このようにして、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業がなされるわけであるが、その際の出銑口の開孔は、従来、以下のような出銑口開孔装置によってなされる。
図8は、従来の出銑口開孔装置の側面図である。同図に示すように、従来の出銑口開孔装置130は、穿孔機であるドリフター131と、このドリフター131を穿孔する方向に沿って進退可能に案内支持するガイドセル134と、このガイドセル134の後部を一対より成る吊上げリンク138、139を介して吊り上げる概ね水平な支持フレーム136とを備える。
ドリフター131は、ガイドセル134上に固定されたモータ135からの駆動力により、ガイドセル134に案内されながら進退移動をする。ドリフター131の前端からは、回転や打撃の駆動をするロッド132がドリフター131の進退方向に延び出しており、このロッド132の先端にビット133が装着されている。
吊上げリンク138、139は、ドリフター131の進退方向に所定の間隔をあけて配設され、各上下端部をそれぞれ支持フレーム136、ガイドセル134に回動自在に連結されている。ドリフター131の後退方向側の吊上げリンク139は、ドリフター131の前進方向側の吊上げリンク138よりも長さが短く、その後退方向側の吊上げリンク139には、ガイドセル134寄りの位置にワイヤ140が連結されている。そのワイヤ140は、支持フレーム136の後端に設けられたプーリ141を介して、支持フレーム136上に固定された正逆回転が可能な巻上げモータ142のドラムに巻かれている。
ワイヤ140が巻き上げられると、図8中の破線で示すように、後退方向側の吊上げリンク139が上端を支点に回動して引き上げられ、鉛直方向下向きより後方下向きに傾いた状態になり、これに連動して、前進方向側の吊上げリンク138が上端を支点に回動し、鉛直方向下向きより後方下向きに傾いた状態になる。これにより、ガイドセル134が水平よりも前部を下向きに傾けた姿勢で、開孔位置よりも後方にずれた待機位置におかれた状態になる。
一方、ワイヤ140が巻き戻されると、図8中の実線で示すように、後退方向側の吊上げリンク139及び前進方向側の吊上げリンク138が、ドリフター131を含むガイドセル134の自重により各上端を支点に回動し、それぞれ鉛直方向下向きの状態になる。これにより、ガイドセル134が水平よりも前部を下向きに傾けた姿勢で待機位置から前方の開孔位置におかれた状態になる。
なお、支持フレーム136は、鋳床8に立設された支柱(不図示)からの旋回ビーム(不図示)に結合されている。その旋回ビームを支柱に対して旋回させることにより、支持フレーム136と一体でドリフター131及びガイドセル134を、通常出銑口用領域5の正面から外れた退避位置(図8では紙面に対し垂直な方向に外れた位置)と、通常出銑口用領域5の正面の待機位置及び開孔位置とにおくことができる。
このような構成の出銑口開孔装置130は、通常出銑口用領域5に通常出銑口15を開孔する際に用いられる。その際、支持フレーム136と一体でドリフター131及びガイドセル134が先ずは通常出銑口用領域5の正面の待機位置におかれる。ここからワイヤ140が巻き戻されることによりドリフター131及びガイドセル134が開孔位置に至る。この状態のとき、ガイドセル134の前端部から突き出すハッカー部143が炉体1に対して固定のハッカー受け144に係合し、ドリフター131からのロッド132の先端のビット133が通常出銑口用領域5のすぐ近くに配置された状態になる。
そして、ドリフター131のロッド132を回転させながら、場合によっては更にロッド132に打撃力を与えながら、モータ135の駆動に従ってガイドセル134に対してドリフター131を前進させていく。これにより、ビット133が通常出銑口用領域5を水平よりも下向きに傾斜した一定の穿孔角度で進入していき、その結果ここに、炉体1の内部の位置の方が外部の位置よりも低い通常出銑口15が開孔される。
ところが、このような従来の出銑口開孔装置130では、通常出銑口用領域5とその直上の羽口6との間の臨時出銑口用領域7に、臨時出銑口16を開孔することはできない。また、通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に、通常出銑口15とは異なる穿孔角度、例えば水平や上向きに傾斜した穿孔角度の臨時出銑口17を開孔することはできない。吊上げリンク138、139の回動角度により、通常出銑口15の開孔に見合うように、通常出銑口用領域5への穿孔の位置決めと、水平よりも下向きに傾斜した穿孔角度が一義的に設定されているからである。
従って従来は、臨時出銑口16、17の開孔を行うために、上記した従来の出銑口開孔装置130とは別に、仮設の出銑口開孔装置が必要となる。
しかし、通常出銑口用領域5及び臨時出銑口用領域7の周囲には、従来の出銑口開孔装置130や羽口交換用デッキ14が設置されていることから、スペースに余裕があるとは到底言えない。そのため、仮設の出銑口開孔装置として、従来の出銑口開孔装置130に準じた十分な能力を発揮し得る大型の出銑口開孔装置を設置することは困難である。しかも、臨時出銑口16、17の開孔作業自体が通常の高炉操業で定期的に実施される作業ではないこととあいまって、汎用性のある小型の出銑口開孔装置を持ち込み、手動にての開孔作業を余儀なくされていた。
