JP4984933B2 - テーラードブランク用熱延鋼板およびテーラードブランク - Google Patents

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Description

本発明は、テーラードブランク用熱延鋼板およびテーラードブランクに関する。詳しくは、自動車用、家電用、機械構造用、建築用などの溶接工程を含む用途に用いられる素材として好適なテーラードブランク用熱延鋼板およびテーラードブランクに関する。
テーラードブランクとは、成形を施す前の状態で溶接ビードを含む鋼板および成形部品を意味する。板厚や強度またはその両方が異なる鋼板を、成形に先立ち溶接・接合し、その後に成形を行うテーラードブランク工法は、成形を一括して行うことができるため、金型点数やプレス成形加工の回数を減じることができ、コスト面で有利である。また、鋼板を適材適所に配置することができるので、結果的に材料コストや部品重量を削減できるという利点もあり、自動車をはじめとする輸送機器やその他産業機器の組み立て工程において、テーラードブランク工法の適応事例は増加している。
テーラードブランクの特徴は溶接後に一括成形を行うことであるから、成形時には鋼板の成形性のみならず、溶接金属・溶接熱影響部を含む溶接部の成形性もまた重要となる。
一般に、溶接部の成形性は母材よりも劣っている。この傾向は、母材強度が高い材料ほど強く現れる。このため、溶接後に成形を行った際に、成形性の低い溶接部または溶接熱影響部において破断が生じる場合や、形状不良を生じる場合があった。さらにこのような溶接部の成形性低下は、部材全体に占める溶接部の幅すなわち溶接入熱が大きいほど問題となりやすく、高い導入コストが必要なレーザ溶接では溶接後の成形が可能な材料であっても、より安価な溶接法であるアーク溶接などの溶接後成形には支障をきたす場合もあった。 特許文献1および2には、C含有量およびC当量をいずれも低減することによって、溶接部の成形性を高める方法が提案されている。
特許文献3には、C含有量およびC当量をいずれも低減する場合であっても所定の母材強度を得るべく、マルテンサイトやベイナイトといった変態組織を利用する方法が提案されている。
そして、特許文献4および5には、C含有量およびC当量をいずれも低減する場合であっても、結晶粒の微細化を利用することによって所定の母材強度を得る方法が提案されている。
特開2000−303139号公報 特開2001−131690号公報 特開平11―279682号公報 特開平11−152544号公報 特開平9−157790号公報
溶接部の成形性を向上し、これにより溶接部を含む鋼板の成形性を向上するためには、溶接部と母材の硬さのバランスを保つこと、すなわち溶接金属の著しい硬化や軟化を抑制することが必要である。
上記の特許文献1および2において提案された溶接部の成形性を高める方法では、鋼板の母材強度を確保することが困難であり、成形には適しても部品としての強度が得られない。
次に、上記特許文献3において提案されたマルテンサイトやベイナイトといった変態組織を利用する方法や、特許文献4および5において提案された結晶粒の微細化を利用する方法では、母材強度が向上した鋼板を得ることができる。しかしながら、その強化組織は、高温に弱いため、せっかく強化された組織が変化あるいは消失し易い。すなわち、溶接時の大きな入熱により溶接熱影響部において軟化が生じるため、溶接後に成形を行った際に軟化部での破断が生じ、テーラードブランク成形性低下の原因となる。
また、NbやTiなどの元素を含有させて鋼板強度を向上することも考えられるが、これらの元素は比較的高価であり、原料コストを増加させることになる。
本発明は、溶接金属の硬化や溶接熱影響部の軟化が少なく、成形性に優れた溶接部を有するテーラードブランク用熱延鋼板およびテーラードブランクを提供することを目的とする。
上記の問題を解決するためには、Cなどの焼入れ性を高める元素を多量に含有させないことで溶接金属の著しい硬化を抑制し、かつNbやTiなどの高価な元素を多量に含有することなく母材を強化することが必要となる。
上記を実現する材料強化方法として、結晶粒を微細化することにより強化を得ることが有効であると考えられる。
従来技術における組織微細化の手段としては、(i)大圧下圧延法、(ii)制御圧延法、(iii)合金元素添加法、もしくはこれらの組合せが挙げられる。
(i)大圧下圧延法は、圧下率を50%程度以上と大きくして、1パスの圧延で大きな歪みを蓄積させ、その後オーステナイトから微細フェライトへと変態させるか、もしくは大歪みを利用して比較的粗大なフェライトを微細フェライトへ再結晶させる手法である。かかる手法によれば、1000℃近傍以下の温度に加熱した後、700℃近傍の低温域で大圧下圧延を行うことによって、1〜3μmの超微細フェライト組織が得られる。しかし、この方法は、工業的に実現し難いばかりか、微細フェライト組織が熱処理によって粒成長し易いので、溶接を行うと溶接部が軟化する、あるいは溶融Znめっきを施すと所期の機械特性を失うなどの問題を有している。
(ii)制御圧延法は、一般的に800℃近傍以上の温度で、圧延1パス当たりの圧下率を20〜40%以下として、多パスの圧延を施した後、冷却する方法である。圧延温度をAr点近傍の狭い温度域にする方法、圧延のパス間の時間を短縮する方法、また、歪み速度と温度を制御してオーステナイトを動的再結晶させる方法などの多くの方法が開示されている。しかし、圧延後の冷却に関する検討は十分には行われていない。圧延の直後から水冷するほうが好ましいとされているが、直後冷却といっても圧延後0.2秒以上経過してからの冷却開始であり、冷却速度もせいぜい250℃/秒程度である。このような方法では、単純組成の低炭素鋼のフェライト結晶粒径は5μm程度にしかならない。したがって、機械特性を十分に高めることができない。
(iii)合金元素添加法は、オーステナイトの再結晶化や回復を抑制する合金元素の微量の添加によってフェライト結晶粒の微細化を促進するものである。Nb、Ti等の合金元素は、炭化物を形成したり、粒界に偏析したりして、オーステナイトの回復と再結晶を抑制するため、熱間圧延後のオーステナイト粒が微細化して、オーステナイトからの変態で得られるフェライト結晶粒も微細化する。この(iii)の合金元素添加法は、上記の(i)の大圧下圧延法や(ii)の制御圧延法と組み合わせて用いる場合が多い。この(iii)の合金元素添加法は、熱処理の際にもフェライトの粒成長を抑制する効果も持っている。しかし、フェライトの結晶粒径を小さくはするもののフェライトの体積率を低下させるという問題があり、また、超微細フェライト結晶粒の溶接や溶融Znめっき工程での粒成長を抑制するには不十分である。したがって、適用できる鋼種が限定される。また、添加する合金元素の分だけ、原料コストが嵩む。
しかしながら、これらの方法で微細な結晶組織の鋼板を得ても、その組織の熱的安定性は低い。従って、組織を微細化して鋼板の機械特性を高めたとしても、その後の溶接時に加えられる熱や溶融めっき工程で加えられる熱によって溶接熱影響部における結晶粒が容易に粗大化して強度を損なうという問題がある。
溶接時の熱により、溶接熱影響部における結晶粒粗大化にともなう溶接熱影響部軟化が生じた場合、テーラードブランクを成形する際に熱影響部での破断を招き、成形性を低下させる原因となる。
本発明者らは、微細フェライト結晶粒組織の機械特性と熱的安定性に対して種々の検討と実験を行った結果、機械的特性と熱的安定性をともに優れたものとするためには、(a)フェライトの平均結晶粒径を一定の範囲にとどめることに加えて、(b)A点直下の700℃近傍の温度におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の増加速度X(μm/min)と、この平均結晶粒径D(μm)の積D・X(μm/min)に上限を設けることが重要であることを見出した。また、より良好な熱的安定性を得るためには、(c)フェライトの結晶粒径の分布を一定の範囲にとどめ、かつフェライト結晶粒内に圧延による歪を残さないようにすることが好ましいことを見出した。
