JP4982847B2 - Ganpによる癌抑制遺伝子の活性化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、GANP遺伝子の発現を促進することを特徴とするp53癌抑制遺伝子の活性化方法、及び抗体の親和性を増大させる方法に関する。
哺乳動物において、細胞はDNAを損傷する薬剤やストレスに常にさらされている。これらの損傷やストレスの問題を弱めるために、細胞は、センスDNAの損傷および損傷DNAの複製に対するいわゆるチェックポイントと呼ばれる複雑な制御ネットワーク、細胞周期の停止およびDNA修復を惹起している(Zhou and Elledge, 2000)。p53タンパク質は、広範な細胞プロセスの制御においてゲノムの見張り役として働く(Lane, 1992; Vogelstein et al., 2000)。いくつかの細胞ストレスのうち最も顕著なDNA損傷は、p53の活性化であり、p53は細胞周期の停止、アポトーシス、またはDNA修復の鍵となる分子をコードするいくつかの遺伝子の転写制御を誘導する(Zhivotovsky and Kroemer, 2004)。通常、p53タンパク質は、速やかに代謝回転されるため存在量は極めて少量である。
さまざまなストレス刺激に対する応答として、p53タンパク質は、転写促進ドメインに結合し、p53のユビキチン化と分解のアンタゴニストであるMdm2、または転写後修飾にいくつかの部位においてp53をリン酸化するDNA-PKおよびATM kinaseなどの多くのタンパク質によって安定化され、活性化される(Sionov and Haupt, 1999; Lakin and Jakson, 1999)。p53は、多くの種において、腫瘍の成長を阻害するのに必須である。ヒトの乳ガンでは、p53遺伝子は高頻度の変異を示す。Li-Fraumeni患者において観察されるように、生殖細胞においてp53が変異すると、乳ガンに罹患しやすいことを示している(Srivastava et al., 1990)。
マウスのp53 nullアリールのホモ接合体は、主としてリンパ腫によって4-6月齢で死ぬが(Donehower et al., 1992)、BALB/cバックグラウンドのnull変異マウスでは、顕著な数の乳ガンが進行する(Kuperwasser et al., 2000)。p53は、すべての腫瘍の50%と計算されるとおり、生殖細胞の変異によって不活性化されるが、他の複数のメカニズムによっても不活性化される。
GANPは210-kDaのタンパク質であり、細胞増殖に重要と考えられるさまざまな興味深い領域を有する(Kuwahara et al., 2000; Abe et al., 2000)。哺乳動物のGANPは、もともと、T細胞依存的抗原で免疫した後のリンパ濾胞の胚中心のB細胞においてアップレギュレートしている核タンパク質として同定された。カルボキシル末端の700アミノ酸領域は、細胞周期の進行中のDNA複製に必要なミニ染色体の維持(MCM)複合体のMCM3に結合する。
ヒトにおいて、カルボキシル末端を切断した転写産物は、MCM3輸送複合体のコンポーネントであるMCM3APとして同定されている(Takei and Tsujimoto, 1998)。その後、MCM3APはMCM3のアセチル化による転写制御において必要であることが示された(Takei et al., 2001)。GANPのアミノ末端側の150アミノ酸領域は、従来のRNA/DNAプライマーゼα複合体のRNAプライマーゼαサブユニットp49に類似しており、α複合体は、p49, p58およびDNAポリメラーゼαのp180から構成される(Arezi and Kuchta, 2000)。GANPのRNAプライマーゼ相同領域は、in vitroでRNAプライマーを生じ、DNAポリメラーゼによってDNA鎖が開始に使用される(Kuwahara et al., 2001)。マウスおよびヒトGANPの中央部分は、Saccharomyces cerevisiae Sac3に高い相同性を有し(アミノ酸配列で23%)、Sac3のnull変異体は成長遅延および細胞周期の分裂遅延を示した(Bauer and Kolling, 1996)。Sac3はもともとアクチン変異体の相補的な遺伝子の一つとして同定されたが、このタンパク質は核のみで検出される。
最近、いくつかのグループによって、Sac3pはmRNA輸送系にとって必須であることが報告されている(Fischer et al., 2002(非特許文献1); Lei et al., 2003(非特許文献2))。Sac3pは、Thp1pと関連して、核から細胞質へのmRNAの輸送に必要である。Aguileraらが同時に発表したように、Sac3欠損変異体は、DNAのhyper recombinationを酵母細胞で示した(Gallardo et al., 2003(非特許文献3))。しかし、mRNAの核輸送の変化がどのようにDNAのhyper recombinationと関係するのかについて、その分子機構は明らかにはされていない。
Fischer et al., EMBO J. 21:5843-52, 2002; Lei et al., Mol. Biol. Cell 14:836-47, 2003. Gallardo et al., J. Biol. Chem. 278:24225-32, 2003
本発明は、GANP遺伝子の発現を促進することを特徴とするp53癌抑制遺伝子の活性化方法、および抗体の親和性を増大させる方法を提供する。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、GANPのヘテロノックアウトマウスにおいて、p53遺伝子の発現が低下し、また、遺伝子の二本鎖切断が抑制されることを見出した。p53は癌抑制遺伝子であることから、GANPの発現を促進することによりp53を活性化させ、癌の抑制を導くことができると考えられる。さらに、GANPの発現を促進することにより相同組換えを抑制して免疫グロブリンV領域における二本鎖切断を修復させ、高親和性抗体を産生することができると考えられる。
本発明は、上記の知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、細胞内においてGANP遺伝子の発現を促進することを特徴とする癌抑制遺伝子の活性化方法である。
また、本発明は、細胞内においてGANP遺伝子の発現を促進することを特徴とする、抗体の親和性を増大させる方法である。
さらに、本発明は、細胞内においてGANP遺伝子の発現を促進することを特徴とするDNA修復方法である。
さらに、本発明は、細胞内においてGANP遺伝子の発現を促進することを特徴とするゲノムの安定化方法である。
さらに、本発明は、GANP遺伝子を含む、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、DNA修復剤又はゲノムの安定化剤である。本発明の抗ウイルス剤において、ウイルスとしては、例えばHIV、HCVおよびHBVからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
本発明により、p53癌抑制遺伝子の活性化方法及び抗体の親和性を増大させる方法が提供される。p53は癌抑制遺伝子であることから、本発明では抗癌活性を高めることができる。また、GANP遺伝子の発現を促進すると抗体の親和性を高めることができることから、本発明の方法は高親和性抗体の産生に極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、GANP遺伝子を用いたp53癌抑制遺伝子の活性化方法及び抗体の親和性を増大させる方法である。
末梢B細胞が抗原刺激を受けると、末梢リンパ組織の胚中心において急速に抗体クローンの増大が引き起こされる。胚中心では、(i)V領域の体細胞突然変異が生じ、それに続いて、 (ii) 抗体の親和性成熟、クラススイッチ、メモリーB細胞への分化及びプラズマ細胞への分化が起こる。従って、胚中心では抗原特異的B細胞の増殖及び分化の場として極めて重要である。
本発明者は、胚中心で選択的に発現が上昇する核内因子として、GANP(germinal center-associated nuclear protein)を同定し、この分子は、DNA複製に必須の分子であるMCM(minichromosome maintenance)3と結合するRNAプライマーゼであることを示してきた。GANPは酵母の遺伝子SAC3と相同な領域を有しており、遺伝子再構成の調節に関与することが示される。
本明細書では、GANPがp53癌抑制遺伝子に関与して発ガン阻止機能を有することを説明する。また、GANPが相同組換えを抑制することを、抗体のクラススイッチを例示して説明する。
1.GANP
GANPは、胚中心結合核タンパク質(Germinal center-associated nuclear protein)と呼ばれており、酵母Sac3タンパク質とホモロジーを有する210kDaの核タンパク質である(WO00/50611号公報)。そして、SAC3はアクチン形成の抑制物質として特徴づけられている。また、GANPは、濾胞樹状細胞(follicular dendritic cells: FDC)により囲まれる胚中心(germinal center, GC)B細胞において選択的にアップレギュレートされ、リン酸化依存性RNA-プライマーゼ活性を有し、B細胞の細胞周期調節に関与しているタンパク質である (Kuwahara, K. et al., (2000) Blood 95, 2321-2328)。
本発明においては、GANPタンパク質のアミノ酸配列を、マウスについて配列番号2に、ヒトについて配列番号4に示す。また、GANPタンパク質をコードする遺伝子(GANP遺伝子という)の塩基配列を、マウスについて配列番号1に、ヒトについて配列番号3に示す。なお、上記アミノ酸配列及び塩基配列は、国際公開WO00/50611号公報にも記載されている。
また、本発明においてGANP遺伝子を発現させたときのGANPタンパク質は変異体でもよく、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列であってRNAプライマーゼ活性を有するタンパク質であってもよい。例えば、配列番号2又は4に示すアミノ酸配列のうち1若しくは複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1個〜10個、さらに好ましくは1個〜5個))のアミノ酸が欠失しており、1若しくは複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1個〜10個、さらに好ましくは1個〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されており、及び/又は1若しくは複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1個〜10個、さらに好ましくは1個〜5個))の他のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上記GANPタンパク質と同様のRNAプライマーゼ活性を有するGANP変異型タンパク質を使用することもできる。
「RNAプライマーゼ活性」とは、RNA複製において、5'→3'方向に進む鎖の伸長とは逆向きの鎖(ラギング鎖)を合成する際に、伸長の開始点となる短いプライマーのRNAを合成する酵素活性を意味する。通常はαプライマーゼと呼ばれるDNAポリメラーゼαと結合する分子が用いられるが、胚中心B細胞では第二のプライマーゼであるGANPプライマーゼも誘導されている。
GANPタンパク質は、上記配列番号2若しくは4に示すアミノ酸配列又はこれらの変異型アミノ酸配列のほか、N末端側の一部の部分配列(例えば配列番号2に示すアミノ酸配列の1〜600番、好ましくは139〜566番)又はこれらの変異型アミノ酸配列を有するものも含まれる。従って、上記部分アミノ酸配列をコードする遺伝子も、本発明において使用することができる。
本発明において、発現の対象となるGANP遺伝子には、上記GANPタンパク質、部分配列(例えばN末側の部分配列)、又は変異型タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。そのような遺伝子として、例えば配列番号1又は3に示す塩基配列を有するものを使用することができる。配列番号1又は3に示す塩基配列のうち、コード領域のみの塩基配列であってもよい。また、上記配列番号1又は3に示す塩基配列に相補的な配列と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、RNAプライマーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を使用することも可能である。
