JP2004073142A - Ganp結合性タンパク質 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質。(a)特定なアミノ酸配列;(b)特定なアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、GANPに対する結合活性を有するアミノ酸配列;又は、
(c)特定なアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、GANPに対する結合活性を有するアミノ酸配列:
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はB細胞の増殖と分化に関与するGANPに対する結合活性を有する新規なタンパク質、該タンパク質とタンパク質ホスファターゼとからなるタンパク質複合体、ならびにそれらの利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌は人間の死亡率の3分の1を占めることからその早期発見の研究が鋭意進められている。また我国では高齢化が進んでいるが、それに伴って自己免疫疾患の症例も多くなってきており、自己免疫疾患の発症のメカニズム、診断薬についての研究も精力的に行われている。癌や自己免疫疾患については、様々な細胞、タンパク質が関与しているが、B細胞も重要な役割を担っていることが分かっている。B細胞が癌や自己免疫疾患の発症に関与するメカニズムを解明することができれば、癌や自己免疫疾患に対して有効な対策がとれる。
【0003】
自己免疫疾患の一つとしてNZB系マウスにおける自己の赤血球に対する免疫反応で起こる自己免疫性溶血性貧血が知られている。本発明者らはこの自己免疫性溶血性貧血を発症するNZB系マウスの脾臓で自己免疫状態において異常B細胞分化のシグナル変換に関与する可能性のある210kDaのGANPタンパク質を発見した(WO 00/50611)。最近このGANPタンパク質は自己免疫以外に癌細胞の増殖にも関与しているとの報告もある。
【0004】
GANPタンパク質の機能についてはこれまで幾つか解明されている。
第一には、B細胞の分化への関与である。一般にB細胞の分化については次のことが知られている。まずT細胞依存性抗原による免疫でリンパ濾胞の胚芽中心の暗領域において抗原特異性B細胞がセントロブラストとして増殖する。このクローン増殖の後、セントロブラストは明領域に移動し、細胞周期を停止し、小さなセントロサイトを形成する(Kelsoe,G.,et al.,Immunol.Today 16,324−326,1995;Rajewsky,K.,et al.,Nature 381,751−758,1996;Tew,J.G.,et al.,Immunol.Rev.156,39−52,1997; MacLennan,I.C.,et al.,Immunol.Rev.156,53−66.1997)。GANPは上記のようなB細胞のセントロブラストからセントロサイトへの分化に関与している。GANPは脾臓や胸腺においては低レベルで存在するが、invivoにおいてT細胞依存性抗原で免疫された後は胚中心B細胞において選択的に発現することが確認されている。また、in vitroでは、B細胞中で抗IgM抗体と抗CD40モノクローナル抗体(mAb)の刺激によって発現が誘導される (Kuwahara,K.,et al.,Blood 95,2321−2328,2000)。
【0005】
第二には、活性化された胚芽中心のB細胞のDNA複製への関与である。
GANPタンパク質のカルボキシル基末端領域はMap80の全構造をコードする。このMap80はMCM3(ミニクロモゾーム維持分子3)に結合し(Takei,Y.,et al.,J.Biol.Chem.273,22177−22180,1998)、細胞質から核へのMCM3の移動に関与している。MCM複合体はDNAヘリカーゼ活性を有し(Ishimi,Y.,et al.,J.Biol.Chem.272,24508−24513,1997)、GANPタンパク質はこのMCM複合体の成分と結合する能力がある(Kuwahara,K.,et al.,Blood 95,2321−2328,2000)。また、MCMとの結合性に加えて、GANPはアミノ基末端領域においてDNAプライマーゼ活性をコードする(Kuwahara,K.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98,10279−10283,2001)これらの両活性はDNA複製過程においてDNAラギング鎖合成の延長に協働している可能性がある。
【0006】
DNAの複製は、複製開始点認識複合体(ORC)が結合することにより周期的に存在する複製開始点から始まる。ORCは8つの部品MCM2,3,4,5,6及び7とDbf4とCdc45と命名されたMCM複合体を取り込む(Tye,B.K.,et al.,Annu.Rev.Biochem., 68, 649−686, 1999)。DNA複製に必要なMCM成分は細胞分裂をコントロールし、認可された因子をデザインすることによりDNAの複製を調整していると考えられる(Chong,J.P.,et al.,Nature 375,418−421,1995;Kubota,Y.,et al.,EMBO J.16,3320−3331,1997: Thommes,P.,et al.,Cancer Surv.29,75−90,1997).
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、癌又は自己免疫疾患において認められるB細胞の異常増殖に関与しているGANPタンパク質とともに増減するGANP結合性タンパク質を探索し、同定することにある。
本発明の別の課題は、癌又は自己免疫疾患の診断に用いることのできるGANP結合性タンパク質測定用試薬、及び測定用キットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために、酵母を用いてタンパク質−タンパク質相互作用のスクリーニングを実施した結果、GANPと結合する新規タンパク質(G5PR)を同定し、さらにこのG5PRの構造と機能を解明した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0009】
即ち、本発明によれば、下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質が提供される。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、GANPに対する結合活性を有するアミノ酸配列;又は、
(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、GANPに対する結合活性を有するアミノ酸配列:
【0010】
本発明によれば、上記タンパク質とタンパク質ホスファターゼとから成るタンパク質複合体が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、上記タンパク質ホスファターゼがタンパク質ホスファターゼ5(PP5)又はタンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)である上記タンパク質複合体が提供される。
【0011】
さらに本発明によれば、本発明のタンパク質をコードする遺伝子が提供される。
さらに本発明によれば、下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子が提供される。
(a)配列番号2に記載の塩基配列;
(b)配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、GANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;又は
(c)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、GANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
【0012】
さらに本発明によれば、本発明の遺伝子を含むベクターが提供される。
さらに本発明によれば、本発明の遺伝子又は本発明のベクターを有する形質転換体が提供される。