また、優れた成形性を持つ溶接ビードを得るためには、(d)溶接金属および熱影響部の硬化抑制を図ることと、(e)溶接熱影響部の軟化を抑制することが重要であることを見出した。
以下、(a)〜(f)において、本発明にかかる知見と検討・実験結果を詳述する。
(a) フェライトの平均結晶粒径を一定の範囲にとどめることについて
フェライトの結晶粒径は小さくなるほど強度が増加するが、結晶粒径が小さくなりすぎると粒界エネルギーによる粒成長の駆動力が増加するため、高温における粒成長が促進されてしまうことがわかった。具体的には、平均結晶粒径が1.2μmを下回るようになると、高温での粒成長を抑止することが困難になり、逆に、平均結晶粒径が2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)μmおよび7μmのいずれかを上回ると、微細化による機械的特性の向上が十分に期待できなくなることが判明した。したがって、機械的特性と熱的安定性を両立するためには、フェライトの平均結晶粒径の下限として1.2μmを採用し、そして、上限として2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)μmおよび7μmのうちの小さい方の値を採用する必要がある。
(b) A点直下の700℃近傍の温度におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の増加速度X(μm/min)と、この平均結晶粒径D(μm)の積D・X(μm/min)に上限を設けることについて
高温におけるフェライト結晶粒の粒成長速度は、温度の上昇とともに増加する。一方、一般に溶接や溶融めっき工程でフェライトの粒成長が問題となり得る温度域はA点(730℃近傍)直下からA点近傍までの高温域であり、この温度範囲でフェライトの粒成長速度は大きく変化する。しかし、フェライトの平均結晶粒径が上記の範囲内にある鋼板の粒成長速度の温度特性は、700℃近傍の温度におけるフェライトの粒成長速度、すなわち、フェライトの平均結晶粒径D(μm)の増加速度X(μm/min)と、この平均結晶粒径D(μm)の積D・X(μm/min)に上限を設ければ、溶接や溶融めっき工程でより高い温度に過熱された場合においても問題が発生しないことを見出した。そして、実験の結果、積D・Xを0.1μm/min以下に設定することが必要であることも判明した。なお、好ましくは、積D・Xは0.07μm/min以下であり、さらに好ましくは積D・Xは0.05μm/min以下である。
なお、さらに粒成長速度を低下させるためには、フェライト結晶粒内の転位密度を10/cm以下、より好ましくは10/cm以下とすることが好ましい。
(c)フェライトの結晶粒径の分布を一定の範囲にとどめることについて
さらに鋼板の熱的安定性を高めるためには、フェライトの結晶粒径の分布を一定の範囲にとどめるのが好ましい。高温での粒成長が生じる一因は、粒界のエネルギーに基づく駆動力であり、微細なフェライト組織の中に比較的大きなフェライト結晶粒が混在していると、大きなフェライト結晶粒が粒界を駆動力として周囲の微細なフェライト結晶粒と容易に一体化し、粒成長が急速に進展する。このため、高温でのフェライト結晶粒の粒成長速度を抑制するためには、フェライト結晶粒を微細化してその平均結晶粒径D(μm)を前記の(1)式及び(2)式を満足する一定の範囲にとどめることに加えて、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトのうち、面積割合でフェライト結晶粒の80%以上が、平均結晶粒径D(μm)の1/3から3倍の範囲に収まるような粒径分布となることが好ましい。すなわち、結晶粒径d(μm)が下記の(5)式を満足する結晶粒の占める面積割合が80%以上であることが好ましい。
D/3≦d≦3D・・・・・・・・・・・・・・・・(5)式
ここで、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を示す。
なお、より好ましくは90%以上のフェライト結晶粒が平均結晶粒径D(μm)の1/3から3倍の範囲に収まるような粒径分布となることである。
(d) 溶接金属および熱影響部の硬化抑制を図ることについて
溶接金属および熱影響部の著しい硬化により、溶接部の伸びは著しく低下し、この結果、溶接部を含む鋼板のテーラードブランク成形性は低下する。その効果は、部材または成形部分全体に占める溶接部の割合が大きいほど、すなわち溶接ビード幅が広いほど顕著となり、特にビード幅が板厚よりも広くなるような溶接部では、溶接金属および熱影響部硬化部(HAZ硬化部)の伸び低下に起因した成形不均一や溶接金属での割れを引き起こし易い。
一般に、溶接金属および熱影響部は、材料の焼入れ性が高いほど硬化しやすくなる。従って、焼入れ性の指標である(4)式に示すC当量(Ceq)を0.33以下とすることにより、溶接金属および熱影響部の硬化を抑制することが効果的である。
なお、溶接金属とは、ワイヤなどの溶接材(溶接補助剤などの添加剤を含んでもよい)と被溶接材が、溶接の過程において溶融し凝固した部分を指す。
(e) 溶接熱影響部での軟化を抑制することについて
溶接熱影響部に母材よりも低強度の領域であるHAZ軟化部が存在する場合には、テーラードブランク成形時に、軟化部での割れを生じ、テーラードブランク成形性低下の原因となる。したがって、良好なテーラードブランク成形性を得るためには、溶接部での硬化を抑制すると同時に、熱影響部の軟化も抑制する必要がある。溶接熱影響部の軟化は、溶接入熱が大きいほど、すなわち溶接ビード幅が広いほど問題となりやすい。
マルテンサイトは、低C量の成分系で材料強度を向上するためには有効な組織であるが、その強化は溶接熱サイクルに伴う相変態で消失しやすいため、これらの組織で材料を強化した場合には、熱影響部における軟化を引き起こし易い。従って、材料強度は結晶粒の微細化によってその向上を図ることとし、マルテンサイトによる強度向上手段は用いないことが必要となる。そのため、材料母材におけるマルテンサイト体積率を5%以下とすることによって、熱影響部の軟化を抑制し、溶接部のテーラードブランク成形性低下を防ぐこととする。
同様に、ベイナイトによる強化も溶接熱サイクルに伴う総変態で消失し易いため、ベイナイトによる母材強度向上を抑えるのが好ましい。そのため、材料母材におけるベイナイト体積率を50%以下にとどめることによって、熱影響部の軟化を抑制し、溶接部のテーラードブランクの成形性低下を防ぐことが好ましい。より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
また、結晶粒の微細化による強度向上を図る場合でも、溶接入熱により熱影響部のフェライト結晶粒が粗大化すれば軟化が生じ、成形性が低下することになる。これを抑制するためには、前述の(a)〜(c)に示す方法で結晶粒の熱的安定性を確保することが必要である。
溶接熱影響部においては、母材との境界から溶融境界まで、融点までの高温が連続的に分布している。このため、上記のようにして軟化原因を低減した場合にも、ある温度領域においては母材が有していた強化組織の消失は免れない。良好なテーラードブランク溶接性を得るためには、このような強化組織消失部において、強度低下を抑制することも肝要である。この領域では材料が高温にまで加熱されていることから、ある一定以上の焼入れ性を確保することにより、新たなマルテンサイトやベイナイトが出現する。これらの組織による強化を得ることで、母材が有していた強化相の消失に伴う強度低下分を補うことが出来る。種々の検討の結果、上記の効果を得るためには、焼入れ性の指標であるC当量(Ceq)を0.10以上とすることが必要である。好ましくは0.13以上、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.17以上である。