なお、上記した従来の出銑口開孔装置130では、その穿孔の駆動源となるドリフター131に、能力が高くて安定した油圧式のものを一般に採用するが、これは現在希少且つ高価であることから、臨時出銑口16、17を開孔するための仮設の出銑口開孔装置に油圧式のものを採用することは困難である。仮に仮設の出銑口開孔装置として油圧式のものを採用した場合、その出銑口開孔装置自体の自重の保持方法や、出銑時のその出銑口開孔装置の退避方法や、油圧配管が仮設であるが故の油圧配管の防熱方法等を格別に考慮しなければならず、安全面(火災、人身災害)の観点からも問題が多い。
このような結果、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業をしていくにあたり、先ずは出銑口の開孔が必要となるが、特に臨時出銑口16、17の開孔において、その作業が煩雑で時間を要するし、開孔した臨時出銑口16、17の形状や寸法といった性状も決して良いものとは言えない。臨時出銑口16、17の性状は、その後の鉄パイプ20、21やプラズマトーチの挿入が円滑に行えるか否かに影響する上、更にその鉄パイプ20、21やプラズマトーチによってなされる固化した溶銑滓の加熱条件にも影響を及ぼす。
続いて、開孔した出銑口の閉塞は、従来、以下のような出銑口閉塞装置によってなされる。
図9は、従来の出銑口閉塞装置の側面図である。同図に示すように、従来の出銑口閉塞装置150は、マッドガン151と、このマッドガン151を待機位置での水平姿勢から前部を下向きに傾けた閉塞位置での姿勢に回動可能に軸支する支持フレーム153と、この支持フレーム153を支持し水平方向に進退させるアクチュエータ154とを備える。アクチュエータ154としては、油圧式のものが採用される。
マッドガン151は、筒体の内部に閉塞材を収容しており、その筒体の内部をピストンが移動することにより、筒体の前端のノズル152から閉塞材を押し出すものである。その駆動は一般に油圧によってなされる。
なお、支持フレーム153を支持するアクチュエータ154は、鋳床8に立設された支柱(不図示)からの旋回ビーム(不図示)に結合されている。この支柱及び旋回ビームは、上記した従来の出銑口開孔装置130のものとは異なる。その旋回ビームを支柱に対して旋回させることにより、アクチュエータ154と一体でマッドガン151及び支持フレーム153を、通常出銑口用領域5の正面から外れた退避位置(図9では紙面に対し垂直な方向に外れた位置)と、通常出銑口用領域5の正面の待機位置及び閉塞位置とにおくことができる。
このような構成の出銑口閉塞装置150は、通常出銑口用領域5に開孔した通常出銑口15を閉塞する際に用いられる。その際、アクチュエータ154と一体でマッドガン151及び支持フレーム153が先ずは通常出銑口用領域5の正面の待機位置におかれる。ここからアクチュエータ154が水平方向前方に進出することによりマッドガン151及び支持フレーム153が前進し、これに連動して、マッドガン151が支持フレーム153に対して支軸155を支点に回動して、水平よりも前部を下向きに傾けた姿勢で閉塞位置に至る。この状態のとき、アクチュエータ154の進出力が作用して、マッドガン151のノズル152が通常出銑口15に密着するように押し付けられた状態になる。
そして、マッドガン151のピストンを駆動する。これにより、ノズル152から閉塞材が押し出されて通常出銑口15に圧入されていき、その結果、通常出銑口15が閉塞材で完全に埋められて閉塞される。
ところが、このような従来の出銑口閉塞装置150では、高炉の冷え込みが起こったときの一連の復旧作業の中で、通常出銑口用領域5とその直上の羽口6との間の臨時出銑口用領域7に開孔した臨時出銑口16を閉塞することはできない。また、通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に開孔した臨時出銑口17を閉塞することはできない。アクチュエータ154の進出に連動してマッドガン151が回動することにより、通常出銑口15の閉塞に見合うように、マッドガン151のノズル152の通常出銑口15への位置決めが一義的に設定されているからである。
従って従来は、臨時出銑口16、17の閉塞を行うために、上記した従来の出銑口閉塞装置150とは別に、仮設の出銑口閉塞装置が必要となる。
しかし、通常出銑口用領域5及び臨時出銑口用領域7の周囲には、従来の出銑口閉塞装置150や羽口交換用デッキ14が設置されていることから、スペースに余裕があるとは到底言えない。そのため、仮設の出銑口閉塞装置として、従来の出銑口閉塞装置150に準じた十分な能力を発揮し得る大型の出銑口閉塞装置を設置することは困難である。しかも、臨時出銑口16、17の閉塞作業自体が通常の高炉操業で定期的に実施される作業ではないこととあいまって、汎用性のある小型の出銑口閉塞装置を持ち込み、手動にての閉塞作業を余儀なくされていた。
