ装置37を示す斜視図である。図5,6に示すように、スプリングクラッチ装置37は、回転支持軸36周りに支持されている。なお、図6に示すように、回転支持軸36においてスプリングクラッチ装置37から出ている部分には、軸保護部材70が取り付けられている。上記された、プーリ35は、軸保護部材70に対して回転可能に支持されている。それゆえ、プーリ35は、回転支持軸36回りに配置されることになる。
図7は、スプリングクラッチ装置37が分解された状態を示す斜視図である。図7に示すように、スプリングクラッチ装置37は、固定部46と、回転子47と、クラッチスプリング48とを備えている。
図8は、固定部46が分解された状態を示す斜視図である。図8に示すように、固定部46は、固定部ハウジング49と、固定部ハウジング49内に収容される解除スプリング50と、解除スプリング50の一端を回転支持軸36に固定する固定部ブラケット52とを備えている。
固定部ハウジング49は、一端が閉塞しかつ他端が開口する円筒状である。固定部ハウジング49は、回転支持軸36と同軸上に配置され、かつ回転支持軸36に対して回転自由に支持されている。
解除スプリング50は、渦巻きばねである。解除スプリング50は、回転支持軸36と同軸上に配置されている。図7に示すように、解除スプリング50は、固定部ハウジング49内に収容されている。図8に示すように、固定部ハウジング49の内面には、第1の固定用突起53が形成されている。第1の固定用突起53は、内側に向かって突出している。解除スプリング50において外側に位置する一端部54には、固定部ハウジング49内に収容された際に第1の固定用突起53が嵌る嵌合切欠55が形成されている。
固定部ブラケット52は、筒状の部材であって、内側に回転支持軸36が嵌合することによって、回転支持軸36に回転しないように固定されている。図7に示すように、固定部ブラケット52は、固定部ハウジング49内に収容された際には、解除スプリング50の内側に規定される空間S1(図8に示す)内に挿入される。
固定部ブラケット52の外側端の縁には、周方向の外側に延びるフランジ部52aが形成されている。フランジ部52aは、解除スプリング50に当接することによって、解除スプリング50が固定部ハウジング49外に出ないようにするストッパの機能を有している。
図8に示すように、固定部ブラケット52には、周方向外側に突出する第2の固定用突起56が形成されている。解除スプリング50において内側に位置する他端部57には、第2の固定用突起56が嵌る第2の嵌合切欠58が形成されている。固定部ブラケット52が固定部ハウジング49内(解除スプリング50内)に収容された際には、第2の固定用突起56が第2の嵌合切欠58に嵌合する。
このことによって、解除スプリング50の一端部54は、回転支持軸36に回動自由な固定部46に固定され、他端部57が回転支持軸36に固定されるようになる。この結果、固定部46の姿勢は、解除スプリング50の弾性力によって回転支持軸36に保持される。解除スプリング50は、本発明で言う弾性部材の一例である。弾性部材は、解除スプリング50に限定されるものではない。
図7に示すように、回転子47は、回転支持軸36に回動自由に支持されている。回転子47は、例えば一端が閉塞するとともに他端が開口する円筒状である。回転子47は、開口端59が固定部46に対向するように配置されており、図6に示すように、固定部46に隣接して配置されている。固定部46の外形状と回転子47の外形状とは略同じであって、それゆえ、固定部46の外面46aと回転子47の外面47aとは、面一である。
回転子47が固定部46と隣り合った状態では、解除スプリング50の一部や固定部ブラケット52の一部が回転子47の内側に収容される。このことによって、回転子47の開口端59は、固定部46の開口縁46bに当接することができる。なお、解除スプリング50と固定部ブラケット52とが回転子47側に突出しない場合は、回転子47は、筒状である必要はない。
図5に示すように、回転子47の他端部60には、第4のギヤ61が形成されている。第4のギヤ61は、回転支持軸36と同軸上に配置されている。第4のギヤ61は、伝達機構38の第3のギヤ45と噛み合っている。それゆえ、プーリ35の回転が、伝達機構38を介して第4のギヤ61、つまりスプリングクラッチ装置37に伝達されるようになる。
図6,7に示すように、クラッチスプリング48は、コイルばね状である。クラッチスプリング48は、固定部46の外面46aと回転子47の外面47aとにまたがって、巻きつけられている。固定部46に対して回転子47が相対的に回転支持軸36周りに回転すると、クラッチスプリング48と回転子47との間の摩擦によって、クラッチスプリング48が締め付けられる、または、緩む方向に付勢される。