本発明は、このような知見と検討・実験結果に基づいて完成したものである。本発明の要旨とするところは、次の(1)〜(3)のテーラードブランク用熱延鋼板及び(4)〜(5)のテーラードブランクである。以下、それぞれ、本発明(1)〜本発明(5)という。本発明(1)〜(5)を総称して、本発明ということがある。
(1) C含有量が0.065〜0.148質量%、S含有量が0.003質量%以下であり、フェライトを主相とし、マルテンサイトの体積率が5%以下の炭素鋼または低合金鋼からなる鋼板であって、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)が下記の(1)式および(2)式を満足するとともに、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径の700℃における増加速度X(μm/min)と前記平均結晶粒径D(μm)が下記の(3)式を満足し、下記の(4)式で定義されるC当量(Ceq)が0.10〜0.308であることを特徴とする、テーラードブランク用熱延鋼板。
1.2≦D≦7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
D≦2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)・・・(2)式
D・X≦0.1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)式
Ceq=C+Mn/9+Si/24+Cr/5+Mo/4+Ni/40+V/14
・・・・・・・・・(4)式
ここで、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を、C、Mn、Si、Cr、Mo、NiおよびVは、それぞれ、鋼中の各元素の含有量(質量%)を、そして、Xは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の700℃における増加速度(μm/min)を示す。
(2) C含有量が0.065〜0.148質量%、S含有量が0.003質量%以下であり、フェライトを主相とし、マルテンサイトの体積率が5%以下かつベイナイトの体積率が50%以下の炭素鋼または低合金鋼からなる鋼板であって、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)が下記の(1)式および(2)式を満足するとともに、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径の700℃における増加速度X(μm/min)と前記平均結晶粒径D(μm)が下記の(3)式を満足し、下記の(4)式で定義されるC当量(Ceq)が0.10〜0.308であることを特徴とする、テーラードブランク用熱延鋼板。
1.2≦D≦7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
D≦2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)2・・・(2)式
D・X≦0.1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)式
Ceq=C+Mn/9+Si/24+Cr/5+Mo/4+Ni/40+V/14
・・・・・・・・・(4)式
ここで、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を、C、Mn、Si、Cr、Mo、NiおよびVは、それぞれ、鋼中の各元素の含有量(質量%)を、そして、Xは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の700℃における増加速度(μm/min)を示す。
(3) 鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、フェライトの結晶粒径d(μm)が下記の(5)式を満足するフェライト結晶粒のフェライトに占める面積割合が80%以上であることを特徴とする、上記(1)又は(2)のテーラードブランク用熱延鋼板。
D/3≦d≦3D・・・・・・・・・・・・・・・・(5)式
ここで、dはフェライトの結晶粒径(μm)、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を示す。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかのテーラードブランク用熱延鋼板からなる母材を少なくとも片側の一部又は全部に有し、溶接ビード幅(mm)の板厚(mm)に対する比が1.0以上である溶接部を有することを特徴とするテーラードブランク。
(5) 熱延鋼板からなる母材の表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さHvBMと、同じ深さにおける溶接金属の平均ビッカース硬さHvWMの差Hv(WM−BM)が下記の(6)式を満足することを特徴とする、請求項3に記載のテーラードブランク。
Hv(WM−BM)≦80・・・・・・・・・・・・・・・・(6)式
ここで、HvBMは母材の表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さを、そして、HvWMはこれと同じ深さにおける溶接金属の平均ビッカース硬さを示す。
本発明によれば、溶接工程を含む用途に用いられる素材として好適な熱的安定性に優れる熱延鋼板およびテーラードブランクを提供することができる。
以下に、本発明にかかるテーラードブランク用熱延鋼板およびテーラードブランクについて説明する。以下、各化学成分の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
(A)化学組成について
C:
Cは、オーステナイトからフェライトへの変態温度を低下させて、熱延の仕上げ温度を低下させることができるので、フェライト結晶粒の微細化を促進するのに有用な元素である。また、強度を確保するための元素である。このため、0.01%以上含有させることが好ましい。また、フェライト結晶粒の微細化をより促進するためには、0.03%以上含有させるのが好ましい。ただし、過度に含有させると、熱延後のフェライト変態が遅延し、フェライトの体積率が低下するため、また溶接性が劣化するため0.15%以下とすることが必要である。溶接部の加工性を向上させるためには、C含有量を0.11%以下とするのがより好ましい。
Si:
Siは、強度向上を目的として含有させることが好ましい。ただし、過剰に含有させると、延性の劣化が著しくなるうえに、熱間圧延時の表面酸化の問題が生じるので、Siの含有量を2.5%以下とすることが好ましい。より好ましくは2.0%以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。1.0%以下にすると、さらに一層好ましい。下限は不純物レベルでもよいが、体積率で3%以上の残留オーステナイトを生成させる場合には、Si+Alの総量で1%以上含有させることが好ましい。
Mn:
Mnは、強度確保のため、含有させることが好ましい。また、オーステナイトからフェライトへの変態温度を低下させて、熱間圧延における仕上げ温度を低下させることを可能にするので、フェライト結晶粒の微細化を促進するため、含有させることが好ましい。ただし、過度に含有させると、熱間圧延後のフェライト変態が遅延し、フェライトの体積率が低下するため、Mnの含有量を2.5%以下とすることが好ましい。より好ましくは2.2%以下であり、さらに好ましくは1.8%以下である。下限は不純物レベルでもよいが、強度向上を目的として添加する場合には、0.5%以上含有させることが好ましい。また、体積率で3%以上の残留オーステナイトを生成させる場合には、0.8%以上含有させることが好ましく、1.0%以上含有させることがより好ましい。
Al:
Alは、延性を向上させるため含有させてもよい。しかし、過度に含有させると、高温でのオーステナイトが不安定化し熱間圧延における仕上げ温度を過度に上昇させる必要が生じること、また、安定した連続鋳造を困難にすることから、Alの含有量を3%以下とすることが好ましい。下限は不純物レベルでもよいが、体積率で3%以上の残留オーステナイトを生成させる場合には、Si+Alの総量で1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは1.2%以上、さらに好ましくは1.4%以上である。
P:
Pは、強度を増加させるため、含有させても良い。しかし、過度に含有させると、粒界偏析による脆化が生じるので、含有させる場合には、含有量を0.5%以下とすることが好ましい。また、溶接性の観点から、より好ましくは0.05%以下がのぞましい。通常、製鋼段階で0.01%程度混入してくる。
Ti:
Tiは、炭化物又は窒化物として析出し強度を増加させるため、また、この析出物がオーステナイトやフェライトの粗大化を抑制して、熱延時の結晶粒の微細化を促進し、熱処理の際には粒成長を抑制するため、含有させても良い。ただし、過度に含有させると、熱延以前の加熱時に粗大なTi炭化物又は窒化物が多量に発生して、延性や加工性を阻害するので、含有量を0.3%以下とすることが好ましい。フェライトの生成を容易にするため、好ましくは[Ti+Nb]の総量で0.1%以下、より好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。なお、下限は不純物レベルでもよい。製鋼上、一般に0.001%程度は混入する。
Nb:
Nbは、炭化物又は窒化物として析出し強度を増加させるため、また、この析出物がオーステナイトやフェライトの粗大化を抑制して、熱延時の結晶粒の微細化を促進し、熱処理の際には粒成長を抑制するため、含有させても良い。ただし、過度に含有させると、熱延以前の加熱時に粗大なNbCが多量に発生して、延性や加工性を阻害するので、含有量を0.1%以下とすることが好ましい。フェライトの生成を容易にするため、好ましくは[Ti+Nb]の総量で0.1%以下、より好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%である。なお、下限は不純物レベルでもよい。製鋼上、一般に0.001%程度は混入する。
V:
Vは炭化物として析出し強度を増加させるため、また、この析出物がフェライトの粗大化を抑制して、結晶粒の微細化を促進するため、含有させても良い。ただし、Ti、Nbと同様な理由で、延性や加工性を阻害するので、含有量を1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下である。なお、下限は不純物レベルでもよい。製鋼上、一般に0.001%程度は混入する。
Cr:
Crは、焼き入れ性を増加させ、フェライト組織中にベイナイトを生成させ、強度を増加させる作用を有するため、この作用を目的として含有させても良い。ただし、多量に含有させるとフェライトの生成が抑制されるため、含有量を1%以下とすることが好ましい。なお、下限は不純物レベルでもよい。製鋼上、一般に0.02%程度は混入する。
Cu:
Cuは、低温で析出して強度を増加させる作用を有するため、これらの作用を目的として含有させても良い。ただし、スラブの粒界割れなどを引き起こすおそれがあるため、含有量を3%以下とすることが好ましい。より好ましくは2%以下である。なお、含有させる場合は、含有量0.1%以上とすることが好ましい。なお、下限は不純物レベルでもよい。製鋼上、一般に0.02%程度は混入する。
Ni:
Niは、高温でのオーステナイトの安定度を増加する目的で含有させても良い。また、Cuを含有させる場合はスラブの粒界脆化を防止するために含有させても良い。ただし、過度に含有させると、フェライトの生成が抑制されるため、含有量を1%以下とすることが好ましい。なお、下限は不純物レベルでもよい。製鋼上、一般に0.02%程度は混入する。
Mo:
Moは、MoCを析出し強度を増加させるため、また、この析出物がフェライトの粗大化を抑制して、結晶粒の微細化を促進するため、含有させても良い。ただし、Ti、Nbと同様な理由で、延性や加工性を阻害するので、含有量を1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下である。なお、下限は不純物レベルでもよい。製鋼上、一般に0.001%程度は混入する。
Ca、REM、B:
Ca、希土類元素(REM)やBは凝固中に析出する酸化物や窒化物を微細化して、鋳片の健全性を保つため、その1種又は2種以上を含有させても良い。ただし、高価であるため、総含有量で0.005%以下とすることが好ましい。下限は不純物レベルでもよい。ここで、希土類元素(REM)とは、ランタニドの15元素とYおよびScを合わせた17元素を意味する。
なお、鋼中に混入する「不純物」としてはS、N、Sn等が挙げられる。S、Nについては、できればその含有量を以下のように規制するのが望ましい。
S:
Sは硫化物系介在物を形成して加工性を低下させる不純物元素であるため、その含有量は0.05%以下に抑えるのが望ましい。そして、一段と優れた加工性を確保したい場合には、0.008%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.003%以下である。
N:
Nは加工性を低下させる不純物元素であり、その含有量は0.01%以下に抑えることが望ましい。より好ましくは、0.006%以下である。
(B)本発明に係るテーラードブランク用熱延鋼板の組織について
本発明に係るテーラードブランク用熱延鋼板は、フェライトを主相とし、主相とフェライト以外の第2相とからなる組織を有する鋼板である。ここで、「主相」とは組織を構成する相のうち当該組織に占める割合が最大となる相であるという意味である。主相のフェライトは、体積率で少なくとも50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上である。フェライトの体積率が50%未満では、鋼板の延性や加工性が損なわれる場合がある。
フェライトの結晶粒径(直径)は、テーラードブランク用熱延鋼板の機械特性と熱的安定性、さらには加工性に大きく影響する。したがって、本発明に係るテーラードブランク用熱延鋼板において、十分な強度と延性や熱的安定性さらには加工性を確保するために、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)を、下記の(1)式及び(2)式を満足する一定の範囲にとどめる必要がある。
1.2≦D≦7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
D≦2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)・・・(2)式
すなわち、その一定の範囲とは、1.2μmを下限とし、そして、2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)μm及び7μmのうちの小さい方の値を上限とする範囲のことである。なお、(2)式中で、CおよびMnは、それぞれ、鋼中の各元素の含有量(質量%)を示す。