【0013】
さらに本発明によれば、本発明のタンパク質又はタンパク質複合体に対する抗体が提供される。
さらに本発明によれば、上記抗体を含むGANP結合性タンパク質測定用試薬が提供される。
【0014】
さらに、本発明によれば、上記抗体を含むGANP結合性タンパク質測定用キットが提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様及び実施方法について詳細に説明する。
(1)本発明のタンパク質及び遺伝子
本発明は、下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質、並びにそれをコードする遺伝子に関する。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、GANPに対する結合活性を有するアミノ酸配列;又は、
(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、GANPに対する結合活性を有するアミノ酸配列:
【0016】
本発明の遺伝子の具体例としては、下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子が挙げられる。
(a)配列番号2に記載の塩基配列;
(b)配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、GANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;又は
(c)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、GANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
【0017】
上記した「配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
【0018】
上記した「配列番号1に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列」とは、該アミノ酸配列と配列番号1に記載のアミノ酸配列との相同性が少なくとも60%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上であることを意味する。
【0019】
上記した「配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から60個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、さらに好ましくは1から10個、特に好ましくは1から5個程度を意味する。
【0020】
上記した「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989. 以後 ”モレキュラークローニング第2版” と略す)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0021】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。
【0022】
上記した「GANPに対する結合活性を有する」とは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と同程度又はそれ以上の親和性でGANPと結合することができることを言う。
【0023】
本発明の遺伝子の取得方法は特に限定されない。本明細書中の配列表の配列番号1および配列番号2に記載したアミノ酸配列び塩基配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いてマウスなどのcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより本発明の遺伝子を単離することができる。マウスの由来のcDNAライブラリーは、本発明の遺伝子を発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。
【0024】
PCR法により配列番号2に記載した塩基配列を有するDNAを取得することもできる。マウスの染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号2に記載した塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを用いてPCRを行う。
PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
【0025】
上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークローニング第2版、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987−1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載された方法に準じて行うことができる。
【0026】
本明細書中上記した、(b)配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、GANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する遺伝子(変異遺伝子)は、化学合成、遺伝子工学的手法又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することもできる。具体的には、配列番号2に記載の塩基配列を有するDNAを利用し、これらDNAに変異を導入することにより変異DNAを取得することができる。
【0027】
例えば、配列番号2に記載の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0028】
本明細書中上記した、(c)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、GANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする塩基配列は、上述の通り、一定のハイブリダイゼーション条件下でコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを行うことにより得ることができる。
【0029】
次に、本発明のタンパク質の入手・製造方法について説明する。本発明のタンパク質の入手・製造方法は特に限定されず、天然由来のタンパク質でも、化学合成したタンパク質でも、遺伝子組み換え技術により作製した組み換えタンパク質の何れでもよい。比較的容易な操作でかつ大量に製造できるという点では、組み換えタンパク質が好ましい。
【0030】
天然由来のタンパク質を入手する場合には、該タンパク質を発現している細胞又は組織からタンパク質の単離・精製方法を適宜組み合わせて単離することができる。化学合成タンパク質を入手する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って本発明のタンパク質を合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明のタンパク質を合成することもできる。
【0031】
本発明のタンパク質を組み換えタンパク質として産生するには、該タンパク質をコードする塩基配列(例えば、配列番号2に記載の塩基配列)を有するDNA又はその変異体又は相同体を入手し、これを好適な発現系に導入することにより本発明のタンパク質を製造することができる。
【0032】
発現ベクターとしては、好ましくは宿主細胞において自立複製可能であるか、あるいは宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものであればよく、本発明の遺伝子を発現できる位置にプロモーターを含有しているものが使用される。また、本発明のGANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する形質転換体は、上記の発現ベクターを宿主に導入することにより作製することができる。宿主は、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞のいずれでもよく、また宿主への発現ベクターの導入は、各宿主に応じた公知の手法により行えばよい。
