JP4981419B2 - 転写装置および転写方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明者らは、従来平板状であったナノスタンパをロール状に加工(ロールスタンパ)し、これを基材フィルムを繰り出す繰出しロールと、これを巻き取る巻取りロールとの間に設け、繰出しロールから連続して繰り出される基材フィルム上の樹脂にそのロールスタンパを連続して接触させてそのロールスタンパ表面の微細パターンを基材フィルム上に連続して転写するというものである。
先ず、従来の転写板(ナノスタンパ)は、電鋳金型から形成される厚さ0.数mmのNi合金薄板からなるため、これを稼働中に剥離することなく回転軸のロール表面にしっかりと取り付けるのは容易ではない。すなわち、高スループット化を図るべくこのロールスタンパを高速で回転させる場合に、その転写板(ナノスタンパ)が回転軸から剥離したりずれたりしないように接着剤や溶接などによって回転軸と一体となるように固定しなければならず、その作業は容易ではない。
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、係る不都合を確実に回避してナノインプリント加工の大面積化、高スループット化を達成できる新規な転写装置および転写方法を提供するものである。
繰出しロールから繰り出される基材フィルムと接してその表面に所定の微細パターンを転写する転写ロールと、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムを巻き取る巻取りロールとを有する転写装置であって、前記転写ロールは、前記基材フィルムと接触する外周面に前記所定の微細パターンが形成された転写筒と、当該転写筒の内側に挿入されて当該転写筒を着脱自在に保持する回転軸とからなり、前記転写筒は、前記所定の微細パターンを有する矩形状の転写板をその微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工すると共に、その両縁部を突き合わせ溶接してなり、前記転写板の突き合わせ溶接は、マイクロプラズマ溶接によって行われ、前記回転軸は、その表層部を周方向に分割した複数の分割ブロックと、当該各分割ブロックを係合保持すると共に当該各分割ブロックを径方向に移動する移動軸とからなることを特徴とする転写装置である。
請求項1に記載の転写装置において、前記各分割ブロックの周方向の境界部は互いに櫛歯状に噛み合っていることを特徴とする転写装置である。
また、請求項3の発明は、
請求項1または2に記載の転写装置において、前記転写ロールの上流側に、前記繰出しロールから繰り出される基材フィルムを当該転写ロール側に案内する案内ロールを備えると共に、当該案内ロールを前記転写ロールより所定距離離れた位置に設けることを特徴とする転写装置である。
請求項3に記載の転写装置において、前記案内ロールを前記転写ロールに対して移動自在に設けることを特徴とする転写装置である。
また、請求項5の発明は、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の転写装置において、前記転写ロールの下流側に、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置に所定の樹脂を塗布する副塗布部と、当該副塗布部によって塗布された樹脂上に所定の微細パターンを転写する副転写ロールとをさらに備えたことを特徴とする転写装置である。
また、この転写筒を、前述したような従来製法によって得られる矩形状の転写板から形成することができるため、別個新たに製造するケースに比べて容易かつ安価に製造することができる。
請求項2の発明によれば、この回転軸を構成する各分割ブロックの周方向の境界部が互いに櫛歯状に噛み合っているため、特にその回転軸が拡径した際に形成される分割ブロック間の隙間(溝)の形状が波形あるいはジグザク状になるため、その隙間の存在による転写時の悪影響を抑えることができる。
請求項4の発明によれば、さらにこの案内ロールを転写ロールに対して移動自在に設けたため、転写ロールと基材フィルムとの接触量(距離、範囲)を自在に調整することができる。
図1は、本発明に係る微細パターンの転写装置100の実施の一形態を示したものである。
この転写装置100は、例えば、前述したようなナノインプリント技術を応用したワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを連続して製造するための装置であり、図示するように、ロール状に巻き付けられたテープ状の基材フィルムF1を連続して繰り出す繰出しロール10と、この繰出しロール10から繰り出される基材フィルムF1の片面に転写用の樹脂Jを塗布する塗布部20と、この塗布部20によって転写用の樹脂Jが塗布された基材フィルムF1に所定の微細パターンを連続して転写する転写ロール30と、この転写ロール30で転写された基材フィルムF1上の微細パターンを硬化する硬化部40と、この硬化部40で硬化された微細パターンを保護する保護フィルムF2を連続して繰り出して供給する供給ロール50と、この保護フィルムF2と基材フィルムF1とを重ね合わせた後、ポストキュアを行うポストキュア部60と、重ね合わされたF1、F2を連続して巻き取る巻取りロール70と、これら各フィルムF1、F2の流路を構成する各種案内ロール80〜89とから主に構成されている。
そして、この紫外線硬化樹脂としては、光重合性プレポリマー、光重合性モノマーおよび光開始剤からなる公知のものを用いることができ、転写、硬化した後、型から容易に剥がれるように離型しやすく、かつ基材フィルムF1との相性の良いものが望ましい。