なお、上記した従来の出銑口閉塞装置150では、アクチュエータ154の進出力に応じた通常出銑口15へのノズル152の押付け力が294kN〜490kN(30〜50ton−f)程度と大きいため、実際にはその反力を受ける基礎(ベース)を備えているが、臨時出銑口16、17を閉塞するための仮設の出銑口閉塞装置用に、反力受け等のためのスペースを更に確保できないので、やはり大型の出銑口閉塞装置を設置することは困難と言える。
このような結果、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業をしていくにあたり、開孔した出銑口の閉塞が必要となるが、特に臨時出銑口16、17の閉塞において、その作業が煩雑で時間を要するし、閉塞した臨時出銑口16、17の状態も決して良いものとは言えない。閉塞した臨時出銑口16、17の状態が悪いと、復旧後の通常操業でトラブルの要因になりかねない。
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業を効率良く行える出銑口開孔装置及び出銑口閉塞装置を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するため、本発明による出銑口開孔装置は、高炉炉体に設けられた通常出銑口用領域に水平よりも下向きに傾斜した穿孔角度の通常出銑口を開孔するとともに、前記通常出銑口用領域内で前記通常出銑口の直上に臨時出銑口を開孔し、さらに前記通常出銑口用領域の直上の羽口との間に設けられた臨時出銑口用領域に水平よりも上向きに傾斜した穿孔角度の臨時出銑口を開孔する出銑口開孔装置であって、穿孔機と、この穿孔機を穿孔する方向に沿って進退可能に案内支持するガイドセルと、このガイドセルを支持する支持フレームと、を備える。そして、前記ガイドセルと前記支持フレームとの支持部に、前記ガイドセルの高さ方向での姿勢を調整する姿勢調整機構を設けた。このような構成にすることより、通常出銑口用領域や臨時出銑口用領域に、高さの異なる出銑口を複数開孔することができる。
ここで、特に安全面での観点から、前記姿勢調整機構が遠隔操作によって駆動する油圧式、電動式又は空圧式のアクチュエータを含む。
また、上記目的を達成するための本発明による出銑口閉塞装置は、高炉炉体に設けられた通常出銑口用領域に水平よりも下向きに傾斜した穿孔角度で開孔した通常出銑口、前記通常出銑口用領域内で前記通常出銑口の直上に開孔した臨時出銑口、および前記通常出銑口用領域の直上の羽口との間に設けられた臨時出銑口用領域に水平よりも上向きに傾斜した穿孔角度で開孔した臨時出銑口を閉塞する出銑口閉塞装置であって、マッドガンと、このマッドガンを支持する支持フレームと、を備える。そして、前記マッドガンと前記支持フレームとの支持部に、前記マッドガンの高さ方向での姿勢を調整する姿勢調整機構を設けた。このような構成にすることより、通常出銑口用領域や臨時出銑口用領域に開孔した高さの異なる複数の出銑口を閉塞することができる。
ここで、特に安全面での観点から、前記姿勢調整機構が遠隔操作によって駆動する油圧式、電動式又は空圧式のアクチュエータを含む。
また、各出銑口を有効に閉塞するには、前記マッドガンのノズルは、斜め上向きに伸び上がり、その先端が曲がって前方に向く形状の異形ノズルに交換可能であるとよい。
本発明の出銑口開孔装置によれば、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業をしていくにあたり、一台常設するだけで、高さの異なる出銑口を複数開孔することができるため、格段に、開孔作業が簡単であるし、その所要時間も短くて済む。従って、高炉の冷え込みからの復旧作業を効率良く行える。
また、本発明の出銑口閉塞装置によれば、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業をしていくにあたり、一台常設するだけで、開孔した高さの異なる複数の出銑口を閉塞することができるため、格段に、閉塞作業が簡単であるし、その所要時間も短くて済む。従って、高炉の冷え込みからの復旧作業を効率良く行える。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述する。先ず、本発明の第1実施形態である出銑口開孔装置について説明する。
図1、図2は、第1実施形態である出銑口開孔装置の側面図であって、図1では、通常出銑口用領域に通常出銑口を開孔する状況を示し、図2では、臨時出銑口用領域に臨時出銑口を開孔する状況を示している。なお、高炉自体の構造は図7〜図9に示したものと同じであるので、その部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。後述する第2〜第4実施形態においても同様とする。
図1、図2に示すように、本第1実施形態の出銑口開孔装置30は、穿孔機であるドリフター31と、このドリフター31を穿孔する方向に沿って進退可能に案内支持する剛性の高いガイドセル34と、このガイドセル34の後部を剛性の高い吊上げ棒38を介して吊り上げる概ね水平な剛性の高い支持フレーム36と、この支持フレーム36を支持し水平方向に進退させるアクチュエータ37とを備える。そのアクチュエータ37としては、好適には油圧式のものが採用される。但し、電動式や空圧式のものであっても構わない。