【0033】
本発明においては、上記のようにして作製した本発明の遺伝子を有する形質転換体を培養し、培養物中に本発明のタンパク質を生成蓄積させ、該培養物より本発明のタンパク質を採取することにより組み換えタンパク質を単離することができる。
【0034】
本発明の形質転換体が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら微生物を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。また培養条件も該微生物を培養するのに通常用いられる条件にて行えばよい。培養後、形質転換体の培養物から本発明のタンパク質を単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いればよい。
【0035】
なお、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換又は挿入したアミノ酸配列を有するタンパク質、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNA配列の一例示す配列番号2に記載の塩基配列の情報に基づいて当業者であれば適宜製造又は入手することができる。
【0036】
例えば、配列番号2に記載の塩基配列又はその一部を有するDNAプローブとしてマウス又はマウス以外の生物より、該DNAのホモログを適当な条件下でスクリーニングすることにより単離することができる。このホモログDNAの全長DNAをクローニング後、発現ベクターに組み込み適当な宿主で発現させることにより、該ホモログDNAによりコードされるタンパク質を製造することができる。
【0037】
(2)本発明の遺伝子を有するベクター
本発明の遺伝子は適当なベクター中に組み込んで組み換えベクターとして使用することができる。ベクターの種類は発現ベクターでも非発現ベクターでもよく、目的に応じて選ぶことができる。
クローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自律複製できるものが好ましく、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる、発現ベクターとしては、好ましくは宿主細胞において自立複製可能であるか、あるいは宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものを使用する。また、発現ベクターとしては、本発明の遺伝子を発現できる位置にプロモーターを含有しているものが使用される。
【0038】
細菌を宿主細胞として用いる場合は、本発明の遺伝子を発現させるための発現ベクターは該細菌中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、上記DNAおよび転写終結配列より構成された組換えベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0039】
(3)本発明の遺伝子を有する形質転換体
本発明のGANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する形質転換体は、上記した組み換えベクター(好ましくは発現ベクター)を宿主に導入することにより作製することができる。
宿主細胞としては、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞のいずれをも用いることができる。また、遺伝子導入には、それぞれの宿主に応じて公知の当業者に利用できる手段で行えばよく、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等により行うことができる。
【0040】
本発明のタンパク質は、後記実施例に示されるように、タンパク質ホスファターゼ5(PP5)又はタンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)と結合してタンパク質複合体を形成する。従って、本発明のタンパク質はこのようなタンパク質ホスファターゼと複合体を形成した態様をも包含する。
【0041】
(4)本発明のタンパク質、タンパク質複合体に対する抗体
本発明によりGANP結合性タンパク質が同定されたことにより、該タンパク質に対する抗体を作製することができる。このような抗体の作製は、当該タンパク質、タンパク質複合体又はGANPの動態の解明などの研究において有用である。本発明の抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、その作製は定法により行なうことができる。
【0042】
例えば、本発明のタンパク質又はタンパク質複合体(以下、これらを総称して本発明のタンパク質という)を認識するポリクローナル抗体は、本発明のタンパク質を抗原として哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物を免疫することができる。免疫感作の方法は当業者に公知であり、例えば抗原を1回以上投与することにより行うことができる。抗原投与は、例えば7〜30日間隔で2〜3回投与すればよい。投与量は1回につき、例えば抗原約0.05〜2mg程度とすることができる。投与経路も特に限定されず、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができるが、静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に注射することにより投与することが好ましい。また、抗原は適当な緩衝液、例えば完全フロイントアジュバント又は水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントを含有する適当な緩衝液に溶解して用いることができるが、投与経路や条件等に応じてアジュバントを使用しない場合もある。
【0043】
免疫感作した哺乳動物を一定期間飼育した後、該哺乳動物の血清をサンプリングし、抗体価を測定する。抗体価が上昇してきたら、例えば100μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫を行なう。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺乳動物から血液を採取して、該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウム又はポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の常法によって分離・精製することにより、ポリクローナル抗血清として、本発明のタンパク質を認識するポリクローナル抗体を得ることができる。なお血清は、たとえば、56℃で30分間処理することによって補体系を不活性化してもよい。
【0044】
本発明のタンパク質を認識するモノクローナル抗体のグロブリンタイプは特に限定されず、例えばIgG、IgM、IgA、IgE、IgD等が挙げられる。本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株は特に制限されないが、例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマとして得ることができる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、以下のような細胞融合法によって得ることができる。
【0045】
抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用する。抗原としては、本発明のタンパク質又はその部分ペプチドを使用する。免疫動物としてはマウス、ラット等を使用でき、これらの動物への抗原の投与は常法により行う。例えば完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと抗原である本発明のタンパク質との懸濁液もしくは乳化液を動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内等に数回投与することによって動物を免疫化する。免疫化した動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とを公知の方法(G.Kohler et al .,Nature,256 495(1975))により融合してハイブリドーマを作製することができる。