ここで、フェライトの平均結晶粒径Dの下限を1.2μmとするのは、1.2μm未満では、加工硬化係数が極端に減少して延性や加工性が劣化するだけでなく、微細フェライト組織の熱的安定性も劣化して、高温下で容易に粒成長するからである。より優れた延性や加工性や熱的安定性を得るためには、フェライトの平均結晶粒径Dの下限を1.5μmとするのが好ましい。一方、フェライトの平均結晶粒径Dの上限を2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)μm及び7μmのうちの小さい方の値とするのは、これらのいずれかの値を超えると、十分な強度が得られなくなるからである。より優れた強度を得るためには、フェライトの平均結晶粒径Dの上限を、2.4+5000/(5+350・C+40・Mn)μm及び5.5μmのうちの小さい方の値を上限とするのが好ましい。なお、ここでは、15°以上の結晶方位差を持つ大角の粒界で囲まれた領域を1つの結晶粒と定義し、15°未満の小角の粒界は無視する。
さらに、テーラードブランク用鋼板の熱的安定性を高めるためには、フェライトの結晶粒径の分布を一定の範囲にとどめるのが好ましい。高温での粒成長が生じる一因は、粒界のエネルギーに基づく駆動力であり、微細なフェライト組織の中に比較的大きなフェライト結晶粒が混在していると、大きなフェライト結晶粒が粒界を駆動力として周囲の微細なフェライト結晶粒と容易に一体化し、粒成長が急速に進展する。このため、高温でのフェライト結晶粒の粒成長速度を抑制するためには、フェライト結晶粒を微細化してその平均結晶粒径D(μm)を上記の(1)式及び(2)式を満足する一定の範囲にとどめることに加えて、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトのうち、結晶粒径d(μm)が下記の(5)式を満足する結晶粒の占める面積割合が80%以上であることが好ましい。
D/3≦d≦3D・・・・・・・・・・・・・・・・(5)式
すなわち、面積割合でフェライト結晶粒の80%以上が、平均結晶粒径D(μm)の1/3から3倍の範囲に収まるような粒径分布となることが好ましい。好ましくは85%以上のフェライト結晶粒が平均結晶粒径D(μm)の1/3から3倍の範囲に収まるような粒径分布となることであり、より好ましくは90%以上のフェライト結晶粒が平均結晶粒径D(μm)の1/3から3倍の範囲に収まるような粒径分布となることである。
フェライトの結晶粒径とその分布を表面から板厚の1/4の深さで定義する理由は、熱延鋼板のフェライト結晶粒径は一般に板厚方向に変化するためである。本発明に係る鋼板は、この深さのフェライト結晶粒組織を上記の範囲にすることで、所望の機械特性と熱的安定性を確保することができる。特に粒径の熱的安定性は、板の表面から内部に渡る広い範囲で統計を取ったときの粒径分布で決まるのではなく、特定の深さで統計を取ったときの粒径分布で決まる。従って、板厚の1/4の深さで表面に平行な断面で組織観察を行うか、もしくは、表面に垂直な断面で観察するのであれば、板厚の1/4の深さから100μm以内の領域で観察を行い、統計を取る。
フェライト以外の第2相は、パーライト、セメンタイト、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトやFe以外の元素の炭窒化物など、一般に低炭素鉄鋼材料中に生成することが知られる相であれば良い。
引張強度TSと全伸びElの積が18000以上の伸び特性に特に優れ、かつ熱的安定性にも優れる鋼板を効率的に製造するには、第2相として残留オーステナイトを体積率で3〜30%含有させるとよい。残留オーステナイトの体積率が3%を下回ると伸び特性が阻害されるおそれがあり、30%を超えると熱的安定性が阻害されるおそれがある。第2相として含有させる残留オーステナイトの体積率は、5〜25%とするのが好ましい。
なお、フェライト以外の第2相としては、上記したものの外に、体積率で1%以下の微量の炭化物、窒化物、酸化物を含有させることもできる。これらには、Ti、Nb、V、Moの炭窒化物等がある。
(C)高温での粒成長速度について
フェライトの平均結晶粒径が上記の(1)式及び(2)式を満足する一定の範囲内にある鋼板の粒成長速度の温度特性は、700℃近傍の温度におけるフェライトの粒成長速度によって決定される。
したがって、溶接工程でより高い温度に加熱される場合には、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の700℃における増加速度X(μm/min)と当該平均結晶粒径D(μm)が下記の(3)式を満足することが必要となる。
D・X≦0.1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を示す。
すなわち、フェライトの平均結晶粒径の増加速度X(μm/min)と平均結晶粒径D(μm)の積D・X(μm/min)を、0.1μm/min以下に保つことで、溶接や溶融めっき工程における主要な熱履歴に対して安定となり、良好な熱的安定性が得られる。より優れた熱安定性を得るためには、積D・Xを0.07μm/min以下にするのが好ましく、0.05μm/min以下にするのがさらに好ましい。
なお、後掲する実施例2及び3に示すように、フェライトの平均結晶粒径の増加速度X(μm/min)と平均結晶粒径D(μm)の積D・X(μm/min)が、0.1μm/min以下である鋼板のフェライト結晶粒組織は、850℃で数十秒熱処理しても、殆ど粒径の変化を示さない。本発明に係る鋼板のフェライトの結晶粒径(直径)は、時間の平方根に比例する通常の粒成長とは異なり、700℃ではほぼ時間に比例して増加する。したがって、フェライトの平均結晶粒径の増加速度X(μm/min)は、700℃で1時間程度の間の粒径変化を測定して、その変化率を平均することによって、求めることとする。
また、さらに粒成長速度を低下させるためには、フェライト結晶粒内の転位密度を10/cm以下、より好ましくは10/cm以下とすることが好ましい。
(D)溶接部のテーラードブランク成形性について
溶接金属および熱影響部の著しい硬化により、溶接部の伸びは著しく低下し、この結果、溶接部を含む鋼板のテーラードブランク成形性は低下する。
一般に、溶接金属および熱影響部は、材料の焼入れ性が高いほど硬化しやすくなる。従って、焼入れ性の指標であるC当量(Ceq)を0.33以下とすることにより、溶接金属および熱影響部の硬化を抑制することが効果的である。C当量が0.33を超えるような成分系では、溶接金属および熱影響部における焼入れ性が高すぎるために、広範囲にわたり高体積率でマルテンサイトが出現し、溶接部の著しい硬化を引き起こし、テーラードブランクの成形時に十分な成形特性得られない、または溶接金属内あるいは熱影響部での破断を起こす。
なお、組成の異なる2種の材料を溶接する場合には、溶接金属の硬さは、溶接金属の組成と溶接条件により、ほぼ決定される。そして、これらのうち溶接金属の成分は、接合される2種の材料各々の組成と、その溶融量の割合により決定される。したがって、被溶接材の一方又は両方の組成とC当量を上記の範囲に納める事により、結果的に溶接金属の硬化量を低減することができる。
一方、溶接熱影響部に母材よりも低強度の領域であるHAZ軟化部が存在する場合にも、テーラードブランク成形時に、軟化部での割れを生じ、テーラードブランク成形性低下の原因となる。したがって、良好なテーラードブランク成形性を得るためには、溶接部での硬化を抑制すると同時に、軟化も抑制する必要がある。溶接熱影響部の軟化は、溶接入熱が大きいほど、すなわち溶接ビード幅が広いほど問題となりやすい。