ドリフター31は、ガイドセル34上に固定されたモータ35からの駆動力により、ガイドセル34に案内されながら進退移動をする。ドリフター31の前端からは、回転や打撃の駆動をするパイプ状のロッド32がドリフター31の進退方向に延び出しており、このロッド32の先端に穿孔工具のビット33が装着されている。
ここで、ガイドセル34は、その後部を支持フレーム36から鉛直下方に突き出す吊上げ棒38の下端部で軸支されていて、その支軸39を支点に回動可能になっている。吊上げ棒38の上端部は、支持フレーム36に固定されている。
更に、ガイドセル34の後端部には、伸縮の駆動が可能な第1アクチュエータ40の一端部が回動自在に連結され、この第1アクチュエータ40の他端部が、支持フレーム36の後端部に回動自在に連結されている。こうして、ドリフター31の進退方向に沿って前進方向側から後退方向側へ順に、吊上げ棒38、第1アクチュエータ40が配置され、ドリフター31を含むガイドセル34は、その吊上げ棒38及び第1アクチュエータ40を通じて、姿勢が定められながら支持された状態になっている。
なお、支持フレーム36を支持するアクチュエータ37は、鋳床8に立設された支柱(不図示)からの旋回ビーム(不図示)に結合されている。その旋回ビームを支柱に対して旋回させることにより、アクチュエータ37と一体でドリフター31、ガイドセル34及び支持フレーム36を、通常出銑口用領域5及び臨時出銑口用領域7の正面から外れた退避位置(図1、図2では紙面に対し垂直な方向に外れた位置)と、通常出銑口用領域5及び臨時出銑口用領域7の正面の待機位置及び閉塞位置とにおくことができる。
このような構成の出銑口開孔装置30は、通常出銑口用領域5に通常出銑口15を開孔する際のみならず、臨時出銑口用領域7に臨時出銑口16を開孔する際にも用いられる。
通常出銑口用領域5に通常出銑口15を開孔する際は、図1に示すように、アクチュエータ37と一体でドリフター31、ガイドセル34及び支持フレーム36が先ずは通常出銑口用領域5の正面の待機位置におかれる。
次に、第1アクチュエータ40の縮む駆動がなされ、これに応じて、ガイドセル34及びドリフター31が支軸39を支点に後端部を持ち上げられるように回動する。これにより、ガイドセル34及びドリフター31が水平よりも前部を下向きに傾けた姿勢におかれた状態になる。この姿勢の傾き角度は、水平よりも下向きに傾斜した通常出銑口15の穿孔角度と一致する。
ここからアクチュエータ37が水平方向前方に進出することによりドリフター31、ガイドセル34及び支持フレーム36が開孔位置に至る。この状態のとき、ガイドセル34の前端部から突き出すハッカー部41が炉体1に対して固定の第1ハッカー受け42に係合し、ドリフター31からのロッド32の先端のビット33が通常出銑口用領域5のすぐ近くに配置された状態になる。
そして、ドリフター31のロッド32を回転させながら、場合によっては更にロッド32に打撃力を与えながら、モータ35の駆動に従ってガイドセル34に対してドリフター31を前進させていく。これにより、ビット33が通常出銑口用領域5を水平よりも下向きに傾斜した一定の穿孔角度で進入していき、その結果ここに、炉体1の内部の位置の方が外部の位置よりも低い通常出銑口15が開孔される。
一方、臨時出銑口用領域7に臨時出銑口16を開孔する際は、図2に示すように、上記した通常出銑口15の開孔時と同様にして、アクチュエータ37と一体でドリフター31、ガイドセル34及び支持フレーム36が先ずは臨時出銑口用領域7の正面の待機位置におかれる。
次に、第1アクチュエータ40の伸びる駆動がなされ、これに応じて、ガイドセル34及びドリフター31が支軸39を支点に後端部を押し下げられるように回動する。これにより、ガイドセル34及びドリフター31が水平よりも前部を上向きに傾けた姿勢におかれた状態になる。この姿勢の傾き角度は、水平よりも上向きに傾斜した臨時出銑口16の穿孔角度と一致する。
ここから、上記した通常出銑口15の開孔時と同様にして、アクチュエータ37が水平方向前方に進出することによりドリフター31、ガイドセル34及び支持フレーム36が開孔位置に至る。この状態のとき、ガイドセル34からのハッカー部41が炉体1に対して固定の第2ハッカー受け43に係合し、ドリフター31からのロッド32の先端のビット33が臨時出銑口用領域7のすぐ近くに配置された状態になる。
そして、上記した通常出銑口15の開孔時と同様にして、ドリフター31のロッド32を回転させながら、場合によっては更にロッド32に打撃力を与えながら、モータ35の駆動に従ってガイドセル34に対してドリフター31を前進させていく。これにより、ビット33が臨時出銑口用領域7を水平よりも上向きに傾斜した一定の穿孔角度で進入していき、その結果ここに、炉体1の内部の位置の方が外部の位置よりも高い臨時出銑口16が開孔される。