【0046】
細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合を行なうに際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選択にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用する。細胞融合により得られるハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングする。さらに必要に応じて、本発明のタンパク質を用いた酵素免疫測定法によりスクリーニングを行うことにより、本発明のタンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。
【0047】
このようにして得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行なうことができる。例えば、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用できる。
【0048】
また、上記した抗体の断片も本発明の範囲内である。抗体の断片としては、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等が挙げられる。
さらに、上記した抗体の標識抗体も本発明の範囲内である。即ち、上記のようにして作製した本発明の抗体は標識して使用することができる。抗体の標識の種類及び標識方法は当業者に公知である。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼなどの酵素標識、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)又はTRITC(テトラメチルローダミンBイソチオシアネート)等の蛍光標識、コロイド金属および着色ラテックスなどの呈色物質による標識、ビオチンなどのアフィニティー標識、あるいは125Iなどの同位体標識などを挙げることができる。本発明の標識抗体を用いた酵素抗体法、免疫組織染色法、免疫ブロット法、直接蛍光抗体法又は間接蛍光抗体法等の分析は当業者に周知の方法により行うことができる。
【0049】
(5)本発明のGANP結合性タンパク質測定用試薬
本発明は、さらに、上記方法で製造された本発明の抗体を含み、免疫学的測定法などにより被検試料中の本発明のタンパク質を測定することのできるGANP結合性タンパク質測定用試薬を提供する。
本発明はまた、上記抗体を標識化した標識化抗体を含むGANP結合性タンパク質測定用試薬を提供する。標識の種類及び標識方法は上記の通りである。
上記試薬を用いて本発明のGANP結合性タンパク質を免疫測定するための方法としては、例えば酵素免疫測定法、ラジオイムノアッセイ、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法等を挙げることができる。
【0050】
(6)本発明のGANP結合性タンパク質測定用キット
本発明のGANP結合性タンパク質測定用キットは、上記方法で製造された抗体を含む。免疫学的測定法が例えば酵素免疫測定法の場合、本キットには、抗体を固定化させるための担体、酵素標識化抗体、標識酵素の基質などの標識酵素活性測定用試薬、緩衝液などを含むことができる。
本発明のGANP結合性タンパク質測定用キットを用いれば、被検試料中の本発明のタンパク質量を正確かつ簡便に測定できる。
GANPタンパク質はB細胞の増殖と分化に関与し、B細胞が異常に増加する癌や自己免疫疾患では、GANPタンパク質とともにGANP結合性タンパクもまた増加する。従って、GANP結合性タンパクは癌や自己免疫疾患の発症の指標となる。本キットによれば、測定されたGANP結合性タンパク質量を指標として癌又は自己免疫疾患の診断を行うことができる。
【0051】
具体的には、測定により本発明のGANP結合性タンパク質量の増加が検出された場合は、例えば、各種癌(子宮体癌、子宮内膜腫瘍、乳癌、大腸癌、前立腺癌、肺癌、腎臓癌、神経芽腫、膀胱癌、黒色腫等)や自己免疫性疾患(慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、リウマチ熱、結節性多発動脈炎、ベーチェット病、強皮症、シェーグレン症候群、慢性甲状腺炎、骨軟化症、門脈圧亢進症炎など)などの疾病である、又は将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
診断に供する被検試料は、血液、血清、滑膜液などを用いることができる。
【0052】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
(実施例1) GANP結合性タンパク質の分子クローニング
GANP結合分子を、酵母2−ハイブリッドcDNAクローニング法によってMatchmakerシステム(クロンテク(CLONTECH))を用いてスクリーニングした。完全長マウスganp cDNA(〜6kb)を使用し、図1Aに示す7つのDNA断片(G1〜G7と呼ぶ。各々約1kbの大きさ)をPCRによって調製し、これらをBait VectorpAS2.1に導入した。Bait Vectorに導入したマウスganp cDNAの3,844nt〜5,757ntからの領域(G5)を、改良酢酸リチウム法によりサッカロミセスセレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)Y190細胞中に導入した。トリプトファンを含まない合成デキストロース培地で選択した細胞を、pACT2ベクター(クロンテク(CLONTECH))中のGAL4トランス活性化ドメイン下に導入したマウス胎児(E12)肝臓cDNAの発現ライブラリーにて形質転換した。約2×106の形質転換体を25mMの3−アミノトリアゾール(Sigma)を含むがトリプトファン、ロイシン、ヒスチジンを含まないプレート上でスクリーニングし、増殖する細胞をβ−ガラクトシダーゼ反応によりさらにスクリーニングした。陽性クローンから回収されたプラスミドDNAを大腸菌(Escherichia coli)HB101への形質転換により増幅し、続くスクリーニング分析では自動DNA配列アナライザー(PE Applied Biosystems)によって挿入物の特徴づけを行った。約120の陽性クローンの配列結果を調べると、3つの独立したクローンは同じ遺伝子を示した。
【0053】
G5領域に特異的に結合した1つのクローン(G5PR)の全長配列を決定するために、5’−RACE法によってマウスG5PRの完全長cDNA(1.6kb)を単離し、さらに分析した。分子量は53.4kDaと計算された。マウスG5PRは配列番号1に示す453のアミノ酸からなり(配列番号1)、マウスG5PRの全長cDNAは1.359bpの読み取り枠を含んでいた。(図1B、配列番号2)。このEMBLデータベースに提出されたマウスG5PR cDNAの配列データは、受け入れ番号AJ238247にて受理された。
【0054】
データベース上の相同性探索により、G5PRのアミノ酸184番目から453番目の領域は、PR72(38%)(Hendrix,P.,et al.,J.Biol.Chem.268,15267−15276,1993)、PR48(40%)(Yan,Z.,et al.,Mol.Cell.Biol,20.1021−1029,2000)、およびPR59(37%)(Voorhoeve,P.M. et al., Oncogene,18, 515−524,1999)のいくつかの制御因子Bのサブユニットと相同性を示した(図1C)。G5PRのモチーフ分析では、Ca2+相互作用により制御されるホスファターゼの特徴である核移行シグナル配列(NLS)とCa2+結合モチーフであるEF−ハンドを示した。系統樹では、G5PRが、機能が未知のA. thaliana TON2(44%)との相同性を示す(Traas,J.,et al.,Nature 375,676−677,1995) (図1D)。
【0055】