図4,5に示すように、伝達機構38を介して伝達されるプーリ35の回転によって、回転子47は、回転するように付勢される。クラッチスプリング48は、プーリ35がワイヤ34を繰り出す際の回転にともなって回転子47が回転しようとすると、固定部46と回転子47とを締め付けるような巻き方になっている。回転子47が逆に回転すると、クラッチスプリング48は緩む。
また、クラッチスプリング48の一端部は、周方向外側に向かって延びており、解除レバー62を形成している。図9は、解除レバー62の動作を示す側面図である。図9は、図4を矢印Bの方向から見た状態を示す側面図である。
図4,5,9に示すように、解除用アーム39は、回転軸43に回動自由に支持されている。解除用アーム39は、クラッチスプリング48の解除レバー62の側方に配置されている。解除用アーム39は、略円盤状である。解除用アーム39は、ギヤ部63と、切欠部64とを有している。
切欠部64は、解除レバー62を内側に収容できるように切り欠かれることによって形成されている。図9に2点鎖線で示すように、解除用アーム39が回転軸43周りに回転することによって、切欠部64の内縁65が解除レバー62に当接するとともに、クラッチスプリング48を緩む方向に付勢する。
このような状態になると、回転子47とクラッチスプリング48との間の摩擦が減少するので、回転子47が回転できるようになる。ギヤ部63は、図中一部示すように、解除用アーム39の周縁に形成されている。なお、図中、ギヤ部63は、その一部が示されており、他の部位は省略されている(2点鎖線で示されている)。
解除用アーム39が解除レバー62に当接していない状態(クラッチスプリング48が緩んでいない状態)でスプリングクラッチ装置37にワイヤ34を繰り出す方向のプーリ35の回転が伝達されると(回転子47に形成される第4のギヤ61に回転が伝達されると)、クラッチスプリング48が回転子47と固定部46とを締め付ける。それゆえ、回転が固定部46にも伝達される。
固定部46が回転すると、固定部46の回転に連動して解除スプリング50が締め付けられる。固定部46が回転することによって、解除スプリング50は、締め付けられて弾性エネルギを蓄える。
図5に示すように、アクチュエータ40は、フレーム41に固定されている。アクチュエータ40は、例えば電動モータである。アクチュエータ40の回転軸66には、第5のギヤ67が設けられている。第5のギヤ67は、アクチュエータ40によって駆動される。
図9に示すように、第5のギヤ67は、解除用アーム39のギヤ部63に噛み合っている。アクチュエータ40が第5のギヤ67を駆動することによって、解除用アーム39が駆動される。アクチュエータ40は、解除用アーム39を、1点鎖線で示すロック位置P1と、2点鎖線で示すロック解除位置P2とに位置決めする。ロック位置P1は、解除用アーム39が解除レバー62に当接しない位置である。ロック解除位置P2は、解除用アーム39が解除レバー62に当接する位置である。
上記したように、解除用アーム39が解除レバー62に当接していない状態では、ワイヤ34を繰り出す方向の回転に対して固定部46は、回転子47とともに回転する。図10は、固定部46が回転子47とともに回転した状態における、解除スプリング50の状態を示す正面図である。図10に2点鎖線で示すように、固定部46が回転することによって、解除スプリング50が締め付けられて弾性エネルギを蓄える。なお、図中、締め付けられた状態にある解除スプリング50の一端部54を2点鎖線で示す。また、ワイヤ34が繰り出される方向の回転が伝達されることによって固定部46が回転すると、解除用アーム39と解除レバー62との相対距離が縮まる。
図11は、解除用アーム39がロック位置P1にある状態で回転子47と固定部46とが回転している状態を示している。図中、クラッチスプリング48は、2点鎖線で示されている。図12は、解除用アーム39がロック位置P1にある状態において解除レバー62が解除用アーム39に当接した状態を2点鎖線で示している。図12に示すように、解除レバー62が解除用アーム39に当接するまで固定部46が回転すると、クラッチスプリング48の締め付け力が弱まるので、図13に示すように、回転子47がクラッチスプリング48に対して滑り始める。つまり、固定部46の回転が止まり、かつ固定部46に対して回転子47が相対的に回転し始める。図中、クラッチスプリング48は、2点鎖線で示されている。
このように、解除用アーム39がロック位置P1にある状態において、固定部46に対して回転子47を回転する(クラッチスプリング48に対して滑らせる)ために必要な操作力であるリミッタトルクTについて説明する。なお、リミッタトルクTは、回転支持軸36周りのトルクである。