マルテンサイトは、低C量の成分系で材料強度を向上するためには有効な組織であるが、その強化は溶接熱サイクルに伴う相変態で消失しやすいため、これらの組織で材料を強化した場合には、熱影響部における軟化を引き起こし易い。従って、材料母材におけるマルテンサイト体積率を5%以下とし、マルテンサイトによる強化量をあらかじめ抑制することにより、熱影響部の軟化を抑制し、溶接部のテーラードブランク成形性低下を防ぐことが出来る。母材組織に体積率5%を超えるマルテンサイトが存在する場合、溶接後のマルテンサイト消失領域における強度低下量が大きく、成形時に強度低下部での破断を生じる。
また、結晶粒微細化による強化でも、熱的安定性が十分に確保されていない超微細粒鋼板においては、溶接熱影響部で結晶粒の粗大化に伴う軟化が生じ、成形時に軟化部での破断を生じる。
溶接熱影響部においては、母材との境界から溶融境界まで、融点までの高温が連続的に分布している。このため、上記のようにして軟化原因を低減した場合にも、ある温度領域においては母材が有していた強化組織の消失は免れない。良好なテーラードブランク溶接性を得るためには、このような強化組織消失部において、強度低下を抑制することも肝要である。この領域では材料が高温にまで加熱されていることから、ある一定以上の焼入れ性を確保することにより、新たなマルテンサイトやベイナイトが出現する。これらの組織による強化を得ることで、母材が有していた強化相の消失に伴う強度低下分を補うことが出来る。種々の検討の結果、上記の効果を得るためには、焼入れ性の指標であるC当量(Ceq)を0.10以上とすることが好ましい。C当量(Ceq)を0.10未満の材料では、溶接部に強化組織の消失による強度低下領域が生じ、成形時の熱影響部破断を引き起こす場合がある。さらにC当量(Ceq)が低い材料系においては、溶接金属においても焼入れ組織が得られず、母材より溶接部の強度が低いアンダーマッチ継手となるため、成形時に溶接金属での破断を生じることもある。
以上のように、溶接金属の過度の硬化と溶接熱影響部の軟化を抑えることに加え、均一な成形を得るためには、溶接部の硬さ分布を平滑にすることが好ましい。
発明者らは、種々の検討の結果、熱延鋼板からなる母材の表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さHvBMと、同じ深さの溶接金属のビッカース硬さHvWMの差Hv(WM−BM)を一定範囲に規定することによって、均一な成形が得られることを見出した。
この差Hv(WM−BM)が80を超えると、溶接部各所の材料特性差異が大きいため、成形時に不均一な伸びが生じ、目標とする形状を得がたい場合があるだけでなく、材料特性の差異が大きい場合には、低強度部位や硬さ遷移部に応力集中が生じやすく、成形の早い段階で破断が生じ、十分な成形が得られなくなる危険性がある。したがって、熱延鋼板からなる母材の表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さHvBMと、同じ深さにおける溶接金属のビッカース硬さHvWMの差Hv(WM−BM)が下記の(6)式を満足するテーラードブランクとするのが好ましい。なお、より好ましくは、Hv(WM−BM)が70以内、さらに好ましくは50以内である。
Hv(WM−BM)≦80・・・・・・・・・・・・・・・・(6)式
ここで、HvBMは母材の表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さを、そして、HvWMはこれと同じ深さにおける溶接金属の平均ビッカース硬さを示す。
なお、板厚または強度の異なる材料を組み合わせて溶接する場合における、表面より板厚の1/4の深さの測定位置としては、図2に示す試験片(2)の形状で成形試験を行った際に破断した側の材料における表面より板厚の1/4の深さを採用する。
図1に、板厚の異なる材料を組み合わせて溶接する場合におけるビッカース硬さの測定位置と測定値の例を示す。(a)が表面より板厚の1/4の深さの測定位置の決定方法であり、(b)が表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さの測定値の例である。
(E)圧延について
圧延は、1000℃を超える温度から、レバースミルもしくはタンデムミルを用いて、オーステナイト温度域で行う。工業的生産性の観点からは、少なくとも最終の数段はタンデムミルを用いるのが好ましい。
連続鋳造や鋳造・分塊により得たスラブ、ストリップキャスティングにより得た鋼板などや、必要によってはそれらに一度、熱間又は冷間加工を加えたものを用い、それらが冷片であれば1000℃を超える温度に再加熱して圧延する。圧延の開始温度が1000℃以下になると、圧延荷重が過大になり、十分な圧延率を得ることが困難になるばかりか、十分な圧延率の圧延をAr点以上の温度で終了することも困難となり、所望の機械特性や熱的安定性を得られなくなる。好ましくは1025℃以上、より好ましくは1050℃以上の温度から圧延を開始する。上限は、オーステナイト粒の粗大化を抑制するため、また、設備費用や加熱燃料費を抑制するため、1350℃以下、好ましくは1250℃以下とする。初期のオーステナイト結晶粒が微細化し、最終のフェライト結晶粒も微細化し易くなるためである。
圧延仕上げ温度は、圧延後にオーステナイトからフェライトへと変態させるためにAr点以上かつ780℃以上の温度範囲とする。仕上げ温度が、Ar点を下回ると、圧延中にフェライトが発生する。また780℃未満の温度では、圧延荷重が増大し、十分な圧下を加えることが困難となるばかりか、圧延中に板表層部でフェライト変態が生じる場合がある。好ましくは、Ar点以上かつ800℃以上の温度で圧延を終了する。
なお、圧延を終了する温度は、Ar点以上かつ780℃以上の温度範囲であれば低い程良い。これは、圧延によってオーステナイトに導入された加工歪みの蓄積効果が大きくなり、結晶粒の微細化が促進されるためである。本発明で用いる鋼種のAr点は、概ね780〜900℃である。
総圧下量は、フェライトの微細化を促進するため板厚減少率で90%以上、好ましくは92%、より好ましくは94%以上である。圧延終了温度から[圧延終了温度+100℃]までの温度範囲における板厚減少率で40%以上とすることが好ましい。より好ましくは、圧延終了温度から[圧延終了温度+80℃]までの温度範囲における板厚減少率で60%以上である。圧延は、連続した複数パスの圧延とする。1パス当たりの圧下量は、好ましくは15〜60%である。1パス当たりの圧下量を大きく取る方がオーステナイトへの歪みを蓄積させ、変態によって生成するフェライトの結晶粒径を微細化する意味からは好ましいが、圧延荷重の増大が必要となるので、圧延設備が大型化するだけでなく、板形状の制御も困難になる。本発明の方法では、1パス当たりの圧下量を40%以下とした複数パスの圧延でも微細なフェライト結晶粒を得ることができる。したがって、特に板形状の制御を容易にしたいときには、最終の2パスの圧下率を40%/パス以下とすることが好ましい。
(F)圧延後の冷却について
圧延を終了後、オーステナイトに導入された加工歪みを解放することなく、これを駆動力としてオーステナイトからフェライトへと変態させ、微細なフェライト結晶粒組織を生成させるために、圧延終了から0.4秒以内に720℃以下の温度まで冷却する。好ましくは圧延終了から0.2秒以内に720℃以下の温度まで冷却する。冷却は、水冷を用いるのが望ましく、そして、その冷却速度は、空冷期間を除外し強制冷却を行っている期間の平均冷却速度として、400℃/秒以上とするのが、好ましい。
ここで、720℃以下の温度に冷却されるまでの時間を規定する理由は、720℃を超える温度で、冷却を停止もしくは鈍化させると、微細なフェライトが生成する以前に、加工によって導入された歪みが解放されて、又は、歪みの存在形態が変化して、フェライトの核生成に有効ではなくなり、フェライト結晶粒が顕著に粗大化するためである。
