JP4976334B2 - 光ファイバケーブル - Google Patents

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本発明は、複数のテープ心線をスロット内に収容した光ファイバケーブルに関する。
従来の光ファイバケーブルの一例として、図6に示すように、スロット101の溝102内に、テープ心線103が収容されている光ファイバケーブル100が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平4−81706号公報
ところが、上記特許文献1に開示された光ファイバケーブル100では、スロット101の溝102内の表面粗さを改善しているが、線速上昇によってメルトフラクチャが発生し、表面粗さが十分改善できない場合が予想された。また、溝102に収容されるテープ心線103の端心が溝底面と接触する虞があるとともに、曲げ応力等によりテープ心線103が溝102内で斜めに傾いた場合に、テープ心線103の端心側に側圧が集中して、端心ファイバの伝送特性が低下する場合が予想された。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、溝底面との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる光ファイバケーブルを提供することにある。
前記課題を解決することのできる本発明に係る光ファイバケーブルは、複数のテープ心線と、前記複数のテープ心線を収納するテープ心線収容溝を有するスロットと、前記スロットの外側に被覆される外被と、を備えた光ファイバケーブルであって、前記テープ心線収容溝の前記溝底面内に、前記テープ心線の横断面における両側若しくは片側が長手方向に渡って該溝底面に接触しないように、前記スロットの周方向に移動可能な介在物を備えることを特徴としている。
このように構成された光ファイバケーブルによれば、テープ心線は、スロットのテープ心線収容溝の溝底面内に備えられている介在物が溝底面に沿ってスライド移動することで、ずれが吸収されて側圧が緩和され、前記テープ心線の横断面における両側若しくは片側が長手方向に渡って溝底面に接触しないように保持される。これにより、溝底面の表面粗さが高いレベルにあったとしても、テープ心線の端心側に側圧が集中することがなくなり、溝底面との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる。
また、本発明に係る光ファイバケーブルにおいては、前記介在物は、前記スロットの周方向における幅が、溝底面の幅に対して、30〜80%に設定されることが好ましい。
このように構成された光ファイバケーブルによれば、介在物が、溝底面から突起状に突出すると、そこに側圧が局部的に集中することになるため、スロットの周方向における幅を、溝底面の幅に対して、予め定められた30〜80%に設定されることで、側圧の集中を生じることがないようにすることができる。
また、本発明に係る光ファイバケーブルにおいては、前記介在物は、前記溝底面との間に、0.2mm以下の移動用隙間を有することが好ましい。
このように構成された光ファイバケーブルによれば、介在物は、テープ心線収容溝内において溝底面との間の移動隙間内でスライド移動可能であるため、テープ心線収容溝内でテープ心線が回転して立ち上がる、例えば、SZ撚りスロット型ケーブル等において、テープ心線の端心が溝底面に直接接触しないようにして、伝送特性を安定的に確保することができる。
また、本発明に係る光ファイバケーブルにおいては、前記テープ心線収容溝は、前記テープ心線を収容した際のクリアランス寸法が1.4mm以下に設定されることが好ましい。
このように構成された光ファイバケーブルによれば、テープ心線を収容した際のテープ心線収容溝のクリアランス寸法が1.4mm程度の高密度になったとしても、介在物によって、溝底面との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる。
また、本発明に係る光ファイバケーブルにおいては、前記介在物は、前記テープ心線収容溝の前記溝底面の両端を起点として、外周方向に突出した円弧状に形成されていることが好ましい。
このように構成された光ファイバケーブルによれば、テープ心線収容溝の溝底面の両端を起点として、外周方向に突出した円弧状に形成されている介在物によって、テープ心線の端心側に側圧が集中することがなくなり、溝底面との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる。
本発明に係る光ファイバケーブルによれば、溝底面との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる光ファイバケーブルを提供できる。