固定部46に対して回転子47が回転している状態での、解除スプリング50の弾性力による解除スプリング反トルクをMbとする。解除スプリング反トルクMbは、回転支持軸36周りのトルクである。解除用アーム39から受けるトルクをブレーキ解除反トルクLとする。ブレーキ解除反トルクLは、回転支持軸36周りのトルクである。
リミッタトルクTが解除スプリング反トルクMbとブレーキ解除反トルクLとの合計値になったときに、回転子47が固定部46に対して回転し始める。それゆえ、T=Mb+Lとなる。
ここで、クラッチスプリング48の初期巻き付きトルクMwについて説明する。なお、初期巻き付きトルクMwとは、クラッチスプリング48の解除レバー62が解除用アーム39に当接していない状態で回転子47を回転しようとした際における、クラッチスプリング48と回転子47との間の摩擦に起因して生じるトルクである。
回転子47がクラッチスプリング48に対して回転するために必要なブレーキトルクをMfとすると、Mf=Mw×eμθとなる。それゆえ、Mw=Mf×e−μθとなる。このとき、ブレーキトルクMfは、リミッタトルクTと釣り合う。
なお、解除レバー62が解除用アーム39に当接している場合は、クラッチスプリング48の初期巻き付きトルクMwは、ブレーキ解除反トルクL分だけ小さくなるので、Mw−L=T×e−μθとなる。
上記の式、T=Mb+L、Mw−L=T×e−μθより、L=(Mw−Mb×e−μθ)/(1+e−μθ)となり、それゆえ、T=(Mw+Mb)/(1+e−μθ)となる。ここで、Mwは、Mbよりもだいぶ小さいく、かつ、e−μθ≒0となるので、T≒Mbとなる。
上記のことより、回転子47に作用するリミッタトルクTとしてMbと同じ大きさのトルクが作用すると、回転子47は、クラッチスプリング48に対して滑るようになる。
解除スプリング反トルクMbは、解除レバー62が解除用アーム39の内縁65に当接するまで固定部46が回転した状態での解除スプリング50の弾性力と、回転支持軸36から第1の固定用突起53までの距離との積となる。それゆえ、ロック解除位置P2は、リミッタトルクTの値として求められる値になるように、設定されている。言い換えると、本願で言う所定角度とは、Mbの大きさがリミッタトルクTとして求められる値となるように決定される。
本実施形態では、リミッタトルクTは、通常のドアの開閉動作時では作用しない大きさである。ドア11や車体13に変形させる荷重がワイヤ34に作用した際に生じるトルクである。リミッタトルクTがこのように設定されることによって、リミッタトルクTが回転子47に作用すると、固定部46に対して回転子47が滑ることによって、ドア11や車体13に変形が生じないようになっている。
ECU22は、アクチュエータ40の動作を制御する。ここでドア11の説明に戻る。図1に示すように、ドア11は、車室側操作部23と、車外側操作部24とを備えている。
車外側操作部24は、アウタパネル11b上に設けられるとともに、車外から操作できるように、車外に出ている。車外側操作部24は、図中2点鎖線で示される範囲に拡大して示されている。車外側操作部24は、車外側操作レバー25と、車外側スイッチ26とを備えている。
車外側操作レバー25が操作されると、ドア11が全閉位置にあるときに、ドア11と車体13との間に設けられる図示しないラッチ機構の係合状態が解除される。
車外側スイッチ26は、例えば押し込みボタン式である。乗員が車外側スイッチ26を押し込むと、当該車外側スイッチ26が操作されることになる。
図1に示すように、車外側操作部24は、ECU22に接続されている。ECU22は、車外側スイッチ26が一度操作されると、アクチュエータ40を駆動して、解除用アーム39をロック解除位置P2に移動する。車外側スイッチ26は、本願で言う解除スイッチの一例である。
なお、車外側スイッチ26は、押しボタン式に限定されない。ECU22は、車外側スイッチ26の構造に関わらずに当該車外側スイッチ26が操作されると、解除用アーム39をロック解除位置P2に移動する。
車室側操作部23は、インナパネル11a上に設置されている。車室側操作部23は、図中2点鎖線で示される範囲に拡大して示されている。車室側操作部23は、ドア11のインナパネル11aに設けられており、車室側から操作できるよう車室内に出ている。
車室側操作部23は、車室側操作レバー27と、車室側スイッチ28とを備えている。車室側操作レバー27が操作されると、上記ラッチ機構の係合状態が解除される。車室側スイッチ28は、例えば押し込みボタン式である。