「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイズさせた後の洗浄時の条件であって塩(ナトリウム)濃度が150〜900mMであり、温度が55〜75℃、好ましくは塩(ナトリウム)濃度が250〜450 mMであり、温度が68℃での条件をいう。
遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばGeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)を用いて行うことができる。
変異遺伝子の詳細並びに取得方法は国際公開WO00/50611号公報にも記載されている。
2.GANPのp53への関与
細胞が分裂・複製する際に娘細胞にゲノムを正しく伝播することは不可欠なことであるが、核内で速やかにゲノムの複製をして2つの娘細胞にゲノムを分配するプロセスではさまざまなゲノム損傷を伴うことは避けがたい。正常では細胞の分裂周期の各時期にチェックポイントをおいてゲノムの複製が正しく行われたか(S期)、遺伝子転写の際の損傷の程度は最小限度に抑えられているか(G2期)、そしてゲノムの分配を正しく行って細胞の分裂を完了したか(M期)についてのセンサーとして機能していると考えられている。このチェック機能によって正しくゲノムを娘細胞に伝えて生体内の恒常性を保っている。生体内では、様々な外界の環境によってゲノムの損傷の著しい場合がある。発ガン性物質、紫外線、放射線、酸化ストレス等のさまざまな細胞刺激によって修復能力を超えたゲノムの損傷が起こった場合には、この細胞を細胞死によって死滅させる働きを有している。ゲノムが安定に娘細胞に伝達されるためにはさまざまな細胞周期、DNA複製、修復、細胞分裂にかかわる分子が機能している。これらの細胞の機能の一部に障害が起こるとゲノムが正しく伝達されない状態となる。これを「ゲノム不安定性」という。ゲノム不安定性は、広義には染色体数の異常が起こることを意味し、狭義には遺伝子の転座、欠失又は変異を意味する。
ゲノム不安定性は、p53の発現を含むさまざまな異常と関係する。本発明は、p53の発現異常が、RNAの輸出に必要な酵母のSac3との相同領域を有するGANPの発現低下によって引き起こされることを示すものである。
GANPは、DNA複製に必須のMCM3複合体と結合する領域を有する。ここで、本発明者は、Sac3相同領域を有するGANPが、DNAの複製および遺伝子の転写過程において、あるいはmRNA輸送において役割を果たすかどうかについて検討した。
本発明者は、ganp遺伝子欠損マウスの作製を試みた結果、ホモ接合体ganp欠損(ganp-/-)の場合はすべて胚性致死(E12.5まで)となり、GANPは末梢リンパ組織のB細胞の発達だけでなく、胎児成長中の細胞の増殖または分化においても必須であることが示された。さらに、ヘテロ接合体ganp欠損(ganp+/-)マウスを長期観察すると、50週後の雌において高頻度(35%)にp53タンパク質の発現減少をともなって乳ガンが高頻度で自然発症することが示された。
また、本発明者は、異常なp53発現の考えられるメカニズムとして、p53タンパク質の減少は核から細胞質へのRNA輸送異常によって生じることを見出した。
すなわち、SV40をトランスフォームしたマウス胚性線維芽細胞(mouse embryonic fibroblast:MEF)細胞株及び腫瘍細胞株をganp+/- マウスから樹立したところ、これらの細胞において、中心体複製の異常、染色体分離およびゲノム不安定性をともなって、p53タンパク質が選択的に減少することが示された。そして、Ganp+/- MEF 細胞株は、核から細胞質へのp53 mRNA輸送の選択的な障害によるp53の発現の減少を示した。NIH3T3細胞においても、RNAiを利用してganp遺伝子の転写を抑制すると、p53の発現の減少が引き起こされた。
このp53の発現異常は、核から細胞質へのp53 mRNA輸送が選択的に障害されることによるものと考えられる。従ってGANP遺伝子は、細胞増殖時のゲノムの安定性に必要なp53 RNA輸送に重要な役割を果たすとともに、新しい機序によってp53発現を制御する腫瘍抑制遺伝子として機能することを強く示すものである。
以上の知見に基づき、本発明は、細胞内においてGANP遺伝子の発現を促進することによって、癌抑制遺伝子を活性化する方法、及びゲノムの安定化方法を提供する。
活性化の対象となる癌抑制遺伝子は、特に限定されるものではないが、p53(多種の癌)であることが好ましい。
遺伝子の活性化方法は、GANP遺伝子の上流にプロモーター、エンハンサー配列を連結する方法、治療対象の細胞に特異的なプロモーターを用いる方法、たとえば肝臓細胞でC型肝炎ウイルスにおける発ガンの予防には肝臓細胞特異的なグロビンタンパクプロモーターを用いる方法、乳癌の予防にはホルモンレセプターのプロモーターを用いて組織特異的な発現を促す方法、悪性メラノーマ細胞への遺伝子導入としてメラニン色素合成酵素のプロモーターを用いる方法が挙げられる。またプロモーターとして、例えばレトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスプロモーター、あるいは哺乳動物細胞由来のプロモーターを使用することができる。外来の刺激で発現を制御する誘導性プロモーターを用いる方法も有効である。これらのプロモーターは市販のものを用いることができる。
3.GANPと、DNA修復および抗体の親和性獲得との関係
抗体分子の親和性亢進は、抗体遺伝子の可変領域(V領域)遺伝子に体細胞突然変異(SHM)が誘導されることによって生じる。抗体の抗原に対する特異性は、抗原を生体に免疫した当初から認められるが、初期の抗体の多くはIgMクラスであり、また抗原に対する結合親和性は高くなく、病原体や異物を除去して不活化する能力は低い。しかし、抗原を生体に投与して数回の追加免疫を行うと抗体の抗原に対する結合親和性が高まる。この際、B細胞はT細胞からの刺激が必要であり、末梢のリンパ組織の胚中心領域でその活性化が行われるとされている。V領域遺伝子の突然変異誘導に必要な分子としては、最近、胚中心で発現するRNAエディティング分子AIDであると報告されている。
AIDとは、抗体産生細胞の前駆細胞であるB細胞が末梢のリンパ組織で抗体の可変領域に点突然変異を導入する分子、およびIgGクラスなどへのクラススイッチに必要不可欠な分子として同定されたものである(Honjo et al., 2002)。AIDは、RNAおよびDNAのシチジンの脱アミノ化を起こし、その結果チミンに変換する機能を有する。この変換はDNAの二重鎖ミスマッチを起こすため、その後の修復過程で変異を誘導し、またuracil-DNA glycosylaseの作用を受けてDNAの二重鎖切断を起こすことが報告されている(Neuberger et al., 2003)。
免疫グロブリンV領域の体細胞突然変異およびクラススイッチ組み換え(class-switch recombination (CSR))は、DNAの損傷及び修復と関連する。本発明者は、GANPは胚中心(GC)-B-細胞の親和性成熟にとって必須であることを明らかにしたが、本明細書においては、その親和性成熟がどのような機構により達成されるのかについて説明する。
本発明において、二つの異なる変異型β-ガラクトシダーゼ遺伝子構築物を用いてDNA相同組み換え(homologous recombination (HR))解析を行うと、GANPはNIH3T3細胞においてAID または I-sceI-酵素のコトランスフェクトによって誘導されたHRを抑制することが明らかとなった。I-sceIは塩基配列:ATTACCCTGTTATCCCTA(配列番号5)を認識する制限酵素であり、哺乳細胞にはほとんど存在しないとされる酵素である。この酵素の遺伝子を挿入したときに限って、対象とする酵素サイトを持つレポーター遺伝子にのみ切断が起こる。
そして、Sac3相同領域を有するGANPはHRを抑制するが、C末端MCM3-結合/アセチル化領域単独ではHRを促進することが示された。
また、本発明者は、B細胞においてのみGANP遺伝子をホモ欠損させた条件的ganp遺伝子ノックアウト(B-GANP-/-) マウスのB細胞においてCSRを検討した。
その結果、VH186.2-領域を発現するGC-B細胞においてμからγ1 およびε重鎖へのクラススイッチが増加することを示した。クラススイッチは抗体遺伝子のCμ領域遺伝子の5'側に存在するスイッチ領域(Sμ領域)を用いてSμからSγまたはSεへと遺伝子再構成することによって起こるゲノムレベルの変換である。したがって、その間の遺伝子は再構成後は欠失して除かれる。このときゲノムは片側だけがクラススイッチしたゲノム構造となるが、対立遺伝子座はクラススイッチしない(これを免疫グロブリン遺伝子の対立遺伝子排除という)。S領域の長さは数キロから数百塩基対で構成される。
遺伝子の障害を修復する際に、通常は、細胞内に父方と母方の二本の遺伝子座が存在する。同じ部位で両方の遺伝子座が一度に障害されることは少ないと考えられる。したがって障害された部位の染色体DNAの二重鎖を切断し、その断片を両端から一重鎖に解き放ち、これに修復分子を結合させる。同時に、対立した遺伝子座の障害を受けていない遺伝子領域の二重鎖DNAを一度解きほぐし、一次DNA鎖として障害を受けたほうの遺伝子がアニールするようにしてDNAを伸長させる。このようにして、正しい遺伝子配列を読み取って最終的に両方の遺伝子座を回復(修復)させる。この修復は相同組み換え(homologous recombination;HR)と呼ばれている。哺乳細胞の多くのDNA損傷はこの機能によって修復され、これに関与する分子としてγ-H2AX、ATM、RAD51、MRE11、PRM、WT、BRCA1、BRCA2、RAD54、p53などがあげられる。
この相同組み換えの機構の詳細は明らかになっていない。しかし、この相同組み換えは必ずしも対立する遺伝子のまったく同一の遺伝子部位で修復されるとは限らない可能性がある。もし、障害を受けた遺伝子の近傍にもうひとつ類似した相同性のある遺伝子がcisあるいはtransに存在するとすれば、この部位とも同様な相同組み換えが行われる可能性がある。このことは、β-ガラクトシダーゼを2個順列に接続したレポーター遺伝子の導入によって実験的に確かめられている。
また、I-sceI酵素により、2つの遺伝子の間に遺伝子の傷を与えて二重鎖切断を起こさせたところ、高い頻度の相同組み換えが両遺伝子で起こることがわかる。これに対してGANPは二重鎖切断に対し高い抑制効果を示す。すなわち、GANPは過剰なHRによる遺伝子転座や切断、再構成を抑制している。
一方、B細胞では、RAG1またはRAG2分子によって特異的に免疫グロブリン遺伝子のV領域遺伝子、D領域遺伝子、J領域遺伝子の近傍(recombination signal sequence; RSS)が切断されて再構成する場合は、断端部を相互に引き寄せてその間の修復を行わないで断端接合(non-homologous end-joining repair;NHEJR)を行っている。この機能は、DNA-PKcs、Ku70、Ku80、XRCC4、Ligase IV、Artemis等により引き起こされる。また、抗体遺伝子のクラススイッチの際の再構成も、NHEJRの修復によって接合していると報告されている。この接合時には細胞の分裂を必要としないが、修復された遺伝子座は対立遺伝子座とは大幅に異なった構造になる。
リンパ細胞のように高度に進化した細胞ではNHEJRによって遺伝子の改変を行っている。GANPは、NHEJRによって修復されるCSRに対してはほとんど影響しないが、GANPが存在しなければHRが過剰に起こるため、見かけ上CSRが大幅に増加したように観察される。
本発明において重要な点は、GANPが過剰なHRを抑制することを見出したことである。GANPは、損傷DNAを過剰なHRから保護することによって、非相同末端結合修復(NHEJR)を通して精密なCSRがおこる条件を整える。このことは、GANPによってゲノムの安定性が高められていることを示すものである。
B細胞は、一次リンパ器官であらゆる抗原と反応しうるB細胞受容体(BCR)を発現する細胞集団として生まれるが、これらの細胞は外来の抗原に対して結合親和性は十分高くない。マウスを抗原 (Ag)により刺激すると、二次リンパ器官においてこれらのうちの単クローンの 抗原反応性B細胞が増殖してクローンの拡大を図る。このとき単一細胞から数十万個の細胞集団にまで増加し、抗原に対する結合親和性を高めるといわれている。