以下、図を参照して本発明の複数の好適な実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1および図2は本発明に係る光ファイバケーブルの第1実施形態を示すもので、図1は本発明の第1実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図、図2は図1の光ファイバケーブルに適用されるテープ心線の一部破断外観斜視図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態である光ファイバケーブル10は、スロット11と、テープ心線13と、外被14、介在物であるスライド部材15と、を備えている。
スロット11は、例えば、SZ撚り型スロットであって、ポリエチレン等の高分子材料を用いて全体として円筒形状に形成されており、中央部に抗張力体であるテンションメンバ12を有し、外周部に5個のSZ撚り状をなすテープ心線収容溝17を有する。なお、テープ心線収容溝17は、SZ撚り状に代えて螺旋状であっても良い。
テープ心線収容溝17は、スロット11の円周方向に等間隔にして、軸方向に波形状に撚れて形成されており、テープ心線13を5段で積層して収容することで、スロット11の軸方向にテープ心線13を保持している。
テープ心線13は、一次被覆18および二次被覆19が被覆された8本の光ファイバ20にシース21が被覆されており、テープ心線収容溝17内に5段で積層されることで、テープ心線集合体22を形成している。
外被14は、ポリエチレンやポリ塩化ビニル等の樹脂材からなり、テープ心線集合体22をテープ心線収容溝17に収納したスロット11に対して押出し成形されることで、テープ心線収容溝17に収容されたテープ心線集合体22がテープ心線収容溝17から突出しないように保持している。
スライド部材15は、例えば、ポリアミド等の樹脂材料を用いて、断面視長円形の板形状に形成されており、5個のテープ心線収容溝17の溝底面23に添って該溝底面23上に組み込まれている。
スライド部材15は、予め定められた高さ寸法を有し、スロット11の周方向における幅L1が、溝底面23の幅L2に対して、30〜80%に設定されている。そのため、スライド部材15は、その両側に溝底面23の幅L2に対して、例えば0.1mmの合計0.2mm以下の移動用隙間L3を有している。これにより、スライド部材15は、移動用隙間L3の範囲内で溝底面23上をスロット11の周方向にスライド移動することで、テープ心線13のずれを吸収して側圧を緩和して、テープ心線13の両側若しくは片側が長手方向に渡って溝底面23に接触しないように保持することができる。
また、スライド部材15は、溝底面23側の下面の表面粗さRaが、0.8μm以下に設定されている。これにより、スライド部材15は、溝底面23側が平滑になっており、上部にテープ心線集合体22が載置された状態で、移動用隙間L3の範囲内で溝底面23上をスロット11の周方向にスライド移動することで、テープ心線13の端心に加えて、端心以外の心線の伝送特性も同時に安定させることができる。
また、テープ心線収容溝17の上端縁と、テープ心線収容溝17に収容されているテープ心線集合体22上端のテープ心線13上面とのクリアランスL4が、1.4mm以下に設定されている。これにより、テープ心線13を収容した際のテープ心線収容溝17のクリアランスが高密度になったとしても、スライド部材15によって、溝底面23との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる。
通常、溝底面23の表面粗さは、JIS B0601に規定されており、以下の数式1、数式2によって平均表面粗さRa(Roughness average)が定義されている。
Figure 0004976334
ここで、x:サンプルの長さ方向距離、F(x):サンプル表面の凹凸の状態を記述する関数、L:表面粗さを測定する時の被測定長、r1:被測定長の区間内でf(x)の平均を取った値とする。Raは、中心線平均粗さとも言われ、その物理的意味は、中心線、すなわちr1からの平均距離である。したがって、スロット11のテープ心線収容溝17の表面の平均表面粗さRaは、数式2で示される。
Figure 0004976334
このような表面粗さRaに関しては、線速の高速化に伴って悪化する傾向が見られる。また、テープ心線収容溝17内のテープ心線13の残留歪が張り側に増加すると、側圧も上昇する傾向がある。更に、光ファイバケーブル10が曲げられると、テープ心線13はテープ心線収容溝17内で左右に傾く傾向にある。このとき、テープ心線13の側圧は、溝底面23に接する端心側に集中するため、表面粗さが低レベルであっても伝送特性が悪化することがあり得る。
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る光ファイバケーブル10によれば、テープ心線13は、スロット11のテープ心線収容溝17の溝底面23内に備えられているスライド部材15が溝底面23に沿ってスライド移動することで、ずれが吸収されて側圧が緩和され、両側若しくは片側が長手方向に渡って溝底面23に接触しないように保持される。これにより、溝底面23の表面粗さが高いレベルにあったとしても、テープ心線13の端心側に側圧が集中することがなくなり、溝底面23との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる。