さらに、前記のような紫外線硬化樹脂を用いた場合、その粘度としては、例えば、数mPa・s〜100mPa・s、高速生産性を考慮すると数mPa・s〜50mPa・sであることが望ましい。なお、この紫外線硬化樹脂の粘度は、例えば低粘度単官能性モノマーや溶剤(エタノールなど)を適量添加することで容易に調整することができる。また、この樹脂J中には、離型剤やレベリング剤、消泡剤などの各種添加剤などを適宜添加しておいても良い。
この転写筒31は、図3に示すように片面に所定の微細パターンを有する矩形状の転写板33をその微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工すると共に、その両縁部を突き合わせ溶接してなるものであり、図2に示すようにその端面の開口部から回転軸32の外側に嵌め込むことで回転軸32に対して着脱自在に取り付けられるようになっている。
また、この転写筒31としては、前記のように転写板33を円筒状に加工したものの他、ロール電鋳法によって始めから円筒状に形成されたものを用いることも可能である。
図4は、この回転軸32の内部構造を示す縦断面図、図5は、図4中A−A断面図、図6は、図4中B−B断面図であり、それぞれ中心線CおよびC´より上方(上半分)は、各分割ブロック34,34,34,34が径方向外方に移動してその部分の外径が拡径した状態を、また、中心線CおよびC´より下方(下半分)は、各分割ブロック34,34,34,34が径方向内方に移動してその部分の外径が縮径した状態をそれぞれ示したものである。
そのため、図5および図6に示すように、拡径した状態では各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部にはある程度の隙間が発生し、反対に最小に縮径した状態ではその各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部が密着してその隙間がなくなった(塞がれた)状態になるようになっている。
なお、この転写筒31を挿着する際に回転軸32との間に所定厚の樹脂シートなどのスペーサを介在させれば、その転写筒31の内径φは回転軸32の最大径より大きいものであっても構わない。
また、前述した転写筒31をそのまま直接この回転軸32に挿着しても良いが、クリアランスや張力の調整を容易にするために、あるいは回転軸32表面または転写筒31の裏面へのゴミの付着よる表面凹凸の軽減のためなどに、転写筒31と回転軸32との間に樹脂シートやゴム製シートなどのスペーサなどを介在させても良い。
さらに、この回転軸32には、歯車38を介して図示しない駆動モータが接続されており、自転可能となっていると共にその回転速度が基材フィルムF1の送り出し速度と同期するように図示しない制御回路によって調整されている。
また、さらにこの案内ロール83は、この転写ロール30に対して近接離間移動自在となっており、例えば、図示破線に示すように転写ロール30に対して斜め約45°右肩上がり方向に移動することで転写ロール30と基材フィルムF1との接触量(距離、範囲)を自在に調整できるようになっている。
図1および図2に示すように、転写ロール30の回転軸32に対して所定の転写パターンが形成された転写筒31を挿着した後、繰出しロール10から繰り出された基材フィルムF1を図中の案内ロール80〜89に沿って張り巡らし、その経路の途中で転写ロール30に接触するようにしてその先端を巻取りロール70に巻き付ける。
そして、このような状態で繰出しロール10、転写ロール30、供給ロール50、巻取りロール70をそれぞれ図中矢印方向に所定の速度で回転させると、繰出しロール10から基材フィルムF1が連続して繰り出される。
このとき、これら各案内ロール80、81、82、83のうち、少なくとも転写ロール30の直近上流側に位置する案内ロール83は、その転写ロール30より所定距離離れた位置に設けられているため、前述したように基材フィルムF1上に塗布された硬化前の樹脂Jがしごかれて転写ロール30との間に溜まって(滞留)しまうようなことがなくなる。これによって、長時間の連続生産が可能となると共に、案内ロール83とのクリアランスや面圧などに影響されなくなるため、その樹脂Jの塗布厚が予定した場合よりも大きく変動してしまうなどといった不都合を未然に回避できる。
また、さらにこの転写筒31を、前述したような従来製法によって得られる矩形状の転写板33から形成することができるため、別個新たに製造するケースに比べて容易かつ安価に製造することができる。
また、さらに本発明は、図8に示したようにこの転写ロール30の直近上流側の案内ロール83をその転写ロール30に対して移動自在に設けたため、転写ロール30と基材フィルムF1との接触量(距離、範囲)を自在に調整することができる。これによって、面圧の不均一による転写ロール30での微細パターンの転写ムラや転写不良を解消することができる。
なお、本実施の形態では、この転写ロール30の回転軸を4つの分割ブロック34,34,34,34で構成した例で示したが、この分割数は4つに限られるものでなく、これより多くとも少なくとも良いことはいうまでもない。
さらに、本実施の形態では、微細パターンを転写した後に引き続きその上に保護フィルムF2を重ね合わせるようにしているが、この工程を省略して微細パターンを転写・硬化した後にそのまま直ちに巻取りロール70に巻き取るようにしても良い。