C57BL/6 マウスでは、ニトロフェニル-ニワトリ γ-グロブリン (NP-CG)などのT細胞依存的(TD)-抗原に対する応答に関し、抗原で刺激されたB細胞(Ag-driven B-cells)は、免疫グロブリン (Ig) VH186.2-領域およびλ1-軽鎖を有するB細胞クローンから胚中心GC中に急速に増加する。そして、Ig VH-領域の体細胞突然変異 (SHM)が起こり、高親和性V領域を得るとともに、μからγ1-重鎖へのクラススイッチを行う。
本発明者は、GANP遺伝子をB細胞で特異的に欠損させたマウスにおいてGC-B細胞の親和性成熟が著しく障害を受けることを示した。そして、GANPは、in vivo においては、TD-Ag で免疫するとGC-B細胞でその発現が増加し、また、in vitroにおいては、抗原刺激としてBCRを架橋するとともにT細胞からの刺激としてCD40分子を単クローン抗体によって架橋する(co-ligation)と、その発現が大幅に亢進することがわかった。
GANPはRNAプライマーゼドメインをアミノ末端側に有し、MCM3APと呼ばれる領域をカルボキシル末端側に有する。GANP遺伝子座の短い転写産物はMap80/MCM3APとして同定されており、この転写産物は、MCM複合体と特異的に相互作用する。Sac3は、アクチン重合抑制剤として知られており、Sac3が欠損すると、細胞周期の移行が遅延し、酵母細胞においてDNAの組み換えが増加する。Sac3の欠損は、酵母細胞において遺伝子の不安定性化を伴う相同組換えを増加させる。
前記のとおり、本発明者は、異なる位置でストップコドンを変異させた二つのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ遺伝子)をタンデムに連結させたDNA組み換え体をNIH3T3細胞に導入することによって、DNAの組み換えにおけるGANPの分子機構を検討した(図1)。
また、AIDの発現は、B細胞においてCSRに必要なDNA切断を制御すると考えられている。そこで、本発明者は、AIDトランスフェクションの影響を調べた。
AIDをコードするcDNAをB細胞に導入することによって、高頻度のDNA組み換えが起きたが、CSRに必要な領域を欠損した変異型AIDは、DNA組み換えを起こさなかった。興味深いことに、全長のGANPは、AIDによって誘導されるDNAの組み換えを抑制した。この結果は、GANPがAIDによって誘導されるDNA組み換えを抑制することを示すものである。この抑制は、DNA切断およびDSB修復の制御と同様のメカニズムによるものと考えられる。
次に、本発明者は、GANPの作用はDNA損傷時に起こるものなのか、あるいはDNA組み換えによるDSB切断後に起こるものなのかを調べるため、DSB切断後の修復メカニズムを、細胞内にI-sceI enzyme cDNAを導入することによって調べた(図2)。
その結果、GANPはDNAの組み換えをI-sceI によるDNA切断後に抑制していることを明確に示した。このことは、GANPはDNA組み換えによるDSB切断後のDNAの修復メカニズムに必要であることを示すものである。
従って、本発明においてはGANP遺伝子の発現を促進することによりDNAを修復させる方法を提供する。発現方法は、前記2.において説明した内容と同様である。
次に、本発明者はDNA組み換えに対する抑制領域を、様々な切断型のGANP cDNAを用いて調べた。
完全長のGANP cDNAは、NIH3T3細胞においてAIDによって生じるDNA組み換えを抑制した。これに対し、切断型の短いGANP(MCM3AP) cDNAは、それ自身によって顕著なDNA組み換えを引き起こしたが、完全長GANPの導入によって組換えが抑制された。なお、Sac3 相同部位、核局在配列及びRNAプライマーゼ領域を有するコンストラクトは、DNA組み換えの抑制活性を示した。
GANPのアミノ末端側のRNA結合必須配列を有する領域が欠損することで、DNAの組み換えにおいてGANPの抑制活性は消失した。
また本発明者は、CD19-Creノックインマウスを用いる条件的ターゲティングによって、ganp遺伝子を変異させたマウスからのGC-B細胞を用いたGANPの役割(CSRにおける役割)を検討した。
クラススイッチを検出する実験として、脾臓B細胞を、in vitroにおいてリポ多糖およびIL-4によって刺激しS領域およびCSRの胚転写(germinal transcription)の誘導の有無をRT-PCRによって検出する方法が信頼性が高い。
B-GANP-/- B細胞において、抗体のタイプは抗原刺激後にCμからCγ1及びCεに変化し、この変化は、野生型の対照と比較して異なるCSRの特徴を示した。このことは、B-GANP-/- B細胞においてCSRが上昇したことを示す。
本発明者は、さらにNP-CGで免疫した後に得られたB細胞であって、B220+GL7+Fas+ 成熟 GC-B-細胞として精製されたB細胞のCSRを測定した。抗原特異的なCSRは、VH186.2に対応する5'-PCRプライマー、ならびにμ、γ3、γ2a、γ2bおよびγ1などの定常領域に対応する3'-PCR プライマーを用いてVH186.2-regionで測定することができる。B-GANP-/-マウスのGC-B-細胞は、VH186.2-μ バンドを示し、免疫9日後において、対照マウスとの比較においてVH186.2-γ、VH186.2-γ、VH186.2-γ及びVH186.2-γなどのCSRバンドの増加を示した。また、B-GANP-/- および対照マウスからのFas- GC-B-細胞は、VH186.2-C バンドと同様のレベルを示した。
これらの結果は、GANPはin vitroおよびin vivoで行われるCSRに対する制御活性を有することを示している。なお、この結果は、さらに、CSRおよび環状DNAを検出するためのゲノムPCR解析によって確認した。
B-GANP-/-マウスのGC-B-細胞は、Cμ領域の明らかな遺伝子バンドを示さなかったが、クラススイッチ定常領域遺伝子を有するバンドの増加レベルを示した。これらの結果は、GC-B細胞成熟の間に、GANPがCSRの制御に役割を担っていることを示している。
GANPは、Ig V-領域遺伝子のSHMの発生およびC領域遺伝子のCSRに必須では無いかもしれない。しかし、GANPは、免疫応答時の親和性成熟およびCSR後において、成熟B細胞の適切な成熟および/または維持に不可欠であると考えられる。
GANPがDNAの組み換えを抑制している分子メカニズムは、解明される余地が残されている。しかしながら、GANPは、急速に増殖する細胞、あるいはGC-B細胞等のDNAの二本鎖切断が高頻度で起きる細胞において生ずるHRを抑制する。また、GANPは、GC-B細胞においてV-領域とS-領域遺伝子で生ずる異常なHRを抑制する役割を有すると考えられる。このことは、GANPが長期免疫応答時のBCR陽性B細胞の高親和性を維持するのに必要であるといえる。
免疫グロブリンV領域遺伝子における二本鎖DNA切断(DSB)は、T細胞依存性抗原に対するV領域の体細胞突然変異およびBCRの親和性成熟に必要である。本発明者は、ligation-mediated PCRによりV領域のDSBを測定した。その結果、DSBは、ニトロフェニル-ニワトリ γ グロブリンに反応して、(i) Rag1-非依存的、(ii) 抗原依存的、かつ(iii) V-領域選択的に、成熟胚中心(GC)-B細胞で生じることを確認した。これらのV領域DSBの重要性を理解するために、本発明者は、高親和性抗体を産生できないGANP欠損B細胞におけるDSBのレベルを定量した。
GANP-/- B 細胞は対照のB細胞よりも平滑末端でのDSBのレベルが減少していた。このことは、GANPは、BCRに変化するGC-B細胞のV領域のDSBを制御していることを示している。しかし、GANP-/- B細胞は、Rad51, Ku80及びAIDの転写を増加させていた。これらの結果は、GANP が、V領域遺伝子のDSB制御およびDNA修復に対して独自の機能を有することを示しており、BCRの親和性成熟に必要であることを示すものである。
二本鎖DNA切断(DSB)は、T細胞依存的抗原(TD-Ag)で免疫した後、末梢リンパ組織のIgV領域遺伝子において、B細胞成熟の間に生じるものである。この種の切断は、おそらく組み換えシグナル配列またはS配列に依存するのではなく、胚中心(GC)領域におけるB細胞の成熟の間にしばしば観察される。DSBは、細胞周期のS/G2期および後期G2期からM期の間に主に生じ、相同組み換え(HR)メカニズムによって修復される。
B細胞のアポトーシスは、IgV領域遺伝子のみならず定常領域または他の遺伝子で生ずる全体のDSBレベルに寄与するものではない。従って、IgV領域のDSBは、複製区画(replication stall)またはアポトーシス性DNA断片とは関連しない。
抗体のV領域遺伝子に高率に見られるDSBはグアニンを中心とした配列で高率に起こっている。すなわち「RGY(W)ホットスポット」を標的とし、それらの生成は、再構成したV(D)J遺伝子のエンハンサー依存的なIgV領域の発現と関連している。(R=A or G; Y=C or T; W=A or T)
このことは、IgV領域の遺伝子の体細胞突然変異(SHM)は、TD-Agで免疫した後のGC-B細胞の増殖および成熟の間においてDSBの誘導と関連することを示す。つまり、TD-Agでマウスを免疫した後は、マウスのGC-B細胞が増殖し、成熟する間にDSBが誘導される。このDSBがIgV領域の遺伝子のSHMの誘導に関連しているのである。
ひとつの仮説によれば、SHMのためにはV領域DSBの頻度が高くなることが条件とされており、そのV領域DSBのためには AIDが必要であると考えられていた。しかし、AID-ノックアウトマウスではAIDがないにもかかわらずV領域DSBは野生型のB細胞と同程度であった。このことから、DSBがSHM誘導に直接かかわっているとする仮説は考えにくくなった。
したがって、GC-B細胞において生ずるDSBの役割は、IgV領域SHMの発生およびBCRの親和性成熟の点では明らかでない点が残されている。
本発明者は、TD-Agであるニトロフェニル-ニワトリγグロブリン(NP-CG)でマウスを免疫した後、脾臓でDSB過程を生ずるB細胞部分集団をセルソーティングによって詳細に特徴づけた。次に、TD-Agに対する高親和性抗体産生能が傷害された変異体マウス(B-GANP-/-)を用いて、IgV領域のDSBのレベルを検討した。
B-GANP-/- マウスは、CD19-Cre ノックインマウスを用いてB細胞中のganp遺伝子座で条件的にターゲットすることができる。GANPが欠損すると、in vivoにおいて抗体の親和性を減少させるが、このことは、VH186.2-領域、特に高親和性型W33L 変異体のSHM頻度の減少に伴って生じていた。免疫応答の間のGC-B細胞の成熟と関連する分子メカニズムを理解するためには、IgV領域のDSBに対するGANPの効果を調べる必要がある。本発明において示される結果は、GANPはIgV領域のDSBのレベルに影響することを示し、このレベルは高親和性抗体のin vivoでの産生に必要であることを意味するものである。
以上のことから、本発明は、細胞内においてGANP遺伝子の発現を促進することを特徴とする、抗体の親和性を増大させる方法を提供する。
4.GANP遺伝子を含む医薬組成物
本発明は、GANP遺伝子(その一部の部分配列を含む)を含む、GANPの機能低下に起因する疾患を治療又は予防するための医薬組成物に関する。例えば、GANP遺伝子は、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤として使用することができる。また、GANP遺伝子は、DNA修復剤やゲノムの安定化剤として使用される。
本発明の医薬組成物の適用疾患としては、腫瘍、悪性転化する悪性黒色種、慢性リンパ性白血病などの細胞増殖性疾患、あるいはヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトC型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)などに起因する疾患(AIDS、C型肝炎、B型肝炎)、あるいは帯状疱疹、皮膚有棘細胞腫、乳頭腫などの増殖性疾患が挙げられる。本発明の医薬組成物を抗ウイルス剤として使用するときの対象ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトC型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)などが挙げられる。本発明の医薬組成物を疾患に適用するにあたり、上記疾患は単独の場合であっても複数の疾患が併発した場合であってもよい。