このように、本第1実施形態の出銑口開孔装置30によれば、通常出銑口用領域5に通常出銑口15を開孔することができるし、通常出銑口用領域5とその直上の羽口6との間の臨時出銑口用領域7に臨時出銑口16を開孔することもできる。つまり、通常出銑口15の開孔と臨時出銑口16の開孔に取り合いが可能である。これは、ドリフター31を案内支持するガイドセル34が、支持フレーム36に対し、吊上げ棒38及び第1アクチュエータ40によって支持され、第1アクチュエータ40の伸縮に応じて支軸39を支点に回動することにより、通常出銑口15、臨時出銑口16それぞれの開孔に見合うように、穿孔の位置決めと、穿孔角度を調整できるからである。
その結果、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業をしていくにあたり、常設した一台の出銑口開孔装置30によって通常出銑口15と臨時出銑口16を開孔することができるため、従来のような更に仮設の出銑口開孔装置を用いる場合と比較して、格段に、開孔作業が簡単であるし、その所要時間も短くて済む。従って、高炉の冷え込みからの復旧作業を効率良く行える。
通常出銑口15と臨時出銑口16が開孔した後は、図7に示すような手法と同様にして、羽口部61、通常出銑口15及び臨時出銑口16から鉄パイプ18、19、20やプラズマトーチを挿入して、炉内で固化した溶銑滓を溶解していく。
なお、第1アクチュエータ40としては、油圧式、電動式又は空圧式のもので、遠隔操作によって駆動するものを採用することが好ましい。遠隔操作ができれば、装置の近くでの作業が無くなるため、特に安全面で有利となるからである。もっとも、高炉の冷え込みが起こる頻度、すなわち臨時出銑口16の開孔が必要となる頻度は、予測できないことから、手動操作用のものと遠隔操作用のもの採用の選択は、作業性とコストの兼ね合いから適宜判断する。特に制御性の観点から、油圧式又は電動式のものを採用することが望ましい。
また、穿孔の駆動源となるドリフター31については、能力が高くて安定した油圧式のものを採用することが好ましい。その理由を以下に説明する。
表1に、評価試験結果の一例を示す。ここでは、出銑口開孔装置30におけるドリフター31に油圧式のものと空圧式のものを用いて出銑口を開孔する試験をした。
ここで、出銑時の開孔では、パイプの先にビットがついたロッドを用いるが、高熱の耐火物(マッド)を掘り進む作業であるので、耐火物を掘り進む途中で孔内にビットが固着する場合がある。その場合、正打により進めるだけでなく逆打による戻しを行うと、開孔作業が円滑に進むため正打・逆打どちらも使用される。但し、逆打には、穿孔動作が不要なので回転はない。評価としての孔壁の性状を決めるのは、打撃では「打撃力×打撃数」、回転では「回転力×回転数」の指標とするが、これら指標の比較から油圧式は空圧式と比較して1.5〜2倍程度の開孔能力を有していることがわかる。
孔壁の性状の評価は、開孔した孔が全長にわたって一律の径で真直ぐな場合を「優」とし、不均一な径で途中から曲がっていたり細くなっていたりする場合を「劣」とした。油圧式では「優」であり、空圧式では「劣」であった。
孔壁の性状が「劣」の場合、例えば、その後の酸素送通の鉄パイプによる溶銑滓の溶解時に直径100mmの孔が必要であると予定して開孔作業を行った場合であっても、結局直径60mm相当の孔しか有効に使えないような事態となる。この場合、予定していた径の鉄パイプでは円滑に挿入できないし、急遽径の小さい鉄パイプを挿入すると、今度は送通する酸素が少なくなって溶銑滓の溶解能力が低下する。その結果として、高炉の冷え込みからの復旧が遅れる。
これに対して孔壁の性状が「優」の場合は、予定していた径の鉄パイプをそのまま円滑に挿入でき、送通する酸素が十分となって溶銑滓の溶解能力が十分に発揮される。その結果として、高炉の冷え込みからの復旧が早まる。
従って、出銑口開孔装置30におけるドリフター31には、油圧式のものを採用する方が、高炉の冷え込みからの復旧作業をより一層効率良く行える観点で好ましいことになる。
次に、本発明の第2実施形態である出銑口開孔装置について、図3を参照しながら説明する。本第2実施形態の特徴は、第1実施形態における支持フレーム36に対するガイドセル34の支持構造を変形して、通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に臨時出銑口17を有効に開孔できるように図った点にある。
図3は、第2実施形態である出銑口開孔装置の側面図であって、特に、通常出銑口用領域内で通常出銑口の直上に臨時出銑口を開孔する状況を示している。
同図に示すように、本第2実施形態の出銑口開孔装置30では、第1実施形態における吊上げ棒38を、伸縮の駆動が可能な第2アクチュエータ44に置き換えた。つまり、ガイドセル34は、その後端部を支持フレーム36から鉛直下方に突き出す第2アクチュエータ44の下端部で軸支されていて、その支軸39を支点に回動可能になっている。第2アクチュエータ44の上端部は、支持フレーム36に固定されている。
こうして、ドリフター31の進退方向に沿って前進方向側から後退方向側へ順に、第2アクチュエータ44、第1アクチュエータ40が配置され、ドリフター31を含むガイドセル34は、その第2アクチュエータ44及び第1アクチュエータ40を通じて、姿勢が定められながら支持された状態になっている。