各種器官でのG5PRの発現ESTクローンを探索すると、ヒトG5PRはFLJ20644(ジーンバンク(GenBank);AK000651)と同一であり、アミノ酸の比較によりマウスG5PRと98.9%同一であった。図2AはマウスとヒトG5PRタンパク質のアミノ酸配列の比較を示す。同一の残基には影をつけてある。
図2BはヒトG5PR遺伝子のゲノム構造を示す。エキソンは、黒の四角で示す(エキソンIIとVIIの下の矢印は、後記のRT−PCR分析に使用したG5PR特異的プライマーを示す)。ジーンバンク(GenBank)データベースを用いてヒトG5PR遺伝子の全エキソン(図2B)に対応する遺伝子クローンAL121594を見つけた。その遺伝子クローンではヒトG5PR遺伝子は、第14染色体の37,593bp領域の13のエキソンからなることがわかった。
【0056】
(実施例2) 種々の臓器中のG5PRの発現
(1)実験方法
TORIZOL(登録商標)LS試薬(ライフテクノロジーズ(Life Technologies))を使用して、C57BL/6マウスの種々の組織と臓器、マウスL細胞、および骨髄腫細胞株SP2/0の総RNAを調製した。SP2/0からポリ(A)+ RNAを、オリゴ−dTカラム(ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))から調製した。RT−PCRのために、既報(Maeda,K.,et al.,Eur.J.Biochem.264,702−706,1999)に従い、GeneAmp(登録商標)RNA PCRキット(パーキンエルマーシータス(Perkin Elmer Cetus))を用いて各1μgの総RNAを42℃で1時間逆転写した。ヒトG5PRエキソン2と7に対応するマウスG5PR特異的プライマーex2(5’−TATAAGACCATACCCCGGTTTTATTACAGG−3’:配列番号3)とex−7(5’−GATCAGCTCCAGGATGTAGTTCTCCAGGTC−3’:配列番号4)を用いるPCRの増幅産物は、アガロースゲル電気泳動(1.5%)により適切であることが確認された。β−アクチンプライマーであるFWD(5’−CCTAAGGCCAACCGTGAAAAG−3’:配列番号5)とREV(5’−TCTTCATGGTGCTAGGAGCC−3’:配列番号6)を用いて、対照PCR反応を行った。ノーザンブロッッティングのために、各25μgの総RNA又は4μgのポリ(A)+ RNAを使用した。マウスG5PR cDNAとβ−アクチンプローブはランダムプライミング法により放射性標識した。
【0057】
(2)実験結果
図2CはG5PRの発現を種々の組織や臓器から単離した総RNAを用いて分析した結果を示す。β−アクチンを対照として用いるRT−PCRでRNA量を標準化した。調べたすべてのマウスの臓器と組織(心臓、脳、脾臓、胸腺、肺、肝臓、腎臓、および睾丸を含む)で648bpのバンドが検出された。
図2DはG5PR RNA発現のノーザンブロット解析の結果を示す。マウスG5PRの転写物は、1.6kb mRNAのバンドを示した(図2D、上のパネル)。対照として、フィルターをはがしβ−アクチンプローブと再プローブ結合させて得られた結果を示す(図2、下のパネル)。
【0058】
(実施例3) G5PRとGANPとの結合
G5PRタンパク質全体のタンパク質−タンパク質の結合を研究するために、酵母に全G5PR cDNA発現構築体を作成した。G5PRタンパク質はGANPのG5領域と結合するが、G6領域とは結合しない。ベクター中の逆結合ではG5PRはpACT2により発現したG5領域と結合することを示した。すなわち、G5PRは酵母細胞において特にGANPタンパク質と結合することを示した。そこで、本実施例では哺乳類の細胞においてG5PRがGANPと結合するかどうか確認するために、Flag−GANPとMyc−EGFP−G5PRとの結合を調べた。
【0059】
(1)実験方法
▲1▼ pCXN2−Myc−G5PRの構築
Myc標識配列(5’−GGAAGCTTGCCACCATGGAGCAGAAACTCATCTCTGAAGAGGATCTGGTACCCC−3’:配列番号7)をHindIIIとAsp718部位の間に導入することにより、pcDNA3.1/HisAベクターからpcDNA−Myc構築物を作成した。グリーンフルオレセントタンパク質(GFP)発現のために、増強したGFP(EGFP)cDNAを、PCRによりpEGFP(クロンテク(CLONTECH))から増幅し、pcDNA−Mycベクター(pcDNA−Myc−EGFP)に導入した。推定されるG5PRタンパク質(アミノ酸14番目〜453番目)のほとんどをコードするオリジナルクローンのマウスG5PR cDNAをpGEX−4T(アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech))のEcoRI部位に連結し、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との組換え融合タンパク質を調製した。哺乳動物発現用構築物を作成するために、マウスG5PRのBamHI断片をpcDNA−Myc又はpcDNA−Myc−EGFPのBamHI部位に導入した。SalI消化により調製したMyc−G5PR又はMyc−EGFP−G5PR断片を、平滑末端連結によりpCXN2ベクターのXhoI部位に導入し、pCXN2−Myc−G5PRを得た。
【0060】
▲2▼ トランスフェクション、免疫沈降、およびウェスタンブロッティング
COS−7細胞を、熱不活性化10%胎児牛血清を補足したダルベッコー改変イーグル培地(DMEM;ギブコビーアールエル(Gibco BRL))中で5%CO2で37℃で維持した。細胞(1×106)を10cmのシャーレに接種し、FuGENE−6(ロッシュダイアグノスティクス(Roche Diagnostics))を用い、製造業者のプロトコールに従ってpCXN2−Myc−G5PRとFlag−GANPを同時トランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を採取し、1μg/mlの各プロテアーゼ阻害剤(フッ化フェニルメチルスルホニル、ロイペプチン、ペプスタチン、およびアプロチニン)を含有する1%TNE溶解緩衝液(1%ノニデットP40、150mM NaCl、10mMトリス−塩酸(pH7.5)、1mM EDTA)に溶解した。細胞溶解物を、プロテインG−又はプロテインA−セファロースであらかじめ清澄化し、10μg/mlの抗Flag M2モノクローナル抗体(ストラタジーン(Stratagene))又は4μg/mlの抗Myc9E10モノクローナル抗体(サンタクルツバイオテクノロジー(Santa CruzBiotechnology))とともに、絶えず交代させながら12時間インキュベートした。ビーズを溶解緩衝液で5回洗浄し、SDS−試料緩衝液で処理し、7.5%SDS−PAGEでタンパク質を分離し、ニトロセルロースフィルター膜に移した。フィルターを抗Flagモノクローナル抗体と抗Mycモノクローナル抗体とともに1時間インキュベートした後、0.02%ツイーン20を含有するPBS(PBS−T)中で3回洗浄し、次に西洋ワサビペルオキシダーゼ結合したヤギ抗マウスIgG(H+L)の第2抗体(ザイメッドラボラトリーズインク(Zymed Laboratories, Inc.))でインキュベートした。PBS−Tで洗浄後、ペルオキシダーゼ活性をECLキット(アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech))を用いて検出した。
【0061】
▲3▼ GSTプルダウンアッセイ
発現ベクターpGEX−4Tに導入したG5PR cDNA断片を、大腸菌(Escherichia coli)BL21中に形質転換し、組換えGST−G5PR融合タンパク質を既報(Inui,S.,et al.,J.Immunol.154,2714−2723,1995)に従い精製した。等量のGST又はGST−G5PR融合タンパク質(5μg)を10μlのグルタチオン−セファロースビーズ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech))に結合させ、ビーズをFlag−GANPトランスフェクション体の細胞溶解物とインキュベートした。洗浄後、結合したタンパク質をSDS−PAGEで、次に抗Flagモノクローナル抗体を用いる免疫ブロッティングで分析した。