図1に示すように、車室側操作部23は、ECU22に接続されている。ECU22は、車室側スイッチ28が一度押されると、アクチュエータ40を駆動して、解除用アーム39をロック解除位置P2に移動する。車室側スイッチ28は、本願で言う解除スイッチの一例である。
なお、車室側スイッチ28は、押しボタン式に限定されない。ECU22は、車室側スイッチ28が一度操作されると、解除用アーム39をロック解除位置P2に移動する。
ECU22の説明に戻る。ECU22は、ロータリーエンコーダ100の検出結果により、ドア11の開動作が所定時間停止されるとドア11がそれ以上開かなくなるようにするロック制御と、ドア11の開動作が所定時間停止されても、ドア11の開動作を妨げない非ロック制御とのうちいずれかの制御を行う。所定時間については、後で詳細に説明される。ECU22は、本発明で言う制御部の一例である。
ロック制御では、解除用アーム39は、ロック解除位置P2にある。そして、ドア11の開動作が所定時間停止されると、アクチュエータ40は、ロック位置P1まで解除用アーム39を移動する。このようにすることによって、スプリングクラッチ装置37がロック状態(クラッチスプリング48が締め付けられる方向に付勢されるので、回転子47の回転が抑制される状態)となる。
非ロック制御では、解除用アーム39は、ロック解除位置P2から移動しない。このことによって、ドア11の開動作の停止状態が所定時間続いても、ドア11の開動作はロック装置30によっては阻止されない。
また、ECU22は、運転席(図示せず)やキー(エンジン始動やドアの全閉位置でのロックをするキー)に設けられるメインスイッチ110(図1中に点線で示される)に接続されている。
メインスイッチ110は、たとえば運転者などによって操作される。メインスイッチ110によってロック制御と非ロック制御とが切り替えられる。メインスイッチ110は、各ドア(助手席の近傍のドア11も含む)の個々のロック制御と非ロック制御との切り替え可能としてもよいし、全てのドアのロック制御と非ロック制御とを一括して切り替えられるようにしてもよい。
なお、ECU22は、図中、自動車10の外側に配置されているが、実際は、自動車10の内に配置されている。
つぎに、上記された所定時間について説明する。所定時間は、乗員が車外から車内へ乗車する際の第1の所定時間t1と、車内から車外へ降車する際の第2の所定時間t2とを有している。
第1の所定時間t1は、乗員が乗車にかかる時間に基づいて設定されている。第2の所定時間t2は、乗員が降車にかかる時間に基づいて設定されている。第1,2の所定時間t1,t2は、実験などによって求められる。一般に、降車にかかる時間は、乗車にかかる時間よりも長い。それゆえ、第2の所定時間t2は、第1の所定時間t1よりも長く設定されている。
なお、ECU22は、車外側操作レバー25が操作されると、乗車と判断し、車室側操作レバー27が操作されると、降車と判断する。そして、ECU22は、乗車または降車によって、第1,2の所定時間t1,t2のうち対応する方を用いる。
つぎに、ドア開動作規制装置20の動作を説明する。図14は、降車する際のドア開動作規制装置20の動作の一例を示すタイミングチャートである。図15は、乗車する際のドア開動作規制装置20の動作の一例を示すタイミングチャートである。なお、図14,15中、アクチュエータがロックされるとは、解除用アーム39がロック位置P1に移動することを示している。アンロックされるとは、解除用アーム39がロック解除位置P2に移動することを示す。車室側スイッチおよび車外側スイッチがONされるとは、操作されることを示す。OFFされるとは、操作が解除されることを示す。
ロック装置30がロック制御状態である場合において、乗員が降車する際のドア開動作規制装置20の動作を説明する。まず、自動車10の走行開始前などに例えば運手者がメインスイッチ110を操作するなどして、ドア11の近傍に設置されたロック装置30をロック制御状態にする。
ついで、自動車10が停車して助手席の乗員が降車する際には、助手席の乗員が車室側操作レバー27を操作して、ドア11を開く。このとき、ECU22は、車室側操作レバー27が操作されたことによって、第2の所定時間t2を用いる。
乗員は、ドア11の開動作をしながら車外に障害物があるか否かを確認する。障害物がある場合は、図14にCで示すように、ドア11を第2の所定時間t2以上停止すると、ECU22の制御によって、アクチュエータ40が駆動する。アクチュエータ40は、解除用アーム39をロック位置P1まで移動する。このことによって、クラッチスプリング48の解除レバー62が解除用アーム39から離れる。