また、スライド部材15が、溝底面23から突起状に突出すると、そこに側圧が局部的に集中することになるため、スロット11の周方向の幅L1を、溝底面23の幅L2に対して、予め定められた30〜80%に設定されることで、側圧の集中を生じることがないようにすることができる。
また、スライド部材15は、テープ心線収容溝17内において溝底面23との間の移動隙間内でスライド移動可能であるため、テープ心線収容溝17内でテープ心線13が回転して立ち上がる、例えばSZ撚りスロット型ケーブル等においても、テープ心線13の端心が溝底面23に直接接触しないようにして、伝送特性を安定的に確保することができる。
また、テープ心線13を収容した際のテープ心線収容溝17のクリアランスL4が1.4mm程度の高密度になったとしても、スライド部材15によって、溝底面23との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる。
また、スライド部材15の溝底面23側の表面粗さRaが、1.6μmの比較的高いレベルにあっても、テープ心線13の端心に加えて端心以外の心線も良好な伝送特性を確保することができる。
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、本発明に係る光ファイバケーブルの第2実施形態について説明する。図3は本発明の第2実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図である。なお、以下の各実施形態において、上述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
図3に示すように、本発明の第2実施形態である光ファイバケーブル30は、上段が短寸の板形状で、下段が長寸の板形状をなすスライド部材31が、5個のテープ心線収容溝17の溝底面23上にそれぞれ組み込まれている。
スライド部材31は、下段部分がテープ心線収容溝17の溝底面23の大半を覆った外形をなし、予め定められた高さ寸法を有し、スロット11の周方向における幅L1が、溝底面23の幅L2に対して、30〜80%に設定されている。そのため、スライド部材31は、その両側に溝底面23の幅L2に対して、例えば0.1mmずつの合計0.2mm以下の移動用隙間L3を有する。これにより、スライド部材31は、移動用隙間L3の範囲内でもって溝底面23上をスロット11の周方向にスライド移動されることで、テープ心線13のずれを吸収して側圧を緩和され、テープ心線13の両側若しくは片側が長手方向に渡って溝底面23に接触しないように保持する。
また、スライド部材31は、溝底面23側の下面が、表面粗さRaが、0.8μm以下に設定されている。これにより、スライド部材31は、溝底面23側が平滑になっており、上部にテープ心線集合体22が載置された状態で、移動用隙間L3の範囲内で溝底面23上をスロット11の周方向にスライド移動されることで、テープ心線13の端心に加えて、端心以外の心線の伝送特性も同時に安定させる。
第2実施形態の光ファイバケーブル30は、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏するために、それらの説明は省略されるが、特に本実施形態の光ファイバケーブル30によれば、スロット11のテープ心線収容溝17がSZ撚りである場合に有効である。
(第3実施形態)
次に、図4を参照して、本発明に係る光ファイバケーブルの第3実施形態について説明する。図4は本発明の第3実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図である。
図4に示すように、本発明の第3実施形態である光ファイバケーブル40は、テープ心線収容溝17の溝底面23の両端を起点として、外周方向に突出した円弧状に膨らんだ形状に形成されたスライド部材41が、5個のテープ心線収容溝17の溝底面23上に組み込まれている。
スライド部材41は、テープ心線収容溝17の溝底面23の大半を覆った外形で、予め定められた高さ寸法を有し、スロット11の周方向における幅L1が、溝底面23の幅L2に対して、30〜80%に設定されている。そのため、スライド部材41は、その両側に、溝底面23の幅L2に対して、例えば0.1mmずつの合計0.2mm以下の移動用隙間L3を有する。これにより、スライド部材41は、移動用隙間L3の範囲内で溝底面23上をスロット11の周方向にスライド移動されることで、テープ心線13のずれを吸収して側圧が緩和され、テープ心線13の両側若しくは片側が長手方向に渡って溝底面23に接触しないように保持する。
また、スライド部材41は、溝底面23側の下面の表面粗さRaが0.8μm以下に設定されている。これにより、スライド部材41は、溝底面23側が平滑になっており、上部にテープ心線集合体22が載置された状態で、移動用隙間L3の範囲内で溝底面23上をスロット11の周方向にスライド移動されることで、テープ心線13の端心に加えて、端心以外の心線の伝送特性も同時に安定させる。