本発明の医薬組成物を腫瘍の治療剤として使用する場合は、腫瘍の種類は特に限定されるものではない。腫瘍の種類としては、例えば以下のものが挙げられる。
脳腫瘍、咽頭癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、大腸癌、膵臓癌、胆道癌、胆嚢癌、肝癌、肺癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、横紋筋肉腫、線維肉腫、骨肉腫、皮膚癌、各種白血病(例えば急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、成人型T細胞白血病、悪性リンパ腫)、MDS (Myelo-dysplastic syndrome)、難治性の増殖性脳腫瘍
上記癌は、原発巣であっても、転移したものであっても、他の疾患と併発したものであってもよい。
本発明の医薬組成物は、GANP遺伝子が患部の細胞内または目的とする組織の細胞内に取り込まれるような形態で用いられる。
GANP遺伝子を含有する医薬組成物の投与形態は、経口、非経口投与のいずれでも可能である。経口投与の場合は、適当な剤型、例えば錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー等に調整して投与することができる。非経口投与の場合は、ネフライザーなどを用いた経肺剤型、経鼻投与剤型、経皮投与剤型(例えば軟膏、クリーム剤)、注射剤型等が挙げられる。注射剤型の場合は、例えば点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に直接的又は間接的に患部に投与することができる。
本発明の医薬組成物を、抗腫瘍、抗ウイルス、DNA修復又はゲノムの安定化を目的とした遺伝子治療剤として使用する場合は、本発明の医薬組成物を注射により細胞、組織又は器官に投与するか、又は患者に直接投与する方法のほか、核酸が組込まれたベクターを細胞、組織若しくは器官又は患者に投与する方法が挙げられる。上記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられ、これらのウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することができる。
また、本発明の医薬組成物をリポソームなどのリン脂質小胞体に導入し、その小胞体を投与することも可能である。例えば、本発明の医薬組成物を保持させた小胞体をリポフェクション法により所定の細胞に導入した後、得られる細胞を例えば静脈内、動脈内等から患者に全身投与する。但し、全身投与に限定されるわけではなく、各組織への局所投与でもよい。
本発明の医薬組成物を目的の細胞、組織又は器官に導入するために、市販の遺伝子導入キット(例えばアデノエクスプレス、クローンテック社)を用いることもできる。
リポソーム構造を形成するための脂質としては、リン脂質、コレステロール類や窒素脂質等が用いられるが、一般に、リン脂質が好適であり、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、リゾレシチン等の天然リン脂質、あるいはこれらを定法に従って水素添加したものが挙げられる。また、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン等の合成リン脂質を用いることができる。
リポソームの製造方法は、GANP遺伝子が保持されるものであれば特に限定されるものではなく、慣用の方法、例えば、逆相蒸発法、エーテル注入法、界面活性剤法等を用いて製造することができる。
これらのリン脂質を含む脂質類は単独で用いることができるが、2種以上を併用することも可能である。これらリポソーム形成時の主要リン脂質の他に、一般にリポソーム形成用添加剤として知られるコレステロール類、ステアリルアミン、α-トコフェロール等の添加剤を用いることもできる。このようにして得られるリポソームには、患部の細胞又は目的とする組織の細胞内への取り込みを促進するために、膜融合促進物質、例えば、センダイウイルス、不活化センダイウイルス、センダウイルスから精製された膜融合促進タンパク質、ポリエチレングルコール等を添加することができる。
本発明の医薬組成物は、常法にしたがって製剤化することができ、医薬的に許容される担体を含むものであってもよい。このような担体としては、例えば水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
上記添加物は、本発明の治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれる。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製されたGANP遺伝子を溶剤(例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等)に溶解し、これにTween80、Tween 20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥用賦形剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
糖類:マンニトール、ブドウ糖、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール等
デンプン:トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモまたは他の植物由来のデンプン
セルロース:メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースナトリウム等
ゴム:アラビアゴム、トラガカントゴム等
ゼラチン、コラーゲン等
所望により、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)等の崩壊剤又は可溶化剤を使用することができる。
本発明の医薬組成物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。
GANP遺伝子の有効投与量は、疾患の徴候又は状態を軽減することができる量である。このような核酸の治療効果及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順、例えばED50(集団の50%において治療的に有効な用量)、あるいはLD50(集団の50%に対して致死的である用量)によって決定することができる。
治療効果と毒性効果との間の用量比は治療係数であり、ED50/LD50として表される。アデノウイルスを投与する場合の投与量は、1日1回あたり106〜1013個程度であり、1週〜8週間隔で投与される。但し、本発明の医薬組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に特記した場合を除き、本実施例において採用された材料及び実験手法を以下に示す。
(1)マウス
全てのマウスは、熊本大学の実験動物センターにおいて、空調下SPFで飼育した。ganp 遺伝子でfloxされた変異マウスおよびCD19-Creノックインマウスは、C57BL/6 バックグラウンドであり、ganp遺伝子プロモーターおよびexonIにおいて、既報(Kuwahara et al., 2004)の通り条件的ターゲティングを行った。
(2) 抗体免疫およびB細胞濃縮
マウス(8-20週齢)は、アルミナとともにニトロフェニル(NP)ニワトリγグロブリンの(CGG)腹腔内投与によって免疫した。一回の注射または二回目の追加免疫後、脾臓のB細胞をマグネティックビーズ(MACS beads, )によって精製し、さらに、PE結合GL7およびFITC結合Fas/CD95でJSANを用いたセルソーターにより濃縮した。細胞の濃縮は95%以上の純度であった。全RNAは、RNA easy kit (QIAGEN)によって抽出した。
(3) LacZベースのダイレクトリピート配列組み換え基質ベクター
LacZベースのダイレクトリピート組み換えDNA基質、pSVbeta-galactosidase 1351+757neoを、既報のコンストラクトを改変して生成した。βガラクトシダーゼ遺伝子の二つのHpaI部位を標的とし、それぞれ、二つの核酸を添加することによってXhoI部位(CTCGTGCC)を作製した。これによりフレームシフトを誘導し、酵素活性を不活性化する。組み換え基質のベクターは、図1に示すようなタンデムに並ぶ二つの異なる変異βガラクトシダーゼ遺伝子によって構築した。5'-側 LacZ'は、255ntの位置のHpaI部位の変異とともにXhoIへ挿入し、3'-側LacZ"は、289ntのHpaI部位における変異とともにXhoIに挿入した。
(4) ダイレクトリピート配列を有する余計な染色体LacZ DNAによるDNA組み換えアッセイ
NIH3T3 cells は、6 cm ディッシュにおいて60%コンフルエントで培養した。DNAトランスフェクションは、組み換え基質のプラスミド(各1μg)、およびI-SceIまたはGANPの発現ベクター、100 μlの無血清Dulbecco's Modified Eagle Medium、および20μlのPolyfect (Quiagen)で行った。βガラクトシダーゼの発現は、0.1Mリン酸ナトリウム(pH 7.0)、1 mM MgCl2および0.25% glutaraldehyde溶液中で固定化し、PBSで二回洗浄し、2μg/mlのX-gal、1 mM MgCl2, 150 mM NaCl, 3.3 mM K4Fe(CN)63H2O, 3.3 mM K3Fe(CN)6, 60 mM Na2HPO4, 40 mM NaH2PO4で染色することによって調べた。細胞は、12時間37℃でインキュベートし、LacZ陽性細胞を計数した。
(5)染色体相同組換えアッセイ
発現ベクターは、全長のganp cDNA、Xpress またはFLAGタグを付加した様々な切断型ganp cDNAを用いて、pCXN2発現ベクターに構築した。HA-tagを有するマウスMCM3 cDNAの発現ベクターおよびMyc-tagを有するマウスMCM5 cDNAは、Dr. H. Kimuraから提供された。マウスAID発現ベクターであるpCMV5amAID-HA-FLAGは既報のものを用いた。AID発現ベクターである、pEFXpress-mAID、およびXpress-mAID C末端欠損変異体(188-198)は、pCMV5amAID-HA-FLAGから改変した。I-sceIエンドヌクレアーゼ発現ベクター(pCAGGS-I-sceI;pcBAsce)は、M. Jasin博士から提供を受けた。本発明者は、pcBAsceを改変し、核局在シグナル(NLS)のHA配列の下流を挿入した。
(6)部位特異的な組み換え
一つの結合基質であるpJH200は、部位特異的なNHEJアッセイに用いた (Lieber et al., 1988)。本発明者は組み換え基質を発現ベクターGST-RAG1, GST-RAG2とともにトランスフェクトした。3日後、細胞をPBSで二回洗浄し、プラスミドDNAはアルカリ溶解法により抽出した。抽出されたプラスミドは全て、DH5αのトランスフォーメーションに使用した。トランスフォーメーションしたDH5αは、Camr/Ampr LBプレート上でインキュベートし、組み換えコロニーを数えた。
GANP遺伝子の発現とp53との関係
(1)方法
(i) マウス
C57BL/6 マウスはCharles River Japan (Yokohama, Japan)から購入した。すべてのマウスは、熊本大学実験動物センター(the Center for Animal Resources and Development (CARD))で飼育した。
(ii) 抗体
抗p53, BRCA1, BRCA2, ATM, MDM2 および Mycウサギ抗体は、それぞれSanta Cruz Laboratories (Santa Cruz, CA)から入手した。抗α-tubulinマウス抗体および抗β-actinマウス抗体は、Sigma社(St. Lois, MO)から購入し、抗pericentrinウサギ抗体はConvance社(Princeton, NJ)から購入した。
(iii) 細胞及び細胞培養