【0062】
(2)結果
図3AはMyc−EGFP−G5PRをFlag−GANP又はMockプラスミドDNAと同時トランスフェクフェクションした結果を示す。図3Aに示すように、Myc−EGFP−G5PRは、同時トランスフェクションしたCOS−7細胞中のFlag−GANPと共沈した。同じフィルターを抗Flagモノクローナル抗体で再プローブ結合して、Flag−GANPの免疫沈降を確認した(図3A、下のパネル)。またMyc−EGFP−G5PRの量は、両方のトランスフェクション体の全溶解物(WCL)でほとんど同一であった。
【0063】
図3BはFlag−GANPのトランスフェクション体を用いたプルダウンアッセイ(pull−down assay)の結果を示す。図3Bに示すように、GST−G5PRはFlag−GANPと結合した。
【0064】
図3Cは、Myc−EGFP又はMyc−EGFP−G5PRをFlag−GANPと同時トランスフェクションした結果を示す。Myc−EGFP−G5PRはFlag−GANPと共沈したが(図3C、上のパネル)、陰性対照のMyc−EGFPとは共沈しなかった。抗Mycモノクローナル抗体を用いる再プローブ結合によって、Myc−EGFP−G5PR又はMyc−EGFPの免疫沈降を確認した(図3C、下のパネル)。n.s.は非特異的バンドを示す。
【0065】
抗Mycモノクローナル抗体分析で現れた他のバンドは、Myc−EGFP−G5PRの分解産物であると考えられた。これらの結果により、G5PRが哺乳動物細胞中でGANPと結合していることが明らかとなった。
【0066】
(実施例4) G5PRとPPaseの種々の触媒サブユニットとの結合
G5PRはPP2Aの制御性Bサブユニットと相同性を示す(図1C)。PP2Aは、一部は制御性サブユニットA(PR65)と触媒性サブユニットC(PP2Ac)からなる(ACダイマー)。種々のBサブユニットがACダイマーと結合して、ABCトリマーを形成する(Goldberg,Y.,et al.,Biochem.Pharmacol.57,321−328,1999; Millward,T.A.,et al.,Trends Biochem.Sci.24,186−191,1999; Zolnicrowicz,S.,et al.,Biochem.Pharmacol.60,1225−1235,2000)。これらの知見に基づき、本実施例ではG5PRがPPaseの種々の触媒サブユニットと結合するかどうかを調べた。
(1)実験方法
▲1▼pCMV−Flag−PPaseの構築
種々のPPaseの発現構築物を以下のように調製した。ヒトPP1c、PP2Ac、PP3(calcineurin A;PP2B)、PP4、PP5、およびPP6をコードするcDNAを、RT−PCR法を用いて作成し、pCMV Tag2ベクター(ストラタジーン(Stratagene))中に連結した。次にpCMV−Flag−PPaseを、Flag標識を結合したマウスGANP発現ベクターについて記載する既報(Kuwahara,K.,et al.,Blood 95,2321−2328,2000)に従い調製した。各構築体の方向とフレームは、DNA配列決定により証明した。
【0067】
▲2▼トランスフェクション、免疫沈降、ウェスタンブロッティング
Myc−G5PRを、各Flag−PPaseと同時トランスフェクションし、相互作用を免疫沈降、ウェスタンブロティングにより分析した。トランスフェクション、免疫沈降、ウェスタンブロッティングの手法は実施例3に記載の方法に従った。
▲3▼プルダウンアッセイ
PR65baitを用いる酵母2−ハイブリッドスクリーニングにより、PP5とPR65との結合が証明されていることから(Lubert,E.J.,et al.,J.Biol.Chem.276,38582−38587,2001)、GST−G5PRがPR65/PP2Ac複合体と結合するかどうかを調べた。
GSTおよびGST−G5PR融合タンパク質を、既報Inui,S.,et al.,J.Immunol.154,2714−2723,1995)に従い大腸菌(Escherichia coli)中で産生させた。等量のタンパク質をグルタチオン−セファロースビーズに結合させ、洗浄したビーズを細胞溶解物(COS−7、ヒトJurkat、およびマウス脾臓と脳細胞)とともにインキュベートした。洗浄後、結合したタンパク質をSDS−PAGEで分析し、抗PP2Ac 1D6(アップステートバイオテクノロジーインク(Upstate Biotechnology INc.)、レークプラシッド、ニューヨーク州)、抗PR65(サンタクルツバイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology))、および抗PP5抗体(トランスダクションラボラトリーズ(Transduction Laboratories))を用いてウェスタンブロッティング法で分析した。
【0068】
(2)実験結果
図4AはMyc−EGFP−G5PRと各Flag−PPaseを同時トランスフェクションした結果を示す。図4Aに示すように、Myc−EGFP−G5PRは、同時トランスフェクトしたCOS−7細胞中の各Flag−PPaseと共沈した。抗Flagモノクローナル抗体との非特異結合バンド(n.s.で示す)が一貫して観察された(図4A、上のパネル)。トランスフェクションした遺伝子産物の免疫沈降は、抗Flagモノクローナル抗体により確認した(図4A、下のパネル)。各免疫沈降物中におけるFlag−PPaseを矢印で示す。
【0069】
図4Bは、Flag−PP5をMyc−EGFP又はMyc−EGFP−G5PRと同時トランスフェクションした結果を示す。Myc−EGFP又はMyc−EGFP−G5PRタンパク質を、抗Mycモノクローナル抗体で免疫沈降させ、7.5%SDS−PAGEで分離した。免疫沈降物を、抗Flagモノクローナル抗体(図4B、上のパネル)又は抗Mycモノクローナル抗体(図4B、下のパネル)でブロットした。
【0070】
PP5はN末端TPRドメインを有し、これは、種々の分子に結合することができる(Blatch,G.L.,et al.,Bioessays 11,932−939.1999)。PP5とG5PRとの特異的結合領域をさらに局在化するために共沈試験に供するTPR構築体を使用し、Myc−EGFP−G5PRと免疫沈降させた。
図4Cは、Myc−EGFP−G5PRをFlag−TPR又はFlag−PP5と同時トランスフェクションした結果を示す。Flag−TPRとFlag−PP5タンパク質を抗Flagモノクローナル抗体と免疫沈降させ、10%SDS−PAGEで分離した。免疫沈降物を、抗Mycモノクローナル抗体(図4C、上のパネル)又は抗Flagモノクローナル抗体(図4C、下のパネル)でブロットした。Myc−EGFP−G5PRは、明らかにPP5のTPRドメインと結合した。Flag−PP5は、追加のいくつかの低分子量バンドを有し、これはおそらく免疫沈降中に発生するPP5の分解産物である。これらの結果により、G5PRは哺乳動物細胞中でPP5のN末端TPRドメインを介してPP5と結合できることが示された。
【0071】
図4Dは、GST−G5PRと種々の細胞溶解物を用いてプルダウンアッセイを行った結果を示す。抗PP2Ac(図4D、上のパネル)、抗PR65(図4D、中のパネル)、および抗PP5抗体(図4D、下のパネル)でブロットした。図4Dに示されるように、COS−7、ヒトJurkat、マウス脾臓及び脳細胞でGST−G5PRはPP5のみならず、PR65とPP2Acとも結合することが明らかとなった(図4D)。しかし、GSTは、PR65およびPP2Acと複合体を形成しなかった。これらの結果から、G5PRはPR65/PP5とPR65/PP2Acという少なくとも2つのタイプのPPaseに結合することがわかった。
【0072】
(実施例5) G5PRとPP5又はPP2Acとの結合状態
G5PRが、PP2Ac又はPP5とどのように複合体を形成するかを分析するために、Flag−PP5とFlag−PP2AcをCOS−7細胞中にトランスションした。トランスフェクションの24時間後に細胞を採取し、1%TNE溶解緩衝液で溶解した。各全細胞溶解物を10%のSDS−PAGEにより分離し、ブロットを抗PP2Ac抗体と抗PR65抗体で検出した(図5A、上のパネル)。プローブを除去後、フィルターを抗PP5抗体で再プローブ結合させた(図5A、下のパネル)。矢印は個々のタンパク質を示す。