このような構成の出銑口開孔装置30は、通常出銑口用領域5に通常出銑口15を開孔する際、臨時出銑口用領域7に臨時出銑口16を開孔する際の他に、通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に臨時出銑口17を開孔する際にも用いられる。
通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に臨時出銑口17を開孔する際は、図3に示すように、上記した第1実施形態での通常出銑口15及び臨時出銑口16の開孔時と同様にして、アクチュエータ37と一体でドリフター31、ガイドセル34及び支持フレーム36が先ずは通常出銑口用領域5の正面の待機位置におかれる。
次に、第2アクチュエータ44の縮む駆動がなされ、これに応じて、ガイドセル34及びドリフター31が鉛直上方に持ち上げられて支軸39も鉛直上方に移動する。合わせて、第1アクチュエータ40の伸びる駆動がなされ、これに応じて、ガイドセル34及びドリフター31が、鉛直上方に移動した支軸39を支点に後端部を押し下げられるように回動する。これにより、ガイドセル34及びドリフター31が概ね水平な姿勢におかれた状態になる。この姿勢の傾き角度は、水平な臨時出銑口17の穿孔角度と一致する。
ここから、上記した第1実施形態での通常出銑口15及び臨時出銑口16の開孔時と同様にして、アクチュエータ37が水平方向前方に進出することによりドリフター31、ガイドセル34及び支持フレーム36が開孔位置に至る。この状態のとき、ガイドセル34からのハッカー部41が炉体1に対して固定の第3ハッカー受け45に係合し、ドリフター31からのロッド32の先端のビット33が通常出銑口用領域5のすぐ近くに配置された状態になる。
そして、上記した第1実施形態での通常出銑口15及び臨時出銑口16の開孔時と同様にして、ドリフター31のロッド32を回転させながら、場合によっては更にロッド32に打撃力を与えながら、モータ35の駆動に従ってガイドセル34に対してドリフター31を前進させていく(時折一時的に後退させる)。これにより、ビット33が通常出銑口用領域5を水平な一定の穿孔角度で進入していき、その結果ここに、炉体1の内部の位置と外部の位置とが概ね同じ高さの臨時出銑口17が開孔される。
一方、通常出銑口15や臨時出銑口用領域7への臨時出銑口16の開孔時には、支軸39の高さが通常出銑口用領域5への臨時出銑口17の開孔時よりも低くなるように、第2アクチュエータ44の駆動がなされ、それ以外は上記の第1実施形態と同様にして、通常出銑口15及び臨時出銑口16が開孔される。
このように、本第2実施形態の出銑口開孔装置30によれば、通常出銑口用領域5に通常出銑口15を開孔することができるし、通常出銑口用領域5とその直上の羽口6との間の臨時出銑口用領域7に臨時出銑口16を開孔することができ、しかも、その通常出銑口15と羽口6との間という意味では同じ通常出銑口用領域5内での通常出銑口15の直上に、臨時出銑口17を支障なく有効に開孔することもできる。つまり、通常出銑口15の開孔と臨時出銑口16、17の開孔に取り合いが可能である。これは、ドリフター31を案内支持するガイドセル34が、支持フレーム36に対し、第2アクチュエータ44及び第1アクチュエータ40によって支持され、第2アクチュエータ44の伸縮に応じて支軸39の高さが調整されるとともに、第1アクチュエータ40の伸縮に応じてその支軸39を支点に回動することにより、通常出銑口15、臨時出銑口16、17それぞれの開孔に見合うように、穿孔の位置決めと、穿孔角度を調整できるからである。
その結果、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業をしていくにあたり、常設した一台の出銑口開孔装置30によって通常出銑口15と臨時出銑口16、17を開孔することができるため、従来のような更に仮設の出銑口開孔装置を用いる場合と比較して、格段に、開孔作業が簡単であるし、その所要時間も短くて済む。従って、高炉の冷え込みからの復旧作業を効率良く行える。
通常出銑口15と臨時出銑口16、17が開孔した後は、図7に示すような手法と同様にして、羽口部61、通常出銑口15及び臨時出銑口16、17から鉄パイプ18、19、20、21やプラズマトーチを挿入して、炉内で固化した溶銑滓を溶解していく。
なお、第2アクチュエータ44としては、第1実施形態で述べた通り第1アクチュエータ40と同じ観点から、油圧式、電動式又は空圧式のもので、遠隔操作によって駆動するものを採用することが好ましく、より望ましくは油圧式又は電動式のものを採用するとよい。
引き続いて、本発明の第3実施形態である出銑口閉塞装置について説明する。
図4、図5は、第3実施形態である出銑口閉塞装置の側面図であって、図4では、通常出銑口用領域に開孔した通常出銑口を閉塞する状況を示し、図5では、通常出銑口用領域内で通常出銑口の直上に開孔した臨時出銑口を閉塞する状況を示している。
図4、図5に示すように、本第3実施形態の出銑口閉塞装置50は、マッドガン51と、このマッドガン51を水平姿勢から前部を下向きに傾けた姿勢に回動可能に吊り上げた状態で軸支する支持フレーム53と、この支持フレーム53を支持し水平方向に進退させるアクチュエータ54とを備える。そのアクチュエータ54としては、好適には油圧式のものが採用される。但し、電動式や空圧式のものであっても構わない。