マウス細胞株であるFM3A (breast cancer;乳ガン), Hepa 1-6 (hepatoma;肝臓癌)およびC1300 (neuroblastoma神経芽細胞腫)は、大日本製薬(Osaka, Japan)から購入した。FM3AおよびC1300は、10% 非働化 FCS (Biosource International, Camarillo, CA)、2mM L-グルタミン(Cambrex, Baltimore, MD)および5 x 10-5 M 2-mercaptoethanolを添加したRPMI-1640培地(Invitrogen, Carlsbad, CA) で培養した。Hepa 1-6、MEF(mouse embryonic fibroblast)および乳ガン細胞株は、10% FCS.を含有するDMEM 培地 (Invitrogen) で培養した。
(iv) ganp 欠損マウスの作製
ターゲティングベクターは、マウスganpゲノム遺伝子のプロモーター領域(EL-Gazzar et al., 2001)、エクソンIおよびエクソンIIの部分を、ネオマイシン耐性(neo)遺伝子で置換して構築した。TT2 ES細胞を、直線化したターゲティングベクターでトランスフェクトし、続いてコロニーをG418 (Invitrogen)で選択して、相同組み換え体を以下の二つのプライマーを用いたPCRによって選択した。
Neo2; 5'-GCCTGCTTGCCGAATATCATGG TGGAAAAT-3'(配列番号6),
B/B3'-1; 5'-ACCCCCAAGTCTCCCTTCTG-3' (配列番号7)
相同組み換え体は、プローブ2-3を用いたBamHI で消化したESクローンDNAのサザンブロット解析によって確認した。5-kbのバンドを有する陽性クローンを、ICR胚盤胞へのマイクロインジェクションによるキメラ創出マウスの作製に使用した。三つのプライマー(Neo2、ganp0-5'、n-5)を用いた尾部DNAのPCRによってマウスをスクリーニングし、同じ反応において両方のアリールを区別した。Ganp-/- 胎児は、雄と雌のganp+/-マウスを掛け合わせることによって得られた。膣栓を行った日をE0とした。
ganp0-5'; 5'-ATGCACCCGGTGAACCCCTT-3' (配列番号8)
n-5; 5'-CTCCAGACCCG CTACCAAG-3' (配列番号9)
(v) 組織学
癌試料は、4% パラホルムアルデヒドのPBS溶液で4 °C で 4 時間固定し、パラフィンで包埋し、6μmの厚さの切片に切断した。脱パラフィン化の後、切片を通常の方法でヘマトキシリンおよびエオシン染色した。
(vi) 乳ガン細胞株の構築
雌ganp+/-マウスから摘出した腫瘍を小片に切断し、トリプシン処理した。赤血球を溶血した後、細胞をDMEM/10% FCSを含む培養ディッシュに移した。翌日、浮遊した細胞を吸引により除去した。接着した細胞をDMEM/10% FCSで培養した。
(vii) 免疫蛍光
ganp+/+ および ganp+/-マウス由来の乳ガン細胞株およびMEFをLab-Tek (Nalge Nunc International, Rochester, NY)チャンバースライド中で、5% CO2.存在下に37 °Cで一晩培養した。細胞は、3.7%パラフォルムアルデヒドのPBS溶液で3分間固定し、続いて0.2% Triton X-100で3分間透過処理した。3% BSA のPBS溶液でブロッキング後、スライドを1次抗体で1時間インキュベートした。2次抗体として、Alexa488-結合ヤギ抗マウスまたはウサギ抗体 (Invitrogen)を使用した。対比染色をpropidum iodide (PI)で行った。画像は共焦点レーザー顕微鏡(FV300; Olympus, Tokyo, Japan)で解析した。
(viii) Spectral karyotyping (SKY)
SKY解析においては、中期の染色体をin vitroで培養したganp+/- マウスの乳ガン細胞から調製し、固定、染色体の染色、及び顕微鏡像の観察を行った。いくつかの細胞株において、中期の染色体をtrypan-Giemsaバンド法を用いて染色した。
(ix) ウェスタンブロット解析
細胞溶解物の全タンパク質の10μgをSDS-PAGEで分画した。ニトロセルロースフィルター膜に転写後、ブロットは5% 脱脂粉乳のPBS-0.1% Tween 20 (TBS-T)溶液でブロッキングし、一次抗体でインキュベートした。ブロットを、PBS-Tで数回洗浄し、続いてHRP結合2次抗体でインキュベートした。現像はECLキット(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)によって行った。β-actinの発現をローディング対照とした。
(x) SV40でトランスフォームしたMEF細胞の構築
E11.5におけるGanp+/+ 及び ganp+/-胚を小片に切断し、20分間トリプシン処理した。細胞は、培養ディッシュにDMEM/10% FCS とともに蒔き、培地は2日おきに交換した。培養10日後に、SV40を感染させたCV-1 細胞の培養上清をMEF細胞株に添加した。増殖する細胞は、限界希釈によってクローン化した。SV40 large T-antigenの発現は、ウェスタンブロット解析によって確認した。
(xi) 細胞周期の解析
Ganp+/+ 及びganp+/- MEF 細胞は、ノコダゾールで指示された時間処理し、その後低張PI溶液(Kuwahara et al., 2001)に懸濁させた。4 °Cで2時間インキュベーションした後、サンプルをFACS キャリバー(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)によりMODFIT LT ソフトウェアを用いて解析した。
(xii) 逆転写(RT)-PCR
Total RNAは、Trizol (Invitrogen)を用いて抽出し、oligo-dTプライマーによってcDNAを合成した。cDNAの量は、β-actin 転写産物によって標準化した。実験に用いたプライマーは、以下の通りである。
m-p53-F, 5'-GTACCTTATGAGCCACCCCGA-3';(配列番号10)
m-p53-R, 5'-CTTCTGTACGGCGGTCTCTC-3'; (配列番号11)
m-mdm2-F, 5'-CGACTATTCCCAACCATCG-3'; (配列番号12)
m-mdm2-R, 5'-CTAGTTGAAGT AACTTAGCACAAT-3'; (配列番号13)
m-Rb-F, 5'-GAAGTGTTTTATCATGATCC-3'; (配列番号14)
m-Rb-R, 5'-ATTAATGGTTCACCTCGAAC-3' (配列番号15)
(xiii) ルシフェラーゼアッセイ
p53 の最小プロモータを含み、pCXN2-ganp cDNAを含有しまたは含有しないpGV-CベクターでNIH-3T3細胞をPolyfect (QIAGEN, Valencia, CA)を用いてトランスフェクトした。30時間後、細胞をUVに曝露した。48時間後に、細胞のルシフェラーゼ発現をDual Luciferase Reporter System (Progema, Madison, WI)を用いた化学発色として測定した。
(xiv) in situ RNAハイブリダイゼーション
In situ RNA hybridizationは、文献に記載の方法で行った(Kondo et al., 1992)。シラン化したスライド上のMEF細胞株の細胞標本は、4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、p53の400bpの核酸プローブと50℃で一晩ハイブリダイズさせた。TNEバッファー(10 mM Tris-HCl, pH 7.6, 500 mM NaCl, and 1 mM EDTA)で37 °Cで洗浄し、1 x SSCで50 °Cで洗浄した後、スライドを、FITC結合抗ジゴキシゲニン抗体(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)で室温で1時間インキュベートした。画像は蛍光顕微鏡(BX51; Olympus)で解析した。
(2)結果
(i) ganp遺伝子の標的破壊
マウスのGANPの機能を調べるために、ターゲッティングコンストラクトを用いた相同組み換えによってganp+/- マウスを作製した。ベクターは、neo遺伝子カセットを用い、300-bp 5'-プロモーター領域(EL-Gazzar et al., 2001)、200-bp エクソン I、700-bp イントロン、およびエクソン IIのKozakコンセンサス配列部位を有する最初のATGコドンを含む100-bp を置換して構築した。
標的とした組み込みを有するESクローンを得た後、マウスを飼育した。そして、C57BL/6マウスと10世代以上交配した。
ホモ接合体ganp-/- マウスは、F2種を得るために300回以上試行しても生まれなかった。ganp遺伝子をターゲットしたマウスは、胎性致死であり、E12.5以上は生き延びることができなかった。この場合、胎児は、全身の臓器で特に胎児肝臓および心臓における大量出血を伴う様々な異常を示した。これらの結果は、GANPの発現は、胎児の成長に必要であることを示すものである。
(ii) 雌 ganp+/- マウスにおける乳ガンの高発生率
ヘテロ接合体ノックアウトマウスは、異常なく生まれ、野生型マウスと比較して同じ体重、および似通った行動を示し異常なく成長するように見える。ヘテロ欠損(ganp+/-)マウスを長期に渡って観察すると、高い発生率で乳ガンが発症し(約50週後の雌マウスの35%) (図3)、寿命がわずかに短くなっていた(図4)。雄ganp+/- マウスの寿命は、対照の同腹マウスと比較してほぼ同程度であった。
ヘマトキシリン−エオシン染色によると、乳ガンの組織学的知見として、細胞および核の形状の異形および多様性を有する線腫様型であることが示された(図5)。癌の領域は、部分的にネクローシス(*: No. 2)、筋肉の浸潤 (**: No. 13)、および多くの有糸分裂細胞を伴う(矢頭, No. 2 及び No. 13)領域であった(図5)。
半定量的RT-PCR解析によって、サイクリンD1、サイクリンD2、およびc-mycの転写の増加が示された。乳ガン細胞をさらに特徴付けるために、16の腫瘍から細胞株としてin vitroで保持した。
(iii) ganp+/- 細胞における中心体複製の異常および染色体不安定性の発生
すべての細胞株は、有糸分裂の間、解体した中心体の複製によって複数の紡錘体極を示した(図6)。その結果、異常な染色体の分離がおきた。これにより、染色体の数が増加した(図7)。大半の細胞株は、マウスの細胞の染色体数である40個をはるかに超え、細胞あたり約76個の染色体を有していた。このことは、細胞はゲノムとして通常2倍体(2N)であるのに対して、これらの細胞株では染色体数が適切に分配されなかった結果通常の倍数の4倍体(4N)を有することを示している。この現象は癌化した細胞で見られる染色体の分配異常からくるaneuploidyであり、ゲノム不安定性の重要な証拠となる。
SKY解析において、ほとんどの細胞が、染色体数の増加、トランスロケーションおよび欠損を生じ、染色体の異常を示した (図8)。腫瘍細胞の分子的および細胞的な異常は、p53の発現異常によって生ずる乳ガン細胞の異常と類似している。p53の欠損は、有糸分裂期の複数の中心体複製を伴う異常な細胞質分裂を引き起こす (Fukasawa et al., 1996)。ganp+/-マウスの乳ガン細胞株は、既に報告されているp53異常による細胞複製障害の際に見られるのと同様の中心体複製異常を示した(図6)。
マウスおよびヒトの乳ガンに関連する様々な分子に対するウェスタンブロット解析によって、p53の発現低下は最も劇的であり(図9)、p53のバンドは乳ガン細胞がプロテアソーム阻害剤であるMG132によって処理されたとしても確認することができないことが示された。これらの結果は、ganp+/-マウスで自然発生した乳ガンが、ゲノム不安定性を伴うp53欠損マウスと同様のメカニズムで発症することを強く示唆している。
(iv) ganp+/- SV40-MEFにおけるp53の発現の異常な制御
ganp+/- 細胞の分子変化およびゲノム不安定性を研究するために、本発明者は、in vitroにおいてSV40 large T-antigen のcDNAでトランスフォーメーションしたMEF細胞株 (ganp+/- SV40-MEF)を樹立した。そして、ganp+/- マウスのMEF-細胞株と野生型(ganp+/+)のMEF-細胞株との間で細胞増殖および細胞周期の移行を比較した。但し、ganp-/- マウスからは、SV40をトランスフォームしたMEF-細胞株を得ることはできなかった。
p53タンパク質の発現は、WT ganp+/+ SV40-MEFまたはプレ-B細胞株 18.81 (対照)と比較して、ganp+/- SV40 MEFにおいて顕著に減少した(図10A)。p53は、ganp+/- SV40-MEFの細胞質においてわずかにスポット状に発現しているが、核においては明らかな発現シグナルは認められなかった (図10B)。