第3実施形態の光ファイバケーブル40は、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏するために、それらの説明は省略されるが、特に本実施形態の光ファイバケーブル40によれば、テープ心線収容溝17の溝底面23の両端を起点として、外周方向に向けて凸の円弧形状に形成されたスライド部材41によって、テープ心線13の端心側に側圧が集中することがなくなり、溝底面23との側圧を軽減させて伝送特性を安定的に確保することができる。
次に、本発明に係る光ファイバケーブルの作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
[伝送特性測定試験]
比較例1として、テープ心線収容溝の溝底面にスライド部材を組み込んでないスロットを有する光ファイバケーブルを用意した。また、比較例2として、テープ心線収容溝の溝底面に、溝底面に比べて、スロットの周方向に対して著しく小さい長さのスライド部材を組み込んだスロットを有する光ファイバケーブルを用意した。
実施例1は、第1実施形態に示したスライド部材15を組み込んだスロット11を有する光ファイバケーブル10である。また、実施例2は、第3実施形態に示したスライド部材41を組み込んだスロット11を有する光ファイバケーブル30である。
これらを用いて、伝送特性を測定し、測定結果を図5に示す。なお、テープ心線の残留歪は、一般的に最適歪値と考えられる、0.00〜0.03%の範囲とした。また、測定試験に用いたテープ心線は、通常レベルのファイバ歪みを有しているものである。
図5により明らかなように、スライド部材が組み込まれていない比較例1は、表面粗さRaが1.2μmを超えると、最大伝送特性が著しく悪化した。また、スロットの周方向に対して著しく小さい長さのスライド部材を組み込んだ比較例2は、そのスライド部材に接触するテープ心線の中央部に側圧が集中し、伝送特性が悪化した。
これらに対して、実施例1、実施例2は、表面粗さRaが、1.6μmと高いレベルにあっても、波長1.55μmにおける伝送損失が0.3dB/km以下となって良好な伝送特性を保つことが判る。また、端心以外の心線は、緩衝効果および表面平滑効果により、通常よりも優れた伝送特性を有することが確認された。なお、介在物であるスライド部材は全てのテープ心線収容溝に設けても良いし、特定の溝のみに設けても良い。また、クリアランスは、0.2mm程度としたが、これに限らず、0.9mm以下でも同様の伝送特性が得られた。これは、昨今、多条布設用途で細径化の開発が進められているのに対してクリアランスを小さくする傾向にあるが、そのような傾向に対しても十分に対応が可能であることがわかる。
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、光ファイバケーブルに収容される光ファイバは8本に限らず、4本であっても、それ以外の複数本であっても良い。また、テープ心線収容溝の形状は、図示した矩形状に限らず、逆等脚台形状のスロットにも適用できる。
本発明の第1実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図である。 図1の光ファイバケーブルに適用されるテープ心線の一部破断外観斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図である。 本発明の第3実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図である。 溝底表面粗さと伝送特性の関係を示すグラフである。 従来の光ファイバケーブルの断面図である。
符号の説明
10,30,40 光ファイバケーブル
11 スロット
13 テープ心線
14 外被
15,31,41 スライド部材(介在物)
17 テープ心線収容溝
23 溝底面

Claims (3)

  1. 複数のテープ心線と、前記複数のテープ心線を収納するテープ心線収容溝を有するスロットと、前記スロットの外側に被覆される外被と、を備えた光ファイバケーブルであって、
    前記テープ心線収容溝の前記溝底面内に、前記テープ心線の横断面における両側若しくは片側が長手方向に渡って該溝底面に接触しないように、前記スロットの周方向に移動可能な介在物を備え
    前記介在物は、単一の板形状であって幅寸法より厚さ寸法が小さく、前記溝底面側の面が平滑になっており、上面に前記テープ心線が載置された状態で前記スロットの周方向に移動可能であり、さらに、
    前記介在物は、前記スロットの周方向における幅が、溝底面の幅に対して、30〜80%に設定され、前記溝の側面との間に、0.2mm以下の移動用隙間を有することを特徴とする光ファイバケーブル。
  2. 前記テープ心線が前記テープ心線収容溝に収容された際、前記テープ心線収容溝の上端縁と前記テープ心線の上面との間のクリアランス寸法が1.4mm以下に設定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
  3. 前記介在物の前記溝底面側の面の表面粗さが、0.8μm以下に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
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