なお、この工程は必ずしも転写ロール30による微細パターンの転写・固定化の後に連続して行う必要はなく、保護フィルムF2を積層しない状態で一旦その基材フィルムF1の全量を巻取りロール70に巻き取った後、再度これを繰出しロール10にセットしてその微細パターンの欠損箇所に対してあらためて微細パターンを転写・固定化するようにしても良い。これにより、転写ロール30をそのまま2回目の微細パターンの転写・固定化手段として再利用できるため、設備に要する費用を節約することが可能となる。
また、転写ロール30の転写筒31を前述したロール電鋳法によって一体成形した場合に微細パターンの繋ぎ目が残った場合、この工程を行えば良い。
(実施例1)
先ず、ピッチ115nm×高さ130nmのL/S(波状)の微細パターンを有するNi電鋳金型を用い、微細パターンをCOPシートに熱転写した。
これをマスターに無電解Niめっきにより微細パターン表面がNi/B(厚さ200nm)、バックアップがNi/Co(厚さ0.3mm)で表面硬度がHv800、幅140mm×長さ260mmのNi製転写板を作成した。
次に、この転写板を筒状に曲げ加工すると共にその両端部をマイクロプラズマ溶接によって突き合わせ溶接して、内径82.5mmの転写筒を作成した。
また、基材フィルムとして、幅135mm×膜厚100μmの片面易接着性の東洋紡A4100(東洋紡績株式会社製)を用い、#225斜線、パターン部幅100mmのグラビアロールによってその易接着面に紫外線硬化樹脂(東亞合成株式会社製M350/チバスペシャリティーケミカル・ケミカルズ株式会社製イルガキュアI907=100/1部、23℃、樹脂粘度65mPa・s)を幅100mm×塗布厚7μmで塗布した。
そして、基材フィルム送り速度を2m/min、転写筒を固定した回転軸を基材フィルムと同じ速度2m/minの回転速度で回転させながらその基材フィルム上に微細パターンを転写・硬化固定した後、その転写された基材フィルム上の微細パターンを走査型電子顕微鏡(SEM)で確認した。
また、その後さらにこの基材フィルム上の微細パターンに対してAL蒸着、エッチングなどの一連の処理を経てワイヤー・グリッド偏光フィルムを作成し、その光学的特性を日本分光株式会社製VAP−7070で測定したところ、視感度補正単体透過率37%、視感度補正偏光度99.95%であり、十分に実用化の条件を満たすことが確認できた。
前記実施例1で所定の微細パターンが転写・固定された基材フィルムを用い、その微細パターン欠損部分(転写筒の溶接跡)に対して他の紫外線硬化樹脂(東亞合成株式会社製M350/HDDA/チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製イルガキュアI907=50/50/1部 23℃、樹脂粘度16mPa・s)を上塗りした後、その部分に再度同じ微細パターンを転写し、微細パターンが連続したフィルムを作成した。
そして、この境界面を挟んだ上塗り部分を実施例1と同様にワイヤー・グリッド偏光フィルムにして評価したところ、通常の微細パターンの部分との性能に差は見られなかった。
10…繰出しロール
20…塗布部
25…副塗布部
30…転写ロール
31…転写筒
32…回転軸
33…転写板
34…分割ブロック
35…移動軸
40…硬化部
50…供給ロール
60…ポストキュア部
70…巻取りロール
80〜89…案内ロール
90…副転写ロール(副転写板)
F1…基材フィルム
F2…保護フィルム
J…樹脂
Claims (5)
- 繰出しロールから繰り出される基材フィルムと接してその表面に所定の微細パターンを転写する転写ロールと、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムを巻き取る巻取りロールとを有する転写装置であって、
前記転写ロールは、前記基材フィルムと接触する外周面に前記所定の微細パターンが形成された転写筒と、当該転写筒の内側に挿入されて当該転写筒を着脱自在に保持する回転軸とからなり、
前記転写筒は、前記所定の微細パターンを有する矩形状の転写板をその微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工すると共に、その両縁部を突き合わせ溶接してなり、
前記転写板の突き合わせ溶接は、マイクロプラズマ溶接によって行われ、
前記回転軸は、その表層部を周方向に分割した複数の分割ブロックと、当該各分割ブロックを係合保持すると共に当該各分割ブロックを径方向に移動する移動軸とからなることを特徴とする転写装置。 - 請求項1に記載の転写装置において、
前記各分割ブロックの周方向の境界部は互いに櫛歯状に噛み合っていることを特徴とする転写装置。 - 請求項1または2に記載の転写装置において、
前記転写ロールの上流側に、前記繰出しロールから繰り出される基材フィルムを当該転写ロール側に案内する案内ロールを備えると共に、当該案内ロールを前記転写ロールより所定距離離れた位置に設けることを特徴とする転写装置。 - 請求項3に記載の転写装置において、
前記案内ロールを前記転写ロールに対して移動自在に設けることを特徴とする転写装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記転写ロールの下流側に、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置に所定の樹脂を塗布する副塗布部と、当該副塗布部によって塗布された樹脂上に所定の微細パターンを転写する副転写ロールとをさらに備えたことを特徴とする転写装置。
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