シスプラチンおよびMNNGで処理した場合は、ganp+/+ および ganp+/- SV40-MEF 細胞株間において細胞周期に変化は無かった。しかし、ganp+/- SV40-MEF は、ノコダゾール処理(50 ng/ml)で誘導されるアポトーシスに対して耐性を示したが、細胞周期の進行は維持した。このことは、対照であるWT SV40-MEF 細胞に極めて対照的であった (図11)。
(v) GANPヘテロ欠損細胞におけるp53mRNAの障害のある核移行
ganp+/- MEF 細胞株におけるp53発現減少の原因を明らかにするために、本発明者はGANPが直接p53に結合するのかを調べた。しかしながら、細胞内におけるこれらのタンパク質の物理的な結合を明らかにすることはできなかった。その代わりに、ganp+/- SV40-MEFにおけるp53の転写産物の発現量は、対照である野生型細胞と比較して減少していた(図12)。β-actin、mdm2 およびRbなどの他の遺伝子の転写産物は、ほぼ正常であった。
さらに、本発明者は、p53遺伝子のプロモーター活性に対するGANPの直接的な影響を試験した。
その結果、最小のp53プロモーター領域を有するルシフェラーゼ発現コンストラクト(400-bp)を用いたレポーターアッセイによって、GANPの発現に関わりなく、p53の発現の転写活性は通常のレベルであることが示された。この領域は、UV照射後に確実にプロモーター活性を示すが、GANPの添加によってプロモーター活性は変化しなかった(図13)。これらの結果は、ganp+/- SV40-MEFにおけるp53の発現減少は、p53遺伝子の転写後に生じることを示している。
次に、本発明者は、p53転写産物の核から細胞質への輸送がganp+/- SV40-MEFにおいて変化しているかどうかをp53 の転写産物のIn situ RNA ハイブリダイゼーションによって試験した。その結果、核におけるp53の転写産物は、WT細胞とは極めて異なった局在をすることが示された (図14)。WT ganp+/+ SV40-MEF は、もっぱら細胞質においてのみp53 mRNAが局在しており、核においてはほとんどシグナルが検出されなかった(図14左パネル)。これに対し、ganp+/- SV40-MEFは細胞質と同様に核においてもp53 mRNAの存在が示された(図14中央パネル)。センスプローブは、どちらの細胞型でも検出されなかった(図14右パネル)。
p53 mRNAの一部は、ganp+/- MEF 細胞株の細胞質で検出されるが、その量はWT ganp+/+ MEF細胞株の量よりも多いものではなかった。この発現レベルは、図12において観察される結果と非常によく一致する。これらの結果は、GANPの欠損は、p53 mRNAの核輸送の障害を引き起こしていることを強く示している。
GANPの欠損細胞(ganp+/- MEF 細胞株)では、WT ganp+/+ MEF細胞株と比較して、β-actin、Mdm2 およびRbなどの他の遺伝子の転写産物について、mRNAの局在に関し明らかな変化は示されなかった (図15)。
図15において、「+/-」はWT ganp+/+ MEF細胞株、「+/-」はganp+/- MEF 細胞株を表す。「+/-」のパネルにおいて、左はβアクチン、中央はMdm2、右側はRbのmRNA局在を示す。
oligo-dTプローブを用いてポリA+ mRNAを検出した場合は、正常コントロールとして用いたganp+/+ MEF 細胞株と何ら異ならなかった。このことは、mRNA輸送におけるGANPの関与は、p53転写産物に対して選択的であることを示すものである。
ganp+/- SV40-MEFにおいて、p53 mRNAの核から細胞質への輸送に欠陥が生じることをさらに調べるために、本発明者はNIH-3T3細胞におけるp53 mRNAの局在が、siRNA法によりganp mRNAを抑制した後に変化するかどうかを検討した。
その結果、Ganp siRNA処置により誘導されるganp mRNAの減少によって、NIH-3T3ではp53転写産物が減少した(図16)。この条件下において、本発明者は、ganpノックアウト細胞でのp53 mRNAの核蓄積を明確に検出した。
これらのデータは、GANPは核からの選択的なmRNAの輸送にとって必要であることを示している。
GANP遺伝子の発現とDNA修復及び抗体産生との関係
(1)方法および材料
(i) マウスおよび免疫
本実施例では、rag1/gfpノックインマウス(Kuwata et al., 1999)、B細胞のganp遺伝子を削除したB-GANP-/- マウス(CD19-Cre knock-inを用いた)、floxed ganp-遺伝子マウス(ganp遺伝子のエクソン2をloxP配列で挟んだアレルを有するマウス)、およびC57BL/6Jマウスを使用した(Kuwahara et al., 2004)。8〜12週齢の上記マウスに、Imject Alum (Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を結合した100 μg NP28-CGG (Biosearch Technologies, Novato, CA)を腹腔内投与して免疫を行った。
(ii) 細胞表面染色、フローサイトメトリー解析およびセルソーティング
脾臓のB細胞は、マウスB細胞単離キットおよびautoMACS (Miltenyi Biotec GmbH, Gladbach, Germany)を用いて濃縮した。得られたB細胞は、フィコエリトリン(PE)-抗B220 mAb (RA3-6B2; BD Pharmingen, San Diego, CA)およびフルオロセイン イソチオシアネート(FITC)-抗-マウスT- およびB-細胞活性化Ag (GL7, Ly-77; BD Pharmingen)で染色した。細胞は、PE抗Fas mAb (Jo2; BD Pharmingen)およびストレプトアビジン-Cy-ChromeTM (BD Pharmingen)と組み合わせてビオチン化抗-rat IgM (G53-238; BD Pharmingen) で染色した。FACS Vantage (Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)によるソーティングは、GC-B細胞部分集団を純度>90%で分画した。
(iii) DNAの単離およびligation-mediated PCR (LM-PCR)によるIgV領域のDSB解析
5(104 の細胞 (equivalents) から精製したDNAは、250 U のT4 DNA ライゲース (Nippon gene, Tokyo, Japan) を用いて、BWリンカー (0.2μM) と、全ボリューム50μl中16℃ で16 時間結合させた。次に、反応液を希釈し、PCR増幅を二つのPCRラウンド、すなわち、50℃ のアニーリングステップを10回行った後、64℃のアニーリングステップを28回行った。二回目のラウンドの反応は、1回目のラウンドの一定分量(1μl)を、25μlの反応に使用した。増幅反応は、リンカー特異的かつネスティドのプライマーであって遺伝子特異的プライマーのセットを用い、hotstart AmpliTaq Gold (Applied Biosystems, Foster City, CA)により行った。
2%アガロースゲルで分離したPCR産物をブロットし、その後γ-[32P]-ATP標識遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプローブでハイブリダイズさせた。対照として、Cμ領域を同量のDNAから増幅した。LM-PCRにおけるプライマーおよびリンカーのオリゴヌクレオチド配列およびプローブの調製は文献に記載の通りに行った(Papavasiliou and Schatz, 2000)。
(iv) リアルタイム定量的RT-PCR(TaqMan)
AID用のプライマーおよびFAM標識プローブ、並びにGAPDHプライマーは、Applied Biosystemsから入手した。PCRはTaqMan Universal PCR Master Mixを用いて、ABI PRISM 7700 Sequence Detection SystemをSequence Detector version 1.6.3 software (Applied Biosystems)で操作して行った。遺伝子の発現は、ヘテロ接合体GANP+/- マウス由来のGL7+Fas- GC-B 細胞中のGAPDHと比較して定量した。すべての他の値はこの値に比較してプロットした。
(2)結果
(i) 成熟GL7+CD95/Fas+ GC-B cells におけるIgV領域のDSBの選択的な誘導
過去の研究において、TD-Agにより免疫を行うと、RAG1およびRAG2がGC-B細胞に再導入されることが明らかにされている。RAGはIgV領域のDSBに反応し得るかという疑問を解決するために、本発明者は、rag1/gfpノックインマウスを用いて、Green Fluorescent Protein (GFP)で標識したRAG1の再導入を解析した。
NP-CGで免疫したrag1/gfp ノックインマウスの脾臓からCD45R+ B 細胞を得、得られた細胞を、GL7およびRAGシグナルの発現に従って、GL7+ GFP- (G1) およびGL7+ GFP+ (G2) 画分にソートした (図17)。CD95/Fasの発現によって、GL7+ B 細胞をさらに二つの集団、すなわち未成熟移行型のB細胞と成熟GC-B細胞とに分けた。GFP-画分は、GFP+分画よりもCD95/Fasを大量に発現する。G1分画は、CD95/Fasを発現する34.8%の成熟GC-B細胞を含んでいたが、G2分画は、Fas+ 細胞 (13.0%)をほとんど有さず、そしてGL7- GFP- (G3)分画は1.48%であり、より少なかった。
ソートした細胞からゲノムDNAを精製した後、DSBレベルをLM-PCRを用いて検討した。
図18の上パネルで示すように、GL7+GFP- 細胞はDSBのレベルが低いが、GL7+GFP+ 細胞は高く、このことは、IgV領域遺伝子のDSBが、GC-B細胞においてRAGの発現とは無関係に生じていることを示している。DSBは、Cμ領域の測定(中央パネル)により示されるように、同じDNA量においてコントロール(下パネル)と比較して優先的にV領域遺伝子で存在していた。
本発明者は、次に、CD45R+GL7+をCD95/Fas-陽性および陰性の部分集団に分けることにより、IgV領域のDSBを表すB細胞の集団を特徴づけた(図19)。IgV-領域の DSBは、GL7+ CD95/Fas+部分集団に優性的に観察された(図20上パネル; 対照は図20中央パネルおよび下パネル)。このことは、IgV領域のDSBは、成熟GC-B細胞においてのみ生ずることを示している。
本発明者は、次に、抗原由来のB細胞においてIgV領域のDSBが生ずるのか、または増加するのかを調べるため、NP-CG/alumで免疫したマウスおよび alum(ミョウバン)-アジュバントのみで免疫したマウスにおける GC様B細胞のDSBレベルを比較した。
その結果、抗原免疫によって、GL7+ GC-B細胞におけるDSBレベルが増加したことから、NP-CGで刺激したB細胞においてVH-186.2領域でのDSBが生じることが示された(図21)。GL7+ B細胞の抗原非依存的条件では、アジュバント単独の投与によってDSBはほとんど誘導されなかった。この結果は、IgV領域のより多くのDSBがGC領域の抗原由来B細胞において誘導されることを示している。
(ii) B-GANP-/-マウスのB細胞におけるIgV領域のDSB
GC-B細胞の分化におけるIgV領域のDSBの重要性を調べるため、本発明者は、TD-Agに対する高親和性抗体を産生することのできないB-GANP-/-マウスにおけるDSBの生成について検討した。
C57BL/6J と10回以上のバッククロス交配を繰り返してGANP遺伝子の欠損以外はすべてC57BL/6J と遺伝的に同一とした変異マウスをNP-CGで免疫し、IgV領域のDSBの産生を、対照の同腹仔、floxed ganp-遺伝子マウス、または場合によっては野生型C57BL/6Jマウスと比較した。GC-B細胞は、9日目にCD45R+ GL7+の集団にソートした。