図5Aに示されるように、内因性PR65タンパク質の発現は変化しないが、内因性PP2Acの発現は既に報告されているように(Baharians,Z.,et al.,J.Biol.Chem.273,19019−19024,1998)、Flag−PP2Acの導入により顕著に低下した。一方、抗PP5抗体により確認されたFlag−PP5の過剰発現は、PP2AcとPR65タンパク質の内因性発現に大きな影響を与えなかった。
【0073】
次に、Flag−PP5トランスフェクション体を用いるプルダウンアッセイを行って、G5PRがPP5とPP2Acの両方と結合して複合体を形成するのか、又は各PPaseが個別にG5PRに結合するのかを調べた。等量のGST−G5PR融合タンパク質をグルタチオン−セファロースビーズに結合させ、洗浄した後、Mock又はFlag−PP5トランスフェクション細胞溶解物とインキュベートした。再度洗浄後、GST−G5PRに結合したタンパク質をSDS−PAGEで分析し、続いて抗PP2Ac抗体(図5B、第1のパネル)、抗PR65抗体(図5B、第2のパネル)、抗PP5(図5B、第3のパネル)および抗Flag抗体(図5B、第4のパネル)で免疫ブロッティングした。
図5Bに示されるように、PR65との結合は不変であったが、PP2Acとの結合は著しく低下し、PP5との結合は増加した。これは、インビトロではFlag−PP5がPP2AcのG5PRへの結合に対して競合的に作用していると説明できる。これらの結果により、G5PRは細胞中のPP5又はPP2Acのタンパク質ホスファターゼ成分の1つと個別に結合し、複数のタンパク質ホスファターゼ成分からなる複合体を形成するのではないことがわかった。
【0074】
(実施例6) in vitroでのG5PRタンパク質複合体のホスファターゼ活性
制御性Bサブユニットとの相同性とPPaseへの結合活性に鑑みると、G5PRは、ホスファターゼ活性に直接的な役割を果たすか、又は種々の機能に影響を与える重要な基質へのホスファターゼサブユニットの集約の役割を果たしている可能性がある。そこで、本実施例においてはG5PRのタンパク質ホスファターゼ活性を分析するために、基質として32P標識カゼインとヒストンH1を用いてインビトロホスファターゼアッセイを行った。
【0075】
▲1▼ PP2Aホロ酵素のホスファターゼ活性
最初に制御性Bサブユニットを用いることなく、精製したPP2Aホロ酵素のホスファターゼ活性を測定した。PP2Aホロ酵素(0.25U)を、300ngのGST、GST−G5PR又はHis−G5PRと混合し、30℃で10分インキュベートした。TCA沈殿後、カゼイン(図6A、左のパネル)とヒストンH2(図6A、右のパネル)からの32Piの放出を測定した。
対照(GST)と比べると、GST−G5PR又はHis−G5PRを添加してもホスファターゼ活性に影響を与えないことが示された。
【0076】
▲2▼ PP5のホスファターゼ活性
PP5ホスファターゼ活性に及ぼすG5PRの作用を測定した。抗Flagモノクローナル抗体で免疫共沈したFlag−PP5をプロテインG−セファロースビーズで回収した後、洗浄した。各試料を、500nMのアラキドン酸(AA)(シグマ(Sigma))を含むか又は含まない反応混合物中で、300ngのGST−G5PR融合タンパク質とインキュベートした。ホスファターゼ活性は、既報(Inui,S.,et al.,Blood 92,539−546,1998)の記載に従い、測定した。
図6Bに示すように、PP5活性はAAを加えることにより6倍に増加した。これは、免疫複合体が酵素的働きを有する標識PP5を含んでいることを示す。G5PRはAAにて活性化されたPP5のホスファターゼ活性にややネガティブな影響を与えた。
【0077】
▲3▼ GST−G5PR融合タンパク質のホスファターゼ活性
超音波処理により調製した1mgの全脾臓細胞溶解物を、10μgのGST−G5PRと混合し、GST−G5PRに結合したタンパク質を25μlのグルタチオン−セファロースビーズでプルダウンした。プルダウン産物を、50nMのオカダ酸(OA:PP2AとPP5の両方の阻害剤)(シグマ(Sigma))又は500nMのアラキドン酸(AA:PP5の活性化剤)とプレインキュベートした。5分後、32P標識カゼインを加え、30℃で10分インキュベートし、32P標識カゼインからの32Piの放出を測定した。
OA無しの条件下ではホスファターゼ活性は4.5倍に増加した。また、AAを添加することにより活性が更に5倍増加した(図6C)。これらの結果は、G5PRと結合したPP5とPP2Acが、OA感受性にホスファターゼ活性を発揮することを示す。
【0078】
▲4▼ G5PRタンパク質複合体ホスファターゼによるリン酸化MCM3タンパク質の脱リン酸化
G5PRタンパク質複合体ホスファターゼがリン酸化されたMCM3タンパク質を脱リン酸化するかどうかを調べた。
pSRα−HA−MCM3発現ベクター(Kuwahara,K.,et al.,Blood 95,2321−2328,2000)のcDNA構築体を使用して、融合タンパク質GST−MCM3のためのベクターpGEX−MCM3を作成し、組換え融合タンパク質GST−MCM3を精製した。GST−MCM3(1μg)を、インビトロでcdc2/サイクリンB(CDK1)(Yamamotoら、1995)により10μlのグルタチオン−セファロースビーズでリン酸化した。リン酸化試料を65℃で5分処理し、ビーズを界面活性剤を含まないTNE緩衝液で洗浄した。ホスファターゼタンパク質複合体の調製のために、GST−G5PR融合タンパク質を既に記載したようにプルダウンし、次に反応混合物中の最終50nMのOA又は500nMのAAで再インキュベートした。5分後、32P標識GST−MCM3を加え、脱リン酸化を30℃で30分行った。界面活性剤を含まないTNE緩衝液で数回洗浄後、反応物中のタンパク質を溶出し、SDS−PAGEで分析して、クマシーブリリアンドブルー(CBB)染色によりタンパク質量を証明し、オートラジオグラフィーにより基質タンパク質上に残った放射能レベルを示した。
【0079】
インビトロリン酸化GST−MCM3は、OAの非存在下でG5PR複合体により脱リン酸化され、脱リン酸化はAAの存在下で促進された(図6D:上のパネル)。GST−MCM3の量をすべてのレーンで調整した。下のバンドはGST−MCM3の分解産物を示す(星印で示す)(Schwab,B.L.,et al.,Exp.Cell Res.238,415−421,1998)。これらの結果はG5PRタンパク質複合体ホスファターゼはin vitroでMCM3のリン酸化状態を制御する能力があることを示唆する。等量のGST融合タンパク質を、CBB染色により示した(図6D:下のパネル)。
【0080】
(実施例7) 細胞周期中におけるG5PRの存在場所
PP5は、哺乳動物細胞の細胞周期中に核と細胞質中に現れる(Chen,M.X.,etal.,FEBS Lett.400,136−140,1997;Ollendorff,V.,et al.,J.Biol.Chem.272,32011−32018,1998;Borthwick,E.B.,et al.,FEBS Lett.491,279−284,2001)。PP5の移行は、他のPPaseと比較して顕著に検出される。本実施例においては、DNAトランスフェクション実験により、G5PRもまた増殖中に細胞質と核中に現れるかどうかを検討した。
【0081】
(1)実験方法
前記のようにトランスフェクションし、24時間培養したCOS−7細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒドで15分固定し、0.1%トリトンX−100/PBSを15分浸透させ、PBS中100μg/mlのRNaseAで15分インキュベートし、1%FCS/PBSで15分処理した。標識シグナルの検出のために、細胞を抗Mycモノクローナル抗体(1/500に希釈)で60分インキュベートし、PBSで3回洗浄し、次にFITC結合ヤギ抗マウスIgG抗体(モレキュラープローブズ(Molecular Probes)、ユージーン、オレゴン州)で60分インキュベートした。洗浄後、細胞を100ngのヨウ化プロピオジウム(PI;シグマ(Sigma))で3分インキュベートし、PBSで3回洗浄し、2.5%DABCO(シグマ(Sigma))を含有する80%グリセロール1滴で処理した。標識された細胞を、アルゴンレーザーの蛍光波長(488nm)と40×UPLAPO対物レンズを取り付けたオリンパス顕微鏡装置で評価した。