マッドガン51は、筒体の内部に閉塞材を収容しており、その筒体の内部をピストンが移動することにより、筒体の前端のノズル52から閉塞材を押し出すものである。その駆動は一般に油圧によってなされる。
ここで、マッドガン51は、その長手方向のほぼ中央部を支持フレーム53の下部で軸支されていて、その支軸55を支点に回動可能になっている。
更に、マッドガン51の後端部には、伸縮の駆動が可能な第3アクチュエータ56の一端部が回動自在に連結され、この第3アクチュエータ56の他端部が、支持フレーム53の後端部に回動自在に連結されている。こうして、マッドガン51の進退方向に沿って前進方向側から後退方向側へ順に、支軸55、第3アクチュエータ56が配置され、マッドガン51は、その支軸55及び第3アクチュエータ56を通じて、姿勢が定められながら支持された状態になっている。
なお、支持フレーム53を支持するアクチュエータ54は、鋳床8に立設された支柱(不図示)からの旋回ビーム(不図示)に結合されている。この支柱及び旋回ビームは、上記した第1、第2実施形態の出銑口開孔装置30のものとは異なる。その旋回ビームを支柱に対して旋回させることにより、アクチュエータ54と一体でマッドガン51及び支持フレーム53を、通常出銑口用領域5の正面から外れた退避位置(図4、図5では紙面に対し垂直な方向に外れた位置)と、通常出銑口用領域5の正面の待機位置及び閉塞位置とにおくことができる。
このような構成の出銑口閉塞装置50は、通常出銑口用領域5に開孔した通常出銑口15を閉塞する際のみならず、通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に開孔した臨時出銑口17を閉塞する際にも用いられる。
通常出銑口用領域5に開孔した通常出銑口15を閉塞する際は、図4に示すように、アクチュエータ54と一体でマッドガン51及び支持フレーム53が先ずは通常出銑口用領域5の正面の待機位置におかれる。
次に、第3アクチュエータ56の縮む駆動がなされ、これに応じて、マッドガン51が支軸55を支点に後端部を引き上げられるように回動する。これにより、マッドガン51が水平よりも前部を下向きに傾けた姿勢の状態になる。この姿勢の傾き角度は、水平よりも下向きに傾斜した通常出銑口15の穿孔角度と概ね一致する。
ここからアクチュエータ54が水平方向前方に進出することによりマッドガン51及び支持フレーム53が前進し、マッドガン51が水平よりも前部を下向きに傾けた姿勢で閉塞位置に至る。この状態のとき、アクチュエータ54の進出力が作用して、マッドガン51のノズル52が通常出銑口15に密着するように押し付けられた状態になる。
そして、マッドガン51のピストンを駆動する。これにより、ノズル52から閉塞材が押し出されて通常出銑口15に圧入されていき、その結果、通常出銑口15が閉塞材で完全に埋められて閉塞される。
一方、通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に開孔した臨時出銑口17を閉塞する際は、図5に示すように、上記した通常出銑口15の閉塞時と同様にして、アクチュエータ54と一体でマッドガン51及び支持フレーム53が先ずは通常出銑口用領域5の正面の待機位置におかれる。
次に、第3アクチュエータ56の伸びる駆動がなされ、これに応じて、マッドガン51が支軸55を支点に後端部を押し下げられるように回動する。これにより、マッドガン51が概ね水平な姿勢の状態になる。この姿勢の傾き角度は、水平な臨時出銑口17の穿孔角度と概ね一致する。
ここから、上記した通常出銑口15の閉塞時と同様にして、アクチュエータ54が水平方向前方に進出することによりマッドガン51及び支持フレーム53が前進し、マッドガン51が水平な姿勢で閉塞位置に至る。この状態のとき、アクチュエータ54の進出力が作用して、マッドガン51のノズル52が臨時出銑口17に密着するように押し付けられた状態になる。
そして、上記した通常出銑口15の閉塞時と同様にして、マッドガン51のピストンを駆動する。これにより、ノズル52から閉塞材が押し出されて臨時出銑口17に圧入されていき、その結果、臨時出銑口17が閉塞材で完全に埋められて閉塞される。
このように、本第3実施形態の出銑口閉塞装置50によれば、通常出銑口用領域5に開孔した通常出銑口15を閉塞することができるし、通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に開孔した臨時出銑口17を閉塞することもできる。つまり、通常出銑口15の閉塞と臨時出銑口17の閉塞に取り合いが可能である。これは、マッドガン51が、支持フレーム53に対し、支軸55及び第3アクチュエータ56によって支持され、第3アクチュエータ56の伸縮に応じて支軸55を支点に回動することにより、通常出銑口15、臨時出銑口17それぞれの閉塞に見合うように、マッドガン51のノズル先端の通常出銑口15、臨時出銑口17への位置決めを調整できるからである。