その結果、対照との比較において、B-GANP-/- マウスは、GC-B細胞以外(CD45R+ GL7-)の集団では、VH-186.2領域の DSBsに何ら変化は無かった。これに対し、成熟GC-B細胞集団(CD45R+ GL7+ CD95/Fas+)においてDSBが劇的に減少した (図22; 上パネル)。これは、2回目のチャレンジのブースト後にも観察された(すなわち、最初の免疫後18日目)(図22;下パネル.)。これらの結果は、成熟GC-B細胞におけるGANPの発現は、抗原誘導性DNA切断の発生および/または解離後の過程に必要であることを示している。
(iii) 成熟GC-B細胞におけるRad51, Ku80,および AID の転写
本発明者は、IgV領域のDSBがGANP-/- GC-B 細胞において増加しているかを確認するため、マーカーとしてDNA修復分子の転写を比較した。Rad51 および Ku80 は、NP-CG で免疫した後にセルソーティングにより精製したGL-7+Fas+ GC-B 細胞を用いてリアルタイムPCRにより定量した。
その結果、DNA相同組み換えに必須であるRad51は、対照(図23、白カラム)と比べてGANP-/- 成熟 GC-B 細胞(図23、黒カラム)において4倍増加していた。この結果は、非相同末端結合修復に重要であるKu80でも同様であった。これらの観察結果は、抗原により刺激されたGC-B細胞に生じるV領域のDSBは、 TD-Agで免疫した後のB-GANP-/- マウスでは低頻度であることを示すものである。
DNAの校正だけでなくDSBの末端の修飾も、GC-B 細胞のAIDによって影響を受けると考えられる。このため本発明者は、AIDの転写が、IgV領域のDSBが生じるのと同じレベルのGC-B細胞集団で起こるかどうかを調べた。
AIDの転写は、GL-7+Fas+ GC-B細胞に制限されているようであり(図24)、このことは、AIDは同じ成熟度のGC-B細胞の母集団において選択的に発現していることを示している。驚くべきことに、B-GANP-/- マウスは、成熟GC-B細胞においてAIDの高い転写レベルを示した。この結果は、AIDの転写の増加だけではV領域のDSBを誘導しないことを示している。V領域のDSBのレベルは、GC-B細胞においてGANPの発現に依存しているというよりは、むしろAIDの発現に依存しているものと考えられる。
(3)考察
本発明によって、IgV領域遺伝子内のDSBは抗原に由来する成熟GC-B細胞において選択的に生じることが確認された。このB細胞はKi-67を発現する。GL-7+Fas+マーカーおよび高いレベルのDSBを有する成熟GC-B細胞は、増殖型の胚中心細胞である。IgV領域のDSBの誘導は、RAG1依存的及び抗原依存的であり、V領域に選択的である。
Jacobs等および Schatz 等は、IgV領域のDSBsの産生は、SHMにおいて不可欠な事項であると予想した。しかしながら、DSBの産生は、AIDの不在によってDSBの頻度が変わらなかったことから、SHMに必ずしも関係しないようである。この観察結果は、DSBがSHMの促進と直接関係する主なタイプのDNA損傷でないことを示唆する。
本発明者は、GANPを欠損すると、抗原に由来するGL7+Fas+ GC-B細胞において選択的に生ずる平滑末端のIgV領域のDSBの減少を引き起こすことを示した (図20)。この知見に対し、いくつかの機序が考えられる。一つは、GANPは抗原由来のB細胞においてDNAの損傷の産生に関与するというものである。もう一つは、GANPはDSB後の過程に関与するというものである。
GANPは、RNAプライマーゼとMCM3-結合/アセチル活性化という二つの機能的な領域を有しており、これらは転写制御分子との相互作用による転写制御に必要である。興味深いことに、B-GANP-/- マウスは、成熟GC-B細胞においてAID転写産物が顕著に増加しているのに対して、GL7+Fas- GC-B 細胞集団では増加は認められない(図24)。GANPは、成熟GC-B細胞において直接的にAIDの転写のレベルを制御しているものと考えられる。あるいは、B-GANP-/- マウスでは親和性抗体の産生が低いことを考慮すると、増加したAIDの転写は、in vivoで高親和性抗体を得るために持続的に刺激されるGC-B細胞の反応を単に示すものかもしれない。
GANP発現を増加させると、抗原由来のB細胞においてV領域のDSBを増加させる。この結果は、SHMに関連したBCRの親和性成熟に対してIgV領域のDSBが重要な役割を果たすことを意味する。
Sac3相同領域を有するGANPは、免疫グロブリンV領域のDNA二本鎖切断(DSB)を制御し、T細胞依存性抗原に対する抗体の親和性成熟に必要である。Sac3の欠損は、Saccharomycesでは過剰なDNA相同組み換え(HR)を引き起こす。この原因については上述したようにまだ解明されていないが、Sac3がTHP1分子とともに遺伝子転写で産生されたRNA分子と複合体を形成し、酵母の核内から細胞質へ輸送する機能を有することが明らかにされている。そのRNA輸送はすべてのRNAに及ぶとされているが、機能の欠損によって核内に過剰のRNAが貯留する。その結果高度に相補的なRNAの存在によるDNAの複製傷害が引き起こされるものと解釈される。ほ乳動物細胞ではゲノム解析からはSac3と全く同一の構造を有する分子は存在しないとされる。GANP分子には中央部分にSac3相同部分があるものの、N末端側にはRNAプライマーゼ領域があり、C末端側にはMCM3結合領域がある。また、GANP欠損細胞では全くすべてのRNAの核外輸送が傷害されているという訳ではない。
本発明者は、ほ乳類細胞に発現しているGANPの機能に関して、特にDNA組み換えに焦点を絞って研究した。研究の手順として、以下の通り行なった。
(i) GANP欠損マウスの繊維芽細胞におけるHRに及ぼす機能を測定する。
(ii) NIH3T3細胞におけるHRに及ぼす機能の解析。これらは外来からHRを測定するためのレポーター遺伝子を挿入して測定した。
(iii) 免疫グロブリンの遺伝子改変における機能の解析としてRAG1とRAG2による遺伝子再構成を検討する。
(iv) V領域遺伝子の体細胞突然変異時における遺伝子修復における機能の検討。
(v) 免疫グロブリンクラススイッチにおける機能の検討。
(i)について
本発明者は、従来の遺伝子ターゲティングによって3kbの5'プロモーター領域およびATG開始部位を含む200bpのエクソンI領域を除き、変異マウスを作製した(図3)。アリールをホモ接合性に欠損したマウス(ganpd/dマウス)は、胎生致死であった。SV40感染による不死化によって、in vitroで培養可能なMEF細胞株が、ヘテロなganp+/dマウスから作製された(MEFganp+/d)。このMEF細胞株を用いて、本発明者は組み換え基質としてコンストラクトを導入後、HRイベントを測定した(図1)。SV40プロモーター制御下のコンストラクトは、異なる部位におけるストップコドンによる2箇所が変異したβガラクトシダーゼのタンデムな並びによって作製し、MEF細胞株にエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。
βガラクトシダーゼを産生するプラスミドは、E. Coli JM109株においてトランスフォーメーションを用いたアッセイによって測定した。HRまたは姉染色分体組み換えによる増殖性のβガラクトシダーゼ遺伝子の形成は、βガラクトシダーゼ活性を有するコロニーの頻度によって測定することができる。MEFganp+/dは、HRレポーターアッセイによって野生型MEFganp+/+よりもさらにHRを示した(4日目に7倍)。HRは、主に、介在性DNAの削除に伴って生じた。
(ii) について
HRの制御におけるGANPの役割を確かめるために、本発明者は、NIH3T3細胞において、同じDNA組み換え基質を用いてganp導入の効果を調べた。その結果、ganp cDNAの導入によって、用量依存的に細胞培養中の自然発生HRを抑制した。HRの阻害に必要な領域を、様々な切断型のganp cDNAを用いて調べた。MCM3AP領域のみを発現する切断型ganp(g-mcm3ap)は、それ自身により3倍のHRのレベルを引き起こし、これは、全長ganpの共導入によっても阻害された。Sac3-相同領域の機能領域、核酸局在配列、およびRNAプライマーゼ領域を有するコンストラクトは、自然に生じるHRの活性を完全に抑制した。HRの阻害活性は、GANPのSac3相同領域に依存し、特に、酵母Sac3と高い相同性を有する200アミノ酸に依存する。これらの結果は、GANPはSac3相同領域を介して、Sac3に似た機序によってDNA切断およびDSB修復の制御に役割を担っていることを示している。
AIDは、B細胞においてCSRに必要なDNA切断を制御すると考えられているため、本発明者は、aid cDNAトランスフェクションの効果をmockトランスフェクションと比較して調べた。AID遺伝子を導入すると、高いレベルでHRを誘導した。このことは、DNA損傷はAIDによって生じ、HR機序によって修復されることを示している。HR誘導の効果は、切断型gmcm3apとの共トランスフェクションにより5倍ほど増加した。CSRに必要な領域を欠損した変異型AID(188-198番目のアミノ酸領域の欠損)は、上記AIDほどの高いレベルのHRを誘導しなかった。全長のganpとの共トランスフェクションは、用量依存的にAID遺伝子により誘導されるHRを大きく阻害した。
次の実験において、組み換え基質コンストラクトは、I-sceI認識配列を二つの変異型βガラクトシダーゼ遺伝子の間に挿入することによって作製し、18bp DNA配列を特異的に切断して切除末端を産生する酵母I-sceI酵素のcDNAとともにNIH3T3にトランスフェクトすることにより調製した。Ganp遺伝子発現の効果は、mockベクターの導入との比較において検討した。I-secIの発現は、トランスフェクタントにおいて同様のレベルで検出された。I-secI導入によって産生されたHRは、切断型gmcm3apの導入により誘導されたものよりもより大きかった。Ganpは、培養中にI-secI誘導によって開始するHRを阻害した(特に48hrにおいて)。このことは、GANPはさまざまな種類のDNA損傷において有効であることを示している。
本発明においては、B細胞の免疫グロブリン遺伝子の遺伝子損傷と修復機構をモデルとして解析を行った。B細胞の初期分化過程では300個程度のV領域と10個程度のD領域、4個程度のJ領域がランダムに選ばれ遺伝子再構成される。すなわち、V, D, Jそれぞれの遺伝子の外側に存在する組み換えシグナルシークエンス(RSS)がRAG1およびRAG2によって特異的に切断され、VH-DH-JHまたはVL-JL遺伝子セグメントのような免疫グロブリン遺伝子の再構成がおこる。この際には、DNA二本鎖切断(DSB)が生じるものの、直ちに、XRCC4、Ku70/Ku80、DNA-PKcs、Artemis、DNA kigase IVによる非相同性末端結合修復(NHEJR)される。これは(iii)の実験に相当する。
末梢リンパ組織では、抗原刺激を受けたB細胞が、胚中心(GC)において高親和性かつクラススイッチ成熟B細胞を産生するV領域の体細胞突然変異(SHM)とクラススイッチ組み換え(CSR)によるIg遺伝子の遺伝子変化を経て、T細胞依存的な免疫応答を行う。GC-B細胞におけるIg V領域のSHMおよびCSRは、AIDにより開始される。AIDは、RNAエディティング酵素をコードするApobecI遺伝子への相同性によりRNAおよびDNAのデアミネーション活性を有することが知られている。Ig-遺伝子におけるシチジンのデアミネーションに続いて、ウラシル−シチジン核酸グリコシル化がおき、GC-B細胞における転写またはDNA複製の間、DNA切断が生じる。V領域のSHMにはV領域のDSBが挿入されることが明らかにされているものの、実際にSHMとどの程度関係するのかについてはまだ結論が出ていなかった。
本発明者は、V領域のDSBが確かに抗原に反応するGC-B細胞で高頻度におこり、このことがGANP分子によって制御されていること、そしてB細胞のIgV領域SHMと関連することを明らかにした。しかし、そのDSBの修復がNHEJRによるのかそれとも遺伝子相同組み換え(HR)のどちらか一方によって行われるのかに関しては明らかになっていない。Ig CSRにおいて、DSBはC領域の5'末端に位置する転写的に活性なS領域において起き、次に環状DNAとして介在領域を切り出した後、NHEJRにより結合されると考えられている。しかし、最近の研究において、S領域のDSBが、例えば、重症複合免疫不全(SCID)マウスのB細胞のCSRにおけるS領域のマイクロホモロジー配列のHRなどの他の機序によっても修復されることが報告されている。