【0082】
(2)実験結果
図7AはPI染色した細胞を蛍光顕微鏡により観察した結果を示す(倍率=×400)。図7Aに示すように、Myc−G5PRは、COS−7細胞中で核と細胞質に発現した。DNA転写実験において、G5PRは主に核で増加するが、細胞質では増加しなかった。核周辺領域ではMyc−G5PRのかすかな増加が認められた。
図7Bは、細胞周期の異なる段階にある細胞を選択して、細胞質と核中のMyc−G5PRの発現をMyc−G5PR染色と核PI染色の重層により調べた結果を示す。図7Bに示されるように、細胞周期行程において、PI染色で確認されたように、Myc−G5PRは中期に核膜を通過して核の一部に出現する。そして、前中期には濃縮されたクロマチン構造から排除される。中期では、Myc−G5PR発現の局在化は、核分裂中の有糸分裂紡錘体と似ており、この段階でDNA染色は、赤道線付近に限定された。後期の核破壊後は、G5PRは、細胞分裂中に細胞質中に拡散して現れ、次に細胞分裂中に核から排除されながら細胞質中にとどまった。G5PRの細胞局在化は、PP5と極めて類似していた(Ollendorff,V.,et al.,J.Biol.Chem.272,32011−32018,1998)。G5PRとPP5は同様の細胞コンパートメント中に現れ、これらが細胞サイクル中に機能性相互作用を受けることができることを示唆している。
【発明の効果】
本発明によれば、癌又は自己免疫疾患において認められるB細胞の異常増殖に関与しているGANPタンパク質とともに増減する新規なGANP結合性タンパク質が同定された。本発明で同定された該タンパク質を利用して、癌又は自己免疫疾患の診断を行うことができる。
【0083】
【配列表】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1AはマウスGANPタンパク質の略図を示す。GANPタンパク質のSAC3相同性領域とMap80領域(MCM3AP)を示す。図1BはG5PR cDNAのヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列を示す。下線部位は推定の核局在化シグナル、四角で囲んだ部位はEF−ハンドモチーフを表す。
【図2】図1CはG5PRの推定アミノ酸配列とPP2AのBサブユニットおよびジーンバンク(GenBank)中の相同配列の比較を示す。同一の残基には影をつけてある。図1DはG5PRと関連タンパク質との相対的類似性を示す、DNASISソフトウェアによる分析から得た系統樹を示す。
【図3】図2AはマウスとヒトG5PRタンパク質のアミノ酸配列の比較を示す。図2BはヒトG5PR遺伝子のゲノム構造を示す。
【図4】図2CはG5PRの発現を種々の組織や臓器から単離した総RNAを用いて分析した結果を示す。図2DはG5PR RNA発現のノーザンブロット解析の結果を示す。
【図5】図3AはMyc−EGFP−G5PRを、Flag−GANP又はMockプラスミドDNAと同時トランスフェクションした結果を示す(図3A、上のパネル:抗Mycモノクローナル抗体でブロット。図3A、下のパネル:抗Flagモノクローナル抗体でブロット。)。図3Bは、Flag−GANPのトランスフェクション体を用いたプルダウンアッセイの結果を示す。
【図6】図3Cは、Myc−EGFP又はMyc−EGFP−G5PRをFlag−GANPと同時トランスフェクションした結果を示す(図3C、上のパネル:抗Flagモノクローナル抗体でブロット。図3C、下のパネル:抗Mycモノクローナル抗体でブロット。)。
【図7】図4AはMyc−EGFP−G5PRと各Flag−PPaseを同時トランスフェクションした結果を示す(図4A、上のパネル:抗Mycモノクローナル抗体でブロット。図4A、下のパネル:抗Flagモノクローナル抗体でブロット。)。図4BはMyc−EGFP又はMyc−EGFP−G5PRと同時トランスフェクションした結果を示す(図4B、上のパネル:抗Flagモノクローナル抗体でブロット、図4C、下のパネル:抗Mycモノクローナル抗体でブロット。)。
【図8】図4Cは、Myc−EGFP−G5PRをFlag−TPR又はFlag−PP5と同時トランスフェクションした結果を示す(図4C、上のパネル:抗Flagモノクローナル抗体でブロット、図4C、下のパネル:抗Myc−モノクローナル抗体でブロット。)。図4Dは、GST−G5PRとの種々の細胞溶解物を用いてプルダウンアッセイを行った結果を示す(図4D、上のパネル:抗PP2Ac、図4D、中のパネル:抗PR65、図4D、下のパネル:抗PP5抗体でブロット。)。図4A,C中、星印はFlag−PP5の分解産物由来の断片、n.s.は非特異結合を示す。
【図9】図5Aは、Flag−PP5又はFlag−PP2Acトランスフェクション体の細胞溶解物の結合を示す(図5A、上のパネル:抗PR65と抗PP2Ac抗体でプローブ結合、図5B、下のパネル:抗PP5抗体で再プローブ結合)。矢印は個々のタンパク質を示す。図5BはFlag−PP5トランスフェクション体を用いてプルダウンアッセイを行った結果を示す(図5B、第1のパネル:抗PP2Acでブロット、図5B、第2のパネル:抗PR65でブロット、第3のパネル:抗PP5抗体でブロット、図5B、第4のパネル;抗Flagモノクローナル抗体でブロット。)。
【図10】図6Aは、PP2Aホロ酵素のホスファターゼ活性を示す。図6Bは、PP5のホスファターゼ活性を示す。
【図11】図6Cは、GST−G5PRタンパク質複合体のホスファターゼ活性を示す。図6Dは、G5PRタンパク質複合体ホスファターゼによるリン酸化MCM3タンパク質の脱リン酸化を示す。
【図12】図7Aは、Myc−G5PRを導入したCOS−7細胞をPI染色して蛍光顕微鏡により観察した結果を示す(倍率;×400)。図7Bは、細胞周期の異なる段階にある細胞を選択して、細胞質と核中のMyc−G5PRの発現をMyc−G5PR染色と核PI染色の重層により調べた結果を示す。
Claims (12)
- 下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、GANPに対する結合活性を有するアミノ酸配列;又は、
(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、GANPに対する結合活性を有するアミノ酸配列: - 請求項1に記載のタンパク質とタンパク質ホスファターゼとから成るタンパク質複合体。
- タンパク質ホスファターゼが、タンパク質ホスファターゼ5(PP5)又はタンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)であることを特徴とする請求項2記載のタンパク質複合体。
- 請求項1に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
- 下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子。
(a)配列番号2に記載の塩基配列;
(b)配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、GANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;又は
(c)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、GANPに対する結合活性を有するタンパク質をコードする塩基配列: - 請求項4又は5に記載の遺伝子を含むベクター。
- 請求項4若しくは5に記載の遺伝子又は請求項6に記載のベクターを有する形質転換体。
- 請求項1に記載のタンパク質、又は請求項2若しくは3に記載のタンパク質複合体に対する抗体。
- 請求項8に記載の抗体を含むGANP結合性タンパク質測定用試薬。
- 癌又は自己免疫疾患の診断に用いられる請求項9に記載の試薬。
- 請求項8に記載の抗体を含むGANP結合性タンパク質測定用キット。
- 癌又は自己免疫疾患の診断に用いられる請求項11に記載のキット。
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