温度が720℃以下に達すると、フェライト変態が活発化する変態温度域に入る。上記のフェライト組織が得られるフェライト変態温度域は、この温度から600℃までの間の温度域である。したがって、720℃以下に達した後、冷却を一次停止、もしくはその速度を鈍化させて、この温度域で2〜30秒保持させることによって、上記の熱的に安定なフェライト結晶粒組織の形成を確実にすることができる。この温度域での保持時間が短いと上記の熱的に安定なフェライト結晶粒組織の形成が阻害されるおそれがある。より好ましくは、620〜700℃の温度域で2〜25秒滞留させるのがよい。
体積率で3%以上の残留オーステナイトが分散した複相組織とする場合は、上述の冷却および保持の後、20℃/s以上の冷却速度で350〜500℃の温度域まで冷却し、その後、60℃/hr以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。この徐冷は鋼板をコイル状に巻取ることによって行ってもよい。400〜500℃の温度域での冷却速度を50℃/s以上とすることがより好ましい。
(G)冷却設備について
本発明において、上記の冷却を行う設備は限定されない。工業的には、水量密度の高い水スプレー装置を用いることが好適である。例えば、圧延板搬送ローラーの間に水スプレーヘッダーを配置し、板の上下から十分な水量密度の高圧水を噴射することで冷却することができる。
表1に示す化学組成を有する鋼種A〜D及びF〜Uの鋼を溶製し、熱間鍛造によって30mm厚さにした。その後、1050℃以上に再加熱した後、試験用小型タンデムミルにて圧延を実施し、2mmの板厚に仕上げた。
Figure 0004984933
表2に、その圧延仕上げ温度と冷却条件を示す。すべての圧延において、圧延の仕上げ温度は、各鋼種のAr点よりも高い温度とし、さらに、仕上げ温度〜[仕上げ温度+100℃]の温度域内で3パス以上の多パス圧延を行った。最終の2パスの圧延は、試験番号5を除いて35%/パス以下の軽圧下圧延とした。試験番号5については最終の2パスを50〜60%の大圧下圧延とした。圧延仕上げ後は、表2に記載したとおり、水冷によって、室温(RT)〜600℃の温度域内の所定の温度まで冷却した。なお、水冷後に空冷時間を設けることで600〜720℃における保持時間を設けた。表2には、720〜600℃の温度域における保持時間に加えて、そのうちの620〜700℃の温度域における保持時間をも示した。その後、表2に記載した冷却速度で、室温までの水冷を行うか、又は、600℃以下の所定の温度までの水冷後に巻取り相当の熱履歴の模擬として炉中で20℃/hrの冷却速度で炉冷を行うことによって、種々の第2相の組織を有する鋼板を作製した。
Figure 0004984933
このようにして得られた熱延鋼板の組織について、走査電子顕微鏡を用いることによって鋼板板厚の断面を観察した。
フェライトの結晶粒径およびその粒径分布については、板表面から板厚の1/4の深さにて、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法を用いて結晶方位解析を行うことで求めた。各相の体積率の測定は、板表面から板厚の1/4の深さにて、ナイタール又はピクリン酸で腐食した組織を走査型電子顕微鏡または光学顕微鏡を用いて観察することで行った。なお、本実施例で製造した鋼板のフェライト相以外の第2相の組織は、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイト、そして、粒状セメンタイトであった。
機械的性質については、引張特性をJIS5号引張試験片にて行い、引張強度TS(MPa)、降伏比YR及び全伸びEl(%)を評価した。
熱的安定性については、700℃の塩浴に10、30又は60分間浸した後、急冷し、上記と同じ方法で粒径を測定し、焼鈍前粒径d0(μm)と焼鈍後粒径d1(μm)の差を、焼鈍時間(min)で割り算をすることによって、平均結晶粒径の増加速度X(μm/min)を算出した。
表3に、このようにして得られた熱延鋼板の組織とその性質および引張試験結果を示す。
Figure 0004984933
表4に示すとおり、試験番号本発明品を含む種々の材料にメルトラン溶接を行い、溶接部を含む試験片の成形試験を行った。ここで、メルトラン溶接とは、材料を突合せず、一枚板にビームやアークを照射して溶接を行うことである。なお、この試験では溶接用ワイヤは用いず、被溶接材料のみを溶融することで溶接を行った。また、試験番号1、2および8〜11が本発明鋼であり、本発明鋼のうち、試験番号7、8および13に使用した供試材は引張強度TSが440MPa級、1〜6、9〜11、15および17は590MPa級、その他は650MPa級以上の鋼種である。
Figure 0004984933
得られた溶接部の特性評価は、板厚2.0mm、板幅50mm、板長100mmの試験片により、直径50mmの球頭張り出し試験を用いて実施した。球頭張り出し試験体1の形状を図2に示す。(a)が長手方向に溶接ビード2を配置した試験片(1)であり、そして、(b)が板幅方向に溶接ビード2を配置した試験片(2)である。試験は、これらの2つの形状で行った。試験片は、いずれも、圧延方向と溶接方向が直交となるよう溶接を施しており、溶接の始終端部は通り抜けとした。球頭張り出し試験体1を、溶接部からそれぞれ切り出して、その形状を◎〜×で評価するとともに、破断位置を観察した。
なお、形状の評価基準は、試験片(1)及び(2)とで、×を除いて同じであり、次に示すとおりである。
◎:20mm以上、
○:18mm以上20mm未満、
△:15mm以上18mm未満、
×:15mm未満。ただし、試験片(2)においては、溶接金属およびHAZ軟化部で破断が生じた場合には、成形高さにかかわらず×とした。
試験片(1)での試験の結果は、全ての試験番号において、溶接金属での破断となった。試験片(1)では、どの鋼種においても、溶接金属への負荷が大きいため、溶接金属での破断となったものである。これは、溶接金属の伸び特性が母材と比較して劣るためであり、溶接金属の伸び特性が部材の成形性に対し支配的な要因となることは明白である。
溶接金属の硬さ測定結果を同じく表4に示す。強度レベル590MPa級の鋼種のうち、試験番号1、2、5、9〜11、15および17は、それぞれ同強度の他の鋼種と比べ、溶接金属の硬化が低いレベルに抑えられている。これら6つの鋼種では、成形高さが18〜20mm程度得られたのに対し、試験番号3、4および6の成形高さは15〜17mmであった。同様に、強度レベル440MPa級4の鋼板を供試材とした試験番号7、8および13を比較した場合にも、試験番号8および13に示す発明鋼の方が溶接金属の硬化が少なく、成形高さも得ることができた。試験番号12、14、16および18に示す母材強度650MPa以上の材料については、一般に母材強度が上昇する事により、成形高さは得られ難くなるところ、これらの材料はいずれも、強度レベルに対して十分な成形高さが得られた。特に発明鋼16は、溶接金属の硬化が少なく、良好な成形特性を示した。
これに対して、試験片(2)での試験の結果は、試験番号5および13を除いて、いずれも母材または加工フランジ部で破断した。したがって、試験番号5および13以外の鋼種では、成形性は主として母材特性に支配されているものと推測される。なお、試験番号5および13の鋼種だけが溶接金属内で破断し、成形高さも他の材料と比較して劣っていたが、溶接ビードに直交する断面を切出し、溶接部の硬さ分布を測定した結果、試験番号5および13の鋼種においては、溶接金属の平均硬さが母材の平均硬さを大きく下回る継手となっていた。また、試験番号13についても同様の方法で溶接部の硬さ分布を測定した結果、試験番号8の鋼種においては、成形試験における破断位置近傍では、溶接熱影響部軟化が生じていることがわかった。
実施例1および2に示した強度レベルが590MPa級の鋼種に対して、種々の厚さおよび強度を持つ材料を付き合わせ溶接し、図2に示す試験片(1)および試験片(2)の両方で溶接部の成形試験を行った。結果を表5に示す。