一般に、DNA損傷は、急速に増殖する細胞において、転写共役およびDNA複製共役DNA切断として高頻度で生じ、その結果DSBになる。多くの細胞においては、DNA修復は通常RAD51、RPM、MRE1を有するHRに依存的であり、これらは一本鎖DNAを作り、ペアアリールの非損傷相補鎖とアニールさせる。HRは、DNA鎖を非傷害アリールから相補鎖を正確に読むことによりDNA鎖を伸長する、高い正確性のDNAポリメラーゼでDNAを強力にレスキューする。非傷害アリールは、増殖細胞において、損傷をうけたDNAの修復におけるDNA配列の正確さが不可欠である。一方, NHEJRは遺伝子の修復をする際に参考にする対立遺伝子を用いないことから、余分な配列を挿入したり、欠損させたりする、変異導入の頻度が高いと考えられる。従って、多くの場合、細胞の転写やDNA複製に伴うDNA損傷を修復する場合にはHRを主体とすることがより正確であるとされる。
DNAのHRは、また同時に数多くの相同遺伝子が隣接して存在する場合、即ち、免疫グロブリン遺伝子のV領域遺伝子やTCR遺伝子のように、相同性が70〜80%に及ぶ領域が多く存在する場合は、別な遺伝子断片との間で高頻度に遺伝子修復を行うことが予想される。このような場合、DNAの過剰な相同組み換え(HR)として検出されることになる。実際のがん細胞では相同組み換えによる遺伝子の不安定性が指摘されている。この修復に関与する分子としてRad51, Rad54, Mre11, 53BP1, ATM, ATR, Rad17, NBS1, BRCA1, MDC1, g-H2AXなどがあげられる。P53分子も姉妹染色体のHRに関与することが知られているが、その詳細な機構は明らかになっていない。
(iii)について
Ig遺伝子再配列のDNA組み換え機序は、Lieberら(Lieber et al., 1988)によってこれまでに報告されている、二つの異なる由来のRSSのレポーターコンストラクトを用いることによって特に特徴づけられる。ここで、本発明者は、pJH202およびpML110プラスミドを作製し、NIH3T3細胞にRAG1およびRAG2発現ベクターを導入することによって、二つのタイプのIg遺伝子再配列のシグナル結合及びコーディング結合を検出した。RAG1及びRAG2の発現は、組み換えアッセイ前に確認した。再配列の頻度は、同じ量のプラスミドトランスフォーメーション混合液を用いた、アンピシリンおよびクロラムフェニコール選択培地上で生育した総コロニー数からアンピシリン耐性(AmpR)コロニーを抜くことによって選出した。完全長のganp cDNAの導入は、mockトランスフェクト又はg-mcm3ap cDNA(pML110プラスミドによるコーディング結合頻度検出用cDNA)と比較して、RAGを介したRSS再配列の重大な変異を示さなかった。繰り返し実験を行なってみても、GANPはRSSにおいて実行されるIg遺伝子の再配列においては、何ら制御効果を示さなかった。従って、GANPはNHEJRよりもHRによって修復されるDNA傷害に有効であることが明らかになった。
本発明者は、B細胞におけるCSR中のDSBに、又はDSBの修復にGANPが役割を担うかどうかを検討した。
本発明者は、CD19-Creノックインおよびganp遺伝子floxedマウス(ganpflox)により調製されるGANPネガティブB細胞(B-ganp-/-)を有するマウスを用いて試験した。これまでの研究から、ニトロフェニルニワトリγグロブリン(NP-CG)で免疫後にB-ganp-/-マウスの血清においてIgG1およびIgG3抗体が高い抗体価であることを示した。ここで、本発明者は、ヘテロ接合体のB-ganp+/-マウスが野生型の対照と比較して、血清IgEが高いレベルを示すことを見出した。そのため、本発明者は、NP-CGで免疫後のB-ganp-/-マウスについて、in vivoでIgのクラススイッチを比較した。
膜Igのクラススイッチは、ganp-ヘテロ欠損マウス(B-ganp+/-)のB細胞ではIgEを増加させたが、ホモ接合体の欠損B-ganp-/-マウスでは増加しなかった。B200+GL7+Fas+成熟脾臓GC-B細胞は、floxedコントロールマウスと比較して、B-ganp+/-およびB-ganp-/-から精製した。生殖細胞系列の転写物であるCγ1およびCεの発現は、野生型、B-ganp+/-およびB-ganp-/-マウスのB細胞と類似する。NPハプテンによる免疫によって誘導される規定のVH168.2領域は、VH168.2に対する5'プライマーおよびμ、γ3、γ2a、γ2b、γ1、ε、およびαなどの定常領域に対応する3'プライマーを用いるRT-PCRによって測定した。VHJ558転写物の発現は、VH186.2に対する抗原非依存性の反応のコントロールとして並行に比較される。VHJ558転写物は、遺伝子ファミリーが大きいため検出が容易であり、クラススイッチの変化を見るのに適している。
VHJ558転写物は、変異型マウスにおいてCεを除く全てのアイソタイプに発現した。全てのバンドについて、サブクローニング後にそれらの配列を確認した。
B-ganp-/-マウスのGC-B細胞は、コントロールマウスと比較して、免疫9日後において顕著なVH186.2-Cμのバンドを示した。Cγ3、Cγ2aおよびCγ2bとVH186.2とのクラススイッチしたバンドは、コントロールと類似していた。しかし、それらは、Cγ1クラスでのバンドをより増加させていた。B-ganp+/-およびコントロールマウス両方からのFas-GC-B細胞は、VH186.2-μバンドの同様のレベルを示した。この結果は、CSRおよび環状DNAを検出するゲノムPCR解析によってさらに確認された。
in vivoにおけるこれらの結果は、GANPの欠損はCSRを阻害しないが、むしろ、Agで駆動するGC-B細胞において生じるγ1-クラススイッチを増加させることを示す。このことは、GANPは、GC-B細胞においてCSRの間、過剰なHRを抑制するという知見を裏付けている。
次に、本発明者は、変異マウスから得られる脾臓のB細胞のin vitroアッセイによって、CSRにおけるGANPの発現の効果を調べた。ヘテロ接合体のB-ganp+/-マウスのB細胞では、抗CD40抗体およびIL-4による刺激によって、野生型B細胞と比較してクラススイッチが増加した(IgG1;27.45%対野生型6.89%、IgE;6.55%対野生型0.65%)。意外なことに、GANP-/-B細胞は、GANP+/-B細胞と比較してクラススイッチがさらに減少した。GANP+/-B細胞において増加したクラススイッチは、マウスにおける高い血清IgE価およびin vitroにおける刺激後の増加したIgE+-B細胞によって表される。
生殖細胞株のCγ1およびCεの転写物を示すRT-PCR解析は、B-ganpflox/floxマウス由来のコントロールのB細胞と比較して、GANP+/-B細胞において何ら変化しなかったが、GANP-/-B細胞におけるCε転写物の顕著な減少を示した。ヘテロ接合体のB-ganp +/-マウスは、これまでの発明者の研究において、親和性成熟における明らかな異常は示さなかった。
興味深いことに、介在領域の切断後の環状DNAは、GANP+/- B-細胞においてCγ1 および Cεを顕著に増加した。しかし、GANP-/- B-細胞では、環状DNAは低値であった。ホモ接合体のganp-欠損B細胞においてCSRのレベルが低いことは、、Agに反応したB細胞の増加したアポトーシスと関連した。このことは、異常に多くのDNA組み換えの増加によるものと考えている。
γ1スイッチジャンクションのPCR解析において、GANP-/- B-細胞における典型的な単一バンドは検出されなかったが、むしろ、対照の野生型B細胞と比較して、明らかな単一バンドで示される様々な大きさの複数のバンドが現れた。これらの結果は、NHEJRによって生じる通常のCSRイベントは、ホモ接合体ganp-欠損B細胞において正常に起きるが、正常でないDNA修復(例えばHR)により起きるさらなるCSRを達成できないことを示している。
これまでの知見から、RNA輸送因子は、Saccharomyces cerevisiaeにおいて転写共役DNA HRプロセスの調節に必要不可欠であることを示している。Saccharomyces Sac3はActin重合の阻害剤として同定されており、核から細胞質へのRNA輸送に必要であることも示されている。Sac3の欠損は、細胞周期移行の遅れを生じ、酵母細胞においてDNAの高組み換えを起こすことが知られている。しかし、哺乳動物、特にリンパ細胞において、Sac3様分子を介したDNA HRの制御についてはほとんど知られていない。Sac3と相同領域を有するGANPは、T細胞依存的抗原で免疫したB細胞における活性誘導分子として同定された。GANPは、RNAプライマーゼおよびMCM3結合/アセチル化領域という二つのさらなる機能ドメインを有する210-kDaのタンパク質であり、複雑なゲノム構造を有する哺乳動物細胞において、HR活性の制御に必要な独自のホモローグである。そして、B細胞における条件的ganp遺伝子ターゲティングによって、GANPは、免疫された抗原に対する抗体の親和性成熟にとって必要であることが示された。GANPは、アミノ末端側にRNAプライマーゼ領域を有し、カルボキシル末端側にMCM-3結合領域を有している。短い型のGANPは、Map80/MCMAPとして別に同定され、MCM複合体に特異的に相互作用し、転写を促進するMCM3へのアセチル化活性を有する。これらの構造の特徴は、GANPは、B細胞における免疫応答の間、活性化したDNA複製および/または転写のDNA領域に結合する複合体において、特別な機能を有することを示している。
GANPがHRを阻害する分子機序について、解明される点が残されている。Saccharomyces Sac3 タンパク質(55-kDa) の欠如は、不適切な核−細胞質へのRNA輸送と、それに続くDNAのハイパー組み換えを引き起こす。RNA輸送の欠如がDNAハイパー組み換えを引き起こす詳細な機序の多くは、解明されていない。センス鎖に対応するRNA転写物の蓄積が、転写的に活性な部位において、互いに相補的な二つのDNA鎖との3本鎖のような衝突を招き、転写共役機序のもとにDSBを生じるという仮説が説明される。
ここで示される結果は、GANPは急速な細胞の増殖を生じるHR、またはGC-B細胞におけるように高いグレードのDSBを伴う細胞におけるHRを阻害することを、明確に示している。
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DNAの組み換えにおけるGANPの分子機構を解析するための方法を示す図である。 DSB後の修復メカニズムを、I-sceI酵素のcDNAを用いて調べるための方法を示す図である。 乳癌を担持するマウスの図である。 マウスの生存曲線を示す図である。 ヘマトキシリン-エオシン染色による乳癌の組織学的検査結果を示す図である。 ganp+/-細胞における中心体複製の異常を示す図である。 乳癌細胞における染色体数を示す図である。 SKY解析における染色体異常を示す図である。 ウエスタンブロット解析結果を示す図である。 p53タンパク質の発現を示す図である。 ノコナゾールで細胞を処理したときの細胞周期を解析した結果を示す図である。 ganp+/- SV40-MEFにおけるp53の転写産物の発現を示す図である。 p53プロモーター領域を有する発現構築物を用いたレポーターアッセイの結果を示す図である。 p53転写産物のIn situ RNAハイブリダイゼーションの結果を示す図である。 β-アクチン、Mdm2及びRbのIn situ RNAハイブリダイゼーションの結果を示す図である。 ganp siRNA処理により誘導されるp53転写物の減少を示す図である。 B細胞のセルソーティングの結果を示す図である。 DSBのレベルを解析した結果を示す図である。 B細胞のセルソーティングの結果を示す図である。 DSBのレベルを解析した結果を示す図である。 DSBのレベルを解析した結果を示す図である。 DSBのレベルを解析した結果を示す図である。 Rad51及びKu80の転写活性を比較した結果を示す図である。 AIDの転写活性を比較した結果を示す図である。

Claims (3)

  1. 細胞内においてGANP遺伝子の発現を促進することを特徴とするDNA修復方法であり、前記GANPがDNAの相同組換えを阻害することを含む、前記方法
  2. ゲノムが安定化することを含む方法であって、前記ゲノムの安定化が、GANPが損傷DNAを過剰な相同組換えから保護することによるものである、請求項に記載のDNA修復方法。
  3. GANP遺伝子を含むゲノムの安定化剤であって、前記ゲノムの安定化が、GANPが損傷DNAを過剰な相同組換えから保護することによるものである、前記安定化剤
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