この結果、クラッチスプリング48が締め付けられることによって回転子47の回転が止まるので、プーリ35の回転が止まる。プーリ35の回転が止まることによって、ワイヤ34が引き出されなくなる。この結果、ドア11は、第2の所定時間t2停止された位置でロックされる。
このように、ドア11は、障害物の手前でロックされるので、乗員は、ドア11を障害物に衝突させることなく、降車することができる。なお、本実施形態では、図14中Dで示すように、第2の所定時間t2内の検出パルス数が所定回数例えば3回未満であっても、ドア11はロックされる。
上記されたように、第2の所定時間t2は、降車にかかる時間に基づいて設定されている。一般に降車の手順としては、ドア11をある程度開いた後にドア11の開動作を一旦停止するとともに立ち上がる。そして、ある程度立ち上がると、さらにドア11を開く。このとき、第2の所定時間t2は、一旦停止させる時間よりも長く設定されている。このため、障害物がない状態では、ドア11は、開動作の途中でロックされることがない。
ドア11がロックされた後であっても、図14中Eで示すように、車室側スイッチ28を一度操作すると、ドア11のロック状態は、解除される。
ついで、乗車の際の動作を説明する。乗車する際では、乗員は、車外側操作レバー25を操作する。このとき、ECU22は、車外側操作レバー25が操作されたことによって、第1の所定時間t1を用いる。
ドア11の外に障害物がある場合は、乗員は、障害物の前でドア11を停止する。図15中にFで示すように、第1の所定時間t1の間ドア11が停止されると、解除用アーム39がロック位置P1に移動されてドア11がロックされるので、乗員は、ドア11を障害物に衝突することなく乗車することができる。なお、本実施形態では、図15中Gで示すように、第1の所定時間t1内の検出パルス数が所定回数例えば3回未満であっても、ドア11はロックされる。
第1の所定時間t1は、乗車に際にかかる時間に基づいて設定されている。一般に、車外から車内へ乗車する際には、乗員は、ドア11を乗車に邪魔にならない位置(たとえば
全開位置)までひといきに開く。このため、第1の所定時間t1は、比較的早くドア11がロックされるように設定されており、それゆえ、乗車の際にドア11が不安定な状態であることが抑制される。
ドア11がロックされた後であっても、図中Hで示すように、車外側スイッチ26を一度操作すると、ドア11のロック状態は、解除される。
ついで、非ロック制御状態でのドア開動作規制装置20の動作を説明する。助手席に着座している乗員が、十分に車外の状況を認識できる場合(例えば、大人)では、運転者は、メインスイッチ110を操作して、助手席のロック装置30を非ロック制御状態にする。
非ロック制御状態では、解除用アーム39は、ロック解除位置P2から移動しない。このことによって、ドア11の開動作が第1の所定時間t1または第2の所定時間t2停止されても、ドア11の開動作はロック装置30によってはロックされない。
このように構成されるロック装置30では、ドア11は、障害物を検出するセンサをも用いることなく、ロック装置30によって、開動作が所定時間停止されると、ロックされる。このため、ドア11をロックするためにスイッチ操作などを必要としないので、ドア開動作規制装置20は、ドア11の使い勝手の悪化を抑制しつつ、コストを抑えてドア11と障害物との衝突を抑制することができる。
また、第2の所定時間t2が第1の所定時間t1よりも長く設定されることによって、ドア11と障害物との衝突を抑制しつつ、乗車および降車の際のドア11の開動作を妨げることが抑制される。このことによって、ドア11の操作性が向上する。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
車体に設けられるドアを、当該ドアの全閉位置と全開位置との間でロックするロック機能を有するロック機構と、
前記ドアの開動作を検出する開動作検出部と、
乗員の操作によって前記ドアのロック状態を解除する解除スイッチと、
前記開動作検出部の検出結果に基づいて前記ドアの開動作が所定時間停止されると前記ドアをロックするとともに、前記解除スイッチが操作されると前記ロック状態を解除するよう前記ロック機構を駆動する制御部と
を備えることを特徴とするドア開動作規制装置。
[2]
車内から車外へ降車する際において前記ドアがロックされるまでの所定時間は、前記車外から前記車内へ乗車する際において前記ドアがロックされるまでの所定時間よりも長く設定されることを特徴とする[1]に記載のドア開動作規制装置。
11…ドア、13…車体、20…ドア開動作規制装置、22…ECU(制御部)、26…車外側スイッチ(解除スイッチ)、28…車室側スイッチ(解除スイッチ)、30…ロック装置(ロック機構)、100…ロータリーエンコーダ(開動作検出部)。