なお、ここで、溶接の相手材は、aがSPCC(JIS G 3141参照)である。
Figure 0004984933
試験片(1)の場合には、すべての組合せにおいて、溶接金属内での破断が生じた。このうち、試験番号1、3、5〜7および9は、同一の材料を組み合わせてなる例であり、板厚のみが異なる。本発明例に係る試験番号1および3は、比較例に係る試験番号5〜7および9と比べて高く成形できた。溶接ビードに直行する断面を切り出し、溶接部の硬さ分布を測定した結果、試験番号1および3の溶接金属の平均硬さHvWMと母材の平均硬さHvBMの差Hv(WM−BM)が50以下であった。これに対して、試験番号5、6および9の溶接金属のHv(WM−BM)は大きく、試験番号7に示す材料においては、溶接金属の硬さHvWMが母材の平均硬さHVBMを大きく下回っていた。
試験番号2、4および8は、低強度かつ板厚の大きい材料と組み合わせた例であり、本発明例に係る試験番号2および4の成形高さは、比較例に係る試験番号8と比べて大きかった。上記と同様の手法で溶接部の硬さ分布を測定した結果、試験番号8は溶接金属の硬さHvWMが母材の平均硬さHVBMを大きく下回っていた。
次に、試験片(2)を用いた溶接部の成形試験の結果について説明する。すべての条件の中で、比較鋼F同士の2.0mmと2.3mmを組み合わせてなる試験番号7だけが溶接金属での破断となった。この材料については、溶接金属の硬さHvWMが母材の平均硬さHVBMを大きく下回っていた。
上記の試験番号7を除いては、すべての材料において母材1側で破断が生じた。このうち、本発明例に係る試験番号1〜4、5および8は、他と比較して溶接金属の硬さHvWMが小さく、良好な成形高さを示した。
本発明に係るテーラードブランク用熱延鋼板およびテーラードブランクは、自動車用、家電用、機械構造用、建築用などの溶接工程を含む用途に好適である。
板厚の異なる材料を組み合わせて溶接する場合におけるビッカース硬さの測定位置と測定値の例を示す。(a)が表面より板厚の1/4の深さの測定位置の決定方法であり、(b)が表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さの測定値の例である。 球頭張り出し試験体の形状を示す。(a)が長手方向に溶接ビード2を配置した試験片(1)であり、(b)が板幅方向に溶接ビード2を配置した試験片(2)である。いずれも、左側が試験前であり、右側が試験後である。
符号の説明
1 球頭張り出し試験体
2 溶接線

Claims (5)

  1. C含有量が0.065〜0.148質量%、S含有量が0.003質量%以下であり、フェライトを主相とし、マルテンサイトの体積率が5%以下の炭素鋼または低合金鋼からなる鋼板であって、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)が下記の(1)式および(2)式を満足するとともに、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径の700℃における増加速度X(μm/min)と前記平均結晶粒径D(μm)が下記の(3)式を満足し、下記の(4)式で定義されるC当量(Ceq)が0.10〜0.308であることを特徴とする、テーラードブランク用熱延鋼板。
    1.2≦D≦7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
    D≦2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)・・・(2)式
    D・X≦0.1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)式
    Ceq=C+Mn/9+Si/24+Cr/5+Mo/4+Ni/40+V/14
    ・・・・・・・・・(4)式
    ここで、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を、C、Mn、Si、Cr、Mo、NiおよびVは、それぞれ、鋼中の各元素の含有量(質量%)を、そして、Xは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の700℃における増加速度(μm/min)を示す。
  2. C含有量が0.065〜0.148質量%、S含有量が0.003質量%以下であり、フェライトを主相とし、マルテンサイトの体積率が5%以下かつベイナイトの体積率が50%以下の炭素鋼または低合金鋼からなる鋼板であって、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)が下記の(1)式および(2)式を満足するとともに、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径の700℃における増加速度X(μm/min)と前記平均結晶粒径D(μm)が下記の(3)式を満足し、下記の(4)式で定義されるC当量(Ceq)が0.10〜0.308であることを特徴とする、テーラードブランク用熱延鋼板。
    1.2≦D≦7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
    D≦2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)・・・(2)式
    D・X≦0.1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)式
    Ceq=C+Mn/9+Si/24+Cr/5+Mo/4+Ni/40+V/14
    ・・・・・・・・・(4)式
    ここで、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を、C、Mn、Si、Cr、Mo、NiおよびVは、それぞれ、鋼中の各元素の含有量(質量%)を、そして、Xは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の700℃における増加速度(μm/min)を示す。
  3. 鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、フェライトの結晶粒径d(μm)が下記の(5)式を満足するフェライト結晶粒のフェライトに占める面積割合が80%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のテーラードブランク用熱延鋼板。
    D/3≦d≦3D・・・・・・・・・・・・・・・・(5)式
    ここで、dはフェライトの結晶粒径(μm)、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を示す。
  4. 請求項1から3までのいずれかに記載のテーラードブランク用熱延鋼板からなる母材を少なくとも片側の一部又は全部に有し、溶接ビード幅(mm)の板厚(mm)に対する比が1.0以上である溶接部を有することを特徴とするテーラードブランク。
  5. 熱延鋼板からなる母材の表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さHvBMと、同じ深さにおける溶接金属の平均ビッカース硬さHvWMの差Hv(WM−BM)が下記の(6)式を満足することを特徴とする、請求項4に記載のテーラードブランク。
    Hv(WM−BM)≦80・・・・・・・・・・・・・・・・(6)式
    ここで、HvBMは母材の表面から板厚の1/4の深さにおける平均ビッカース硬さを、そして、HvWMはこれと同じ深さにおける溶接金属の平均ビッカース硬さを示す。
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