その結果、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業をしていくにあたり、常設した一台の出銑口閉塞装置50によって通常出銑口15と臨時出銑口17を閉塞することができるため、従来のような更に仮設の出銑口閉塞装置を用いる場合と比較して、格段に、閉塞作業が簡単であるし、その所要時間も短くて済む。従って、高炉の冷え込みからの復旧作業を効率良く行える。
通常出銑口15と臨時出銑口17が閉塞した後は、通常の高炉操業に移行する。
なお、第3アクチュエータ56としては、油圧式、電動式又は空圧式のもので、遠隔操作によって駆動するものを採用することが好ましい。遠隔操作ができれば、装置の近くでの作業が無くなるため、特に安全面で有利となるからである。もっとも、高炉の冷え込みが起こる頻度、すなわち臨時出銑口17の閉塞が必要となる頻度は、予測できないことから、手動操作用のものと遠隔操作用のもの採用の選択は、作業性とコストの兼ね合いから適宜判断する。特に制御性の観点から、油圧式又は電動式のものを採用することが望ましい。
次に、本発明の第4実施形態である出銑口閉塞装置について、図6を参照しながら説明する。本第4実施形態の特徴は、第3実施形態におけるマッドガン51のノズル52を着脱可能にして、臨時出銑口用領域7に開孔した臨時出銑口16を有効に閉塞できるように図った点にある。
図6は、第4実施形態である出銑口閉塞装置の側面図であって、特に、臨時出銑口用領域7に開孔した臨時出銑口16を閉塞する状況を示している。
同図に示すように、本第4実施形態の出銑口閉塞装置50では、第3実施形態におけるマッドガン51のノズル52を着脱可能にし、そのノズル52を、別途準備した治具である異形ノズル57に付け替えた。この異形ノズル57は、斜め上向きに伸び上がり、その先端が曲がって前方に向く形状となっている。つまり、異形ノズル57の先端の高さは、第3実施形態でのノズル52の先端よりも高くなっている。
このような構成の出銑口閉塞装置50は、臨時出銑口用領域7に開孔した臨時出銑口16を閉塞する際に用いられる。
臨時出銑口用領域7に開孔した臨時出銑口16を閉塞する際は、図6に示すように、上記した第3実施形態での通常出銑口15及び臨時出銑口17の閉塞時と同様にして、アクチュエータ54と一体でマッドガン51及び支持フレーム53が先ずは臨時出銑口用領域7の正面の待機位置におかれる。
次に、第3アクチュエータ56の縮む駆動がなされ、これに応じて、マッドガン51が支軸55を支点に後端部を引き上げられるように回動する。これにより、マッドガン51が水平よりも前部を下向きに傾けた姿勢の状態になる。この姿勢でマッドガン51の異形ノズル57の先端の高さは、臨時出銑口16の外部側の高さと一致する。
ここから、上記した第3実施形態での通常出銑口15及び臨時出銑口17の閉塞時と同様にして、アクチュエータ54が水平方向前方に進出することによりマッドガン51及び支持フレーム53が前進し、マッドガン51が閉塞位置に至る。この状態のとき、アクチュエータ54の進出力が作用して、マッドガン51の異形ノズル57が臨時出銑口16に密着するように押し付けられた状態になる。
そして、上記した第3実施形態での通常出銑口15及び臨時出銑口17の閉塞時と同様にして、マッドガン51のピストンを駆動する。これにより、異形ノズル57から閉塞材が押し出されて臨時出銑口16に圧入されていき、その結果、臨時出銑口16が閉塞材で完全に埋められて閉塞される。
一方、通常出銑口15や臨時出銑口用領域7への臨時出銑口16の閉塞時には、異形ノズル57を元のノズル52に付け替えて、上記の第3実施形態と同様にして、通常出銑口15及び臨時出銑口17が閉塞される。
このように、本第4実施形態の出銑口閉塞装置50によれば、通常出銑口用領域5に開孔した通常出銑口15を閉塞することができるし、通常出銑口用領域5内で通常出銑口15の直上に開孔した臨時出銑口17を閉塞することもでき、しかも、その通常出銑口15と羽口6との間という意味では同じ臨時出銑口用領域7に開孔した臨時出銑口16を支障なく有効に閉塞することもできる。つまり、通常出銑口15の閉塞と臨時出銑口16、17の閉塞に取り合いが可能である。これは、マッドガン51が、支持フレーム53に対し、支軸55及び第3アクチュエータ56によって支持され、第3アクチュエータ56の伸縮に応じて支軸55を支点に回動することに加え、ノズル52と異形ノズル57を適宜選択してマッドガン51に装着することにより、通常出銑口15、臨時出銑口16、17それぞれの閉塞に見合うように、マッドガン51のノズル先端の通常出銑口15、臨時出銑口16、17への位置決めを調整できるからである。
その結果、高炉の冷え込みが起こったときの復旧作業をしていくにあたり、常設した一台の出銑口閉塞装置50によって通常出銑口15と臨時出銑口16、17を閉塞することができるため、従来のような更に仮設の出銑口閉塞装置を用いる場合と比較して、格段に、閉塞作業が簡単であるし、その所要時間も短くて済む。従って、高炉の冷え込みからの復旧作業を効率良く行える。
通常出銑口15と臨時出銑口16、17が閉塞した後は、通常の高炉操業に移行する。
その他本発明は上記の各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。